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審決分類 |
審判 一部申し立て 2項進歩性 G03B |
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管理番号 | 1056430 |
異議申立番号 | 異議2001-71063 |
総通号数 | 29 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1992-09-08 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2001-04-03 |
確定日 | 2001-12-03 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3098048号「閃光撮影のためのカメラシステム」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3098048号の請求項に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第3098048号の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という))は、平成3年1月28日に特許出願され、平成12年8月11日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、その特許について、特許異議申立人旭光学工業株式会社により特許異議の申立てがなされ、取消の理由が通知され、その指定期間内である平成13年8月21日に訂正請求がなされたものである。 2.訂正の適否についての判断 (1)訂正の内容 特許権者が求めている訂正の内容は以下のa乃至cのとおりである。 ア.訂正事項a 特許請求の範囲の請求項1を「撮影画面を複数の領域に分割して、各分割領域を別々に測光する測光回路と、該測光回路にて閃光撮影に先立って被写体に対しての投光を行わせた時の各領域での各測光値と、前記投光を行わない状態での各領域での各測光値を検知させる測光制御手段と、投光を行わない状態で検知された測光値と投光を行わせた時に検知された測光値との各領域での差を求め、この各領域毎の差の内最大の値とその他の領域の差との減算値が所定の値を超えている領域の数に基づいて閃光発光量を制御する発光量制御手段を設けたことを特徴とする閃光撮影のためのカメラシステム。」と訂正する。 イ.訂正事項b 明細書の段落【0011】について、「第1の発明は、撮影画面を複数の領域に分割して、各分割領域を別々に測光する測光回路と、該測光回路にて閃光撮影に先立って被写体に対しての投光を行わせた時の各領域での各測光値と、前記投光を行わない状態での各領域での各測光値を検知させる測光制御手段と、投光を行わない状態で検知された測光値と投光を行わせた時に検知された測光値との各領域での差を求め、この各領域毎の差の内最大の値とその他の領域の差との減算値が所定の値を超えている領域の数に基づいて閃光発光量を制御する発光量制御手段を設けたことを特徴とする閃光撮影のためのカメラシステムとするものである。」と訂正する。 ウ.訂正事項c 明細書の段落【0012】について、「上記第1、第2の発明では、各領域毎に投光と非投光時の測光値の差を求め、更に各領域毎の差の内最大の値とその他の領域の差との減算値が所定の値を超えている領域の数に基づいて(第1の発明)、あるいは該減算値を演算する演算手段を設けることで(第2の発明)、被写体の画面における状態を評価することができ、」と訂正する。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記訂正事項aは、訂正前の請求項1に限定を加えるもので特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 また、上記訂正事項b乃至cは上記訂正事項aの訂正に伴って、発明の詳細な説明の記載を適合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (3)むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き、第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.