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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B60S |
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管理番号 | 1056057 |
審判番号 | 審判1999-16676 |
総通号数 | 29 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1993-04-06 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1999-10-14 |
確定日 | 2002-03-20 |
事件の表示 | 平成 3年特許願第248035号「車両のワックス掛け方法」拒絶査定に対する審判事件[平成5年4月6日出願公開、特開平5-85316]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯及び本件発明 本件は、平成3年9月26日の特許出願であって、その請求項1〜3に係る発明は、平成13年11月5日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載の以下の事項により、それぞれ特定されるものである。 【請求項1】 ワックスの付着した擦付け具を手に持って車両表面に擦り付けることにより、該車両表面を手作業でワックス掛けするワックス掛け工程と、前記手作業でのワックス掛け工程でワックス掛けされた車両表面のワックス層の厚みを不均一にしている、前記ワックス層の凸部を形成する余剰ワックスを除去して、前記ワックス層の厚みを略均一にする除去工程とを行う、車両のワックス掛け方法であって、 前記除去工程では、前記手作業でのワックス掛け工程でワックス掛けされた車両表面に対し、洗車機に装備されて各々回転駆動される車両横幅の略一杯に亘る上面回転ブラシ及び車両上下幅の略一杯に亘る側面回転ブラシで、洗浄液体を用いるブラッシング洗浄をして前記余剰ワックスを除去することを特徴とする、車両のワックス掛け方法。 【請求項2】 前記洗車機は、フレームと、そのフレームに設けられ前記洗浄液体を噴射する洗浄液体噴射装置と、前記フレームに設けられた前記回転駆動される上面回転ブラシ及び側面回転ブラシと、前記ブラッシング洗浄する車両に対する前記フレームの、該車両の前後方向の相対的な運動を伴って前記ブラッシング洗浄を行うように、前記洗浄液体噴射装置、前記上面回転ブラシ及び側面回転ブラシ、並びに前記相対的な運動を制御する制御装置とを備えたことを特徴とする、請求項1に記載の車両のワックス掛け方法。 【請求項3】 前記除去工程では、前記ブラッシング洗浄の終了後の車両表面になお残る前記余剰ワックスを手作業で拭取る拭取り工程を行うことを特徴とする、請求項1または2に記載の車両のワックス掛け方法。 2.本件請求項1に係る発明について これに対して、当審で平成13年8月27日付けで通知した拒絶の理由に引用した「特開平2-48252号公報(以下、「引用文献1」という。)」には、「まず、汚れた自動車を門型洗車機により常法通り水洗ブラッシング、・・そして、本発明におけるワックス剤を・・使用して車輌全体に塗布し、・・洗車ブラシが回転して塗装面を均一にブラッシングするのである。 このブラッシング後に少量の水を散布すると過剰のワックスを洗い流すためより好都合となるのである。 前出願の発明においては主な行程は上記のブラッシングで終了し、つづいて水洗ブラシして仕上げていたのである。」(第3頁下段左欄第8〜20行)と記載されており、引用文献1には、 門型洗車機を用いて、ワックス剤を使用して車輌全体に塗布し、洗車ブラシが回転して塗装面を均一にブラッシングする工程と、そのブラッシングで終了する主な工程につづいて、その後、過剰のワックスを洗い流すために、少量の水を散布し、つづいて水洗ブラシして仕上げる工程 が記載されるものと認める。 ここで、本件請求項1に係る発明と、引用文献1に記載の発明とを比較すると、引用文献1に記載されるワックス剤を使用して車輌全体に塗布し、洗車ブラシが回転して塗装面を均一にブラッシングすることは、ワックス掛けを行うことであり、かつ、洗車ブラシの回転が回転駆動されるものであることは、自明の事項と認められる。 その後、過剰のワックスを洗い流すために、少量の水を散布し、つづいて水洗ブラシすることは、過剰のワックスを除去するものと認められるとともに、過剰のワックスの内に、車両表面のワックス層の厚みを不均一にしているワックス層の凸部を形成するワックスが含まれることは自明であり、更に、本件請求項1の発明にいう、ブラッシング洗浄をして余剰ワックスを除去するために用いる「洗浄液体」に関連して、本件明細書中には、段落番号【0008】に、「門型フレーム2には回転ブラシ装置B、乾燥装置D、洗剤噴射装置C及びリンス水噴射装置R1 ,R2 が設けられ、これらは洗車機1が従来具有している機能、即ちブラッシング洗浄、乾燥等の処理機能を果す。而して前記洗剤噴射装置C及びリンス水噴射装置R1 ,R2 は洗浄液体噴射装置を構成する。」と記載されるとともに、段落番号【0032】に、「尚、また前記実施例では、ブラッシング洗浄工程中に泡状の洗剤を噴射させるようにしたが、本発明では、液状の洗剤を噴射させるようにしてもよく、また洗剤に代えて、例えば第1リンス水噴射装置R1より清水を噴射させるようにしてもよい。」と記載されており、洗浄液体とは、清水を包含するものと認められるので、両発明は、 ワックス掛け工程と、前記ワックス掛け工程でワックス掛けされた車両表面のワックス層の厚みを不均一にしている、前記ワックス層の凸部を形成する余剰ワックスを除去して、前記ワックス層の厚みを略均一にする除去工程とを行う、車両のワックス掛け方法であって、 前記除去工程では、前記ワックス掛け工程でワックス掛けされた車両表面に対し、洗車機に装備されて回転駆動されるブラシで、洗浄液体を用いるブラッシング洗浄をして前記余剰ワックスを除去する車両のワックス掛け方法。 