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審決分類 審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H05K
審判 一部申し立て 2項進歩性  H05K
管理番号 1054851
異議申立番号 異議2001-71133  
総通号数 28 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-03-09 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-04-12 
確定日 2001-11-07 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3098729号「多層プリント配線板の製造方法」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3098729号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3098729号は、平成9年8月22日に出願され、平成12年8月11日に設定登録された後、藤澤理容子により請求項1乃至4について、名越千栄子より請求項1,2,4について特許異議の申立てがなされ、平成13年6月29日付で取消の理由が通知され、その指定期間内である平成13年9月10日に訂正請求がなされたものである。

2.平成13年9月10日付の訂正請求に係る訂正の適否についての判断
2-1.訂正の内容
訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1を削除する。

訂正事項b
特許請求の範囲の請求項2の記載、
「【請求項2】基板上に設けられた導体回路の表面に粗化層を形成した後、層間絶縁層を形成し、この層間絶縁層にバイアホールのための開口部を設けて、該層間絶縁層上に導体回路を形成することにより、基板上の導体回路と層間絶縁層上の導体回路とを、前記開口部から露出する粗化層を介して電気的に接続する多層プリント配線板の製造方法において、
前記粗化層は、加熱処理が施されることを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。」を、
「【請求項1】基板上に設けられた導体回路の表面に銅、ニッケルおよびリンの針状合金からなる粗化層を形成した後、層間絶縁層を形成し、この層間絶縁層にバイアホールのための開口部を設けて、酸または酸化剤にて前記層間絶縁層表面を粗化した後、該層間絶縁層上に導体回路を形成することにより、基板上の導体回路と層間絶縁層上の導体回路とを、前記開口部から露出する銅、ニッケルおよびリンの針状合金からなる粗化層を介して電気的に接続する多層プリント配線板の製造方法において、
前記粗化層は、加熱処理が施されることを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。」に訂正する。

訂正事項c
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

訂正事項d
特許請求の範囲の請求項1および3の削除に伴って、請求項4の記載、
「【請求項4】前記加熱処理は、 100〜150 ℃で30分〜3時間の処理であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。」
を、
「【請求項2】前記加熱処理は、 100〜150 ℃で30分〜3時間の処理であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。」
に訂正する。

訂正事項e
特許請求の範囲の請求項1〜13において、特許請求の範囲の減縮を目的として、請求項1、3を削除したことに伴い、以下項数を繰り上げ「請求項5」を「請求項3」とし、「請求項6」を「請求項4」とし、「請求項7」を「請求項5」とし、し「請求項8」を「請求項6」とし、「請求項9」を「請求項7」とし、「請求項10」を「請求項8」とし、「請求項11」を「請求項9」とし、「請求項12」を「請求項10」とし、「請求項13」を「請求項11」とする。
訂正事項f
本件明細書の【0009】の、
「すなわち、本発明の要旨構成は、以下のとおりである。
(1) 多層プリント配線板を製造するに当たり、基板上に設けられた導体回路の表面に粗化層を形成し、加熱処理を施した後、層間絶縁層を形成することを特徴とする多層プリント配線板の製造方法である。
(2) 基板上に設けられた導体回路の表面に粗化層を形成した後、層間絶縁層を形成し、この層間絶縁層にバイアホールのための開口部を設けて、該層間絶縁層上に導体回路を形成することにより、基板上の導体回路と層間絶縁層上の導体回路とを、前記開口部から露出する粗化層を介して電気的に接続する多層プリント配線板の製造方法において、
前記粗化層は、加熱処理が施されることを特徴とする多層プリント配線板の製造方法である。」
を、
「すなわち、本発明の要旨構成は、以下のとおりである。
(1)基板上に設けられた導体回路の表面に粗化層を形成した後、層間絶縁層を形成し、この層間絶縁層にバイアホールのための開口部を設けて、酸または酸化剤にて前記層間絶縁層を粗化した後、該層間絶縁層上に導体回路を形成することにより、基板上の導体回路と層間絶縁層上の導体回路とを、前記開口部から露出する銅、ニッケルおよびリンの針状合金からなる粗化層を介して電気的に接続する多層プリント配線板の製造方法において、
前記粗化層は、加熱処理が施されることを特徴とする多層プリント配線板の製造方法である。」
と訂正する。

訂正事項g
本件明細書【0010】の、
「上記 (1)または(2) に記載の製造方法において、基板上に設けられた導体回路の表面には、銅、ニッケルおよびリンの針状合金からなる粗化層を形成することが好ましい。また、前記加熱処理は、 100〜150 ℃で30分〜3時間の処理であることが好ましい。」
を、
「上記 (1) に記載の製造方法において、前記加熱処理は、 100〜150 ℃で30分〜3時間の処理であることが好ましい。」
と訂正する。

訂正事項h
本件明細書の【0011】の、
「(3) 多層プリント配線板を製造するに当たり、基板上に設けられた導体回路の表面に粗化層を形成した後、該粗化層表面を酸処理し、次いで該粗化層表面にイオン化傾向が銅より大きくかつチタン以下である金属を1種以上含む金属もしくは貴金属からなる金属被覆層を形成し、さらに層間絶縁層を形成することを特徴とする多層プリント配線板の製造方法である。
(4) 基板上に設けられた導体回路の表面に粗化層を形成した後、層間絶縁層を形成し、この層間絶縁層にバイアホールのための開口部を設けて、該層間絶縁層上に導体回路を形成することにより、基板上の導体回路と層間絶縁層上の導体回路とを、前記開口部から露出する粗化層を介して電気的に接続する多層プリント配線板の製造方法において、前記粗化層は、その表面を酸処理した後、イオン化傾向が銅より大きくかつチタン以下である金属を1種以上含む金属もしくは貴金属からなる金属被覆層で被覆されることを特徴とする多層プリント配線板の製造方法である。」
を、
「(2) 多層プリント配線板を製造するに当たり、基板上に設けられた導体回路の表面に粗化層を形成した後、該粗化層表面を酸処理し、次いで該粗化層表面にイオン化傾向が銅より大きくかつチタン以下である金属を1種以上含む金属もしくは貴金属からなる金属被覆層を形成し、さらに層間絶縁層を形成することを特徴とする多層プリント配線板の製造方法である。
(3) 基板上に設けられた導体回路の表面に粗化層を形成した後、層間絶縁層を形成し、この層間絶縁層にバイアホールのための開口部を設けて、該層間絶縁層上に導体回路を形成することにより、基板上の導体回路と層間絶縁層上の導体回路とを、前記開口部から露出する粗化層を介して電気的に接続する多層プリント配線板の製造方法において、前記粗化層は、その表面を酸処理した後、イオン化傾向が銅より大きくかつチタン以下である金属を1種以上含む金属もしくは貴金属からなる金属被覆層で被覆されることを特徴とする多層プリント配線板の製造方法である。」
と訂正する。

訂正事項i
本件明細書の【0012】の、
「上記 (3)または(4) に記載の製造方法において、基板上に設けられた導体回路の表面には、銅、ニッケルおよびリンの針状合金からなる粗化層を形成し、酸処理後にスズ膜を形成することが好ましい。また、前記酸処理は、硫酸、硝酸、ホウフッ酸およびカルボン酸のなかから選ばれるいずれか少なくとも1種の水溶液を用いることが好ましい。」
を、
「上記 (2)または(3) に記載の製造方法において、基板上に設けられた導体回路の表面には、銅、ニッケルおよびリンの針状合金からなる粗化層を形成し、酸処理後にスズ膜を形成することが好ましい。また、前記酸処理は、硫酸、硝酸、ホウフッ酸およびカルボン酸のなかから選ばれるいずれか少なくとも1種の水溶液を用いることが好ましい。」
と訂正する。

訂正事項j
本件明細書の【0013】の、
「(5) 多層プリント配線板を製造するに当たり、基板上に設けられた導体回路の表面に粗化層を形成し、加熱処理を施した後、該粗化層表面を酸処理し、次いで該粗化層表面にイオン化傾向が銅より大きくかつチタン以下である金属を1種以上含む金属もしくは貴金属からなる金属被覆層を形成し、さらに層間絶縁層を形成することを特徴とする多層プリント配線板の製造方法である。
(6) 基板上に設けられた導体回路の表面に粗化層を形成した後、層間絶縁層を形成し、この層間絶縁層にバイアホールのための開口部を設けて、該層間絶縁層上に導体回路を形成することにより、基板上の導体回路と層間絶縁層上の導体回路とを、前記開口部から露出する粗化層を介して電気的に接続する多層プリント配線板の製造方法において、前記粗化層は、加熱処理が施されて、その表面を酸処理した後、イオン化傾向が銅より大きくかつチタン以下である金属を1種以上含む金属もしくは貴金属からなる金属被覆層で被覆されることを特徴とする多層プリント配線板の製造方法である。」
を、
「(4) 多層プリント配線板を製造するに当たり、基板上に設けられた導体回路の表面に粗化層を形成し、加熱処理を施した後、該粗化層表面を酸処理し、次いで該粗化層表面にイオン化傾向が銅より大きくかつチタン以下である金属を1種以上含む金属もしくは貴金属からなる金属被覆層を形成し、さらに層間絶縁層を形成することを特徴とする多層プリント配線板の製造方法である。
(5) 基板上に設けられた導体回路の表面に粗化層を形成した後、層間絶縁層を形成し、この層間絶縁層にバイアホールのための開口部を設けて、該層間絶縁層上に導体回路を形成することにより、基板上の導体回路と層間絶縁層上の導体回路とを、前記開口部から露出する粗化層を介して電気的に接続する多層プリント配線板の製造方法において、前記粗化層は、加熱処理が施されて、その表面を酸処理した後、イオン化傾向が銅より大きくかつチタン以下である金属を1種以上含む金属もしくは貴金属からなる金属被覆層で被覆されることを特徴とする多層プリント配線板の製造方法である。」
と訂正する。

訂正事項k
本件明細書の【0014】の、
「上記 (5)または(6) に記載の製造方法において、基板上に設けられた導体回路の表面には、銅、ニッケルおよびリンの針状合金からなる粗化層を形成し、酸処理後にスズ膜を形成することが好ましい。また、前記酸処理は、硫酸、硝酸、ホウフッ酸およびカルボン酸のなかから選ばれるいずれか少なくとも1種の水溶液を用いることが好ましい。さらに、前記加熱処理は、 100〜150 ℃で30分〜3時間の処理であることが好ましい。」
を、
「上記 (4)または(5) に記載の製造方法において、基板上に設けられた導体回路の表面には、銅、ニッケルおよびリンの針状合金からなる粗化層を形成し、酸処理後にスズ膜を形成することが好ましい。また、前記酸処理は、硫酸、硝酸、ホウフッ酸およびカルボン酸のなかから選ばれるいずれか少なくとも1種の水溶液を用いることが好ましい。さらに、前記加熱処理は、 100〜150 ℃で30分〜3時間の処理であることが好ましい。」
と訂正する。

