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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65F
管理番号 1050736
審判番号 不服2000-14382  
総通号数 26 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-11-18 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-08-03 
確定日 2001-12-07 
事件の表示 平成 8年特許願第135830号「生ゴミ分解処理装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 9年11月18日出願公開、特開平 9-295703]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1. 本件は、平成8年5月2日の出願に係り(特願平8-135830号)、原審における拒絶の査定を機に、その査定の取消と本件出願に係る発明につき、特許を受けるべきことを請求して提起された査定不服の審判請求事件に存する。

2. 本件出願の特許を受けようとする発明は、平成12年5月8日付け手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲に記載された以下のとおりのものである。
「【請求項1】 ケーシング内に複数の土壌菌を配合した菌床を入れ、この菌床と生ゴミを攪拌混合することにより前記複数の土壌菌によって生ゴミを分解する生ゴミ分解処理装置において、前記菌床を多孔性無機物によって構成したことを特徴とする生ゴミ分解装置。」

3. [引用刊行物]
1). 原査定の拒絶の理由として引用された「特開平6-172073号公報」(以下、「第1引用例」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。
イ) 「【0006】
【実施例】実施例について図面を参照して説明する。図1〜図3において、上部を開口1したの有底の容器2の内周に約5cmの厚みの間隙部3を保有するように金網のような多孔性筒4を配置してある。多孔性筒4は上部及び下部を開口してあると共にこの多孔性筒4の高さは前記容器2の高さより約23cm程度低くしてある。容器2の内周と多孔性筒4との間隙部3には生ゴミのような各種の有機性廃棄物を分解する後述の複数の醗酵性微生物(菌体)を木粉(オガコ)5とオカラ6を等量づつを混合してなる多孔有機性充填材7を充填し、多孔有機性充填材7の含水率を20%に調整し、複数の醗酵性微生物(菌体)の生存環境を整えてある。更に前記多孔性筒4の底部に前記と同様の複数の醗酵性微生物(菌体)を約20cmの厚みとなるように敷きつめてある。
【0007】醗酵性微生物(菌体)は次のような菌体を適宜に配合したものである。
(1)糖分を分解して炭酸ガスと水とし、アミラーゼを生成する細菌類
(2)蛋白質を分解して、アンモンニア、水、炭酸ガスとし、プロチド酵素群を分泌する細菌類
(3)脂肪を分解して炭酸ガスと水にするリパーゼ(脂肪分解酵素)を分泌する細菌類
(4)ヘミセルローズ、セルローズを分解し炭酸ガスと水にする放射菌及び糸状菌類
以上の各種菌類からなる複合性の醗酵性微生物(菌体)は良好な環境に置かれたとき、一般家庭から排出されるいかなる生ゴミはほぼ48時間でほぼ完全に分解することが出来る。完全分解した後の容量は当初の生ゴミ容量の約1/500である完全に分解醗酵した後は無機質化する。
【0008】多孔性筒4の頂部において蓋板8を配置するようにしてある。蓋板8はその中央部、即ち多孔性筒4の上方開口部に相当する部分には複数個の空気孔9を上向きに形成してある。外周部は平板10としてある。多孔性筒4の内部は生ゴミ醗酵槽11を形成する。なお、25は雨水取出口である。
生ゴミ醗酵槽11内部に通じる生ゴミ投入筒12を設けてあり且つ、生ゴミ投入筒の口部13は容器外部に筒蓋14によって開閉可能に設けてある。図1においては、生ゴミ投入筒12は斜向に配置して、生ゴミの投棄時に生ゴミが生ゴミ醗酵槽11に広範囲に散るように配慮してあるが、生ゴミ投入筒12を中央部に配置してもよい。
