• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B01D
管理番号 1056673
異議申立番号 異議2001-70784  
総通号数 29 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2000-09-05 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-03-06 
確定日 2002-01-24 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3087750号「膜の殺菌方法」の請求項1ないし12に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3087750号の訂正後の請求項1ないし10に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続きの経緯
本件特許第3087750号は、平成11年4月13日(優先権主張平成10年7月21日、平成10年10月13日、平成10年12月24日)に特許出願され、平成12年7月14日にその特許の設定登録がなされ、その後、菊間靖郎及びオルガノ株式会社から特許異議の申立てがあり、取消理由が通知されたところ、その指定期間内である平成13年8月9日に訂正請求がなされたものである。
2.訂正の適否について
(1)訂正の内容
本件訂正請求書における訂正の内容は、本件特許明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものである。すなわち、
訂正事項a:特許請求の範囲の「【請求項1】膜分離装置を用いて水を分離精製しながら、膜分離装置へ供給する供給水のpHを4以下にする酸性水処理工程を実施することを特徴とする膜の殺菌方法。【請求項2】酸性水処理工程を、0.5〜2.5時間の範囲内で連続して実施する、請求項1に記載の膜の殺菌方法。【請求項3】酸性水処理工程を、1日〜1ケ月に1回の割合で実施する、請求項1または2に記載の膜の殺菌方法。【請求項4】
逆浸透膜を用いる、請求項1〜3のいずれかに記載の膜の殺菌方法。【請求項5】供給水として海水を用いる、請求項1〜4のいずれかに記載の膜の殺菌方法。【請求項6】供給水中の硫酸濃度が120ppm以上となるように硫酸を供給水に添加する、請求項1〜5のいずれかに記載の膜の殺菌方法。【請求項7】請求項1〜6のいずれかに記載の膜の殺菌方法を用いることを特徴とする造水方法。【請求項8】膜分離装置の前段に前処理装置を設け、この前処理装置に供給する水に塩素を間欠的に供給する、請求項7に記載の造水方法。【請求項9】塩素の供給に対応して、膜分離装置へ供給する供給水に還元剤を供給する、請求項8に記載の造水方法。【請求項10】逆浸透膜を分離膜とする膜分離装置と、膜分離装置へ供給する供給水に酸性水を供給する手段とを有していることを特徴とする水処理装置。【請求項11】供給水が海水である、請求項10に記載の水処理装置。【請求項12】酸性水が硫酸を含んでいる、請求項10または11に記載の水処理装置。」を「【請求項1】膜分離装置を用いて水を分離精製しながら、膜分離装置へ供給する供給水のpHを2.5〜4の範囲内にする酸性水処理工程を1日〜1週間に1回の割合で間欠的に、かつ、0.5〜2.5時間の範囲内で連続して実施することを特徴とする膜の殺菌方法。【請求項2】逆浸透膜を用いる、請求項1に記載の膜の殺菌方法。【請求項3】供給水として海水を用いる、請求項1または2に記載の膜の殺菌方法。【請求項4】供給水中の硫酸濃度が120ppm以上となるように硫酸を供給水に添加する、請求項1〜3のいずれかに記載の膜の殺菌方法。【請求項5】請求項1〜4のいずれかに記載の膜の殺菌方法を用いることを特徴とする造水方法。【請求項6】膜分離装置の前段に前処理装置を設け、この前処理装置に供給する水に塩素を間欠的に供給する、請求項5に記載の造水方法。【請求項7】塩素の供給に対応して、膜分離装置へ供給する供給水に還元剤を供給する、請求項6に記載の造水方法。【請求項8】逆浸透膜を分離膜とする膜分離装置と、膜分離装置へ供給する供給水に酸性水を1日〜1週間に1回の割合で間欠的に、かつ、0.5〜2.5時間の範囲内で連続して供給しpHを2.5〜4の範囲内にする手段とを有していることを特徴とする水処理装置。【請求項9】供給水が海水である、請求項8に記載の水処理装置。【請求項10】酸性水が硫酸を含んでいる、請求項9に記載の水処理装置。」と訂正する。
