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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  H01B
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  H01B
審判 一部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  H01B
管理番号 1056504
異議申立番号 異議2001-70564  
総通号数 29 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-02-20 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-02-21 
確定日 2001-12-19 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3078765号「化合物超伝導線及び化合物超伝導線の製造方法」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 本件特許異議の申立てを却下する。 
理由 [1]手続の経緯
本件特許第3078765号の手続の経緯は、次のとおりである。
出願日 昭和62年 3月13日
(原出願の出願日)
設定登録 平成12年 6月16日
公報発行 平成12年 8月21日
特許異議申立 平成13年 2月21日
取消理由通知 平成13年 6月20日付
訂正請求1 平成13年 8月27日
特許異議意見書 平成13年 8月27日
取消理由通知 平成13年11月28日付
訂正請求1取下 平成13年11月28日
訂正請求2 平成13年11月28日
[2]訂正の適否についての判断
ア.訂正の内容
特許権者が求めている訂正の内容は、以下のとおりである。
訂正事項a
特許請求の範囲の元の請求項1〜2を、削除する。
訂正事項b
上記訂正事項aにより、請求項1〜3を引用していた請求項4中の請求項1〜2の引用部分を新たに請求項1〜2として、下記のとおりに独立して記載する。
「【請求項1】酸化物超伝導体と、前記酸化物超伝導体を取り囲む銀または銀合金からなるシース材とを備え、断面形状がリボン状であることを特徴とする化合物超伝導線。
【請求項2】酸化物超伝導体と、前記酸化物超伝導体を取り囲む銀または銀合金からなるシース材とを備えた化合物超伝導単芯線を複数有し、断面形状がリボン状であることを特徴とする化合物超伝導線。」
訂正事項c
上記訂正事項bにより、請求項4中の請求項1〜2を引用していた部分が独立記載されたことに整合させて、請求項4中の「請求項1乃至請求項3のいずれか記載の化合物超伝導線。」を、「請求項3記載の化合物超伝導線。」と訂正する。
訂正事項d
明細書【0005】中の「前記酸化物超伝導体を取り囲む金属シース材とを備え」の記載を、「前記酸化物超伝導体を取り囲む銀または銀合金からなるシース材とを備え」と訂正すると共に、「ここで、金属シース材は銀または銀合金であってよい。」の記載を削除する。
訂正事項e
明細書【0019】【0021】【0023】【0025】【0028】中の「実施の形態」を、「参考例」と訂正する。
明細書【0029】【0031】【0033】【0035】【0037】中の「実施の形態-6」を、「実施の形態-1」と訂正する。
明細書【0031】の「実施の形態-7」を、「実施の形態-2」と、明細書【0033】の「実施の形態-8」を、「実施の形態-3」と、明細書【0035】の「実施の形態-9」を、「実施の形態-4」と、明細書【0037】の「実施の形態-10」を、「実施の形態-5」と訂正する。
明細書【003】【0042】【0044】【0046】中の「実施の形態-11」を、「参考例-6」と訂正する。
明細書【0042】の「実施の形態-12」を、「参考例-7」と、明細書【0044】の「実施の形態-13」を、「参考例-8」と、明細書【0046】の「実施の形態-14」を、「参考例-9」と訂正する。