特許異議申立てについての判断 (1)特許異議申立ての理由の概要 特許異議申立人旭光学工業株式会社は、本件発明は、甲第1号証(特開昭55-135823号公報)に記載された発明(以下「引用発明」という)と同一であるか、または記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明の特許は特許法第29条第1項第3号、または特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、当該特許は取り消されるべきものである旨主張している。 (2)本件発明 上記2.で示したとおり、上記訂正は認められるから、本件発明は、平成13年8月21日付けの訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 請求項1「撮影画面を複数の領域に分割して、各分割領域を別々に測光する測光回路と、該測光回路にて閃光撮影に先立って被写体に対しての投光を行わせた時の各領域での各測光値と、前記投光を行わない状態での各領域での各測光値を検知させる測光制御手段と、投光を行わない状態で検知された測光値と投光を行わせた時に検知された測光値との各領域での差を求め、この各領域毎の差の内最大の値とその他の領域の差との減算値が所定の値を超えている領域の数に基づいて閃光発光量を制御する発光量制御手段を設けたことを特徴とする閃光撮影のためのカメラシステム。」 (3)引用発明 これに対して、甲第1号証には次の事項が記載されている。 ア.「被写界の複数領域又は複数点につき、それ等が実質上均一な光で照明された時と、定位置の閃光放電灯で照明された時とにつき、それ等の輝度を撮影位置で測光し、その結果を各領域又は点ごとに比較する測光比較手段と、その比較結果による前記領域間又は点間の相対位置に関する情報に基づき所要制御信号を選択する選択手段と、その制御信号に基づいて閃光放電灯の発光を制御する制御手段とを備えた閃光放電灯調光装置」(特許請求の範囲第1項) イ.「測光比較手段は、被写界の複数領域又は複数点が外光によって照明されている時、その領域または点の輝度を測光し、その測光結果を記憶する手段と、閃光放電灯を本発光とは別に発光せしめその光によって照明される前記複数領域又は複数点の輝度を測光し、その測光結果を記憶する・・・」(特許請求の範囲第3項) ウ.「被写界の複数領域又は複数点につきそれ等が、例えば自然光或は、多くの箇所から照明する室内照明等の如く、実質上均一とみなせる光で照明された時と、例えばカメラ上或いは適当なスタンド上等の定位置に配置された閃光放電灯で照明された時とにつき、それ等領域又は点の輝度を撮影位置で測光し、その測光結果を各領域又は点ごとに比較し、」(第2頁右上欄第10行〜第17行) エ.「どの領域についての前記の如き輝度比が最大であるかを見れば、被写界中のどの部分が閃光放電灯に近いかが検知でき、・・・輝度比の最大値検出、最近領域の選出、及び、選出された領域についての測光値を得、それに基づいて閃光放電灯の発光量を制御する」(第3頁右下欄第9行〜第18行) オ.「より実用的なやり方としては、閃光放電灯自体又はその他の補助光源を本発光の前に予備発光させ、その光を利用した測光により、領域の選択まで、或は、選択された領域の測光信号を得るまで(「までを」は、誤記と認める。)行なうのが望ましい。輝度比を得るには、ホトダイオード等の測光素子の出力を対数圧縮し、その差を得ればよい。」(第4頁左上欄第3行〜第10行) カ.「ホトダイオード(10)は比較的広い面を有し、その受光面は、例えば第1図に示す如く、5つの領域(a)(b)(c)(d)(e)に分割され、それ等は互に電気的に分離され、夫々が、独立したホトダイオード(11)(12)(13)(14)(15)として作用する。」(第4頁左下欄第6行〜第10行) キ.「第3図はカメラ側の回路部・・・を示している。第3図において、ホトダイオード(11)〜(15)は夫々演算増幅器(21)〜(25)の1対の入力端間に接続され、・・・各増幅器の出力端に、ホトダイオードの短絡電流の対数に比例する電圧が発生する。それ等、増幅器の出力電圧、即ち測光出力は、」(第4頁左下欄第13行〜右下欄第1行) ク.「レジスタ(51)〜(55)には、被写界が外光のみによって照明されている時のホトダイオード(11)〜(15)の出力に応じた信号が記憶され、レジスタ(61)〜(65)には被写界が外光及び閃光放電灯の光によって照明されている時のホトダイオード(11)〜(15)の出力に応じた信号が記憶されるよう、・・・。このようにしてレジスタ(51)〜(55)、(61)〜(65)に記憶された測光値は、比較回路(71)〜(75)によって同じ領域の測光値どうし比較され、それ等の差に応じた信号が夫々出力され、それ等差信号は、最大値検出回路(47)に入力される。」