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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1056382
審判番号 不服2000-807  
総通号数 29 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-12-10 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-01-20 
確定日 2002-04-10 
事件の表示 平成10年特許願第144425号「プリント配線板、および単位配線板の製造方法」拒絶査定に対する審判事件[平成11年12月10日出願公開、特開平11-340609]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯・本件発明
本件出願は、平成10年5月26日に出願されたものであって、その請求項1〜4に係る発明は、平成11年11月11日受付の手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された次のとおりのものと認める。
なお、平成12年2月21日付け手続補正は、特許法第53条第1項の規定により決定をもって却下された。
「 【請求項1】 単層もしくは多層に形成された樹脂基板に、配線パターンを有する単位配線板が複数個作り込まれ、該配線パターンの端子部等の所要露出部に電解めっきを施すため、配線パターンをつなげるめっき用リードが形成されたプリント配線板において、
前記めっき用リードは、前記隣接する単位配線板間に、単位配線板内の配線パターン間および隣接する両単位配線板の配線パターン間をつなげると共に、両単位配線板を分離する仮想切断線に対して交叉するよう曲折して設けられていることを特徴とするプリント配線板。
【請求項2】 前記プリント配線板は多層のプリント配線板であって、
前記めっき用リードは、内層の配線パターンの配線パターン間をつなげるめっき用リードであることを特徴とする請求項1記載のプリント配線板。
【請求項3】 前記単位配線板は半導体チップ収納凹部を備えることを特徴とする請求項1または2記載のプリント配線板。
【請求項4】 請求項1、2または3記載のプリント配線板を、前記めっき用リードに交叉する切断線に沿って切断して各単位配線板に分離することを特徴とする単位配線板の製造方法。」
【2】引用例に記載された事項
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-122838号公報(以下、「引用例1」という。)及び特開平8-148770号公報(以下、「引用例2」という。)には、それぞれ以下の技術事項が記載されているものと認める。
(1)引用例1
イ)「【0004】また前記電子素子搭載用基板は通常、メタライズ配線層12の露出表面にニッケルや金等がメッキ方法によって層着されており、……メタライズ配線層12へのボンディングワイヤ14の接続及びメタライズ配線層12と外部電気回路基板の配線導体部との接合を強固なものとなしている。
【0005】更に前記電子素子搭載用基板に……電子素子を搭載して成る電子装置はその量産性を考慮し、通常、以下の方法によって多数個集約的に製作されている。
【0006】即ち、図3 に示す如く、(1) まず広面積のアルミナセラミックス等の電気絶縁材料から成る母基板21を準備する。
【0007】(2) 次に前記母基板21を仮想線Xにより複数個の電子素子搭載基板の形状に対応する小面積の領域22がマトリクス状に配列されるように区画する。
【0008】(3) 次に前記母基板21の各小面積の領域22に各々、複数のメタライズ配線層12を被着形成するとともに母基板21の外周部及び隣接する小面積の領域22間に共通配線層24を被着形成し、同時に各メタライズ配線層12の一部を共通配線層24にまで延出させて電気的に接続する。
【0009】(4) 次に前記母基板21をニッケルメッキ浴や金メッキ浴中に浸漬し、共通配線層24を介して全てのメタライズ配線層12に所定の電界を印加し、メタライズ金属層12の表面にニッケルや金から成るメッキ層を層着させる。
【0010】(5) 次に前記各小面積の領域22の中央部に……電子素子13を搭載固定し、電子素子13の各電極をボンディングワイヤ14を介して所定のメタライズ配線層12に接続する……。
【0011】(6) そして最後に母基板21を仮想線Xに沿って切断し、母基板21を小面積の領域22の個々に分離させて絶縁基体11と成し、絶縁基体11にメタライズ配線層12を被着させた電子素子搭載用基板とすることによって製品としての電子装置が多数個集約的に製作される。」
等の記載があり、併せて、図3を参照すると、引用例1には、
“アルミナセラミックス等の電気絶縁材料から成る母基板21に、メタライズ配線層12を有する電子素子搭載基板が複数個作り込まれ、該メタライズ配線層12のボンディングワイヤ14及び外部電気回路基板の配線導体部との接続部等の所要露出部に電界を印加してメッキ層を施すため、メタライズ配線層12をつなげる共通配線層24が形成されたメタライズ配線層12を有する母基板21において、前記共通配線層24は、電子素子搭載基板内のメタライズ配線層12間、および隣接する両電子素子搭載基板のメタライズ配線層12間をつなげるように設けられている母基板21.”