訂正事項b:明細書段落【0004】の「供給水のpHを4以下にする酸性水処理工程を実施する」を「供給水のpHを2.5〜4の範囲内にする酸性水処理工程を1日〜1週間に1回の割合で間欠的に、かつ、0.5〜2.5時間の範囲内で連続して実施する」と訂正する。
訂正事項c:明細書段落【0018】の「1日ごと、1週間ごと、1ケ月ごと」を「1日ごと、1週間ごと」と訂正する。
訂正事項d:明細書段落【0028】の「表2」を「表1」と訂正する。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項aについては以下のとおりに細分して検討する。
訂正事項a-1:請求項1の「pHを4以下」を「pHを2.5〜4の範囲内」と訂正する。
訂正事項a-2:請求項1の「酸性水処理工程を実施する」を「酸性水処理工程を1日〜1週間に1回の割合で間欠的に、かつ、0.5〜2.5時間の範囲内で連続して実施する」と訂正する。
訂正事項a-3:請求項2及び3を削除する。
訂正事項a-4:請求項4の項番号を2に繰り上げると共に、引用する請求項の「請求項1〜3のいずれか」を「請求項1」と訂正する。
訂正事項a-5:請求項5の項番号を3に繰り上げると共に、引用する請求項の「請求項1〜4のいずれか」を「請求項1または2」と訂正する。
訂正事項a-6:請求項6の項番号を4に繰り上げると共に、引用する請求項の「請求項1〜5のいずれか」を「請求項1〜3のいずれか」と訂正する。
訂正事項a-7:請求項7の項番号を5に繰り上げると共に、引用する請求項の「請求項1〜6のいずれか」を「請求項1〜4のいずれか」と訂正する。
訂正事項a-8:請求項8の項番号を6に繰り上げると共に、引用する請求項の「請求項7」を「請求項5」と訂正する。
訂正事項a-9:請求項9の項番号を7に繰り上げると共に、引用する請求項の「請求項8」を「請求項6」と訂正する。
訂正事項a-10:請求項10の項番号を8に繰り上げると共に、「酸性水を供給する手段」を「酸性水を1日〜1週間に1回の割合で間欠的に、かつ、0.5〜2.5時間の範囲内で連続して供給しpHを2.5〜4の範囲内にする手段」と訂正する。
訂正事項a-11:請求項11の項番号を9に繰り上げると共に、引用する請求項の「請求項10」を「請求項8」と訂正する。
訂正事項a-12:請求項12の項番号を10に繰り上げると共に、引用する請求項の「請求項10または11」を「請求項9」と訂正する。
上記訂正事項a-1は、明細書の表1における実験例の下限pHが2.5であることに基いて、「pHを4以下」から「pHを2.5〜4の範囲内」に減縮するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものである。
上記訂正事項a-2は、請求項1に「1日〜1週間に1回の割合で間欠的に、かつ、0.5〜2.5時間の範囲内で連続して」という新たな限定を付すものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、その構成の時間については明細書段落【0018】に記載され、割合については請求項3の「1日〜1ケ月に1回の割合」を明細書段落【0018】の「1日ごと、1週間ごと、1ケ月ごと」の例示に基いて「1日〜1週間に1回の割合」にしたものであるから、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものである。
上記訂正事項a-3は請求項の削除であり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
上記訂正事項a-4ないしa-9及びa-11は、請求項を削除する訂正事項a-3の訂正に伴うものであり、訂正後の特許請求の範囲の記載を整合させるためのものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
