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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F21Q |
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管理番号 | 1056330 |
審判番号 | 不服2000-11490 |
総通号数 | 29 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1995-10-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2000-07-26 |
確定日 | 2002-04-11 |
事件の表示 | 平成6年特許願第104293号「車両用灯具」拒絶査定に対する審判事件[平成7年10月31日出願公開、特開平7-288010号]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成6年4月20日の出願(特願平6-104293号)であって、その請求項1及び2に係る発明は、平成11年10月25日付けで補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1及び2に記載されたとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。 「内面が反射処理されてリフレクタとして構成された灯具ボディの開口周縁部に沿って凹状のシール溝を有し、前記シール溝内に前記開口を覆うレンズのシール脚部を挿入し、かつ前記シール溝内に充填したシール材により前記灯具ボディとレンズとを一体化する構成の車両用灯具において、前記灯具ボディの前記リフレクタの外側面には前記開口周縁部に沿って断面形状がL字状をした張出部を一体に形成し、前記張出部と前記開口周縁部との間に前記シール溝を構成するとともに、前記張出部と前記開口周縁部との接続部分には、前記張出部の外面でかつ前記灯具ボディの前記リフレクタの外面に沿った部分に前記張出部の樹脂体積を小さくする肉盗み溝を形成したことを特徴とする車両用灯具。」 2.引用例 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、実願昭61-189112号(実開昭63-95106号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献1」という。)には、「車両用灯具」に関して、以下の事項が図面と共に記載されている。 (a)「この考案は、車両用灯具、特にそのレンズ接合構造に関する。」(明細書第1頁第14〜15行) (b)「第1図には、この考案の一実施例が示されている。この灯具は、・・・合成樹脂製のランプボデー11と、その前面開口周縁に形成された溝部12内にシール材13を介して周縁の脚部14を接合されたレンズ15と、ランプボデー11後部のバルブ取付穴16から挿入されるランプバルブ17とを備えている。ランプボデー11の後部は、放物曲面状に湾曲しており、その内面には、アルミニウム等の金属反射膜18が形成されている。」 (同書第5頁第6〜16行) (c)第1及び3図には、ランプボデー11の開口周縁部に沿って断面がL字状をした張出部を一体に形成して(A部に付されたハッチ参照)、上記開口周縁部との間に凹状の溝部12を構成することが示されている。 また、同じく引用された、実願平2-107626号(実開平4-64115号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献2」という。)には、「樹脂成形品のリブ構造」に関して、以下の事項が図面と共に記載されている。 (d)「本考案は、・・・外観に現われる個所にヒケを生じて外観を損うおそれが無く、機械的強度を著しく低下させるおそれが無く、しかも金型構成を複雑ならしめて製造原価の上昇を招くおそれも無い、樹脂成形品のリブ構造を提供することを目的とする。」(明細書第4頁第7〜12行) (e)「例えばリムにリブを設けた場合、該リムがリブの為に冷却を遅延せしめられないように、該リブがリムに対して連設される個所の近傍を薄肉に形成する。」(同書第4頁第16〜19行) (f)「本例のリム3がリブ6と連接されている個所a付近(第1図参照)は、成形、冷却の際にリブ6を接続されていることに因る熱的影響を受けるが、リム3はリブの厚肉部6aを直接的には接続されることなく薄肉部6bに接しているのみであるから著しい冷却遅延を生じない。従ってその表面にヒケを生じるおそれが無い。」(同書第7頁第8〜14行) (g)「本考案のリブ構造を適用すると、U字状ないし不正U字状断面を有する樹脂成形品は、・・・上記U字状ないし不正U字状の凸側表面のうちで外観に現われ易い部分は、その裏側にリブの厚肉部が接続されず、薄肉部に接しているのみである。