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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C25C
管理番号 1056511
異議申立番号 異議2001-70233  
総通号数 29 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-06-21 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-01-18 
確定日 2001-12-19 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3102177号「高純度銅の製造方法」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3102177号の請求項1ないし2に係る特許を取り消す。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第3102177号(以下「本件特許」という。)は、平成4年12月1日に特許出願され、特許権の設定の登録がなされた後、平成13年1月18日に酒井征男より、請求項1〜3に係る特許について特許異議の申立がなされ、その後、平成13年7月10日付けで審判官合議体より取消理由の通知がなされ、これに対して、平成13年9月21日に特許権者より訂正請求書の提出がなされたものである。

II.訂正について
(II-1)訂正の内容
訂正事項a(特許請求の範囲の訂正)
(a-1)特許請求の範囲を、以下のとおりに訂正する。
「【請求項1】電解液として硝酸銅溶液を用い、銅の電着するカソード表面に亜硝酸ガス気泡が副生する電気銅の電解精製による高純度銅の製造方法において、電解液中にハロゲン化水素酸をハロゲンのミリグラム原子換算で0.5〜6.0 /リットル添加することによって亜硝酸ガス気泡の発生を抑制して表面が平滑で緻密な電着銅を製造することを特徴とする高純度銅の製造方法。
【請求項2】ハロゲン化水素酸がフッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸およびヨウ化水素酸の1種以上から選択される請求項1に記載の高純度銅の製造方法。」

訂正事項b(特許請求の範囲以外の訂正)
(b-1)段落【0003】中の「従って、本発明の目的は・・・・提供することにある。」を、「従って、本発明の目的は、硝酸銅溶液中での電解精製において、電着銅表面で亜硝酸ガスの発生を抑えることによって表面が平滑で緻密な不純物含有量が少ない高純度の電着銅の製造方法を提供することにある。」と訂正する。
(b-2)段落【0005】中の「すなわち、本発明は・・・・製造方法である。」を、「すなわち、本発明は、電解液として硝酸銅溶液を用い、銅の電着するカソード表面に亜硝酸ガス気泡が副生する電気銅の電解精製による高純度銅の製造方法において、電解液中にハロゲン化水素酸をハロゲンのミリグラム原子換算で0.5〜6.0/リットル添加することによって亜硝酸ガス気泡の発生を抑制して表面が平滑で緻密な電着銅を製造することを特徴とする高純度銅の製造方法である。」と訂正する。

(II-2)訂正の目的、範囲、及び実質上の拡張又は変更について
訂正事項aは特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、また、訂正事項bは、発明の詳細な説明の記載を上記訂正事項aと整合させるものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。そして、これら訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正と認められ、かつ、当該訂正が実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものとはいえない。
したがって、本訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定により、なお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項で準用する、平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き、及び第2項の規定に適合するので、本訂正を認める。

III.本件発明
訂正後の請求項1〜2係る発明は、訂正明細書(以下単に「明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1〜2に記載されたとおりの、以下のものと認める。
「【請求項1】電解液として硝酸銅溶液を用い、銅の電着するカソード表面に亜硝酸ガス気泡が副生する電気銅の電解精製による高純度銅の製造方法において、電解液中にハロゲン化水素酸をハロゲンのミリグラム原子換算で0.5〜6.0 /リットル添加することによって亜硝酸ガス気泡の発生を抑制して表面が平滑で緻密な電着銅を製造することを特徴とする高純度銅の製造方法。
【請求項2】ハロゲン化水素酸がフッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸およびヨウ化水素酸の1種以上から選択される請求項1に記載の高純度銅の製造方法。」

IV.取消理由
上記の取消理由の概要は、特許異議申立人 酒井征男の主張を引用して、訂正前の請求項1〜3に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された刊行物である引用例1又は2に記載された発明であり、また、当該引用例1〜2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項1〜3に係る特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反して特許を受けたものであり、取り消すべきものである、というものである。

