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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16K
管理番号 1050952
審判番号 審判1999-15547  
総通号数 26 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-08-06 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-09-27 
確定日 2001-12-14 
事件の表示 平成10年特許願第 27785号「弁の開閉装置」拒絶査定に対する審判事件[平成11年 8月 6日出願公開、特開平11-210925]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成10年1月26日の出願であって、本願の請求項1に係る発明は、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのもの(以下、「本願発明」という。)と認める。
「側面に縦スリットが形成された方形筒状のカバーと、前記カバーに収容され、前記カバー底部において被操作体に接続される下端部を有するピストンと、前記カバー内において前記ピストンを上下に移動させるレバーと、前記カバー内に固定され、前記レバーの移動を阻止するように前記レバー下端部を押圧するスプリングとを備え、前記ピストンは、上端部および下端部表面が方形で、その内部底面に平行な溝とこの溝に交差する内部側面に平行な溝とを有しており、前記レバーには前記下端部の下端部先端に近い第1の穴とこの第1の穴より前記レバーの上端方向に第2の穴がほぼ縦列に配置されており、前記第1の穴には前記ピストンの前記内部底面に平行な溝を摺動するピンが取り付けられ、前記第2の穴には前記内部側面に平行な溝を摺動するピンが取り付けられており、前記レバーを前記スプリングの押圧力に抗して前記縦スリットに沿って下に押し下げると、前記第1および第2の穴に取り付けられたピンがそれぞれ前記内部底面に平行な溝および前記内部側面に平行な溝を摺動して前記ピストンを前記カバー内において上方に押し上げることを特徴とする弁の開閉装置。」

2.引用刊行物およびその記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に日本国内において頒布された実願昭63-17881号(実開平1-124861号)のマイクロフィルム(以下、「引用例」という。)には、水抜栓のハンドル装置に関して、次のように記載されている。
A)「第1図および第2図において、1はパイプであり、図示しないが下端に地中に埋設される水抜栓の弁箱を接続し、地上部まで延長されて、上端に支持部本体2を接続する。3は上端が閉じられた操作部本体であり、ナット4により支持部本体2の上端に接続固定される。・・・途中省略・・・操作部本体3は、前端に縦長長方形の切欠き窓6を形成し、その両側方に突起7をもうけている。8は操作レバーであり、上記突起7にピン9によりヒンヂ結合されており、一端に二股状の結合部10を形成する。11はパイプ1内に収容されるロッドであり、図示しないが水抜栓の弁箱内を上下動して通止水する弁体から上方に延長され、上端に操作桿12を連結する。操作桿12は上方を上記結合部10にはまり込む様に小径に形成し、上端に第3図に示すごとく、小径横溝13およびそれに隣接する大径溝14を側方部に開口するようにもうける。なお、これは第4図に示すように側方に開口させずにもうけることもでき、加工には時間がかかるが強度がより大になる。操作レバー8の結合部10の先端に挿入されたピン15が上記小径横溝13および大径溝14に係止して操作レバー8と操作桿12は結合されることになる。さらに操作桿12の上記小径横溝13の下方にピン16を両端を突出させて挿入し、上記ピン16に、第5図に示すごとき二股形状の捻じりばね17を装着し、操作レバー8に常に押圧力を与えるようにしている。」(第4頁2行〜第5頁11行)
B)「第1図、第2図は操作桿12、ロッド11及びロッド11に連結された弁体が最下降した状態を示しており、このとき、ピン15は大径溝14に入り込んだ状態で、さらに捻じりばね17が操作レバー8を操作部本体3の前壁に押圧させた状態で停止しているため、水圧力が弁体に上昇力を与えてもピン15は大径溝14に入り込んだ状態を維持し、従って、操作レバー8が一人でに回転することはなく、弁体の自走もない、この状態から、冬期間、配管内の水抜きをするときには、操作レバー8を下方に押し下げれば良く、操作レバー8はピン9を中心にして回転し、ピン15も上昇し、まず大径溝14から脱し、小径横溝13内を回転の前半では図の右側向方に、回転の後半では左側方向に移動しながら上昇を続ける。それに伴って、操作桿12も上昇し、上端部が操作部本体3の上部に当接して上昇を停止する。すなわち第6図の閉栓(排水)状態となる。この状態においてもピン15は再び大径溝14に入り込み、また捻りばね17が操作レバー18を下方に回転させようとする力として作用しているため、ロッド11の自重等により弁体が自然に下降する、いわゆる自走も起こらない。この状態から操作レバー8を持ち上げるように回転させると、前記と逆の過程をたどり第1図の状態に復帰する。」(第5頁16行〜第6頁20行)
C)第1図、第6図には、操作部本体3に操作桿12が収容されており、ロッド11の上端が、操作部本体3の底部において操作桿12の下端部に接続されていることと、操作レバー8には、結合部10の側を下端部、反対側を上端部とするとき、下端部先端に近い部分にピン15が挿入される第1の穴が形成され、この第1の穴より前記レバーの上端方向にピン9が挿入される第2の穴が形成され、これらがほぼ縦列に配置され、捻じりばね17が操作レバー8の下端部を押圧していることと、小径横溝13および大径溝14が操作桿12の底面に平行で、操作桿12の側面に交差していることが記載されている。

