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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  F16L
管理番号 1053208
異議申立番号 異議2000-73699  
総通号数 27 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-11-11 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-09-30 
確定日 2001-11-01 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3042880号「現存のパイプラインにインナチューブを装着する方法および装置並びにその中に装着された熱可塑性の伸張されたインナチューブを有するパイプライン」の請求項1ないし6に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3042880号の請求項1ないし6に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3042880号の発明についての出願は、平成3年6月27日(パリ条約による優先権主張1990年7月5日、オランダ国)に出願され、平成12年3月10日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、木島睦也及び三井化学株式会社より特許異議の申立てがなされ、取消理由の通知がなされ、その指定期間内である平成13年6月4日に意見書の提出とともに訂正請求がなされたものである。
2.訂正の適否
(1)訂正の内容
訂正事項a
請求項1の「現存のパイプライン」との記載を、「湾曲部又は狭窄部を有する現存のパイプライン」と訂正する。
訂正事項b
請求項5の「媒質輸送用パイプライン」との記載を、「湾曲部又は狭窄部を有する現存の媒質輸送用パイプラインであって、前記パイプライン」と訂正する。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記訂正事項a及びbは、特許明細書中に記載された事項(特許公報第2頁4欄13行〜17行)に基づいて「パイプライン」を「湾曲部又は狭窄部を有するパイプライン」に限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)むすび
したがって、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
3.特許異議の申立ての概要
(1)申立人木島睦也は、甲第1号証〜甲第5号証を提出して、概略「本件特許の請求項1、2、4及び5に係る各特許発明は、甲第1号証〜甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。また、本件特許の請求項6に係る特許発明は、明細書の発明の詳細な説明に記載したものではなく、特許法第36条第5項の要件を具備しておらず、特許を受けることができないものである。したがって、本件発明の特許は、取り消すべきものである。」旨主張している。
〈証拠方法〉
甲第1号証;特開平1-253425号公報
甲第2号証;米国特許第4818314号明細書
甲第3号証;特開昭62-220318号公報
甲第4号証;特開昭52-49278号公報
甲第5号証;特許第3042880号公報
(2)申立人三井化学株式会社は、甲第1号証〜甲第3号証を提出して、概略「本件特許の請求項1〜6に係る発明は、甲第1号証〜甲第3号証に記載された発明と同一であるか、或いは甲第1号証〜甲第3号証に記載された発明より当業者が容易になし得た発明であるから、特許法第29条第1項第3号又は同法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、上記発明に係る特許は、同法第113条第1項第2号の規定により取り消されるべきものである。」旨主張している。
〈証拠方法〉
甲第1号証;特開昭63-162221号公報
甲第2号証;特開平1-253425号公報
甲第3号証;特開昭51-49270号公報
4.特許異議の申立てについての判断
(1)本件訂正発明1〜6
訂正明細書の請求項1〜6に係る発明(以下、それぞれ「本件訂正発明1」〜「本件訂正発明6」という。)は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「1)湾曲部又は狭窄部を有する現存のパイプライン内へ、前記パイプラインの内径よりも小さい外径を有する熱可塑性材料のインナチューブを挿入し、前記インナチューブを半径方向に伸張又は拡大して前記インナチューブを前記パイプラインの内壁面と緊密に係合させることによって前記パイプラインに前記インナチューブを装着する方法であって、前記インナチューブを折り畳むことなく前記パイプラインに導入し、かつ、前記インナチューブの外径対前記パイプラインの内径の比が0.6未満であることを特徴とする方法。
2)請求項1に記載の方法であって、加熱流体を前記インナチューブ内に導入して加熱し、さらに前記インナチューブの一端を閉じて前記インナチューブ内に加圧空気を導入するすることにより前記インナチューブを半径方向に伸張又は拡大することを特徴とする方法。
