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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効とする(申立て全部成立) H04M
審判 一部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備 訂正を認める。無効とする(申立て全部成立) H04M
管理番号 1055719
審判番号 無効2000-35145  
総通号数 29 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-12-02 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-03-21 
確定日 2002-01-07 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第2838071号発明「無線通信用の発信アダプター」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第2838071号の請求項1、3ないし4に記載された発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1.手続の経緯
1. 本件特許2838071号は、平成8年5月23日に出願された特願平8-153401号の特許出願について、平成10年10月9日に特許権の設定登録がなされたものである。
2.これに対して、平成12年3月21日に株式会社ナカヨ通信機(以下、「請求人」という。)は、
(1)本件特許の請求項1及びこれを引用する請求項3、4に係る発明に関して、本件特許明細書には記載不備が存在し、本件特許明細書は特許法第36条第4項並びに第6項第1号及び第2号の要件を満たしていないと主張し、また、
(2)本件特許の請求項1項,3項,4項に係る発明は、甲第1号証ないし甲第3号証記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第1項第3号または第2項の規定に違反してなされたと主張し、証拠方法として甲第1号証ないし甲第3号証を提出している。
3.テレセン株式会社(以下、「被請求人」という。)は、平成12年8月28日に訂正請求書を提出して訂正を求め、これに対して、平成13年5月28日付けで訂正拒絶理由を通知したところ、被請求人は、平成13年8月1日付けの手続補正書を提出して訂正請求の補正を行った。

第2.訂正・補正の適否についての判断
1.訂正請求の内容
平成12年8月28日付け訂正請求は、訂正の理由として、ア)特許請求の範囲の減縮を目的、及びイ)明りょうでない記載の釈明を目的とするものであって、下記訂正事項aないし訂正事項cについて、訂正請求するものである。
(1)訂正事項aについて
特許請求の範囲の請求項1の記載について、「一般電話機と無線電話機とを接続して、一般電話機からの無線発信を可能にした発信アダプターであって、」とあるのを「一般電話機と無線電話機とをボタン電話主装置やPBXを介して接続して、有線通信を実現する一般電話機からの無線発信を可能にした発信アダプター」と訂正する。
(2)訂正事項bについて
発明の詳細な説明の課題を解決する手段の欄の記載について、「上記の目的を達成するため、請求項1の発明は、一般電話機と無線電話機とを接続して、一般電話機からの無線発信を可能にした発信アダプターであって、」とあるのを「上記の目的を達成するため、請求項1の発明は、一般電話機と無線電話機とをボタン電話主装置やPBXを介して接続して、有線通信を実現する一般電話機からの無線発信を可能にした発信アダプターであって、」と訂正する。
(3)訂正事項cについて
発明の詳細な説明の課題を解決する手段の欄の記載について、「この発明において、一般電話機とは、有線通信を実現する電話機であり、典型的には、会社や官庁の各デスクに備えられているボタン電話機である。」とあるのを「この発明において、一般電話機とは、有線通信を実現する電話機であり、典型的には、会社や官庁の各デスクに備えられているボタン電話機であるから、通常のボタンを押せば、有線通信回線との接続が実現される。一方、特定のボタンを押すことによって、ボタン電話機と無線電話機とを接続することができるので、無線電話機を中継器として相手方電話機との間で無線通信を実現することができる。」と訂正する。

2.訂正請求の補正の内容
平成13年8月1日付け手続補正は、補正により訂正請求書の訂正の理由を、明りょうでない記載の釈明を目的とする補正事項のみとし、下記訂正事項a’,b’とするものである
(1)訂正事項a’について
特許請求の範囲の請求項1の記載について、「一般電話機と無線電話機とを接続して、一般電話機からの無線発信を可能にした発信アダプターであって、」とあるのを「一般電話機と無線電話機とを接続して、有線通信を実現する一般電話機からの無線発信を可能にした発信アダプターであって、」と訂正する。
(2)訂正事項b’について
発明の詳細な説明の課題を解決する手段の記載について、「上記の目的を達成するため、請求項1の発明は、一般電話機と無線電話機とを接続して、一般電話機からの無線発信を可能にした発信アダプターであって、」とあるのを「上記の目的を達成するため、請求項1の発明は、一般電話機と無線電話機とを接続して、有線通信を実現する一般電話機からの無線発信を可能にした発信アダプターであって、」と訂正する。

3.訂正請求書の補正の適否について
上記手続補正は、訂正請求における訂正の理由のうち、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正事項を削除し、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正事項のみとしていることから、訂正請求書の補正は、実質的に訂正事項の削除するものと認められ、特許法第131条第2項の請求書の要旨を変更するものにあたらない。

4.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
(1)訂正事項a’について
訂正事項a’は、本件特許明細書又は図面に記載した事項の範囲内において、本件特許発明の一般電話機が有線通信を実現するものであることを明確化するものであるから、その訂正は明りょうでない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。
(2)訂正事項b’について
訂正事項b’は、本件特許明細書又は図面に記載した事項の範囲内において、特許請求の範囲と発明の詳細な説明が整合するように、発明の詳細な説明の記載を、特許請求の範囲の記載に合わせたに過ぎないものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。

5.むすび
したがって、平成13年8月1日付け手続補正書により補正された平成12年8月28日付けの訂正は、特許法第134条第5項の規定によって準用する特許法第126第2項、3項の規定に適合するので、訂正事項a’,b’の訂正を認める。

第3.本件特許発明
本件特許2838071号に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)は、訂正された本件特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された事項により特定されるものである。
【請求項1】 一般電話機と無線電話機とを接続して、有線通信を実現する一般電話機からの無線発信を可能にした発信アダプターであって、一般電話機に向けて直流電圧を供給すると共に、一般電話機からのダイヤル信号や音声信号、及び、無線電話機からの音声信号を伝送する信号伝送路と、一般電話機からの音声信号を前記信号伝送路から受けて、これを無線電話機に伝える一方、無線電話機からの音声信号を受けて、これを前記信号伝送路に伝える音声信号部と、一般電話機がOFFフック状態に変化して前記信号伝送路に通話電流が流れたことを検知する回線監視部と、一般電話機から前記信号伝送路に送出されたダイヤル信号を認識するダイヤル認識部と、上記した装置各部の動作を制御する制御部とからなり、前記制御部は、前記回線監視部からの情報に基づいて、無線電話機に通話準備動作を開始させる第1手段と、その後、前記ダイヤル認識部からの情報に基づいて、無線電話機にダイヤル発信させる第2手段と、無線電話機が相手方電話機とつながった後、前記音声信号部を制御して一般電話機と相手方電話機との間の音声信号を送受させる第3手段とを備えていることを特徴とする通信無線用の発信アダプター。
【請求項2】 省略
【請求項3】 前記無線電話機は、汎用型の携帯電話機であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の発信アダプター。
【請求項4】 前記音声信号部と前記信号伝送路とは、電磁的に結合されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の発信アダプター。

