• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B60J
管理番号 1055090
異議申立番号 異議2001-73004  
総通号数 28 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-01-06 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-10-30 
確定日 2002-03-04 
異議申立件数
事件の表示 特許第3167505号「作業車の運転キャビンにおけるフロントガラス開閉構造」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3167505号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 【1】手続の経緯・本件発明
本件特許第3167505号の請求項1及び2に係る発明は、平成5年6月17日の出願に係り、平成13年3月9日に設定登録され、その後石井健治より特許異議の申立てがなされたものであるところ、請求項1及び2に係る各発明は、願書に添付した明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された次のとおりのものと認める。
「 【請求項1】 運転キャビン(4)のフロントガラス(9a)を、前記運転キャビン(4)の天井(4a)に沿う開放姿勢と、前記運転キャビン(9)の前面部の開口部(4b)に対して後方から重なる状態で閉止する閉止姿勢とに案内して姿勢変更する案内機構を設けてある作業車の運転キャビンにおけるフロントガラス開閉構造において、運転キャビン(4)の天井(4a)に、前記開放姿勢にあるフロントガラス(9a)の通過を許すように前後方向が開放された状態で、天井(4a)に沿ったフロントガラス(9a)の左右の両上側の夫々の角部に対して、左右方向及び上下方向で傾斜した傾斜縁を接当させるように構成した左右一対のストッパー(16),(16)を設けてある作業車の運転キャビンにおけるフロントガラス開閉構造。
【請求項2】 左右一対のストッパー(16),(16)のそれぞれを、開放姿勢にあるフロントガラス(9a)の前後方向での移動経路に対して交差する方向で遠近移動させるように、位置調節可能に構成してある請求項1に記載の作業車の運転キャビンにおけるフロントガラス開閉構造。」
【2】特許異議申立ての理由の概要
特許異議申立人は、刊行物「実願昭60-148317号(実開昭62-56682号)のマイクロフィルム」を提出し、本件特許の請求項1及び2に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された刊行物に記載されたものに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとしている。
【3】刊行物に記載された事項
上記刊行物には、以下の技術事項が記載されているものと認める。
イ)「建設機械用キャビンの内壁面に設けた平行な2本のガイドレールに回転可能なガイドローラを嵌合して、摺動開閉可能とした建設機械用キャビンの開閉窓において、」 (明細書本文第1頁第5行〜同第8行)、
ロ)「この考案は建設機械用キャビンの開閉窓の構造に関するものである。」(明細書本文第1頁第17行〜同第18行)
ハ)「第1図において、1はキャビン、2は開閉窓、3は開閉窓2に取付けられたガイドローラ、4は開閉窓2の上部と下部に取付けられた把手、5はキャビン1の左右内壁に固着されたガイドレールである。それで、開閉窓2を開く場合には、運転者が両手で開閉窓2の上下の把手4をつかんで、開閉窓2を持上げるようにして、ガイドローラ3をガイドレール5に沿って転動させながら、第2図の如く、ガイドレール5上部の天井近くに収めてしまう。」(明細書本文第6頁第20行〜同第7頁第9行)
ニ)「該開閉窓の左右下部ガイド口一ラ取付位置内面側にブラケットを設け、該ブラケットにクッション部材を螺合するとともに、キャビン内壁の左右上部天井側ガイドレールの下側の、開閉窓解放時の下部ガイドローラ到達位置付近にテーパ金具を固着させた」(明細書本文第1頁第8行〜同第13行)
ホ)「そして、開閉窓2の内面側で、下部のガイドローラ3の左右取付位置に、がたつき止め具10が左右対称に取付けられてある。12はねじ穴付ブラケットで窓枠6に固着され、該ブラケット12のねじ穴にはボルト付ゴムストッパ13が出入調整可能に螺合されている。ここで、ボルト付ゴムストツパ13のゴムストッパ部の材質はゴムだけに限らず、開閉窓2のがたつきを吸収あるいは阻止できる弾性体の材質である。」(明細書本文第8頁第2行〜同第10行)
ヘ)「一方、第1図の如く、キャビン1内壁左右のガイドレール5の下方にテーパ金物15が固着されている。テーパ金物15の形状は第6図の斜視図に示す如きもので、その固着位置は第2図のように、開閉窓2を上部天井まで開いた時に、下部のガイドローラ3が到達する位置である。」(明細書本文第8頁第15行〜同第20行)
ト)「一方、開かれた開閉窓2の下部ガイドローラ付近は、本考案のがたつき止め具10のゴムストッパ部が、キャビン1内壁に固着されたテーパ金物15に丁度ぴったり接触する。これによって、開閉窓2の下部ガイドローラ3付近も隙間なく固定される。」(明細書本文第10頁第5行〜同第10行)
チ)「該ブラケット12のねじ穴にはボルト付ゴムストッパ13が出入調整可能に螺合されている。」(明細書本文第8頁第5行〜同第7行)
リ)「そして、ボルト付ゴムストッパ13は左右ともボルトねじ部をまわして、ゴムストッパ部が、丁度、キャビン1内壁左右のテーパ金物15のテーパ部に接触するように出入調整を行う。そして、その調整後には、ボルト付ゴムストッパ13のボルトねじ部が緩まないように、ロックナット14でロックする。」(明細書本文第9頁第7行〜同第13行)
ヌ)「本考案では、運転者が開閉窓を開く操作を完了した時点で、開閉窓の下部ガイドローラ嵌合部のがたつき隙間を解消できる効果が大きい。」(明細書本文第11頁第10行〜同第13行)等の記載があり、また、併せて図面を参照すると
ル)開閉窓2の開放操作途中において、下部ガイドローラ3より下方の開閉窓2部分は、キャビン1外方へ突出する構成と認められ(第1図を参照)、
ヲ)テーパ金物15のボルト付ゴムストッパ13との接当部(テーパ部)は、左右方向及び上下方向並びに前後方向に傾斜する傾斜面と認められる(第6,7,8図参照)。
したがって、刊行物には、
“キャビン1の開閉窓2を、前記キャビン1の天井に沿う開放姿勢と、前記キャビン1の前面部の開口部に対して閉止する閉止姿勢とに案内して姿勢変更する案内機構を設けてある作業車のキャビンにおける開閉窓開閉構造において、キャビン1の天井に、天井に沿った開閉窓2の左右の両下側の夫々に設けたストッパ13に対して、左右方向及び上下方向並びに前後方向で傾斜したテーパ部を接当させるように構成した左右一対のテーパ金物15を設け、前記ストッパ13のそれぞれを、開放姿勢にある開閉窓2の前後方向での移動経路に対して交差する方向で遠近移動させるように設けてある作業車のキャビンにおける開閉窓開閉構造.”
