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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 F01K 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 F01K |
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管理番号 | 1053135 |
異議申立番号 | 異議2001-70252 |
総通号数 | 27 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1994-04-05 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2001-01-24 |
確定日 | 2001-10-03 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3068348号「複合発電システム」の請求項1ないし2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3068348号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第3068348号の請求項1ないし2に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明2」という。)の出願は、平成4年9月10日に特許出願され、平成12年5月19日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、異議申立人羽鳥義一(以下、「申立人」という。)より特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成13年7月6日に訂正請求がなされたものである。 2.訂正の適否についての判断 (1)訂正の内容 ア.訂正事項a 特許請求の範囲の請求項1の記載について、「排熱回収ボイラで回収して得た蒸気タービンを駆動する」とあるのを、「排熱回収ボイラで回収して得た蒸気でタービンを駆動する」と訂正する。 イ.訂正事項b 特許請求の範囲の請求項1の記載について、「複合発電システムにおいて、前記ガスタービン翼冷却系統は、前記冷却通路を通った蒸気を全量回収して前記排熱回収ボイラにて得られた蒸気の残部と混合した後に」とあるのを、「複合発電システムにおいて、前記排熱回収ボイラは高圧水が導かれる第1の高圧ドラムと、前記第1の高圧ドラム内の高圧水の一部を蒸発させて前記第1の高圧ドラムの上部空間に還流させる第1の高圧蒸発器と、前記第1の高圧ドラム内の高圧水の一部が導かれる第2の高圧ドラムと、前記第2の高圧ドラム内の高圧水を蒸発させて前記第2の高圧ドラムの上部空間に還流させる第2の高圧蒸発器を有し、前記ガスタービン翼冷却系統は、前記第2の高圧ドラムの上部空間から前記冷却通路に蒸気を供給し、前記冷却通路を通った蒸気を全量回収して前記第1の高圧ドラムの上部空間から案内された蒸気と混合した後に」と訂正する。 ウ.訂正事項c 明細書の段落【0007】の記載について、「通路32を介して高圧ドラム32に導入する。そして、高圧ドラム32内の高圧水を、循環ポンプ34,通路35を介して高圧蒸発器25に導いて蒸発させ、この蒸発によって生成された高圧高温の蒸気を通路36を介して高圧ドラム32の上部空間に戻す。」とあるのを、「通路32を介して高圧ドラム33に導入する。そして、高圧ドラム33内の高圧水を、循環ポンプ34,通路35を介して高圧蒸発器25に導いて蒸発させ、この蒸発によって生成された高圧高温の蒸気を通路36を介して高圧ドラム33の上部空間に戻す。」と訂正する。 エ.訂正事項d 