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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効としない A61M
管理番号 1050706
審判番号 無効2000-35230  
総通号数 26 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1987-09-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-04-27 
確定日 2001-10-16 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第2113284号発明「散薬吸入器用装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
(1)本件特許第2113284号に係る発明についての出願は、昭和62年3月6日(パリ条約による優先権主張1986年3月7日、スウェーデン国)に特許出願されたものであって、平成8年3月13日に特公平8-24715号として出願公告がなされ、平成8年11月21日に本件特許の設定登録がなされたものである。
(2)これに対して、請求人は、本件特許発明は、本件出願前に頒布された刊行物である甲第1号証乃至甲第4号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、したがって、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであると主張している。
(3)被請求人は、平成12年12月14日に訂正請求書を提出して訂正を求めた。当該訂正の内容は、本件特許明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに、即ち、以下のa)乃至c)のとおりに訂正しようとするものである。
a)特許請求の範囲の請求項1において、
「導風板装置(13,15,16)が設けられ」を、
「湾曲形状を有する導風板装置(13,15,16)が設けられ、この導風板装置により螺旋形状通路部分が形成され」と訂正する。
b)特許請求の範囲の請求項1において、
「空気の流れに効果的な偏向運動を付与するように配設されている」 を、
「空気の流れに効果的な回転運動を付与することにより、前記化合物を構成する散薬集合体を互いに衝突させ、さらに該散薬集合体と該導風板装置を衝突させて、該散薬集合体が呼吸可能な範囲の大きさに粉砕される」 と訂正する。
c)特許請求の範囲の請求項3において、
「空気の流れを効果的に偏向させる」を、
「空気の流れに効果的な回転運動を付与する」と訂正する。

2.訂正の適否に対する判断
(1)これらの訂正事項について検討すると、
上記a)の訂正は、特許請求の範囲の請求項1の「導風板装置」が、「湾曲形状を有する」こと、及び、導風板装置により「螺旋形状通路部分が形成され」ることを追加限定するためのものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、この訂正は、特公平8-24715号公報のコラム4の34行乃至35行の「螺旋形状の通路部分を含むような導風板装置」なる記載、及び、同コラム7の25行の「湾曲した面」なる記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされる訂正である。
次に、上記b)の訂正は、特許請求の範囲の請求項1の「空気の流れに効果的な偏向運動を付与するように配設されている」において、「偏向運動」を「回転運動」に特定すると共に、この回転運動に起因して、「化合物を構成する散薬集合体を互いに衝突させ、さらに散薬集合体と導風板装置を衝突させて、散薬集合体が呼吸可能な範囲の大きさに粉砕される」ことを追加限定するためのものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、この訂正は、同コラム4の32行乃至33行の「効果的な偏向運動好ましくは回転運動をひき起こす」なる記載、同コラム4の27行乃至28行の「散薬の集合体を呼吸可能範囲内にある微粒子に効果的に粉砕させる」なる記載、及び、同コラム4の36行乃至42行の「微粒子は一方では遠心力によって導風板装置の壁に激しく衝突させられて、それによって大きい微粒子もしくは微粒子の重合体が小さい微粒子に粉砕され、他方では微粒子が互いに衝突し合いその結果微粒子と微粒子との間に相互粉砕作用を生ぜしめる。その全体的な結果として、大量の微粒子が呼吸可能範囲内に形成されることになる。」との記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされる訂正である。