【0009】通常の場合、蓋板8の上部には腐葉土などの培養土15を20cm程度の厚みに敷き、その上で各種の草花或いは野菜等の植物16を植えられるようにしてある。なお、蓋板8の中央部の網目は培養土の粒子よりも細かくしてあるので、培養土が生ゴミ醗酵槽11の内部に落ちることはない。更に、プランターとして使用した場合、外気の寒さから保護するために育成植物を保護するために、容器2の周縁に支持された傘状の透明フードを設けることもある。
【0010】生ゴミ醗酵槽11の中央部に直立するように回転筒軸20を設けると共にこの回転筒軸20にスパイラル状攪拌羽根21を装着し、且つ一定間隔毎に温風排出口22を設けてある。回転筒軸20はその内側に固定保持筒23の外側を水平回転可能にしてある。固定保持筒23には更に縦列に一又は複数条の溝孔24が設けらており、固定保持筒21の下方に設けてあるフアンヒーター25により約30°C温風を固定保持筒23に送風すると、溝孔24を経て温風排出口22より生ゴミ醗酵槽11内に温風を供給することになる。使用に際しては、モーター27を作動して攪拌用スパイラル状攪拌羽根21及びフアンヒーター25等の作動を同時的に行う。実験の結果では一日に数回、一回の作動時間は約30分とするのが望ましい。なお、26はヒーターである。家庭から排出される生ゴミを生ゴミ投入筒から投入すると、その直後から一日数回醗酵槽内部を30分間攪拌用スパイラル状攪拌羽根21を回転させることによる内部の強制攪拌によって醗酵性微生物を含んだ多孔有機性充填材と生ゴミとを最大限に接触させると同時に内部に約30°Cの温風をフアンヒーター25から供給することによって微生物の分解活動を活発化させるような最適の環境を作ることが出来る。」(公報段落番号【0006】〜【0010】)
ロ) 「【0014】図4〜図5において、上部開口の熱伝導性の有底容器31の内部を醗酵槽32とすると共に、前記醗酵槽の底部には複数の醗酵性微生物を混入した多孔有機性充填材33を配置してある。多孔有機性充填材33は前記図1〜図2に関連して述べた多孔有機性充填材7と同じである。前記醗酵槽32の中央部縦方向にモーター40によって任意に回転する回転軸34を設け、該回転軸34の外周にスパイラル状攪拌羽根35を装着してある。前記有底容器の外周壁に電熱ヒーター36を捲回し、該電熱ヒーター36のオンオフによって、醗酵槽内部の温度を制御し得るようにしてある。電熱ヒーター36の外側には断熱材よりなる保温層44を設けてある。有底容器31の上部開口部37にプランター容器38を嵌合し得るようにしてある。従って、プランター容器38の口径は有底容器31の上部開口部37の口径より大きくしてある。プランター容器38には生ゴミ投入筒39を設けてある。生ゴミ投入筒39の内部は醗酵槽32の内部と通じている。なお、プランター容器38内には培養土41を入れ、各種の植物42を栽培することが出来る。なお、43は醗酵槽32の醗酵熱によって蒸発する水分をプランター容器38内に導入させるための通気孔である。
【0015】
【発明の効果】この発明は上述のように構成されているので、次に記載する効果を奏する。請求項1の小型家庭用生ゴミ処理装置では、上部開口の有底容器の内部を醗酵槽とすると共に、前記醗酵槽の底部に複数の醗酵性微生物を混入した多孔有機性充填材を配置すると共に、前記醗酵槽の中央部縦方向にモーターによって任意に回転する回転軸を設け、該回転軸の外周にスパイラル状攪拌羽根を備え且つ醗酵槽内部を加熱する熱源を作動させて、前記醗酵槽内部を適宜に加熱し得るような熱源を醗酵槽の外部に設けると共に生ゴミ投入筒を前記醗酵槽内に通じるように設けるようにしてあるので、一般家庭から排出される生ゴミはベランダ等に設置できる程に小型化でき、生ゴミ投入後は生ゴミ醗酵槽内の攪拌と温度上昇を同時的に作動させるようにしてあるので、醗酵性微生物の活動を自在にコントロールでき、家庭内に発生する生ゴミを迅速に処理することができる。」(公報段落番号【0014】〜【0015】)

