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審決分類 審判 全部申し立て 発明同一  H05K
管理番号 1049881
異議申立番号 異議2000-72887  
総通号数 25 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1992-10-12 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-07-24 
確定日 2001-07-18 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3003241号「グリーンシートとプラスチックフィルムの複合体」の請求項1ないし5に係る発明についての特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3003241号の請求項1、2、4に係る発明についての特許を取り消す。 同請求項3、5に係る発明についての特許を維持する。 
理由 1手続きの経緯
本件特許3003241号の請求項1ないし5に係る発明は、平成3年3月14日(1991.3.14)に特許出願され、平成11年11月19日(1999.11.19)にその特許の設定登録がなされ、その後、表記異議申立人より異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成13年2月13日に訂正請求がなされたものである。

2訂正の適否について
(1) 訂正の内容
特許権者が求めている訂正の内容は、以下のとおりである。
(特許請求の範囲)
a 請求項1の「フィルムであり、」と「前記プラスチックフィルム」との間に「グリーンシートのビア孔の孔あけ加工の工程が、グリーンシートの片側の面に、プラスチックフィルムが配置された状態で、プラスチックフィルム側より行われ、」を挿入する。
b 請求項2の「組成物であり、」と「前記プラスチックフィルム」との間に「グリーンシートのビア孔の孔あけ加工の工程が、グリーンシートの片側の面に、プラスチックフィルムが配置された状態で、プラスチックフィルム側より行われ、」を挿入する。
c 請求項3の「グリーンシートのビア孔の孔あけ加工の工程が、グリーンシートの片側の面に、プラスチックフィルムが配置された状態で、プラスチックフィルム側より行われる」部分の代わりに、「ビア孔にビア導体を充填する工程が、グリーンシートの片側の面に、プラスチックフィルムが配置された状態で、そのプラスチックフィルム上に、前記ビア孔に対向する位置にビア孔より若干大なる透孔の形成されたマスクを載置して、そのマスク側より充填する」を挿入する。
d 請求項4は、もとの請求項5を繰り上げたものである。
e 請求項5の配線パターンを形成する工程に他の工程を加え、且つ、プラスチックフィルムが配置された状態の構成を、「プラスチックフィルム上にグリーンシートを形成する工程、ビア孔を形成する工程、ビア孔にビア導体を充填する工程、グリーンシート上に配線パターンを形成する工程が、プラスチックフィルム及びグリーンシートをロール上に巻き取りながら」と訂正する。

(発明の詳細な説明)
f 明細書段落番号【0006】中の記載について、上記aと同じ趣旨の訂正をする。

(2) 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
(特許請求の範囲)
上記訂正事項a及びbについては、特許明細書に記載のビア孔を形成する工程を加入するものであり、
c及びdは、それぞれ後に記載の請求項を繰り上げかつ特許明細書の記載からその構成を限定したものであり、eは、配線パターンを形成する工程に請求項1ないし4に記載の工程を加え、且つプラスチックフィルムが配置された状態を、特許明細書の記載からその構成の限定をしたものであるから、
何れの訂正も特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、ビア孔を形成する工程を請求項1及び2に加入する点に関しては、ビア孔を形成する工程、は、請求項3に記載されていたものであり、請求項1及び2の「ガラス転移点温度が85℃以上のプラスチックフィルムが配置されたグリーンシートとプラスチックフィルムの複合体」の構成が、ビア孔へ導体を充填した後の乾燥工程におけるグリーンシートの縮みによって、グリーンシート間の位置精度が悪くなる課題を解決するもので、ビア孔を形成することを前提にしたものであることから、ビア孔を形成する工程を加入することは、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
更に、請求項5における訂正で各製造工程を加えた点に関しては、プラスチックフィルム自体が連続工程を意図したものであるから、該訂正も実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

(発明の詳細な説明)
上記訂正事項fについては、明細書の【0006】【課題を解決するための手段】において、請求項1の上記訂正事項aに対応する部分を当該訂正事項aと整合するように明確化したものであるから、不明瞭な記載の釈明に相当するものである。
そして、上記発明の詳細な説明の訂正は、いずれも新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

3特許異議の申立ての概要
申立人は、証拠として甲第1号証[特開平4―296086号公報(特願平3―4354号の公開公報)]及び甲第2号証(特開平1―231398号公報)を提出し、本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、甲第1号証に係る出願の願書に最初に添付された明細書または図面に記載された発明と同一であるから、本件特許は、特許法29条の2の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきものである旨主張をしている。