3)請求項1又は2に記載の方法であって、さらに前記インナチューブを挿入中、前記インナチューブをプラスチックのガラス転移温度より高く、結晶融点より低い温度まで加熱することを特徴とする方法。
4)請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法であって、前記インナチューブの半径方向への伸張又は拡大後の壁厚が1mm未満であることを特徴とする方法。
5)湾曲部又は狭窄部を有する現存の媒質輸送用パイプラインであって、前記パイプラインの内壁面に緊密に係合するプラスチック製インナチューブを有し、前記インナチューブが折り畳まれることなく前記パイプラインに導入され、かつ、前記インナチューブの外径対前記パイプラインの内径の比が0.6未満であることを特徴とするパイプライン。
6)請求項5に記載のパイプラインであって、前記パイプラインが飲料水輸送用鉛チューブであり、さらに前記インナチューブの外径対前記パイプラインの内径の比が0.2〜0.5の範囲であり、かつ前記インナチューブが熱可塑性ポリエステルからなることを特徴とするパイプライン。」
(2)引用刊行物
当審が通知した取消理由に引用した刊行物1(特開昭63-162221号公報;申立人三井化学株式会社の甲第1号証)には、管の内張り工法に関して、下記の事項が図面とともに記載されている。
記載事項ア;「本発明工法に於ては、内張り用の管体が用いられ、この管体は、内張りを施すべき管、例えば水道管、都市ガス管、ガス室内配管、加熱流体輸送管、排気ダクトなどの管内に挿入後に加熱軟化され、半径方向に拡張される。而して管体は熱可塑性合成樹脂製であることが必要であり、例えばポリ塩化ビニル管、ポリエチレン管、ポリプロピレン管等のうちから適宜選択使用される。・・・中略・・・管体としては、管内への挿入性を考慮して可撓性のあるものを用いることが好ましい。管体の外径は管内への挿入に支障のない程度のものであれば特に制限されないが、管の口径に比較して、あまりに口径が小さすぎると、内張り操作時の拡張率が大となり、拡張作業面で好ましくない結果を招く虞があるので、管内への挿入作業に支障のない範囲でできるだけ口径の大きいものが適当であり、通常は管の内径の9/10〜5/10程度の外径(直径)のものが用いられる。管体の肉厚は拡張内張り後に於ても保形性をそのまま保持し管体としての強度を維持できるような範囲であることが必要であり、通常は1〜10mm程度の範囲から、拡張率、口径及び材質などに応じて適宜決定される。
上記管体内に設置されるプラグは、拡張後の管体を管内面に圧着するために該管体内に供給される加圧流体の閉栓としての働きと、加熱軟化状態の未拡張管体を内張り状態に近い状態まで半径方向に拡張するための拡張部材としての働きを持つ。」(第2頁右上欄12行〜右下欄6行)
記載事項イ;「本工法に於ては、管体(2)は可撓性を有していることが必要であり、この可撓性管体(2)は管(a)の曲管部(a1)への通過性を改善するために、第4図に示す通り例えば加熱ロール(9)…の適用のものに偏平加工される。偏平加工後の管体(2)は、その偏平形状と可撓性とにより、第4図に示された矢符(10)方向への屈曲自在性を有する。
第5図は偏平加工された管体(2)の管(a)内挿入工程を示し、この挿入工程に於ては、管体(2)はその屈曲自在性により管(a)の曲管部(a1)を支障なく通過できる。
第6図は、管(a)内挿入の管体(2)の内張り工程を示し、この内張り工程に於て、管体(2)はプラグ(1A)による半径方向への拡張時に偏平形状から元の円形々状に戻り、加圧空気による内張り圧着を支障なく達成できる。」(第4頁左上欄7行〜右上欄5行)
同じく引用した刊行物2(特開平1-253425号公報;申立人木島睦也の甲第1号証、申立人三井化学株式会社の甲第2号証)には、管内面の硬質チューブライニング工法に関して、下記の事項が図面とともに記載されている。
記載事項ウ;「第1図は管内挿入の硬質チューブ(1)の加熱工程の状況を、また第2図は加圧膨脹工程の状況を、それぞれ示している。硬質チューブ(1)としては、常法通り塩化ビニル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのような軟化点80℃付近の汎用の合成樹脂、例えば塩化ビニル樹脂製のものが使用される。硬質チューブ(1)は管(a)の口径(内径)の略々50〜70%に相当する外径を持ち、断面円形又はこれより偏平加工された状態で、管(a)の全長に亘って挿入されている。上記チューブ(1)内には、全長に亘り先端閉塞の多孔ホース(2)が、予め或は管(a)内挿入後に挿入され、該ホース(2)の基端側は予熱装置(12)及び流量調整弁(3)を備えた導管(4)を介して加圧空気供給源例えばコンプレッサ(図示せず)に接続されている。硬質チューブ(1)の両端は、栓(5a),(5b)により閉塞され、該チューブ(1)内は一端側に於て、栓(5a)に形成した供給孔(6)及びこれに接続する流量調整弁(7)付導管(8)を介してスチーム供給源例えばボイラ(図示せず)に連絡され、また他端側に於て、栓(5b)に形成した排気孔(9)及びこれに接続する流量調整弁(10)付排気管(11)を介して外部に開口されている。
