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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) B32B
審判 全部無効 1項3号刊行物記載 無効とする。(申立て全部成立) B32B
管理番号 1054412
審判番号 無効2000-35504  
総通号数 28 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-06-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-09-19 
確定日 2002-02-18 
事件の表示 上記当事者間の特許第2958555号発明「竹の集成材体並びに竹の集成材体を使用した積層材」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第2958555号の請求項1ないし2に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続きの経緯
本件特許第2958555号の請求項1ないし2に係る発明は、平成7年11月14日に出願され(国内優先権主張:平成6年11月15日、平成7年10月16日)、平成11年7月30日にその発明について特許の設定登録がなされた。
本件無効審判は、請求人日本ブロアー工業株式会社(以下、請求人という)により平成12年9月19日に、請求されたもので、これに対し、被請求人株式会社オリエンタル(以下、被請求人という)は、平成12年12月25日に無効審判答弁書を提出し、その後、請求人は、平成13年3月21日に口頭審理陳述要領書を、平成13年8月9日に審判請求書の手続補正書を提出し、被請求人は平成13年8月9日に口頭審理陳述要領書を提出したものであり、合議体は平成13年8月9日に口頭審理を行い、審理の終結をした。
その後、平成13年8月31日に、職権により、審理の再開通知を行い、さらに、平成13年9月6日付で書面審理通知を行うとともに、無効理由通知を行ったところ、被請求人からは何らの応答もなされなかった。

2.請求人の主張
請求人は、甲第1号証の1(特許第2958555号原簿)、甲第1号証の2(特許庁ホームページの電子図書館の特許第2958555号出願情報)、甲第2号証(請求人が特許権者から受け取った通告状の写し)、甲第3号証(実願平1-25963号(実開平2-115404号)のマイクロフィルム)、甲第4号証(特開平6-182713号公報)及び甲第5号証(実願平4-94059号(実開平6-49638号)のマイクロフィルム)を提出し、本件請求項1に係る発明は甲第3号証及び甲第4号証に記載された発明に基づいて、本件請求項2に係る発明は甲第3号証ないし甲第5号証に記載された発明に基づいて、それぞれ、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件請求項1ないし2に係る特許は無効とされるべきである、と主張している。

3.被請求人の主張
被請求人は、請求人の主張する理由及び提出された証拠によって本件請求項1ないし2に係る特許を無効とすることはできない、と主張している。

4.本件請求項1ないし2に係る発明
本件特許第2958555号の請求項1ないし2に係る発明(以下、本件発明1ないし2という)は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された次のとおりのものと認められる。
【請求項1】竹を長さ方向に細断した断面横長長方形形状の細長い竹材を、この複数の細長い竹材の表裏面同士が隣合うように並列すると共に、隣合うこの竹材同志が表裏反対となるように並列接着せしめて形成したことを特徴とする竹の集成材体。
【請求項2】木製合板体若しくは木製柱体若しくは集成木体に、竹を長さ方向に細断した断面横長長方形形状の細長い竹材を,この複数の細長い竹材の表裏面同士が隣り合うように並列すると共に,隣り合うこの竹材同士が表裏反対となるように並列接着せしめて形成した竹の集成材体を付設したことを特徴とする竹の集成材体を使用した積層材。

5.無効理由通知
5-1平成13年9月6日付無効理由通知の概要
平成13年9月6日付無効理由通知の概要は、(イ)本件発明1は、刊行物1(「竹の栽培と加工」第188-192頁、昭和29年11月6日、株式会社泰文館発行)に記載された発明であるから、本件発明1についての特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものである、(ロ)本件発明1ないし2は、刊行物1及び刊行物2(実願平1-25963号(実開平2-115404号)のマイクロフィルム:請求人の提出した甲第3号証)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1ないし2についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである、というものである。