4本件発明
本件特許3003241号の請求項1ないし5に係る発明は、訂正明細書の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのつぎのものである。
【請求項1】グリーンシートの片側の面に、ガラス転移点温度が85℃以上のプラスチックフィルムが配置されたグリーンシートとプラスチックフィルムの複合体であって、前記プラスチックフィルムが、ポリフェニレンサルファイド,ポリエーテルイミド,ポリエーテルサルフォン,ポリエーテルエーテルケトン,ポリイミドのいずれかを主成分とするフィルムであり、グリーンシートのビア孔の孔あけ加工の工程が、グリーンシートの片側の面に、プラスチックフィルムが配置された状態で、プラスチックフィルム側より行われ、前記プラスチックフィルムは、グリーンシートの焼成に先立ちグリーンシートから剥離されるものであることを特徴とするグリーンシートとプラスチックフィルムの複合体。
【請求項2】 グリーンシートの片側の面に、ガラス転移点温度が85℃以上のプラスチックフィルムが配置されたグリーンシートとプラスチックフィルムの複合体であって、前記グリーンシートのセラミック成分が、Al2O3 13.97〜60重量%、SiO2 22.8%〜56.52重量%、B2O3 2.32〜5.1重量%、Na2O 0.6〜2.1重量%、K2O 0.6〜1.56重量%,CaO 2.4〜4.8重量%、MgO 0.84〜8.53重量%、PbO 7.2〜12重量%の組成範囲で総量100重量%となるように選んだ組成物であり、グリーンシートのビア孔の孔あけ加工の工程が、グリーンシートの片側の面に、プラスチックフィルムが配置された状態で、プラスチックフィルム側より行われ、前記プラスチックフィルムは、グリーンシートの焼成に先立ちグリーンシートから剥離されるものであることを特徴とするグリーンシートとプラスチックフィルムの複合体。
【請求項3】 ビア孔にビア導体を充填する工程が、グリーンシートの片側の面に、プラスチックフィルムが配置された状態で、そのプラスチックフィルム上に、前記ビア孔に対向する位置にビア孔より若干大なる透孔の形成されたマスクを載置して、そのマスク側より充填することを特徴とする請求項1または2に記載のグリーンシートとプラスチックフィルムの複合体。
【請求項4】 プラスチックフィルムが配置されていない他方の面上に、導体で配線パターンを形成し、さらにその配線パターンを乾燥する工程を、前記プラスチックフィルムが配置された状態で行われることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のグリーンシートとプラスチックフィルムの複合体。
【請求項5】プラスチックフィルム上にグリーンシートを形成する工程、ビア孔を形成する工程、ビア孔にビア導体を充填する工程、グリーンシート上に配線パターンを形成する工程が、プラスチックフィルム及びグリーンシートをロール上に巻き取りながら行われることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のグリーンシートとプラスチックフィルムの複合体。

5先願明細書,刊行物及び周知例に記載の発明
(1)取消の理由に引用した先願明細書(申立人は本件出願後に公開された特願平3―4354号の公開公報を証拠として提出しているが、該特願平3―4354号の出願当初の明細書及び図面が提出されたものとして取り扱う。)には、以下の点が記載されている。
請求項1には、「キャリアテープ上に均一な厚みの未焼成セラミックシート〈本件発明の「グリーンシート」に相当している。〉[以下、〈〉内には、本件発明で相当している事項の用語を示す。]が形成されてなるセラミック多層基板用グリーンシート〈グリーンシートとプラスチックフィルムの複合体〉において、前記キャリアテープを構成するキャリアフィルムが、ガラス転移点が90℃以上〈85℃以上〉で熱膨張係数が6. 0×10-5cm/cm℃以下、耐有機溶剤性、耐湿性に優れたポリマーフィルム〈プラスチックフィルム〉であることを特徴とするセラミック多層基板用グリーンシート。」
請求項2には、「前記ポリマーフィルムが、ポリイミドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム、ポリエーテルスルフォンフィルムのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載のセラミック多層基板用グリーンシート。」
【0054】には、「このようにして得たグリーンシート〈グリーンシートとプラスチックフィルムの複合体〉を所定の大きさにスリットするとともに、その所定位置にキャリアフィルムを付けたままでパンチング〈孔あけ加工の工程〉によりビアホール〈ビア孔〉を形成する。その結果、図2に示すように、グリーンシート10にビアホール11が形成されると共に、このグリーンシート10に付着しているキャリアフィルム12にも同時にビアホール11と同じ大きさの孔12a が形成される。」
段落【0055】には、「次に、図2に示すように、グリーンシート10のキャリアフィルム12側にこのグリーンシート10の周辺を覆う程度のスクリーン13を設置し、ビアホール11を有するグリーンシート10のキャリアフィルム12側からこのキャリアフィルム12をビアマスクとして導体ペースト〈ビア導体〉によるビアホール充填印刷を行う。続いて、このグリーンシート10のセラミック面〈プラスチックフィルムが配置されていない他方の面〉に従来と同様の導体ペーストを用いて回路〈配線パターン〉を印刷し、乾燥した後、このグリーンシート10のキャリアフィルム12を剥す。」
【0056】には、「このようにしてキャリアフィルムを剥し終ったグリーンシート10を絶縁シートや回路の印刷された他のシートと積層し、これを焼成して、セラミック多層基板を得る。」