訂正事項l
本件明細書の【0015】の、
「【発明の実施の形態】上記 (1)および(2) に記載の本発明にかかる製造方法によれば、銅、ニッケルおよびリンからなる針状合金層などの結晶性の粗化層を、加熱処理することによってその結晶性を向上させ、酸、酸化剤、ソフトエッチング液に対する粗化層の耐性を向上させることができる。これにより、粗化層が溶解しにくくなり、局部電池反応を抑制することができる。」
を、
「【発明の実施の形態】上記 (1)に記載の本発明にかかる製造方法によれば、銅、ニッケルおよびリンからなる針状合金層などの結晶性の粗化層を、加熱処理することによってその結晶性を向上させ、酸、酸化剤、ソフトエッチング液に対する粗化層の耐性を向上させることができる。これにより、粗化層が溶解しにくくなり、局部電池反応を抑制することができる。」
に訂正する。

訂正事項m
本件明細書の【0016】の、
「上記 (3)および(4) に記載の本発明にかかる製造方法によれば、粗化層表面を酸処理した後、スズなどの金属被覆層を形成するので、粗化層表面を完全に被覆でき、局部電池反応の進行を妨害して、粗化層それ自体や導体回路の溶解を抑制することができる。」
を、
「上記 (2)および(3) に記載の本発明にかかる製造方法によれば、粗化層表面を酸処理した後、スズなどの金属被覆層を形成するので、粗化層表面を完全に被覆でき、局部電池反応の進行を妨害して、粗化層それ自体や導体回路の溶解を抑制することができる。」
と訂正する。

訂正事項n
本件明細書の【0017】の、
「上記 (5)および(6) に記載の本発明にかかる製造方法によれば、粗化層を加熱処理した後に酸処理するので、加熱処理によって粗化層の表面に生じた酸化膜を有利に除去でき、スズなどの金属被覆層が形成しやすくなる。その結果、この方法によれば、粗化層の結晶性向上と粗化層の完全な被覆を共に達成できるので、粗化層や導体回路の局部電池反応による溶解を抑制する点で特に有利である。」
を、
「上記 (4)および(5) に記載の本発明にかかる製造方法によれば、粗化層を加熱処理した後に酸処理するので、加熱処理によって粗化層の表面に生じた酸化膜を有利に除去でき、スズなどの金属被覆層が形成しやすくなる。その結果、この方法によれば、粗化層の結晶性向上と粗化層の完全な被覆を共に達成できるので、粗化層や導体回路の局部電池反応による溶解を抑制する点で特に有利である。」
と訂正する。

2-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び拡張または変更の存否
上記訂正事項a及び訂正事項cについては、請求項の削除であり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
上記訂正事項bについては、特許請求の範囲の請求項2に記載された「粗化層」を下位概念である「銅、ニッケルおよびリンの針状合金からなる粗化層」に限定すると共に、「酸または酸化剤にて前記層間絶縁層を粗化した後」は、層間絶縁層にバイアホールのための開口部を設けて、酸または酸化剤にて前記層間絶縁層表面を粗化した後、該層間絶縁層上にバイアホールおよび導体回路を形成することを明確化したものであり、これらの訂正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、「銅、ニッケルおよびリンの針状合金からなる粗化層」については、特許掲載公報の【0018】〜【0020】に記載されると共に、層間絶縁層にバイアホールのための開口部を設けて、「酸または酸化剤にて前記層間絶縁層表面を粗化した後、」該層間絶縁層上にバイアホールおよび導体回路を形成することは、特許掲載公報の【0034】〜【0039】に記載されていた事項であることから、上記訂正事項bは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
上記訂正事項dは、上記訂正事項a〜cに係る特許請求の範囲の訂正に伴った記載形式の訂正であり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項eは、訂正事項a,cに係る特許請求の範囲の請求項の削除に伴って、訂正前の請求項5以下の請求項を形式的に繰り上げるものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
更に、訂正事項f〜nは、上記訂正事項a〜dに係る特許請求の範囲の訂正に伴って、特許請求の範囲と発明の詳細な説明との整合を図るものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。

2-3.訂正の認容
以上のとおりであるから、上記訂正事項a〜nに係る訂正は、特許法第120条の4第2項第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであって、特許法120条の4第3項で準用する同第126条第2,第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議申立てについて
3-1.本件発明
上記2.で示したように、上記訂正が認められるから、異議の申立ての対象である訂正前の請求項1乃至4に係る発明は、上記訂正に係る特許請求の範囲の請求項1および請求項2に記載された、以下のとおりのものと認める。
「【請求項1】基板上に設けられた導体回路の表面に銅、ニッケルおよびリンの針状合金からなる粗化層を形成した後、層間絶縁層を形成し、この層間絶縁層にバイアホールのための開口部を設けて、酸または酸化剤にて前記層間絶縁層表面を粗化した後、該層間絶縁層上に導体回路を形成することにより、基板上の導体回路と層間絶縁層上の導体回路とを、前記開口部から露出する銅、ニッケルおよびリンの針状合金からなる粗化層を介して電気的に接続する多層プリント配線板の製造方法において、
前記粗化層は、加熱処理が施されることを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。
【請求項2】前記加熱処理は、 100〜150 ℃で30分〜3時間の処理であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。」

3-2.異議申立ての理由の概要
特許異議申立人藤澤理代子は、訂正前の請求項1乃至4の発明は、甲第1号証〜甲第3号証に基づいて、当業者であれば容易に発明をすることができるものであるから、特許法第29条第2項の規定に該当し、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである旨主張し、特許異議申立人名越千栄子は、訂正前の請求項1,2,4に係る発明は、甲第1号証〜甲第2号証に基づいて、特許法第29条第1項第3号または第29条第2項の規定に該当し、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものであり、また、訂正前の請求項1,2,4に係る記載が不備であり、特許法第36条第6項の規定を満たしておらず、同法113条第4号の規定により取り消されるべきものである旨主張している。

3-3.各刊行物記載の発明
(1)各刊行物
刊行物1:特開平9-130050号公報(特許異議申立人「藤澤理容子」が提示した甲第1号証)
刊行物2:社団法人 日本プリント回路工業会編「プリント回路技術便覧」初版、日刊工業新聞社、昭和62年2月28日、P549〜P553(特許異議申立人「藤澤理容子」が提示した甲第2号証、特許異議申立人「名越千栄子」の提示した甲第1号証)
刊行物3:特開平5-102657号公報(特許異議申立人「藤澤理容子」が提示したした甲第3号証)
刊行物4:牧善郎、中川登志子、”黒化処理に代わる「MEC etch Bond」”、電子材料、工業調査会、1995年10月,vol.10,p26-30(特許異議申立人「名越千栄子」の提示した甲第2号証)
(2)引用文献記載事項
(2-1)刊行物1
ア.「【請求項2】 表面に微細な凹凸層を有する内層銅パターンと、外層銅パターンとの間に層間絶縁層を設けてなるビルドアップ多層プリント配線板において、イオン化傾向が銅よりも大きくかつチタン以下である金属を1種以上含む金属層が、上記内層銅パターンの凹凸層表面に被覆形成され、バイアホールのための開口部が、上記層間絶縁層に形成され、内層導体パターンと外層導体パターンを接続するバイアホールが、その開口部にて部分的に露出している金属層と凹凸層とを介して形成されてなることを特徴とする多層プリント配線板。」
イ.「【請求項4】 内層銅パターン表層の微細な凹凸層が、針状の銅-ニッケル合金層または銅-ニッケル-リン合金層である請求項1または2に記載の多層プリント配線板。」
ウ.「【請求項6】 内層銅パターン表層の微細な凹凸層は、厚さが 0.5μm〜7.0μmの銅-ニッケル-リン合金層であり、イオン化傾向が銅よりも大きくかつチタン以下である金属を1種以上含む金属層は、厚さが0.01μm〜1.0μmのスズ層であることを特徴とする請求項1または2に記載の多層プリント配線板。」
エ.「【請求項13】 基材に設けられた内層銅パターンの表面に、針状の銅-ニッケル-リン合金層を無電解銅-ニッケル-リン合金めっきによって形成する工程と、前記銅-ニッケル-リン合金層の表面に、少なくともスズを含む無電解置換めっきによって含スズめっき膜を被覆形成する工程と、無電解めっき用接着剤からなる層間絶縁層を形成する工程と、前記含スズめっき膜を部分的に露出させるバイアホール形成用開口部を前記層間絶縁層の所定位置に形成する工程と、前記層間絶縁層の表面を粗化液で粗化する工程と、前記層間絶縁層の表面に触媒核を付与する工程と、無電解銅めっきによって、外層銅パターンおよびバイアホールを形成する工程とを少なくとも含むことを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。」(以上、特許請求の範囲)
オ.「内層銅パターン表層の微細な凹凸層は、針状結晶合金層であることが好ましく、特に、針状の銅-ニッケル合金層、銅-ニッケル-リン合金層、銅-コバルト合金層、銅-コバルト-リン合金層であることが望ましい。」(公報第4頁左欄第29行〜第33行)
カ.「【0030】(2) 次に、基材に設けられた内層銅パターンの上面に微細な凹凸層を形成する。この凹凸層には、無電解銅?ニッケルめっき、無電解銅-ニッケル-リンめっき、無電解銅-コバルトめっき、無電解銅-コバルト-リンめっき等によって得られる合金の針状結晶層(針状結晶合金めっき層)や、銅の酸化処理によって得られる黒化層、銅の酸化処理および還元処理によって得られる黒化還元層、サンドブラスト、ショットブラスト、バフ研磨、ラッピング等の物理的手法によって得られる物理的粗化層などがある。なかでも、無電解銅-ニッケルめっき、無電解銅-ニッケル-リンめっき、無電解銅-コバルトめっき、無電解銅-コバルト-リンめっき等によって得られる合金の針状結晶層(針状結晶合金めっき層)が望ましい。なぜなら、このような合金層は、針状結晶層であるために樹脂絶縁層との密着性に優れ、しかも、電気導電性があるためにバイアホール形成時に除去する必要がないからである。さらに、この合金層は、無電解めっきにて容易に形成できるため、基板へのダメージを低減できるからである。」(公報第6頁右欄第27行〜第45行)
キ.「【0041】
特に、本発明にかかる実施例においては、多層プリント配線板1は、内層銅パターン3の表面に形成した微細な凹凸層(針状の銅-ニッケル層または銅-ニッケル-リン層)9を保護するために、さらにイオン化傾向が銅よりも大きくかつチタン以下である金属を1種以上含む金属層10、もしくは貴金属層10が形成されている。
【0042】(実施例1)
(1)まず、基材2の両面に銅箔がラミネートされている銅張積層板を出発材料とし、その銅箔を常法に従ってパターン状にエッチングすることにより、基材2の両面に内層銅パターン3を形成した。特に、本実施例では、前記基材2としてガラスエポキシ製の板材を使用した。
【0043】
(2)次に、その基板を酸性脱脂、ソフトエッチングし、塩化パラジウムと有機酸からなる触媒溶液で処理して、Pd触媒を付与し、活性化を行った後、下記表に示す組成の無電解めっき浴にてめっきを施し、銅パターンとバイアホールパッドの表面にCu-Ni-P合金の厚さ 2.5μmの凹凸層(粗化層)9を形成した。」(公報第8頁第6行〜第24行)
ク.「【0046】
(3)そして、水洗(および必要に応じて乾燥)の後、さらにその基板をホウふっ化スズ-チオ尿素液(あるいは塩化スズ-チオ尿素液でも可能)からなる無電解スズめっき浴に50℃で1分間浸漬して、Cu-Ni-P合金の粗化層9の表面に厚さ液(あるいは塩化スズ-チオ尿素液でも可能)からなる無電解スズめっき浴に50℃で1分間浸漬して、Cu-Ni-P合金の粗化層9の表面に厚さ 0.3μmのスズめっき層10を置換形成した(図1参照)。」(公報第8頁左欄第43行〜第48行)
ケ.「【0049】
(5)前記 (1)〜(3) の工程を終えた後、水洗し、乾燥した基材2の両面に、上記感光性接着剤溶液を、ロールコーターを用いて塗布し、水平状態で20分間放置してから、60℃で 0.5時間の乾燥を行い、厚さ40μmの接着剤層4を形成した。
【0050】
(6)前記(5) の処理を施して得た配線板に、100 μmφの黒円が印刷されたフォトマスクフィルムを密着させ、超高圧水銀灯 500mJ/cm2 で露光した。これをDMDG溶液でスプレー現像することにより、配線板上に 100μmφのバイアホールとなる開口を形成した。さらに、前記配線板を超高圧水銀灯により約6000mJ/cm2 で露光し、100 ℃で1時間、その後150 ℃で12時間の加熱処理することによりフォトマスクフィルムに相当する寸法精度に優れた開口(バイアホール形成用開口11)を有する厚さ50μmの樹脂層間絶縁層4を形成した(図2参照)。なお、バイアホール形成用開口11は、スズめっき膜10を部分的に露出させるように形成した。
【0051】
(7)前記(6) の処理を施した配線板を、pH=13に調整した過マンガン酸カリウム(KMnO4 、60 g/l )に70℃で2分間浸漬し、次いでリン酸に30分間浸漬して樹脂層間絶縁層の表面を粗化して粗化面4aを形成し、その後、中和溶液(アトテック製)に浸漬したのち水洗した。そして、ドリル加工やパンチング加工を行うことよって、基材2の所定部分にスルーホール形成用孔12を穿孔した(図3参照)。なお、必要に応じてデスミア処理を行った。」(公報第8頁第32行〜第9頁第7行)
コ.「【0070】
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、例えば、以下のような態様に変更することが可能である。
(1)上記実施例で例示した4層板以外の多層プリント配線板1、例えば2層板や3層板、5層板、6層板、7層板、8層板等の多層プリント配線板に本発明を適用してもよい。この場合、外層銅パターン6の上面にNi-P-Cu合金の粗化層を形成し、さらにその表面にイオン化傾向が銅よりも大きくかつチタン以下である金属を1種以上含む金属層を被覆形成したうえで層間絶縁層4を形成して多層化することができる。
(2)請求項4において、銅-ニッケル層または銅-ニッケル-リン層に代え、銅-コバルト層や銅-コバルト-リン層、あるいは内層銅パターンに対する黒化処理および還元処理によって形成される黒化還元層を設けることができる。
【0071】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、内層銅パターンの表層部の溶解等を確実に防止でき、また内層銅パターンと樹脂層間絶縁層との密着性を改善できるので、外観および信頼性に優れた多層プリント配線板を容易に得ることができる。しかも、工程管理が容易となり、低コスト化に寄与するものである。」(公報第11頁左欄第30行〜右欄第32行)
サ.図1には、”内層銅パターン3の表面に粗化層9としての銅-ニッケル-リン層を形成し、その上にスズめっき膜10を形成したもの”が記載され、図2,図5には、”粗化層の上に層間絶縁層4が形成され、バイアホール形成用の開口部11から露出するスズめっき膜10を被覆した粗化層9を介して基板上に設けられた内層銅パターン3と層間絶縁層4上の外層銅パターン6を電気的に接続したもの”が記載されている。
上記ア〜サの記載および図1,2,5の記載からみて、上記刊行物1には、
「基板2上に設けられた内層銅パターン3の表面に銅,ニッケルおよびリンの針状合金からなる粗化層を形成した後、層間絶縁層4にバイアホール形成用の開口部11を設けて、リン酸および過マンガン酸カリウムにて前記層間絶縁層表面を粗化した後、該層間絶縁層4上に外層銅パターン6を形成することにより、基板2上の内層銅パターン3と層間絶縁層4上の外層銅パターン6とを、前記開口部11から露出するスズめっき膜10を被覆した銅、ニッケルおよびリンの針状合金からなる粗化層を介して電気的に接続する多層プリント配線板の製造方法」
が記載されているものと認められる。
(2-2)刊行物2
刊行物2には以下の記載がある。
シ.「5.14 内層粗化処理
多層配線板の内層銅はく表面を物理的あるいは化学的に処理して、銅はく表面とプリプレグとの接着強度を向上させるための表面処理方法を内層粗化処理という。」(549頁第1行〜第4行)
ス.「5.41.1 内層処理法の分類」として、
「(4)ブラックオキサイド(黒化処理)
量産時の安定性がよく、接着強度、耐熱性に優れるが、耐ハローイング性が劣る。しかし、食塩タイプのカタリストの普及に伴い、この問題もほぼ解決されている。(図5.14.2参照)。
・・・現状の主流を占めているのは(4)の黒化処理方法である。」 (550頁)
セ.「表5.14.2 黒化処理の行程
NO 行程名 処理条件
・・・
8 黒化処理 95℃ 1〜2分(常時ろ過すること)
・・・
11 乾燥 120±10℃ 1時間以上」(552頁)