第4.当事者の主張
1.請求人の主張
請求人は、本件請求項1,3,4に係る発明の特許を無効とする、との審決を求め、その理由として下記1、2を挙げている。
(1)特許法第36条違反について
本件特許の請求項1及びこれを引用する請求項3、4に係る発明に関して、明細書には記載不備が存在し、本件特許明細書は特許法第36条第4項並びに第6項第1号及び第2号の要件を満たしていないので、本件特許は、特許法第123条第1項4号に該当し、無効とすべきである。
すなわち、本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1では「無線電話機が相手方電話機とつながった後、前記音声信号部を制御して一般電話機と相手方電話機との間の音声信号を送受させる第3手段」という記載があるが、この記載からは制御の内容が明確でない上、発明の詳細な説明中どの部分に対応するのか不明である。
したがって、請求項1に係る発明は明確でなく、発明の詳細な説明に記載されたものということができず、また発明の詳細な説明において当業者が容易に実施することができる程度に明確かつ充分に記載されているということができない。

(2)特許法第29条第1項、第2項違反について
(ア)請求項1の特許発明
本件請求項1に係る発明は、本件特許出願前に頒布された刊行物である、特開昭63-278427号公報(甲第1号証)に記載された発明と同一又はこれに基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、特開平8-116565号公報(甲第2号証)及び甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号又は第2項によって特許を受けることができないものである。
したがって、本件請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第1項第3号又は第2項に違反してなされたものであり、特許法第123条第1項2号に該当し、無効とすべきである。
(イ)請求項3の特許発明
本件請求項3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、甲第2号証及び甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項3に係る発明は、特許法第29条第2項によって特許を受けることができないものである。
したがって、本件請求項3に係る発明の特許は、特許法第29条第2項に違反してなされたものであり、特許法第123条第1項2号に該当し、無効とすべきである。
(ウ)請求項4の特許発明
本件請求項4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一又はこれに基いて当業者が容易に発明することができたものであり、また、甲第2号証及び甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号又は第2項によって特許を受けることができないものである。
したがって、本件請求項4に係る発明の特許は、特許法第29条第1項第3号又は第2項に違反してなされたものであり、特許法第123条第1項2号に該当し、無効とすべきである。

2.被請求人の主張
(1)特許法第36条違反について
請求人は、請求項1における「無線電話機が相手方電話機とつながった後、前記音声信号部を制御して一般電話機と相手方電話機との間の音声信号を送受させる第3手段」との表現を問題にしている。
しかしながら、本件特許明細書第7欄第20行〜35行の記載から明らかなように、第1実施例では、既に発信準備状態において音声信号部5が制御部6によって制御されているのであるから、上記の要件は「つながった後に初めて、・・・制御する」ことを意味するのではなく、「つながった後に、・・・音声信号を送受させる」ことを意味することは明らかである。換言すると、「つながった後」は、「制御して」を修飾するのではなく、「送受させる」を修飾していることは実施例の記載から明らかである。
そして、第3手段の制御対象である音声信号部5については、本件特許明細書第7欄第25行〜35行及び図1に、動作及びその構成が記載され、当業者が実施できるようになっているのであるから、記載不備に関する請求人の主張には何の理由もない。
(2)特許法第29条第1項、第2項違反について
本件発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明とは全く趣旨の異なる発明であり、有線通信が可能な環境下において、更に、無線通信も可能にした発明であって、オフィスなどの一般電話機から無線発信を実現して災害時の通信路を確保すると共に、定常的には通信費用の大幅削減を実現できるようにした発明である。
したがって、各号証の記載内容に基づいて発明できないのは勿論、他の公知文献と組み合わせても本件発明を想到することはできない。なお、請求項3及び請求項4に係る発明は、請求項1の発明を限定したものであり、その特許性は明らかである。

第5.無効理由についての当審の判断
1.特許法第36条違反について
無線電話機が相手方電話機とつながった後の制御について、本件特許明細書には「(4)通話動作 その後、通話すべき相手方が電話機をとると、携帯電話機2と音声信号部5と信号伝送路7とを介して、相手方電話機とボタン電話機3とが接続されることになる。明らかなように、ボタン電話機3からの送話は、トランスT1 を介して、信号伝送路7から音声信号部5へと伝えられ、第2アンプ13で増幅されて携帯電話機2に伝えられる。そして、携帯電話機2は、無線通信回線によって送話信号を相手方の電話機に伝える。なお、通話動作中、電波状態の不良などによって相手方電話機と携帯電話機2の通話が切れた場合には、携帯電話機2は、制御信号線CTRを介して、その旨を伝えてくるので、制御部6は、リレーコイル8aを動作させて信号伝送路7を強制的に遮断する。信号伝送路7が遮断されると、ボタン電話機3は、無音状態になるので、送受話器を戻せばフックスイッチHSが初期状態に復帰する。」(8欄14行ないし29行)の記載が認められ、この記載によると、無線電話機が相手方電話機とつながった後に、ボタン電話機3からの送話は、トランスT1 を介して、信号伝送路7から音声信号部5へと伝えられ、第2アンプ13で増幅されて携帯電話機2に伝えられる、ことは理解できるものの、音声信号部を制御することの直接的な記載も示唆もなく、他の記載をみても、無線電話機が相手方電話機とつながった後に、第3の手段がどのように音声信号部を制御して一般電話機と相手方電話機との間の音声信号を送受させるのか明りょうでないことから、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、第3の手段について、当業者が本件の請求項1に係る発明を容易に実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。
これに関して被請求人は、第3手段の音声信号部5については、本件特許明細書第7欄第20行〜35行及び図1に、動作及びその構成が記載され、当業者が実施できるようになっているのであるから、記載不備はないと主張する。
しかしながら、本件特許明細書第7欄第20行〜35行の記載内容は、7欄の11行に「(2)発信準備状態」とタイトルが付されているように、無線電話機が相手方電話機とつながる前の動作を説明したものであって、無線電話機が相手方電話機とつながった後の制御について説明したものではないから、被請求人の主張は失当であって採用できるものではない。
したがって、本件特許の請求項1及びこれを引用する請求項3、4に係る発明に関して、本件特許明細書は特許法第36条第4項の要件を満たしていなものであって、本件特許は特許法第123条第1項4号に該当する。