イ.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項aは、請求項1〜2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ新規事項を追加するものでも実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。
上記訂正事項bは、上記訂正事項aに整合させて、請求項4中の請求項1〜2を引用していた部分を新たに請求項1〜2として、単に独立して記載すると共に、請求項2中の「化合物超電導単芯線」の記載を、他の記載に整合させて「化合物超伝導単芯線」と訂正するものにすぎないから、明りようでない記載の釈明を目的とするものであり、かつ新規事項を追加するものでも実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。
上記訂正事項cは、上記訂正事項bにより請求項4中の請求項1〜2を引用していた部分が独立記載されてことに整合させて、請求項4中の引用請求項を単に訂正するものにすぎないから、明りようでない記載の釈明を目的とするものであり、かつ新規事項を追加するものでも実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。
上記訂正事項dは、上記訂正事項bにより新たに請求項1〜2として、独立記載されたことに整合させて、発明の詳細な説明の記載を訂正するものにすぎないから、明りようでない記載の釈明を目的とするものであり、かつ上記訂正事項bの場合と同様に新規事項を追加するものでも実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。
上記訂正事項eは、上記訂正事項aにより、請求項1〜2が削除されたことに整合させて、実施の形態に該当しなくなったものを、単に参考例に訂正するものにすぎないから、明りようでない記載の釈明を目的とするものであり、かつ上記訂正事項aの場合と同様に新規事項を追加するものでも実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。
ウ.訂正の適否についての結論
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び第3項で準用する第126条第2-3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
[3]特許異議申立についての判断
異議申立がなされた元の請求項1乃至2に係る発明は、訂正の結果削除され、特許異議の申立ての対象が存在しないので、この特許異議の申立ては、不適法な申立てであって、その補正をすることができないものである。
したがって、本件特許異議の申立ては、特許法第120条の6第1項で準用する第135条の規定によって却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
化合物超伝導線及び化合物超伝導線の製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 酸化物超伝導体と、
前記酸化物超伝導体を取り囲む銀または銀合金からなるシース材とを備え、断面形状がリボン状であることを特徴とする化合物超伝導線。
【請求項2】 酸化物超伝導体と、前記酸化物超伝導体を取り囲む銀または銀合金からなるシース材とを備えた化合物超伝導単芯線を複数有し、
断面形状がリボン状であることを特徴とする化合物超伝導線。
【請求項3】 前記金属シース材内部に前記酸化物超伝導体を形成するための原料を充填した部材を作成する第1工程と、前記部材を減面加工する第2工程と、前記減面加工された部材に酸化性雰囲気で加熱処理を施し、前記金属シース材内部に前記酸化物超伝導体を形成する第3工程とにより製造されたことを特徴とする請求項1記載の化合物超伝導線。
【請求項4】 前記金属シース材が銀または銀合金であることを特徴とする請求項3記載の化合物超伝導線。
【請求項5】 金属シース材内部に酸化物超電導体を形成するための原料を充填した部材を作成する第1工程と、
前記部材を減面加工し、断面形状をリボン状とする第2工程と、
前記減面加工された部材に酸化性雰囲気で加熱処理を施し、前記金属シース材内部に酸化物超伝導体を形成する第3工程とを有することを特徴とする化合物超伝導線の製造方法。
