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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H05K
管理番号 1054850
異議申立番号 異議2001-71113  
総通号数 28 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-12-17 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-04-09 
確定日 2001-11-21 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3097877号「多層回路基板」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3097877号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3097877号の請求項1に係る発明は、平成4年5月28日に出願され、平成12年8月11日に特許の設定がなされ、その後、特許異議申立人 株式会社 村田製作所により特許異議の申立てがなされ、特許取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成13年10月1日に訂正請求がなされたものである。
2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
(a)訂正事項a
「【請求項1】複数の絶縁層を積層してなる基板本体と、前記基板本体の端面に形成された端面電極と、前記基板本体内に形成されかつ前記端面電極に接続する内部配線層とを備えた多層回路基板において、前記内部配線層は、前記端面電極との接続部位の厚みが他の部位に比べて厚く設定され、前記端面電極との接続面が前記接続部位の厚み方向に平行であることを特徴とする多層回路基板。」を
「【請求項1】複数の絶縁層を積層してなる基板本体と、前記基板本体の端面に部分的に形成された端面電極と、前記基板本体内に形成されかつ前記端面電極に接続する内部配線層とを備えた多層回路基板において、
前記内部配線層は、前記端面電極と接続する先端部を有するとともに、該先端部の厚みが他の部位に比べて厚く、且つ幅が他の部位に比べて広く設定され、前記端面電極との接続面が前記接続部位の厚み方向に平行であることを特徴とする多層回路基板。」と訂正する。
(b)訂正事項b
本件特許明細書の段落番号【0005】の
「【課題を解決するための手段】
本発明の多層回路基板は、複数の絶縁層を積層してなる基板本体と、前記基板本体の端面に形成された端面電極と、基板本体内に形成されかつ端面電極に接続する内部配線層とを備えたものである。この多層回路基板において、内部配線層は、端面電極との接続部位の厚みが他の部位に比べて厚く設定され、端面電極との接続面が接続部位の厚み方向に平行である。」を
「【課題を解決するための手段】
本発明の多層回路基板は、複数の絶縁層を積層してなる基板本体と、前記基板本体の端面に部分的に形成された端面電極と、前記基板本体内に形成されかつ前記端面電極に接続する内部配線層とを備えたものである。この多層回路基板において、内部配線層は、前記端面電極と接続する先端部を有するとともに、該先端部の厚みが他の部位に比べて厚く、且つ幅が他の部位に比べて広く設定され、前記端面電極との接続面が前記接続部位の厚み方向に平行である。」と訂正する。
(c)訂正事項c
本件特許明細書の段落番号【0006】の
「【作用】
本発明において、内部配線層は、端面電極との接続する先端部を有し、且つ該先端部の厚みが他の部位に比べて厚く設定され、端面電極との接続面が接続部位の厚み方向に平行であるため、端面電極との接触面積が広くなる。この結果、内部配線層と端面電極との接続性が向上する。一方、内部配線層は、端面電極との接続部位のみ厚みが大きく設定されているため、基板本体の大きさに影響しにくい。よって、基板本体は、小型に維持される。」を
「【作用】
本発明において、内部配線層は、端面電極との接続する先端部を有し、且つ該先端部の厚みが他の部位に比べて厚く、且つ幅が他の部位に比較して広く設定され、端面電極との接続面が接続部位の厚み方向に平行であるため、端面電極との接触面積が広くなる。この結果、内部配線層と端面電極との接続性が向上する。