第1図に示す状態でスチームを・・・中略・・・低圧力に保持されるように供給すると、チューブ(1)内のスチームの飽和温度は100〜105℃程度となり、よって硬質チューブ(1)は100〜105℃程度のスチームにより加熱される。このスチーム加熱は、硬質チューブ(1)の外表面の温度が加熱膨張に最適の加熱軟化状態が得られるような温度例えば90〜105℃程度の温度になるまで継続される。・・・中略・・・
スチーム加熱により硬質チューブ(1)の外表面の温度が90〜105℃程度の温度となり、最大の伸び率が得られるような最適の軟化状態に至った時は、スチームによる加熱を継続した状態のままで、加圧空気をコンプレッサ(図示せず)から導管(4)及び多孔ホース(2)を通じて硬質チューブ(1)内に、流量調整弁(3)の制御によりチューブ(1)内圧力が、加圧膨脹に必要な圧力例えば1.0〜1.5kg/cm2(ゲージ圧)に昇圧されるように供給する。」(第2頁左下欄2行〜第3頁左上欄16行)
同じく引用した刊行物3(特開昭52-49278号公報;申立人木島睦也の甲第4号証)には、管体の内面に熱可塑性樹脂を被覆する方法に関して、下記の事項が図面とともに記載されている。
記載事項エ;「このうち、管体に熱可塑性樹脂パイプを挿入後、パイプ内に高温加圧流体を送ってパイプを軟化、膨張させて樹脂を管体に密着する方法が従来より広く行われているが、この方法では熱可塑性樹脂パイプの温度が樹脂の軟化点以上、融点以下の範囲で被覆する必要があるため、管体と樹脂の密着性は必ずしも十分でなく、また温度コントロールを厳密にせねばならず、更に肉厚の薄い被覆は困難である等の欠点があった。」(第1頁右下欄12行〜第2頁左上欄1行)
記載事項オ;「この樹脂層は厚さが10μないし10mm、好ましくは100μないし1mmの範囲のものを使用しうる。」(第2頁右上欄17行〜19行)
同じく引用した刊行物4(特開昭51-49270号公報;申立人三井化学株式会社の甲第3号証)には、金属管内面のコーテイング方法に関して、下記の事項が図面とともに記載されている。
記載事項カ;「本発明に使用する金属管は鉄、鋳鉄、アルミニウム或いは銅製の管などがあげられる。
プラスチックチューブとしては、例えばポリエステル系、ポリアミド系、ポリアクリル系、ポリオレフィン系およびポリ塩化ビニル系等の樹脂からなるチューブが使用される。」(第3頁左上欄17行〜右上欄2行)
(3)対比・判断
【本件訂正発明1について】
刊行物1に記載された上記記載事項ア、イからみて、刊行物1に記載された発明の「内張りを施すべき管」及び「熱可塑性樹脂製の管体」は、各々本件訂正発明1の「湾曲部を有する現存のパイプライン」及び「熱可塑性材料のインナチューブ」に相当し、刊行物1に記載された発明の熱可塑性樹脂製の管体も、折り畳むことなく内張りを施すべき管内に挿入され、拡張内張りされるものである(記載事項ア、イ及び第4〜6図参照。)から、本件訂正発明1の用語を使用して本件訂正発明1と刊行物1に記載された発明とを対比すると、両者は、「湾曲部を有する現存のパイプライン内へ、前記パイプラインの内径よりも小さい外径を有する熱可塑性材料のインナチューブを挿入し、前記インナチューブを半径方向に伸張又は拡大して前記インナチューブを前記パイプラインの内壁面と緊密に係合させることによって前記パイプラインに前記インナチューブを装着する方法であって、前記インナチューブを折り畳むことなく前記パイプラインに導入する方法。」で一致しており、下記の点で相違している。
相違点;本件訂正発明1では、インナチューブの外径対パイプラインの内径の比が0.6未満であるのに対して、刊行物1に記載された発明では、熱可塑性樹脂製の管体(インナチューブ)としては、通常は管(パイプライン)の内径の9/10〜5/10程度の外径(直径)のものが用いられる点。
上記相違点について検討するに、刊行物1に記載された発明では、上記記載事項アから理解されるように、インナチューブとして使用する熱可塑性樹脂製の管体は、管内への挿入性を考慮して可撓性のあるものが好ましく、管体の口径については、管内への挿入に支障のない程度のものであれば特に制限されるものではないが、管の口径に比較して、あまりに口径が小さすぎると、内張り操作時の拡張率が大となって拡張作業面で好ましくない結果を招く虞があることを考慮して、通常の口径の範囲としては、管(パイプライン)の内径の9/10〜5/10程度の外径のものを用いるとしたものであるから、管体の口径として本件訂正発明1のように0.6未満(6/10未満)とすることを排除したものではない。
そうすると、本件訂正発明1のようにインナチューブの外径対パイプラインの内径の比を0.6未満とすることは、当業者であればパイプラインへのインナチューブの挿入性(小径であるほど挿入性は向上する)と内張り時の拡張作業面での支障(小径であるほど拡張作業面で支障が生じる)の程度を総合勘案して適宜採用することができる程度のことであって、格別困難なことではない。
また、本件訂正発明1の効果も、刊行物1に記載された発明から当業者であれば予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。
したがって、本件訂正発明1は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認める。