これらの記載からみれば先願明細書には、以下のとおりの発明が記載されていると認められる
「グリーンシートの片側の面に、ガラス転移点温度が85℃以上のプラスチックフィルムが配置されたグリーンシートとプラスチックフィルムの複合体であって、前記プラスチックフィルムが、ポリフェニレンサルファイド,ポリエーテルイミド,ポリエーテルサルフォン,ポリエーテルエーテルケトン,ポリイミドのいずれかを主成分とするフィルムであり、グリーンシートのビア孔の孔あけ加工の工程が、グリーンシートの片側の面に、プラスチックフィルムが配置された状態で行われ、前記プラスチックフィルムは、グリーンシートの焼成に先立ちグリーンシートから剥離されるものであることを特徴とするグリーンシートとプラスチックフィルムの複合体。」
及び「プラスチックフィルムが配置されていない他方の面上に、導体で配線パターンを形成し、さらにその配線パターンを乾燥する工程を、前記プラスチックフィルムが配置された状態で行われること」

(2)取消の理由に引用した刊行物Aの請求項2には、「セラミック絶縁層の組成が、Al2O345〜60重量%、SiO224〜32重量%、B2O32.4〜3.3重量%、Na2O1.2〜1.65重量%、K2O0.8〜1.1重量%、CaO3.2〜4.4重量%、MgO1.2〜1.65重量%、PbO7.2〜9.9重量%の組成範囲で総量100重量%となる無機成分に少なくとも有機バインダ.可塑剤を含む生シートを作製し、前記生シート上に銅の酸化物を主成分とするペースト組成物でスクリーン印刷によりパターンを形成し、前記生シートを所望枚数積層して多層化する《中略》未焼成積層体形成行程と空気中もしくは、酸素雰囲気中で、前記多層体内部の有機成分を熱分解するに充分な温度で熱処理を行う脱バインダ行程とし、しかる後水素と窒素の混合ガス雰囲気中で金属銅に還元する行程と、前記還元済み多層体を窒素雰囲気中で焼結させる行程とを含むことを特徴とするセラミック多層配線基板の製造方法」が記載されている。

(3)周知例1として示す特開平1―201997号公報においては、その公報2頁右上欄19行ないし左下欄4行に、「キャリアテープ1〈プラスチックフィルム〉の貼着しているグリンシート2〈グリーンシートとプラスチックフィルムの複合体〉をキャリアテープ1を上側として固定台3の上に置き、下側より減圧排気してグリンシート2を平坦に密着させた後にパンチを用い、キャリアテープ1の上からバイア形成位置をパンチングして穴4〈ビア孔〉をあける。」と記載されている。
(4)周知例2として示す特開平1―202405号公報においては、その従来例である第4図(A)及び(B)に、パンチ31により、キャリアフィルム2〈プラスチックフィルム〉側から孔あけ加工される工程が明白に示されている。

6対比・判断
(1)本件請求項1に係る発明と先願明細書の記載とを対比すると、両者は、
「グリーンシートの片側の面に、ガラス転移点温度が85℃以上のプラスチックフィルムが配置されたグリーンシートとプラスチックフィルムの複合体であって、前記プラスチックフィルムが、ポリフェニレンサルファイド,ポリエーテルイミド,ポリエーテルサルフォン,ポリエーテルエーテルケトン,ポリイミドのいずれかを主成分とするフィルムであり、グリーンシートのビア孔の孔あけ加工の工程が、グリーンシートの片側の面に、プラスチックフィルムが配置された状態で、行われ、前記プラスチックフィルムは、グリーンシートの焼成に先立ちグリーンシートから剥離されるものであることを特徴とするグリーンシートとプラスチックフィルムの複合体。」である点で一致し、
本件請求項1に係る発明では、ビア孔の孔あけ加工の工程が、「プラスチックフィルム側より行われ、」ている構成を有しているのに対し、先願明細書では、プラスチックフィルム側からかグリーンシート側からか明記されていない点で一応相違する。
しかしながら、ビア孔の孔あけ加工を、「プラスチックフィルム側より行うことは、周知例1及び周知例2に示されているように、通常のビア孔あけ方向を示したに過ぎないのであるから、該相違点は単に慣用手段を表現しただけのものと認められる。
したがって、本件請求項4に係る発明は、先願明細書に記載された発明と同一である。

(2)本件請求項2に係る発明と先願明細書の記載とを対比すると、請求項2に係る発明では、前記請求項1との対比で指摘したビア孔あけ方向の相違点に加え、グリーシートの材料を「グリーンシートのセラミック成分が、Al2O3 13.97〜60重量%、SiO2 22.8%〜56.52重量%、B2O3 2.32〜5.1重量%、Na2O 0.6〜2.1重量%、K2O 0.6〜1.56重量%,CaO 2.4〜4.8重量%、MgO 0.84〜8.53重量%、PbO 7.2〜12重量%の組成範囲で総量100重量%となるように選んだ組成物」とした点で先願明細書に記載の発明と一応相違しているが、前記刊行物Aに記載されているように、上記の組成物は通常グリーンシートに使用されるものであるから、該相違点は単に材料の組成を表記したに過ぎないものと認められる。
したがって、本件請求項2に係る発明は、先願明細書に記載された発明と同一である。