(第4頁右下欄第15行〜第5頁左上欄第9行) ケ.「最大値検出回路(47)は、比較回路(71)〜(75)のうち、最大の差値を出力したものを検出し、それについての信号をゲート回路(48)へ与え、・・・を通じて本発光制御回路に入力せしめる。」(第6頁左下欄第3行〜第12行) コ.「本発光制御回路(114)において測光回路(113)からの測光出力の積分を開始する。この積分量が、・・・入力される電圧信号に応じたレベルに達すると、本発光制御回路(114)から停止信号が出力され、それにより、発光停止回路(115)を介してサイリスタが遮断され、キセノン管による本発光が停止される。」(第7頁左上欄第10行〜第17行) 上記ア.〜コ.の記載事項によると、甲第1号証には 「被写界を複数領域(a)〜(e)に分割し、それ等が互いに電気的に分離され、夫々が独立したホトダイオード(11)〜(15)として作用し、該ホトダイオードからの各出力を演算増幅器(21)〜(25)に入力し、該増幅器の出力電圧として測光出力を得るようにした回路部を備え、 被写界が外光のみによって照明されている時のホトダイオード(11)〜(15)の出力に応じた信号がレジスタ(51)〜(55)に記憶される一方、被写界が外光及び本発光の前に予備発光せしめた閃光放電灯の光によって照明されている時のホトダイオード(11)〜(15)の出力に応じた信号がレジスタ(61)〜(65)に記憶され、前記レジスタ(51)〜(55)、(61)〜(65)に記憶された測光値が比較回路(71)〜(75)によって同じ領域の測光値どうし比較され、それ等の差信号を得、これ等差信号を最大値検出回路(47)に入力することによって、その中での最大の差値を出力したものを検出し、それについての信号を放電灯制御回路(114)に入力して本発光制御を行うようにした閃光放電灯調光装置。」が記載されていると認められる。 (4)対比・判断 上記認定事項から、引用発明における「被写界」「複数領域(a)〜(e)」「ホトダイオード(11)〜(15)」「本発光の前に予備発光せしめた閃光放電灯の光」「本発光制御」及び「閃光放電調光装置」は、それぞれ本件発明の「撮影画面」「複数の領域」「各分割領域を別々に測光する測光回路」「閃光撮影に先立って被写体に対しての投光」「閃光発光量を制御」及び「閃光撮影のためのカメラシステム」に相当する。 そして、上記記載事項ア.〜ウ.、及び本願明細書の段落【0051】における「各エリアの自然光での測光値とランプ照射時での測光値との差分であるσBxのうち最大のものを見つける」という記載によると、引用発明における「外光のみによって照明されている」状態、及び、本件発明における「投光を行わない状態」は、ともに被写体に対して自然光のみが照射されている状態を意味するから、引用発明における「外光のみによって照明されている時」は、本件発明における「投光を行わない状態」に相当する。 してみれば、引用発明における「測光出力を得るようにした回路部」「外光のみによって照明されている時のホトダイオード(11)〜(15)の出力に応じた信号」「外光及び本発光の前に予備発光せしめた閃光放電灯の光によって照明されている時のホトダイオード(11)〜(15)の出力に応じた信号」は、本件発明における「測光制御手段」「投光を行わない状態で検知された測光値」「閃光撮影に先立って被写体に対しての投光を行わせた時の各領域での各測光値」に相当する。 そこで、本件発明と引用発明とを対比すると、 「撮影画面を複数の領域に分割して、各分割領域を別々に測光する測光回路と、該測光回路にて閃光撮影に先立って被写体に対しての投光を行わせた時の各領域での各測光値と、前記投光を行わない状態での各領域での各測光値を検知させる測光制御手段と、投光を行わない状態で検知された測光値と投光を行わせた時に検知された測光値との各領域での差を求め、この各領域毎の差の内の最大の値に基づいて閃光発光量を制御するようにした閃光撮影のためのカメラシステム」である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点; 本件発明では、各領域毎の差の内最大の値とその他の領域の差の減算値が所定の値を超えている領域の数に基づいて閃光発光量の制御を行っているのに対して、引用発明では、該減算値を求める点、及び減算値が所定の値を超えている領域の数に基づいて閃光発光量を制御する点が記載されていない点。 上記相違点について検討する。 