ところで、権利者は、概略「刊行物1に記載された発明は、本発明の特徴である特定の選択された材料のインナチューブの外径を挿入される管の内径との比で0.6未満とすることで、挿入管体を何ら加工(折り畳み、偏平化)することなく挿入可能として解決する方法とはその技術的思想が全く異なるものである。」旨主張しているが、刊行物1には、実施例として管体に偏平加工を施してはいるが、上記記載事項ア(問題点を解決するための手段)には、格別偏平加工については記載されていないことからも理解できるように、刊行物1に記載された発明も、管体(インナチューブ)を熱可塑性樹脂製の可撓性のある適宜な口径の管体とすることにあるものであって、偏平加工は、可撓性の管体にさらに屈曲自在性を向上させるために施すものであるから、本件訂正発明1と刊行物1に記載された発明とでは技術的思想が異なるものではなく、権利者の上記主張は採用することができない。
【本件訂正発明2について】
本件訂正発明2は、本件訂正発明1の技術事項を引用するとともに、「加熱流体をインナチューブ内に導入して加熱し、さらにインナチューブの一端を閉じてインナチューブ内に加圧空気を導入することによりインナチューブを半径方向に伸張又は拡大すること」と構成を限定したものであるが、刊行物1に記載された発明でも、プラグによる拡張は内張り状態に近い状態までであって、最終的には加圧空気で拡張内張りするものである。
そして、インナチューブの半径方向への伸張、拡大手段として、加熱空気で加熱拡大した後、加圧空気を導入して最終的に内張りする手段を採用することは、刊行物2(記載事項ウ参照)にも記載されているように本願出願前当業者には知られた事項である。
そうすると、刊行物1に記載された拡張・内張り手段に代えて刊行物2に記載された拡張・内張り手段を採用して本件訂正発明2のようにすることは、当業者が必要に応じて容易に採用することができる程度の事項と認める。
また、本件訂正発明2の効果も、刊行物1及び2に記載された発明から当業者であれば予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。
したがって、本件訂正発明2は、刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認める。
【本件訂正発明3について】
本件訂正発明3は、本件訂正発明1又は2の技術事項を引用するとともに、「さらにインナチューブを挿入中、インナチューブをプラスチックのガラス転移温度より高く、結晶融点より低い温度まで加熱すること」と構成を限定したものであるが、本件訂正発明3のようにインナチューブを挿入中、インナチューブをガラス転移温度より高く、結晶融点より低い温度まで加熱することは、刊行物2(記載事項ウ参照)及び刊行物3(記載事項エ参照)にも記載されているように本願出願前普通に採用されている技術事項にすぎないものであるから、本件訂正発明3のようにインナチューブを加熱することは、当業者であれば普通に採用することができる程度の事項にすぎないものである。
また、本件訂正発明3の効果も、刊行物1〜3に記載された発明から当業者であれば予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。
したがって、本件訂正発明3は、刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認める。
【本件訂正発明4について】
本件訂正発明4は、本件訂正発明1〜3のいずれかの技術事項を引用するとともに、「インナチューブの半径方向への伸張又は拡大後の壁厚が1mm未満であること」と構成を限定したものであるが、刊行物1にも記載(記載事項ア参照)されているように管体(インナチューブ)の壁厚は、拡張率、口径及び材質などに応じて適宜決定されるものである。
そして、刊行物1に記載された発明でも、管体として1mmの壁厚のものを採用した場合には、拡大後には1mm未満になることは自明の事項であり、刊行物3(記載事項オ参照)にも本件訂正発明4と同様の壁厚とした樹脂層(インナチューブ)を採用することが記載されているから、本件訂正発明4のような壁厚とすることは、当業者であれば適宜採用することができる程度の事項にすぎないものである。
また、本件訂正発明4の効果も、刊行物1〜3に記載された発明から当業者であれば予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。
したがって、本件訂正発明4は、刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認める。
【本件訂正発明5について】
刊行物1に記載された上記記載事項ア、イからみて、刊行物1に記載された発明の「内張りを施すべき管」及び「熱可塑性樹脂製の管体」は、各々本件訂正発明5の「湾曲部を有する現存の媒質輸送用パイプライン」及び「プラスチック製インナチューブ」に相当し、刊行物1に記載された発明の熱可塑性樹脂製の管体も、折り畳むことなく内張りを施すべき管内に挿入され、拡張内張りされるものである(記載事項ア、イ及び第4〜6図参照。)から、本件訂正発明5の用語を使用して本件訂正発明5と刊行物1に記載された発明とを対比すると、両者は、「湾曲部を有する現存の媒質輸送用パイプラインであって、前記パイプラインの内壁面に緊密に係合するプラスチック製インナチューブを有し、前記インナチューブが折り畳まれることなく前記パイプラインに導入されるパイプライン。」で一致しており、下記の点で相違している。
