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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B42D |
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管理番号 | 1049405 |
審判番号 | 不服2000-20965 |
総通号数 | 25 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1992-06-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2000-12-28 |
確定日 | 2001-11-08 |
事件の表示 | 平成 2年特許願第310633号「ICモジュールおよびICカード」拒絶査定に対する審判事件[平成 4年 6月29日出願公開、特開平 4-182198]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成2年11月16日の出願であって、その請求項1及び2に係る発明は、平成13年1月25日付け手続補正書により全文補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】 基板の一方の面に、中央部が広くなるように2本の第1の方向の絶縁溝とそれと直交する複数の第2の方向の絶縁溝で端子部を区画した外部端子と、 前記基板の他方の面で前記外部端子の中央部の裏面に、接続部の配列が前記端子部の配列と同じ方向となるように配置されたICチップと、 前記基板の貫通孔を通して前記外部端子に接続されその基板の他方の面に配置された電極部と、 前記電極部と前記ICチップの接続部とを接続するボンディングワイヤと、 前記ボンディングワイヤと前記ICチップを樹脂によって封止したモールド部と を含むICモジュールであって、 前記モールド部が、前記外部端子の中央部の区画であって、前記第1の絶縁溝の内側に配置され、 前記ボンディングワイヤと前記電極部の接続部を前記第1の絶縁溝の内側であって、前記第1の絶縁溝に沿って配置したこと を特徴とするICモジュール。 【請求項2】 請求項1記載のICモジュールをカード基材に形成された取付部に埋設したことを特徴とするICカード。」 2.引用刊行物 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され、この出願の日前に頒布された特開平2-6188号公報(以下、「刊行物」という。)には、 「本発明は・・・ICカードの使用中に長手方向の曲げ作用を受けた場合でも、この曲げ作用によってICチップが破損したり配線部が切断することのないICカードおよびICモジュールを提供することを目的とする。」(第2頁左下欄第6〜11行)、 「第1図乃至第3図は、本発明によるICカードおよびICモジュールの第1の実施例を示す図である。 第1図において、ICカード10はICモジュール11を長方形状のカード基材30の凹部35に装着して構成されている。」(第3頁左上欄第12〜17行)、 「第2図に示すように、外部端子13はカード基材30の長手方向・・・に延びる絶縁溝28aと、この絶縁溝28aと直交する方向に延びる絶縁溝28bによって複数の領域13a,13b…に区画されている。 また、これら外部端子13の複数領域13a,13b…は、略中央部に位置する広範囲の領域(グランド部)13aと、グランド部13aの両側に位置する7個の領域13b,13c,13d…,13iからなっている。 なお、第3図に示すように、スルーホール14からICチップ17近傍までは電極部25が延びており、この電極部25とICチップ17との間はボンディングワイヤ18によって接続されている。またこのボンディングワイヤ18は、カード基材の長手方向・・・に直交する方向に配置されている。さらに、第2図および第3図に示すように、ICチップ17およびボンディングワイヤ18は、いずれも外部端子13のグランド部13aに対応する領域内に配置されている。」(第3頁左下欄第14行〜右下欄第13行)、 「ICカード10の使用中、ICカード10はカード基材30の長手方向の曲げ作用・・・を受ける。この長手方向の曲げ作用によって絶縁溝、とりわけ絶縁溝28b近傍の基板12に応力集中が生じるが、ICチップ17およびボンディングワイヤ18は外部端子13のグランド部13aに対応する領域内に配置されているので、基板12に加わる応力集中によってICチップ17およびボンディングワイヤ18が影響を受けることはなく、このためICチップ17の破損が防止される。また、ボンディングワイヤ18はカード基材30の長手方向に直交する方向に配置されているので、ICカード10が長手方向の曲げ作用を受けた場合でも、ボンディングワイヤ18が切断することはない。 次に第4図に、本発明の第2の実施例について説明する。 第4図において、ICモジュール11には基板12の一方の面に外部端子13か設けられ、他方の面に電極部25が設けられている。 また、基板12の電極部25側の面に、ICチップ17が搭載され、電極部25との間でボンディングワイヤ18によって必要な配線を行ったのち、ICチップ17ならびにボンディングワイヤ18を含む配線部の周囲がモールド用樹脂により樹脂モールドされて樹脂モールド部19が形成されている。」(第4頁右上欄第8行〜左下欄第14行)、 「一方、カード基材30には、ICモジュール11の形状に対応する形状の凹部35が切削加工により形成されている。この凹部35内にICモジュール11を接着剤36を介して装着した」(第4頁左下欄第17〜末行)、 「第4図において、カード基材30の長手方向・・・と直交しグランド部を形成する絶縁溝28bは、ICチップ17の配置領域に対応する外部端子側領域の外側に位置している。」(第4頁右下欄第3〜6行)と記載されている。 これらの記載及び図面第1〜4図の記載からみて、上記刊行物には、 「基板12の一方の面に、中央部が広くなるように2本の第1の方向の絶縁溝28bとそれと直交する複数の第2の方向の絶縁溝28aで端子部を区画した外部端子13と、 前記基板12の他方の面で前記外部端子13の中央部の裏面に、接続部の配列が前記端子部の配列と直交する方向となるように配置されたICチップ17と、 前記基板12のスルーホール14を通して前記外部端子13に接続されその基板12の他方の面に配置された電極部25と、 前記電極部25と前記ICチップ17の接続部とを接続するボンディングワイヤ18と、 前記ボンディングワイヤ18と前記ICチップ17を樹脂によって樹脂モールドした樹脂モールド部19と を含むICモジュール11であって、 前記樹脂モールド部19が、前記外部端子13の略中央部の広範囲の領域(グランド部)13aに配置され、 前記ボンディングワイヤ18と前記電極部25の接続部を前記第1の絶縁溝28bの内側であって、前記第1の絶縁溝28bと直交する方向に配置したICモジュール11を カード基材30に形成された凹部35に埋設したICカード10。」