上記訂正事項a-10の前段の項番号の繰り上げは、請求項を削除する訂正事項a-3の訂正に伴い、訂正後の特許請求の範囲の記載を整合させるためのものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。また、訂正事項a-10の後段は「1日〜1週間に1回の割合で間欠的に、かつ、0.5〜2.5時間の範囲内で連続して」及び「pHを2.5〜4の範囲内」という新たな限定を付すものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、その構成の時間については明細書段落【0018】に、pHについては明細書の表1に、それぞれ記載され、割合については請求項3の「1日〜1ケ月に1回の割合」を明細書段落【0018】の「1日ごと、1週間ごと、1ケ月ごと」の例示に基いて「1日〜1週間に1回の割合」にしたものであるから、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものである。
上記訂正事項a-12は、請求項を削除する訂正事項a-3の訂正に伴い、訂正後の特許請求の範囲の記載を整合させるために請求項の番号を繰り上げると共に、引用する請求項を削除するものであるから、明りょうでない記載の釈明および特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
上記訂正事項bおよびcは、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正事項a-1及びa-2に伴うものであり、訂正後の特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを整合させるためにするものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
上記訂正事項dは、本件明細書には表1しか記載されておらず、表2はないので、表2の記載は表1の誤記であることは明らかであるから、誤記の訂正を目的とするものであり、願書に最初に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものである。
また、上記訂正a-1〜dは、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)まとめ
以上のとおり、上記訂正請求は、特許法第120条の4第2項及び第3項で準用する同第126条第2〜4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
3.取消理由の概要
当審で通知した取消理由の概要は以下のとおりである。
(1)本件の請求項1、4、5、7に係る発明は下記の刊行物1に記載された発明であり、同請求項10、11、12に係る発明は下記の刊行物1、3、5、7、11に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
(2)本件の請求項1ないし12に係る発明は、下記の刊行物1ないし11に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項に該当し、特許を受けることができない。

刊行物1:「逆浸透法・限外ろ(原文はさんずいにとだれ)過法 II 応用 膜利用技術ハンドブック」株式会社幸書房(昭和53年6月30日発行)第19〜32、160〜162頁
刊行物2:特開昭58-109182号公報
刊行物3:特開平7-328392号公報
刊行物4:特開昭62-204893号公報
刊行物5:特開平7-171565号公報
刊行物6:特開平1-115412号公報
刊行物7:「5th International Symposium on Fresh Water from the Sea, Vol.4」(1976)第397〜408頁
刊行物8:「Technical Report No.37 機能性膜の実際応用技術」株式会社シーエムシー(昭和58年2月24日発行)第91〜95頁
刊行物9:特公平6-233号公報
刊行物10:特開昭61-111199号公報
刊行物11:「造水技術 Vol.10 No.2」(1984)第13〜22頁
4.本件発明
上記2.に記載したとおり、訂正請求は容認できるから、訂正後の本件発明は訂正明細書の特許請求の範囲に記載された以下のとおりのものである。