2.特許法第29条第1項、第2項違反について
2-1 甲第1号証ないし甲第3号証記載の発明
(1)甲第1号証(特開昭63-278427号公報)には、第1、2図の記載と共に、「本発明は、自動車電話用の無線装置に対して、一般公衆電話回線用端末装置である2線式端末装置の接続を可能にした自動車電話用網制御装置に関するものである。」(1頁右下欄3ないし6行)、「本発明の自動車電話用網制御装置は、・・・2線式通話信号と4線式通話信号との相互変換を行う通話回路と、無線装置の通話路端子を前記通話回路の4線式通話路端子または自動車電話機の通話路端子の何れか一方に選択的に接続する切り替え手段と、無線装置の制御信号端子からの自動車電話用制御信号を一般公衆電話回線用制御信号に変換して前記通話回路の2線式通話路側に接続される端末装置の通話路端子に与え前記端末装置の通話路端子から得られる一般公衆電話回線用制御信号を自動車電話用制御信号に変換して前記無線装置用制御信号端子に与える信号変換手段と、前記無線装置の制御信号端子または前記自動車電話機の制御信号端子からの制御信号あるいは前記端末装置の通話路端子からの制御信号に基づいて前記切り替え手段を駆動制御する制御手段とを備えたものである。」(2頁左上欄下から4行ないし右上欄13行)、「端子群10は第2図に示した無線装置1と接続する端子の集合であり、端子群11は第2図に示した自動車電話機2と接続する端子の集合である。両端子群10、11には送信用通話路Tx及び受信用通話路Rx、信号線(バス)13並びに電源線14がそれぞれ接続されている。
端子群10に接続する送信用通話路Txおよび受信用通話路Rxの他端はリレーrylの可動接点に接続されており、端子群11に接続する送信用通話路Txおよび受信用通話路Rxの他端はリレーrylの一方の固定接点に接続されている。リレーrylの他方の固定接点には、通話回路15に接続する送信用通話路Txおよび受信用通話路Rxが接続されている。
端子群10、11を接続する自動車電話用信号線13はCPU22にも接続されている。ただし、バス13の中のフック信号および選択信号に関する信号線に関しては、リレーry3が介在しており、リレーry3が「オフ」のときには端子群10(無線装置1側)と端子群11(自動車電話機2側)が接続されており、リレーry3の「オン」動作により端子群10(無線装置1側)が端子群11(自動車電話機2側)から切り離されてCPU22と接続するようになっている。」(2頁左下欄9行ないし右下欄12行)、「通話回路15は、送信用通話路Txおよび受信用通話路Rxで構成される4線式通話路と2線式通話路16とを接続する回路であり、2線式通話路16はリレーry2の接点を介して端末装置用の端子17に接続される。端子17には、一般公衆電話回線用の端末装置(図示省略)が接続される。また、通話回路15は2線-4線の変換を行う基本機能の他に、端末装置からのフック信号を検出し、これを論理信号に変換してCPU22に与える機能を有している。」(2頁右下欄13行ないし3頁左上欄2行)、「通話回路15に接続する送信用通話路TxにはPB信号受信部23が接続されている。PB信号受信部23は、端末装置から通話回路15を介して送信用通話路Txに出力される選択信号すなわちPB(プッシュボタン)信号を受信し、これを論理信号に変換してCPU22に与える。」(3頁左上欄3行ないし8行)、「電源回路25は通話回路15を駆動するための電源回路であり-24Vの電圧を作り出している。」(3頁右上欄4行ないし6行)、「つぎに、端末装置からの発信処理動作を説明する。CPU22は、
1)端末装置のオフフック信号があること
2)無線装置からの着信信号がないこと
3)自動車電話機2がオンフックであること
4)圏外表示信号かないこと
の4つ条件が満足されると、リレーrylおよびリレーry3を「オン」にして無線装置1に対して発信要求を行う。端末装置のオフフック信号は着信動作において説明したように、通話回路15からCPU22に取り込まれる。
オフフック後の端末装置からの選択信号としてのPB信号は、PB信号受信部23により論理信号に変換されてCPU22に入力される。このとき、最初の選択信号がCPU22に入力された時点でリレーrylを一旦「オフ」にして発信音を切る。この状態でPB信号受信部23を介してCPU22に随時入力される選択信号は、CPU22内のメモリに蓄積され、最大6秒間新しい選択信号が入力されないときに選択信号の終了と判定する。
その後、蓄積された選択信号を自動車電話機用選択信号の形に変換し、周期クロックに合わせてリレーry3を介して無線装置1に送出する。選択信号送出後、一旦「オフ」にしていたりレーrylを再び「オン」にして通話路を接続することにより、相手の応答により通話が可能となる。
発信時の通話終了処理は、端末装置のフック状態を常時監視し、オンフックを検出したときに通話終了して、リレーrylおよびry4をそれぞれ「オフ」して接続解除を行う。また、同時に圏外表示信号も監視しており、圏外表示信号を入力した場合もリレーrylおよびry4をそれぞれ「オフ」して接続解除を行う。
なお、本実施例ではPB信号受信部23を設けることにより、PB式端末装置の接続を可能としているが、これに代えて、あるいは、付加的にDP(ダイヤルパルス)信号受信部を設ければ、DP式端末装置の接続も可能となる。
また、本実施例では、発呼時において、端末装置からの一連の選択信号を全てメモリに一旦蓄積した後に、自動車電話機用選択信号に変換して無線装置1に送出しているが、これに代えて、端末装置から一つ一つの選択信号を入力する毎に、順次自動車電話機用 選択信号に変換して無線装置1に送出してもよい。」(4頁左上欄2行ないし左下欄7行)の記載がある。これらの記載によれば、甲第1号証には、
「一般公衆電話回路用の端末装置と自動車用の無線装置とを接続して、一般公衆電話回路用の端末装置からの無線発信を可能にした自動車電話用網制御装置であって、
一般公衆電話回路用の端末装置に向けて直流電圧を供給すると共に、一般公衆電話回路用の端末装置からのダイヤル信号や音声信号、及び、自動車用の無線装置からの音声信号を伝送する信号伝送路(2線式通話路16及び通話回路15)と、
一般公衆電話回路用の端末装置からの音声信号を前記信号伝送路から受けて、これを自動車用の無線装置に伝える一方、自動車用の無線装置からの音声信号を受けて、これを前記信号伝送路に伝える音声信号部(通話回路15、送信用通話路TX及び受信用通話路RX、端子群10)と、
一般公衆電話回路用の端末装置がOFFフック状態に変化して前記信号伝送路に通話電流が流れたことを検知する回線監視部(通話回路15)と、
一般公衆電話回路用の端末装置から前記信号伝送路に送出されたダイヤル信号を認識するダイヤル認識部(PB信号受信部23)と、
前記した装置各部の動作を制御する制御部(CPU22)とからなり、
前記制御部は、前記回線監視部からの情報に基づいて、自動車用の無線装置に通話準備動作を開始させる第1手段(CPU22)と、その後、
前記ダイヤル認識部からの情報に基づいて、自動車用の無線装置にダイヤル発信させる第2手段(CPU22)
とを備えている自動車電話用網制御装置。」の発明(以下、「甲第1号証記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。