明細書の段落【0016】の記載について、「このガスタービン系統の排熱を排熱回収ボイラで回収して得た蒸気タービンを駆動する蒸気サイクルを備えた蒸気タービン系統と、前記排熱回収ボイラで得られた蒸気の一部を前記ガスタービンの翼に設けられた冷却通路を経由させて前記蒸気サイクルへ戻すガスタービン翼冷却系統とを備えた複合発電システムにおいて、前記冷却通路を通った蒸気を全量回収して前記排熱回収ボイラにて得られた蒸気の残部と混合した後に」とあるのを、「このガスタービン系統の排熱を排熱回収ボイラで回収して得た蒸気でタービンを駆動する蒸気サイクルを備えた蒸気タービン系統と、前記排熱回収ボイラで得られた蒸気の一部を前記ガスタービンの翼に設けられた冷却通路を経由させて前記蒸気サイクルへ戻すガスタービン翼冷却系統とを備えた複合発電システムにおいて、前記排熱回収ボイラは高圧水が導かれる第1の高圧ドラムと、前記第1の高圧ドラム内の高圧水の一部を蒸発させて前記第1の高圧ドラムの上部空間に還流させる第1の高圧蒸発器と、前記第1の高圧ドラム内の高圧水の一部が導かれる第2の高圧ドラムと、前記第2の高圧ドラム内の高圧水を蒸発させて前記第2の高圧ドラムの上部空間に還流させる第2の高圧蒸発器を有しており、前記第2の高圧ドラムの上部空間から前記冷却通路に蒸気を供給し、前記冷却通路を通った蒸気を全量回収して前記第1の高圧ドラムの上部空間から案内された蒸気と混合した後に」と訂正する。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記訂正事項aは、誤記の訂正を目的とした明細書の訂正に該当し、「排熱回収ボイラで回収して得た蒸気でタービンを駆動する」ことは、願書に添付した明細書の段落【0022】及び【0023】に記載されているから、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。 上記訂正事項bは、訂正前の請求項1に記載された発明の構成に欠くことができない事項である「排熱回収ボイラ」及び「ガスタービン翼冷却系統」について、願書に添付した明細書の段落【0023】〜【0025】及び図面の【図1】、【図2】の記載に基づいて構成を具体的に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当するものであって、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 上記訂正事項cは、「高圧ドラム32」という記載を、願書に添付した図面の【図4】及び明細書の段落【0007】の他の記載と整合するように「高圧ドラム33」にするものであって、誤記の訂正を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 上記訂正事項dは、上記訂正事項a及びbと整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。 (3)むすび したがって、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.特許異議の申立てについての判断 (1)申立ての理由の概要 申立人は、本件発明1は、甲第1号証の1に記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであり、また、甲第1号証の1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、よって、その特許は特許法第113条第2号の規定により取り消すべきものである旨、さらに、本件発明2は、甲第1号証の1及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は特許法第113条第2号の規定により取り消すべきものである旨、主張している。 (2)本件発明 上記「2.訂正の適否についての判断」で示したように、上記訂正が認められるから、本件発明1ないし本件発明2は、平成13年7月6日付けの訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された次のとおりのものと認める。 請求項1「ガスタービン系統と、このガスタービン系統の排熱を排熱回収ボイラで回収して得た蒸気でタービンを駆動する蒸気サイクルを備えた蒸気タービン系統と、前記排熱回収ボイラで得られた蒸気の一部を前記ガスタービンの翼に設けられた冷却通路を経由させて前記蒸気サイクルへ戻すガスタービン翼冷却系統とを備えた複合発電システムにおいて、前記排熱回収ボイラは高圧水が導かれる第1の高圧ドラムと、前記第1の高圧ドラム内の高圧水の一部を蒸発させて前記第1の高圧ドラムの上部空間に還流させる第1の高圧蒸発器と、前記第1の高圧ドラム内の高圧水の一部が導かれる第2の高圧ドラムと、前記第2の高圧ドラム内の高圧水を蒸発させて前記第2の高圧ドラムの上部空間に還流させる第2の高圧蒸発器を有し、前記ガスタービン翼冷却系統は、前記第2の高圧ドラムの上部空間から前記冷却通路に蒸気を供給し、前記冷却通路を通った蒸気を全量回収して前記第1の高圧ドラムの上部空間から案内された蒸気と混合した後に前記蒸気サイクルの加熱過程領域へ戻し、加熱して前記タービンへ導くように構成されていることを特徴とする複合発電システム。」 