(2-3)刊行物3
刊行物3には以下の記載がある。
セ.「【0019】
実施例1
ガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板に回路形成して内層回路板とした。
これを
H2 O2 34 g/l
H2 SO4 46 g/l
の水溶液に常温で 2分間浸漬してエッチングを行い粗面化した後、希塩酸で洗浄した。この内層回路板を十分水洗し、
Na Cl O4 30 g/l
Na OH 30 g/l
Na 2 PO4 5 g/l
の溶液を、温度90℃にして、溶液の補充をすることなく10μフィルターで連続濾過を行った黒化処理溶液に、幅 100μm のラインを 200μm 間隔で格子状にした70μm 厚の内層パターンを形成した内層板の1 ロットを、数枚づつ順次 5分間浸漬して酸化銅被膜を形成し、十分水洗した後乾燥させ、さらに 105℃で30分間のベーキングを行って黒化処理をした内層回路板を製造した。黒化処理液10リットル当りの黒化処理面積が 1 m2 と50 m2 にあたる内層回路板に、それぞれエポキシ樹脂を含浸させたプリプレグを介して銅箔を重ね、成形の温度 170℃,圧力25 kgf/cm2 で90分間、加熱、加圧一体に成形して多層プリント基板を製造した。」(公報3欄第45行から4欄17行)

(2-4)刊行物4
刊行物4は、多層プリント材の内層粗面化処理として「黒化処理に代わるMEC etch Bond」システムを紹介するものであり、
ソ.第28頁の表2には”粗面化条件”が記載され、第29頁の図1には、”基本的なライン構成として、マイクロエッチング(粗面化)の後に「乾燥」を行うこと”が記載されているものと認められる。

3-4.特許法第29条違反について
(1)請求項1に係る発明について
請求項1に係る発明と上記刊行物1に記載されたものとを対比すると、上記刊行物1に記載された「基板2上に設けられた内層銅パターン3」、「バイアホール形成用開口11」、「基板2上の内層銅パターン3」、「リン酸」、「過マンガン酸カリウム」、「層間絶縁層4上の外層銅パターン6」、がそれぞれ「基板上に設けられた導体回路」、「バイアホールのための開口部」、「基板上の導体回路」、「酸」、「酸化剤」、「層間絶縁層上の導体回路」に相当し、そうすると両者は、
「基板上に設けられた導体回路の表面に銅,ニッケルおよびリンの針状合金からなる粗化層を形成した後、層間絶縁層にバイアホールのための開口部を設けて、酸または酸化剤にて前記層間絶縁層表面を粗化した後、該層間絶縁層上に導体回路を形成することにより、基板上の導体回路と層間絶縁層上の導体回路とを、銅、ニッケルおよびリンの針状合金からなる粗化層を介して電気的に接続する多層プリント配線板の製造方法」
の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点>
バイアホールのための開口部から露出する部材が、請求項1に係る発明は、「銅、ニッケルおよびリンの針状合金からなる粗化層であって、前記粗化層は加熱処理が施される」のに対して、上記刊行物1に記載されたものは、「銅、ニッケルおよびリンの針状合金からなる粗化層に被覆したスズめっき膜」である点。
そこで上記相違点について検討する。
上記刊行物2には、内層粗化処理の代表的処理である黒化処理において、黒化処理後、120±10℃で1時間以上乾燥すること、すなわち加熱処理することが記載されているものと認められ、また、上記刊行物3には、多層プリント基板の製造方法で内層回路の粗面化の後、105℃で30分のベーキングして黒化処理を行うことが記載されているものと認められ、更に、上記刊行物4には、粗面化の後で乾燥することが記載されているものと認められる。
したがって、上記刊行物2〜4には、”導体回路の表面に粗化層を形成した後に加熱処理を施すこと”が、記載されているものと認められるものの、「銅、ニッケルおよびリンの針状合金からなる粗化層に加熱処理を施すこと」は、いずれの文献にも記載されていない。
そして、「銅、ニッケルおよびリンの針状合金からなる粗化層に加熱処理を施すこと」により、明細書記載の「その結晶性を向上させ、酸、酸化剤、ソフトエッチング液に対する粗化層の耐性を向上させることができる。これにより、粗化層が溶解しにくくなり、局部電池反応を抑制することができる。」という独自の作用効果を奏するものと認められる。
してみると、請求項1に係る発明は、上記刊行物1乃至4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとすることはできない。

(2)請求項2に係る発明について
請求項2に係る発明は、請求項1に係る構成要件を全て含み、更に他の構成要件を付加したものに相当するから、上記3-4(1)で説示したものと同様の理由により、上記刊行物1乃至4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとすることができない。

3-5.特許法第36条違反について
本件特許明細書の記載は、上記a〜nの訂正により明確となったから、本件請求項1,2に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものとすることはできない。