(2)甲第2号証(特開平8-116565号公報)には、図6、図7、図8、図9の記載とともに、
「【0010】 また、20は本発明により設けるものであり、PBX10と携帯電話機30を接続する携帯電話機接続装置で、PBX10の局線トランク14との通信制御を行うアナログ回線制御部21、携帯電話機30との通信制御を行う携帯電話機制御部22、アナログ回線制御部21および携帯電話機制御部22の制御を行う制御部23、携帯電話機30からの出力をアンテナに結合するアンテナ結合器24、各部に電源を供給する電源部25から構成したものである。
【0011】 かかる手段を設け、携帯電話機接続装置20は携帯電話機30の回線制御機能を使用して、PBX10に収容される電話機T1を携帯電話機接続装置20を介して公衆網100に接続する。」(3頁右欄19行ないし31行)、
「【0012】【作用】・図2は本発明の作用を説明するシーケンス図(1)である。請求項1では、PBX10に収容される電話機から公衆網100に発信するとき、局線特番をダイヤルすることにより、局線トランク14を捕捉し、局線トランク14に接続された携帯電話機接続装置20が携帯電話機30を起動して、携帯電話機30が無線リンクを確立する。そして、電話機T1から移動通信網200あるいは公衆網100に収容される相手電話機の電話番号をダイヤルし、相手端末の応答後、接続し移動通信網200を介して公衆網100との通話を行う。」(3頁右欄33行ないし42行)、
「図6は本発明の実施例(1)を説明するブロック図である。図は請求項1に対応する実施例であり、図中の10は原理図で説明したPBXと同一物である。
【0020】 また、20は携帯電話機接続装置であり、携帯電話機ホルダ部(図中ホルダ部と示す)20Aを設け、携帯電話機30と携帯電話機接続装置20を機械的に保持して設置できる構造としている。
【0021】 本発明においては、無線リンクの確立等の無線回線の制御は携帯電話機30の図示省略の制御部32が実行する。この携帯電話機30からの無線出力信号をアンテナに結合するための結合器24Bと、その出力をパワーアップするためのブースタ24Aとを設けている。
【0022】 図7は本発明の実施例の発信処理フローチャートを示す。以下、フローチャートのSTEP(以下Sと示す)にしたがって実施例の動作を説明する。
S1;PBX10に収容される電話機T11(電話番号を111とする)がオフフックすることより、PBX10は発呼を検出する。
【0023】S2;電話機T11は携帯電話機30が接続された局線トランク14への発信特番、例えば「8」をダイヤルし、PBX10はこのダイヤル「8」を受信し、局線トランク14を起動する。
【0024】S3;携帯電話機接続装置20の制御部23がアナログ回線制御部21を介して発呼を検出したとき、携帯電話機制御部22を起動し、携帯電話機30を発呼状態とし無線リンクを確立する。
【0025】S4;起動完了を局線トランク14に通知する。
S5;PBX10は携帯電話機30の起動を検出する。
S6;電話機T11からのダイヤル「4441111」(DP/PB何れでも良い)を送出すると、PBX10は、このダイヤル「4441111」をPB信号に変換して送出する。
【0026】S7;携帯電話機30を介して、携帯電話機接続装置20はダイヤル「4441111」を送出する。
S8;移動通信網200は公衆網100に収容される電話番号「4441111」の電話機T21の呼び出しを行う。
【0027】S9;相手の電話機T21の応答により通話状態となる。
S10;通話終了は、PBX10側の電話機T11からの切断を検出し、携帯電話機接続装置20に切断通知を行う。
【0028】S11;携帯電話機接続装置20は局線トランク14からの切断通知を検出し、携帯電話機30を切断し、無線リンクを解放する。」(公報4頁左欄38行ないし右欄35行)、「【0033】 図9は本発明の実施例(2)を説明するブロック図である。図は請求項1の構成を利用した実施例である。
図のPBX10の主記憶装置12内には、局線トランク14、14Aの状態を管理するためのエリアを設け、その中にトランク制御データD1と迂回先を指定する迂回制御データD2を書き込んでおく。ここで、PBX10に収容された電話機T1が局線トランク14Aから公衆網100に発信するとき、局線トランク14Aが全障害、全使用中等の理由により使用できない場合は、自動的に局線トランク14側を経由して発信し、移動通信網200を介して、公衆網100に接続する。
【0034】また、図9はPBX10に収容される電話機T11から発信する場合の迂回処理であり、これとは逆に、移動通信網200から着信してくるときは、PBX10の携帯電話機30に接続される局線トランク14に接続される電話機T11に対応する音声案内データを設けておき、公衆網の電話機T21から携帯電話機30の電話番号「0302221111」がダイヤルされたとき、携帯電話機30を携帯電話機ホルダ20Aから取り外している場合は、携帯電話機30に着信させ、携帯電話機30が携帯電話機ホルダ20Aに装着されている場合は、局線トランク14を介して、図示省略のアナウンスマシンに着信させ、携帯電話機30の使用者対応の電話番号を通知し、再発信するようにガイダンスを行うことにより、料金の安い有線回線を使用して、通話を行うようにすることができる」(5頁左欄16行ないし41行)の記載がある。
これらの記載によれば、甲第2号証には、携帯電話機接続装置等に、一般電話機と無線電話機(携帯電話機)とを接続して、有線通信を実現する一般電話機からの無線発信を可能とする発明が開示されているものと認められる。

(3)甲第3号証(尾崎猛著、「通信用変圧器」、株式会社 修教社、(昭和14-5-9),p.185〜188)には、4線式回路と2線式回路とをハイブリッドコイルを用いて結合する技術、が開示されているものと認められる。

2-2 本件請求項1に係る発明と甲第1号証記載の発明との対比・判断
(1)対比
本件請求項1に係る発明と甲第1号証記載の発明とを対比すると、甲第1号証記載の発明の「一般公衆電話回路用の端末装置」と「自動車用の無線装置」は、それぞれ、本件請求項1に係る発明の「一般電話機」と「無線電話機」に相当し、甲第1号証記載の発明の「自動車電話用網制御装置」は、本件請求項1に係る発明の「無線発信を可能にした発信アダプター」に相当する。
そうすると、両者は、
「一般電話機と無線電話機とを接続して、一般電話機からの無線発信を可能にした発信アダプターであって、一般電話機に向けて直流電圧を供給すると共に、一般電話機からのダイヤル信号や音声信号、及び、無線電話機からの音声信号を伝送する信号伝送路と、一般電話機からの音声信号を前記信号伝送路から受けて、これを無線電話機に伝える一方、無線電話機からの音声信号を受けて、これを前記信号伝送路に伝える音声信号部と、一般電話機がOFFフック状態に変化して前記信号伝送路に通話電流が流れたことを検知する回線監視部と、一般電話機から前記信号伝送路に送出されたダイヤル信号を認識するダイヤル認識部と、上記した装置各部の動作を制御する制御部とからなり、前記制御部は、前記回線監視部からの情報に基づいて、無線電話機に通話準備動作を開始させる第1手段と、その後、前記ダイヤル認識部からの情報に基づいて、無線電話機にダイヤル発信させる第2手段とを備えた無線通信用の発信アダプター。」で一致し、下記の点で相違する。

(2)相違点
ア)相違点a
本件請求項1に係る発明は、一般電話機と無線電話機とを接続して、有線通信を実現する一般電話機からの無線発信を可能にした発信アダプターであるのに対して、甲第1号証記載の発明は、一般電話機と無線電話機とを接続して、一般電話機からの無線発信を可能にした発信アダプターである点。
イ)相違点b
本件請求項1に係る発明は、無線電話機が相手方電話機とつながった後、音声信号部を制御して一般電話機と相手方電話機との間の音声信号を送受させる第3手段を有するのに対して、甲第1号証記載の発明には第3の手段を有していない点。

(3)相違点についての判断
ア)相違点aについて
携帯電話機接続装置等(本件請求項1に係る発明の「無線発信を可能にした発信アダプター」に対応する。)に、一般電話機と無線電話機(携帯電話機)とを接続して、有線通信を実現する一般電話機からの無線発信を可能とするという技術思想は甲第2号証に示されるように公知であることから、甲第1号証記載の自動車電話用網制御装置に、甲第2号証に開示された技術思想を適用し、一般電話機と無線電話機とを接続して、有線通信を実現する一般電話機からの無線発信を可能にした発信アダプターとすることに格別の困難性はないものであって、当業者であれば容易に想到し得ることである。
イ)相違点bについて
特許請求の範囲の請求項1には、無線電話機が相手方電話機とつながった後の音声信号部の制御について、具体的な特定がなされてなく、また、発明の詳細な説明を参酌しても制御の内容が明りょうでないことから、甲第1号証記載の発明において、無線電話機が相手方電話機とつながった後、前記音声信号部を制御して一般電話機と相手方電話機との間の音声信号を送受させるようにすることは、必要に応じて適宜実施得る設計事項にすぎないものと考えられ、当業者であれば容易に想到し得ることである。
したがって、 本件請求項1に係る発明は、甲第1号証、甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項2号に該当し、無効とすべきものである。