ア)本件発明と引用発明とが同一であるか否かについて 測光アルゴリズムとして、各領域毎の差の内の最大値とその他の領域の差との減算値を求める点、該減算値が所定の値を超えている領域の数を求める点、及び該領域の数と各領域毎の差の内の最大の値とに基づいて閃光発光量を制御する点は、甲第1号証には記載がなく、また記載された事項から当業者が自明に導き出すことができるものでもない。したがって、本件発明は引用発明と同一であるということはできない。 イ)引用発明から本件発明が容易に想到可能か否かについて 引用発明は、主被写体の画面内の位置に関わりなく常に適正な露光を得るために(甲第1号証の第2頁左下欄第19行〜右下欄第7行、第7頁右上欄第7行〜第11行)、最大値を与える特定の領域の測光値のみを用いて閃光発光量を制御するものであるから、本件発明における「各領域毎の差の内最大の値とその他の領域の差との減算値が所定の値を超えている領域の数に基づいて閃光発光量を制御する」という本件発明の思想は引用発明には存在しない。 そして、本件発明は、主被写体の画面内の位置のみならず、主被写体の存在しないエリアの大きさを判断し、その判断結果に基づいて閃光発光量の制御を行っているのであるから、被写体の状態をより適切に反映した適正露光の閃光撮影を行うことができる点で引用発明に比べて顕著な効果を有すると認められる。 以上のとおりであるから、本件発明は引用発明に基いて当業者が容易に想到し得たということはできない。 4.むすび したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明についての特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明について特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 カメラシステム (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 撮影画面を複数の領域に分割して、各分割領域を別々に測光する測光回路と、該測光回路にて閃光撮影に先立って被写体に対しての投光を行わせた時の各領域での各測光値と、前記投光を行わない状態での各領域での各測光値を検知させる測光制御手段と、投光を行わない状態で検知された測光値と投光を行わせた時に検知された測光値との各領域での差を求め、この各領域毎の差の内最大の値とその他の領域の差との減算値が所定の値を超えている領域の数に基づいて閃光発光量を制御する発光量制御手段を設けたことを特徴とする閃光撮影のためのカメラシステム。 【請求項2】 撮影画面を複数の領域に分割して、各分割領域を別々に測光する測光回路と、該測光回路にて閃光撮影に先立って被写体に対しての投光を行わせた時の各領域での各測光値と、前記投光を行わない状態での各領域での各測光値を検知させる測光制御手段と、投光を行わない状態で検知された測光値と投光を行わせた時に検知された測光値との各領域での差を求め、この各領域毎の差の内最大の値とその他の領域の差との減算値を演算する演算手段と、該演算値に基づいて閃光発光量を制御する発光量制御手段を設けたことを特徴とする閃光撮影のためのカメラシステム。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は閃光撮影のためのカメラシステムに関する。 【0002】 【従来の技術】 従来より被写体に向けて閃光発光を行い、被写体の反射光を測光し発光量を制御する閃光発光調光カメラは数多く提案されている。これらほとんどのカメラは、測光センサー一つで画面を中央重点測光して調光を行っている。そのため、主被写体が画面中央に位置し画面上適当な大きさであれば適正露出が得られるが、主被写体画面中央に位置してないときや画面上かなり小さかったりすると、測光センサーは背景の影響を大きく受け、適正露出が得られなかった。 【0003】 特開昭60-108827号公報では、画面上を複数に分割し複数の測光センサーの情報より発光量を制御するマルチ調光カメラが提案されている。 【0004】 この提案により主被写体の位置や大きさに関係なく、適正露出を得る確率が高まったが、画面内のどの部分に重点を置いて測光するかを、外部操作により設定しなければならず、操作が面倒であるという欠点があった。 【0005】 本出願人は本願に先行して開発した閃光発光調光カメラシステムにおいて、複数エリアの測光手段とその対応するエリアの測距手段を設け、各エリアの被写体焦点情報に基づいて複数エリアの測光情報を評価し、発光量を制御するマルチ調光カメラシステムを提案した。 【0006】 この提案により主被写体の位置や大きさをカメラが自動的に判断し、適正露出を得ることが可能となった。 