「【請求項1】膜分離装置を用いて水を分離精製しながら、膜分離装置へ供給する供給水のpHを2.5〜4の範囲内にする酸性水処理工程を1日〜1週間に1回の割合で間欠的に、かつ、0.5〜2.5時間の範囲内で連続して実施することを特徴とする膜の殺菌方法。
【請求項2】逆浸透膜を用いる、請求項1に記載の膜の殺菌方法。
【請求項3】供給水として海水を用いる、請求項1または2に記載の膜の殺菌方法。
【請求項4】供給水中の硫酸濃度が120ppm以上となるように硫酸を供給水に添加する、請求項1〜3のいずれかに記載の膜の殺菌方法。
【請求項5】請求項1〜4のいずれかに記載の膜の殺菌方法を用いることを特徴とする造水方法。
【請求項6】膜分離装置の前段に前処理装置を設け、この前処理装置に供給する水に塩素を間欠的に供給する、請求項5に記載の造水方法。
【請求項7】塩素の供給に対応して、膜分離装置へ供給する供給水に還元剤を供給する、請求項6に記載の造水方法。
【請求項8】逆浸透膜を分離膜とする膜分離装置と、膜分離装置へ供給する供給水に酸性水を1日〜1週間に1回の割合で間欠的に、かつ、0.5〜2.5時間の範囲内で連続して供給しpHを2.5〜4の範囲内にする手段とを有していることを特徴とする水処理装置。
【請求項9】供給水が海水である、請求項8に記載の水処理装置。
【請求項10】酸性水が硫酸を含んでいる、請求項9に記載の水処理装置。」
5.刊行物の記載内容
刊行物1には以下の事項が記載されている。
(イ)「2.1.3前処理法 膜分離プロセスにおいてトラブルになりそうな原因を,膜装置に供給する前に原水よりあらかじめ除去する前処理を行うことが望ましい。…(中略)…(2)pH調整…(中略)…膜にとっては,どちらかといえば酸性サイドで運転することが好ましい。酸添加としては,膜の分離性能の点からは硫酸が好ましい…(中略)…(3)微生物対策(バクテリア,藻類など)塩素添加が最も有効であるし,安価である。…(中略)…(9)バクテリア…(中略)…ポリアミド系膜でもバクテリアが大量に存在する場合は対策が必要で,活性炭処理後,間けつ的にpHを2程度まで下げるといった低pH運転により滅菌を行う方法,モジュールの直前まで塩素を残し、還元剤(亜硫酸ソーダなど)で除去する方法がとられる。」(第23〜30頁)
(ロ)「3.3.3海水淡水化逆浸透プロセスの構成機器(1)前処理装置…(中略)…重亜硫酸ソーダは滅菌作用を持っており、紫外線照射(100%除去できない)とNaHSO3ショック添加(500ppm,1日60分)との組合せ法は、通常の塩素滅菌法と比較して経済的にも有望である。」(第160〜162頁)
刊行物4には以下の事項が記載されている。
(ハ)「本発明において粒状活性炭塔5の供給原水に酸5を添加する際に、逆浸透膜装置8の透過水9のpHが4以下になるように限定した理由は、当該pHが4以上となると、一般細菌の繁殖防止の効果が減少するためである。たとえば当該透過水のpHを約3.5ぐらいになるように粒状活性炭塔4の供給原水に酸5を添加すると、粒状活性炭塔の供給原水、および当該処理水、さらに逆浸透膜装置8の供給原水のpHは約3.0前後となり、それ程アニオン量を増加させずに一般細菌の繁殖を効果的に防止し得る。なお、逆浸透膜装置8の透過水9のpHをたとえば2以下のごとく、あまり低くすると一般細菌の繁殖防止には効果があっても、アニオン量が増加しすぎ、処理コストが増加するので好ましくなく、通常は当該透過水9のpHが2〜4、好ましくは3〜4となるように酸5を添加するとよい。」(第3頁左下欄第6行〜右下欄第2行)
刊行物6には以下の事項が記載されている。
(ニ)「逆浸透装置に供給する原水に滅菌用塩素を間欠的に注入し該間欠的塩素注入を塩素注入時逆浸透装置より流出する濃縮水中の塩素が検出されるまで継続することを特徴とする逆浸透装置の運転方法。」(特許請求の範囲)
(ホ)「塩素は、ろ(原文はさんずいにとだれ、以下同様)過装置2内のろ材あるいは後流に設置された逆浸透装置8および各ラインに付着したバクテリアの滅菌のために注入される。」(第1頁右欄第10〜12行)
(ヘ)第1図には、本発明による逆浸透装置の運転方法を示す一実施態様例の説明図が記載され、逆浸透装置の前段にろ過装置2を設け、このろ過装置に供給する原水ラインaに滅菌用塩素注入ラインbより塩素を注入することが図示されている。
刊行物7には以下の事項が記載されている。