請求項2「前記ガスタービン翼冷却系統は、前記蒸気サイクルから前記冷却通路を切離し、この状態で前記ガスタービン系統で発生した高圧空気の一部を上記冷却通路に通流可能とする切換手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の複合発電システム。」 (3)引用刊行物 刊行物1:E. D. ALDERSON et al.,“Closed Circuit Steam Cooling in Gas Turbines”,THE AMERICAN SOCIETY OF MECHANICAL ENGINEERS,1987年(国立国会図書館昭和63年1月18 日受入),87-JPGC-GT-1,p.1-7 (申立人の提出した甲第1号証の1) 刊行物1には、「ガスタービン系統と、蒸気タービン系統と、ガスタービン翼を冷却する閉回路蒸気冷却システムとを備え、閉回路蒸気冷却システムにより冷却通路を通った蒸気を全量回収して排熱回収ボイラにて得られた蒸気の残部と混合した後に高圧過熱器へ戻し、加熱して高圧タービンへ導くコンバインドサイクル」の発明が記載されている。(特に図6(申立人の提出した甲第1号証の2)を参照。) 刊行物2:特開平4-148035号公報 (申立人の提出した甲第2号証) 刊行物2には、「ガスタービン系統と、蒸気タービン系統と、ガスタービン高温部材を冷却する冷却蒸気ラインとを備え、圧縮機からの高圧空気を冷却空気として用いる冷却空気ラインを前記冷却蒸気ラインと切換可能に構成した、蒸気冷却ガスタービンシステム」の発明が記載されている。 (4)対比・判断 a.本件発明1について 本件発明1と刊行物1及び2に記載された発明とを対比すると、両刊行物に記載された発明は、「ガスタービン系統と、蒸気タービン系統と、ガスタービン翼冷却系統とを備えた複合発電システム」ではあるものの、本件発明1の構成に欠くことができない事項である、排熱回収ボイラが「高圧水が導かれる第1の高圧ドラムと、前記第1の高圧ドラム内の高圧水の一部を蒸発させて前記第1の高圧ドラムの上部空間に還流させる第1の高圧蒸発器と、前記第1の高圧ドラム内の高圧水の一部が導かれる第2の高圧ドラムと、前記第2の高圧ドラム内の高圧水を蒸発させて前記第2の高圧ドラムの上部空間に還流させる第2の高圧蒸発器を有し」ている構成、及びガスタービン翼冷却系統が「前記第2の高圧ドラムの上部空間から前記冷却通路に蒸気を供給し、前記冷却通路を通った蒸気を全量回収して前記第1の高圧ドラムの上部空間から案内された蒸気と混合」する構成が備えられていない。 そして、本件発明1は、このようにガスタービン翼の冷却用蒸気を発生させる第2の高圧ドラム及び第2の高圧蒸発器を備えたことにより、「蒸気タービン系統で用いる蒸気の一部を使用してガスタービンの翼を冷却する方式の特徴を損なうことなく、蒸気タービンの入口における蒸気流量、圧力、温度を容易に制御できるので、蒸気タービンの熱効率向上に寄与でき、もって総合熱効率を一層向上させることができる」という明細書に記載された顕著な効果を奏するものと認められる。 したがって、本件発明1は、刊行物1に記載された発明であるとも、刊行物1に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものとも、また、刊行物1及び2に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものとも、いうことはできない。 b.本件発明2について 本件発明2は、本件発明1の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当するから、上記「a.本件発明1について」で説示したと同様の理由により、刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということができない。 (5)むすび 以上のとおりであるから、本件発明1ないし2についての特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものとは認められない。 したがって、本件発明1ないし2の特許は、特許異議申立ての理由及び証拠によっては取り消すことはできない。 