【請求項6】 前記金属シース材が銀または銀合金であることを特徴とする請求項5記載の化合物超伝導線の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、化合物超伝導線に係り、特に酸化物超伝導体を用いた化合物超伝導線の製造方法及び酸化物超伝導体を用いた場合に好適な化合物超電導線の構造に関する。
【0002】
【従来の技術】化合物超伝導体としては金属系のA15型、B1型、シェブレル型、ラーベス型、また酸化物セラミック系のペロブスカイト型、層状ペロブスカイト型等の結晶構造に属するものが知られている。これらの中でもLa-Ba-Cu-O系に代表される層状ペロブスカイト型等の酸化物超伝導体では臨界温度が30K以上、またY-Ba-Cu-O系のようなペロブスカイト,層状ペロブスカイト等の多相からなる酸化物超電導体では臨界温度90Kを超えるものが得られるため非常に有望な材料である。しかしながらこれらの酸化物超伝導体は従来、焼結によるペレット状のものしかできなかった。また超電導マグネット等の応用を考慮した場合は超伝導体の線材化が必要である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このように酸化物超伝導体は非常に有望な材料であるが、線材への加工ができなかったために超電導マグネット等への応用が困難であった。
【0004】そこで本発明は、線材等への加工が容易な酸化物超伝導体を用いて化合物超伝導線を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本願発明の化合物超伝導線は、酸化物超伝導体と、前記酸化物超伝導体を取り囲む銀又は銀合金からなるシース材とを備え、断面形状がリボン状であることを特徴とする。また、酸化物超伝導体と、前記酸化物超伝導体を取り囲む金属シース材からなる超伝導単芯線を複数束ねたものであって、断面形状がリボン状であるものであってもよい。
【0006】本発明の化合物超伝導線にあっては、金属シース材内部に酸化物超伝導体を形成するための原料を充填した部材を作成する第1の工程と、この後、前記部材を減面加工する工程と、前記減面加工された部材に酸化性雰囲気で加熱処理を施し、前記金属シース材内部に酸化物超電導体を形成する第2の工程とにより製造されたことを特徴とする。ここで、金属シース材は銀または銀合金であってよい。
【0007】各工程について第1図を用いて詳細に説明する。第1図は各工程を示す線材の断面図である。
【0008】第1の工程で用いる原料としては第3の工程で、例えばLa-Sr-Cu-O,La-Ba-Cu-O系に代表される層状ペロブスカイト型(La1-xM)2CuO4(M;Ba,Sr,Ca)の他、Y-Ba-Cu-O系、Sc-Ba-Cu-O系等の連続した酸化物超伝導体が形成できればどのようなものでも良い。例えば、La、Y,Sc、M、Cu単体若しくは酸化物、さらには加熱により酸化物に転じる炭酸塩、硝酸塩、水酸化物等を用い、これらを化学量論比に合うように混合したものを原料として用いることができる。またこの混合物を仮焼し粉砕したものを原料として用いても良い。
【0009】この原料をシース材内部に埋め込む(第1図)(a))。シース材としては、電気抵抗が低く、熱伝導性に優れたものが好適であり、例えば銅、銀、金及びこれらを主体とした合金があげられる。このシース材は超伝導線を形成した場合の安定化材となる。また埋め込む原料形態であるが、粉体でもよいし線状でも良い。例えばLa,Ba,Cuの夫々の金属線を同時に埋め込むこともできる。
【0010】次に第2の工程である。この工程では第1の工程で所望の加工が施せれた部材に酸素含有雰囲気中で加熱処理を施し、シース材内部に充填された原料を連続した化合物超伝導体とする(第1図(c))。この加熱処理温度は酸化物超伝導体が形成できるように適宜設定できるが、シース材の融点が実質的な上限温度となる。また下限は特に設定しないが、酸化物超伝導体を形成するためには、実用上500℃以上が必要である。
【0011】以上安定化材となるシース材内部に一つの超伝導体を含む単芯線について説明したが、シース材内部に複数の穴を設けて夫々に原料を埋め込んでも良いし、単芯線を更に複数本束ねて再度安定化材に組み込んで多芯線を構成しても良い。