が記載されているものと認められる。
【4】対比・判断
1.本件特許の請求項1に係る発明と上記刊行物に記載されたものとを対比すると、後者のキャビン1、開閉窓2が前者の「運転キャビン(4)」、「フロントガラス(9a)」に相当するから 、
両者は、
運転キャビンのフロントガラスを、前記運転キャビンの天井に沿う開放姿勢と、前記運転キャビンの前面部の開口部に対して閉止する閉止姿勢とに案内して姿勢変更する案内機構を設けてある作業車の運転キャビンにおけるフロントガラス開閉構造において、運転キャビンの天井に、天井に沿ったフロントガラスの左右の両側の夫々に対して、傾斜した傾斜縁を接当させるように構成した左右一対のストッパーを設けてある作業車の運転キャビンにおけるフロントガラス開閉構造.
で一致し、
A.前者は、フロントガラスが運転キャビンの前面部の開口部に対して「後方から重なる状態で」閉止するのに対して、後者では、上記「ル)」に摘示の構成から、運転キャビンの前面部の開口部に対して後方から重なる状態で閉止する構成か否か明りょうでない点(以下「相違点A」という。)
B.前者は、左右一対のストッパーが、「開放姿勢にあるフロントガラスの通過を許すように前後方向が開放された状態で」、天井に沿ったフロントガラスの左右の「両上側の夫々の角部に対して、左右方向及び上下方向で傾斜した傾斜縁を接当させるように」構成したのに対して、後者では、上記「ヌ)」、「ヲ)」に摘示の構成から、「開放姿勢にあるフロントガラスの通過を許すように前後方向が開放された状態」のもの、「左右方向及び上下方向で傾斜した傾斜縁」ではなく、また、上記「ヘ)」、「ト)」に摘示の構成から、「両上側の夫々の角部に対して」接当するものではない点(以下「相違点B」という。)
で相違する。
2.先ず、上記相違点Bについて検討する。
本件請求項1に係る発明は、左右一対のストッパーが、「開放姿勢にあるフロントガラスの通過を許すように前後方向が開放された状態で」、天井に沿ったフロントガラスの左右の「両上側の夫々の角部に対して、左右方向及び上下方向で傾斜した傾斜縁を接当させるように」構成したことによって、開放姿勢にあるフロントガラスは、天井面に沿って、左右一対のストッパーの間を通過する過程においても、上下及び左右のがたつきが防止されるものと認められるのに対して、刊行物に記載されたものは、上記「ヌ)」に摘示のとおり、運転者が開閉窓を開く操作を完了した時点で、開閉窓の下部ガイドローラ嵌合部のがたつき隙間を解消できるものであって、構成のみならず作用効果に差異があり、また、本件請求項1に係る発明の上記「左右一対のストッパーが、『開放姿勢にあるフロントガラスの通過を許すように前後方向が開放された状態で』、天井に沿ったフロントガラスの左右の『両上側の夫々の角部に対して、左右方向及び上下方向で傾斜した傾斜縁を接当させるように』構成した」点を、本件特許の出願前周知又は慣用の構成であるとする証拠も提出されていない。
したがって、上記相違点Bにおける本件請求項1に係る発明の構成を当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。
3.特許異議申立人は、本件請求項1に係る発明と刊行物に記載されたものとの構成上の相違点は、前者がストッパを天井側に設けたのに対して、後者がフロントガラス側に設けた点のみに存するとするが、両者の相違点は上記説示のとおりであり、また、上記説示の理由により、本件請求項1に係る発明を上記刊行物に記載されたものに基づいて当業者が容易になし得たものとすることはできない。
請求項1に従属する請求項2に係る発明も、同様の理由により、上記刊行物に記載されたものに基づいて当業者が容易になし得たものとすることはできない。
【5】むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1及び2に係る特許は、特許異議申立人が主張する理由及び提出した証拠によっては取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2002-02-14 
出願番号 特願平5-145834
審決分類 P 1 651・ 121- Y (B60J)
最終処分 維持  
特許庁審判長 蓑輪 安夫
特許庁審判官 ぬで島 慎二
溝渕 良一
登録日 2001-03-09 
登録番号 特許第3167505号(P3167505)
権利者 株式会社クボタ
発明の名称 作業車の運転キャビンにおけるフロントガラス開閉構造  
代理人 北村 修一郎  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