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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G03G
管理番号 1051500
異議申立番号 異議2001-71982  
総通号数 26 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-04-07 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-07-19 
確定日 2001-12-17 
異議申立件数
事件の表示 特許第3127338号「磁性現像剤」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3127338号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.手続きの経緯
特許第3127338号の請求項1に係る発明は、平成5年9月24日に出願され、平成12年11月10日にその特許の設定の登録がなされ、その後、東洋インキ製造株式会社 より特許異議申立がなされたものである。

2.本件発明
本件請求項1に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】 少なくとも結着樹脂、磁性体及びワックスを含有する磁性トナーを含有する磁性現像剤において、該トナーが粉砕法に依り製造される際、少なくとも機械式衝撃粉砕機により重量平均粒径D4及び長さ平均粒径D1の値が7μm≦D4<20μmかつ1<D4/D1≦3.5になるように粉砕された後、ジェット気流を用いた衝突型粉砕機により微粉砕されることを特徴とする磁性現像剤」

4.特許異議申立の概要
4.1 特許異議申立人 東洋インキ製造株式会社は下記の甲第1ないし9号証を引用し、
本件特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、その出願前に頒布された甲第1号証ないし甲第7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反し、又、本件特許出願前に出願され、その出願後に出願公開された特願平5-194656号(甲第8号証)の願書に最初に添付された明細書に記載された発明と同一であり、しかも本件特許の発明者が上記先願の発明者と同一でもなく、また本件特許出願の時においてその出願人が上記先願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定に違反する。したがって、本件特許は取り消されるべきものである、
と主張する。


甲第1号証:特開昭63-197962号公報
甲第2号証:「トナー材料の開発・実用化 総合技術資料集」日本科学情報(株)出版部昭和60年9月30日発行 第76〜81頁
甲第3号証:日経産業新聞 平成5年4月21日
甲第4号証:「高速回転式微粉砕機 クリプトロン」のカタログ 川崎重工業株式会社発行
甲第5号証:粉体工学研究会編「粉体粒度測定法」(株式会社養賢堂昭和40年2月20日発行)第1〜5頁
甲第6号証:「Coulter Counnter model TA-II 使用説明書」第6-1頁
甲第7号証:ソフト技研出版部編 「最新超微粉砕プロセス技術 総合資料編」(新技術情報センター、昭和60年3月31日発行)第28〜31頁 甲第8号証:特願平5-194656号(特開平7-49583号公報)
第9号証:電子写真学会編「電子写真技術の基礎と応用」(株式会社コロナ社 昭和63年6月15日発行)第471〜477頁

4.2 甲号各証の記載
甲第1号証には、
「粗粉砕したトナー材料をあらかじめ衝撃式粉砕機により重量平均粒径および/またはモード値粒径が20〜60μmになるように予備粉砕した後、その予備粉砕したトナー材料をジェットを利用した粉砕機により微粉砕して静電荷像現像用トナーを製造する方法」(特許請求の範囲)と記載され、その実施例1には、磁性体を含むトナー材料を加熱混練し、冷却後、ハンマーミルで平均粒径100〜1000μmの範囲に粗粉砕し、それを衝撃式粉砕機でモード値粒径30μm、100μm以上の頻度0重量%に予備粉砕した。その予備粉砕したトナー材料と粗粉砕したトナー材料を同時に超音速ジェットミルに供給し平均粒径10μmに微粉砕し磁性トナーを製造したことが記載されている。
甲第2号証には、オフセットを防止するために磁性トナーにワックス類が添加されることが記載されている。
甲第3号証には、トナーの製造などに使用できる微粉砕システムである川崎重工業社製のクリプトロンが5〜7ミクロンの粒度に対応できるようになったことことが記載されている。
甲第4号証には、川崎重工業社製の高速回転式微粉砕機クリプトロンに「KTM」なる形式のものがあることが示されている。
甲第5号証には:粒度分布において、「同一分布基準内では調和平均粒径が最小値を示し、次に幾何、長さ、面積、体積、面積長さ、体積長さ、体面積の順でつづき、最大が重量平均粒径となるのが普通である」と記載されてる。
甲第6号証には、コールターカウンタTAIIは、アパチャー系が100μmであるときの粒度測定可能な範囲は2.0〜40μmであることが示されている。
甲第7号証には、長さ平均粒径D1及び重量平均粒径D4の定義が示されている。
甲第8号証には、
「【請求項1】 粗粉砕粒子から高速気流中衝撃粉砕により得た平均粒径10〜19μmの中粉砕粒子を、ジェット気流式粉砕により、平均粒径5〜10μm未満を有する小粒径粒子を得、次いで得られた小粒径粒子を分級ロータ型分級機で分級することを特徴とする電子写真用トナーの製造方法。」(特許請求の範囲)と記載され、
実施例1には、低分子量ポリプロピレンを含有するトナー材料の混合物を連続押出混練機で混合し冷却後ハンマーミルで粗粉砕し、重量平均粒径2mmの粗粉砕粒子を得、次いで機械式衝撃粉砕機(クリプトロンKTMO型;川崎重工業社製)で粉砕し重量平均粒径11μの中粉砕粒子を得た、その後ジェット粉砕機と気流分級機とを組み合わせて作った閉回路中で微粉砕し小粒径粒子を得たと記載されている。
甲第9号証には、磁性トナー材料に磁性と着色を兼ねる磁性材料が用いられることが記載されている。