が記載されているものと認められる。
(2)引用例2
ロ)「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、基板上に複数の電極配線部を備え、隣合う電極配線部を分断することにより個々に回路配線基板としてのアクティブマトリクス基板が得られる配線基板に関するものである。」
ハ)「電極間に静電気が蓄積されないように、アクティブマトリクス基板101の周縁部にショートリング103が設けられているが、液晶駆動用のドライバー回路等を接続する液晶セル105を得るためには、ショートリング103を除去しなければならない。このため、液晶セルの製造工程において、ショートリング除去工程が必要となり、この結果、製造工程が繁雑となり、製造時間および製造費の増大を招いている。」(段落【007】参照)
ニ)「【0021】上記絶縁性基板1の分断線6近傍には、ITOからなり、分断線6に交差して、隣合う各アクティブマトリクス基板5のゲート電極配線2…およびソース電極配線3…を共通に接続して短絡するショートリング(導電体)7が形成されている。尚、上記のショートリングは、ITOのみならず、他の導体(メタル)や半導体(Si等)を使用しても良い。」
ホ)「【0022】ここで、上記マスター基板12の製造方法について、図2を参照しながら以下に説明する。
【0023】まず、絶縁性基板1上に、スパッタリング等により透明電極であるITO膜を形成した後、パターニングを行い、ゲート電極配線2…およびソース電極配線3を形成する。
【0024】次に、絶縁性基板1上に、上記のゲート電極配線2…およびソース電極配線3を共通に短絡するITOからなるショートリング7を、絶縁性基板1上のアクティブマトリクス基板5を分断するために形成された分断線6に交差して、隣合うアクティブマトリクス基板5間のゲート電極配線2…もしくはソース電極配線3…に交互に接続するように形成する。」
ヘ)「【0029】また、上記ショートリング7は、分断線6に交差して、隣合うアクティブマトリクス基板5のゲート電極配線2…あるいはソース電極配線3…に接続するように形成されているので、マスター基板12の分断時に、ショートリング7も同時に分断される。これにより、分断後の液晶セル8におけるマスター基板12上のショートリング7を除去する工程を無くすことができる。」
ト)「【0033】尚、本実施例におけるショートリング7は、図1に示すように、分断線6を中心軸とした矩形状であるが、これに限定するものではなく、例えば図3(a)に示すように、分断線6を中心軸としたのこぎり型のショートリング9であっても良く、また、図3(b)に示すように、分断線6を中心軸とした波型のショートリング10であっても良く、さらに、図3(c)に示すように、分断線6を中心軸としない繰り返し図形でない矩形状のショートリング11であっても良い。」
等の記載があり、併せて図1〜3を参照すると、引用例2には、
“マスター基板12に、ゲート電極配線2…もしくはソース電極配線3を有するアクティブマトリクス基板5が複数個作り込まれ、該ゲート電極配線2…もしくはソース電極配線3をつなげるショートリング7が形成された配線基板において、前記ショートリング7は、前記隣接するアクティブマトリクス基板5間に、アクティブマトリクス基板5内のゲート電極配線2…もしくはソース電極配線3間、および隣接する両アクティブマトリクス基板5のゲート電極配線2…もしくはソース電極配線3間をつなげると共に、両アクティブマトリクス基板5を分離する分断線6に対して交叉するよう曲折して設けられ、切断前にこれらつながれた配線パターンが同電位に維持できるようにされている配線基板.”