【0007】 また特開昭60-108827号公報によれば、画面上を複数に分割して自然光状態の被写体を測光する手段と、閃光発光時に被写体からの反射光を測光する手段を設け、複数に分割して測光した値より、被写体の状況を判断して、閃光発光時の測光値を評価して発光量を決定している。この提案によれば、やはり主被写体の位置や大きさを判断し、また背景の様子を予想して適正露出を実現する事ができる。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、前述の閃光発光時に被写体からの反射光を各エリアごとに測光することは、カメラ内にセンサーを複数用意する事になり、部品コストが上がり、また制御も複雑になるという欠点がある。 【0009】 また特開昭60-108827号公報では、効果があるのは主被写体と背景の輝度差が大きい時などに限定され、さまざまな撮影状況に対応していないという欠点があった。 【0010】 本出願に係る発明の目的は、前述の欠点を有さず、どんな条件の時でも適正露光が得られるように発光制御する閃光撮影のためのカメラシステムを提供することである。 【0011】 【課題を解決するための手段】 第1の発明は、撮影画面を複数の領域に分割して、各分割領域を別々に測光する測光回路と、該測光回路にて閃光撮影に先立って被写体に対しての投光を行わせた時の各領域での各測光値と、前記投光を行わない状態での各領域での各測光値を検知させる測光制御手段と、投光を行わない状態で検知された測光値と投光を行わせた時に検知された測光値との各領域での差を求め、この各領域毎の差の内最大の値とその他の領域の差との減算値が所定の値を超えている領域の数に基づいて閃光発光量を制御する発光量制御手段を設けたことを特徴とする閃光撮影のためのカメラシステムとするものである。 第2の発明は、撮影画面を複数の領域に分割して、各分割領域を別々に測光する測光回路と、該測光回路にて閃光撮影に先立って被写体に対しての投光を行わせた時の各領域での各測光値と、前記投光を行わない状態での各領域での各測光値を検知させる測光制御手段と、投光を行わない状態で検知された測光値と投光を行わせた時に検知された測光値との各領域での差を求め、この各領域毎の差の内最大の値とその他の領域の差との減算値を演算する演算手段と、該演算値に基づいて閃光発光量を制御する発光量制御手段を設けたことを特徴とする閃光撮影のためのカメラシステムとするものである。 【0012】 【作用】 上記した第1、第2の発明では、各領域毎に投光と非投光時の測光値の差を求め、更に各領域毎の差の内最大の値とその他の領域の差との減算値が所定の値を超えている領域の数に基づいて(第1の発明)、あるいは該減算値を演算する演算手段を設けることで(第2の発明)、被写体の画面における状態を評価することができ、例えば、画面の一部の近距離にのみ被写体が位置しているときは、その領域での投光と非投光時の差が他の領域の差よりも大きくなる。 従って、画面の状態をこの差に応じて推定することができ、このような場合(その領域での投光と非投光時の差が他の領域の差よりも大きくなる。)は、その領域以外の領域は対象物が存在していない状況であるので、その領域以外の領域が適正露光となるように光量を制御すると、前記の近距離の対象がオーバー露光となるので、アンダー気味に露光を行わせるように光量の制御を行わせれば、被写体に対して適性な露光を与えることができる事となる。 【0013】 【0014】 【0015】 【0016】 【0017】 【0018】 【0019】 【0020】 【0021】 【実施例】 図2は本発明を実施したカメラの電気制御ブロック図である。 【0022】 1はマイクロコンピューターでカメラ各部の動きを制御する。 【0023】 2はレンズ制御回路で、不図示の撮影レンズの距離環と絞りを制御する。レンズ制御回路2はマイクロコンピューター1からのLCOM信号を受けている間、DBUSを介しシリアル通信を行う。レンズ制御回路2はこの通信内容により不図示のモーターを制御し、距離環と絞りを制御する。また、マイクロコンピューター1はレンズの焦点距離情報や、距離情報、その他各種補正情報などを受け取る。 【0024】 3は液晶表示回路で、シャッタースピードや絞り制御値などのカメラの各撮影情報を表示する回路である。液晶表示回路3はマイクロコンピューター1からのDPCOM信号を受けている間、DBUSを介しシリアル通信を行う。液晶表示回路3はこの通信内容により液晶表示を行う。 