相違点;本件訂正発明5では、プラスチック製インナチューブの外径対媒質輸送用パイプラインの内径の比が0.6未満であるのに対して、刊行物1に記載された発明では、熱可塑性樹脂製の管体(プラスチック製インナチューブ)は、通常は管(媒質輸送用パイプライン)の内径の9/10〜5/10程度の外径(直径)のものである点。
上記相違点について検討するに、刊行物1に記載された発明では、上記記載事項アから理解されるように、インナチューブとして使用する熱可塑性樹脂製の管体は、管内への挿入性を考慮して可撓性のあるものが好ましく、管体の口径については、管内への挿入に支障のない程度のものであれば特に制限されるものではないが、管の口径に比較して、あまりに口径が小さすぎると、内張り操作時の拡張率が大となって拡張作業面で好ましくない結果を招く虞があることを考慮して、通常の口径の範囲としては、管(媒質輸送用パイプライン)の内径の9/10〜5/10程度の外径のものを用いるとしたものであるから、管体の口径として本件訂正発明5のように0.6未満(6/10未満)とすることを排除したものではない。
そうすると、本件訂正発明5のようにプラスチック製インナチューブの外径対媒質輸送用パイプラインの内径の比を0.6未満とすることは、当業者であれば媒質輸送用パイプラインへのプラスチック製インナチューブの挿入性(小径であるほど挿入性は向上する)と内張り時の拡張作業面での支障(小径であるほど拡張作業面で支障が生じる)の程度を総合勘案して適宜採用することができる程度のことであって、格別困難なことではない。
また、本件訂正発明5の効果も、刊行物1に記載された発明から当業者であれば予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。
したがって、本件訂正発明5は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認める。
【本件訂正発明6について】
本件訂正発明6は、本件訂正発明5の技術事項を引用するとともに、「パイプラインが飲料水輸送用鉛チューブであり、さらにインナチューブの外径対パイプラインの内径の比が0.2〜0.5の範囲であり、かつインナチューブが熱可塑性ポリエステルからなること」と構成を限定したものであるが、引用例1(記載事項ア参照)には、内張りを施すべき管として水道管(飲料水輸送用チューブ)が例示されており、水道管に鉛管を使用することは、本願出願前周知の事項にすぎないものである。
そして、上記したように管体(プラスチック製インナチューブ)の外径は、管(媒質輸送用パイプライン)への管体(プラスチック製インナチューブ)の挿入性(小径であるほど挿入性は向上する)と内張り時の拡張作業面での支障(小径であるほど拡張作業面で支障が生じる)の程度を総合勘案して適宜の外径のものが採用されるものであるから、本件訂正発明6のようにインナチューブの外径対パイプラインの内径の比を0.2〜0.5の範囲とすることは、当業者であれば適宜採用することができる程度の事項にすぎないものである。
さらに、刊行物1には、熱可塑性樹脂製の管体の材料に熱可塑性ポリエステルを採用することの直接的な記載はないが、インナチューブに使用する熱可塑性樹脂材料として熱可塑性ポリエステルを使用することは、刊行物4(記載事項カ参照)にも記載されているように本願出願前当業者には知られた事項にすぎないものであるから、インナチューブを熱可塑性ポリエステルとすることも、当業者であれば適宜採用することができる程度の事項にすぎないものである。
そうすると、本件訂正発明6のように構成を限定することは、当業者であれば適宜採用することができる程度の事項にすぎないものであって、格別困難なことではない。
また、本件訂正発明6の効果も、刊行物1及び4に記載された発明並びに本願出願前周知の事項から当業者であれば予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。
したがって、本件訂正発明6は、刊行物1及び4に記載された発明並びに本願出願前周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認める。
(4)むすび
以上のとおりであるから、本件訂正発明1〜6は、刊行物1〜4に記載された発明並びに本願出願前周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正発明1〜6は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明(本件訂正発明1〜6)についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
現存のパイプラインにインナチューブを装着する方法および装置並びにその中に装着された熱可塑性の伸張されたインナチョーブを有するパイプライン
(57)【特許請求の範囲】