一方、内部配線層は、端面電極との接続部位のみ厚みが大きく設定されているため、基板本体の大きさに影響しにくい。よって、基板本体は、小型に維持される。」と訂正する。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項aは、特許請求の範囲の滅縮を目的としたものであり、本件特許明細書の段落番号【0009】の「基板本体2内に形成された複数の内部配線層3の一部は、基板本体2の端部に延びている。そして、その先端部3a・・・」との記載、図1の記載、段落番号【0011】の「端面電極5は、基板本体2の端面に形成されている。この端面は、内部配線層3の先端部3a及び表面配線4と接続されており、内部配線層3と表面配線層4とを直接接続するためのものである。」との記載及び段落番号【0013】の「先端部にペーストを重ねて印刷する場合、印刷幅を内部配線層3の印刷幅よりも広く設定してもよい。このようにすると、先端部3aと端面電極5との接着面積がさらに広くなり、両者の接触不良がより生じにくくなる。」との記載により明瞭に開示されており、また、訂正事項b及びcは、訂正事項aと整合を図るものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、いずれも、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
(3)むすび
したがって、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116条による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
3.特許異議申立てについての判断
(1)本件請求項1に係る発明
上記2.で示したように、上記訂正が認められるから、本件請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、平成13年10月1日付けで提出された訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
【請求項1】複数の絶縁層を積層してなる基板本体と、前記基板本体の端面に部分的に形成された端面電極と、前記基板本体内に形成されかつ前記端面電極に接続する内部配線層とを備えた多層回路基板において、
前記内部配線層は、前記端面電極と接続する先端部を有するとともに、該先端部の厚みが他の部位に比べて厚く、且つ幅が他の部位に比べて広く設定され、前記端面電極との接続面が前記接続部位の厚み方向に平行であることを特徴とする多層回路基板。
(2)特許異議申立ての理由の概要
特許異議申立人 株式会社 村田製作所は、「請求項1に係る本件発明は、甲第1号証または甲第2号証、あるいは甲第3号証のいずれからも容易になし得たものであり、特許法第29条第2項に該当し、特許を受けることができないものである」旨主張する。
(a)引用刊行物
(a-1)甲第1号証:実願昭58-142606号(実開昭60-49621号)のマイクロフィルム(以下、「引用例2」という。)
引用例2には、(a-1-1)考案の目的に関する「本考案は・・・内部電極層と外部電極層との接触を良好にし、」(3頁13行ないし15行)との記載及び(a-1-2)「本考案においては、誘電体セラミック層と内部電極層とを交互に重ね合わせて一体化し、上記内部電極層にそれを各層毎に互いに反対方向に設けられた外部電極と並列に接続するように対向電極とは重なり合わない引出し部を設け、かつ上記内部電極層の引出し部の厚みを重なり合う対向電極の厚みの1.3〜3.0倍としてなるものである。」(3頁末行ないし4頁7行、第2図参照)との記載があり、上記記載によれば、(a-1-3)誘電体セラミック層と内部電極層とを交互に重ね合わせて一体化し、上記内部電極層にそれを各層毎に互いに反対方向に設けられた外部電極と並列に接続するように対向電極とは重なり合わない引出し部を設け、かつ上記内部電極層の引出し部の厚みを重なり合う対向電極の厚みよりも厚くすることにより、内部電極層と外部電極層との接触を良好にすることができることが開示されているものと認められる。