5-2刊行物1及び2の記載
刊行物1には、
a)「第三節 特殊接着竹材加工
……
一、竹合板の種類
竹合板には次の三種類がある。
……凡そ長さ一米、巾三糎、厚七粍位の竹片を五枚─六枚合板して一つの基礎となるピースを作り、更にこれを四つ、ブロックに接合し、又は3bの如く横に一呎の長さに接合してから、次にそれぞれ一呎平方になるよう接着して更に大きなブロックを作る。ブロックの接着は繊維の方向を交互に変えて接合され、完成されたブロックは木口切断して竹板又は挽物加工の素材に使用される。(第二九図)
二、竹フローリングブロックの製作
竹ブロックの製作工程はメーカーによって多少相違する点があるが、凡そ次のような工程で行われている。
1.材料竹材
三─五年生の周囲1─1、五尺の太竹で最適期に伐採されたもの。孟宗竹を主として用いられる。
2.産地における素材加工
(1)定尺切断 丸鋸盤で一定の寸法に切断する(六尺五寸、)竹稈は地上位置によつて径及び肉厚が相違するから、ほゞ同一のものに分類する。先梢部は除く。
(2)竹割 竹割器を用いて大割する。
(3)丸鋸堅削 丸鋸盤に丸鋸刃を二枚取付けて割竹を幅一寸二分位に削る。
(4)丸鋸節取 (3)と同様、丸鋸盤で内節、外節を削落す。丸鋸刃型は竹切鋸の刃付角度と上目を磨つて切刃を付したものが必要とされる。
3.工場作業工程
竹材産地において素材に作られ工場に搬入される。
(1)荒削り 工場に搬入された素材は先づ節部を平らにするため鉋機で荒削りが行われる。
(2)準備処理 油抜き、防虫、防黴処理と乾燥を行う。乾燥は蒸気乾燥又は高周波乾燥が行われる。
(3)仕上げ削り 自動鉋機で両面を削り、厚みを一定にする。
(4)第一次接着 接合は材の脊と脊、うらとうらを合せ、ミルクカゼイン又は尿素系合成樹脂接着剤等を塗布、締付工具を用いて圧締接着する。
(5)側面加工 接着完了のピースは自動鉋機で側面を平滑に切削し、正方形の角材に仕上げられる。
(6)第二次接着 角材は第二九図の3a又は3bの如く組合せ接着する。
(7)表面加工 (6)の接着材の面を平滑、直角に修正切削する。
(8)第三次接着 第二九図4の如くブロックが完成する。一呎平方の断面を有する角材となる。
(9)小口断栽 帯鋸機を用いて所要の寸法に小口切断し、フローリング又は挽物材料とする。挽物加工は菓子器、果物鉢、菓子皿、サービス盆、煙草セット、コンパクト、ボンボン入、インクスタンド等がある。(なお、()中の数字は実際は○で囲まれている)」(第188頁第11行-第192頁第11行)が記載されるとともに、第29図には、仕上げ削りをした竹材を積層接着して正方形の積層体である角材を製造し、この積層体からフローリングを製造する竹フローリングブロックの製作順序が記載され、その中の、1の符号を付した図には、上記3.(4)第一次接着において接合される「材」が、また、2の符号を付した図には、上記3.(4)第一次接着において圧締接着されて製造された角材が、それぞれ、記載されていると認められる。