【0025】 4はスイッチセンス回路であり、液晶表示回路3とともに常に電源が供給されており、カメラのレリーズボタンの第1ストロークと連動しているスイッチsw1やその他不図示の露出モードを決めるスイッチやAFのモードを決めるスイッチなどを常に読みとることが出来る。スイッチが切り替わると、スイッチセンス回路4は不図示のDC/DCコンバータに信号を送り、DC/DCコンバータを起動させる。DC/DCコンバータはマイクロコンピューター1を初めとするその他の回路に電源を供給する。スイッチセンス回路4はマイクロコンピューター1からのSWCOM信号を受けている間、DBUSを介しシリアル通信を行う。スイッチセンス回路4はマイクロコンピューター1よりDC/DCオフの命令を受け取ると、DC/DCコンバータの出力をオフにさせる。また、マイクロコンピューター1は各スイッチ情報を受け取る。 【0026】 5はストロボ発光制御回路であり、ストロボの発光と調光を制御する回路であり、発光のための電荷を蓄えるための回路、発光部であるキセノン管、トリガー回路、発光を停止させる回路、フィルム面反射光測光回路、積分回路など既存の回路からなる。 【0027】 X接点はシャッターユニットの先幕走行によりONする。ストロボ発光制御回路5はX接点がONすることでストロボの閃光を開始させる。 【0028】 6は焦点検出ユニットで、被写体が撮影レンズによりどの位置に焦点を結んでいるかを既存の位相差検出法で判別するための回路である。マイクロコンピューター1は焦点検出ユニット6を駆動し、被写体の焦点状態を判別してレンズ距離環の駆動や合焦判別を行う。 【0029】 7は測光回路で、図3に示すように画面を複数のエリアA0〜A5に分割し、各エリアの被写体の輝度をTTL測光し、マイクロコンピューター1に送る役目をする。 【0030】 8はシャッター制御回路で、マイクロコンピューター1の制御信号に従って不図示のシャッターユニットの制御を行う。 【0031】 9は給送回路で、マイクロコンピューター1の制御信号に従って、不図示の給送モーターを制御してフィルムの巻き上げ、巻き戻し、を行う。 【0032】 10はランプ回路であり、マイクロコンピューター1のLAMP信号によって被写体に向けてランプを点灯する。このランプはストロボ発光撮影時の赤目緩和用であり、露光動作に先立って数秒点灯する。 【0033】 スイッチsw2はカメラのレリーズボタンの第2ストロークと連動していて、スイッチsw2がONするとマイクロコンピューター1は露光動作を開始させる。 【0034】 次に、図2を参照してマイクロコンピューター1の動作を説明する。 【0035】 前述のように、スイッチが切り替わるとDC/DCコンバータが起動し、マイクロコンピューター1の動作が始まる。このときRAM上にある各フラグは0にクリアされる。 【0036】 まずカメラが動作を始めると、マイクロコンピューター1はスイッチセンス回路4と通信を行い、各種スイッチを読む(S1)。 【0037】 S2でAFLOCK FLGが1であれば、すでに焦点検出が終わりAFロックの状態なのでS15へ進む。 【0038】 つぎにマイクロコンピューター1は焦点検出ユニット6を駆動し、被写体の焦点を検出し、レンズ制御回路2と通信を行うことにより被写体に合焦するようレンズ距離環を駆動する(S3)。 【0039】 AFのモードが、一度合焦するとAFロックするワンショットAFモードであれば、ここでAFLOCK FLGを1とする。ワンショットAFモードでないときはAFLOCK FLGを0とする(S4-S6)。 【0040】 そして、マイクロコンピューター1は測光回路7を用い、図3に示すように複数のエリアA0〜A5の被写体の測光を行う(S7)。 【0041】 ここで、LAMP FLGが1であれば(S8)、すでに赤目緩和用ランプが点灯されているのでS13に進む。LAMP FLGが0であれば、マイクロコンピューター1は、各エリアA0〜A5の測光値をRAM上に記憶し(S9)、LAMP信号をONすることにより赤目緩和用ランプを点灯し(S10)、LAMPFLGを1にして(S11)ランプタイマをスタートさせる(S12)。 【0042】 S13では、S7で測光した各エリアの測光値に基づいて所定のアルゴリズムによって適正露光量を決定し、スイッチなどで設定された露出モードに基づいてシャッター速度と絞り値などを決定する。 【0043】 次に、液晶表示回路3を用いて、シャッター秒時、絞り、その他の各撮影条件の表示を行う(S14)。 【0044】 ここで、スイッチsw1がOFFになっていれば(S15)、マイクロコンピューター1は赤目緩和用ランプを消灯し(S16)、DC/DCコンバータをOFFさせて(S24)、動作を終了させる。 