更に、上記c)の訂正は、特許請求の範囲の請求項3の「空気の流れを効果的に偏向させる」において、「偏向させる」を「回転運動を付与する」とのより具体的な内容に限定するためのものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、この訂正は、同コラム4の32行乃至33行の「効果的な偏向運動好ましくは回転運動をひき起こす」の記載に基づく訂正であるから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされる訂正である。
そして、上記いずれの訂正も、散薬吸入器用装置において、吸入期間中に且つ可動部品の助けなしに、その散薬の集合体を呼吸可能範囲内にある微粒子に効果的に粉砕させることを達成するという課題に変更を及ぼすものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。
(2)したがって、平成12年4月27日付けの訂正は、平成6年法改正前の特許法第134条第2項ただし書の規定及び同条第5項において準用する同法第126条第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.本件特許発明に対する判断
(1)本件特許発明
本件特許発明の要旨は、訂正明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「微塵にされるかもしくは微粉にされた形態の薬理学上活性のある化合物が含まれている空気の流れを吸入するために、ノズル穴(2a)を備えたノズルユニット(2)とさらにまた前記活性化合物を送付するための放出すなわち投薬ユニット(6)を備えた容器ユニット(3)とを含み、吸入によって作り出された前記空気の流れは少なくともその一部分が前記容器ユニット(3)内の空気導管(7)を通って吸い込まれ、且つ該空気導管は周囲環境を連通している空気導入口(8)から前記放出すなわち投薬ユニット(6)を通って前記ノズルユニット(2)にまで延びるように計画された種類の散薬吸入器用装置において、容器ユニット(3)そして/またはノズルユニット(2)内に静止状態に固定された湾曲形状を有する導風板装置(13,15,16)が設けられ、この導風板装置により螺旋形状通路部分が形成され、該導風板装置が吸入によって作り出された空気の流れに効果的な回転運動を付与することにより、前記化合物を構成する散薬集合体を互いに衝突させ、さらに該散薬集合体と該導風板装置を衝突させて、該散薬集合体が呼吸可能な範囲の大きさに粉砕されることを特徴とする、散薬吸入器用装置。」
(2)甲号証
a)請求人の提出した甲第1号証(特開昭58-19269号公報)には、投与薬剤吸入器に関するものであって、
公報第1頁左下欄特許請求の範囲の請求項1に、「ノズル2と、空気導管6と、活性化合物貯蔵室5および投与装置8を備えた投与ユニット10と、操作ユニット1とを備えた、吸入の際に生じた空気の流れにより作動せしめられかつ微粉化された形態の固体の薬理学的に活性の化合物を吸入させるために意図された粉末吸入器」、
同第3頁右下欄2〜5行に、「形成される可能性がある活性化合物の集塊粒子を崩壊させるために意図された回転装置3を設けることができるノズル2」、
同第3頁右下欄16行〜第4頁左上欄3行に、「投与ユニット10は活性化合物貯蔵室5と、穿孔された膜4と、穿孔された膜のホルダ9と、活性化合物を穿孔された膜4の孔の中に導入するための・・・投与装置8とを備えている。」、
同第4頁左上欄16行〜右上欄3行に、「穿孔された膜4の孔の中への活性化合物の導入は・・・貯蔵室5の中のホルダ17に装着された弾性のばね負荷されたスクレーパ15からなる機械的な装置8によって行われる」、