また、他に本件発明1ないし2の特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 複合発電システム (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 ガスタービン系統と、このガスタービン系統の排熱を排熱回収ボイラで回収して得た蒸気でタービンを駆動する蒸気サイクルを備えた蒸気タービン系統と、前記排熱回収ボイラで得られた蒸気の一部を前記ガスタービンの翼に設けられた冷却通路を経由させて前記蒸気サイクルへ戻すガスタービン翼冷却系統とを備えた複合発電システムにおいて、前記排熱回収ボイラは高圧水が導かれる第1の高圧ドラムと、前記第1の高圧ドラム内の高圧水の一部を蒸発させて前記第1の高圧ドラムの上部空間に還流させる第1の高圧蒸発器と、前記第1の高圧ドラム内の高圧水の一部が導かれる第2の高圧ドラムと、前記第2の高圧ドラム内の高圧水を蒸発させて前記第2の高圧ドラムの上部空間に還流させる第2の高圧蒸発器を有し、前記ガスタービン翼冷却系統は、前記第2の高圧ドラムの上部空間から前記冷却通路に蒸気を供給し、前記冷却通路を通った蒸気を全量回収して前記第1の高圧ドラムの上部空間から案内された蒸気と混合した後に前記蒸気サイクルの加熱過程領域へ戻し、加熱して前記タービンへ導くように構成されていることを特徴とする複合発電システム。 【請求項2】 前記ガスタービン翼冷却系統は、前記蒸気サイクルから前記冷却通路を切離し、この状態で前記ガスタービン系統で発生した高圧空気の一部を上記冷却通路に通流可能とする切換手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の複合発電システム。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、ガスタービン系統と蒸気タービン系統とを組合せた複合発電システムに関する。 【0002】 【従来の技術】 最近、火力発電システムの高効率化が強く望まれている。そして、この要望に近づくために、新設の火力発電所は勿論のこと、既設の火力発電所においてもリパワリングによる複合サイクル化が進められている。 【0003】 図4には代表的な複合発電システムの系統図が示されている。この複合発電システムは、ガスタービン系統1と、このガスタービン系統1の排熱エネルギで駆動される蒸気タービン系統2とで構成されている。 【0004】 ガスタービン系統1は、ガスタービン11と、このガスタービン11に軸12を介して連結された圧縮機13と、この圧縮機13から送り出された高圧空気と燃料とを導入して燃焼させ、この燃焼によって得られた高温高圧ガスでガスタービン11を駆動する燃焼器14とで構成されている。すなわち、圧縮機13は、通路15を介して導かれた常温空気を圧縮する。圧縮機13から送り出された高圧空気は、一部がガスタービン11内の翼の冷却や回転部のシール用として使用され、残りが燃焼器14へ導かれる。燃焼器14は高圧空気を支燃ガスとして図示しない燃料供給系統から供給された燃料を燃焼させる。燃焼によって得られた高温ガスは、通路16を介してガスタービン11に供給され、膨脹してガスタービン11に駆動力を与えた後に通路17へと流れる。 【0005】 一方、蒸気タービン系統2は、蒸気タービン18と、軸19を介して蒸気タービン18に連結された発電機20と、前述したガスタービン系統1の排熱で蒸気を発生させ、この蒸気で蒸気タービン18を駆動する蒸気サイクル21とで構成されている。なお、この図では蒸気タービン18のロータとガスタービン11のロータとが軸22で連結されている例が示されている。 【0006】 蒸気サイクル21は、通路17を介して導かれたガスタービン11の排ガスから熱を回収して蒸気タービン18の駆動に必要な高温高圧蒸気を発生させる排熱回収ボイラ23を備えている。排熱回収ボイラ23を通った排ガスは、煙道27を介して大気中へ排出される。 【0007】 排熱回収ボイラ23内には上流側から下流側にかけて順に高圧加熱器24,高圧蒸発器25,高圧予熱器26が設けてあり、これらと蒸気タービン18とが次のような関係に接続されて蒸気サイクル21が形成されている。すなわち、蒸気タービン18から排出された蒸気を、通路28を介して復水器29へ導き、この復水器29で常温水に戻す。この戻された常温水を循環ポンプ30,通路31を介して高圧予熱器26に導いて予熱した後、通路32を介して高圧ドラム33に導入する。そして、高圧ドラム33内の高圧水を、循環ポンプ34,通路35を介して高圧蒸発器25に導いて蒸発させ、この蒸発によって生成された高圧高温の蒸気を通路36を介して高圧ドラム33の上部空間に戻す。