従って、リブの熱影響による冷却遅延、および冷却遅延に因るヒケを生じるおそれが無い。」(同書第7頁第20行〜第8頁第9行) (h)第1図には、リム3の裏面に張り出すように一体に形成されたリブ6の、リム3との接続部分の一面に薄肉部を形成した態様が示されている。 3.対比・判断 本願発明と上記引用文献1に記載された発明とを対比すると、引用文献1に記載された発明の、「ランプボデー11」、「溝部12」及び「脚部14」は、それぞれ本願発明の「灯具ボディ」、「シール溝」及び「シール脚部」に相当し、引用文献1に記載されたランプボデー11の内面は、「アルミニウム等の金属反射膜18が形成されている」ので、本願発明の灯具ボディの内面と同じく「反射処理されてリフレクタとして構成され」ており、また、引用文献1に記載された「レンズ15」は、ランプボデーの前面開口を覆うものであり、同じく「溝部12」は、ランプボデーの開口周縁に沿って断面形状がL字状をした張出部を一体に形成してなるものということができる。 したがって、本願発明と引用文献1に記載された発明とは、本願発明の用語を用いて表現すると、 「内面が反射処理されてリフレクタとして構成された灯具ボディの開口周縁部に沿って凹状のシール溝を有し、前記シール溝内に前記開口を覆うレンズのシール脚部を挿入し、かつ前記シール溝内に充填したシール材により前記灯具ボディとレンズとを一体化する構成の車両用灯具において、前記灯具ボディの前記リフレクタの外側面には前記開口周縁部に沿って断面形状がL字状をした張出部を一体に形成し、前記張出部と前記開口周縁部との間に前記シール溝を構成した車両用灯具」 である点で一致しており、 本願発明が、「張出部と開口周縁部との接続部分には、前記張出部の外面でかつ前記灯具ボディのリフレクタの外面に沿った部分に前記張出部の樹脂体積を小さくする肉盗み溝を形成」したのに対し、引用文献1に記載された発明は、肉盗み溝が形成されていない点で相違している。 そこで上記の相違点について検討をする。 一般に、合成樹脂成形品の一面に突出(張出)部を一体に形成する際に、該突出(張出)部によって樹脂が厚くなりそのために「ひけ」が発生すること、及び製品の外観を良好にするために、そのような「ひけ」を可及的に防止することは、合成樹脂の成形の分野においては本願出願前周知の事項であり、引用文献1に記載されたように、張出部をランプボデーの開口周縁部に一体形成する場合に、張出部による樹脂の厚みによって該部分のランプボデーの内面に「ひけ」が生じること及びそのような「ひけ」を防止することが好ましいことは、当業者が当然予測し考慮すべき事項と認められる。 さらに、合成樹脂成形品の一面に突出(張出)部を一体に成形する際に、ひけの発生により外観を損なうことを防止すべく、該突出部に薄肉部を形成し、樹脂体積を少なくすることは、引用文献2に記載されているように、本願出願前周知の手段であるので、該周知のひけの防止手段を、引用文献1に記載された、張出部を一体に形成した灯具ボデーの成形に適用して、張出部に薄肉部を形成するようにすることは、当業者が容易に想到しうる事項と認められる。 そして、その際の薄肉部の形成位置は、ひけの防止という本来の目的に沿って、製品の外観や、加工の容易性など考慮して当業者が適宜決定しうる設計的事項であり、また、薄肉部の形状を溝状となすことも、たとえば、原査定で提示された、特開平2-292014号公報あるいは実願平4-17383号(実開平5-68622号)のCD-ROM等に示されているように常套手段であるので、引用文献1に記載された車両用灯具に引用文献2に記載された周知のひけ防止手段を適用するに際して、「張出部の外面でかつ前記灯具ボディの前記リフレクタの外面に沿った部分に肉盗み溝を形成」することは当業者が適宜改変し得る事項と認められる。 なお、本願発明により奏される効果も、各引用文献に記載された事項及び周知技術から当業者が予測し得る範囲のものである。 4.むすび 以上のとおりであるから、本願請求項1に係る発明は、周知技術を勘案して、引用文献1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく本願は拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2002-02-05 |
結審通知日 | 2002-02-12 |
審決日 | 2002-02-25 |
出願番号 | 特願平6-104293 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F21Q)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 柿崎 拓 |
特許庁審判長 |
田中 秀夫 |
特許庁審判官 |
和泉 等 岡田 和加子 |
発明の名称 | 車両用灯具 |
代理人 | 鈴木 章夫 |