2-3 本件請求項3に係る発明と甲第1号証記載の発明との対比・判断
(1)対比
本件請求項3に係る発明と甲第1号証記載の発明との対比すると、上記相違点a、b及び以下の相違点cで相違し、その余の点では一致するものと認められる。
ウ)相違点c
本件請求項3に係る発明では、無線電話機は汎用型の携帯電話機であるのに対して、甲第1号証記載の発明では自動車用の無線装置である点、

(2)相違点についての判断
そこで相違点cについて検討すると、甲第2号証には、電話機(T11)と携帯電話機(30)とをPBX(10)を介して接続して、有線通信を実現する電話機(T11)からの無線発信を可能にした携帯電話接続装置(20)の発明が開示され、無線電話機として携帯電話機を使用した実施例が示されているから、無線電話機として汎用型の携帯電話機を使用することに格別の困難性はないものである。
したがって、 本件請求項3に係る発明は、甲第1号証、甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項3に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項2号に該当し、無効とすべきものである。

2-4 本件請求項4に係る発明と甲第1号証記載の発明との対比・判断
(1)対比
本件請求項4に係る発明と甲第1号証記載の発明との対比すると、上記相違点a、b及び以下の相違点dで相違し、その余の点では一致するものと認められる。
エ)相違点d
本件請求項4に係る発明では、音声信号部と信号伝送路とが電磁的に結合されているのに対して、甲第1号証記載の発明では音声信号部(通話回路15、送信用通話路TX及び受信用通話路RX、端子群10)と信号伝送路(2線式通話路16及び通話回路15)とがどのように結合されるか不明な点、
(2)相違点についての検討
そこで相違点dについて検討すると、甲第1号証記載の発明の通話回路15は「2線式通話信号と4線式通話信号との相互変換を行う通話回路」(2頁左上欄下から3行ないし2行)であると認められるところ、甲第3号証に4線式回路と2線式回路とをハイブリッドコイルを用いて結合する技術が開示され、この甲第3号証に開示されたものも通信用の技術であることから、甲第1号証記載の発明に甲第3号証の技術を適用して本件請求項4に係る発明の構成とすることは当業者であれば容易に想到し得るものである。
したがって、 本件請求項4に係る発明は、甲第1号証、甲第3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項4に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項2号に該当し、無効とすべきものである。
2-5 まとめ
以上のとおりであるから、本件請求項1,3,4に係る発明は、甲第1号証ないし甲第3号証記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1,3,4に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