この戻された蒸気を通路37を介して高圧加熱器24に導き、ここで再加熱した後に通路38を介して蒸気タービン18に供給するようにしている。 【0008】 ところで、このような複合発電システムでは、熱効率を一層向上させるためにガスタービン11の入口ガス温度を高めることが望まれる。このガスタービン11の入口ガス温度の上昇に伴い、燃焼器14や、ガスタービン11の静翼,動翼を高温に耐え得る材料で形成する必要がある。 【0009】 しかし、タービン用部材として使用できる耐熱性超合金材料の限界温度は、現在のところ800〜900℃である。一方、最近のガスタービンにおけるタービン入口温度は約1300℃にも達しており、耐熱性超合金材料の限界温度を遥かに越えている。したがって、何等かの手段でタービン11の翼を耐熱性超合金材料の限界温度まで冷却する必要があり、タービン入口温度が1300℃級のガスタービンでは、通常、圧縮機13から吐出された空気の一部で翼を冷却する空冷方式を採用している。 【0010】 しかしながら、冷却媒体として空気を使う空冷方式は本質的に冷却特性が低い。このため、ガスタービン入口温度が1300℃を越えるものでは翼の冷却に必要な冷却空気流量が著しく増大する。しかも翼内部での対流冷却だけでは十分な冷却効果が得られず、翼有効部の翼表面に形成した小孔から翼外に向けて冷却用空気を吹出すフィルム冷却方式を併用せざるを得ない。このフィルム冷却方式を採用すると、吹出された冷却空気と主流ガスとが混合するため、主流ガスの温度が低下する。このため、燃焼器14の出口温度をより高い温度にするための設計を余儀なくされるばかりか、高温度場でも低NOx型の新たな燃焼器14の開発が要求され、しかも燃焼器14で消費される空気と燃料の増加を免れ得ない。 【0011】 このように、タービンの翼を空気冷却する方式では、ガスタービンの熱効率の低下を招き、これが原因して複合発電システム全体の熱効率の低下を招く問題があった。また、不純物が混在するような粗悪燃料に対しては、翼表面に形成した小孔に目詰りの生じる恐れがあるため適用できない問題もあった。 【0012】 そこで、このような不具合を解消するために、最近、特公昭63-40244号公報や、特開平4-124414号公報に示されているように、空気に較べて比熱が約2倍と大きい蒸気を冷却媒体として使用することが考えられている。すなわち、蒸気タービン系で用いる蒸気の一部をガスタービンの翼に設けられている冷却通路に通流させて翼を冷却し、冷却に供された蒸気を残りの蒸気と一緒に蒸気タービンに供給するようにしている。 【0013】 このような複合発電システムでは、空気より少ない量の蒸気を使い、しかもこの蒸気を翼外に吹出さずに翼を良好に冷却でき、そのうえ翼の冷却に用いた蒸気を回収して蒸気タービンに送込むことができる。したがって、この方式を採用すると、主流ガスの温度を低下させることがなく、燃焼器での燃料および空気の増加を抑制できるので熱効率を向上でき、しかも粗悪燃料にも対応できる。 【0014】 しかし、ガスタービンの翼を蒸気で冷却するようにした従来の複合発電システムにあっては、蒸気タービン系統で用いる蒸気の一部をガスタービンの翼に設けられた冷却通路に通流させ、この冷却通路に通流させた後の蒸気と残りの蒸気とを蒸気タービンの入口において合流させ、この合流蒸気を蒸気タービンに供給するようにしているので、蒸気タービンの入口における蒸気流量,蒸気圧、蒸気温度を目標値に合せることが困難で、制御性に劣り、これが原因して最大の熱効率で運転することが困難であった。 【0015】 【発明が解決しようとする課題】 上述の如く、従来の複合発電システム、特にガスタービンの翼を蒸気で冷却する方式を採用したものにあっては、蒸気タービンを最大の熱効率で運転することが困難で、これが原因して総合熱効率を目標通りに上げることが困難であった。 そこで本発明は、蒸気冷却方式の特徴を損なうことなく、総合熱効率の向上を図れる複合発電システムを提供することを目的としている。 【0016】 【課題を解決するための手段】 上記目的を達成するために、本発明は、ガスタービン系統と、このガスタービン系統の排熱を排熱回収ボイラで回収して得た蒸気でタービンを駆動する蒸気サイクルを備えた蒸気タービン系統と、前記排熱回収ボイラで得られた蒸気の一部を前記ガスタービンの翼に設けられた冷却通路を経由させて前記蒸気サイクルへ戻すガスタービン翼冷却系統とを備えた複合発電システムにおいて、前記排熱回収ボイラは高圧水が導かれる第1の高圧ドラムと、前記第1の高圧ドラム内の高圧水の一部を蒸発させて前記第1の高圧ドラムの上部空間に還流させる第1の高圧蒸発器と、前記第1の高圧ドラム内の高圧水の一部が導かれる第2の高圧ドラムと、前記第2の高圧ドラム内の高圧水を蒸発させて前記第2の高圧ドラムの上部空間に還流させる第2の高圧蒸発器を有しており、前記第2の高圧ドラムの上部空間から前記冷却通路に蒸気を供給し、前記冷却通路を通った蒸気を全量回収して前記第1の高圧ドラムの上部空間から案内された蒸気と混合した後に前記蒸気サイクルの加熱過程領域へ戻し、加熱して前記タービンへ導くように前記ガスタービン冷却系統が構成されている。 