【0012】なお、第2の工程を行う前には、第1の工程で得られた部材に、押し出し、スェージング、線引き等の手法で減面加工を施し、所望の線径の線材を得る(第1図(b))。超伝導線の形態としては断面円形に限らず、リボン状等種々の形態が考えられる。
【0013】さて第2の工程の加熱処理による酸化物超伝導体の生成であるが、シース材と原料との間に構成元素、例えばCu,O等、の拡散が生じると所定の化学量論比からのズレが生じてしまい、超伝導特性を劣化させてしまう恐れがある。また、安定化材としての役割を果たすシース材にしても原料側からの酸素等の拡散が顕著となると、電気抵抗の上昇、熱伝導性の低下等の問題が生じる。従ってこのような問題が生じる恐れがある場合は、シース材と原料の間に拡散を防止するバリヤ材を介在させることにより、この拡散による悪影響を防止することができる。
【0014】このバリヤ材としては例えばステンレス、銀、金、白金等が挙げられる。特にシース材として銅または銅合金を用いた場合、La-Ba-Cu-O系等の銅含有酸化物超伝導体の酸素、銅の拡散による超伝導体側の化学量論比からのズレ、及びシース材中への酸素の拡散による熱伝導率の低下を防止する効果が顕著である。
【0015】この様なバリヤ材を用いる場合は、第1の工程で原料をバリヤ材で囲む。又は、シース材の内面をバリヤ材で構成するなどの手法を取れば良い。この様子を第2図に示す。
【0016】また原料の調合具合、加熱処理条件等によっては酸化物超伝導体が所定の超伝導特性を発揮するのに必要な化学量論比から、酸素が不足した形となる場合がある。この様な場合は原料に十分な酸素を供給できるように、シース材の一部を線材の長手方向に沿って削除し、原料が加熱処理時に外部の酸化性雰囲気と接触できるようにすることが好ましい(第3図(a))。また前途の如くバリヤ材を設けた場合は、このバリヤ材の一部も除去して加熱処理を行なう(第3図(b))。
【0017】なおシース材としてAg又はAg合金を用いた場合は、Agが酸素を拡散し易く、かつAg自体は酸化しにくいため、加熱処理時に外部から原料に十分な酸素を供給できるため上述のような問題が生じにくい。このようにAgシースを用いた場合は、酸素雰囲気、大気中等の酸化性雰囲気中、500〜940℃程度で前記加熱処理を行なうことが好ましい。あまり加熱処理温度が低いと酸素の拡散が遅く、あまり高温の加熱処理では素材が変形し易くなる。
【0018】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施例を説明する。
【0019】参考例-1
La2 O3,SrO,CuOをCuO1モルに対してLa2 O30.9モル、SrO0.2モルの割合でボールミルを用いて混合した。この混合物を900℃で仮焼した後、再度粉砕・混合を行ない、化合物超伝導体の原料としての粉末を得た。この原料を銅製の管状のシース材の内部に酸素ガス含有雰囲気中で詰め込む。その後シース材の両端開口部を閉塞し、一体化する。この一体化された部材を断面減少比が約100以上になるまで、押し出し、スェージング,線引き等の減面加工を施して細線化した後、900℃、15Hの加熱処理を施す。
【0020】この加熱処理によりシース材内部の原料が反応して(La 0.9Sr0.1)2CuO4の組成式で表される層状ペロブスカイト型の酸化物超伝導体の連続体が生成し、化合物超伝導線を得ることができる。この化合物超伝導線を用いて超伝導性を調べたところ、臨界温度は35K、臨界電流は10Aと良好な特性を示した。なお、銅製シース材の代わりにCu-N1合金製シース材を用いても同様の結果を得た。
【0021】参考例-2
La2 O3,BaO,CuOを用いた参考例-1と同様に(La 0.925Ba 0.075)2CuO1の組成式で表される層状ペロブスカイト型の酸化物超伝導体の化合物超伝導線を得た。
【0022】臨界温度は31K、臨界電流は8Aと良好な特性を示した。
【0023】参考例-3
La2 O3,CaO,CuOを用いた参考例-1と同様に(La 0.9Ca 0.1)2CuO4の組成式で表される層状ペロブスカイト型の酸化物超伝導体の化合物超伝導線を得た。
【0024】臨界温度は29K、臨界電流は5Aと良好な特性を示した。
【0025】参考例-4