【0045】 S15でスイッチsw1がONになっていれば、マイクロコンピューター1はランプタイマを見て(S17)、所定の時間がきていなければS1に戻り前述のシーケンスを繰り返す。所定の時間がきていれば今度はスイッチsw2を見て(S18)、OFFであればやはりS1に戻る。これは人間の瞳孔が光に反応して閉じるのに時間がかかるので、レリーズしてストロボ撮影するのに赤目緩和の効果が充分にでるのを待つためである。 【0046】 S18でスイッチsw2がONであれば、S19以降のレリーズシーケンスに進む。 【0047】 レリーズシーケンスに入るとマイクロコンピューター1は赤目緩和ランプが点灯した状態で再び測光回路7を用い、図3に示す複数のエリアA0〜A5の被写体の測光を行う(S19)。そこで、各エリアA0〜A5の測光値とS9で記憶した各エリアA0〜A5の測光値とのそれぞれ差分σBxを演算し、後述するアルゴリズムにより調光補正量σLを演算する。そしてISO感度その他に基づいたストロボ発光量を適正露光量とする調光値しにσLを加算した値を調光情報として、通信によりストロボ発光制御回路5に送る(S20)。 【0048】 そして、LAMP信号をOFFすることによって赤目緩和用ランプを消灯し(S21)、レンズ制御回路2と通信することにより絞り制御を行い、シャッター制御回路8を駆動することによりシャッター制御を行う(S22)。このときストロボ発光制御回路5は、シャッターユニットの先幕走行でX接点がONするとストロボの閃光を開始させる。同時にフィルム面反射光の測光と積分を開始し、前記調光情報に基づいて適正露光量でストロボの発光を停止させる。 【0049】 露光動作が完了すると、マイクロコンピューター1は給送回路9を駆動し、次の撮影のためにフィルムを一駒分給送し(S23)、DC/DCコンバータをOFFさせて(S24)、動作を終了させる。 【0050】 次に調光補正量σLを求めるアルゴリズムを詳しく述べる。 【0051】 まず、各エリアの自然光での測光値とランプ照射時での測光値との差分であるσBxのうち最大のものを見つける。そのmaxσBxと各σBxとの差を求め、その値に各エリアごとの係数κxを掛け合わせ、それらをたし合わせて評価値Vを求める。 【0052】 V=Σ(maxσBx-σBx)κx κxは赤目緩和用ランプの測光センサーの各エリアA0〜A5に対応した照射光度、及び、測光センサーの各エリアにおけるフィルム面測光回路の感度割合とから求められる係数である。したがって、カメラの光軸に垂直に相対する一様な白壁に向けてランプを照射し、そのときのσBxをそれぞれ求めた上、測光センサーの各エリアの感度分布と、フィルム面測光回路の感度分布を求める事で実験的にκxを求める事ができる。 【0053】 そして、表1のように評価値Vの値によって、調光補正量σLの値を求める。すなわち評価値が高いほど、補正量が大きくなる。 【0054】 【表1】 【0055】 このアルゴリズムによれば、σBxのうち最大の値をとるエリアにカメラから最至近の被写体が存在すると考えられるので、これを主被写体とし、この主被写体を適正露光にするために、それ以外のエリアのσBxをmaxσBxと比較し、その値がフィルム面測光回路にとってどれだけの影響を与えるのかという係数κxを掛け合わせたものをたし合わせて、評価値Vを算出している。 【0056】 したがって、主被写体の存在しないエリアのσBxが小さいほど、また、主被写体の存在しないエリアがフィルム面測光回路にとって感度が高く、もしくは、ランプの照射光度が高いほどκxが大きくなり、評価値Vが大きくなる。評価値Vが大きくなると、ストロボを発光したときの主被写体の輝度に対してフィルム面測光回路の受光する光量が少なくなるため、調光量Lに補正を与えないでいると、主被写体は露光オーバーとなってしまう。よって、評価値Vに応じて調光量をアンダー方向に補正する事により、主被写体を適正露光量に持っていく事ができる。 【0057】 補足として、σBxの最大値を求めるのに、エリアごとに照射光度が違うため、このままでは主被写体の存在するエリアを正しく認識できない場合がある。よって、σBxに照射光度に比較した係数を掛けて、その最大値を求めるようにしても良い。 【0058】 つぎに調光補正量σLを求める他のアルゴリズムを説明する。 【0059】 まず各エリアの自然光での測光値とランプ照射時での測光値との差分であるσBxのうち最大のものを見つける。そしてmaxσBxと各σBxとの差を求め、その値が所定の値を越えているかを判断する。