1)湾曲部又は狭窄部を有する現存のパイプライン内へ、前記パイプラインの内径よりも小さい外径を有する熱可塑性材料のインナチューブを挿入し、前記インナチューブを半径方向に伸張又は拡大して前記インナチューブを前記パイプラインの内壁面と緊密に係合させることによって前記パイプラインに前記インナチューブを装着する方法であって、前記インナチューブを折り畳むことなく前記パイプラインに導入し、かつ、前記インナチューブの外径対前記パイプラインの内径の比が0.6未満であることを特徴とする方法。
2)請求項1に記載の方法であって、加熱流体を前記インナチューブ内に導入して加熱し、さらに前記インナチューブの一端を閉じて前記インナチューブ内に加圧空気を導入するすることにより前記インナチューブを半径方向に伸張又は拡大することを特徴とする方法。
3)請求項1又は2に記載の方法であって、さらに前記インナチューブを挿入中、前記インナチューブをプラスチックのガラス転移温度より高く、結晶融点より低い温度まで加熱することを特徴とする方法。
4)請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法であって、前記インナチューブの半径方向への伸張又は拡大後の壁厚が1mm未満であることを特徴とする方法。
5)湾曲部又は狭窄部を有する現存の媒質輸送用パイプラインであって、前記パイプラインの内壁面に緊密に係合するプラスチック製インナチューブを有し、前記インナチューブが折り畳まれることなく前記パイプラインに導入され、かつ、前記インナチューブの外径対前記パイプラインの内径の比が0.6未満であることを特徴とするパイプライン。
6)請求項5に記載のパイプラインであって、前記パイプラインが飲料水輸送用鉛チューブであり、さらに前記インナチューブの外径対前記パイプラインの内径の比が0.2〜0.5の範囲であり、かつ前記インナチューブが熱可塑性ポリエステルからなることを特徴とするパイプライン。
7)現存のパイプラインにインナチューブを折り畳むことなく装着する装置であって、前記パイプラインに取り外し自在に固定し得る継手片を包含し、前記継手片を通して前記インナチューブが導入され、前記継手片が前記インナチューブの伸張前の外径とほぼ同じ内径を有し、また、前記パイプラインヘの連結部から離れる方向に面した側で前記インナチューブを耐引張歪性を持つように固定する固定手段を備え、さらに、加熱流体または圧力流体あるいはこれら両方を流入させるための流体入口手段を備え、またさらに、前記継手片が、前記パイプラインの内面と前記インナチューブの外面の間の空間から空気を取り出すための通気手段を備える装置において、前記継手片が、前記インナチューブの伸張前の外径とほぼ同じ内径を有するインナブッシュを備えることを特徴とする装置。
8)請求項7に記載の装置であって、前記継手片が前記パイプラインおよび前記インナチューブに結合する、引張り抵抗を与えるスイベルジョイントを備えることを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
本発明は、現存のパイプライン内へその内径よりも小さい外径を有する熱可塑性材料のインナチューブを導入し、インナチューブがパイプラインの内壁面に緊密に係合するまでインナチューブの直径を半径方向に拡大させることによってパイプラインにインナチューブを装着する方法に関する。
現存のパイプラインの表面の浸蝕、腐蝕および固形物の堆積を防ぎかつパイプラインを不透過性にするためのこの種の方法は、米国特許第2,794,758号で公知である。この方法では、挿入する特にポリエチレンのインナチューブは、パイプラインの内径よりも約5〜20%小さい直径を有する。インナチューブは、圧力流体によって膨らませてパイプラインの内面に緊密に係合させる。
一方、現存の低圧パイプラインおよび高圧パイプラインにプラスチック製ライニングを装着すべく、非常に高い分子量を有するポリエチレンで作ったインナチューブをパイプラインに嵌合し、熱い加圧流体を用いてインナチューブを直径方向に約6%拡大することも、米国特許第4,818,314号で公知である。
これら両方法は、インナチューブの外径とパイプラインの内径の差が非常に小さく、インナチューブの挿入が難しいという欠点を有する。したがって、たとえば、鋭角の湾曲部を有するパイプラインや未知の局部的な狭窄部があるかも知れないパイプラインにこの方法でインナチューブを装着することはできない。
したがって、これらの方法は、小さい直径で多数の湾曲部があり、ロボットを用いて内部から点検を行うこともできない古いガス管あるいは特に水道管の場合に良い解決策とは言えない。
この欠点を解消すべく、米国特許第3,294,121号によれば、いくらか小さい直径を有するインナチューブをパイプライン内に嵌合するが、インナチューブの両端のみを伸張によって固定する試みがなされている。もちろん、これによれば、直径差が大きいためにパイプの容量が多少とも減少する。さらに、この方法では、パイプラインにわたってより高い圧力降下が必要であり、多くの場合、これは不可能である。
本発明の目的は、現存のパイプラインにインナチューブを挿入する方法であって、直径の減少がほんの少しであり、特に(といってこれに限るわけではないが)湾曲部、狭窄部などを持つ小さいパイプに適した方法を提供することにある。