4.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由によっては本件発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
多層プリント配線板の製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 基板上に設けられた導体回路の表面に銅、ニッケルおよびリンの針状合金からなる粗化層を形成した後、層間絶縁層を形成し、この層間絶縁層にバイアホールのための開口部を設けて、酸または酸化剤にて前記層間絶縁層表面を粗化した後、該層間絶縁層上に導体回路を形成することにより、基板上の導体回路と層間絶縁層上の導体回路とを、前記開口部から露出する銅、ニッケルおよびリンの針状合金からなる粗化層を介して電気的に接続する多層プリント配線板の製造方法において、
前記粗化層は、加熱処理が施されることを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。
【請求項2】 前記加熱処理は、100〜150℃で30分〜3時間の処理であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】 多層プリント配線板を製造するに当たり、基板上に設けられた導体回路の表面に粗化層を形成した後、該粗化層表面を酸処理し、次いで該粗化層表面にイオン化傾向が銅より大きくかつチタン以下である金属を1種以上含む金属もしくは貴金属からなる金属被覆層を形成し、さらに層間絶縁層を形成することを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。
【請求項4】 基板上に設けられた導体回路の表面に粗化層を形成した後、層間絶縁層を形成し、この層間絶縁層にバイアホールのための開口部を設けて、該層間絶縁層上に導体回路を形成することにより、基板上の導体回路と層間絶縁層上の導体回路とを、前記開口部から露出する粗化層を介して電気的に接続する多層プリント配線板の製造方法において、前記粗化層は、その表面を酸処理した後、イオン化傾向が銅より大きくかつチタン以下である金属を1種以上含む金属もしくは貴金属からなる金属被覆層で被覆されることを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。
【請求項5】 基板上に設けられた導体回路の表面に、銅、ニッケルおよびリンの針状合金からなる粗化層を形成し、酸処理後にスズ膜を形成することを特徴とする請求項3または4に記載の製造方法。
【請求項6】 前記酸処理は、硫酸、硝酸、ホウフッ酸およびカルボン酸のなかから選ばれるいずれか少なくとも1種の水溶液を用いることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】 多層プリント配線板を製造するに当たり、基板上に設けられた導体回路の表面に粗化層を形成し、加熱処理を施した後、該粗化層表面を酸処理し、次いで該粗化層表面にイオン化傾向が銅より大きくかつチタン以下である金属を1種以上含む金属もしくは貴金属からなる金属被覆層を形成し、さらに層間絶縁層を形成することを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。
【請求項8】 基板上に設けられた導体回路の表面に粗化層を形成した後、層間絶縁層を形成し、この層間絶縁層にバイアホールのための開口部を設けて、該層間絶縁層上に導体回路を形成することにより、基板上の導体回路と層間絶縁層上の導体回路とを、前記開口部から露出する粗化層を介して電気的に接続する多層プリント配線板の製造方法において、前記粗化層は、加熱処理が施されて、その表面を酸処理した後、イオン化傾向が銅より大きくかつチタン以下である金属を1種以上含む金属もしくは貴金属からなる金属被覆層で被覆されることを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。
【請求項9】 基板上に設けられた導体回路の表面に、銅、ニッケルおよびリンの針状合金からなる粗化層を形成し、酸処理後にスズ膜を形成することを特徴とする請求項7または8に記載の製造方法。
【請求項10】 前記酸処理は、硫酸、硝酸、ホウフッ酸およびカルボン酸のなかから選ばれるいずれか少なくとも1種の水溶液を用いることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】 前記加熱処理は、100〜150°Cで30分〜3時間の処理であることを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載の多層プリント配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、多層プリント配線板の製造方法に関し、特に、粗化層や導体回路の局部電池反応による溶解を確実に防止して、層間絶縁層と導体回路の剥離、断線等を抑止し得る多層プリント配線板の製造方法について提案する。
【0002】
【従来の技術】
近年、多層配線基板の高密度化という要請から、いわゆるビルドアップ多層配線基板が注目されている。このビルドアップ多層配線基板は、例えば特公平4-55555号公報に開示されているような方法により製造される。即ち、コア基板上に、感光性の無電解めっき用接着剤からなる層間樹脂絶縁剤を塗布し、これを乾燥したのち露光,現像することにより、バイアホール用開口を有する層間樹脂絶縁層を形成し、次いで、この層間樹脂絶縁層の表面を酸化剤等による処理にて粗化したのち、その粗化面に感光性の樹脂層を露光,現像処理してなるめっきレジストを設け、その後、めっきレジスト非形成部分に無電解めっきを施してバイアホールを含む導体回路パターンを形成し、このような工程を複数回繰り返すことにより、多層化したアディティブ法によるビルドアップ配線基板が得られる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このような方法で製造される多層プリント配線板において、基板上に形成された内層側の導体回路は、その導体回路上の層間樹脂絶縁層との密着を確保するために、その表面に粗化処理が施される。例えば、特開平6-283860号公報には、銅導体パターンにCu-Ni-Pからなる針状合金めっきを施すことにより、その導体表面を粗化処理する方法が開示されている。
【0004】
しかしながら、このCu-Ni-Pからなる針状合金めっきを銅導体パターンに施す粗化処理では、後工程で層間樹脂絶縁層にバイアホール用開口を設けると、その開口から、Cu-Ni-Pの針状合金めっき層が露出することになる。そのため、プリント配線板を製造するにあたり、層間樹脂絶縁層を酸や酸化剤で粗化処理したり、ソフトエッチング液にて配線板を処理する際に、このような酸、酸化剤あるいはソフトエッチング液に導体回路が接触し、Cu-Ni-Pの針状合金めっき層や導体回路が溶解するという問題があった。
【0005】
このような問題を克服できる技術として、発明者らは、先に特開平9-130050号公報において、Cu-Ni-Pからなる針状合金層の表面をスズ置換めっきして、粗化層をスズ層で被覆する方法を提案した。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このようなスズ層による被覆をおこなっても、まれにCu-Ni-P針状合金層や導体回路が溶解するという現象が見られた。この現象は、特に、導体回路が電解めっき膜および無電解めっき膜で構成されるセミアディティブ法では、大きなボイドとなって配線板の接続信頼性を悪化させる原因となった。
【0007】
本発明の主たる目的は、Cu-Ni-P針状合金層や導体回路の局部電池反応による溶解を確実に防止して、断線等の不良を抑止し得る多層プリント配線板の製造方法を提案することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、上記目的の実現に向け鋭意研究した。その結果、Cu-Ni-P針状合金層や導体回路が溶解する原因が、▲1▼Cu-Ni-Pからなる針状合金の結晶性が低いこと、▲2▼Cu-Ni-Pからなる針状合金表面に酸化膜などの銅とスズの置換反応を妨害する因子が存在していること、にあると推定した。即ち、Cu-Ni-Pからなる針状合金は、その結晶性が低いために溶解しやすく、酸、酸化剤およびソフトエッチング液に触れて局部電池反応を起こして溶解してしまい、また、Cu-Ni-Pからなる針状合金は、その表面に酸化膜などの銅とスズの置換反応を妨害する因子が存在しているため、スズ置換が不充分となり、酸、酸化剤およびソフトエッチング液と接触して局部電池反応を起こして溶解してしまう、と考えた。このような推定に基づき、発明者らは、導体回路表面に結晶合金からなる粗化層を形成し、この粗化層を、加熱処理することで結晶性を向上させて溶解しにくくさせること、ならびに、結晶合金からなる粗化層表面の酸化膜などを酸処理にて除去することで、その粗化層表面に金属被覆層をより完全に形成させて、導体回路が溶解するような局部電池反応を抑制することにより、前述の問題を解決できることを知見し、本発明に想到するに至ったのである。
【0009】
すなわち、本発明の要旨構成は、以下のとおりである。
(1) 基板上に設けられた導体回路の表面に銅、ニッケルおよびリンの針状合金からなる粗化層を形成した後、層間絶縁を形成し、この層間絶縁層にバイアホールのための開口部を設けて、酸または酸化剤にて前記層間絶縁層を粗化した後、該層間絶縁層上に導体回路を形成することにより、基板上の導体回路と層間絶縁層上の導体回路とを、前記開口部から露出する銅、ニッケルおよびリンの針状合金からなる粗化層を介して電気的に接続する多層プリント配線板の製造方法において、
前記粗化層は、加熱処理が施されることを特徴とする多層プリント配線板の製造方法である。
【0010】
上記(1)に記載の製造方法において、前記加熱処理は、100〜150℃で30分〜3時間の処理であることが好ましい。
【0011】
(2)多層プリント配線板を製造するに当たり、基板上に設けられた導体回路の表面に粗化層を形成した後、該粗化層表面を酸処理し、次いで該粗化層表面にイオン化傾向が銅より大きくかつチタン以下である金属を1種以上含む金属もしくは貴金属からなる金属被覆層を形成し、さらに層間絶縁層を形成することを特徴とする多層プリント配線板の製造方法である。
(3)基板上に設けられた導体回路の表面に粗化層を形成した後、層間絶縁層を形成し、この層間絶縁層にバイアホールのための開口部を設けて、該層間絶縁層上に導体回路を形成することにより、基板上の導体回路と層間絶縁層上の導体回路とを、前記開口部から露出する粗化層を介して電気的に接続する多層プリント配線板の製造方法において、前記粗化層は、その表面を酸処理した後、イオン化傾向が銅より大きくかつチタン以下である金属を一種以上含む金属もしくは貴金属からなる金属被覆層で被覆されることを特徴とする多層プリント配線板の製造方法である。
【0012】
上記(2)または(3)に記載の製造方法において、基板上に設けられた導体回路の表面には、銅、ニッケルおよびリンの針状合金からなる粗化層を形成し、酸処理後にスズ膜を形成することが好ましい。また、前記酸処理は、硫酸、硝酸、ホウフッ酸およびカルボン酸のなかから選ばれるいずれか少なくとも1種の水溶液を用いることが好ましい。
【0013】
(4)多層プリント配線板を製造するに当たり、基板上に設けられた導体回路の表面に粗化層を形成し、加熱処理を施した後、該粗化層表面を酸処理し、次いで該粗化層表面にイオン化傾向が銅より大きくかつチタン以下である金属を1種以上含む金属もしくは貴金属からなる金属被覆層を形成し、さらに層間絶縁層を形成することを特徴とする多層プリント配線板の製造方法である。