同第4頁右下欄15行〜第5頁左上欄3行に、「空気導管6が操作ユニット1を通して延びている。ノズル2を通して吸入するときに、空気の流れがノズル2の側部に配置された空気導入口7の一部分を通過しかつ空気導管6の一部分を通過する。空気導管6の中の空気は操作ユニット1の開口部14を通過する。」、
とそれぞれ記載され、
FIG.1には、投与薬剤吸入器の断面図が、FIG.2には、貯蔵室中のスクレーパ15と膜4との関連構造が、それぞれ示されている。
b)同甲第2号証(米国特許第2604094号明細書)には、粉末状吸入薬を使用する吸入器に関するものであって、
第1欄48行〜第2欄49行に、「我々の発明の詳細な説明のために図面を参照して、参照番号5は、断面が実質的に円形であり、および据え置かれた時、吸入器に安定性を与える突出部6と縮径部7を備える容器を示す。縮径部の外側表面は、それによって容器が最初は所定位置に閉鎖される閉鎖部材を保つために採用されているネジ8が設けられている。
容器の内側のベース部分に、粉末状薬の一服の受け入れ用に適応された、実質的に半球形の凹部9が形成されている。肩部11が凹部9の周囲に形成され、その肩部はスロットすなわち前記凹部にその周辺への接線で通じる通路12が設けられている。容器の内壁は、内部リブすなわち突起13が設けられている。
実質的に円筒形状の口または鼻コンタクトチューブ14が、容器5に受け入れられおよび肩部11に着座するように適応され、並びに前記容器の内壁からリブ13によって離隔されている。コンタクトチューブを容器の内壁から離隔することにより、前記容器に空気を供給する空気通路が形成される。
15に示されるように、前記コンタクトチューブの上端は鼻孔または口の中へのその挿入を容易にするために円錐形であり、および先端に開口部16が設けられている。コンタクトチューブ14の胴体は内部螺旋リブ17が設けられ、その螺旋形は空気流の方向と一致しており、それについては以下により詳細に記述する。
(中略)
使用に当たって、粉末状薬の一服は容器5の凹部9に置かれる。使用者の口または鼻によって開口部16に吸引が行われると、空気は、コンタクトチューブ14の外側表面と容器5の縮径部7の内壁間に形成された空間18を通じて引き込まれる。この空気はスロット12を通り凹部9に入り、こうして如何なるベンチュリ効果の発生も防止する。そこで捕らえられた若干の粉末を含む空気は容器からコンタクトチューブ14胴体へ、およびそれを通して通過する。その螺旋形が上述したように開口部16に向かって空気流の方向と一致する前記チューブの螺旋リブは、空気流および粉末を比較的迅速な割合で曲がりくねった経路に従わせ、その結果、粉末の如何なる大きな粒子または集塊も、その渦巻きが調節部として作用する螺旋リブ17の幾つかの渦巻きに向かって衝突することにより、破壊または打ち砕かれる。」旨記載され(請求人の提出した「甲第2号証の翻訳」参照)、
FIG.3には、チューブ14の内径に対して半径方向に僅かに突出している螺旋リブ17を有する吸入器の垂直断面図が、FIG.4には、空気が半径方向に対して傾斜して設けられたスロット12を通り凹部9に入り込むようにした容器5の水平断面図が、それぞれ示されている。
c)同甲第3号証(米国特許第1431177号明細書)には、吸入装置に関するものであって、
第1頁右欄72〜90行に、「そこを通過する空気は全力で鼻孔に引き込まれずに或る度合いに阻止され、従って患部と穏やかにそして鎮静し乍ら接触するように、部分13および14のチャンネル内にその反対する側から突出し、前記部材を通して蛇行通路を形成する交互に配置された一連のバッフル17が設けられている。
薬を飽和させた吸収性綿、または他の適当な材料の詰め物が、コンパートメント11および12に挿入され、および20におけるような開口部の僅かな縮小によってその中に安全に保持され、前記縮小は一方の端部でコンパートメントに拘束部を形成し、一方最下部のバッフル17は他方の端部で飽和綿を閉じ込める拘束部を形成する。」旨記載されている(請求人の提出した「甲第3号証の翻訳」参照)。
d)同甲第4号証(特開昭57-110260号公報)には、噴霧器に関するものであって、
公報第3頁左上欄第16〜17行には、「本発明による噴霧器の図示した、吸入器として構成した実施例においては」、
同第3頁右上欄第14〜19行には、「霧11は噴霧器ケーシング1と吸引路9との間に形成された環状路12中で転向面13に沿って排出短管14へ向かって流れ、そこで直接または短管に接続した吸い口より患者に供給することができる。」、