が記載されているものと認められる。
【3】対比・判断
本件請求項1に係る発明と上記引用例1に記載された発明とを対比すると、後者の母基板21、電子素子搭載基板、メタライズ配線層12、ボンディングワイヤ14及び外部電気回路基板の配線導体部との接続部、メッキ層、共通配線層24が、それぞれ、前者の「プリント配線板」、「単位配線板」、「配線パターン」、「端子部」、「電解めっき」、「めっき用リード」に対応し、両者は、
単層もしくは多層に形成された基板に、配線パターンを有する単位配線板が複数個作り込まれ、該配線パターンの端子部等の所要露出部に電解めっきを施すため、配線パターンをつなげるめっき用リードが形成されたプリント配線板において、
前記めっき用リードは、単位配線板内の配線パターン間、および隣接する両単位配線板の配線パターン間をつなげるように設けられているプリント配線板.
で一致し、次のA,Bの点で相違する。
A.基板が、本件請求項1に係る発明は「樹脂基板」であるのに対して、上記引用例1に記載されたものは、アルミナセラミックス等の電気絶縁材料から成る基板である点
B.めっき用リードが、本件請求項1に係る発明は、「前記隣接する単位配線板間に、単位配線板内の配線パターン間および隣接する両単位配線板の配線パターン間をつなげると共に、両単位配線板を分離する仮想切断線に対して交叉するよう曲折して設けられている」のに対して、上記引用例1に記載されたものは、このような構成でない点
4.そこで、先ず、上記相違点Aについて検討する。
基板を「樹脂基板」から構成することは、本件出願前周知の事項と認められる(例えば、特開平6-177545号公報、特開平9-107159号公報)から、上記相違点Aにおける本件請求項1に係る発明の構成は、周知事項に基づいて当業者が容易に想到し得るものである。
5.次に、上記相違点Bについて検討する。
上記引用例2に記載されたものにおけるマスター基板12、アクティブマトリクス基板5、ゲート電極配線2…もしくはソース電極配線3、分断線6が、それぞれ本件請求項1に係る発明の「プリント配線板」、「単位配線板」、「配線パターン」、「仮想切断線」に対応し、上記引用例2に記載されたものにおけるショートリング7は、本件請求項1に係る発明の「めっき用リード」と同様に、配線パターン(ゲート電極配線2…もしくはソース電極配線3)をつなげてこれらを同電位に維持できるようにしているから、上記引用例2には、基板に、配線パターンを有する単位配線板が複数個作り込まれ、該配線パターンをつなげるリードが形成された配線板において、前記リードを、前記隣接する単位配線板間に、単位配線板内の配線パターン間および隣接する両単位配線板の配線パターン間をつなげると共に、両単位配線板を分離する仮想切断線に対して交叉するよう曲折して設け、切断前にこれらつながれた配線パターンが同電位に維持できるようにした構成が記載されており、また、引用例1に記載された発明も引用例2に記載されたものも、配線パターンを有する単位配線板が複数個作り込まれ、該配線パターンをつなげて同電位にするリードが形成された配線板から、切断によって製造する単位配線板の技術に係るものであることに加えて、引用例2に記載されたものを引用例1に記載された発明に適用することを阻害する特段の事情もないから、上記相違点Bにおける本件請求項1に係る発明の構成、すなわち、「『めっき用リード』が、『前記隣接する単位配線板間に、単位配線板内の配線パターン間および隣接する両単位配線板の配線パターン間をつなげると共に、両単位配線板を分離する仮想切断線に対して交叉するよう曲折して設けられている』」構成は、引用例2に記載されたものに基づいて当業者が容易に想到し得るものである。
6.また、本件請求項1に係る発明による作用効果は、上記引用例1、2に記載されたもの及び周知の事項から予測し得る程度のものである。
7.よって、本件請求項1に係る発明は、上記引用例1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
【4】むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、請求項2〜4に係る発明について検討するまでもなく、本件特許出願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-01-29 
結審通知日 2002-02-05 
審決日 2002-02-18 
出願番号 特願平10-144425
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 豊島 ひろみ  
特許庁審判長 蓑輪 安夫
特許庁審判官 鈴木 法明
鈴木 久雄
発明の名称 プリント配線板、および単位配線板の製造方法  
代理人 綿貫 隆夫  
代理人 堀米 和春  

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