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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1054319
審判番号 不服2000-2757  
総通号数 28 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-05-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-03-01 
確定日 2002-02-15 
事件の表示 平成 5年特許願第281047号「金属ベース基板」拒絶査定に対する審判事件[平成 7年 5月23日出願公開、特開平 7-135380]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1本願は平成5年(1993)11月10日の出願であって、その請求項1に係る発明は、明細書及び図面の記載からみても、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により構成されるとおりの次のものと認める。
「金属板、絶縁層及び銅箔がこの順に積層されている金属ベース基板において、絶縁層中にイオン吸着無機物質を含むことを特徴とする金属ベース基板。」
2これに対して、原査定の拒絶の理由に引用した、
引用文献1:特開平4―59242号公報
引用文献2:特開平1―259591号公報
には、以下の事項が示されている。
[引用文献1]その特許請求の範囲に、「金属板又は銅箔に、トリアジン誘導体、トリアゾール誘導体、及びヒドラジド誘導体から選ばれる少なくとも1種のキレート剤を添加した熱硬化性樹脂溶液を塗布、乾燥し、絶縁層を有する絶縁層付金属板又は絶縁層付銅箔を形成し、次いで絶縁層付金属板には銅箔を、絶縁層付銅箔には金属板を積層することを特徴とする金属板ベース銅張り積層板の製造方法。」と記載されている。
また、発明の詳細な説明中には、「電子機器の使用される環境が、高温又は高温多湿雰囲気中で連続使用すると、絶縁層が極めて薄いことから、銅イオンのマイグレーションにより、金属板側から酸化銅などによるデンドライトが発生し、成長し、最後には銅箔と金属板が短絡し電子機器が使用できなくなるという問題点があった(第2図参照)」(2頁左上欄1行ないし7行)及び
「本発明において絶縁層に上記キレート剤を添加する目的は、高温又は高温多湿下で、銅箔と金属板間に電圧を連続印加したときに発生する銅イオンを、キレート剤でキレート化合物とし、デントライトの発生を抑制することにある。これにより絶縁性の低下を防ぐとことができ、信頼性の高い金属板ベース銅張積層板を得ることができる。」(2頁右上欄4行ないし10行)と記載されている。

したがって、引用文献には、「金属板、絶縁層及び銅箔がこの順に積層されている金属ベース基板において、絶縁層中に銅イオン捕捉物質を含むことを特徴とする金属ベース基板。」が記載されている。

[引用文献2]その特許請求の範囲の請求項1に、「-OH基を有する無機イオン交換体を含有してなる電子回路用被覆材」と記載されている。
また、発明の詳細な説明中には、
「かかるマイグレーション現象を防止する方法としては、従来より次のような方法が試みられてきた。〈(1)(2)(3)(4)省略〉
(5)はトリアジン類、ベンジン、卵アルブミン等のキレート形成やコンプレックス形成を行う有機物を添加する方法である。しかしこれらの化合物の持つ官能基は大体100℃を超えると分解し失活するものが大部分である。従って通常の使用条件では問題ないが、高集積化により内部発熱だけで100℃を超える場合や、ますます電子化が進むと考えられる自動車等は使用環境そのものが100℃を超えることも十分予想され、将来的にコンプレックス形成剤やキレート剤を使用することには限界がある。」(2頁左上欄5行ないし左下欄11行),
「尚、ここで短絡とは両極そのものが直接接続される場合だけでなく、両極が接近して、かつ導電性物質として電荷を持つ単体(イオンや正孔)が増加しても電流が流れるのでこれも短絡という(一般的には300μA程度の電流が流れる(10の6乗Ω以下の抵抗値となった)場合に短絡という)。」(3頁左上欄8行ないし14行),
「本発明において電子回路用の被覆材に含有された-OH基を有する無機イオン交換体の働きは、大きく分けると次の2つになる。
(1)マイグレーションする金属のイオン化物例えばAg+、Cu+、Cu2+、Pb2+、Sn2+、Au3+等を、これらに高選択イオン吸着性を持つ-OH基を有する無機陽イオン交換体で補足固定し、移行させない作用。
(2)イオン化を助長するハロゲン原子団等の不純物イオンを、これらに高選択イオン吸着性を持つ-OH基を有する無機陰イオン交換体で補足固定し、失活させる作用。」(3頁右上欄11行ないし左下欄2行),
「本発明で用いられる無機イオン交換体は、構成成分中に-OH基を有することを特徴とし、〈中略〉ハロゲンイオンに高選択性を有する含水酸化ビスマス、〈中略〉アパタイト類並びにハイドロタルサイト類等種々挙げられる。」(3頁右下欄10行ないし4頁左上欄2行)及び
「本発明において-OH基を有する無機イオン交換体を含有させる対象の被覆材としては次のような種類がある。 〈中略〉 (3)ハイブリッドIC等に用いられる、ガラスやエポキシ樹脂等で構成された保護コートペースト、(4)ポリマー厚膜(以下「PTF」と称する。)絶縁ペースト等がある。〈中略〉
また多層印刷回路板においては、内層回路間の絶縁層を構成する材料、例えば絶縁性保護塗料や表面保護を少なくとも目的の一つとするプリプレグ等がある。」(4頁右上欄8行ないし左下欄18行)と記載されている。

したがって、引用文献2には、イオン吸着無機物質が、絶縁信頼性及び耐熱性を必要とする部位に使用されることが記載されている。



3そこで、本願発明と引用文献1に示された発明とを対比すると、両者は、
「金属板、絶縁層及び銅箔がこの順に積層されている金属ベース基板において、絶縁層中にイオン捕捉物質を含むことを特徴とする金属ベース基板。」の点で一致し、
本願発明は、イオン捕捉物質がイオン吸着無機物質であるのに対し、引用文献1に記載の発明では、銅イオン捕捉物質である点で相違する。

4次いで、上記相違点について検討すると、イオン吸着無機物質を電子回路の絶縁層に含有させることは、引用文献2に記載されているように周知の技術であり、且つ引用文献2から、イオン吸着無機物質も本願発明と同じく絶縁信頼性及び耐熱性を必要とする部位に使用することが知られているのであり、また、金属板、絶縁層及び銅箔がこの順に積層されている金属ベース基板の絶縁層に用いたことによって格別な効果が生じるとも認められないのであるから、該イオン吸着無機物質を引用文献1の絶縁層に含有させるについては、当業者であれば容易に想到しうることと認められる。

5以上のとおりであるから、本願発明は、引用文献1及び2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものと認められるので、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-11-28 
結審通知日 2001-12-04 
審決日 2001-12-17 
出願番号 特願平5-281047
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 亀ヶ谷 明久  
特許庁審判長 蓑輪 安夫
特許庁審判官 井口 嘉和
鈴木 法明
発明の名称 金属ベース基板  
代理人 若林 邦彦  

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