とそれぞれ記載され、
FIG.1には、噴霧器の断面図が示されている。
(3)対比・判断
本件特許発明と上記甲各号証に記載のものとを比較すると、上記甲各号証に記載のものには、少なくとも本件特許発明の必須の構成要件である、「容器ユニットまたはノズルユニット内に静止状態に固定された湾曲形状を有する導風板装置が設けられ、この導風板装置により螺旋形状通路部分が形成され」る構成を備えておらず、また、上記甲各号証には、かかる構成を示唆する記載も見あたらない。そして、本件特許発明は、かかる構成により、「吸入によって作り出された空気の流れに効果的な回転運動を付与することにより、化合物を構成する散薬集合体を互いに衝突させ、さらに該散薬集合体と導風板装置を衝突させて、該散薬集合体が呼吸可能な範囲の大きさに粉砕される」という明細書に記載の効果を奏するものである。
確かに、甲第1号証に記載の投与薬剤吸入器は、基本構成では本件特許発明の散薬吸入器用装置と共通しているものの、特徴的構成である活性化合物の散薬集合体を崩壊させる手段として、可動部品である回転装置を用いている点において、静止状態に固定された湾曲形状を有する導風板装置を用いた本件特許発明とは、課題解決手段の構成を全く異にするものである。
また、甲第2号証に記載のものは、吸入の際に生じた空気の流れにより粉末薬剤を吸入するための粉末吸入器において、散薬集合体を破壊または打ち砕くための手段として、螺旋リブを用いたものではあるが、該螺旋リブはチューブの内壁に僅かに突出しているだけのものである(FIG.3参照)ところから、半径方向に対して傾斜して設けられたスロット12を介して入り込む空気の流れと相まって初めて所期の目的を達成しうるものと考えられる。
そうすると、仮に、甲第1号証に記載の投与薬剤吸入器において、回転装置に替えて甲第2号証に記載の螺旋リブを用いたとしても、半径方向に対して傾斜して入り込む空気の流れを生じさせる手段が存在しないものである以上、ノズルユニットを通過する薬剤を含む空気の流れの大半は、螺旋リブに衝突することなく、チューブの中央の空洞部分を通って、開ロ部からそのまま吸入されるものであり、散薬集合体を呼吸可能な範囲の大きさに粉砕できるという効果は期待できないものと云わざるをえない。
したがって、甲第1号証に記載の投与薬剤吸入器に甲第2号証に記載の螺旋リブを単に組み合わせても、本件特許発明に至らないことは明らかである。
また、甲第3号証に記載のものは、吸入の際に生じた空気の流れにより薬剤を吸入するための吸入器において、蛇行通路を形成する交互に配置された一連のバッフルを備えたものであるが、このものは、吸収性綿またはその他の適当な材料に飽和させた薬剤、即ち、液相状の気化可能な薬、を空気の流れにより吸入する吸入装置であって、該バッフルの作用も空気の流れる速度を緩めるためのものであるから、本件特許発明の導風板装置とは構造・形状及び使用目的が全く異なるものである。
さらに、甲第4号証に記載のものは、空気の流れと共に薬剤を吸入するための噴霧器(吸入器)において、環状路に転向面を備えたものであるが、このものは、既に均一に霧化された医薬を、単に環状路の転向面に沿って流すだけのものであり、本件特許発明における散薬集合体を呼吸可能な範囲の大きさに粉砕するための導風板装置とは、機能を全く異にするものである。
したがって、甲第4号証に記載の転向面を甲第1号証に記載の投与薬剤吸入器における回転装置に替えて使用するための必然性は何等存在せず、これらのものから本件特許発明が容易に想到できたとすることはできない。
そうすると、本件特許発明が、上記甲各号証に記載されているとも、上記甲各号証に記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることもできない。
(4)むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件発明の特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定を適用する。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