(5)基板上に設けられた導体回路の表面に粗化層を形成した後、層間絶縁層を形成し、この層間絶縁層にバイアホールのための開口部を設けて、該層間絶縁層上に導体回路を形成することにより、基板上の導体回路と層間絶縁層上の導体回路とを、前記開口部から露出する粗化層を介して電気的に接続する多層プリント配線板の製造方法において、前記粗化層は、加熱処理が施されて、その表面を酸処理した後、イオン化傾向が銅より大きくかつチタン以下である金属を1種以上含む金属もしくは貴金属からなる金属被覆層で被覆されることを特徴とする多層プリント配線板の製造方法である。
【0014】
上記(4)または(5)に記載の製造方法において、基板上に設けられた導体回路の表面には、銅、ニッケルおよびリンの針状合金からなる粗化層を形成し、酸処理後にスズ膜を形成することが好ましい。また、前記酸処理は、硫酸、硝酸、ホウフッ酸およびカルボン酸のなかから選ばれるいずれか少なくとも1種の水溶液を用いることが好ましい。さらに、前記加熱処理は、100〜150°Cで30分〜3時間の処理であることが好ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】
上記(1)に記載の本発明にかかる製造方法によれば、銅、ニッケルおよびリンからなる針状合金層などの結晶性の粗化層を、加熱処理することによってその結晶性を向上させ、酸、酸化剤、ソフトエッチング液に対する粗化層の耐性を向上させることができる。これにより、粗化層が溶解しにくくなり、局部電池反応を抑制することができる。
【0016】
上記(2)および(3)に記載の本発明にかかる製造方法によれば、粗化層表面を酸処理した後、スズなどの金属被覆層を形成するので、粗化層表面を完全に被覆でき、局部電池反応の進行を妨害して、粗化層それ自体や導体回路の溶解を抑制することができる。
【0017】
上記(4)および(5)に記載の本発明にかかる製造方法によれば、粗化層を加熱処理した後に酸処理するので、加熱処理によって粗化層の表面に生じた酸化膜を有利に除去でき、スズなどの金属被覆層が形成しやすくなる。その結果、この方法によれば、粗化層の結晶性向上と粗化層の完全な被覆を共に達成できるので、粗化層や導体回路の局部電池反応による溶解を抑制する点で特に有利である。
【0018】
このような本発明の方法において、基板上に設けられた導体回路の表面に形成される粗化層としては、銅、ニッケルおよびリンの針状合金からなる層が最適である。この理由は、かかる針状合金は層間樹脂絶縁層との密着性に優れるからである。
ここで、針状合金を形成できるCu-Ni-P合金の組成を三成分系の三角図(図1参照)に示す。この三角図から明らかなように針状合金を形成できる組成は、(Cu,Ni,P)=(100,0,0)、(90,10,0)、(90,0,10)で囲まれる範囲内のものがよい。
【0019】
この針状合金は、結晶性の合金であるため、加熱処理(いわゆるアニール)することにより、その結晶性を向上させることができる。その加熱処理は、100〜150℃で30分〜3時間の熱処理であることが好ましい。この理由は、加熱処理温度が低すぎるとアニールの効果が低く、一方、加熱処理温度が高すぎると銅-ニッケル-リンの合金の酸化が進行するからである。
【0020】
銅-ニッケル-リンなどの針状合金からなる粗化層は、空気中に放置したり、前述のような加熱処理によって、その表面に酸化膜が生じる。本発明では、このような酸化膜を酸処理により除去することができる。これにより、銅-ニッケル-リン針状合金からなる粗化層の表面に、スズなどの金属被覆層を置換めっきなどで容易に形成できるようになる。
【0021】
したがって本発明では、針状合金からなる粗化層に対して加熱処理および/または酸処理を施すと、針状合金の結晶性向上および/または針状合金の確実な表面被覆が実現でき、局部電池反応を阻害せしめ、銅-ニッケル-リンの針状合金や導体回路の溶解を抑制できるのである。
【0022】
本発明において、上記金属被覆層は、イオン化傾向が銅より大きくかつチタン以下である金属を1種以上含む金属もしくは貴金属の層である。ここで、イオン化傾向が銅より大きくかつチタン以下である金属としては、チタン、アルミニウム、亜鉛、鉄、インジウム、タリウム、コバルト、ニッケル、スズ、鉛、ビスマスから選ばれるいずれか少なくとも1種を用いることができる。また、貴金属としては、金、銀、白金、パラジウムを用いることができる。特に、無電解置換めっきにより粗化層に追従した薄い層を形成できる点で、スズを用いることが有利である。なお、この金属被覆層は、その厚さを0.1〜2μmとすることが望ましい。
【0023】
本発明において、前記酸処理は、硫酸、硝酸、ホウフッ酸、カルボン酸から選ばれるいずれか少なくとも1種の酸水溶液に浸漬するか、あるいはその酸水溶液をスプレーすることにより行われる。この酸水溶液の濃度は、硫酸では1〜20重量%、ホウフッ酸では0.05〜1.0mol%程度である。
【0024】
本発明の方法では、導体回路と粗化層の間に被覆層を形成してもよい。この被覆層は、ニッケル、コバルト、もしくは銅-ニッケル-リン合金から選ばれるいずれか少なくとも1種からなることが望ましく、特に、銅-ニッケル-リン合金が最適である。この理由は、被覆層は、局部電池反応を防止するという観点から上記粗化層と同種の金属であることが望ましいからである。即ち、粗化層として銅-ニッケル-リンの針状合金が最適であることから、被覆層としては、銅-ニッケル-リン合金が最適なのである。
【0025】
導体回路と粗化層の間に被覆層を形成する場合、前記粗化層の厚みは1〜5μmとし、前記被覆層の厚みは1〜10μmとすることが望ましい。この理由は、被覆層が薄すぎると、導体回路表面に被覆されない部分が生じて、局部電池反応による導体回路溶解のおそれがあるからであり、逆に、被覆層が厚すぎると、導体回路間あるいは層間の絶縁を維持しにくくなるからである。一方、粗化層が薄すぎると、層間樹脂絶縁層との密着性に乏しくなり、逆に、粗化層が厚すぎると、層間あるいは導体間の絶縁を維持しにくくなるからである。
【0026】
本発明において、導体回路表面に、粗化層として銅-ニッケル-リンの針状合金層を形成する場合、ならびにスズの置換めっきにより粗化層表面を被覆する場合のめっき方法について説明する。本発明では、導体回路が設けられた基板を、錯化剤、銅化合物、ニッケル化合物、次亜リン酸塩を含むめっき水溶液中に浸漬し、銅-ニッケル-リン針状合金からなる粗化層を形成することが好ましい。
【0027】
上記めっき水溶液は、銅イオン濃度、ニッケルイオン濃度、次亜リン酸イオン濃度、錯化剤濃度を、それぞれ2.2×10-2〜4.1×10-2mol/l、2.2×10-3〜4.1×10-3mol/l、0.20〜0.25mol/l、0.01〜0.2mol/lとなるように調整しておくことが望ましい。
なお、錯化剤としては、クエン酸などのヒドロキシカルボン酸が好適である。より具体的な無電解めっき液組成としては、硫酸銅1〜40g/l、硫酸ニッケル0.1〜6.0g/l、クエン酸10〜20g/l、次亜リン酸塩10〜100g/l、ホウ酸10〜40g/l、界面活性剤0.01〜10g/lからなる液組成のめっき浴を用いることが望ましい。
【0028】
また、スズにより粗化層表面の置換被覆を行う場合は、ホウフッ化スズ-チオ尿素、塩化スズ-チオ尿素液を使用する。これにより、Cu-Snの置換反応で0.1〜2μm程度のSn金属被覆層が形成される。一方、貴金属により粗化層表面を被覆する場合は、スパッタや蒸着などの方法が採用できる。
【0029】
本発明では、導体回路を被覆する層間樹脂絶縁層として無電解めっき用接着剤を用いることが望ましい。この無電解めっき用接着剤としては、硬化処理された酸あるいは酸化剤に可溶性の耐熱性樹脂粒子が、硬化処理によって酸あるいは酸化剤に難溶性となる未硬化の耐熱性樹脂中に分散されてなるものが最適である。この理由は、かかる接着剤を用いて形成した層間樹脂絶縁層は、酸、酸化剤で処理することにより、耐熱性樹脂粒子が溶解除去されて、表面に蛸つぼ状のアンカーからなる粗化面が形成できるからである。
【0030】
この無電解めっき用接着剤において、特に硬化処理された前記耐熱性樹脂粒子としては、▲1▼平均粒径が10μm以下の耐熱性樹脂粉末、▲2▼平均粒径が2μm以下の耐熱性樹脂粉末を凝集させた凝集粒子、▲3▼平均粒径が2μm〜10μmの耐熱性粉末樹脂粉末と平均粒径が2μm以下の耐熱性樹脂粉末との混合物、▲4▼平均粒径が2〜10μmの耐熱性樹脂粉末の表面に平均粒径が2μm以下の耐熱性樹脂粉末または無機粉末のいずれか少なくとも1種を付着させてなる疑似粒子、▲5▼平均粒径が0.1〜0.8μmの耐熱性樹脂粉末と平均粒径0.8μmを超え平均粒径2μm未満の耐熱性樹脂粉末の混合物、から選ばれるいずれか少なくとも1種を用いることが望ましい。これらは、より複雑なアンカーを形成できるからである。
【0031】
耐熱性樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂と熱可塑性樹脂との複合体を用いることができる。複合させる熱可塑性樹脂としては、ボエリエーテルスルホン(PES)、ボリフェニレンエーテル(PPE)、ボリフェニレンスルフィド(PPES)などが挙げられる。また、酸や酸化剤に溶解する耐熱性樹脂粒子としては、エポキシ樹脂(特にアミン系硬化剤で硬化させたエポキシ樹脂がよい)粒子、アミノ樹脂粒子がある。
【0032】
次に、本発明にかかるプリント配線板を製造する一方法について説明する。
(1)まず、コア基板の表面に内層銅パターンを形成した配線基板を作製する。このコア基板への銅パターンの形成は、銅張積層板をエッチングして行うか、あるいは、ガラスエポキシ基板やポリイミド基板、セラミック基板、金属基板などの基板に無電解めっき用接着剤層を形成し、この接着剤層表面を粗化して粗化面とし、ここに無電解めっきを施して行う方法がある。さらに必要に応じて、導体回路表面に粗化層を形成する。粗化層の形成方法としては、酸化(黒化)-還元処理、銅表面を粒界に沿ってエッチングして粗化面を形成する方法などがある。なお、コア基板には、スルーホールが形成され、このスルーホールを介して表面と裏面の配線層を電気的に接続することができる。また、スルーホールおよびコア基板の導体回路間には樹脂が充填されて、平滑性を確保してもよい。さらに、コア基板の導体回路表面、スルーホールのランド表面には、前述のように、銅-ニッケル-リン針状合金からなる粗化層を形成した後、加熱処理および/または酸処理を施したり、スズなどによる置換めっきを行って金属被覆層を形成したりすることができる。
【0033】
(2)次に、前記(1)で作製した配線基板の上に、層間樹脂絶縁層を形成する。特に本発明では、層間樹脂絶縁材として前述した無電解めっき用接着剤を用いることが望ましい。
【0034】
(3)形成した無電解めっき用接着剤層を乾燥した後、必要に応じてバイアホール形成用開口を設ける。感光性樹脂の場合は、露光,現像してから熱硬化することにより、また、熱硬化性樹脂の場合は、熱硬化したのちレーザー加工することにより、前記接着剤層にバイアホール形成用の開口部を設ける。
【0035】
(4)次に、硬化した前記接着剤層の表面に存在するエポキシ樹脂粒子を酸あるいは酸化剤によって溶解除去し、接着剤層表面を粗化処理する。ここで、上記酸としては、リン酸、塩酸、硫酸、あるいは蟻酸や酢酸などの有機酸があるが、特に有機酸を用いることが望ましい。粗化処理した場合に、バイアホールから露出する金属導体層を腐食させにくいからである。一方、上記酸化剤としては、クロム酸、過マンガン酸塩(過マンガン酸カリウムなど)を用いることが望ましい。