【0017】 【作用】 ガスタービンの翼を冷却した後の蒸気を蒸気サイクルの加熱過程領域へ戻すようにガスタービン翼冷却系統が構成されているので、ガスタービンの翼を冷却した後の蒸気は、蒸気サイクルの加熱過程領域において残りの蒸気と合流し、この合流蒸気が加熱過程領域で再加熱された後に蒸気タービンに供給されることになる。したがって、蒸気タービンの入口における蒸気流量,蒸気圧力,蒸気温度を目標値に合せることが容易となり、結局、最大の熱効率で運転することが可能となる。 【0018】 【実施例】 以下、図面を参照しながら実施例を説明する。 【0019】 図1には本発明の一実施例に係る複合発電システムの系統図が示されている。 この複合発電システムは、ガスタービン系統41と、このガスタービン系統41の排熱エネルギで駆動される蒸気タービン系統42と、この蒸気タービン系統42の蒸気の一部を使用してガスタービンの翼を冷却するガスタービン翼冷却系統43とで構成されている。 【0020】 ガスタービン系統41は、ガスタービン111と、このガスタービン111に軸112を介して連結された圧縮機113と、この圧縮機113から送り出された高圧空気と燃料とを導入して燃焼させ、この燃焼によって得られた高温高圧ガスでガスタービン111を駆動する燃焼器114とで構成されている。 【0021】 圧縮機113は、通路115を介して導かれた常温空気を圧縮する。圧縮機113から送り出された高圧空気は、燃焼器114へ導かれる。燃焼器114は高圧空気を支燃ガスとして図示しない燃料供給系統から供給された燃料を燃焼させる。燃焼によって得られた高温ガスは、通路116を介してガスタービン111に供給され、膨脹してガスタービン111に駆動力を与えた後に通路117へと流れる。 【0022】 蒸気タービン系統42は、蒸気タービン118と、軸119を介して蒸気タービン118に連結された発電機120と、前述したガスタービン系統41の排熱で蒸気を発生させ、この蒸気で蒸気タービン118を駆動する蒸気サイクル121とで構成されている。なお、この図では蒸気タービン118のロータとガスタービン111のロータとが軸122で連結されている例が示されている。 【0023】 蒸気サイクル121は、通路117を介して導かれたガスタービン111の排ガスから熱を回収して蒸気タービン118の駆動に必要な高温高圧蒸気を発生させる排熱回収ボイラ123を備えている。排熱回収ボイラ123を通った排ガスは、煙道124を介して大気中へ排出される。排熱回収ボイラ123内には上流側から下流側にかけて順に高圧加熱器125,第2の高圧蒸発器126,第1の高圧蒸発器127,高圧予熱器128が設けてあり、これらと蒸気タービン118とが次のような関係に接続されて蒸気サイクル121が形成されている。 【0024】 すなわち、蒸気タービン118から排出された蒸気を、通路129を介して復水器130へ供給し、この復水器130で常温水に戻す。この戻された常温水を循環ポンプ131,通路132を介して高圧予熱器128に導いて予熱した後、通路133を介して第1の高圧ドラム134に導入する。そして、第1の高圧ドラム134内の高圧水を、循環ポンプ135を介して第1の高圧蒸発器127に導いて蒸発させ、この蒸発によって生成された高圧高温の蒸気を通路136を介して第1の高圧ドラム134の上部空間に戻す。この戻された蒸気を通路137,合流点138,通路139を介して高圧加熱器125に導き、ここで再加熱した後に通路140を介して蒸気タービン118に供給するようにしている。 【0025】 一方、ガスタービン翼冷却系統43は、次のように構成されている。すなわち、第1の高圧ドラム134内に存在する高圧水の一部をポンプ141,通路142を介して第2の高圧ドラム143に導き、この第2の高圧ドラム143内の高圧水を、循環ポンプ144,通路145を介して第2の高圧蒸発器126に導いて蒸発させ、この蒸発によって生成された高圧高温の蒸気を通路146を介して第2の高圧ドラム143の上部空間に戻す。