V.証拠の記載事実
上記の取消理由通知で示した引用例のうち、引用例1(特開昭62-70589号公報;異議の甲第1号証)には、以下の事項の記載がなされている。
引用例1
(1-1)「(1)硝酸酸性の電解溶中に塩素源を添加し、予め電気分解により得られた電気銅あるいは相当品を再電解することを特徴とする高純度電気銅の製造法。
(2)塩素源を添加した後の塩素濃度が、20〜130mg/lであることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の高純度電気銅の製造法。
(3)電解浴温度が、20〜65℃であることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の高純度電気銅の製造法。」(特許請求の範囲)
(1-2)「本発明で用いる電解溶は硝酸酸性浴である。硝酸の酸濃度は、pHが3以下に保持されるように調整される。好ましくはpH=2.5〜3.0に調整される。」(第2頁左上欄第10〜13行)
(1-3)「アノードは電気銅、無酸素銅等を用いる。・・・・塩素源としては、塩酸、塩素ガス、塩化銅等がある。これらの塩素量としては、フリーの塩素が20〜130mg/lあると好ましく、より好ましくは35〜100mg/lであると不純物が好ましく除けることが把握された。」(第2頁左上欄第15行〜右上欄第8行)
(1-4)「電解浴温度は、20〜65℃が好ましい。電解浴の組成は、銅が30〜60g/l程度が好ましい。カソードは、純銅板、チタン板等が用いられる。・・・電流密度は30〜70A/m2で行われる。」(第2頁右上欄第9〜14行)
(1-5)電着銅の品位を示した「表1」とともに、「実施例1 電気銅・・・をアノードとして、Ti板をカソードとして本発明を実施した。電解溶は、銅45.0g/l、硝酸浴とし、pHは2.5とした。電解温度は20℃で行った。電流密度は50A/m2、極間距離は40mm、電解浴はpHが3.0以上とならないように1/2希釈の硝酸溶液を添加し、調整しつつ行った。塩素の添加量は、10〜200mg/lの間で下記の通りの結果となった。」(第2頁左下欄第13行〜右下欄末行)

VI.対比・検討
(1)訂正後の請求項1に係る発明について
訂正後の請求項1に係る発明(以下単に「本件発明1」という。)と、引用例1に記載された発明とを対比すると、引用例1には、硝酸酸性の電解浴中で電気銅を電解し、高純度電気銅を製造すること(摘記1-1)が記載されており、その電解浴は銅の硝酸浴であること(摘記1-1、1-5)が記載されている。また、硝酸銅浴の電解においては、そこで生じる電解反応に伴って亜硝酸ガスが副生することは、本件出願前から周知の事項である(要すれば、本件明細書段落【0007】、特開平1-159391号公報を参照。)。また、引用例1には、電解浴中に塩素源を添加すること(摘記1-1)、及び、塩素源としては塩酸が該当すること(摘記1-3)が記載されている。また、引用例1には、塩素源を添加した後の塩素濃度(フリーの塩素濃度)が20〜130mg/l(即ち、0.56〜3.67mg原子/リットル)、好ましくは35〜100mg/l(即ち、0.98〜2.82mg原子/リットル)であること(摘記1-1、1-3)が記載されており、そして、本件発明1におけるハロゲン化水素酸の添加量は、引用例1に記載された上記の添加量を包含している。
これらのことからすると、本件発明1は、引用例1に記載された発明と、「電解液として硝酸銅溶液を用い、銅の電着するカソード表面に亜硝酸ガス気泡が副生する電気銅の電解精製による高純度銅の製造方法において、電解液中にハロゲン化水素酸をハロゲンのミリグラム原子換算で0.5〜6.0 /リットル添加することによって電着銅を製造することを特徴とする高純度銅の製造方法」である点で一致し、そして、(a)本件発明1では、上記特定の電解条件と関連して、電解反応及び得られる電着銅の形態について、「亜硝酸ガス気泡の発生を抑制して表面が平滑で緻密な電着銅」であると規定されているのに対して、引用例1には、そのような記載が見当たらない点で、両者は少なくとも記載形式上相違している。
そこで、この相違点(a)について、以下検討する。
本件発明1と、引用例1に記載された発明とは、上記のとおり電解浴組成をはじめとする電解条件が一致しており、そして電解条件が一致している以上、その電解条件下における電解反応及び得られる電着銅の形態についても両者間で相違していると言うことはできない。したがって、「亜硝酸ガス気泡の発生を抑制して表面が平滑で緻密な電着銅」を製造するという上記(a)に係る作用・効果についても、両者間で相違していると言うことはできない。
してみれば、上記(a)の点については、両者間の実質的な相違を構成するとは言えず、したがって、本件発明1は、実質的に引用例1に記載された発明である。