2) 同じく原査定の拒絶の理由として引用された「特開平8-89931号公報」(以下、「第2引用例」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。
イ) 「【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来技術の問題点、特に微生物を利用する生ごみ処理機の問題点に鑑みてなされたもので、機体を小型化すること、大量のオガ屑等を使用することなく生ごみの分解処理を可能とすること等の目的を有する。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、生ごみを収容する容器と容器内で回転する回転翼を備え、容器内の生ごみを回転翼で攪拌しながら微生物の作用で分解処理する生ごみ処理機において、回転翼の下方に容器を上下に仕切るフィルターを設置するとともに、その下方に水を容器外に排出する開口を設けたことを特徴とする。また、本発明は、上記構成に加え、容器内のフィルターの下方に例えばポーラスなセラミック粒体からなる微生物固定層(従来例でいう着床材に相当)を設けたことを特徴とし、さらには、微生物固定層の一部又は全部が浸かる高さあるいはフィルターを越える高さまで容器内に水を貯溜する構造となっていることを特徴とする。容器内に水を貯溜する構造としては、例えばドレンパイプを逆U字形に曲げ、サイホン式に水をいったん上に持ち上げたのち下方に排出するようにするのが簡単である。
なお、フィルターをポーラスな素材で形成すれば、水と生ごみを分離する機能の他にフィルター自体が微生物固定層としての機能を持つようになる。また、容器を機体に対し着脱自在とすれば清掃が簡単となる。
【0009】
【作用】ホッパー内に生ごみを収容し、これに直接微生物を添加し攪拌すると、生ごみは微生物の作用で水(分解水)と二酸化炭素に分解され、分解水はフィルターを通過し続いて開口から容器外に排出され、二酸化炭素は容器の上方開口部から大気中に放散される。
【0010】ところで、フィルターを通過したばかりの分解水は生ごみの微細な固形分を多く含んで粘度が高く、容器底部に滞留して開口からきれいに流れにくいが、フィルターの下方に前記の通り微生物固定層を設けることで、分解水がその微生物固定層を通るうちにさらに高度に分解され、固形分が少なく粘度の低い汚穢感の少ない水として容器外に排出される。このとき、微生物固定層の一部又は全部が分解水に浸かるようにすることで、微生物固定層と前記分解水との接触時間が長くなり、より高度に分解した水が排出されるようになる。
(公報段落番号【0007】〜【0010】)
ロ) 「【0017】図3は、さらに別の実施例を示す。この実施例では、容器1の下部にモータ17が固定され、底部中央にモータ17の回転軸31が回転自在に挿通する軸受部材32が取り付けられ、軸受部材32の上端付近にフィルター5が配置され、軸受部材32から突出した回転軸31の先端部に攪拌翼2が取り付けられる。容器1の底面に形成された流下孔にはドレンホース33が取り付けられ、容器1内の水位をフィルター5より上の位置hに保つように、このドレンホース33はいったん上方に向かって延び再び下に向かうように逆U字形に形成され、分解水タンク11に対し開口している。また、フィルター5で仕切られた容器1の下部には微生物固定層としてのポーラスな粒体34が充填されている。
【0018】この実施例では、生ごみから出た分解水は、フィルター5を通過した後ポーラスな粒体34の間を通って下方に流れ、しかも容器1から流出するまでにかなり長い時間を必要とするので、この間に微生物により十分に分解され、粘度が低く固形分を殆ど含まない状態で分解水タンク11に流下する。一方、分解水は容器1内で高さhまで溜るので未分解の生ごみと微生物が液の中で接触することになり、微生物の活動が活発化し、また、未分解の生ごみが最後まで微生物を豊富に含む分解水と接触することで、最終的に未分解の生ごみが残るようなことがなくなる。さらに、先の実施例では、生ごみを投入する毎に微生物を添加する必要があったが、この実施例では、新たに投入する生ごみが容器内に溜っている微生物を多く含む分解水と接触するので、毎回微生物を添加する必要がない。
【0019】
【発明の効果】本発明によれば、大量のオガ屑等を使用することなく生ごみを分解処理することが可能となり、機体を小型化することも容易である。」
(公報段落番号【0017】〜【0019】)