この戻された蒸気を通路147,流量調節弁148を介してガスタービンの翼149に形成されている冷却通路150に供給する。この冷却通路150は、主流ガスの通路とは完全に分離された構成となっている。そして、冷却通路150を通った蒸気を通路151を介して合流点138で第1の高圧ドラム134側から案内された蒸気と合流させるようにしている。なお、図中152はバイパス弁を示している。 【0026】 このような構成であると、通路147を介して案内された蒸気は流量調整弁148を介してガスタービン111の翼149に形成されている冷却通路150内を流れて翼149の冷却に供される。冷却通路150は、外部に対して解放されていない。したがって、冷却通路150を通流する蒸気は主流ガスに混入することがなく、主流ガスの温度を低下させることがないので、燃焼器114での燃料および空気の増加を抑制でき、熱効率の向上を図ることができる。しかも粗悪燃料にも対応できる。 【0027】 そして、特にこの例においては、冷却通路150を通った蒸気を通路151を介して合流点138、つまり蒸気サイクル121の加熱過程領域において第1の高圧ドラム134側から案内された蒸気と合流させ、この合流蒸気を高圧加熱器125で再加熱した後に蒸気タービン118に供給するようにしているので、ガスタービン翼冷却系統43の影響を受けずに蒸気タービン118の入口における蒸気流量、蒸気圧力,蒸気温度を目標値に容易に合せることができ、結局、最大の熱効率で運転することが可能となる。 【0028】 図3には本発明に係る複合発電システムの総合効率と従来のシステムのそれとが示されている。この図から判るように、本発明に係る複合発電システムでは蒸気タービン側の効率を向上させることができるので、特にガスタービン入口温度の高い領域において総合効率を大幅に向上させることができる。 【0029】 図2には本発明の他の実施例に係る複合発電システムの系統図が示されている。この図では図1と同一部分が同一符号で示されている。したがって、重複する部分の詳しい説明は省略する。 【0030】 この実施例に係るシステムが図1に示すものと異なる点は、ガスタービン翼冷却系統43aの構成にある。すなわち、このガスタービン翼冷却系統43aでは、流量調整弁148と冷却通路150との間に位置する通路を流量調整弁153を介して圧縮機113の出口に接続可能にするとともに、バイパス弁152と合流点138との間に位置する通路に弁154を介在させ、さらにバイパス弁152と弁154との間に位置する通路を弁155を介して通路117に接続可能としている。 【0031】 このような構成であると、図1に示した実施例と同様の効果が得られることは勿論のこと、タービンの起動・停止時や部分負荷運転時のように、第2の高圧ドラム143から翼冷却用の蒸気を供給することが著しく困難なときに、蒸気に代えて圧縮機113から吐出された空気の一部を冷却通路150に通流させて翼149を空気冷却することができる。すなわち、流量調節弁148,バイパス弁152,弁154を“閉”に制御するとともに、流量調節弁153,弁155を“開”に制御すると、圧縮機113から吐出された高圧空気の一部を流量調節弁153〜冷却通路150〜弁155〜通路117の経路で通流させることができ、蒸気経路を完全に切り離して翼149を空気冷却することができる。 【0032】 したがって、上記のように構成するすることによって、タービンの起動・停止時、部分負荷運転時、定常運転時のいかなる運転状況においても、ガスタービン111の翼149を良好に冷却することができる。 【0033】 【発明の効果】 以上説明したように、本発明によれば、蒸気タービン系統で用いる蒸気の一部を使用してガスタービンの翼を冷却する方式の特徴を損なうことなく、蒸気タービンの入口における蒸気流量、圧力、温度を容易に制御できるので、蒸気タービンの熱効率向上に寄与でき、もって総合熱効率を一層向上させることができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明の一実施例に係る複合発電システムの系統図 【図2】 本発明の他の実施例に係る複合発電システムの系統図 【図3】 本発明に係る複合発電システムの総合熱効率と従来の複合発電システムのそれとを示す図 【図4】 従来の複合発電システムの系統図 【符号の説明】 41…ガスタービン系統 42…蒸気タービン系統 43,43a…ガスタービン翼冷却系統 111…ガスタービン 113…圧縮機 114…燃焼器 118…蒸気タービン 120…発電機 121…蒸気サイクル 123…排熱回収ボイラ 125…高圧加熱器 126…第2の高圧蒸発器 127…第1の高圧蒸発器 128…高圧予熱器 130…復水器 134…第1の高圧ドラム 138…合流点 143…第2の高圧ドラム 148,153…流量調整弁 152…バイパス弁 154,155…弁 |