(a-2)甲第2号証:実願昭59-183381号(実開昭61-97823号)のマイクロフィルム(以下、「引用例3」という。)
引用例3には、「内部電極層の露出部と外部電極との接続不良がしょうじやすい。この接続不良・・・となるのを防止する目的で第2図の如く外部電極3と接続する部分の内部電極導体層2の厚みを厚く設けたり・・・していた。」(3頁13行ないし18行、第2図参照)との記載がある。
(a-3)甲第3号証:特開平3-23603号公報
甲第3号証には、チップコイル1を構成する「素体2においては、その端面に露出して外気と接する内部導体パターン11の引き出し部が、第1のグリーンシート12に形成された内部導体パターン11の引き出し電極19と、第2のグリーンシート4に形成された引き出し補助電極3との2層によって構成されることになる。したがって、この引き出し部の厚みが培加して従来よりも厚くなり、」との記載及び「この素体2の両端面それぞれには、導電ペーストを塗布して焼き付けることによって形成された外部電極15が被着されている。」との記載があり、第1図の記載においては、素体2の両端面全面に外部電極15、15が被着されている状態が図示されている。
(3)判断
引用例2及び3の上記記載によれば、外部電極と並列に接続するように内部電極層の引出し部を設け、かつ上記内部電極層の引出し部の厚みを厚くすることにより、内部電極層と外部電極層との接触を良好にすることができることが開示されているものと認められるが、上記引用例2及び引用例3に記載の積層コンデンサの外部電極は、積層体の一対の端部に部分的に形成されるとの記載はない。また、甲第3号証の上記記載によれば、チップコイル1を構成する素体2においては、その端面に露出して外気と接する内部導体パターン11の引き出し部を第1のグリーンシート12に形成された内部導体パターン11の引き出し電極19と第2のグリーンシート4に形成された引き出し補助電極3との2層によって構成し、この引き出し部の厚みを従来よりも厚くすること及びこの素体2の両端面それぞれには、導電ペーストを塗布して焼き付けることによって外部電極15、15を素体2の両端面全面に形成すること(第1図参照)が開示されている。
さらに、当審において通知した取り消しの理由で引用した特開昭2-271596号(以下、「引用例1」という。)には、「層内に設ける配線パターン121、123、125、122、124も含めて積層体の両側面で外部電極130、131と接続するときには・・・夫々が比較的薄い被覆状に形成されているから外部電極130、131と確実な接触をとることができないおそれもある。」(2頁右上欄1行ないし9行)との記載があるように、従来技術の問題点として、ハイブリット回路の積層体の各層内に形成された配線パターン121〜125が各層の端面側に延在し、且つ引き出され外部電極130、131に接続されていることが開示されていて(第4図参照)、本件発明の発明が解決しようとする課題が示されているにすぎず、課題を解決するための手段として、内部の配線パターンについては、先端部の厚みが他の部位に比べて厚く、且つ幅が他の部位に比べて広く設定されことについて記載も示唆もされていない。
一方、本件発明は、多層回路基板であって、その端面電極は基板本体の端面に部分的に形成され(本件特許明細書の第1図参照)、また、その内部配線層は、前記端面電極と接続する先端部を有するとともに、該先端部の厚みが他の部位に比べて厚く、且つ幅が他の部位に比べて広く設定され、前記端面電極との接続面が前記接続部位の厚み方向に平行であることを構成要件とするものである。
そうすると、引用例1ないし3及び甲第3号証のいずれにも、端面電極は基板本体の端面に部分的に形成され、内部配線層は、前記端面電極と接続する先端部を有するとともに、該先端部の厚みが他の部位に比べて厚く、且つ幅が他の部位に比べて広く設定されることについて記載も示唆もされていない。
してみると、本件発明は、引用例1ないし3及び甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
多層回路基板
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数の絶縁層を積層してなる基板本体と、前記基板本体の端面に部分的に形成された端面電極と、前記基板本体内に形成されかつ前記端面電極に接続する内部配線層とを備えた多層回路基板において、