上記A)、C)の記載から、操作部本体3には切欠き窓6が形成されるとともに、操作部本体3の底部において、弁体から上方に延長されたロッド11に接続される下端部を有する操作桿12が収容されており、操作部本体3内において操作桿12を上下に移動させる操作レバー8と、操作部本体3内の操作桿12に固定され、操作レバー8下端部を押圧する捻じりばね17とを備え、操作桿12は、その底面に平行な小径横溝13および大径溝14を有しており、操作レバー8には下端部先端に近い第1の穴とこの第1の穴より操作レバー8の上端方向に第2の穴がほぼ縦列に配置されており、第1の穴には小径横溝13および大径溝14を摺動するピン6が取り付けられており、第2の穴には、操作レバー8を操作部本体3に回転可能に結合するピン9が取り付けられている。また、B)、C)の記載から、捻じりばね17は操作レバー8の移動を阻止しており、操作レバー8を捻じりばね17の押圧力に抗して切欠き窓6に沿って下に押し下げると、第1の穴に取り付けられたピン6が小径横溝13および大径溝14を摺動して、操作桿12を操作部本体3内において上方に押し上げている。そして、ピン9は、本願発明の第2の穴に取り付けられたピンが、内部側面に平行な溝を相対的に摺動するのと同様に、操作桿12の側面に対して相対的に摺動している。
したがって、上記引用例には、
「側面に切欠き窓6が形成された操作部本体3と、操作部本体3に収容され、操作部本体3底部において弁体から上方に延長されたロッド11に接続される下端部を有する操作桿12と、前記操作部本体3内において前記操作桿12を上下に移動させる操作レバー8と、前記操作部本体3内に固定され、前記操作レバー8の移動を阻止するように前記操作レバー8下端部を押圧する捻じりばね17とを備え、前記操作桿12は、その底面に平行な小径横溝13および大径溝14と、この小径横溝13および大径溝14に交差する側面とを有しており、前記操作レバー8には前記下端部の下端部先端に近い第1の穴とこの第1の穴より前記操作レバー8の上端方向に第2の穴がほぼ縦列に配置されており、前記第1の穴には前記操作桿12の前記底面に平行な小径横溝13および大径溝14を摺動するピン6が取り付けられ、前記第2の穴には前記側面を摺動するピン9が取り付けられており、前記操作レバー8を前記捻じりばね17の押圧力に抗して前記切欠き窓6に沿って下に押し下げると、前記第1および第2の穴に取り付けられたピン6,9がそれぞれ前記内部底面に平行な小径横溝13および大径溝14、および前記側面を摺動して前記操作桿12を操作部本体3内において上方に押し上げる水抜栓のハンドル装置。」
の発明が記載されているものと認める。