その所定の値を越えているエリアの数をdとしたときに、dの値によって調光補正量σLの値を求める。表2のように、dの値が大きいほど補正量が大きくなる。 【0060】 【表2】 【0061】 このアルゴリズムによれば、主被写体のいないエリアが大きいほど、dの値が大きくなり、ストロボを発光したときの主被写体の輝度に対してフィルム面測光回路の受光する光量が少なくなるため、調光量Lに補正を与えないでいると、主被写体は露光オーバーとなってしまう。よって、評価値Vに応じて調光量をアンダー方向に補正する事により、主被写体を適正露光量に持っていく事ができる。また補足として、dの値を単純なエリアの数とせず、測光センサー各エリアにおけるフィルム面測光回路の感度割合、各エリアの画面上での面積、その他から求められる係数jxを、(maxσBx-σBx)が所定の値を越えたエリアだけたし合わせた値とすれば、主被写体の存在するエリアに依存せず、さらに確実に主被写体を適正露光量に持っていく事ができる。 【0062】 また実施例では、赤目緩和用ランプによって被写体を露光動作の前に照射しているが、これは赤目緩和用ランプに限定しなくとも、LEDでもよいしストロボを前もって発光させるという事でも、同様な効果を得る事ができる。 【0063】 【発明の効果】 以上説明したように、本発明によれば、常に適正露光の閃光撮影が行える。 【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明を実施したカメラシステムの制御動作を示すフローチャート。 【図2】 本発明を実施したカメラシステムの制御系の構成を表わしたブロック図。 【図3】 図2の測光回路における測光エリアの一例を示した図。 【符号の説明】 1…マイクロコンピューター 2…レンズ制御回路 3…液晶表示回路 4…スイッチセンス回路 5…ストロボ発光制御回路 6…焦点検出ユニット 7…測光回路 8…シャッター制 9…給送回路 10…ランプ回路 |
訂正の要旨 |
(訂正の要旨) ア.訂正事項a 特許請求の範囲の請求項1を「撮影画面を複数の領域に分割して、各分割領域を別々に測光する測光回路と、該測光回路にて閃光撮影に先立って被写体に対しての投光を行わせた時の各領域での各測光値と、前記投光を行わない状態での各領域での各測光値を検知させる測光制御手段と、投光を行わない状態で検知された測光値と投光を行わせた時に検知された測光値との各領域での差を求め、この各領域毎の差の内最大の値とその他の領域の差との減算値が所定の値を超えている領域の数に基づいて閃光発光量を制御する発光量制御手段を設けたことを特徴とする閃光撮影のためのカメラシステム。」と訂正する。 イ.訂正事項b 明細書の段落【0011】について、「第1の発明は、撮影画面を複数の領域に分割して、各分割領域を別々に測光する測光回路と、該測光回路にて閃光撮影に先立って被写体に対しての投光を行わせた時の各領域での各測光値と、前記投光を行わない状態での各領域での各測光値を検知させる測光制御手段と、投光を行わない状態で検知された測光値と投光を行わせた時に検知された測光値との各領域での差を求め、この各領域毎の差の内最大の値とその他の領域の差との減算値が所定の値を超えている領域の数に基づいて閃光発光量を制御する発光量制御手段を設けたことを特徴とする閃光撮影のためのカメラシステムとするものである。」と訂正する。 ウ.訂正事項c 明細書の段落【0012】について、「上記第1、第2の発明では、各領域毎に投光と非投光時の測光値の差を求め、更に各領域毎の差の内最大の値とその他の領域の差との減算値が所定の値を超えている領域の数に基づいて(第1の発明)、あるいは該減算値を演算する演算手段を設けることで(第2の発明)、被写体の画面における状態を評価することができ、」と訂正する。 |
異議決定日 | 2001-11-07 |
出願番号 | 特願平3-8642 |
審決分類 |
P
1
652・
121-
YA
(G03B)
|
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 柏崎 康司 |
特許庁審判長 |
末政 清滋 |
特許庁審判官 |
柏崎 正男 北川 清伸 |
登録日 | 2000-08-11 |
登録番号 | 特許第3098048号(P3098048) |
権利者 | キヤノン株式会社 |
発明の名称 | 閃光撮影のためのカメラシステム |
代理人 | 岸田 正行 |
代理人 | 岸田 正行 |
代理人 | 水本 敦也 |
代理人 | 小花 弘路 |
代理人 | 水本 敦也 |
代理人 | 鈴木 章夫 |
代理人 | 小花 弘路 |