前記内部配線層は、前記端面電極と接続する先端部を有するとともに、該先端部の厚みが他の部位に比べて厚く、且つ幅が他の部位に比べて広く設定され、前記端面電極との接続面が前記接続部位の厚み方向に平行であることを特徴とする多層回路基板。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、回路基板、特に、多層回路基板に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子機器用の混成集積回路等に用いられる回路基板として、多層回路基板が知られている。一般的な多層回路基板は、複数の絶縁層を積層してなる基板本体と、基板本体内に形成された内部配線層と、基板の表面に形成された表面配線とから主に構成されている。ところで、この種の多数回路基板は、小型化、高密度化及びSMD化が要望されており、これを実現するためのものとして基板本体の端面に端面電極を設けたものが提案されている。端面電極は、表面配線や内部配線層と接続されており、例えば内部配線層と表面配線とを直接接続するためのものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
端面電極を有する前記従来の多層回路基板は、内部配線層と端面電極との接着面積が小さいため、両者の接続部の導通不良が発生し易く、また両者の接続部位の抵抗値が高くなり易い。内部配線層の膜厚を厚く設定すると、内部配線層と端面電極との接着面積が広がるので両者の接続性は改善されるが、内部配線層の形成工程においてペーストのダレ等が生じる結果、内部配線層の高密度化が困難になり、また基板本体を形成するためのグリーンシートの厚さを増す必要があるために多層回路基板が大型になる。
【0004】
本発明の目的は、端面電極を有する多層回路基板に関し、小型化を図りつつ内部配線層と端面電極との接続性を改善することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の多層回路基板は、複数の絶縁層を積層してなる基板本体と、前記基板本体の端面に部分的に形成された端面電極と、基板本体内に形成されかつ端面電極に接続する内部配線層とを備えたものである。この内部配線層は、前記端面電極と接続する先端部を有するとともに、該先端部の厚みが他の部位に比べて厚く、且つ幅が他の部位に比べて広く設定され、前記端面電極との接続面が前記接続部位の厚み方向に平行である。
【0006】
【作用】
本発明において、内部配線層は、端面電極との接続する先端部を有し、且つ該先端部の厚みが他の部位に比べて厚く、且つ幅が他の部位に比較して広く設定され、端面電極との接続面が接続部位の厚み方向に平行であるため、端面電極との接触面積が広くなる。この結果、内部配線層と端面電極との接続性が向上する。一方、内部配線層は、端面電極との接続部位のみ厚みが大きく設定されているため、基板本体の大きさに影響しにくい。よって、基板本体は、小型に維持される。
【0007】
【実施例】
図1及び図2に、本発明の一実施例に係る多層回路基板を示す。図において、多層回路基板1は、板状の基板本体2と、基板本体2内に形成された内部配線層3と、基板本体2の表面に設けられた表面配線4と、基板本体2の端面に形成された端面電極5とから主に構成されている。
【0008】
基板本体2は、図2に示すように、例えば8枚のセラミックグリーンシートを積層して一体焼成することにより得られた一体化したシート2a,2b,2c,2d,2e,2f,2g,2hから構成されている。各シート2a…2hを構成するセラミック材料は、例えばガラス複合系や結晶化ガラス系のものである。ガラス複合系のセラミック材料としては、硼珪酸ガラス形成物質に修飾物質(例えばMgO、CaO、Al2O3、PbO、K2O、Na2O、ZnO、Li2O等)を加えたガラス粉末と、アルミナ,ムライト,コージェライト,石英等のセラミック粉末との混合物を原料とするものが例示できる。また、結晶化ガラス系のセラミック材料としては、コージェライト系、αスポジュメン系等の結晶化するガラス粉末からなるものが例示できる。
【0009】