散薬吸入器用装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 微塵にされるかもしくは微粉にされた形態の薬理学上活性のある化合物が含まれている空気の流れを吸入するために、ノズル穴(2a)を備えたノズルユニット(2)とさらにまた前記活性化合物を送付するための放出すなわち投薬ユニット(6)を備えた容器ユニット(3)とを含み、吸入によつて作り出された前記空気の流れは少なくともその一部分が前記容器ユニット(3)内の空気導管(7)を通つて吸い込まれ、且つ該空気導管は周囲環境を連通している空気導入口(8)から前記放出すなわち投薬ユニット(6)を通つて前記ノズルユニット(2)にまで延びるように計画された種類の散薬吸入器用装置において、容器ユニット(3)そして/またはノズルユニット(2)内に静止状態に固定された湾曲形状を有する導風板装置(13,15,16)が設けられ、この導風板装置により螺旋形状通路部分が形成され、該導風板装置が吸入によつて作り出された空気の流れに効果的な回転運動を付与することにより、前記化合物を構成する散薬集合体を互いに衝突させ、さらに該散薬集合体と該導風板装置を衝突させて、該散薬集合体が呼吸可能な範囲の大きさに粉砕されることを特徴とする、散薬吸入器用装置。
【請求項2】前記導風板装置(13,15,16)が吸入によつて作り出された空気の流れに回転運動を付与するように配設されていることを特徴とする、特許請求の範囲第1項に記載の装置。
【請求項3】吸入によつて作り出された空気の流れの中に希釈空気を吸い込むために、前記容器ユニット(3)もしくはノズルユニット(2)内で前記投薬ユニット(6)と前記ノズル穴(2a)との間に少なくとも1つの追加の空気導入口(14,14´)が設けられた前記散薬吸入器用装置において、前記導風板装置(15,16)が前記空気導管(7)の領域において前記希釈空気の流れそして/または微粒子を充満した空気の流れに効果的な回転運動を付与するように配設されていることを特徴とする、特許請求の範囲第1項または第2項に記載の装置。
【請求項4】前記導風板装置が少なくとも1つの本質的に螺旋形状に形成された通路部分(13,15,16)を含むことを特徴とする、特許請求の範囲第1項ないし第3項のいずれか1つに記載の装置。
【請求項5】前記ノズル穴(2a)に接続される少なくとも1つの螺旋形状通路部分(13)が前記ノズルユニツト(2)内に配設されていることを特徴とする、特許請求の範囲第4項に記載の装置。
【請求項6】前記ノズルユニツト(2)に接続される少なくとも1つの螺旋形状通路部分が前記空気導管(7)の領域に配設されていることを特徴とする、特許請求の範囲第4項または第5項に記載の装置。
【請求項7】前記容器ユニツト(3)に隣接するノズルユニツト(2)の少なくとも一部分が吸入によつて作り出された空気が通過する自由内部室(9)を構成していることを特徴とする、特許請求の範囲第5項または第6項に記載の装置。
【請求項8】前記追加の空気導入口(14´)が容器ユニツト(3)内に配置され、且つ該追加の空気導入口(14´)が前記空気導管(7)もしくは前記ノズルユニツト(2)に終る別の螺旋形状通路部分(16)に接続されていることを特徴とする、特許請求の範囲第3項と組合わせた特許請求の範囲第1項ないし第7項のいずれか1つに記載の装置。
【請求項9】前記別の螺旋形状通路部分(16)が前記空気導管(7)を取り囲む1つの包囲面に配設されていることを特徴とする、特許請求の範囲第8項に記載の装置。
【請求項10】前記それぞれの螺旋形状通路部分(13,15,16)の横断面積が5mm2ないし50mm2であり、且つ該螺旋形状通路部分の全長が5mmないし50mmであることを特徴とする、特許請求の範囲第4項ないし第9項のいずれか1つに記載の散薬吸入器。
【発明の詳細な説明】
本発明は、患者の呼吸系及び肺臓へ薬剤の局所投与をするために使用されるように計画された、散薬吸入器用装置に関する。
散薬吸入器には種々の形式のものがある。例えば、硬質ゼラチンカプセルであつて該カプセルから薬理学上活性のある化合物が吸入期間中吸入器を通して放出されるカプセルを使つて作動する形式のもの、更に特別の投薬ユニツトによつて薬理学上活性のある化合物が直接に空気導管内へ投薬されて該化合物が吸入期間中吸入器を通して患者に投与される形式のものがある。
このような吸入器において使用される物質はすべて微塵にされる(atomized)か微粉にされる(micronized)ので、その物質の主要分級物は、呼吸可能範囲と称される微粒子範囲、すなわち5μmよりも小さい微粒子の範囲内にある。このことは、純粋な活性化合物を使つて作動する吸入器にも、また活性化合物が例えばラクトースとかスクラーゼなどのような適切な希釈剤と混合されるような吸入器にも、両者共に適用されるのである。