(3)本件請求項4に係る発明と先願明細書の記載とを対比すると、請求項4に係る発明では、前記請求項1との対比で指摘したビア孔あけ方向の相違点に加え、「プラスチックフィルムが配置されていない他方の面上に、導体で配線パターンを形成し、さらにその配線パターンを乾燥する工程を、前記プラスチックフィルムが配置された状態で行われる」の構成を追加したことを特徴としているが、該構成は、前記5(1)で指摘した如く先願明細書に記載されていた事項であるから、本件請求項4に係る発明は、前記請求項1での判断と同じ理由で先願明細書に記載された発明と同一である。

(4)本件請求項3及び5に係る発明と先願明細書の記載とを対比すると、
本件請求項3に係る発明は、ビア導体を充填する際に、ビア孔より若干大なる透孔の形成されたマスクを載置して充填するので、プラスチックフィルムのマスクと共に二重のマスクを用いているのに対し、先願明細書に記載の発明では、スクリーン13を用いていることから、キャリヤーフィルムのみがマスクとなって充填している点で相違し、
本件請求項5に係る発明は、プラスチックフィルム上にグリーンシートを形成する工程、ビア孔を形成する工程、ビア孔にビア導体を充填する工程、グリーンシート上に配線パターンを形成する工程が、プラスチックフィルム及びグリーンシートをロール上に巻き取りながら行われるのに対し、先願明細書に記載の発明では、グリーンシート〈グリーンシートとプラスチックフィルムの複合体〉はスリットされた後に各処理工程に供される点で相違する。
そして、該相違点により、請求項3に係る発明では、ペーストを回収する際の取り扱いが容易になり、請求項5に係る発明では、グリーンシートのハンドリングが容易となる効果を奏するものである。
したがって、上記相違点により、本件請求項3及び5に係る発明と同一の発明が先願に記載されているとすることはできない。

4むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1,2及び4に係る発明は先願明細書に記載された発明と同一であり、しかも本件請求項1,2及び4に係る発明の発明者が上記先願明細書に記載された発明の発明者と同一であるとも、この出願の時において、その出願人が上記先願の出願人と同一であるとも認められないので、本件請求項1,2及び4に係る発明は特許法第29条の2の規定に違反して特許されたものである。
また、本件請求項3及び5に係る発明の特許については、取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
グリーンシートとプラスチックフィルムの複合体
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】グリーンシートの片側の面に、ガラス転移点温度が85℃以上のプラスチックフィルムが配置されたグリーンシートとプラスチックフィルムの複合体であって、前記プラスチックフィルムが、ポリフェニレンサルファイド,ポリエーテルイミド,ポリエーテルサルフォン,ポリエーテルエーテルケトン,ポリイミドのいずれかを主成分とするフィルムであり、グリーンシートのビア孔の孔あけ加工の工程が、グリーンシートの片側の面に、プラスチックフィルムが配置された状態で、プラスチックフィルム側より行われ、前記プラスチックフィルムは、グリーンシートの焼成に先立ちグリーンシートから剥離されるものであることを特徴とするグリーンシートとプラスチックフィルムの複合体。
【請求項2】グリーンシートの片側の面に、ガラス転移点温度が85℃以上のプラスチックフィルムが配置されたグリーンシートとプラスチックフィルムの複合体であって、前記グリーンシートのセラミック成分が、Al2O313.97〜60重量%、SiO222.8%〜56.52重量%、B2O32.32〜5.1重量%、Na2O 0.6〜2.1重量%、K2O 0.6〜1.56重量%,CaO 2.4〜4.8重量%、MgO 0.84〜8.53重量%、PbO 7.2〜12重量%の組成範囲で総量100重量%となるように選んだ組成物であり、グリーンシートのビア孔の孔あけ加工の工程が、グリーンシートの片側の面に、プラスチックフィルムが配置された状態で、プラスチックフィルム側より行われ、前記プラスチックフィルムは、グリーンシートの焼成に先立ちグリーンシートから剥離されるものであることを特徴とするグリーンシートとプラスチックフィルムの複合体。
【請求項3】ビア孔にビア導体を充填する工程が、グリーンシートの片側の面に、プラスチックフィルムが配置された状態で、そのプラスチックフィルム上に、前記ビア孔に対応する位置にビア孔より若干大なる透孔の形成されたマスクを載置して、そのマスク側より充填するようにしたことを特徴とする請求項1または2に記載のグリーンシートとプラスチックフィルムの複合体。
【請求項4】プラスチックフィルムが配置されていない他方の面上に、導体で配線パターンを形成し、さらにその配線パターンを乾燥する工程を、前記プラスチックフィルムが配置された状態で行われることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のグリーンシートとプラスチックフィルムの複合体。
【請求項5】プラスチックフィルム上ヘグリーンシートを形成する工程、ビア孔を形成する工程、ビア孔にビア導体を充填する工程、グリーンシート上に配線パターンを形成する工程が、プラスチックフィルム及びグリーンシートをロール状に巻き取りながら行われることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のグリーンシートとプラスチックフィルムの複合体。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、電子機器に使用されるセラミック回路基板の工程で使用されるグリーンシートとプラスチックフィルムの複合体に関するもので、特にセラミック多層基板の製造に適用して効果のあるものである。
【0002】
【従来の技術】
近年セラミック多層基板は多層プリント基板に比べ、はるかに高密度な回路基板として注目されている。以下に従来のセラミック多層基板の製造方法に於いて、特にグリーンシートのハンドリングについて説明する。
【0003】
従来の第一の方法はグリーンシート単体でハンドリングする方式で、ポリエステルを主成分とするPETフィルム上にグリーンシート成形を行い、そのPETフィルムを剥したグリーンシートを所定の大きさに切断し、図6に示す如く位置決め孔2と層間の電気的接続をとる為のビア孔3を形成し、前記ビア孔3に導体を充填した後、グリーンシート1面上に導体で所定の配線パターンを形成する。
【0004】
然る後、前記配線パターンの形成された複数枚のグリーンシートを積層後、焼成を行っていた。第2のハンドリング方法は、図7に示す如くグリーンシート1をステンレスのフレーム4に貼付ける方式であり、フレーム4の角を位置決め基準としてハンドリングしていくものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記従来の構成では、前記第1の方式に於いてはグリーンシートは軟らかく、破れ易い為に各工程でのハンドリングが困難であり、また、導体をビア孔に充填する工程や配線印刷後の、導体を乾燥する工程で熱が加わる為グリーンシートが大きく縮み位置精度が悪くなるという欠点を有していた。また多層基板を製造する際は配線パターンの形成されたグリーンシートを複数枚積層しなければならない為、グリーンシートの寸法精度は特に重要である。前記第2の方式に於いては、フレームがあるためハンドリングは容易になるが、フレームに貼ったグリーンシートをきれいに剥すことは困難であり、フレームは長期使用していると反るという問題点、また、多層基板に於いて層数が増えると1枚のグリーンシートの厚みは薄くなり、フレームにグリーンシートを貼付けてもグリーンシートは破れ易く、たわみ易いという問題点も有していた。また、ビア孔形成の工程においてレーザー光を使用しようとすると、図8に示すように、レーザー照射側のグリーンシート1のビア孔3の周辺にチッピング9が発生してしまう問題点も有していた。さらに、従来のセラミック組成では内部導体と同時焼成した際に基板の変形が生じるので、高密度な回路基板が得られないという問題点も有していた。本発明は上記従来の問題点を解決するもので、グリーンシートのハンドリングを著しく向上し、高品質のセラミック回路基板を得る為のグリーンシートとプラスチックフィルムの複合体を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成する為に、本発明のグリーンシートとプラスチックフィルムの複合体は、グリーンシートの片側の面に、ガラス転移点温度(以下Tgという)が85℃以上のプラスチックフィルムが配置されたグリーンシートとプラスチックフィルムの複合体であって、前記プラスチックフィルムが、ポリフェニレンサルファイド,ポリエーテルイミド,ポリエーテルサルフォン,ポリエーテルエーテルケトン,ポリイミドのいずれかを主成分とするフィルムであり、グリーンシートのビア孔の孔あけ加工の工程が、グリーンシートの片側の面に、プラスチックフィルムが配置された状態で、プラスチックフィルム側より行われ、前記プラスチックフィルムは、グリーンシートの焼成に先立ちグリーンシートから剥離されるものであることを特徴とする構成を有している。
【0007】
【作用】
この構成によれば、グリーンシートには耐熱性のプラスチックフィルムが配置されているために、この複合体のままハンドリングすれば、プラスチックフィルムが破れ易く伸び易いグリーンシートを保護するとともに、フレーム等の余分な治具を不要とし、導体乾燥時の熱工程においても寸法変化が小さく、ロールトウロールの工法も採用できるので、セラミック回路基板の製造工程に於けるグリーンシートのハンドリングを著しく向上し、高品質で安価なセラミック多層基板を提供することができる。また、ビア孔をレーザー光にて加工する際プラスチックフィルム側から照射することにより、プラスチックフィルムのビア孔周辺にチッピングが起こっても、プラスチックフィルムは後工程で捨てられるので、グリーンシートには何等不都合はない。よって、本構成であればビア孔加工にレーザーが使用できるので生産性を著しく向上できるものである。さらに、多層基板用のグリーンシートは厚みが薄いので、プラスチックフィルムで保護する効果と、熱が加わる工程に於いても寸法変化が小さいので積層精度が向上できる効果を有する本構成は、大変有効なものである。
【0008】
【実施例】
(実施例1)
以下、本発明の一実施例について、図面を参照しながら説明する。先ず本実験で用いたプラスチックフィルムを紹介する。
【0009】
(1)東レ(株)製の商品名トレリナで、ポリフェニレンサルファイドを主成分とするフィルム、以後PPSという。その化学構造式を(化1)に示している。
【0010】
【化1】

【0011】
(2)三菱樹脂(株)の商品名スペリオUTで、ポリエーテルイミドを主成分とするフィルム、以後PEIという。その化学構造式を(化2)に示している。
【0012】
【化2】

【0013】
(3)三井東圧化学(株)製の商品名TALPA-1000で、ポリエーテルサルホンを主成分とするフィルム、以後PESという。その化学構造式は(化3)に示している。
【0014】
【化3】