内部配線層3は、各シート2a…2h間に所定の内部配線パターンで形成されている。また、各シート2a…2h間に設けられた内部配線層3は、各シート2a…2hの厚み方向に貫通する導電性のスルーホール6により互いに連結されている。このように、基板本体2内に形成された複数の内部配線層3の一部は、基板本体2の端部に延びている。そして、その先端部3aは、厚みが他の部分に比べて厚く設定されている。その厚みtは、各シート2a…2hの厚みが100〜200μmで内部配線層3の厚みが10〜30μmの場合、通常20〜50μmである。厚みが20μm未満の場合は、端面電極4との接着面積が小さくなるので、内部配線層3と端面電極4との接続不良が発生し易い。逆に、50μmを超える場合は、各シート2a…2h間の密着性が低下する。
【0010】
なお、スルーホール6を含む内部配線層3は、導体抵抗の小さな銀系の導体材料を用いて構成されている。銀系の導体材料としては、例えば、銀、銀-パラジウム、銀-白金、銀-パラジウム-白金等の導体材料が用いられる。表面配線4は、基板本体2の両主面に所定の高密度パターンで形成されており、基板本体2の両主面を構成するシート2a,2hの厚み方向に貫通する導電性のスルーホール7により内部配線層3と接続されている。スルーホール7は、上述の銀系の導体材料からなり、内部配線層3の一部である。なお、図1では、表面配線4の一部のみ示し、詳細は省略している。表面配線4は、マイグレーションを起こしにくい銅系の導体材料により構成されている。
【0011】
端面電極5は、基板本体2の端面に形成されている。この端面電極5は、内部配線層3の先端部3a及び表面配線4と接続されており、内部配線層3と表面配線4とを直接接続するためのものである。ここで、内部配線層4は、先端部3aの厚みが他の部位に比べて大きく設定されているため、端面電極5との接触面積が大きく、端面電極5と接続不良を起こしにくい。なお、端面電極5は、表面配線4と同様の銅系の導体材料から構成されている。
【0012】
次に、前記多層回路基板1の製造方法について説明する。まず、基板本体2を形成するためのセラミックグリーンシートを用意する。セラミックグリーンシートの厚みは、100〜200μmに設定するのが好ましい。このセラミックグリーンシートには、スルーホール6,7に対応する貫通孔を打ち抜き等の手法により設ける。貫通孔の口径は、100〜200μmに設定するのが好ましい。
【0013】
次に、各セラミックグリーンシートに設けた貫通孔に上述の銀系材料からなるペーストを充填し、また各グリーンシートの表面に同様のペーストを用いてスクリーン印刷法により内部配線パターンを印刷する。ここでは、内部配線パターン全体の厚みを同じに設定しておく。次に、内部配線パターンの先端部に重ねてペーストを印刷する。これにより、当該先端部は、内部配線パターンの他の部位に比べて厚みが大きく設定される。なお、先端部にペーストを重ねて印刷する場合、印刷幅を内部配線層3の印刷幅よりも広く設定してもよい。このようにすると、先端部3aと端面電極5との接着面積がさらに広くなり、両者の接触不良がより生じにくくなる。
【0014】
次に、各セラミックグリーンシートを所定の順に積層して圧着する。そして、これを焼成すると、基板本体2が得られる。得られた基板本体2の両主面には、上述の銅系の導体材料からなるペーストをスクリーン印刷法により所定の表面配線パターンに印刷する。また、基板本体2の端面に、端面電極5のパターンに対応するよう同様のペーストを印刷する。そして、これらのペーストを焼成すると、上述の多層回路基板1が得られる。
【0015】
このような製造工程において、内部配線パターンの先端部は、厚みが他の部位に比べて大きく設定されているため、当該先端部と端面電極パターンとの接着面積は十分に確保され得る。したがって、得られた多層回路基板1では、先端部3aと端面電極5との接続不良が発生しにくい。このため、上述の製造工程により得られる多層回路基板1は、従来品の歩留りが50〜60%であったのに対し、歩留りが90〜95%となり、不良品の発生率が低い。図3に、参考として、先端部3aの乾燥膜厚と歩留りとの関係を示す。なお、乾燥膜厚60μmではシート間のデラミネーションが発生した。
【0016】
上述の多層回路基板1は、例えば表面配線4上に所定の電子部品等が搭載され、電子機器に組み込まれる。
【0017】
【発明の効果】