(ト)FIGURE2にEFFECT OF pH ON VIABLE ORGANISM KILL IN NATURAL SEAWATER について図示され、H2SO4濃度が120ppmの時のpHは約3.4で、生存微生物の約96%が殺滅され、それ以上の濃度では更に殺滅率が高くなることが示されている。
6.当審の判断
(1)請求項1に係る発明について
刊行物1には、間けつ的にpHを2程度まで下げるといった低pH運転によりポリアミド系膜の滅菌を行うこと{上記摘示事項5.(イ)}、海水淡水化逆浸透プロセスに適用すること{上記摘示事項5.(ロ)}が記載されているから、「逆浸透により海水から淡水を分離精製しながら、供給水のpHを2程度まで下げる低pH運転を間けつ的に実施するポリアミド系膜の滅菌方法」が記載されていると云える。
そこで、本件の請求項1に係る発明(以下「請1発明」という)と刊行物1に記載された発明(以下「刊1発明」という)とを対比すると、刊1発明の「滅菌」は請1発明の「殺菌」に、同じく「低pH運転」は「酸性水処理工程」に、それぞれ相当し、また、刊1発明の逆浸透は膜分離装置を用いていることは明らかであるから、両者は「膜分離装置を用いて水を分離精製しながら、膜分離装置へ供給する供給水のpHを下げる酸性水処理工程を間欠的に実施することを特徴とする膜の殺菌方法」である点で一致し、以下の点で相違している。
(a)酸性水処理工程時の供給水のpHが、請1発明は2.5〜4の範囲内であるのに対し、刊1発明は2程度である点。
(b)酸性水処理工程の間隔及び時間が、請1発明は1日〜1週間に1回の割合で、かつ、0.5〜2.5時間の範囲内で連続して実施しているのに対し、刊行物1には間欠的に実施すると記載されているのみであり、その具体的な間隔及び時間については触れられていない点。
以下、上記相違点について検討する。
相違点(a)については、刊行物4に逆浸透膜装置における一般細菌の繁殖防止のために供給原水のpHを請1発明の範囲内である約3前後とすることが記載{上記摘示事項5.(ハ)}され、刊行物4に記載の発明と刊1発明とは膜分離における微生物対策として技術分野及び課題が共通しているから、刊1発明における供給水のpHに代えて刊行物4に記載の発明のpHを適用し、約3前後とすることは、当業者が容易に想到し得るものであり、さらに、組み合わせた点による効果も予測し得るものである。
相違点(b)については、刊1発明の酸性水処理工程を間けつ的に実施する目的は膜の殺菌であるから、その目的を達成するのに必要な時間だけ酸性水処理工程を連続して実施し、酸性水処理工程の停止後、膜に菌が繁殖しないような間隔で再度酸性水処理工程を連続して実施するものであることは明らかである。そして、その具体的な時間及び間隔は原水の種類や用いるpH等によって変わるものである。一方、請1発明は原水の種類も特定されておらず、その時間及び間隔は比較的広範囲で、かつ、常識的範囲内のものである。してみると、酸性水処理工程の間隔及び時間は、原水の種類や用いるpH等に応じて実験等により当業者が適宜設定できる程度のものといわざるをえない。
以上のとおりであるから、請1発明は刊行物1および4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認める。
(2)請求項2に係る発明について
請求項2に係る発明は、請1発明を引用し「逆浸透膜を用いる」という構成を更に附加したものであるが、その附加された構成は刊行物1に記載{上記摘示事項5.(イ)〜(ロ)}されているから、請求項2に係る発明と刊1発明とを対比すると、上記(a)〜(b)の点で相違している。相違点(a)〜(b)については上記6.(1)に記載したとおりであるから、請求項2に係る発明は刊行物1および4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認める。
(3)請求項3に係る発明について
請求項3に係る発明は、請求項1または2に係る発明を引用し「供給水として海水を用いる」という構成を更に附加したものであるが、その附加された構成は刊行物1に記載{上記摘示事項5.(ロ)}されているから、請求項3に係る発明と刊1発明とを対比すると、上記(a)〜(b)の点で相違している。相違点(a)〜(b)については上記6.(1)に記載したとおりであるから、請求項3に係る発明は刊行物1および4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認める。