【0036】
(5)次に、接着剤層表面を粗化した配線基板に触媒核を付与する。触媒核の付与には、貴金属イオンや貴金属コロイドなどを用いることが望ましく、一般的には、塩化パラジウムやパラジウムコロイドを使用する。なお、触媒核を固定するために加熱処理を行うことが望ましい。このような触媒核としてはパラジウムがよい。
【0037】
(6)次に、無電解めっき用接着剤層の表面に無電解めっきを施し、粗化面全面に無電解めっき膜を形成する。無電解めっき膜の厚みは0.5〜5μmである。なお、無電解めっき膜は、50〜150℃で30分〜4時間の加熱処理を施すことが望ましい。酸や酸化剤に対する耐性を向上させるためである。
【0038】
(7)次に、無電解めっき膜上にめっきレジストを形成する。めっきレジスト組成物としては、特にクレゾールノボラック型エポキシ樹脂やフェノールノボラック型エポキシ樹脂のアクリレートとイミダゾール硬化剤からなる組成物を用いることが望ましく、他に市販品を使用することもできる。
【0039】
(8)次に、めっきレジスト非形成部に厚み5〜20μmの電解めっきを施し、導体回路、ならびにバイアホールを形成する。電解めっきを施す前に、予め、表面の酸化膜を除去すべく、有機酸、塩酸、硫酸などの酸で表面処理してもよい。このような表面処理はめっきレジスト形成前でも、後でもよい。ここで、上記電解めっきとしては、銅めっきを用いることが望ましい。なお、電解めっき膜は、50〜150°Cで30分〜7時間の加熱処理を施すことが望ましい。酸や酸化剤に対する耐性を向上させるためである。
【0040】
(9)そして、めっきレジストを除去した後、硫酸と過酸化水素の混合液や過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどのエッチング液で無電解めっき膜を溶解除去して、独立した導体回路とする。無電解めっき膜をエッチング除去する前に、予め、有機酸、塩酸、硫酸などの酸でめっき膜表面の酸化膜を除去しておくとよい。酸化膜の存在により、エッチングレートが変わってしまい、エッチング残りが発生するからである。
【0041】
(10)次に、前記(9)で形成した導体回路の表面に、前述のように、銅-ニッケル-リン針状合金からなる粗化層を形成した後、加熱処理および/または酸処理を施したり、スズなどによる置換めっきを行って金属被覆層を形成したりする。
(11)そして、この基板上に層間樹脂絶縁層として、無電解めっき用接着剤層を形成する。
(12)さらに、前記(3)〜(9)の工程を繰り返してさらに上層の導体回路を設け、片面3層の6層両面多層プリント配線板を得る。
【0042】
以上の説明は、セミアティティブ法と呼ばれる方法により形成した例であり、本発明は、無電解めっき用接着剤層を粗化した後、触媒核を付与し、めっきレジストを設け、無電解めっきを行い導体回路を形成する、いわゆるフルアディティブ法にも適用することが可能である。
【0043】
(13)次に、前記(12)で得られた多層配線基板に、ソルダーレジスト組成物を塗布し、次いでその塗膜を乾燥した後、この塗膜に、開口部を描画したフォトマスクフィルムを載置して露光、現像処理することにより、導体回路のうちパッド部分を露出させた開口部を有するソルダーレジストを形成する。ここで、前記開口部の開口径は、パッドの径よりも大きくすることができ、パッドを完全に露出させてもよい。また、逆に前記開口部の開口径は、パッドの径よりも小さくすることができ、パッドの周縁をソルダーレジストで被覆することができる。この場合、パッドをソルダーレジストで抑えることができ、パッドの剥離を防止できる。
【0044】
(14)次に、前記開口部から露出した前記パッド部上に「ニッケル-金」の金属層を形成する。
(15)そして、前記開口部から露出した前記パッド部上にはんだ体を供給し、はんだ体を有するプリント配線板が得られる。以下、実施例をもとづいて説明する。
【0045】
【実施例】
(実施例1)
A.無電解めっき用接着剤A(上層用)の調製
▲1▼.クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬製:分子量2500)の25%アクリル化物を80wt%の濃度でDMDGに溶解させた樹脂液を35重量部、感光性モノマー(東亜合成製、アロニックスM315)3.15重量部、消泡剤(サンノプコ製、S-65)0.5重量部、NMP3.6重量部を攪拌混合した。
▲2▼.ポリエーテルスルフォン(PES)12重量部、エポキシ樹脂粒子(三洋化成製、ポリマーポール)の平均粒径1.0μmを7.2重量部、平均粒径0.5μmのものを3.09重量部を混合した後、さらにNMP30重量部を添加し、ビーズミルで攪拌混合した。
▲3▼.イミダゾール硬化剤(四国化成製、2E4MZ-CN)2重量部、光開始剤(チバガイギー製、イルガキュア I-907)2重量部、光増感剤(日本化薬製、DETX-S)0.2重量部、NMP1.5重量部を攪拌混合した。これらを混合して無電解めっき用接着剤を調製した。
【0046】
B.無電解めっき用接着剤B(下層用)の調製
▲1▼.クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬製、分子量2500)の25%アクリル化物を80wt%の濃度でDMDGに溶解させた樹脂液を35重量部、感光性モノマー(東亜合成製、アロニックスM315)4重量部、消泡剤(サンノプコ製、S-65)0.5重量部、NMP3.6重量部を攪拌混合した。
▲2▼.ポリエーテルスルフォン(PES)12重量部、エポキシ樹脂粒子(三洋化成製、ポリマーポール)の平均粒径0.5μmのものを14.49重量部、を混合した後、さらにNMP30重量部を添加し、ビーズミルで攪拌混合した。
▲3▼.イミダゾール硬化剤(四国化成製、2E4MZ-CN)2重量部、光開始剤(チバガイギー製、イルガキュア I-907)2重量部、光増感剤(日本化薬製、DETX-S)0.2重量部、NMP1.5重量部を攪拌混合した。これらを混合して、2層構造の層間樹脂絶縁層を構成する下層側の絶縁剤層として用いられる無電解めっき用接着剤を調製した。
【0047】
C.樹脂充填剤の調製
▲1▼.ビスフェノールF型エポキシモノマー(油化シェル製、分子量310,YL983U)100重量部、表面にシランカップリング剤がコーティングされた平均粒径1.6μmのSiO2球状粒子(アドマテック製、CRS 1101-CE、ここで、最大粒子の大きさは後述する内層銅パターンの厚み(15μm)以下とする)170重量部、レベリング剤(サンノプコ製、ペレノールS4)1.5重量部を3本ロールにて混練して、その混合物の粘度を23±1℃で45,000〜49,000cpsに調整した。
▲2▼.イミダゾール硬化剤(四国化成製、2E4MZ-CN)6.5重量部。これらを混合して樹脂充填剤10を調製した。
【0048】
D.プリント配線板の製造方法
(1)厚さ1mmのガラスエポキシ樹脂またはBT(ビスマレイミドトリアジン)樹脂からなる基板1の両面に18μmの銅箔8がラミネートされている銅張積層板を出発材料とした(図2参照)。まず、この銅張積層板をドリル削孔し、無電解めっき処理を施してスルーホール9を形成し、さらに、銅箔8を常法に従いパターン状にエッチングすることにより、基板1の両面に内層銅パターン4を形成した。
【0049】
(2)内層銅パターン4およびスルーホール9を形成した基板を水洗いし、乾燥した後、酸化浴(黒化浴)として、NaOH(10g/l)、NaClO2(40g/l)、Na3PO4(6g/l)、還元浴として、NaOH(10g/l)、NaBH4(6g/l)を用いた酸化-還元処理により、内層銅パターン4およびスルーホール9の全表面に粗化層11を設けた(図3参照)。
【0050】
(3)樹脂充填剤10を、基板の片面にロールコータを用いて塗布することにより、導体回路4間あるいはスルーホール9内に充填し、70℃,20分間で乾燥させ、他方の面についても同様にして樹脂充填剤10を導体回路4間あるいはスルーホール9内に充填し、70℃,20分間で加熱乾燥させた(図4参照)。
【0051】
(4)前記(3)の処理を終えた基板の片面を、#600のベルト研磨紙(三共理化学製)を用いたベルトサンダー研磨により、内層銅パターン4の表面やスルーホール9のランド表面に樹脂充填剤10が残らないように研磨し、次いで、前記ベルトサンダー研磨による傷を取り除くためのバフ研磨を行った。このような一連の研磨を基板の他方の面についても同様に行った。次いで、100℃で1時間、120℃で3時間、150℃で1時間、180℃で7時間の加熱処理を行って樹脂充填剤10を硬化した(図5参照)。
【0052】
このようにして、スルーホール9等に充填された樹脂充填剤10の表層部および内層導体回路4上面の粗化層11を除去して基板両面を平滑化し、樹脂充填剤10と内層導体回路4の側面とが粗化層11を介して強固に密着し、またスルーホール9の内壁面と樹脂充填剤10とが粗化層11を介して強固に密着した配線基板を得た。即ち、この工程により、樹脂充填剤10の表面と内層銅パターン4の表面が同一平面となる。ここで、充填した硬化樹脂のTg点は155.6℃、線熱膨張係数は44.5×10-6/℃であった。
【0053】
(5)前記(4)の処理で露出した内層導体回路4およびスルーホール9のランドの表面に、厚さ5μmのCu-Ni-P合金からなる被覆層、厚さ2μmのCu-Ni-P針状合金からなる粗化層および粗化層表面を被覆する厚さ0.3μmのSn金属被覆層を設けた(図6参照、但し、Sn層については図示しない)。その形成方法は以下のようである。即ち、基板を酸性脱脂してソフトエッチングし、次いで、塩化パラジウムと有機酸からなる触媒溶液で処理して、Pd触媒を付与し、この触媒を活性化した後、硫酸銅8g/l、硫酸ニッケル0.6g/l、クエン酸15g/l、次亜リン酸ナトリウム29g/l、ホウ酸31g/l、界面活性剤0.1g/l、pH=9からなる無電解めっき浴に基板を浸漬し、Cu-Ni-Pの針状合金からなる粗化層を析出させた。さらに、その基板を、100℃で30分、120℃で30分、150℃で2時間の加熱処理を施し、10重量%硫酸水溶液、および0.2mol/lのホウフッ酸水溶液で処理した後、ホウフッ化スズ0.1mol/l、チオ尿素1.0mol/l、温度50℃、pH=1.2の条件でCu-Sn置換反応させ、粗化層11の表面に厚さ0.3μmのSn金属被覆層を設けた(Sn層については図示しない)。
【0054】
(6)前記(5)の基板の両面に、Bの無電解めっき用接着剤(粘度1,5Pa・s)をロールコータで塗布し、水平状態で20分間放置してから、60℃で30分の乾燥(プリベーク)を行い、絶縁剤層2aを形成した。さらにこの絶縁剤層2aの上にAの無電解めっき用接着剤(粘度7Pa・s)をロールコータを用いて塗布し、水平状態で20分間放置してから、60℃で30分の乾燥を行い、接着剤層2bを形成した(図7参照)。
【0055】
(7)前記(6)で絶縁剤層2aおよび接着剤層2bを形成した基板の両面に、85μmφの黒円が印刷されたフォトマスクフィルムを密着させ、超高圧水銀灯により500mJ/cm2で露光した。これをDMDG溶液でスプレー現像することにより、接着剤層に85μmφのバイアホール用開口を形成した。さらに、当該基板を超高圧水銀灯により3000mJ/cm2で露光し、100℃で1時間、その後150℃で5時間の加熱処理(ポストベーク)をすることにより、フォトマスクフィルムに相当する寸法精度に優れた開口(バイアホール形成用開口6)を有する厚さ35μmの2層構造の層間樹脂絶縁層(接着剤層)2を形成した。なお、バイアホールとなる開口には、図示しないスズめっき層を部分的に露出させた。