この目的は、本発明によれば、インナチューブを半径方向に拡大し、インナチューブの外径対パイプラインの内径の比を0.6未満とすることによって達成される。
上述したようにインナチューブを用いる場合、特に、比が約0.55であるインナチューブを用いる場合、現存のパイプライン内に容易に挿入することができ、圧力流体によってパイプラインの内壁面に押圧することができる。
本発明の方法は、特に、チューブを通して輸送される媒質内に或る種の望ましくない物質を放出する可能性のあるパイプラインの内部ライニングとしての利点を有する。これは、特に、機械的になお良好な状態にあるが、飲料水に鉛を放出するという欠点を有する鉛製の給水パイプラインの場合に当てはまる。
特に、引き込み管、すなわち、本管からユーザの所有地あるいは水量計までの引き込み管においては、通常は歩道、植栽、舗装に著しい損傷を与えるので引き込み管を掘り起こすのは非常に難しい。
容易に半径方向に伸張できる普通の熱可塑性材料、たとえばポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレンをインナチューブの材料として使用できるが、インナチューブが熱可塑性ポリエステル、特にポリエチレン・テレフタレートからなると有利である。
上記の材料は、正しい状態の下では非常に容易に半径方向に伸張でき、伸張後、1mmより薄い、好ましくは0.4mmより薄い非常に薄い壁でも亀裂が発生することはない。
これにより、出発材料として、さらに挿入が容易な薄肉インナチューブの使用が可能となる。
特に有利には、インナチューブは、半径方向の伸張中に加熱する。所望に応じて、インナチューブは、挿入中にガラス転移温度まで加熱して材料の可撓性をさらに向上させることができるが、この材料はインナチューブが挿入中に軸線方向に延びるほど温度が高くないとよい。材料の温度は、伸張後に最適な特性を得るために結晶融点より低くなっていなければならない。
明らかに、薄肉インナチューブを使用する場合、最終的なインナチューブは、現存のパイプラインの内壁面の或る種のライニングとしてのみ役立ち、パイプラインの機械的強度になんら貢献しないか貢献するとしてもその程度が小さい内側ライニングを形成する。しかしながら、改善した物理的特性、たとえば耐応力腐食性の利点は伸張で利用される。
もちろん、機械的な欠陥を持つパイプライン、たとえば腐食を受けた鋼製パイプラインまたは下水管にこの方法を用いることもできる。この場合、壁厚の大きいインナチューブを出発材料として用いなければならない。そうすると、伸張後、インナチューブは、パイプラインを通して輸送される媒質の全内圧に耐えることができる。この場合、インナチューブ材料の機械的特性を最適な状態で使用し、それを伸張によってかなり改善することができる。この場合、インナーチューブ材料の機械的特性を最適な状態で使用し、それを伸張によってかなり改善することができる。
ここで、熱可塑性材料で作ったチューブの多くの物理的および機械的特性を伸張によって多少とも改善することは知られているが、この種の方法は工業的な環境で正確に制御した条件の下に伸張したチューブを製作するのに役立つが、現存のパイプラインの内部ライニングについては役立たないことを指摘したい。
本発明は、また、内壁面に緊密に係合するプラスチック・インナチューブを有する、媒質を輸送するためのパイプラインであって、パイプラインを通って流れる媒質に放出され得る材料からなり、インナチューブがパイプラインの内径のせいぜい0.6倍である外径を有するインナチューブの半径方向伸張によって得られることを特徴とするパイプラインにも関する。
最後に、本発明は、また、現存のパイプラインにインナチューブを装着する装置であって、パイプラインに取り外し自在に固定することができかつそこにインナチューブを通すことのできる継手片を包含し、この継手片が、未伸張インナチューブの外径にほぼ同じ内径を有し、また、現存パイプラインヘの連結部から離れる側でインナチューブを耐引張歪性を持つように固定するための固定手段を備え、さらに、インナチューブ内へ加熱流体または圧力流体あるいはこれら両方を流入させるための流体入口手段を備え、さらにまた、前記継手片がパイプラインの内面とインナチューブの外面との間のスペースから空気を除くことができるようにした通気手段を備える装置において、前記継手片が、未伸張インナチューブの外径とほぼ同じ内径を有するゆるいインナブッシュを備えることを特徴とする装置にも関する。これによれば、出発器具として標準の継手を用いることができ、また、必要なサイズのインナチューブにのみ適したインナブッシュを得ることができる。この装置は、使用する継手片が規格製品でもよく、やや改造することによって、種々のサイズのインナチューブに使用でき、さらに、軟質の半径方向に伸張するインナチューブの場合でも良好な耐引張歪性を有する良好な密封接続を可能とするという利点を有する。
非常に有利には、前記継手片は、パイプラインおよびインナチューブへ連結する、引張り抵抗を与えるスイベルジョイントを備える。以下、本発明を図面を参照しながら実施例によって説明する。
図面において:
第1図は、現存パイプラインとそこに装着するインナチューブの伸張前の横断面を示す。
第2図は、同じパイプラインとそこに装着した伸張済みのインナチューブとを示す。