3.本願発明と引用例に記載された発明との対比
本願発明と引用例に記載された発明とを対比すれば、引用例に記載された発明の「切欠き窓6」、「操作部本体3」、「弁体から上方に延長されたロッド11」、「操作桿12」、「操作レバー8」、「捻じりばね17」、「小径横溝13および大径溝14」は、それぞれ本願発明の「縦スリット」、「カバー」、「被操作体」、「ピストン」、「レバー」、「スプリング」、内部底面に平行な「溝」に相当し、「水抜栓のハンドル装置」は一種の「弁の開閉装置」である。また、引用例に記載された発明の小径横溝13および大径溝14は、操作桿12の底面に平行であるからその内部底面にも平行であり、操作桿12の側面は当然その内部側面に平行である。
したがって本願発明と引用例に記載された発明は、
「側面に縦スリットが形成されたカバーと、前記カバーに収容され、前記カバー底部において被操作体に接続される下端部を有するピストンと、前記カバー内において前記ピストンを上下に移動させるレバーと、前記カバー内に固定され、前記レバーの移動を阻止するように前記レバー下端部を押圧するスプリングとを備え、前記ピストンは、その底面に平行な溝を有しており、前記レバーには前記下端部の下端部先端に近い第1の穴とこの第1の穴より前記レバーの上端方向に第2の穴がほぼ縦列に配置されており、前記第1の穴には前記ピストンの前記内部底面に平行な溝を摺動するピンが取り付けられており、前記レバーを前記スプリングの押圧力に抗して前記縦スリットに沿って下に押し下げると、前記第1の穴に取り付けられたピンが前記内部底面に平行な溝を摺動して前記ピストンを前記カバー内において上方に押し上げる弁の開閉装置。」
である点で一致し、以下の相違点で相違しているものと認める。
<相違点>
1)本願発明のカバーは方形筒状で、ピストンは上端部および下端部表面が方形であるのに対し、引用例に記載された発明の操作部本体3は、その形状が明記されておらず、操作桿12の上端部および下端部表面は方形となっていない点。
2)本願発明では、ピストンが内部側面に平行な溝を有しており、レバーを下に押し下げると、第2の穴に取り付けられたピンが該内部側面に平行な溝を相対的に摺動するのに対し、引用例に記載された発明では、操作レバー8を下に押し下げると、第2の穴に取り付けられたピン9が、内部側面に平行な操作桿12の側面を相対的に摺動するものの、操作レバー8の内部側面に平行な溝を摺動するものではない点。

4.相違点の検討
(1)相違点1)に関して
弁の開閉装置において、弁開閉部材とそのカバー部材の断面を同形状の非円形としておくことは周知技術(例えば、実願昭62-4706号(実開昭63-112714号)のマイクロフィルム参照。)であり、非円形の断面形状としてどのような断面形状を選択するか、また、このような非円形の部分を弁開閉部材のどの位置に設けるかは、それぞれ当業者が適宜選択する単なる設計事項である。してみれば、カバーを方形筒状とするとともに、ピストンの上端部および下端部表面を方形とすることは、当業者が上記周知技術に基づいて容易に行うことができたものである。
(2)相違点2)に関して
本願発明では、レバーを回転させるピンをピストンと干渉する位置に設けたために、ピストンにピンを相対移動させる溝を設けているが、レバーを回転させるピンをどのような位置に設けるかは、当業者が適宜選択する単なる設計事項であり、ピンを、被操作体を移動させる部材と干渉する位置に設けるとともに、該部材にピンを相対移動させる溝を設けることは周知技術(例えば、実公昭43-11421号公報、実願昭59-7847号(実開昭60-120258号)のマイクロフィルム参照。)である。してみれば、引用例に記載された発明において、操作桿12を第2の穴に取り付けられたピンと干渉する位置に設けるとともに、該操作桿12に、内部側面に平行な溝を設けることにより、ピンが操作桿12の溝を相対的に摺動できるようにすることは、当業者が上記周知技術に基づいて容易に行うことができたものである。

そして、本願発明は、引用例に記載された発明に上記各周知技術を適用することにより得られる効果を越えるものでもない。
したがって、本願発明は、引用例に記載された発明に、上記慣用技術、周知技術を適用することにより当業者が容易に行うことができたものである。

5.むすび
以上詳述したとおり、本願の請求項1に記載された発明は、上記引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-09-28 
結審通知日 2001-10-12 
審決日 2001-10-26 
出願番号 特願平10-27785
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川向 和実平岩 正一土田 嘉一  
特許庁審判長 粟津 憲一
特許庁審判官 刈間 宏信
ぬで島 慎二
発明の名称 弁の開閉装置  
代理人 竹村 壽  

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