Y2 O3,CaO,CuOを用い参考例-1と同様に(Y 0.7Ba 0.3)2CuO4の組成式で表される多相の酸化物超伝導体の化合物超伝導線を得た。
【0026】臨界温度は90K、臨界電流は10Aと良好な特性を示した。
【0027】なおYをScに代えてもほぼ同様の結果を得た。
【0028】参考例-5
参考例-1〜4の加熱処理前の部材にシース材の一部を長手方向にHNO3で除去した後(第3図)、各実施例と同様の加熱処理を施したところ、各実施の形態の臨界温度は約5K上昇し、臨界電流は約倍増した。
【0029】実施の形態-1
Ag製のシース材に、La,Sr,Cuを(La 0.9Sr 0.1)2CuO4の組成式で表される層状ペロブスカイト型の酸化物超伝導体となるよう比率で混合した原料を充填して、シース材の量端を閉塞した。その後、減面加工により細線化した後、700℃大気中7日間の酸化熱処理を行った結果(La 0.9Sr 0.1)2CuO4の組成式で表される層状ペロブスカイト型の酸化物超伝導体の連続体がシース材の内部に生成された。
【0030】臨界温度は35K、臨界電流は10Aと良好な特性を示した。
【0031】実施の形態-2
実施の形態-1におけるSrの代わりにBaを用いて同様に超伝導線を製造した。
【0032】臨界温度は29K、臨界電流は5Aと良好な特性を示した。
【0033】実施の形態-3
実施の形態-1におけるSrの代わりにCaを用いて同様に超伝導線を製造した。
【0034】臨界温度は29K、臨界電流は5Aと良好な特性を示した。
【0035】実施の形態-4
実施の形態-1のLa,Sr,Cuの代わりにY,Ba,Cuを用いて(Y 0.1Ba 0.6)CuO3の比率となるように混合し、同様に超伝導線を製造した。
【0036】臨界温度は96K、臨界電流は10Aと良好な特性を示した。
【0037】実施の形態-5
実施の形態-1のLa,Sr,Cuの代わりに(Y 0.9Ba 0.1)CuO3の比率となるようにY2 O3,BaO,CuOを用い混合し、同様に超伝導線を製造した。
【0038】
臨界温度は80K、臨界電流は12Aと良好な特性を示した。
【0039】参考例-6
La2 O3,SrO,CuOをCuO1モルに対してLa2 O30.92モル、SrO0.2モルの割合でボールミールを用いて混合した。この混合物を900℃、2Hの条件で仮焼した後、再度粉砕・混合を行い、化合物超伝導体の原料としての粉末を得た。この原料を銀製のシート(バリヤ材)で棒状に包み込んだ。このバリヤ材で包まれた複合体を直径10mm,内径8mmの銅製の管状のシース材の内部に挿入した。その後シース材の両端開口部を閉塞し、一体化した。次いでこの一体化された部材を断面減少比が約100以上になるまで、押し出し、スェージング、線引き等の減面加工を施して直径1mmの線材を得た。その後、真空中900℃,15Hの加熱処理を施す。この加熱処理によりシース材内部に(La 0.9Sr 0.1)2CuO4の組成式で表せれる層状ペロブスカイト型の酸化物超伝導体の連続体が生成していることがX線回析で確認された。
【0040】このようにして製造された超伝導線用いて実施した結果、臨界温度40K、臨界電流10Aの良好な超伝導特性を示すことが確認された。また安定化材であるシース材の銅の熱伝導率を見るために、RRR(室温抵抗を臨界温度直上の抵抗で割った値:RRRが大きいほど熱伝導率大)を測定したところ、約50であった。この値は従来一般に使用されているNb3 Sn超伝導線のRRRに比べても充分大きな値であり、本実施例の方法により安定化材としての銅が原料の酸素により汚染(酸化)されていないことが明らかとなった。
【0041】従ってこの様な方法によって得られた超伝導線は良好な超伝導特性を有し、かつ、安定化材の熱伝導率も高いため、超伝導マグネットへ応用した場合に有効である。
【0042】参考例-7
La2 O3,BaO,CuOを用い参考例-6と同様に(La 0.925Ca 0.75)2CuO4の組成式で表される層状ペロブスカイト型の酸化物超伝導体の化合物伝導線を得た。
【0043】臨界温度は35K、臨界電流は8Aと良好な特性を示した。
【0044】参考例-8
La2 O3,CaO,CuOを用い参考例-6と同様に(La 0.9Ca 0.1)2CuO4の組成式で表される層状ペロブスカイト型の酸化物超伝導体の化合物超伝導線を得た。