の発明である点で一致し、以下の点で相違するものと認める。 相違点1 本件請求項1に係る発明のワックス掛け工程は、ワックスの付着した擦付け具を手に持って車両表面に擦り付けることにより、該車両表面を手作業でワックス掛けするものであるのに対して、引用文献1のものでは、門型洗車機を用いている点。 相違点2 本件請求項1に係る発明は、車両横幅の略一杯に亘る上面回転ブラシ及び車両上下幅の略一杯に亘る側面回転ブラシを用いるのに対して、引用文献1のものは、洗車ブラシを用いるものの、そのようなことの記載はない点 以下、相違点について検討する。 ワックスの付着した擦付け具を手に持って車両表面に擦り付けることにより、該車両表面を手作業でワックス掛けすること自体は、例示を待つまでもなく慣用される技術であり、洗車等の行程において、機械によるか手作業によるかの選定は、引用文献1の第1頁下段左欄第15〜16行にも「ついで布などで手拭きするか又は洗車ブラシでこする・・」とあるように、当業者が適宜選定しうる事項にすぎないので、相違点1は、引用文献1のものに、周知の技術を適用して容易になしえたものであって、格別の事項とは認められない。 次に、相違点2について検討すると、同じく引用された「特開昭63-269762号公報(以下、「引用文献2」という。)」のものは、門型走行フレームからなる洗車機を用いるものであり、「上記水性ワックス塗布行程が終了すると、・・清水を噴射させ、且つ走行フレーム1を・・往行させる。この往行によれば、水性ワックスの塗布された車体面が上面及び各側面回転ブラシ4,5,5により先刻のブラシング洗浄の場合と同じ順序で再度ポリシングされると共に、・・噴射される清水により車体面上の余剰ワックスが流し落とされる。」(第7頁上段右欄第11行〜同頁下段左欄第3行)と記載されているように、引用文献1のものと同様に、ワックスの塗布及び余剰のワックスを流し落とすものであり、その第3a、b図、第4a、b図、第5a、b図、および、第6a、b図には、洗車のためのブラシとして車両横幅の略一杯に亘る上面回転ブラシ及び車両上下幅の略一杯に亘る側面回転ブラシが、図示されている。 したがって、相違点2は、引用文献2に記載される技術であり、しかも、引用文献2に記載される技術を引用文献1のものに採用する点に格別の困難性は認められないので、格別の事項とは認められない。 そして、本件請求項1に係る発明の奏する作用効果は、引用文献1,2のもの及び周知の技術から予測される以上の格別のものとは認められない。 よって、本件請求項1に係る発明は、引用文献1,2に記載された発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認める。 3.本件請求項2に係る発明について 次に、本件請求項2に係る発明と、引用文献1に記載された発明とを比較すると、上記相違点1,2に加えて更に、 相違点3 本件請求項2に係る発明の洗車機は、フレームと、そのフレームに設けられ前記洗浄液体を噴射する洗浄液体噴射装置と、前記フレームに設けられた前記回転駆動される上面回転ブラシ及び側面回転ブラシと、前記ブラッシング洗浄する車両に対する前記フレームの、該車両の前後方向の相対的な運動を伴って前記ブラッシング洗浄を行うように、前記洗浄液体噴射装置、前記上面回転ブラシ及び側面回転ブラシ、並びに前記相対的な運動を制御する制御装置とを備えたものであるのに対して、引用文献1のものは、門型洗車機ではあるものの、そのような構成に関してとくだんの記載がない点 で相違し、残余の点で両発明は一致するものと認める。 しかしながら、引用文献2に記載される一連の作動が、制御を行う装置によることは自明の事項であるので、相違点3は、引用文献2に、実質的に記載される事項である。 そして、相違点1,2は、上記の通り格別の事項とは認められない。 したがって、本件請求項2に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認める。 4.本件請求項3に係る発明について 更に、本件請求項3に係る発明と、引用文献1に記載された発明とを比較すると、上記格別の事項とは認められない相違点1,2に加えて更に、 相違点4 本件請求項3に係る発明の除去工程では、前記ブラッシング洗浄の終了後の車両表面になお残る前記余剰ワックスを手作業で拭取る拭取り工程を行うののであるのに対して、引用文献1のものには、そのような記載がない点 で相違し、残余の点で両発明は一致するものと認める。 しかしながら、所謂ワックス掛けにおいて、余剰ワックスを手作業で拭取る事は例示するまでもなく周知の事項であり、機械作業による不足を手作業で補うことは、特開昭63-227448号公報の第3頁下段左欄第19行〜同頁同段右欄第2行にも示されるように慣用される技術であり、本件請求項3に係る発明は、引用文献1,2のもの及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認める。 5.むすび 以上の通り、本件請求項1〜3に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2001-12-17 |
結審通知日 | 2002-01-04 |
審決日 | 2002-01-17 |
出願番号 | 特願平3-248035 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(B60S)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 川向 和実 |
特許庁審判長 |
粟津 憲一 |
特許庁審判官 |
藤井 昇 井口 嘉和 |
発明の名称 | 車両のワックス掛け方法 |
代理人 | 落合 健 |
代理人 | 仁木 一明 |