活性化合物は、キヤリヤー物質がないかもしくはキヤリヤー物質と適当に一緒にされているときでも、硬質ゼラチンカプセル内に封入されるか、もしくは吸入器の貯蔵ユニツトであつて散薬吸入器内に組み込まれている適切な投薬ユニツトに結合されている貯蔵ユニツト内に直接に封入されている。物質が、その硬質ゼラチンカプセルからかもしくはその投薬ユニツトから、散薬吸入器の空気導管中への放出されるべき際、呼吸系の疾患に苦しんでいる患者によつて作り出すことのできる流れにおいては、主要な微粒子の最大可能量が呼吸可能範囲すなわち5μmよりも小さい範囲で得られることが不可欠である。治療効果を達成するためには、5μmよりも小さい微粒子の充分な量は、米国特許出願第4,524,769号による微粒子粉砕構造によつて得ることができる。この微粒子粉砕構造においては、ノズルユニツトの構造が吸入空気の流れ速度を増大せしめ且つ1つの推進器が呼吸可能範囲内にある微粒子の量を増加させることに寄与している。しかしながらこの構造は、そのノズルユニツトに可動部品が使用されることを含んでいる。
本発明の目的は、この様な背景に対応して、特許請求の範囲第1項の前提要件記載部分に述べられているような知られた種類の散薬吸入器用装置において、吸入期間中に且つ可動部品の助けなしに、その散薬の集合体を呼吸可能範囲内にある微粒子に効果的に粉砕させることを達成せしめるようにした装置を完成することである。
この目的は、本発明によれば、容器そして/またはノズルユニツト内に静止状態に固定された導風板装置(deflector devices)であつて、効果的な偏向運動好ましくは回転運動をひき起こすように配設されている導風板装置であつて、例えば1つまたはそれ以上の螺旋形状の通路部分を含むような導風板装置によつて達成される。
このような偏向運動中に、微粒子は一方では遠心力によつて導風板装置の壁に激しく衝突させられて、それによつて大きい微粒子もしくは微粒子の重合体が小さい微粒子に粉砕され、他方では微粒子が互いに衝突し合いその結果微粒子と微粒子との間に相互粉砕作用を生ぜしめる。その全体的な結果として、大量の微粒子が呼吸可能範囲内に形成されることになる。
導風板装置は多くの異なる態様で配設することができ、特に特許請求の範囲の記載及び以下の詳細な説明の記載からも明らかであるような、螺旋形状の通路部分の形をした態様に配設することができる。
本発明が以下に、若干の実施態様を図解せる添付図面を参照して、非常に詳細に記載される。
第1図ないし第5図に図解された散薬吸入器はすべて、投薬吸入器と名付けられている知られた形式のもの(米国特許出願第4524769号参照)であり、その頂部に配置されているノズル穴2aを備えたノズルユニツト2と、活性化合物用貯蔵室4を備えた容器ユニツト3(該活性化合物は第1図、第4図及び第5図のみに図示されているプラグ5によつて密封された上部開口部を通して再充填することができる)と、活性化合物の一回の投薬量を空気導管7に送付するための投薬ユニツト6とを含んでいる。この空気導管7は、底部の空気導入口8から延び、吸入によつて作り出される空気流れに活性化合物が放出される投薬ユニツト6を通り越して、自由内部室9を含むノズルユニツト2の下側部分に終端している(第2図と第4図とによる実施態様)では、室9がノズルユニツト2の内部の全空間を占めている)。
同様に知られた投薬ユニツト6は、本質的に平面形状をなす多孔回転膜10を含んでいて、その回転膜はそれの多孔部が貯蔵室4と接続していて弾力性を持つたスクレーパ11によつて散薬物質で充満されるようになつており、且つ該膜の多孔部を貫通して通過する吸入によつて作られた空気の流れの作用を受けてその散薬物質が空気導管7の中へ放出されるようになつている。この投薬ユニツト6は外側に多少のローレツトを施した握りつば12によつて操作され、握りつば12は回転運動を伝達するために回転膜10に連結されている。それ故、投薬は握りつば12によつて定められた距離だけ膜10を回転させることによつて達成される。
本発明によれば、導風板装置がノズルユニツト2そして/または容器ユニツト3の中に配設され、且つ吸入によつて作り出される散薬を充分に含んだ空気の流れを効果的に偏向させるようになつている。