刊行物2には、
b)「竹積層合板は、竹材から方形に切断された複数枚の板片がその板片表面同志を互に強固に接着接合されてなり、前記竹積層合板の裏面全面に異質板が接着圧搾されたことを特徴とする圧搾合板材。」(実用新案登録請求の範囲)、
c)「本考案は、建築材(床材、壁材、天井材)、防音材、断熱材に適した圧搾合板材に関するものである」(第1頁第11-13行)、
d)「〈実施例〉以下、本考案の第一実施例を第1,2図に基づいて説明すると、これにおいては、竹積層合板Aは、竹材から方形(断面形状が例えば30mm×4mm)に切断された複数枚の板片1がその板片表面la同志を互にエポキシ系接着剤、水性ビニールウレタン接着剤等で強固に接着接合されてなつている。また竹積層合板Aは、必要に応じ板片側面lbに沿った面Fで適宜の厚さ(例えば1〜2mm)Lに切断されている。竹積層合板Aの裏側全面に異質板B(例えば厚さ3mm、縦横各33cm)が適宜の接着剤で接着圧搾され、この異質板Bは塩化ビニール板、ゴム板、プラスチック板、金属板等の防湿板や、プラスターボード、パーチクルポード、または木板等の断熱板からなっている」(第4頁第3-18行)、
e)「このように構成された竹積層合板Aは、竹特有の性質を有しているため、通常の板材、ベニヤ材などに比べて優れたものとなる。すなわち、水洗いが容易で、腐食しにくく、しかも竹の肉質部分に含まれるある種の成分により、消臭作用があり、長期の使用でも臭みを生じることがない。さらには竹特有の防ばい作用を有している。従って、竹材を床材、壁材などの用途に供することができるが、竹は一般の木に比べて成長が速いため、その供給が安定する。竹材の種類としては孟宗竹、真竹、破竹などが好適である。
また、外観上、板片同志の接合線1dは、板片側面1bに多数現れる導管線1eの存在により、ほとんど目立たず、優れた美観を呈する」(第4頁第19行-第5頁第12行)、
f)「次に、合板Aの単位となる板片1の成形方法を第3,4図により説明する。竹材11を表皮を除去することなく、所定の長さに切断し、次に縦割によって複数の縦割片12に分割する。図中、13はこの縦割切断線を示す。 板片1は各縦割片12を裁断することによって得られるものである。この裁断は縦割片12の長さ方向に沿って方形に切断することによって行う。かかる裁断においては、方形の四辺の内の一辺が竹材の内輪15に接するように行うことで歩留まりの向上を図ることができる。又、裁断は外輪側の表皮部分を除去するように行う。……このようにして方形に切断された板片1はその板片表面1aを研磨することにより、表面1aが滑面となり、接着性が向上する」(第5頁第13行-第6頁第9行)が記載されるとともに、
第1図には、竹積層合板Aを異質板Bに接着圧搾した圧搾合板材が、第2図には、複数枚の板片1を並べ、その長辺側の板片表面1a同志を接着接合して竹積層合板とすることが、第3、4図には、竹材11を縦割して縦割片12を得、縦割片12を、その断面が竹の表裏面側を長辺とし側部側を短片とする長方形に切断して材片1を得ることが、記載されていると認められる。

6.当審の判断
(イ)[特許法第29条第1項第3号違反について]
本件発明1について
刊行物1の3.(4)に記載された、第一次接着に用いられる材は、2.(3)と3.(3)の工程の記載からみて、竹を長さ方向に切削して形成した、表裏面側が長辺で側部側が短片である長方形形状の断面を有するものであり、この材は本件発明1の竹材を長さ方向に細断した断面横長長方形形状の細長い竹材(以下、「竹材」という)に相当すると認められる。
また、刊行物1の3.(4)の「接合は材の脊と脊、うらとうらを合せ、……圧締接着する」という記載からみて、図29中に2の数字を付して記載された、第一次接着終了後の角材は、隣り合う材同志が、その表裏方向の向きが反対になるように並列されていると認められるので、結局この角材は、複数の「竹材」をその表裏面同士が隣合うように並列すると共に、隣合うこの竹材同志が表裏反対となるように並列接着せしめて形成したものであると認められる。
そして、上記角材は竹の集成材体に他ならないので、刊行物1には、本件発明1と同一の竹の集成材体に係る発明が記載されていると認められる。
したがって、本件発明1についての特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものと認められる。