【0015】
(4)三井東圧化学(株)製の商品名TALPA-2000で、ポリエーテルエーテルケトンを主成分とするフィルム、以後PEEKという。その化学構造式は(化4)に示している。
【0016】
【化4】

【0017】
(5)東レデュポン(株)の商品名カプトンで、ポリイミドを主成分とするフィルム、以後PIという。その化学構造式は(化5)に示している。
【0018】
【化5】

【0019】
(6)東レ(株)製の商品名ルミラーで、ポリエステルを主成分とするフィルム、以後PETという。その化学構造式は(化6)に示している。
【0020】
【化6】

【0021】
(7)上記PETフィルムを100℃以上の熱処理を施し、低収縮化したフィルム、以後低収縮PETという。その化学構造式は(化6)と同じである。
【0022】
これら7種類のプラスチックフィルムの特性を(表1)に示す。(表1)の特性で、破断強度・伸び率についてはJIS-C2318に従い測定し、熱収縮率は100mm間隔で0.15mmφの孔を明け、フィルムを製造する際の成形方向(MD)とその直角方向(TD)について、加熱処理後n=4で最も収縮率の大きな値を示した。
【0023】
【表1】

【0024】
図1に示す如く、これら7種類の厚みが75μmのプラスチックフィルム5上に、乾燥後の厚みが200μmになるようにグリーンシート成形を行い、セラミック回路基板を製造するに必要なグリーンシート1とプラスチックフィルム5の複合体をつくった。次に前記グリーンシートをプラスチックフィルムを介してNCパンチにて0.15mmφのビア孔加工を行った。このとき、PETはバリができ易かったが、他のフィルムは加工性に優れていた。この理由は(表1)の伸び率に関係があり、破断時にフィルムの伸び率が大きい程バリが起こり易いことは容易に推測され、実際の実験の結果と一致している。また、(表1)の破断強度は値が小さい程、加工性に優れ量産時のピンの寿命も長くなることが予想される。PEEKについては、伸び率は大きいが破断強度の値が小さいためか、バリはPETより少なく、十分に実用可能なレベルであった。一般的に耐熱性の高いエンジニアリングプラスチックは、伸び率の値は小さく、破断強度の値も小さいので打ち抜き加工性に優れていることが分かった。次に図2に示す如く前記ビア孔6にビア導体7aを充填し、90℃で10分乾燥した後、グリーンシート1面上に導体で配線パターン7bを形成し、さらに90℃で10分乾燥を行った。そしてグリーンシート1をプラスチックフィルム5から剥離し、前記配線パターンの形成された複数枚のグリーンシートを積層した後、焼成を行い多層基板を得た。ここでビア接続の信頼性を確認したところPETフィルムを用いたもののみ導通不良があったので、原因を探る為に多層基板の断面をSEM観察した結果、ビアの位置ずれ不良であることが分かった。これは、ビア充填・配線印刷後の乾燥工程でのPETフィルムの収縮が大きい為であると考えられる。一般的に多層基板の外径は100mm角で、今後ビア径は0.1mmφが主流になってくると予想されており、そうなるとビア孔の積層時のずれは50ミクロン以下であることが信頼性の面から必要となる。即ち、導体乾燥時に約90℃の熱が加わるので、安全をみて(表1)の100℃以下での熱収縮率の値が0.05%以下であることが要求される。100mmの0.05%は50ミクロンである。今回の実験では、前記従来例の項で述べた従来のハンドリング方法と比較して、プラスチックフィルムが配置されている為、伸び易く破れ易いグリーンシートを容易にハンドリングすることができた。また導体乾燥の際にグリーンシート単体の場合、1%以上の収縮が起こるのに対しグリーンシートとプラスチックフィルムの複合体では(表1)に示す熱収縮率のように寸法変化は小さい為、寸法安定性が良く、ビア接続の信頼性に優れ、かつ高密度なセラミック回路基板が得られた。また、Tgは耐熱の度合を示す物性値であるため、Tgが高い方が多少の誤差は除いて熱収縮率の値は小さく、85℃の耐熱性のフィルムであれば、さらに有効であることも(表1)から明らかであり、実験結果も一致している。またビア充填工程に於いて、一般的にはビア孔に対応する位置に、ビア孔より若干大なる透孔の形成されたメタルマスクを載置し、そのメタルマスク側より導電ペーストを印刷により充填するが、メタルマスクを取り除いた後、必然的にメタルマスクの透孔に相当するランドがビア孔の周辺にできていた。しかし図3に示す如くビア孔6にビア導体7aを充填する際、プラスチックフィルム5側から行うことにより、ビアランド12が発生してもプラスチックフィルム5をグリーンシート1から剥離する際にビアランド12は取り除かれる為、結果として図3に示すランドレスビア11を得ることができ、さらに高密度な多層基板を得ることができた。