(2)訂正後の請求項2に係る発明について
訂正後の請求項2に係る発明(以下単に「本件発明2」という。)は、本件発明1におけるハロゲン化水素酸について、「ハロゲン化水素酸がフッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸およびヨウ化水素酸の1種以上から選択される」と、さらに限定して特定したものである。しかし、引用例1には、塩酸を塩素源とすることが記載されているので(摘記1-3)、上記の特定事項が、引用例1に記載された発明との新たな相違点を構成すると言うことはできない。
したがって、上記「(1)訂正後の請求項1に係る発明について」の欄において本件発明1について記載したと同様、本件発明2は、実質的に引用例1に記載された発明である。

VII.むすび
以上のとおり、本件発明1〜2は、引用例1に記載された発明であり、特許法第29条第1項の規定に違反して特許を受けたものであるから、本件発明1〜2に係る特許は、特許法第49条第1項第2号に該当し、拒絶をすべき旨の査定をしなければならない特許出願についてなされたものである。
したがって、本件発明1〜2に係る特許は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定により委任する、特許法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定に基き、特許法第114条第2項の取消決定をすべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
高純度銅の製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 電解液として硝酸銅溶液を用い、銅の電着するカソード表面に亜硝酸ガス気泡が副生する電気銅の電解精製による高純度銅の製造方法において、電解液中にハロゲン化水素酸をハロゲンのミリグラム原子換算で0.5〜6.0/リットル添加することによって亜硝酸ガス気泡の発生を抑制して表面が平滑で緻密な電着銅を製造することを特徴とする高純度銅の製造方法。
【請求項2】 ハロゲン化水素酸がフッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸およびヨウ化水素酸の1種以上から選択される請求項1に記載の高純度銅の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
純度99.9999%(6N)乃至99.99999%(7N)の高純度銅が、オーディオ用ケーブル、ICのボンディングワイヤー等のエレクトロニクスの分野に用いられてきている。また、それよりも若干純度は落ちる低ガス不純物濃度の銅(クラスI級銅)が超電導材料や粒子加速器等の高真空材料に多量に使用されつつある。本発明は、純度99.99%(4N)程度の電気銅をアノードとし、硝酸銅溶液中で電解精製して上記の用途に用いられる高純度銅を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術およびその課題】
従来、硫酸銅溶液中にて行われている銅の電解精製法では製品の電気銅中の硫黄(S)濃度を1ppm以下にまでは下げることが困難である。Sの濃度は硫酸銅浴に変えて硝酸銅浴を使用し電解精製を行なうことにより1ppm以下にまで下げることができる。特に、アノードとして4Nクラスの電気銅を用いて電解精製する場合には6N〜7Nの高純度銅を得ることができる。
【0003】
しかしながら、硝酸銅溶液中で電解精製する場合、銅が電着するカソードの表面に亜硝酸ガスと見られる気泡が発生して銅を酸化し、電着銅表面の凹凸が激しくなり、その凹凸部銅への電解液または不純物のまき込みにより製品銅の品質の低下や樹枝状結晶(デンドライト)の成長による短絡のために電流効率が低下する等の問題があった。従来カソード上での気泡の発生を抑制する方法として、尿素を添加する方法(米国特許第4033838号)、電解液を煮沸してNOxガスを除去する方法(6th International Symposiumu-High Purity Material in Science and Technology,Supplement,Dresden,GDR,1985,189R頁)も試みられているがその効果は不十分なものであった。従って、本発明の目的は、硝酸銅溶液中での電解精製において、電着銅表面で亜硝酸ガスの発生を抑えることによって表面が平滑で緻密な不純物含有量が少ない高純度の電着銅の製造方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、特に硫酸電解精製では達成し得なかったS濃度0.1ppm以下の銅を得ることを目的として上記課題を解決すべく純度4Nの電気銅をアノードとして用い硝酸浴にてカソード表面が平滑となる添加剤を鋭意探索した。その結果電解液中に少量のハロゲン化水素酸を添加することにより、亜硝酸ガスの発生を完全に阻止し得ることを確認し、本発明を完成した。
【0005】
すなわち、本発明は、電解液として硝酸銅溶液を用い、銅の電着するカソード表面に亜硝酸ガス気泡が副生する電気銅の電解精製による高純度銅の製造方法において、電解液中にハロゲン化水素酸をハロゲンのミリグラム原子換算で0.5〜6.0/リットル添加することによって亜硝酸ガス気泡の発生を抑制して表面が平滑で緻密な電着銅を製造することを特徴とする高純度銅の製造方法である。なお、特開平1-152291号には、電気銅をアノードとし、硝酸銅溶液中で電解精製して高純度銅を製造する方法において塩素イオンを添加することが記載されているが、塩素の添加は脱銀を目的とするものであり、銅が電着するカソードの表面への亜硝酸ガス発生による銅の酸化、および表面のデンドライトの成長による問題については全く記載がないし、また塩素イオン添加による脱銀の具体的条件および効果についても説明はない。