(4)請求項4に係る発明について
請求項4に係る発明(以下「請4発明」という)は、請求項1〜3のいずれかに係る発明を引用し「供給水中の硫酸濃度が120ppm以上となるように硫酸を供給水に添加する」という構成を更に附加したものであるから、請4発明と刊1発明とを対比すると、上記(a)〜(b)に加えて(c)請4発明は供給水中の硫酸濃度が120ppm以上となるように硫酸を供給水に添加しているのに対し、刊行物1には酸性水処理工程で添加する酸の種類及びその濃度については記載されていない点で相違している。相違点(a)〜(b)については上記6.(1)に記載したとおりであるから、相違点(c)について検討する。刊行物7に硫酸濃度120ppm以上で生存微生物の約96%以上が殺滅されること{上記摘示事項5.(ト)}が記載され、硫酸濃度120ppm以上での殺菌作用が知られているから、これを刊1発明の酸性水処理工程に適用し、供給水中の硫酸濃度が120ppm以上となるように硫酸を供給水に添加するように構成することは、当業者が容易に想到し得るものと認められる。よって、請4発明は刊行物1、4、7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認める。
(5)請求項5に係る発明について
請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれかに係る発明の膜の殺菌方法を用いた造水方法であるが、造水に適用することは刊行物1に記載{上記摘示事項5.(ロ)}されているから、請求項5に係る発明と刊1発明とを対比すると、上記(a)〜(c)の点で相違している。相違点(a)〜(c)については上記6.(1)及び(4)に記載したとおりであるから、請求項5に係る発明は刊行物1、4、7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認める。
(6)請求項6に係る発明について
請求項6に係る発明は、請求項5に係る発明を引用し「膜分離装置の前段に前処理装置を設け、この前処理装置に供給する水に塩素を間欠的に供給する」という構成を更に附加したものであるから、この附加された構成について検討する。
刊行物6には、上記摘示事項5.(ニ)〜(ヘ)より、逆浸透装置の前段にろ過装置を設け、このろ過装置に供給する原水に塩素を間欠的に供給することが記載され、この逆浸透装置は膜分離装置であること及びろ過装置はその前処理装置であることは明らかであるから、膜分離装置の前段に前処理装置を設け、この前処理装置に供給する水に塩素を間欠的に供給することが記載されていると云える。そして、刊行物1には膜分離装置に前処理装置を設けることが記載{上記摘示事項5.(イ)〜(ロ)}されているから、刊1発明の前処理装置として刊行物7記載のものを適用して、膜分離装置の前段に前処理装置を設け、この前処理装置に供給する水に塩素を間欠的に供給するように構成することは当業者が容易に想到し得るものであり、さらに、組み合わせた点による効果も予測し得るものである。よって、請求項6に係る発明は刊行物1、4、6、7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認める。
(7)請求項7に係る発明について
請求項7に係る発明は、請求項6に係る発明を引用し「塩素の供給に対応して、膜分離装置へ供給する供給水に還元剤を供給する」という構成を更に附加したものであるから、この附加された構成について検討する。
刊行物1にモジュールの直前において塩素を還元剤で除去することが記載{上記摘示事項5.(イ)}され、この還元剤は塩素の除去のためであるから、塩素の供給に対応して還元剤を供給するように構成することは技術的にみて当然のことであり、当業者が容易に想到し得るものと認められる。よって、請求項7に係る発明は刊行物1、4、6、7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認める。
(8)請求項8に係る発明について
刊行物1には、上記摘示事項5.(イ)〜(ロ)より、海水淡水化逆浸透プロセスに適用すること、間けつ的にpHを2程度まで下げるといった低pH運転を行うことが記載されているから、「逆浸透装置と、逆浸透装置へ供給する供給水に低pH水を間けつ的に供給しpHを2程度にする手段を有する海水淡水化装置」が記載されていると云える。