【0025】
(実施例2)
実施例1のビア孔の孔明け工程に於て、レーザー光を用いて実験した。図4に示す如く、グリーンシート1とプラスチックフィルム5の複合体のプラスチックフィルム5側からレーザー光8を照射した。プラスチックフィルム5のレーザー照射側には、チッピング9が発生したが、それはプラスチックフィルム5の表面部だけで、グリーンシート1には何ら損傷はなく、ストレートな0.1mm¢〜0.2mm¢の孔を明けることができた。実施例1で述べた7種類のフィルムについて、フィルム間でレーザーによる孔明け加工性の差はほとんどなかった。さらに、実施例1と同様に多層基板をつくったが、ビア接続の信頼性についても実施例1での結果と同じで、レーザー光を用いたことによる不良というものはなかった。今回の実験によりレーザー光を使用できることが分かったので、孔明けの生産性を向上でき、かつNCパンチや金型のピンの寿命の問題が無くなったので、量産性を著しく向上することができた。
【0026】
(実施例3)
先ず実施例1と同様、前記7種類の厚みが75μmのプラスチックフィルム上に、グリーンシートが200μmの厚みとなるよう成形を行い、ロール状に巻取った。次に図5に示す如く、プラスチックフィルム5がついたままのグリーンシート1を順次その長手方向に移動させ、その移動工程に於て、加工機10を用いて、プラスチックフィルム5ごとグリーンシート1にビア孔形成を行い、順次巻取った。同様に、ビア充填,配線形成を行った後、前記配線パターンの形成されたグリーンシートをプラスチックフィルムごと所定の大きさに切断し、前記グリーンシートを前記プラスチックフィルムから剥離し、そのグリーンシートを複数枚積層した後、焼成を行い多層基板を得た。今回の実験では、各工程毎にグリーンシートを巻取ったが、各工程のタクトを検討することにより連続化できることはいうまでもない。本工法の採用により、伸び易く破れ易いグリーンシートのハンドリングの問題を解決した。またロールトウロールと呼ばれる連続生産が可能になり、かつ耐熱性に優れたプラスチックフィルムを採用しているので、多層基板の積層精度を向上でき、ビア接続の信頼性に優れる多層基板ができるようになった。即ち、大量生産が可能になり、歩留りは向上する工法であるため、安価な多層基板を大量に製造でき、民生機器への導入の可能性をも引き出すことができた。以上、実施例1,2,3では多層基板の場合について述べたが、グリーンシートを積層せずに1枚だけを焼成する回路基板の場合についても本発明は有効であることはいうまでもない。
【0027】
(実施例4)
高密度な多層基板を得るために内部導体とマッチングの良いセラミック材料の検討を行った。基板材料に要求する項目として、第1に電気抵抗の低いAgやCu等導体材料、及び抵抗体やコンデンサ材料と同時焼成できるように900℃焼成可能であること。第2に従来のHICで使用されているアルミナ基板に比べて誘電率が低いこと、即ち誘電率が9以下であること。第3にはAgとCuの内部導体と同時焼成を行った時、層間の絶縁性に優れ、かつ内部導体のある部分と、ない部分で収縮率の差がないことがあげられる。層間の信頼性は、200ミクロンの絶縁層間に2×2mmの対向電極を設け、恒温恒湿槽にて85℃-85%RHの環境下で、100Vの電圧を印加して1000時間放置した後に室内に戻し、絶縁抵抗を測定して1010Ω以上保持しておれば○、それ以下であれば×として評価を行った。基板の変形に関しては、定量的に表すために基板変形率ΔLを(数1)に定義する。
【0028】
【数1】
ΔL=(Lc-Ld)/Lc × 100(%)
【0029】
ここで、Lcは内部導体がある部分の基板の収縮率、Ldは内部導体のない部分の収縮率である。以上のようにして求めたΔLが0.5%未満であれば○の評価を与えた。以上の条件をほぼ満たす基板材料の組成を(表2)に示す。
【0030】
【表2】