【0045】臨界温度は18K、臨界電流は3Aと良好な特性を示した。
【0046】参考例-9
Y2 O3,BaO,CuOを用い参考例-6と同様にY 0.4Ba 0.6CuO3の組成比の酸化物超伝導体の化合物超伝導線を得た。
【0047】臨界温度は96K、臨界電流は10Aと良好な特性を示した。
【0048】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、臨界温度が高い層状ペロブスカイト型等の酸化物超伝導体を用いた化合物超伝導線を安定して得ることができ、超伝導マグネット等への応用に寄与するところ大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1図は、本発明超伝導線の断面図。
【図2】 第2図は、本発明超伝導線の断面図。
【図3】 第3図は、本発明超伝導線の断面図。
【符号の説明】
1……超伝導体
2……原料
3……シース材
4……バリヤ材
 
訂正の要旨 訂正の要旨
本件訂正請求の要旨は、特許第3078765明細書を、本件訂正請求書に添付された訂正明細書のとおりに訂正しようとするものであって、具体的に下記のように訂正しようとするものである。
訂正事項a
特許請求の範囲の元の請求項1〜2を、削除する。
訂正事項b
上記訂正事項aにより、請求項1〜3を引用していた請求項4中の請求項1〜2の引用部分を新たに請求項1〜2として、下記のとおりに独立して記載する。
「【請求項1】酸化物超伝導体と、前記酸化物超伝導体を取り囲む銀または銀合金からなるシース材とを備え、断面形状がリボン状であることを特徴とする化合物超伝導線。
【請求項2】酸化物超伝導体と、前記酸化物超伝導体を取り囲む銀または銀合金からなるシース材とを備えた化合物超伝導単芯線を複数有し、断面形状がリボン状であることを特徴とする化合物超伝導線。」
訂正事項c
上記訂正事項bにより、請求項4中の請求項1〜2を引用していた部分が独立記載されたことに整合させて、請求項4中の「請求項1乃至請求項3のいずれか記載の化合物超伝導線。」を、「請求項3記載の化合物超伝導線。」と訂正する。
訂正事項d
明細書【0005】中の「前記酸化物超伝導体を取り囲む金属シース材とを備え」の記載を、「前記酸化物超伝導体を取り囲む銀または銀合金からなるシース材とを備え」と訂正すると共に、「ここで、金属シース材は銀または銀合金であってよい。」の記載を削除する。
訂正事項e
明細書【0019】【0021】【0023】【0025】【0028】中の「実施の形態」を、「参考例」と訂正する。
明細書【0029】【0031】【0033】【0035】【0037】中の「実施の形態-6」を、「実施の形態-1」と訂正する。
明細書【0031】の「実施の形態-7」を、「実施の形態-2」と、明細書【0033】の「実施の形態-8」を、「実施の形態-3」と、明細書【0035】の「実施の形態-9」を、「実施の形態-4」と、明細書【0037】の「実施の形態-10」を、「実施の形態-5」と訂正する。
明細書【003】【0042】【0044】【0046】中の「実施の形態-11」を、「参考例-6」と訂正する。
明細書【0042】の「実施の形態-12」を、「参考例-7」と、明細書【0044】の「実施の形態-13」を、「参考例-8」と、明細書【0046】の「実施の形態-14」を、「参考例-9」と訂正する。
異議決定日 2001-12-03 
出願番号 特願平9-122804
審決分類 P 1 652・ 531- XA (H01B)
P 1 652・ 113- XA (H01B)
P 1 652・ 121- XA (H01B)
最終処分 決定却下  
前審関与審査官 齋藤 哲酒井 美知子辻 徹二  
特許庁審判長 松本 悟
特許庁審判官 綿谷 晶廣
柿澤 惠子
登録日 2000-06-16 
登録番号 特許第3078765号(P3078765)
権利者 株式会社東芝
発明の名称 化合物超伝導線及び化合物超伝導線の製造方法  
代理人 白崎 真二  
代理人 外川 英明  
代理人 外川 英明  

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