そこで、本件の請求項8に係る発明(以下「請8発明」という)と刊行物1に記載された発明(以下「刊1発明」という)とを対比すると、刊1発明の「低pH水」は請8発明の「酸性水」に、同じく「海水淡水化装置」は「水処理装置」に、それぞれ相当し、また、刊1発明の逆浸透装置は逆浸透膜を分離膜とする膜分離装置であることは明らかであるから、両者は「逆浸透膜を分離膜とする膜分離装置と、膜分離装置へ供給する供給水に酸性水を間欠的に供給し低pHにする手段とを有していることを特徴とする水処理装置」である点で一致し、以下の点で相違している。
(d)酸性水供給時の供給水のpHが、請8発明は2.5〜4の範囲内であるのに対し、刊1発明は2程度である点。
(e)酸性水供給の間隔及び時間が、請8発明は1日〜1週間に1回の割合で、かつ、0.5〜2.5時間の範囲内で連続して供給しているのに対し、刊行物1には間欠的に行うと記載されているのみであり、その具体的な間隔及び時間については触れられていない点。
以下、上記相違点について検討する。
相違点(d)については、刊行物4に逆浸透膜装置における一般細菌の繁殖防止のために供給原水のpHを請8発明の範囲内である約3前後とすることが記載{上記摘示事項5.(ハ)}され、刊行物4に記載の発明と刊1発明とは膜分離における微生物対策として技術分野及び課題が共通しているから、刊1発明における供給水のpHに代えて刊行物4に記載の発明のpHを適用し、約3前後とすることは、当業者が容易に想到し得るものであり、さらに、組み合わせた点による効果も予測し得るものである。
相違点(e)については、刊1発明の酸性水を間けつ的に供給する目的は膜の殺菌であるから、その目的を達成するのに必要な時間だけ酸性水を連続して供給し、酸性水の供給停止後、膜に菌が繁殖しないような間隔で再度酸性水を連続して供給するものであることは明らかである。そして、その具体的な時間及び間隔は原水の種類や用いるpH等によって変わるものである。一方、請8発明は原水の種類も特定されておらず、その時間及び間隔は比較的広範囲で、かつ、常識的範囲内のものである。してみると、酸性水供給の間隔及び時間は、原水の種類や用いるpH等に応じて実験等により当業者が適宜設定できる程度のものといわざるをえない。
以上のとおりであるから、請8発明は刊行物1および4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認める。
(9)請求項9に係る発明について
請求項9に係る発明は、請求項8に係る発明を引用し「供給水が海水である」という構成を更に附加したものであるが、その附加された構成は刊行物1に記載{上記摘示事項5.(ロ)}されているから、請求項9に係る発明と刊1発明とを対比すると、上記(d)〜(e)の点で相違している。相違点(d)〜(e)については上記6.(8)に記載したとおりであるから、請求項9に係る発明は刊行物1および4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認める。
(10)請求項10に係る発明について
請求項10に係る発明は、請求項9に係る発明を引用し「酸性水が硫酸を含んでいる」という構成を更に附加したものであるから、この附加された構成について検討する。
刊行物1にpH調整のため添加する酸としては、膜の分離性能の点からは硫酸が好ましい{上記摘示事項5.(イ)}と記載され、膜分離において硫酸の添加が好ましいことが知られているから、酸性水として硫酸を添加したものを用いることは当業者が容易に想到し得るものと認められる。よって、請求項10に係る発明は刊行物1、4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認める。
7.むすび
以上のとおりであるから、本件の訂正後の請求項1ないし10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反するものであり、同法第113条第2項に該当し、特許を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