【0056】
(8)前記(7)の処理を施した基板を、800g/lのクロム酸に70℃で15分間浸漬して、層間樹脂絶縁層2の表面の樹脂粒子を溶解除去することにより、当該層間樹脂絶縁層2の表面を粗面(粗化深さ3μm)とし、その後、中和溶液(シプレイ社製)に浸漬してから水洗いした(図9参照)。さらに、粗面化処理した該基板の表面に、パラジウム触媒(アトテック製)を付与することにより、層間樹脂絶縁層2の表面およびバイアホール用開口6の内壁面に触媒核を付けた。
【0057】
(9)以下の組成の無電解銅めっき浴中に基板を浸漬して、粗面全体に厚さ0.6μmの無電解銅めっき膜12を形成した(図10参照)。さらに、この無電解めっき膜12を、50℃で1時間、100℃で30分、120℃で30分、150℃で2時間の加熱処理に施した。
〔無電解めっき液〕
EDTA 150g/l
硫酸銅 20g/l
HCHO 30ml/l
NaOH 40g/l
α、α’-ビピルジル 80mg/l
PEG 0.1g/l
〔無電解めっき条件〕70℃の液温度で30分
【0058】
(10)前記(9)で形成した無電解銅めっき膜12上に市販の感光性ドライフィルムを張り付け、マスクを載置して、100mJ/cm2で露光し、0.8%炭酸ナトリウムで現像処理し、厚さ15μmのめっきレジスト3を設けた(図11参照)。
【0059】
(11)ついで、10%硫酸水溶液で無電解めっき膜表面を処理した後、レジスト非形成部分に以下の条件で電解銅めっきを施し、厚さ15μmの電解銅めっき膜13を形成した(図12参照)。さらに、この電解めっき膜13を、50℃で30分、80℃で30分、100℃で30分、120℃で30分、150℃で5時間の加熱処理に施した。
〔電解めっき液〕
硫酸 180g/l
硫酸銅 80g/l
添加剤(アトテックジャパン製、カパラシドGL)
1ml/l
〔電解めっき条件〕
電流密度 1A/dm2
時間 30分
温度 室温
【0060】
(12)めっきレジスト3を5%KOHで剥離除去した後、10%硫酸水溶液で表面処理し、さらにそのめっきレジスト3下の無電解めっき膜12を硫酸と過酸化水素の混合液でエッチング処理して溶解除去し、無電解銅めっき膜12と電解銅めっき膜13からなる厚さ18μmの導体回路(バイアホールを含む)5を形成した。さらに、70℃で800g/lのクロム酸に3分間浸漬して、導体回路間(導体回路非形成部分に位置する)の無電解めっき用接着剤層の表面を1μmエッチング処理し、その表面に残存するパラジウム触媒を除去した(図13参照)。
【0061】
(13)導体回路5を形成した基板に、前記(5)と同様の処理を行い、導体回路5の表面に厚さ3μmのCu-Ni-Pの非針状合金からなる被覆層、厚さ5μmのCu-Ni-Pの針状合金からなる粗化層および粗化層表面を被覆する厚さ0.3μmのSn金属被覆層を設けた(図14参照)。
【0062】
(14)前記(6)〜(13)の工程を繰り返すことにより、さらに上層の導体回路を形成した。但し、Sn置換は行わなかった(図15〜20参照)。
【0063】
(15)一方、DMDGに溶解させた60重量%のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬製)のエポキシ基50%をアクリル化した感光性付与のオリゴマー(分子量4000)を46.67g、メチルエチルケトンに溶解させた80重量%のビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェル製、エピコート 1001)15.0g、イミダゾール硬化剤(四国化成製、2E4MZ-CN)1.6g、感光性モノマーである多価アクリルモノマー(日本化薬製、R604)3g、同じく多価アクリルモノマー(共栄社化学製、DPE6A)1.5g、分散系消泡剤(サンノプコ社製、S-65)0.71gを混合し、さらにこの混合物に対して光開始剤としてのべンゾフェノン(関東化学製)を2g、光増感剤としてのミヒラーケトン(関東化学製)を0.2g加えて、粘度を25℃で2.0Pa・sに調整したソルダーレジスト組成物を得た。
なお、粘度測定は、B型粘度計(東京計器、DVL-B型)で60rpmの場合はローターNo.4、6rpmの場合はローターNo.3によった。
【0064】
(16)前記(14)で得られた多層配線基板に、上記ソルダーレジスト組成物を20μmの厚さで塗布した。次いで、70℃で20分間、70℃で30分間の乾燥処理を行った後、円パターンが描画されたフォトマスクフィルムを密着させて載置し、1000mJ/cm2の紫外線で露光し、DMTG現像処理した。そしてさらに、80℃で1時間、100℃で1時間、120℃で1時間、150℃で3時間の条件で加熱処理し、パッド部分が開口した(開口径200μm)ソルダーレジスト層(厚み20μm)14を形成した。
【0065】
(17)次に、ソルダーレジスト層14を形成した基板を、塩化ニッケル30g/l、次亜リン酸ナトリウム10g/l、クエン酸ナトリウム10g/lからなるpH=5の無電解ニッケルめっき液に20分間浸漬して、開口部に厚さ5μmのニッケルめっき層15を形成した。さらに、その基板を、シアン化金カリウム2g/l、塩化アンモニウム75g/l、クエン酸ナトリウム50g/l、次亜リン酸ナトリウム10g/lからなる無電解金めっき液に93℃の条件で23秒間浸漬して、ニッケルめっき層15上に厚さ0.03μmの金めっき層16を形成した。
【0066】
(18)そして、ソルダーレジスト層14の開口部に、はんだペーストを印刷して200℃でリフローすることによりはんだバンプ(はんだ体)17を形成し、はんだバンプ17を有する多層プリント配線板を製造した(図21参照)。
【0067】
(実施例2)
実施例1と同様であるが、実施例1の(5)、(13)においてスズで置換する代わりにチタン、アルミニウム、亜鉛、鉄、インジウム、タリウム、コバルト、ニッケル、鉛、ビスマス、金、銀層を形成した。
【0068】
チタン、アルミニウム、亜鉛、鉄、インジウム、タリウム、ビスマス、金、銀層は、スパッタリングにより形成し、その厚さは0.5μmとした。コバルト、ニッケル、鉛はめっきにて形成し、その厚さを0.5μmとした。
コバルト:塩化コバルト 0.6mol/l
次亜リン酸ナトリウム 0.26mol/l
酒石酸ナトリウム 0.9mol/l
pH 8〜10
温度 90〜100℃
以上水溶液
ニッケル:塩化ニッケル 30g/l
次亜リン酸ナトリウム 10g/l
ヒドロキシ酢酸ナトリウム 50g/l
pH 4〜6
温度 90℃
以上水溶液
鉛 :酸化鉛 3.75g/l
シアン化ナトリウム 26.3g/l
水酸化ナトリウム 105g/l
温度 室温
以上水溶液
【0069】
(比較例1)
実施例の工程(5),(13)の処理において、酸処理を行わなかったこと以外は、実施例と同様にしてはんだバンプを有する多層プリント配線板を製造した。
【0070】
(比較例2)実施例1と同様であるが、実施例1の(5),(13)の処理において、加熱処理を行わなかった。
【0071】
実施例、比較例で製造した多層プリント配線板につき、導体回路の表面部分の断面を光学顕微鏡および走査型電子顕微鏡により観察し、導体回路の溶解に有無について確認した。実施例1、2の多層プリント配線板については、導体回路、Cu-Ni-Pの非針状合金からなる被覆層およびCu-Ni-Pの針状合金からなる粗化層の大きな溶解については殆ど観察されなかった。これに対して、比較例1、2の多層プリント配線板については、一部導体回路の溶解が観察された。
【0072】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、導体回路の局部電池反応による溶解を確実に防止でき、内層導体回路とバイアホールの接続信頼性を向上した接続信頼性に優れる多層プリント配線板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Cu-Ni-P合金の組成を示す三角図である。
【図2】本発明にかかる多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図3】本発明にかかる多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図4】本発明にかかる多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図5】本発明にかかる多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図6】本発明にかかる多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図7】本発明にかかる多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図8】本発明にかかる多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図9】本発明にかかる多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図10】本発明にかかる多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図11】本発明にかかる多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図12】本発明にかかる多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図13】本発明にかかる多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図14】本発明にかかる多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図15】本発明にかかる多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図16】本発明にかかる多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図17】本発明にかかる多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図18】本発明にかかる多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図19】本発明にかかる多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図20】本発明にかかる多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【図21】本発明にかかる多層プリント配線板の各製造工程を示す図である。
【符号の説明】
1 基板
2 層間樹脂絶縁層(無電解めっき用接着剤層)
2a 絶縁剤層(下層の無電解めっき用接着剤層)
2b 接着剤層(上層の無電解めっき用接着剤層)
3 めっきレジスト
4 内層導体回路(内層銅パターン)
5 外層導体回路(外層銅パターン)
6 バイアホール用開口
7 バイアホール
8 銅箔
9 スルーホール
10 樹脂充填剤
11 粗化層
110 被覆層
12 電解めっき膜(無電解銅めっき膜)
13 電解めっき膜(電解銅めっき膜)
14 ソルダーレジスト層
15 ニッケルめっき層
16 金めっき層
17 はんだバンプ(はんだ体)
 