の発明が記載されていると認められる。 3.対比・判断 〔本願請求項2に係る発明について〕 本願請求項2に係る発明と上記刊行物に記載された発明とを対比すると、 後者の「スルーホール14」、「樹脂モールド」、「樹脂モールド部19」、「略中央部の広範囲の領域(グランド部)13a」、「凹部35」は、それぞれ、前者の「貫通孔」、「封止」、「モールド部」、「中央部の区画」、「取付部」に相当すると認められるので、 両者は、 「基板の一方の面に、中央部が広くなるように2本の第1の方向の絶縁溝とそれと直交する複数の第2の方向の絶縁溝で端子部を区画した外部端子と、 前記基板の他方の面で前記外部端子の中央部の裏面に、配置されたICチップと、 前記基板の貫通孔を通して前記外部端子に接続されその基板の他方の面に配置された電極部と、 前記電極部と前記ICチップの接続部とを接続するボンディングワイヤと、 前記ボンディングワイヤと前記ICチップを樹脂によって封止したモールド部と を含むICモジュールであって、 前記モールド部が、前記外部端子の中央部の区画に配置され、 前記ボンディングワイヤと前記電極部の接続部を前記第1の絶縁溝の内側に配置した ICモジュールを カード基材に形成された取付部に埋設したICカード。」である点で一致するが、以下の点で相違する。 (1)前者では、ICチップを、「接続部の配列が端子部の配列と同じ方向となるように配置された」ものとすると共に、「ボンディングワイヤと電極部の接続部を、第1の絶縁溝に沿って配置した」のに対して、後者では、ICチップを、接続部の配列が端子部の配列と直交する方向となるように配置されたものとすると共に、ボンディングワイヤと電極部の接続部を、第1の絶縁溝と直交する方向に配置した点。 (2)前者では、「モールド部が、外部端子の中央部の区画であって、第1の絶縁溝の内側に配置され」るのに対して、後者には、モールド部が、外部端子の中央部の区画に配置されるが、第1の絶縁溝の内側に配置されるとは開示されていない点。 上記相違点(1)及び(2)について検討する。 ・相違点(1)について 「接続部の配列が端子部の配列と同じ方向となるように配置されたICチップ」は、周知である(拒絶査定で示した周知例である特開昭64-55289号公報及び特開昭64-38296号公報参照。)から、上記刊行物に記載された発明において、ICチップを上記周知のものに置き換えてみることは当業者が容易になし得ることである。 そして、ICチップの接続部の配列の方向と、ボンディングワイヤと電極部の接続部の配列の方向を同じにすることは、周知の設計的事項である(拒絶査定で示した上記周知例参照。)から、上記刊行物に記載された発明において、接続部の配列が端子部の配列と同じ方向となるようにICチップを配置すると、設計上、ボンディングワイヤと電極部の接続部の配列も端子部の配列と同じ方向、すなわち、第1の絶縁溝に沿った方向となるように配置することになる。 したがって、上記相違点(1)に係る本願請求項2に係る発明の構成は、上記周知のものに基いて当業者が容易に想到し得るものである。 ・相違点(2)について 上記刊行物には、「この長手方向の曲げ作用によって絶縁溝、とりわけ絶縁溝28b近傍の基板12に応力集中が生じるが、ICチップ17およびボンディングワイヤ18は外部端子13のグランド部13aに対応する領域内に配置されているので、基板12に加わる応力集中によってICチップ17およびボンディングワイヤ18が影響を受けることはなく、このためICチップ17の破損が防止される。」(第4頁右上欄第10〜18行)と記載され、この記載事項によれば、ICチップ17およびボンディングワイヤ18が絶縁溝によって区画される、外部端子13のグランド部13aに対応する領域内に配置されていれば、基板12に加わる応力集中によって影響を受けることはないから、上記刊行物に記載された発明において、ICチップ17およびボンディングワイヤ18だけでなく、ICチップ17およびボンディングワイヤ18を封止するモールド部も外部端子13のグランド部13aに対応する領域内に配置すれば、モールド部は基板12に加わる応力集中によって影響を受けることはなく、したがって、ICチップ17の破損およびボンディングワイヤ18の断線といった影響はさらになくなるであろうことは、当業者であれば容易に想到し得ることであり、 上記記載事項における「外部端子13のグランド部13aに対応する領域内」は、本願請求項2に係る発明における「外部端子の中央部の区画であって、第1の絶縁溝の内側」に相当するから、上記相違点(2)に係る本願請求項2に係る発明の構成は、上記刊行物に記載された事項に基いて当業者が容易に想到し得るものである。 そして、本願請求項2に係る発明によって奏せられる効果は、上記刊行物に記載された発明及び上記周知のものによって奏せられる効果と比較して格別のものとも認められず、また、予測可能なものでもあると認められる。 したがって、本件請求項2に係る発明は、上記刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 〔本願請求項1に係る発明について〕 本願請求項1に係る発明は、本願請求項2に係る発明にすべて包含されるから、上記〔本願請求項2に係る発明について〕で述べた理由により、上記刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願請求項1及び2に係る発明は、上記刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2001-09-07 |
結審通知日 | 2001-09-11 |
審決日 | 2001-09-25 |
出願番号 | 特願平2-310633 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B42D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 三輪 学、平井 聡子 |
特許庁審判長 |
二宮 千久 |
特許庁審判官 |
白樫 泰子 松川 直樹 |
発明の名称 | ICモジュールおよびICカード |
代理人 | 鎌田 久男 |