第6.むすび
以上のとおりであるから、本件特許の請求項1及びこれを引用する請求項3、4に係る発明に関して、本件特許明細書は特許法第36条第4項の要件を満たしていなものであって、本件請求項1及びこれを引用する請求項3、4に係る発明に関して、本件特許明細書は特許法第123条第1項4号に該当し、また、本件請求項1,3,4に係る発明は、甲第1号証ないし甲第3号証記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1,3,4に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用は、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
無線通信用の発信アダプター
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 一般電話機と無線電話機とを接続して、有線通信を実現する一般電話機からの無線発信を可能にした発信アダプターであって、一般電話機に向けて直流電圧を供給すると共に、一般電話機からのダイヤル信号や音声信号、及び、無線電話機からの音声信号を伝送する信号伝送路と、一般電話機からの音声信号を前記信号伝送路から受けて、これを無線電話機に伝える一方、無線電話機からの音声信号を受けて、これを前記信号伝送路に伝える音声信号部と、一般電話機がOFFフック状態に変化して前記信号伝送路に通話電流が流れたことを検知する回線監視部と、一般電話機から前記信号伝送路に送出されたダイヤル信号を認識するダイヤル認識部と、上記した装置各部の動作を制御する制御部とからなり、前記制御部は、前記回線監視部からの情報に基づいて、無線電話機に通話準備動作を開始させる第1手段と、その後、前記ダイヤル認識部からの情報に基づいて、無線電話機にダイヤル発信させる第2手段と、無線電話機が相手方電話機とつながった後、前記音声信号部を制御して一般電話機と相手方電話機との間の音声信号を送受させる第3手段とを備えていることを特徴とする無線通信用の発信アダプター。
【請求項2】 一般電話機を有線通信回線に接続していると共に、前記一般電話機と無線電話機とを接続して、前記一般電話機からの無線発信をも可能にした発信アダプターであって、2つの開閉回路が第1状態にあるときには、一般電話機に向けて直流電圧を供給すると共に、一般電話機からのダイヤル信号や音声信号、及び、無線電話機からの音声信号を伝送し、一方、前記2つの開閉回路が第1状態から第2状態に遷移すると、それまで供給していた直流電圧を遮断すると共に、前記有線通信回線からの直流電圧を受けて一般電話機に供給する信号伝送路と、一般電話機からの音声信号を前記信号伝送路から受けて、これを無線電話機に伝える一方、無線電話機からの音声信号を受けて、これを前記信号伝送路に伝える音声信号部と、一般電話機がOFFフック状態に変化して前記信号伝送路に通話電流が流れたことを検知する回線監視部と、一般電話機から前記信号伝送路に送出されたダイヤル信号を認識するダイヤル認識部と、上記した装置各部の動作を制御する制御部とからなり、前記制御部は、初期状態において、前記2つの開閉回路を第1状態に設定する初期手段と、前記回線監視部からの情報に基づいて動作して、前記信号伝送路にトーン信号を送出するトーン送出手段と、その後、前記ダイヤル認識部からの情報に基づいて動作して、一般電話機から前記信号伝送路に送出された電話番号を記憶する記憶手段と、記憶された電話番号を解析して、一般電話機の使用者が無線通信を希望しているか有線通信を希望しているかを判定する判定手段と、使用者が無線通信を希望している場合には、記憶していた電話番号を無線電話機に送出する一方、その後、前記信号伝送路と音声信号部とを介して、無線電話機と一般電話機とを接続して、無線電話機を中継して相手方電話機との無線通信を実現する無線通信手段と、使用者が有線通信を希望している場合には、前記2つの開閉回路を第1状態から第2状態に遷移させると共に、記憶していた電話番号を有線通信回線に送出し、その後、有線通信回線を介して相手方電話機との有線通信を実現する有線通信手段と、を備えていることを特徴とする無線通信用の発信アダプター。
【請求項3】 前記無線電話機は、汎用型の携帯電話機であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の発信アダプター。
【請求項4】 前記音声信号部と前記信号伝送路とは、電磁的に結合されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の発信アダプター。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】 本発明は、必要に応じて何時でも無線通信回線を構築することのできる発信アダプターに関し、特に、汎用型の携帯電話機を有効活用して、災害時の被害状況などを迅速に知らせることのできる簡易タイプの発信アダプターに関する。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】 1995年の阪神大震災の実例を挙げるまでもなく、地震などの災害時には、被災地から外部に対して遅滞なく被災状況を知らせることが重要である。しかしながら、大災害時には、被災地と外部との有線通信回線が遮断されてしまうことが多く、そのため、例えば、支社の被災状況を本社に迅速に通信できなかったり、或いは、地方公共団体からの情報が中央に迅速に伝わらなかったりしていた。かかる場合、会社や官庁の各デスクに配置されているボタン電話機から、必要に応じて、何時でも無線通信を行うことができれば最も望ましい。本発明は、この着想に基づいてなされたものであって、有線通信回線が遮断されてしまった場合でも、確実かつ迅速に、無線通信回線を構築することのできる無線通信用の発信アダプターを提供することを目的とする。また、ボタン電話機などの一般電話機から発信できて、被災時だけでなく、定常的にも使用することができ、且つ、ランニング・コストも安い簡易タイプの無線通信用発信アダプターを提供することを目的とする。
【0003】
【課題を解決するための手段】 上記の目的を達成するため、請求項1の発明は、一般電話機と無線電話機とを接続して、有線通信を実現する一般電話機からの無線発信を可能にした発信アダプターであって、一般電話機に向けて直流電圧を供給すると共に、一般電話機からのダイヤル信号や音声信号、及び、無線電話機からの音声信号を伝送する信号伝送路と、一般電話機からの音声信号を前記信号伝送路から受けて、これを無線電話機に伝える一方、無線電話機からの音声信号を受けて、これを前記信号伝送路に伝える音声信号部と、一般電話機がOFFフック状態に変化して前記信号伝送路に通話電流が流れたことを検知する回線監視部と、一般電話機から前記信号伝送路に送出されたダイヤル信号を認識するダイヤル認識部と、上記した装置各部の動作を制御する制御部とからなり、前記制御部は、前記回線監視部からの情報に基づいて、無線電話機に通話準備動作を開始させる第1手段と、その後、前記ダイヤル認識部からの情報に基づいて、無線電話機にダイヤル発信させる第2手段と、無線電話機が相手方電話機とつながった後、前記音声信号部を制御して一般電話機と相手方電話機との間の音声信号を送受させる第3手段とを備えている。この発明において、一般電話機とは、有線通信を実現する電話機であり、典型的には、会社や官庁の各デスクに備えられているボタン電話機である。
【0004】
また、請求項2の発明は、一般電話機を有線通信回線に接続していると共に、前記一般電話機と無線電話機とを接続して、前記一般電話機からの無線発信をも可能にした発信アダプターであって、2つの開閉回路が第1状態にあるときには、一般電話機に向けて直流電圧を供給すると共に、一般電話機からのダイヤル信号や音声信号、及び、無線電話機からの音声信号を伝送し、一方、前記2つの開閉回路が第1状態から第2状態に遷移すると、それまで供給していた直流電圧を遮断すると共に、前記有線通信回線からの直流電圧を受けて一般電話機に供給する信号伝送路と、一般電話機からの音声信号を前記信号伝送路から受けて、これを無線電話機に伝える一方、無線電話機からの音声信号を受けて、これを前記信号伝送路に伝える音声信号部と、一般電話機がOFFフック状態に変化して前記信号伝送路に通話電流が流れたことを検知する回線監視部と、一般電話機から前記信号伝送路に送出されたダイヤル信号を認識するダイヤル認識部と、上記した装置各部の動作を制御する制御部とからなり、前記制御部は、初期状態において、前記2つの開閉回路を第1状態に設定する初期手段と、前記回線監視部からの情報に基づいて動作して、前記信号伝送路にトーン信号を送出するトーン送出手段と、その後、前記ダイヤル認識部からの情報に基づいて動作して、一般電話機から前記信号伝送路に送出された電話番号を記憶する記憶手段と、記憶された電話番号を解析して、一般電話機の使用者が無線通信を希望しているか有線通信を希望しているかを判定する判定手段と、使用者が無線通信を希望している場合には、記憶していた電話番号を無線電話機に送出する一方、その後、前記信号伝送路と音声信号部とを介して、無線電話機と一般電話機とを接続して、無線電話機を中継して相手方電話機との無線通信を実現する無線通信手段と、使用者が有線通信を希望している場合には、前記2つの開閉回路を第1状態から第2状態に遷移させると共に、記憶していた電話番号を有線通信回線に送出し、その後、有線通信回線を介して相手方電話機との有線通信を実現する有線通信手段と、を備えている。この発明では、通常の処理にしたがって相手方の電話番号を入力するだけで良い。この電話番号は、記憶されると共に判定手段によって判定されるので、制御部は、使用者が無線通信を希望しているか、有線通信を希望しているかを知ることができる。そして、その希望に応じて、有線通信回線か無線通信回線かのいずれでも構築することができる。
【0005】
【発明の実施の態様】 以下、実施例に基づいて、この発明を更に詳細に説明する。
〔第1実施例〕図1は、この発明の一実施例である発信アダプター1について、携帯電話機2とボタン電話機3との接続関係を図示したものである。なお、実際には、発信アダプター1には、ボタン電話主装置やPBX(private branch exchange)を介して、複数個のボタン電話機3...3に接続されているが、説明の都合上、1台のボタン電話機3が、直接、発信アダプター1に接続されていることにする。この発信アダプター1は、ボタン電話機3で特定のボタンが押された場合に、ボタン電話機3と携帯電話機2とを直結状態にして、無線回線による公衆通信回線を構築する装置である。そして、この発信アダプター1は、図示の通り、発信アダプター1とボタン電話機3とを接続する回路接続部4と、携帯電話機2と回路接続部4の間で音声信号を送受信する音声信号部5と、これら装置各部の動作を制御する制御部6とを中心的に備えている。回路接続部4は、ボタン電話機3に直流電圧を供給すると共に交流信号を伝送する信号伝送路7と、信号伝送路7の導通を強制的に遮断する強制遮断部8と、ボタン電話機3から送出されるダイヤルパルス(DP)などをホトカプラを介して検知する検知部9と、ボタン電話機3から送出されるプッシュボタン(PB)信号をトランスT2を介して受けとるトーンレシーバ10とで構成されている。なお、ホトカプラは、具体的には、発光ダイオードDとフォト・トランジスタTrとで構成されている。また、検知部9は、発光ダイオードDの点灯によって通話電流の存在を検知する回線監視機能と、発光ダイオードDの点滅状況からダイヤルパルス(DP)を検知するDPパルスカウンタ機能とを有している。前記した信号伝送路7は、トランスT1を介して直流電源部11に接続されており、ボタン電話機3と、トランスT2の一次側と、発光ダイオードDと、強制遮断部8とで閉回路が形成されている。なお、強制遮断部8は、具体的には、リレーコイル8aとリレー接点8bとからなり、この例では、リレーコイル8aへの通電によってリレー接点8bが開放され、信号伝送路7の導通が遮断されるようになっている。音声信号部5は、携帯電話機2からの音声信号を増幅してトランスT1に伝える第1アンプ12と、トランスT1からの音声信号を増幅して携帯電話機2に伝える第2アンプ13とで構成されている。なお、簡易的には、音声信号部5の引出端子5aを、携帯電話機2のイヤホン端子2aに接続すれば良い。第1と第2のアンプ12,13は、その入力レベル信号S1,S2を制御部6に供給する一方、制御部6からは制御信号CT1,CT2を受けている。ここで、入力レベル信号S1,S2は、各アンプ12,13への交流入力信号を平均化した信号であり、各アンプ12,13への入力レベルが閾値を越えたか否かを、制御部6において監視するための信号である。また、制御信号CT1,CT2は、アンプ12,13を増幅器として機能させるか否かを決定するON/OFF信号であり、アンプ12,13は、制御部6からON信号を受けると、所定の増幅動作を行うが、OFF信号を受けると、何らの信号も出力しないようになっている。制御部6は、CPU、ROM、RAMなどを含んだマイクロコンピュータと、AD変換器やDA変換器などを含んだインターフェース部とからなるコンピュータ回路であって、ROMに格納された制御プログラムに従って、以下の制御動作を実現している。以下、発信アダプター1の動作内容について説明する。