4.3 対比判断
4.3.1 特許法第29条第2項違反について
本件発明は、以下の作用効果を有するものである。
機械式粉砕機で粒子表面を丸味を帯びさせる効果及びジェット粉砕機で粒子表面を角張らせる効果により、適度な流動性と帯電性を兼ね備えており、現像剤担持体でのいかなる環境においても現像剤のコートの均一化が達成され、常に高濃度で、フェーディング,ブロッチのない安定した画像が得られる。
さらにMICR用においても、常に安定した磁気信号強度の高くリーダー・ソーターでの認識率の良好な磁性文字を形成することが可能であり、機械式粉砕機で粉砕効率が著しく低下しない程度まで粒子の細粒化と同時に粒度分布のシャープ化を達成し、その後衝撃力の大きいジェット粉砕機によって粉砕することで、粉砕処理量を著しく減ずることなく粒度分布のシャープな粉砕物が得られる為、高収率で製品を回収することが可能である。
また丸味を帯びた粒子を含有することで充填量,充填スピードもアップし製造コストが低い磁性現像剤を得ることが可能である。(段落【0019】、【0092】参照)
そこで、本件発明と甲第1号証に記載の現像剤とを対比すると、「結着樹脂、磁性体を含有する磁性トナーを含有する磁性現像剤において、該トナーが粉砕法に依り製造される際、少なくとも機械式衝撃粉砕機により粉砕された後、ジェット気流を用いた衝突型粉砕機により微粉砕される磁性現像剤」で一致するが、次の点で相違する。
(1)本件発明が「ワックス」を含有するのに対して、甲第1号証には「ワックス」については明記されていない。
(2)本件発明が、「重量平均粒径D4及び長さ平均粒径D1の値が7μm≦D4<20μmかつ1<D4/D1≦3.5になるように粉砕された後ジェット気流を用いた衝突型粉砕機により微粉砕される」のに対し、甲第1号証には「衝撃粉砕機により重量平均粒径が20〜60μmになるよう粉砕した後ジェット気流を用いた粉砕機により微粉砕される」ことが記載され、ジェット気流を用いた粉砕前に「重量平均粒径D4及び長さ平均粒径D1の値が7μm≦D4<20μmかつ1<D4/D1≦3.5になるように粉砕」についての記載はない。
上記相違点について甲第2〜7号証を検討する。
相違点(1)について
磁性トナー中にワックス類を含有させることは甲第2号証に記載されているごとく周知の事項であり、甲第1号証に記載の磁性トナーに採用することは当業者が適宜なし得ることである。
相違点(2)について
甲第3及び4号証には、複写機用のトナー製造などに使う微粉砕システムが粒度5-7ミクロンに対応できるようになった旨記載されているのであって、相違点(2)に係る本件発明の構成要件を記載又は示唆するものはない。 甲第5号証には、同一分布基準内での平均粒子径の値は、長さ平均よりも重量平均が大きくなるのが普通である旨の記載があるところから、甲第1号証に記載のトナーもまた「1<D4/D1」を示すものと認められるが、「D4/D1≦3.5」であることを示唆するものはない。
甲第6号証は、コールターカウンターTA-II型のアパチャー・チューブ・データが記載され、甲第7号証には「平均粒子径の定義式」が記載されていて、相違点(2)に係る本件発明の構成要件を記載又は示唆するものはない。
なお、異議申立人は、甲第6号証の記載及び平均粒子径の定義からみて、「D4/D1」の値が3.5より大きくなることはあり得ない旨主張するが、これは特定の粒子径分布を有する粉体を仮定しての議論であって、相違点(2)に係る本件発明の構成要件を具備するトナーの存在を実証するものではないので採用はできない。
以上検討したように、甲第1ないし7号証には、相違点(2)に係る本件発明の構成要件を記載又は示唆するものはない。
そして、本件発明は、相違点(2)に係る本件発明の構成要件を採用することにより、明細書記載の上記効果を奏するものであるから、本件発明が甲第1ないし7号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

4.3.2 特許法第29条の2違反について
本件発明と甲第8号証に記載の現像剤とを対比すると、「結着樹脂、磁性体及びワックスを含有する磁性トナーを含有する磁性現像剤において、該トナーが粉砕法に依り製造される際、機械式衝撃粉砕機により粉砕された後、ジェット気流を用いた衝突型粉砕機により微粉砕される磁性現像剤」で両者は一致するが、甲第8号証には本件発明のトナーが「重量平均粒径D4及び長さ平均粒径D1の値が7μm≦D4<20μmかつ1<D4/D1≦3.5になるように粉砕された後ジェット気流を用いた衝突型粉砕機により微粉砕される」についての記載はない点で相違する。
そして、本件発明は、該相違点に係る本件発明の構成を採用することにより明細書記載の効果を奏するものであって、該構成は実質的な意義のあるものであるから、本件発明と甲第8号証に記載の発明が同一であるとすることはできない。
なお、甲第9号証には現像剤に磁性粉が着色顔料としての役割も有していることが記載されているにすぎず、本件発明と甲第8号証に記載の発明が同一であることを判断するにあたり影響を及ぼすものではない。

5.まとめ
以上のとおりであるから、特許異議の申立の理由及び証拠によっては、本件請求項1に係る発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件請求項1に係る発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものとは認めない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により上記の通り決定する。
 
異議決定日 2001-11-21 
出願番号 特願平5-258968
審決分類 P 1 651・ 121- Y (G03G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 淺野 美奈  
特許庁審判長 江藤 保子
特許庁審判官 六車 江一
植野 浩志
登録日 2000-11-10 
登録番号 特許第3127338号(P3127338)
権利者 キヤノン株式会社
発明の名称 磁性現像剤  
代理人 渡辺 敬介  
代理人 山口 芳広  
代理人 豊田 善雄  

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