図解された実施態様においては、導風板装置は空気の流れに回転する螺旋状形式の運動を与えるための螺旋形状の通路部分を含んでいる。上述したように、これが部分的にその偏向している壁面に微粒子を衝突させることによつて、また部分的に微粒子を相互に衝突させることによつて、効果的な粉砕を生ぜしめる。
第1図によれば、螺旋形状の通路部分13がノズル穴2aに隣接してノズルユニツト2の頂部に配設されている。螺旋形状の通路部分13は、ノズルユニツト2の取外し可能なライナ本体の中に配設することができ、且つ相互に半回転を転置されている2個の相互に作用し合う螺旋形状の通路壁13a,13bを含んでいる。更に、その螺旋形状の通路壁の中心線に沿つて1つの小さな垂直方向の中空空間が形成され、該中空空間は少なくとも初期の段階では流動抵抗を減ずるがしかし全体の流れの僅かの部分のみを導くにすぎない。従つて、空気が空気導入口8へと吸い込まれると、空気の流れは投薬ユニツト6において物質の微粒子を浮遊させられて運ばれ、その後その微粒子で充満された空気の流れがノズルユニツトの室9に入り、その室で空気の流れは、ノズルユニツト2の側壁に容器ユニツト3の頂部端と近接して設けられた1つまたはそれ以上の別の空気導入口14を通つて吸い込まれる希釈空気と、混合される。続いて、その混合された微粒子の充満した空気の流れは、その流れがノズル穴2aを立去る前に、それぞれの螺旋形状の通路壁13a,13bに沿つて、螺旋形状の道筋を辿つて流れるように強制される。
第2図による実施態様においては、流れはノズルユニツト2の内部室9においては全く自由に進行するが、その空気の流れはそれまでに、空気導管7の上部において、相互に半回転を転置されている螺旋形状の通路壁15a,15bを備えた同種の螺旋形状の通路部分15を通り過ぎることによつて、螺旋回転を起こしてしまつている。この場合には、希釈空気は投薬ユニツト6の幾分上の方の容器ユニツト3の中央部分に配置された1つまたはそれ以上の空気導入口14´を通つて吸い込まれる。すなわち希釈は、空気の流れが効果的な回転を起こす前に行なわれなければならない。この回転運動は、少なくとも空気の流れがノズル穴2aを立去る前のノズルユニツト2の上の方までの短かい距離の間は、乱流として継続される。
第3図による実施態様は、本質的には、第1図と第2図との実施態様を組み合わせて構成される。すなわち、螺旋形状通路部分13もしくは15は、ノズルユニツトの上部にも空気導管7の上部にも共に配設されていて、希釈空気の導入口は第1図に示されたような位置(第3図において破線矢印Bで示す位置)かまたは第2図に示されたような位置(第3図において実線矢印Aで示す位置)のいずれかに配置される。第3図によれば回転の方向は螺旋形状通路部分13,15の両方共に同じであり、従つてそれらは互いに協働し合つてより高い回転速度を達成しうる。原則としては、これら2つの部分を一緒に連結させて、長い連続した螺旋形状通路部分を形成することが可能である。また代案として、2つの螺旋形状通路部分13,15に反対の回転方向を持たせるようにして、空気の流れをその回転方向を逆にして室9内に乱流を引き起こさせるように、意図的に狙うこともできる。この様な乱流はまた、頻繁に起こる相互の衝突によつて、散薬集合体の効果的な粉砕を達成することができる。
第4図及び第5図による実施態様においては、希釈空気は空気導入口14´(第2図に示したのと同様に投薬ユニツト6の幾分上方に配置されている)から、空気導管7の上部を取り囲んでいる螺旋形状の通路壁を備えた包囲面16を通つて吸い込まれる。従つて、微粒子を充満した空気の流れと希釈空気の流れとは、両空気の流れ共に(同方向もしくは逆方向の)回転を起こしているけれども、別々に室9内へ入る。第5図による実施態様では、ノズルユニツト2の螺旋形状通路部分13において追加の回転運動が達成される。原則としては、第4図及び第5図による実施態様において、空気導管7の上部にある螺旋形状通路部分15を省略することが考えられるが、この場合には、希釈空気の回転運動が室9内において微粒子を充満した空気の流れに作用することになる。空気導管7の上部の包囲面16に螺旋形状通路部分を設けることもまた可能である。