4. 対比・判断
本件出願の特許請求の範囲の【請求項1】に係る発明(以下、「本件発明」という。)と第1引用例に記載された発明とを比較検討するに、
第1引用例に記載された「容器」(2,31)とこれに入れる「多孔性有機充填材」(7,33)は、本件発明の「ケーシング」と「菌床」に相当していることは、構成と機能に徴し明らかであり、
上記菌床に配合される「複数の醗酵性微生物〈菌体〉」は、文字通り複数であり、その内訳は、
「 (1)糖分を分解して炭酸ガスと水とし、アミラーゼを生成する細菌類
(2)蛋白質を分解して、アンモンニア、水、炭酸ガスとし、プロチド酵素群を分泌する細菌類
(3)脂肪を分解して炭酸ガスと水にするリパーゼ(脂肪分解酵素)を分泌する細菌類
(4)ヘミセルローズ、セルローズを分解し炭酸ガスと水にする放射菌及び糸状菌類 」であり、
これ等の菌は、通例土壌の中に存する菌と同種のものであるから、上記菌床は、「複数の土壌菌を配合した」を実現しているものである。
さらに、第1引用例における、
「『生ゴミを生ゴミ投入筒から投入すると、その直後から一日数回醗酵槽内部を30分間攪拌用スパイラル状攪拌羽根21を回転させることによる内部の強制攪拌によって醗酵性微生物を含んだ多孔有機性充填材と生ゴミとを最大限に接触させる』と同時に内部に約30°Cの温風をフアンヒーター25から供給することによって『微生物の分解活動を活発化させる』」の記載に因み、
第1引用例に記載の発明も、本件発明における「菌床と生ゴミを攪拌混合することにより、前記複数の土壌菌によって生ゴミを分解する」を、体現しており、これに資する第1引用例に記載された「生ゴミ醗酵槽」(11)は、本件発明の「生ゴミ分解処理装置」に該当するものであり、むろん本件発明の特許請求の範囲末尾の「生ゴミ分解装置」と殆ど同義である。
上記のとおりであるから、第1引用例に記載された技術的事項から、本件発明の構成要件との牽連性において発明の構成要素を抽出すると、以下のとおりである。
「ケーシング内に複数の土壌菌を配合した菌床を入れ、この菌床と生ゴミを攪拌混合することにより前記複数の土壌菌によって生ゴミを分解する生ゴミ分解処理装置において、前記菌床を多孔性物によって構成した生ゴミ分解装置。」
これが、本件発明と第1引用例に記載された発明とが一致する点である。
そこで、本件発明と第1引用例に記載の発明とを比較すると、
本件発明は、菌床を構成する多孔性物を無機物によって構成したのに対して、第1引用例に記載の発明においては、有機物よって構成されている点、
において、相違している。
その余の構成部分については、前記においてみたとおり、両者間に格別の径庭は存しないというべきである。

5. [相違点の判断]
そこで、上記相違点につき、審案する。
ところで、微生物処理に供用する多孔性無機物は、前掲第2引用例の記載にみられるとおり、斯界において知悉された技術的事項である。
即ち、第2引用例に記載された「ポーラスなセラミック粒体」(34)は、本件発明における「菌床を構成する多孔性無機物」であることは、多言を要しないところである。
しかも、第2引用例に記載の多孔性無機物も、好機性微生物処理に随伴して菌床として機能しており、本件発明と同様生ゴミの分解処理を有効且つ適切に処理することのために供用されており、目途としても、従来の菌床である大量のオガ屑等の使用を回避するためにその代替を担って提供されたものである。このような第2引用例に記載された発明の技術的趣意に鑑みるときは、
本件発明が、第1引用例に記載された発明の生ゴミ分解処理装置の菌床を構成する多孔性物につき、その多孔性有機物に代えて第2引用例に開示された多孔性無機物をもって供用した点は、予測可能な公知技術の代替施用の域を出ないものといってしかるべきである。
蓋し、菌床と生ゴミを攪拌混合して処理する分解処理装置において、多孔性有機物と代替互換性を以て、多孔性無機物を使用に供することが、斯界において普通に行われているからである(必要とあらば、「特開平8-1132号公報」参照。)。
そして本件発明のこの点によって齎らされる効用も、明細書の記載から窺うに当業者の予測を超える格別顕著な効果を奏しているとは認められない。

6. 結び
以上のとおりであるから、本件発明は、この出願前日本国内において頒布された刊行物である第1、第2の各引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。
それ故、特許法第29条第2項の規定により、本件発明につき、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-09-20 
結審通知日 2001-10-02 
審決日 2001-10-15 
出願番号 特願平8-135830
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 金丸 治之  
特許庁審判長 佐藤 洋
特許庁審判官 岩崎 晋
藤原 稲治郎
発明の名称 生ゴミ分解処理装置  
代理人 野末 祐司  
代理人 野末 祐司  

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