【0006】
(1)待機状態
待機状態では、ボタン電話機3のフックスイッチHSは、開放(ONフック)状態であり、直流電源部11の直流電圧は、信号伝送路7を介してボタン電話機3に供給されている。但し、フックスイッチHSが開放状態であるので、通話電流が流れることはなく、発光ダイオードDは消灯状態である。また、この待機状態では、携帯電話機2は、電源オンの状態で待機しており、制御部6は、回線監視機能を発揮している検知部9からの信号によって、発光ダイオードDの消灯状態を認識している。
(2)発信準備状態
何らかの事情によって無線通信回線を構築したい場合には、ボタン電話機3の送受話器を上げて、無線通信用に設定されている特定のボタンを押せば良い。すると、フックスイッチHSは、閉鎖(OFFフック)状態となるので、電源部11からの直流通話電流が、信号伝送路7に流れて発光ダイオードDが点灯される。そして、制御部6は、回線監視機能を発揮している検知部9からの信号によって通話電流の存在を認識した後、制御信号線CTRを介して、携帯電話機2に対して発信信号を送出する。発信信号を受信した携帯電話機2は、電波状態の良否をチェックした後、ダイヤルトーン(DT)信号を音声信号部5に出力する。なお、この動作は、市販の携帯電話機(例えば、セルラーHD-30Kなど)において、一般的に実現される動作である。音声信号部5にダイヤルトーン(DT)信号が供給されると、制御部6は、入力レベル信号S1のレベル値が閾値を越えることによって、そのことを認識することができる。そこで、制御部6は、ONレベルの制御信号CT1を送出して第1アンブ12に増幅動作をさせる一方、OFFレベルの制御信号CT2を送出して第2アンプ13を非動作状態に設定する。第1アンプ12で増幅されたダイヤルトーン(DT)信号は、トランスT1を介して、信号伝送路7に伝えられ、ボタン電話機3からは「ツー」というダイヤルトーン(DT)信号が発生される。
(3)ダイヤル動作
ボタン電話機3において、相手先の電話番号を入力すると、その電話機がプュシュボタン方式であるか、ダイヤルパルス方式であるかに応じて、信号伝送路7には、プュシュボタン(PB)信号か、又は、ダイヤルパルス(DP)信号が出力される。なお、プュシュボタン(PB)信号は、送出される信号の周波数によって0〜9の番号を区別するものであり、ダイヤルパルス(DP)信号は、送出パルス数によって0〜9の番号を区別するものである。信号伝送路7に送出されたプュシュボタン(PB)信号は、トランスT2を介してトーンレシーバ10に伝えられ、一方、ダイヤルパルス(DP)信号は、ホトカプラを介して、DPパルスカウンタとして機能する検知部9に伝えられる。但し、いずれの場合にも、制御部6は、トーンレシーバ10か、又は検知部9からの信号によって、通話すべき相手先の電話番号を認識することができる。通話すべき相手先の電話番号を認識した制御部6は、必要な信号変換処理をした後、制御信号線CTRを介して、携帯電話機2に対してダイヤル信号(上りシリアル信号)を送出する。その後、携帯電話機2は、アンテナ2bからダイヤル信号を送信する。また、携帯電話機2は、この呼び出し処理に合わせて、音声信号部5にリングバックトーンを出力する。なお、これらの動作も、市販の携帯電話機で一般的に実現される動作である。この状態では、第1アンプ12は所定の増幅動作を実現しているので、リングバックトーンは、トランスT1を介して信号伝送路7に伝えられ、ボタン電話機3にも伝えられる。
(4)通話動作
その後、通話すべき相手方が電話機をとると、携帯電話機2と音声信号部5と信号伝送路7とを介して、相手方電話機とボタン電話機3とが接続されることになる。明らかなように、ボタン電話機3からの送話は、トランスT1を介して、信号伝送路7から音声信号部5へと伝えられ、第2アンプ13で増幅されて携帯電話機2に伝えられる。そして、携帯電話機2は、無線通信回線によって送話信号を相手方の電話機に伝える。なお、通話動作中、電波状態の不良などによって相手方電話機と携帯電話機2の通話が切れた場合には、携帯電話機2は、制御信号線CTRを介して、その旨を伝えてくるので、制御部6は、リレーコイル8aを動作させて信号伝送路7を強制的に遮断する。信号伝送路7が遮断されると、ボタン電話機3は、無音状態になるので、送受話器を戻せばフックスイッチHSが初期状態に復帰する。
(5)通話完了時
通話動作が正常に完了した後、ボタン電話機3の送受話器を戻すと、フックスイッチHSは開放(ONフック)状態となるので、信号伝送路7は開放状態になる。すると、信号伝送路7の通話電流が遮断されて発光ダイオードDが消灯するので、制御部6は、回線監視機能を発揮している検知部9を介して、そのことを認識することができる。そして、制御部6は、制御信号線CTRを介して、携帯電話機2に終話信号を送出し、携帯電話機2は、相手方との無線通信回線を遮断する。以上の通り、図1に示す発信アダプター1を用いれば、ボタン電話機3の特定のボタンを押すだけで無線通信回線を構築することができるので、被災時などにも適切に対応することができる。しかも、携帯電話機を呼び出す場合には、一般の電話機から呼び出す場合よりも回線使用料が安いので、本発明の発信アダプター1を日常的に使用するようにすれば、当該企業の通信費を恒常的に節約することもできる。
【0007】
〔第2実施例〕図2は、この発明の第2実施例を図示したものであり、有線通信回線の構築と無線通信回線の構築とを、ボタン電話機3からの電話番号だけで任意に選択できるようにした発信アダプター1Aを図示したものである。この実施例の特徴は、▲1▼信号伝送路7に回路切換部R1,R2を備えて、有線通信回線と無線通信回線の構築を任意に切り換えている点、▲2▼疑似トーン発生部14を設けて、これをトランスT1に接続した点、▲3▼NTT(登録商標)有線回線に対してダイヤルパルス信号を送出するための送出リレーR3を設けた点、▲4▼NTT有線回線に対してプッシュボタン信号を送出するためのトランスT3を設けた点、▲5▼制御部6Aに、ダイヤル番号の蓄積機能を設けた点などにある。また、この特徴に対応して、制御部6Aは、▲1▼回路切換部R1,R2を制御する制御信号CT5,CT6と、▲2▼疑似トーン発生部14の動作を制御する制御信号CT3と、▲3▼送出リレーR3を制御する制御信号CT4とを、適宜に出力している。なお、その他の制御信号CT1〜CT3は、実施例1の場合と同様に機能する。以下、図2の発信アダプターの動作内容について説明する。
(1)待機状態
待機状態では、回路切換部R1,R2は、図示の状態にあり、したがって、ボタン電話機3とNTT回線とは、回路切換部R1の位置において開放されている。一方、直流電源部11の直流電圧は、トランスT2→発光ダイオードD→リレー接点8b→回路切換部R2の経路からなる信号伝送路7を通して、ボタン電話機3に供給されている。但し、ボタン電話機3のフックスイッチHSが開放状態であるので、通話電流が流れることはなく、発光ダイオードDは消灯状態である。
(2)発信準備
その後、ボタン電話機3の送受話器を上げると、フックスイッチHSが閉鎖(OFFフック)状態となるので、電源部11からの直流通話電流が、信号伝送路7に流れて発光ダイオードDが点灯される。そして、制御部6Aは、検知部9からの信号によって通話電流の存在を認識する。次に、制御部6Aは、制御信号CT3を変化させて疑似トーン発生部14の動作を開始させる。疑似トーン発生部14からのダイヤルトーン信号は、トランスT1を介して信号伝送路7に伝えられるので、ボタン電話機3からは「ツー」というダイヤルトーン信号が発生される。
(3)ダイヤル動作
ボタン電話機3の側では、有線通信回線を使用するか、無線通信回線を使用するかを任意に選択して、必要な電話番号を入力すれば良い。なお、無線通信回線を使用したい場合には、最初の3桁に特別な数字(例えば、000のような特殊数値)を付加して入力する。ボタン電話機3からの電話番号は、プュシュボタン(PB)信号かダイヤルパルス(DP)信号かに応じて、トーンレシーバ10か検知部9かに入力される。そこで、制御部6Aは、この電話番号を内部のメモリに記憶すると共に、その電話番号を解析する。具体的には、最初の3桁が特殊数値であるか否かを判定する。
〔特殊数値が付加されている場合〕電話番号を解析した結果、最初の3桁が特殊数値である場合には、制御部6Aは、必要な信号変換処理をした後、制御信号線CTRを介して、携帯電話機2に対して、特殊数値を除いたダイヤル信号(上りシリアル信号)を送出する。その後の動作は、実施例1で説明したのと同様であり、ボタン電話機3は、携帯電話機2を経由して、相手方電話機との無線通信を実現する。
〔特殊数値が付加されていない場合〕電話番号を解析した結果、最初の3桁が特殊数値でない場合には、制御部6Aは、先ず、制御信号CT5,CT6を変化させて、回路切換部R1,R2の動作状態を図示の状態から反転させる。この動作によって、直流電源部11は、信号伝送路7から切り離されるが、信号伝送路7には、NTT有線回線の方から直流電圧が供給されるので問題は生じない。続いて、制御部6Aは、トランスT3を通してプュシュボタン(PB)信号を出力するか、或いは、制御信号CT4によって送出リレーR3を開閉してダイヤルパルス(DP)信号を出力する。NTT回線に出力される信号は、制御部6Aに記憶していた相手先の電話番号に対応したものであり、これ以降は、NTT有線通信回線を使った通常の公衆通信が実現される。以上、NTT有線通信回線を使って一般電話機および携帯電話機を呼び出せると共に、携帯電話機2を経由して一般電話機および携帯電話機を呼び出せるようにした発信アダプター1Aの使用態様について説明した。しかし、発信アダプター1Aを定常的に使用して有効活用したい場合には、一般電話機に向けて発信する場合にはNTT有線通信回線を使い、携帯電話機に向けて発信する場合には、携帯電話機2を経由した無線通信回線を用いるようにするのが好ましい。使用態様をこのように限定した場合には、上記した特殊数値を付加する必要がなくなるので、使用者は、何も意識することなく、通常の電話番号を入力すれば良いことになる。つまり、030,040,080,090から始まる携帯電話用の電話番号を入力した場合だけ、無線通信回線が構築されることになる。この場合、制御部6Aは、特殊数値の判定に代えて、030,040,080,090の有無だけを判定をすれば足りるので、この点からも好ましい。このように、第2実施例の場合には、普通に電話番号を入力するだけで、通常の有線通信か、携帯電話機を介した無線通信かを選択することができる。そして、携帯電話機と通信する場合には、携帯電話機から発信した方が通信費が安いので、本システムを定常的に使用すれば、通信費を節約することができる。なお、市販の無線電話機を有効に活用しているので、最小限の投資によって、本システムを完成させることができる。
【0008】
【発明の効果】 以上説明したように、本発明によれば、必要に応じて何時でも、一般電話機から無線通信を行うことができる。したがって、有線通信回線が遮断されてしまった場合でも、会社や官庁の各デスクに配置されているボタン電話機から、確実かつ迅速に、被災状況などを外部に適切に伝達することができる。無線通信回線は、被災時だけでなく、定常的にも使用することができるので、企業の通信費用を節約することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例を示すブロック図である。
【図2】本発明の第2実施例を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 発信アダプター
2 無線電話機(携帯電話機)
3 一般電話機(ボタン電話機)
5 音声信号部
6,6A 制御部
7 信号伝送路
9 回線監視部、ダイヤル認識部(検知部)
10 ダイヤル認識部(トーンレシーバ)
 