第3図は、現存パイプライン内にインナチューブを装着する装置であり、パイプライン、インナチューブおよび加熱流体または圧力流体あるいはこれら両方を連結する継手片を包含する装置を示す。
第1図は、鉛チューブ1で作ったパイプラインを示しており、このパイプラインは、22mmの外径と19mmの内径を有する。
ポリエチレン・テレフタレートの9.5×0.9mmインナチューブは、50℃に予熱した後、約6メートルの長さを有する鉛チューブ1内に嵌合する。
インナチューブ2は、次に熱水を用いて90℃まで加熱し、5バールの圧縮空気を用いて膨張させる。
インナチューブ2は、均一に半径方向に伸張させ、インナチューブ・ライニング2′として鉛チューブ1の内壁面に対して緊密に係合させる。
同様にして、直径12.8mm、厚さ1.0mmのポリエチレン・テレフタレートのインナチューブを28mmの直径まで伸張し、小さい4×0.5mmチューブを10mmの直径まで伸張する。
これらのポリエチレン・テレフタレート製インナチューブの場合、材料を軸線方向に伸張させないか、または、軸線方向に伸張させたとしてもほんの少しだけとし、その後に、半径方向に伸張させることが重要であることがわかった。これは、軸線方向にチューブが伸びていると、半径方向に膨張させるには硬すぎることになるからである。
ポリエチレン・テレフタレートの場合、当初の直径の2〜3倍の半径方向の伸張が非常に容易に行えることがわかった。
もちろん、銅で作ったパイプラインまたはこの目的にとって普通の材料で作った下水管を加工することも可能である。
第3図には、現存パイプラインにインナチューブを装着する装置が示してあり、また、継手片3も示してある。この継手片3は、そのハウジング5上で継手ナット6を回転させることによって現存のパイプライン1に連結する。パイプライン1上の切断リング4を用いて、継手片を耐引張歪性を与えながらパイプラインに取り外し自在に固定することができる。
継手片3は通気口7を備える。ゆるいインナブッシュ8を継手片3内に置く。
このためには、普通のT字形片を用いることができる。前記インナブッシュは、継手片の、パイプラインから離れる方向に面し、ゴムリング12によってシールされた側でチャンバ10内に拡大部を入れて設置する。
インナブッシュ8の外径は、継手片3のハウジング5の内径よりも小さく、その結果、パイプライン1の内面とインナチューブ2の外面との間の、通気口7に通じるスペースから空気を取り出すことができる。
インナチューブ2は、インナブッシュ8を通して押し込まれるものであり、端に係合ブッシュ14を備える。円錐形の締め付けリング13がインナチューブ2の端まわりに嵌合される。継手ナット6′を回転させて締め付けリング13に円錐形リング15を固着することによって、インナチューブ2は、耐引張歪性を持って、継手片3に連結される。ゴム製の締め付けリング13を用いる場合、この締め付けリングは固定と密封を同時に行う。係合ブッシュ14は、インナチューブ2の変形、したがって、不適切な固定または密封あるいはこれら両方を防ぐ。
加熱流体(たとえば水蒸気)または圧力流体(圧縮空気)あるいはこれら両方を供給するのに役立つ連結部16を円錐形リング15に嵌合する。
1つの伸張方法は次の通りである。インナチューブ2を挿入したパイプラインのいずれかの側に継手片3を嵌合した後、まずインナチューブが充分に加熱されるまで熱い流体(水蒸気)を通し、次に連結部16を片側で閉ざし、反対側で圧縮空気を流入させることによって、インナチューブ2を伸張してパイプライン1の内面に緊密に係合させる。伸張中、パイプライン1の内面とインナチューブ2の外面の間に存在する空気は、インナブッシュ8と継手片3のハウジング5の間のスペースを経て通気口7に逃げることができる。
継手片3を次に取り出し、インナチューブ2の、パイプライン1の外に突出する部分を除去し、パイプライン1を、パイプ・システムの、このパイプライン1が一部を構成している他の部分に再び連結する。
 
訂正の要旨 訂正の要旨
訂正事項1;
請求項1の「現存のパイプライン」との記載を、特許請求の範囲の減縮を目的として、「湾曲部又は狭窄部を有する現存のパイプライン」と訂正する。
訂正事項2;
請求項5の「媒質輸送用パイプライン」との記載を、特許請求の範囲の減縮を目的として、「湾曲部又は狭窄部を有する現存の媒質輸送用パイプラインであって、前記パイプライン」と訂正する。
異議決定日 2001-06-15 
出願番号 特願平3-511906
審決分類 P 1 652・ 121- ZA (F16L)
最終処分 取消  
前審関与審査官 溝渕 良一  
特許庁審判長 村本 佳史
特許庁審判官 杉原 進
市野 要助
登録日 2000-03-10 
登録番号 特許第3042880号(P3042880)
権利者 ヴアヴイン・ベスローテム・ヴエンノツトシヤツプ
発明の名称 現存のパイプラインにインナチューブを装着する方法および装置並びにその中に装着された熱可塑性の伸張されたインナチューブを有するパイプライン  
代理人 高木 千嘉  
代理人 西村 公佑  
代理人 佐藤 辰男  
代理人 佐藤 辰男  
代理人 高木 千嘉  
代理人 西村 公佑  
代理人 佐藤 晃一  

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