訂正の要旨 訂正の要旨
訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1を、特許請求の範囲の減縮を目的として削除する。
訂正事項b
特許請求の範囲の請求項2の記載、
「【請求項2】基板上に設けられた導体回路の表面に粗化層を形成した後、層間絶縁層を形成し、この層間絶縁層にバイアホールのための開口部を設けて、該層間絶縁層上に導体回路を形成することにより、基板上の導体回路と層間絶縁層上の導体回路とを、前記開口部から露出する粗化層を介して電気的に接続する多層プリント配線板の製造方法において、
前記粗化層は、加熱処理が施されることを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。」
を、特許請求の範囲の減縮を目的として、
「【請求項1】基板上に設けられた導体回路の表面に銅、ニッケルおよびリンの針状合金からなる粗化層を形成した後、層間絶縁層を形成し、この層間絶縁層にバイアホールのための開口部を設けて、酸または酸化剤にて前記層間絶縁層表面を粗化した後、該層間絶縁層上に導体回路を形成することにより、基板上の導体回路と層間絶縁層上の導体回路とを、前記開口部から露出する銅、ニッケルおよびリンの針状合金からなる粗化層を介して電気的に接続する多層プリント配線板の製造方法において、
前記粗化層は、加熱処理が施されることを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。」
に訂正する。
訂正事項c
特許請求の範囲の請求項3を、特許請求の範囲の減縮を目的として削除する。
訂正事項d
特許請求の範囲の請求項1および3の削除に伴って、請求項4の記載、
「【請求項4】前記加熱処理は、100〜150℃で30分〜3時間の処理であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。」
を、明りょうでない記載の釈明を目的として、
「【請求項2】前記加熱処理は、100〜150℃で30分〜3時間の処理であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。」
に訂正する。
訂正事項e
特許請求の範囲の請求項1〜13において、特許請求の範囲の減縮を目的として、請求項1、3を削除したことに伴い、以下項数を繰り上げ、明りょうでない記載の釈明を目的として、「請求項5」を「請求項3」とし、「請求項6」を「請求項4」とし、「請求項7」を「請求項5」とし、し「請求項8」を「請求項6」とし、「請求項9」を「請求項7」とし、「請求項10」を「請求項8」とし、「請求項11」を「請求項9」とし、「請求項12」を「請求項10」とし、「請求項13」を「請求項11」とする。
以下訂正事項f〜nは、明りょうでない記載の釈明を目的として、行われたものである。
訂正事項f
本件明細書の【0009】の、
「すなわち、本発明の要旨構成は、以下のとおりである。
(1)多層プリント配線板を製造するに当たり、基板上に設けられた導体回路の表面に粗化層を形成し、加熱処理を施した後、層間絶縁層を形成することを特徴とする多層プリント配線板の製造方法である。
(2)基板上に設けられた導体回路の表面に粗化層を形成した後、層間絶縁層を形成し、この層間絶縁層にバイアホールのための開口部を設けて、該層間絶縁層上に導体回路を形成することにより、基板上の導体回路と層間絶縁層上の導体回路とを、前記開口部から露出する粗化層を介して電気的に接続する多層プリント配線板の製造方法において、
前記粗化層は、加熱処理が施されることを特徴とする多層プリント配線板の製造方法である。」
を、
「すなわち、本発明の要旨構成は、以下のとおりである。
(1)基板上に設けられた導体回路の表面に粗化層を形成した後、層間絶縁層を形成し、この層間絶縁層にバイアホールのための開口部を設けて、酸または酸化剤にて前記層間絶縁層を粗化した後、該層間絶縁層上に導体回路を形成することにより、基板上の導体回路と層間絶縁層上の導体回路とを、前記開口部から露出する銅、ニッケルおよびリンの針状合金からなる粗化層を介して電気的に接続する多層プリント配線板の製造方法において、
前記粗化層は、加熱処理が施されることを特徴とする多層プリント配線板の製造方法である。」
と訂正する。
訂正事項g
本件明細書【0010】の、
「上記(1)または(2)に記載の製造方法において、基板上に設けられた導体回路の表面には、銅、ニッケルおよびリンの針状合金からなる粗化層を形成することが好ましい。また、前記加熱処理は、100〜150℃で30分〜3時間の処理であることが好ましい。」
を、
「上記(1)に記載の製造方法において、前記加熱処理は、100〜150℃で30分〜3時間の処理であることが好ましい。」
と訂正する。
訂正事項h
本件明細書の【0011】の、
「(3)多層プリント配線板を製造するに当たり、基板上に設けられた導体回路の表面に粗化層を形成した後、該粗化層表面を酸処理し、次いで該粗化層表面にイオン化傾向が銅より大きくかつチタン以下である金属を1種以上含む金属もしくは貴金属からなる金属被覆層を形成し、さらに層間絶縁層を形成することを特徴とする多層プリント配線板の製造方法である。
(4)基板上に設けられた導体回路の表面に粗化層を形成した後、層間絶縁層を形成し、この層間絶縁層にバイアホールのための開口部を設けて、該層間絶縁層上に導体回路を形成することにより、基板上の導体回路と層間絶縁層上の導体回路とを、前記開口部から露出する粗化層を介して電気的に接続する多層プリント配線板の製造方法において、前記粗化層は、その表面を酸処理した後、イオン化傾向が銅より大きくかつチタン以下である金属を1種以上含む金属もしくは貴金属からなる金属被覆層で被覆されることを特徴とする多層プリント配線板の製造方法である。」
を、
「(2)多層プリント配線板を製造するに当たり、基板上に設けられた導体回路の表面に粗化層を形成した後、該粗化層表面を酸処理し、次いで該粗化層表面にイオン化傾向が銅より大きくかつチタン以下である金属を1種以上含む金属もしくは貴金属からなる金属被覆層を形成し、さらに層間絶縁層を形成することを特徴とする多層プリント配線板の製造方法である。
(3)基板上に設けられた導体回路の表面に粗化層を形成した後、層間絶縁層を形成し、この層間絶縁層にバイアホールのための開口部を設けて、該層間絶縁層上に導体回路を形成することにより、基板上の導体回路と層間絶縁層上の導体回路とを、前記開口部から露出する粗化層を介して電気的に接続する多層プリント配線板の製造方法において、前記粗化層は、その表面を酸処理した後、イオン化傾向が銅より大きくかつチタン以下である金属を1種以上含む金属もしくは貴金属からなる金属被覆層で被覆されることを特徴とする多層プリント配線板の製造方法である。」
と訂正する。
訂正事項i
本件明細書の【0012】の、
「上記(3)または(4)に記載の製造方法において、基板上に設けられた導体回路の表面には、銅、ニッケルおよびリンの針状合金からなる粗化層を形成し、酸処理後にスズ膜を形成することが好ましい。また、前記酸処理は、硫酸、硝酸、ホウフッ酸およびカルボン酸のなかから選ばれるいずれか少なくとも1種の水溶液を用いることが好ましい。」
を、
「上記(2)または(3)に記載の製造方法において、基板上に設けられた導体回路の表面には、銅、ニッケルおよびリンの針状合金からなる粗化層を形成し、酸処理後にスズ膜を形成することが好ましい。また、前記酸処理は、硫酸、硝酸、ホウフッ酸およびカルボン酸のなかから選ばれるいずれか少なくとも1種の水溶液を用いることが好ましい。」
と訂正する。
訂正事項j
本件明細書の【0013】の、
「(5)多層プリント配線板を製造するに当たり、基板上に設けられた導体回路の表面に粗化層を形成し、加熱処理を施した後、該粗化層表面を酸処理し、次いで該粗化層表面にイオン化傾向が銅より大きくかつチタン以下である金属を1種以上含む金属もしくは貴金属からなる金属被覆層を形成し、さらに層間絶縁層を形成することを特徴とする多層プリント配線板の製造方法である。
(6)基板上に設けられた導体回路の表面に粗化層を形成した後、層間絶縁層を形成し、この層間絶縁層にバイアホールのための開口部を設けて、該層間絶縁層上に導体回路を形成することにより、基板上の導体回路と層間絶縁層上の導体回路とを、前記開口部から露出する粗化層を介して電気的に接続する多層プリント配線板の製造方法において、前記粗化層は、加熱処理が施されて、その表面を酸処理した後、イオン化傾向が銅より大きくかつチタン以下である金属を1種以上含む金属もしくは貴金属からなる金属被覆層で被覆されることを特徴とする多層プリント配線板の製造方法である。」
を、
「(4)多層プリント配線板を製造するに当たり、基板上に設けられた導体回路の表面に粗化層を形成し、加熱処理を施した後、該粗化層表面を酸処理し、次いで該粗化層表面にイオン化傾向が銅より大きくかつチタン以下である金属を1種以上含む金属もしくは貴金属からなる金属被覆層を形成し、さらに層間絶縁層を形成することを特徴とする多層プリント配線板の製造方法である。
(5)基板上に設けられた導体回路の表面に粗化層を形成した後、層間絶縁層を形成し、この層間絶縁層にバイアホールのための開口部を設けて、該層間絶縁層上に導体回路を形成することにより、基板上の導体回路と層間絶縁層上の導体回路とを、前記開口部から露出する粗化層を介して電気的に接続する多層プリント配線板の製造方法において、前記粗化層は、加熱処理が施されて、その表面を酸処理した後、イオン化傾向が銅より大きくかつチタン以下である金属を1種以上含む金属もしくは貴金属からなる金属被覆層で被覆されることを特徴とする多層プリント配線板の製造方法である。」
と訂正する。
訂正事項k
本件明細書の【0014】の、
「上記(5)または(6)に記載の製造方法において、基板上に設けられた導体回路の表面には、銅、ニッケルおよびリンの針状合金からなる粗化層を形成し、酸処理後にスズ膜を形成することが好ましい。また、前記酸処理は、硫酸、硝酸、ホウフッ酸およびカルボン酸のなかから選ばれるいずれか少なくとも1種の水溶液を用いることが好ましい。さらに、前記加熱処理は、100〜150℃で30分〜3時間の処理であることが好ましい。」
を、
「上記(4)または(5)に記載の製造方法において、基板上に設けられた導体回路の表面には、銅、ニッケルおよびリンの針状合金からなる粗化層を形成し、酸処理後にスズ膜を形成することが好ましい。また、前記酸処理は、硫酸、硝酸、ホウフッ酸およびカルボン酸のなかから選ばれるいずれか少なくとも1種の水溶液を用いることが好ましい。さらに、前記加熱処理は、100〜150℃で30分〜3時間の処理であることが好ましい。」
と訂正する。
訂正事項l
本件明細書の【0015】の、
「【発明の実施の形態】上記(1)および(2)に記載の本発明にかかる製造方法によれば、銅、ニッケルおよびリンからなる針状合金層などの結晶性の粗化層を、加熱処理することによってその結晶性を向上させ、酸、酸化剤、ソフトエッチング液に対する粗化層の耐性を向上させることができる。これにより、粗化層が溶解しにくくなり、局部電池反応を抑制することができる。」
を、
「【発明の実施の形態】上記(1)に記載の本発明にかかる製造方法によれば、銅、ニッケルおよびリンからなる針状合金層などの結晶性の粗化層を、加熱処理することによってその結晶性を向上させ、酸、酸化剤、ソフトエッチング液に対する粗化層の耐性を向上させることができる。これにより、粗化層が溶解しにくくなり、局部電池反応を抑制することができる。」
に訂正する。
訂正事項m
本件明細書の【0016】の、
「上記(3)および(4)に記載の本発明にかかる製造方法によれば、粗化層表面を酸処理した後、スズなどの金属被覆層を形成するので、粗化層表面を完全に被覆でき、局部電池反応の進行を妨害して、粗化層それ自体や導体回路の溶解を抑制することができる。」
を、
「上記(2)および(3)に記載の本発明にかかる製造方法によれば、粗化層表面を酸処理した後、スズなどの金属被覆層を形成するので、粗化層表面を完全に被覆でき、局部電池反応の進行を妨害して、粗化層それ自体や導体回路の溶解を抑制することができる。」
と訂正する。
訂正事項n
本件明細書の【0017】の、
「上記(5)および(6)に記載の本発明にかかる製造方法によれば、粗化層を加熱処理した後に酸処理するので、加熱処理によって粗化層の表面に生じた酸化膜を有利に除去でき、スズなどの金属被覆層が形成しやすくなる。その結果、この方法によれば、粗化層の結晶性向上と粗化層の完全な被覆を共に達成できるので、粗化層や導体回路の局部電池反応による溶解を抑制する点で特に有利である。」
を、
「上記(4)および(5)に記載の本発明にかかる製造方法によれば、粗化層を加熱処理した後に酸処理するので、加熱処理によって粗化層の表面に生じた酸化膜を有利に除去でき、スズなどの金属被覆層が形成しやすくなる。その結果、この方法によれば、粗化層の結晶性向上と粗化層の完全な被覆を共に達成できるので、粗化層や導体回路の局部電池反応による溶解を抑制する点で特に有利である。」
と訂正する。
異議決定日 2001-10-19 
出願番号 特願平9-226405
審決分類 P 1 652・ 121- YA (H05K)
P 1 652・ 537- YA (H05K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 豊島 ひろみ  
特許庁審判長 藤井 俊明
特許庁審判官 藤井 昇
井口 嘉和
登録日 2000-08-11 
登録番号 特許第3098729号(P3098729)
権利者 イビデン株式会社
発明の名称 多層プリント配線板の製造方法  
代理人 中村 盛夫  
代理人 小川 順三  
代理人 小川 順三  
代理人 中村 盛夫  

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