(ロ)[特許法第29条第2項違反について]
その1 本件発明1について
刊行物2には、b)ないしf)及び図面の記載からみて、竹を切断して得られた、表裏面側が長辺で側部側が短片である長方形形状の断面を有する板片1を、その表裏面側である長辺同志が隣合うように並列して接着した竹積層合板が記載されていると認められる。
本件発明1と刊行物2に記載された発明とを対比すると、刊行物2に記載された、竹を切断して得られた、表裏面側が長辺で側部側が短片である長方形形状の断面を有する板片1及び竹積層合板は、本件発明1の「竹材」及び竹の集成材体に相当すると認められるから、両者は、複数の「竹材」を、表面又は裏面が隣合うように並列接着せしめて形成した竹の集成材体である点で共通しているが、前者では、「竹材」の表裏面同士が隣合うように並列すると共に、隣合うこの「竹材」同志が表裏反対となるように並列するのに対し、後者では、「竹材」を並列接着せしめるにあたり、各「竹材」の配列方向についてはなにも規定していない点で相違していると認められる。
相違点について検討する。
刊行物1には、「竹材」をその表裏面同士が隣合うように並列すると共に、隣合うこの「竹材」同志が表裏反対となるように並列接着せしめて集成材体を形成することが記載されているので、刊行物2に記載された竹の集成材体においてもこのような竹材の配列方向を採用することは、当業者が実施に際して適宜なし得ることと認められる。
また、本件発明1が特に予測しがたい効果を奏し得たものとは認められない。
したがって、本件発明1は、刊行物2及び1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明1についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものと認められる。

その2 本件発明2について
刊行物2には、竹を切断して得られた、表裏面側が長辺で側部側が短片である長方形形状の断面を有する板片1を、その表裏面側である長辺同志が隣合うように並列して接着した竹積層合板の裏面に異質板であるパーチクルポード、または木板等を接着圧搾した圧搾合板材が記載されていると認められる。
本件発明2と刊行物2に記載された発明とを対比すると、刊行物2に記載された、竹を切断して得られた、表裏面側が長辺で側部側が短片である長方形形状の断面を有する板片1及び竹積層合板は、本件発明1の「竹材」及び竹の集成材体に相当すると認められるから、両者は、複数の「竹材」を、表面又は裏面が隣合うように並列接着せしめて形成した竹の集成材体を木製合板体に付設した積層材である点で共通しているが、前者では、「竹材」の表裏面同士が隣合うように並列すると共に、隣合うこの「竹材」同志が表裏反対となるように並列するのに対し、後者では、「竹材」を並列接着せしめるにあたり、各「竹材」の配列方向についてはなにも規定していない点で相違していると認められる。
相違点について検討する。
刊行物1には、「竹材」をその表裏面同士が隣合うように並列すると共に、隣合うこの「竹材」同志が表裏反対となるように並列接着せしめて集成材体を形成することが記載されているので、刊行物2に記載された竹の集成材体においてもこのような竹材の配列方向を採用することは、当業者が実施に際して適宜なし得ることと認められる。
また、本件発明2が特に予測しがたい効果を奏し得たものとは認められない。
したがって、本件発明2は、刊行物2及び1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明2についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものと認められる。

7.むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1ないし2に係る発明についての特許は、無効にすべきものである。
審判に関する費用については、、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人の負担とすべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-12-10 
結審通知日 2001-12-13 
審決日 2002-01-07 
出願番号 特願平7-295546
審決分類 P 1 112・ 113- Z (B32B)
P 1 112・ 121- Z (B32B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 中島 庸子加藤 志麻子  
特許庁審判長 小林 正巳
特許庁審判官 石井 克彦
喜納 稔
登録日 1999-07-30 
登録番号 特許第2958555号(P2958555)
発明の名称 竹の集成材体並びに竹の集成材体を使用した積層材  
代理人 吉井 剛  
代理人 吉井 雅栄  
代理人 竹内 卓  
代理人 岡本 昭二  

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