本発明では、内部配線層と端面電極との接続部位において、内部配線層の厚みを他の部位に比べて厚く設定し、内部配線層と端面電極との接続面が接続部位の厚み方向に平行であるため、小型でありながら内部配線層と端面電極との接続性が良好な多層回路基板が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の一実施例の斜視図。
【図2】
図1のII-II断面拡大部分図。
【図3】
内部配線層の先端部の乾燥膜厚と歩留りとの関係を示すグラフ。
【符号の説明】
1 多層回路基板
2 基板本体
2a…2h シート
3 内部配線層
5 端面電極
 
訂正の要旨 訂正の要旨
1.訂正事項a
特許請求の範囲の減縮を目的として、「【請求項1】複数の絶縁層を積層してなる基板本体と、前記基板本体の端面に形成された端面電極と、前記基板本体内に形成されかつ前記端面電極に接続する内部配線層とを備えた多層回路基板において、前記内部配線層は、前記端面電極との接続部位の厚みが他の部位に比べて厚く設定され、前記端面電極との接続面が前記接続部位の厚み方向に平行であることを特徴とする多層回路基板。」を「【請求項1】複数の絶縁層を積層してなる基板本体と、前記基板本体の端面に部分的に形成された端面電極と、前記基板本体内に形成されかつ前記端面電極に接続する内部配線層とを備えた多層回路基板において、前記内部配線層は、前記端面電極と接続する先端部を有するとともに、該先端部の厚みが他の部位に比べて厚く、且つ幅が他の部位に比べて広く設定され、前記端面電極との接続面が前記接続部位の厚み方向に平行であることを特徴とする多層回路基板。」と訂正する。
2.訂正事項b
明瞭でない記載の釈明を目的として、本件特許明細書の段落番号【0005】の「【課題を解決するための手段】 本発明の多層回路基板は、複数の絶縁層を積層してなる基板本体と、前記基板本体の端面に形成された端面電極と、基板本体内に形成されかつ端面電極に接続する内部配線層とを備えたものである。この多層回路基板において、内部配線層は、端面電極との接続部位の厚みが他の部位に比べて厚く設定され、端面電極との接続面が接続部位の厚み方向に平行である。」を「【課題を解決するための手段】 本発明の多層回路基板は、複数の絶縁層を積層してなる基板本体と、前記基板本体の端面に部分的に形成された端面電極と、前記基板本体内に形成されかつ前記端面電極に接続する内部配線層とを備えたものである。この多層回路基板において、内部配線層は、前記端面電極と接続する先端部を有するとともに、該先端部の厚みが他の部位に比べて厚く、且つ幅が他の部位に比べて広く設定され、前記端面電極との接続面が前記接続部位の厚み方向に平行である。」と訂正する。
3.訂正事項c
明瞭でない記載の釈明を目的として、本件特許明細書の段落番号【0006】の「【作用】 本発明において、内部配線層は、端面電極との接続する先端部を有し、且つ該先端部の厚みが他の部位に比べて厚く設定され、端面電極との接続面が接続部位の厚み方向に平行であるため、端面電極との接触面積が広くなる。この結果、内部配線層と端面電極との接続性が向上する。一方、内部配線層は、端面電極との接続部位のみ厚みが大きく設定されているため、基板本体の大きさに影響しにくい。よって、基板本体は、小型に維持される。」を「【作用】 本発明において、内部配線層は、端面電極との接続する先端部を有し、且つ該先端部の厚みが他の部位に比べて厚く、且つ幅が他の部位に比較して広く設定され、端面電極との接続面が接続部位の厚み方向に平行であるため、端面電極との接触面積が広くなる。この結果、内部配線層と端面電極との接続性が向上する。一方、内部配線層は、端面電極との接続部位のみ厚みが大きく設定されているため、基板本体の大きさに影響しにくい。よって、基板本体は、小型に維持される。」と訂正する。
異議決定日 2001-11-02 
出願番号 特願平4-137234
審決分類 P 1 651・ 121- YA (H05K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 中川 隆司  
特許庁審判長 粟津 憲一
特許庁審判官 鈴木 法明
井口 嘉和
登録日 2000-08-11 
登録番号 特許第3097877号(P3097877)
権利者 京セラ株式会社
発明の名称 多層回路基板  

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