【0031】
表中のガラスA,ガラスBの組成を(表3)に示す。
【0032】
【表3】

【0033】
まず母ガラスについては、(表3)に示すA及びBのガラス組成になるように調合した原料バッチを白金ルツボにいれ1500〜1600℃で2〜3時間溶融後水中に入れ急冷した後ボールミルにて平均粒径が約1.8ミクロンになるまで粉砕し、母ガラス粉末を得た。(表2)中のNo.1〜5は、ガラスA粉末とアルミナ粉末を重量比で60/40〜40/60まで混合比を変化させたもので、No.6〜10は、ガラスB粉末とアルミナ粉末を重量比で55/45〜35/65まで混合比を変化させたもので、No.11〜13は、ガラスB粉末とコーディエライト粉末を重量比で60/40〜45/55まで混合比を変化させたものである。これらのセラミック粉末を、アクリル系バインダーを用いグリーンシート成形を行い、前記実験を行った。その結果を(表4)に示す。
【0034】
【表4】

【0035】
試料No.10については層間の信頼性がNGであったが、これはガラス粉末35重量部に対しフィラー成分であるアルミナ粉末を65重量部配合しており、フィラー成分が多すぎるために焼結が十分でなかったと考察される。即ち試料No.10を除くNo.1〜13の各成分の組成範囲、A12O313.97〜60重量%、SiO2 22.8〜56.52重量%、B2O3 2.32〜5.1重量%、Na2O 0.6〜2.1重量%、K2O 0.6〜1.56重量%、CaO 2.4〜4.8重量%、MgO 0.84〜8.53重量%、PbO 7.2〜12重量%の組成範囲で総量100重量%となるように選んだ組成物であれば、信頼性に優れ、かつ従来の多層基板に比べて内部導体とのマッチング性の良い、高密度な多層基板が得られることが分かった。
【0036】
【発明の効果】
以上のように本発明は、グリーンシートの片側の面に、Tgが85℃以上のプラスチックフィルムが配置されたことを特徴とするため、この複合体のままハンドリングすれば、プラスチックフィルムが破れ易く伸び易いグリーンシートを保護するとともに、フレーム等の余分な治具を不要とし、導体乾燥時の熱工程においても寸法変化が小さく、ロールトウロールの工法も採用できるので、セラミック回路基板の製造工程に於けるグリーンシートのハンドリングを著しく向上し、高品質で安価なセラミック多層基板を提供することができる。また、ビア孔をレーザー光にて加工する際プラスチックフィルム側から照射することにより、プラスチックフィルムのビア孔周辺にチッピングが起こっても、プラスチックフィルムは後工程で捨てられるので、グリーンシートには何等不都合は無い。よって、本構成であればビア孔にレーザーが使用できるので生産性を著しく向上できるものである。さらに、多層基板用のグリーンシートは厚みが薄いので、プラスチックフィルムで保護する効果と、熱が加わる工程に於いても寸法変化が小さいので積層精度が向上でき、ビア接続の信頼性も向上する効果を有する本構成は、大変有効なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の第1の実施例に於けるグリーンシートとプラスチックフィルムの複合体の断面図
【図2】
同実施例を使用したセラミック回路基板の一工程における複合体の断面図
【図3】
同実施例を使用したセラミック回路基板の他の製造工程における複合体の断面図
【図4】
同実施例を使用したセラミック回路基板のさらに他の製造工程を示す複合体の断面図
【図5】
同実施例を使用したセラミック回路基板のさらに他の製造工程を示す複合体の断面図
【図6】
従来のセラミック回路基板の一製造工程におけるグリーンシートの斜視図
【図7】
従来のセラミック回路基板の他の製造工程におけるグリーンシートの断面図
【図8】
従来のセラミック回路基板の他の製造工程におけるグリーンシートの断面図
【符号の説明】
1 グリーンシート
2 位置決め孔
3 ビア孔
4 フレーム
5 プラスチックフィルム
6 ビア孔
7a ビア導体
7b 導体パターン
8 レーザー光
9 チッピング
10 加工機
11 ランドレスビア
12 ビアランド
 
訂正の要旨 特許第3003241号の明細書を以下のとおりに訂正する。
(特許請求の範囲)
a 請求項1の「フィルムであり、」と「前記プラスチックフィルム」との間に特許請求の範囲の減縮を目的として「グリーンシートのビア孔の孔あけ加工の工程が、グリーンシートの片側の面に、プラスチックフィルムが配置された状態で、プラスチックフィルム側より行われ、」を挿入する。
b 請求項2の「組成物であり、」と「前記プラスチックフィルム」との間に特許請求の範囲の減縮を目的として「グリーンシートのビア孔の孔あけ加工の工程が、グリーンシートの片側の面に、プラスチックフィルムが配置された状態で、プラッチックフィルム側より行われ、」を挿入する。
c 請求項3の「グリーンシートのビア孔の孔あけ加工の工程が、グリーンシートの片側の面に、プラスチックフィルムが配置された状態で、プラスチックフィルム側より行われる」部分の代わりに、請求項4の構成を減縮して繰り上げることを目的として「ビア孔にビア導体を充填する工程が、グリーンシートの片側の面に、プラスチックフィルムが配置された状態で、そのプラスチックフィルム上に、前記ビア孔に対向する位置にビア孔より若干大なる透孔の形成されたマスクを載置して、そのマスク側より充填する」を挿入する。
d 請求項4は、もとの請求項5を繰り上げたものである。
e 請求項5の配線パターンを形成する工程と、プラスチックフィルムが配置された状態の構成を、特許請求の範囲の減縮を目的として「プラスチック上にグリーンシートを形成する工程、ビア孔を形成する工程、ビア孔にビア導体を充填する工程、グリーンシート上に配線パターンを形成する工程が、プラスチックフィルム及びグリーンシートをロール上に巻き取りながら」と訂正する。
(発明の詳細な説明)
f 明細書段落番号【0006】中の記載について、特許請求の範囲との整合をはかるためのもので不明瞭な記載の釈明を目的とし、上記aと同じ趣旨の訂正をする。
異議決定日 2001-05-31 
出願番号 特願平3-49515
審決分類 P 1 651・ 161- ZD (H05K)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 鴨野 研一加藤 志麻子  
特許庁審判長 蓑輪 安夫
特許庁審判官 鈴木 法明
井口 嘉和
登録日 1999-11-19 
登録番号 特許第3003241号(P3003241)
権利者 松下電器産業株式会社
発明の名称 グリーンシートとプラスチックフィルムの複合体  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 岩橋 文雄  

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