【0006】
また、特公平3-4629号には電気銅を硝酸浴中で再電解する方法において、隔膜で陽極室と陰極室に区分された陽極室排出液を金属銅で脱銀処理し陰極室に給液する高純度銅の製造方法が開示され、実施態様として電解液に遊離塩素20mg/リットル〜20g/リットルを溶存せしめることが記載されているが、塩素の添加の効果については脱銀効率の向上を記載しているのみであり、銅が電着するカソードの表面での亜硝酸ガス発生による銅の酸化、および表面のデンドライトの成長による問題については全く記載がない。
【0007】
本発明の方法において、ハロゲン化水素酸を添加することにより、NO2の発生が抑えられる理由の詳細は不明であるが、以下のように推測される。すなわち、次式で示される反応が進行し、酸化窒素ガスが発生する。
NO3-+3H++2e→HNO2+H2O (1)
HNO2+HNO3→N2O4↑+H2O (2)
ここで、ハロゲン化水素酸(HX)を添加すると、亜硝酸(HNO2)は次式で示される反応によりハロゲン化ニトロシル(NOx)を生成して電解液中に溶解するために、N2O4ガスの発生が抑えられるものと考えられる。
HNO2+HX→NOx+H2O (3)
【0008】
本発明において電解液に添加されるハロゲン化水素酸としてはフッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸およびヨウ化水素酸が挙げられる。これらハロゲン化水素酸は1種類を単独で用いてもよいし、2種以上を同時に使用してもよい。ハロゲン化水素酸の中では塩酸およびヨウ化水素酸が好ましく用いられる。ハロゲン化水素酸の濃度は、容器等装置の腐食の問題があるので、可能な限り少量であることが望ましい。添加量は、通常、ハロゲンのミリグラム原子換算で0.5〜6.0/リットル、好ましくは1〜4.0/リットルである。ハロゲン化水素酸を特定の量添加すること以外は、本発明による製造法における電解条件は従来の硝酸浴法と同様である。
【0009】
すなわち、銅濃度は50〜140g/リットル、硝酸浴pH1.0〜1.5、温度20〜50℃、アノードおよびカソード電流密度100〜200A/m2以下、好ましくは50〜100A/m2である。カソードとしては高純度銅、SUS板,チタン板等が用いられる。
【0010】
【実施例】
以下、実施例および比較例により本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、下記の例において電解Cu中の元素の分析はグロー放電質量分析法および化学分析法を使用して常法により行なった。
【0011】
比較例1
アノードとして71×71×8mmの4N電気銅(成分品位:S3、Ag6、Pb0.5、As0.1、Fe0.05ppm)、カソードとして71×71×3mmのチタン板を用い、面間距離28mm、アノード、カソードとも裏側にはテフロンのコーティング剤を塗布し、アノードとカソードを隔膜(ポリエステル製)により隔離された内容積100W×110H×300Lmmの透明塩ビ材からなる電解槽に2.7リットルの電解液を収容し、電解液がアノード側から毎分50ml抜き出されてホールディングタンクおよびフィルター(5μメンブランmフィルター)を経由してポンプによりカソード側に戻される構成の装置を使用して、下記示す条件で電解テストを行なった。なお、硝酸銅電解液は試薬の硝酸銅を水で希釈することにより調製した。
【0012】
電解条件
電解液Cu濃度:50〜54g/リットル
電解液温度:25℃
電解液pH:0.5〜0.9
電流密度:200A/m2
電解時間:70時間
【0013】
電解中、カソード表面に多数の気泡の付着が認められた。70時間の電解処理後得られた電着銅には写真Aに示す通り表面全体に多数のゲントライトが生成し、表面が激しく酸化されていた。得られた銅の分析結果はS0.5、Ag0.4、Pb<0.1、As<0.1、Fe<0.1ppmであった。
【0014】
実施例1比較例1において、電解液に塩酸をCl-換算で130mg/リットル(ミリグラム原子換算で3.7/リットル)添加したほかは同一の条件で電解を行なった。電解中、カソード表面での気泡の発生は認められなかった。生成した電着銅は写真Bに示す通り平滑な電着面を有していた。得られた銅の分析結果はS0.02、Ag0.06、Pb<0.03、As<0.1、Fe<0.003ppmであった。
【0015】
比較例2アノードとして71×71×8mmの4N電気銅、カソードとして71×71×3mmのチタン板を用い、面間距離を20mmとして、内容積1.3リットルのビーカーに電解液(Cu50g/リットル、pH:1.2)1リットルを収容し、電解液温度25℃、電流密度200A/m2、電解時間18時間で電解を行なった。電解中、カソード表面に多数の気泡の付着が目視された。また、電解後のカソード表面には気泡の付着に起因すると思われる荒れが認められた。
【0016】
実施例2比較例2において、電解液にヨウ化水素酸を228mg/リットル(ヨウ素のミリグラム原子換算で1.78/リットル)添加したほかは同一の条件で電解を行なった。電解中、カソード表面の目視観察では気泡の発生は全く認められず、電解後のカソード表面の電着銅は平滑であった。
【0017】
【発明の効果】
従来の硝酸浴による銅の電解では、カソード表面上での亜硝酸ガスの発生、付着に伴う表面の荒れ、酸化等の問題があったが、ハロゲン化水素酸を添加する本発明の方法により亜硝酸ガスの発生が完全に抑えられ平滑で緻密な面を有する不純物含有量の少ない電着銅が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 塩酸を添加しない従来の硝酸浴電解法によるカソード表面の金属組織状態を示す顕微鏡写真。
【図2】 本発明による塩酸を添加した硝酸浴電解法によるカソード表面の金属組織状態を示す顕微鏡写真。
 
