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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E02F
管理番号 1056188
審判番号 審判1999-12915  
総通号数 29 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-11-18 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-08-12 
確定日 2002-04-01 
事件の表示 平成 8年特許願第236398号「掘削用バケットの粘性物質排出装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 9年11月18日出願公開、特開平 9-296476]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 本願発明
本願は、平成8年9月6日の出願であって、その請求項1及び2に係る発明は、平成11年1月8日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち請求項1に係る発明は次のとおりである。

「【請求項1】湾曲した底壁と互いに対向する一対の側壁からなる掘削用バケットの粘性物質排出装置において、上記底壁と各側壁との接合部に夫々各接合部に沿って延びる一対の圧縮空気流通管を配置すると共に各接合部の内側面上に各接合部に沿って配置されかつ対応した圧縮空気流通管内に連通する複数個の空気噴出口を形成し、圧縮空気貯留タンクからの圧縮空気の流出を制御する開閉弁を具備し、開閉弁が開弁したときに圧縮空気貯留タンク内の高圧がただちに各空気噴出口に作用するように拡大された容積室を介在させることなく圧縮空気供給導管により各圧縮空気流通管と圧縮空気貯留タンクとを直接接続し、開閉弁が開弁したときに圧縮空気を複数個の空気噴出口から対応する側壁の内側面に沿って噴出させるようにした掘削用バケットの粘性物質排出装置。」

2 引用刊行物の記載
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された実願昭47-111804号(実開昭49-69204号)のマイクロフィルム(以下「引用例1」という。)には、「車体にリンク機構を介して取付けられて油圧シリンダ9により揺動作動がなされるバケット1の背部にエアチヤンバ3を形成し、バケット1にエアチヤンバ3に連通するノズル4を複数個形成し、リンク機構にバケットの掘削時ボトム側14aに空気を導入し、バケット1の排土時導入空気を圧縮するエアシリンダ14とこのエアシリンダ14のボトム側14aに連通して圧縮空気を溜めるエアチヤンバ15とを設け、エアチヤンバ15を管体19を介してバケット1のエアチヤンバ3に連通し管体19にバルブ20を設けたことを特徴とするバケットの付着土砂除去装置。」(実用新案登録請求の範囲)が図面と共に記載され、該装置の説明において「図面中1は・・・、バケット1の隅部にエアチヤンバ3に連通する複数個のノズル4が穿ってある。」(2頁6〜10行)、「バケット1が土砂を掘削するごとにエアシリンダ14をしてエアチヤンバ15に圧縮空気を送り込みエアチヤンバ15内が所定圧以上になったらバルブ20を開いて圧縮空気をエアチヤンバ3に導入し、ノズル4より噴出してバケット1に付着した土砂を除去できるように付着土砂の除去を確実に行なうことができる。」(4頁14〜20行)と記載されている。第1,3図には、湾曲した底壁と互いに対向する一対の側壁からなるバケット1において、底壁と各側壁との接合部に、それら接合部に沿って複数のノズルを形成した掘削用のバケットが記載されている。
以上の記載によると、引用例1には、湾曲した底壁と互いに対向する一対の側壁からなる掘削用バケット1の付着土砂除去装置において、バケット1の背部にエアチヤンバ3が形成されており、バケット1の底壁と一対の側壁との各接合部には夫々接合部に沿って複数個のノズル4が形成され、各ノズルはエアチヤンバ3内に連通し、エアチヤンバ15とエアチヤンバ3とは管体19により接続され、管体19にはエアチヤンバ15内が所定圧以上ときに開くバルブ20が設けられ、該バルブが開弁したとき圧縮空気を底壁と一対の側壁との各接合部に沿って形成したノズルから噴出させるようにした付着土砂除去装置が開示されていると認められる。

3 対比・検討
本願の請求項1に係る発明と上記引用例1に記載された発明を対比すると、引用例1記載の発明の「エアチヤンバ15」、「管体19」、「バルブ20」、「ノズル4」及び「付着土砂除去」は、本願の請求項1に係る発明の「圧縮空気貯留タンク」、「圧縮空気供給導管」、「開閉弁」、「空気噴出口」及び「粘性物質排出」にそれぞれ相当する。又引用例1記載の装置は、圧縮空気がエアチヤンバ3を経てノズル4に向かう構造であるから、バルブ20を開弁したときエアチヤンバ15内の高圧がノズル4に直ちに作用することは明らかであり、又管体19は、バルブを有するが、該管体の通路部に拡大された容積室は設けられてないから、該管体は拡大された容積室を介在させることなく「エアチヤンバ15」と「エアチヤンバ3」を直接接続したものであり、更に「ノズル4」は「エアチヤンバ3」内に連通しているから「エアチヤンバ3」は”圧縮空気の通路部”であると認められ、結局、両者は、湾曲した底壁と互いに対向する一対の側壁からなる掘削用バケットの粘性物質排出装置において、底壁と各側壁との接合部の内側面上に各接合部に沿って複数個の空気噴出口を形成し、圧縮空気貯留タンクからの圧縮空気の流出を制御する開閉弁を具備し、開閉弁が開弁したときに圧縮空気貯留タンク内の高圧がただちに各空気噴出口に作用するように拡大された容積室を介在させることなく、圧縮空気供給導管により”圧縮空気の通路部”と圧縮空気貯留タンクとを直接接続し、開閉弁が開弁したときに圧縮空気を複数個の空気噴出口から、対応する側壁の内側面に沿って噴出させるようにした掘削用バケットの粘性物質排出装置である点で一致しているが、請求項1に係る発明では、圧縮空気供給導管に接続する”圧縮空気の通路部”が、バケットの底壁と各側壁との接合部に夫々各接合部に沿って延びる一対の圧縮空気流通管であるのに対し、引用例1に記載の発明では、「導管19」(圧縮空気供給導管)に接続する”圧縮空気の通路部”は、このような「一対の圧縮空気流通管」ではなくバケットの背部に形成された「エアチヤンバ3」である点で相違している。
以下上記相違点について検討する。
圧縮空気を空気噴出口(ノズル)から噴出させるとき、ノズルまでの圧縮空気の通路部を配管で構成することは周知技術(例えば、実願平2-403751号(実開平4-89827号)のマイクロフィルム、実願昭57-193103号(実開昭59-98949号)のマイクロフィルム、実願昭62-173424号(実開平1-78228号)のマイクロフィル、特開平7-238831号公報参照。)であるので、引用例1に記載の発明おいて、圧縮空気供給導管(管体19)からの”圧縮空気の通路部”である「エアチヤンバ3」を、圧縮空気が底壁と各側壁との各接続部のノズルに向けて流通できる配管の配設、即ち底壁と各側壁との各接続部に沿って延びる箇所に配置される一対の圧縮空気流通管の配設に置き代え請求項1に係る発明のように構成することは当業者が設計変更により容易になし得ることと認める。そして、圧縮空気の通路部として一対の圧縮空気流通管を配設したことによりもたらされる効果も予測できる程度のものである。

4 むすび
以上のとおりであり、本願の請求項1に係る発明は、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-01-29 
結審通知日 2002-02-08 
審決日 2002-02-19 
出願番号 特願平8-236398
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 深田 高義  
特許庁審判長 嶋矢 督
特許庁審判官 鈴木 憲子
中田 誠
発明の名称 掘削用バケットの粘性物質排出装置  
代理人 戸田 利雄  
代理人 西山 雅也  
代理人 鶴田 準一  
代理人 石田 敬  

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