訂正の要旨 |
訂正の要旨 ア.訂正事項a 特許第3068348号発明の明細書中の特許請求の範囲の請求項1について、「排熱回収ボイラで回収して得た蒸気タービンを駆動する」を、誤記の訂正を目的として、「排熱回収ボイラで回収して得た蒸気でタービンを駆動する」と訂正する。 イ.訂正事項b 特許第3068348号発明の明細書中の特許請求の範囲の請求項1について、「複合発電システムにおいて、前記ガスタービン翼冷却系統は、前記冷却通路を通った蒸気を全量回収して前記排熱回収ボイラにて得られた蒸気の残部と混合した後に」を、特許請求の範囲の減縮を目的として、「複合発電システムにおいて、前記排熱回収ボイラは高圧水が導かれる第1の高圧ドラムと、前記第1の高圧ドラム内の高圧水の一部を蒸発させて前記第1の高圧ドラムの上部空間に還流させる第1の高圧蒸発器と、前記第1の高圧ドラム内の高圧水の一部が導かれる第2の高圧ドラムと、前記第2の高圧ドラム内の高圧水を蒸発させて前記第2の高圧ドラムの上部空間に還流させる第2の高圧蒸発器を有し、前記ガスタービン翼冷却系統は、前記第2の高圧ドラムの上部空間から前記冷却通路に蒸気を供給し、前記冷却通路を通った蒸気を全量回収して前記第1の高圧ドラムの上部空間から案内された蒸気と混合した後に」と訂正する。 ウ.訂正事項c 特許第3068348号発明の明細書の発明の詳細な説明の記載について、段落【0007】中の、「通路32を介して高圧ドラム32に導入する。そして、高圧ドラム32内の高圧水を、循環ポンプ34,通路35を介して高圧蒸発器25に導いて蒸発させ、この蒸発によって生成された高圧高温の蒸気を通路36を介して高圧ドラム32の上部空間に戻す。」を、誤記の訂正を目的として、「通路32を介して高圧ドラム33に導入する。そして、高圧ドラム33内の高圧水を、循環ポンプ34,通路35を介して高圧蒸発器25に導いて蒸発させ、この蒸発によって生成された高圧高温の蒸気を通路36を介して高圧ドラム33の上部空間に戻す。」と訂正する。 エ.訂正事項d 特許第3068348号発明の明細書の発明の詳細な説明の記載について、段落【0016】中の、「このガスタービン系統の排熱を排熱回収ボイラで回収して得た蒸気タービンを駆動する蒸気サイクルを備えた蒸気タービン系統と、前記排熱回収ボイラで得られた蒸気の一部を前記ガスタービンの翼に設けられた冷却通路を経由させて前記蒸気サイクルへ戻すガスタービン翼冷却系統とを備えた複合発電システムにおいて、前記冷却通路を通った蒸気を全量回収して前記排熱回収ボイラにて得られた蒸気の残部と混合した後に」を、明りょうでない記載の釈明を目的として、「このガスタービン系統の排熱を排熱回収ボイラで回収して得た蒸気でタービンを駆動する蒸気サイクルを備えた蒸気タービン系統と、前記排熱回収ボイラで得られた蒸気の一部を前記ガスタービンの翼に設けられた冷却通路を経由させて前記蒸気サイクルへ戻すガスタービン翼冷却系統とを備えた複合発電システムにおいて、前記排熱回収ボイラは高圧水が導かれる第1の高圧ドラムと、前記第1の高圧ドラム内の高圧水の一部を蒸発させて前記第1の高圧ドラムの上部空間に還流させる第1の高圧蒸発器と、前記第1の高圧ドラム内の高圧水の一部が導かれる第2の高圧ドラムと、前記第2の高圧ドラム内の高圧水を蒸発させて前記第2の高圧ドラムの上部空間に還流させる第2の高圧蒸発器を有しており、前記第2の高圧ドラムの上部空間から前記冷却通路に蒸気を供給し、前記冷却通路を通った蒸気を全量回収して前記第1の高圧ドラムの上部空間から案内された蒸気と混合した後に」と訂正する。 |
異議決定日 | 2001-09-14 |
出願番号 | 特願平4-241842 |
審決分類 |
P
1
651・
113-
YA
(F01K)
P 1 651・ 121- YA (F01K) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 亀田 貴志 |
特許庁審判長 |
西野 健二 |
特許庁審判官 |
栗田 雅弘 清水 信行 |
登録日 | 2000-05-19 |
登録番号 | 特許第3068348号(P3068348) |
権利者 | 株式会社東芝 |
発明の名称 | 複合発電システム |
代理人 | 外川 英明 |
代理人 | 外川 英明 |