訂正の要旨 訂正の要旨 (特許第3102177号)
訂正事項a(特許請求の範囲の訂正)
(a-1)特許請求の範囲を、以下のとおりに訂正する。
「【請求項1】電解液として硝酸銅溶液を用い、銅の電着するカソード表面に亜硝酸ガス気泡が副生する電気銅の電解精製による高純度銅の製造方法において、電解液中にハロゲン化水素酸をハロゲンのミリグラム原子換算で0.5〜6.0/リットル添加することによって亜硝酸ガス気泡の発生を抑制して表面が平滑で緻密な電着銅を製造することを特徴とする高純度銅の製造方法。
【請求項2】ハロゲン化水素酸がフッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸およびヨウ化水素酸の1種以上から選択される請求項1に記載の高純度銅の製造方法。」
訂正事項b(特許請求の範囲以外の訂正)
(b-1)段落【0003】中の「従って、本発明の目的は・・・・提供することにある。」を、「従って、本発明の目的は、硝酸銅溶液中での電解精製において、電着銅表面で亜硝酸ガスの発生を抑えることによって表面が平滑で緻密な不純物含有量が少ない高純度の電着銅の製造方法を提供することにある。」と訂正する。
(b-2)段落【0005】中の「すなわち、本発明は・・・・製造方法である。」を、「すなわち、本発明は、電解液として硝酸銅溶液を用い、銅の電着するカソード表面に亜硝酸ガス気泡が副生する電気銅の電解精製による高純度銅の製造方法において、電解液中にハロゲン化水素酸をハロゲンのミリグラム原子換算で0.5〜6.0/リットル添加することによって亜硝酸ガス気泡の発生を抑制して表面が平滑で緻密な電着銅を製造することを特徴とする高純度銅の製造方法である。」と訂正する。
なお、訂正事項aは特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、また、訂正事項bは、発明の詳細な説明の記載を上記訂正事項aと整合させるものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
異議決定日 2001-10-29 
出願番号 特願平4-345590
審決分類 P 1 651・ 113- ZA (C25C)
最終処分 取消  
前審関与審査官 有田 恭子  
特許庁審判長 影山 秀一
特許庁審判官 池田 正人
大橋 賢一
登録日 2000-08-25 
登録番号 特許第3102177号(P3102177)
権利者 三菱マテリアル株式会社
発明の名称 高純度銅の製造方法  
代理人 千葉 博史  
代理人 千葉 博史  

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