上述したような、通路壁や他の微粒子やその集合体との、微粒子及びその集合体の衝突の効果に加えて、(第1図ないし第5図における)種種の螺旋形状通路部分13,15,16が空気の流れ速度を増加させる収縮効果を備えると、それによつて更に粉砕が促進される。しかしながら、その収縮効果、すなわち螺旋形状通路部分の横断面積の収縮効果は、呼吸系の疾患例えば喘息を持つような患者に対しては、その吸込抵抗を余り大きくすることを避けるように、調節されねばならない。一般に、全横断面積は5mm2と50mm2との間で変更することができるのに対して、螺旋形状通路部分の全長は5mmないし50mmに達するようにすることができる。
本発明は特許請求の範囲内に記載の多くの態様で適用することができる。それ故、導風板装置は(特許請求の範囲第1項の前提要件記載部分による)散薬吸入器の種々の形式のものに配置することができ、且つ更に導風板装置は実施態様におけるとは違つた態様で設計することができる。まず第一に、これら導風板装置は回転もしくは螺旋形状の流れを特に作り出す必要はなく、他の効果的な偏向流れの進路例えばラビリンス形式の流れ進路もしくは曲折形流れ進路のような進路もまた可能である。同じ様に、通路の壁は連続的な案内面を形成している必要はなく、複数個の平板もしくは僅かに湾曲した面を持つ物体の形をした前後のつながりがあつて相補的な案内面であり、それらが一緒になつて空気の流れの効果的な偏向を達成するような案内面からも構成することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は散薬吸入器のノズルユニツト内に1つの螺旋形状の通路部分を備えた本発明による装置の第1の実施態様の軸方向断面図、第2図は散薬吸入器の容器ユニツト内に1つの螺旋形状の通路部分を備えた第2の実施態様の軸方向断面図、第3図はノズルユニツト内と容器ユニツト内との両方に螺旋形状の通路部分を備えた第3の実施態様の軸方向断面図、第4図は容器ユニツト内に二重の螺旋形状の通路部分を備えた第4の実施態様の軸方向断面図、第5図は容器ユニツト内に二重の螺旋形状の通路部分を備え且つノズルユニツト内に1つの螺旋形状の通路部分を備えた第5の実施態様の軸方向断面図である。
2……ノズルユニツト、2a……ノズル穴、3……容器ユニツト、4……貯蔵室、5……プラグ、6……投薬ユニツト、7……空気導管、8,14,14´……空気導入口、9……自由内部室、10……多孔回転膜、11……弾力性スクレーパ、12……握りつば、13,15……導風板装置、すなわち螺旋形状通路部分、13a,13b,15a,15b……螺旋形状通路壁、16……包囲面。
 
訂正の要旨 訂正の要旨
(1)訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1において、
「導風板装置(13,15,16)が設けられ」を、
「湾曲形状を有する導風板装置(13,15,16)が設けられ、この導風板装置により螺旋形状通路部分が形成され」と訂正する。
(2)訂正事項b
特許請求の範囲の請求項1において、
「空気の流れに効果的な偏向運動を付与するように配設されている」を、
「空気の流れに効果的な回転運動を付与することにより、前記化合物を構成する散薬集合体を互いに衝突させ、さらに該散薬集合体と該導風板装置を衝突させて、該散薬集合体が呼吸可能な範囲の大きさに粉砕される」と訂正する。
(3)訂正事項c
特許請求の範囲の請求項3において、
「空気の流れを効果的に偏向させる」を、
「空気の流れに効果的な回転運動を付与する」と訂正する。
審理終結日 2001-05-14 
結審通知日 2001-05-25 
審決日 2001-06-05 
出願番号 特願昭62-50419
審決分類 P 1 112・ 121- YA (A61M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 冨士 美香  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 岡田 和加子
和泉 等
登録日 1996-11-21 
登録番号 特許第2113284号(P2113284)
発明の名称 散薬吸入器用装置  
代理人 岩崎 光隆  
代理人 青山 葆  
代理人 青山 葆  
代理人 植木 久一  
代理人 樋口 次郎  
代理人 小谷 悦司  
代理人 岩崎 光隆  

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