訂正の要旨 訂正の要旨
(1)訂正事項aについて
特許請求の範囲の請求項1の「一般電話機と無線電話機とを接続して、一般電話機からの無線発信を可能にした発信アダプターであって、」を、明りょうでない記載の釈明を目的として、「一般電話機と無線電話機とを接続して、有線通信を実現する一般電話機からの無線発信を可能にした発信アダプターであって、」と訂正する。
(2)訂正事項bについて
発明の詳細な説明の課題を解決する手段の記載について、「上記の目的を達成するため、請求項1の発明は、一般電話機と無線電話機とを接続して、一般電話機からの無線発信を可能にした発信アダプターであって、」を、明りょうでない記載の釈明を目的として、「上記の目的を達成するため、請求項1の発明は、一般電話機と無線電話機とを接続して、有線通信を実現する一般電話機からの無線発信を可能にした発信アダプターであって、」と訂正する。
審理終結日 2001-11-06 
結審通知日 2001-11-12 
審決日 2001-11-26 
出願番号 特願平8-153401
審決分類 P 1 122・ 536- ZA (H04M)
P 1 122・ 121- ZA (H04M)
最終処分 成立  
前審関与審査官 須田 勝巳  
特許庁審判長 佐藤 秀一
特許庁審判官 山本 春樹
武井 袈裟彦
登録日 1998-10-09 
登録番号 特許第2838071号(P2838071)
発明の名称 無線通信用の発信アダプター  
代理人 野中 誠一  
代理人 小山 方宜  
代理人 小山 方宣  
代理人 福島 三雄  
代理人 野中 誠一  
代理人 福島 三雄  
代理人 井坂 光明  

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