膜の殺菌方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜分離装置を用いて水を分離精製しながら、膜分離装置へ供給する供給水のpHを2.5〜4の範囲内にする酸性水処理工程を1日〜1週間に1回の割合で間欠的に、かつ、0.5〜2.5時間の範囲内で連続して実施することを特徴とする膜の殺菌方法。
【請求項2】
逆浸透膜を用いる、請求項1に記載の膜の殺菌方法。
【請求項3】
供給水として海水を用いる、請求項1または2に記載の膜の殺菌方法。
【請求項4】
供給水中の硫酸濃度が120ppm以上となるように硫酸を供給水に添加する、請求項1〜3のいずれかに記載の膜の殺菌方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の膜の殺菌方法を用いることを特徴とする造水方法。
【請求項6】
膜分離装置の前段に前処理装置を設け、この前処理装置に供給する水に塩素を間欠的に供給する、請求項5に記載の造水方法。
【請求項7】
塩素の供給に対応して、膜分離装置へ供給する供給水に還元剤を供給する、請求項6に記載の造水方法。
【請求項8】
逆浸透膜を分離膜とする膜分離装置と、膜分離装置へ供給する供給水に酸性水を1日〜1週間に1回の割合で間欠的に、かつ、0.5〜2.5時間の範囲内で連続して供給しpHを2.5〜4の範囲内にする手段とを有していることを特徴とする水処理装置。
【請求項9】
供給水が海水である、請求項8に記載の水処理装置。
【請求項10】
酸性水が硫酸を含んでいる、請求項9に記載の水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【発明の属する技術分野】本発明は膜分離を行う際の、特に逆浸透法による脱塩、分離、更には逆浸透法による海水淡水化を行う際の、膜の殺菌方法に関するものである。
【従来の技術】膜による分離技術は、海水及びカン水の淡水化、医療、工業用純水、超純水の製造、工業廃水処理など幅広い分野に利用されている。これら膜分離において、微生物による分離装置の汚染は、得られる透過水の水質悪化や、膜面上での微生物増殖あるいは微生物およびその代謝物の膜面への付着などによる膜の透過性、分離性の低下をもたらす。このような重要な問題を回避するため、膜分離装置の殺菌法が種々提案されているが、一般的には殺菌剤を常時、あるいは間欠的に供給液に添加する方法がとられている。殺菌剤としては、実績があり、価格、操作面でも有利な塩素系殺菌剤を0.1〜50ppm程度の濃度になるよう添加するのが最も一般的である。ただし塩素系殺菌剤は逆浸透膜の化学的劣化をもたらすため、該殺菌剤を使用した場合は逆浸透膜に供給する前に、還元剤を用いて遊離塩素を還元する必要がある。還元剤としては一般的に亜硫酸水素ナトリウムを1〜10倍当量添加する。これは残存殺菌剤を完全に消去すると同時に、還元剤が溶存酸素とも反応することを考慮した濃度である。ところが、本方法で運転を続けても膜性能の低下する場合があることから、このような操作方法が微生物を殺菌するのに必ずしも充分ではないことが明らかになってきた。これについては、塩素を添加することによって、供給液中に存在する有機炭素が酸化され、微生物に分解されやすい化合物に変換されるという説もある(A.B.Hamida and I.Moch,jr.,Desalination&Water Reuse,6/3,40〜45,(1996).)が、実証はされていない。そこで間欠的に亜硫酸水素ナトリウムを、通常500ppmの濃度で添加することによって殺菌する方法が開発され、一般的に使用されるに至ったが、本方法も場合によって有効とは言い難く、微生物が膜に堆積することが次第に明らかになってきている。
【発明が解決しようとする課題】亜硫酸水素ナトリウムの殺菌効果としては、供給液中の酸素を除去できること、pHを低下させること、などが挙げられる。しかし膜装置の運転に際して、亜硫酸水素ナトリウムの間欠添加の殺菌が効果的とは言い難い現状である。本発明者らはその原因を究明し、中性〜弱アルカリ性で生息する一般の好気性細菌にとって嫌気状態は、生育は押さえられても死に至る環境ではなく、むしろpHの低下が最も殺菌に有効であるという結論に達した。これは微生物学的に見ても矛盾しない結論といえる。一方海水のように塩濃度の高い供給液では、500ppmという高濃度の亜硫酸水素ナトリウムを添加しても、一般の細菌は死滅するほどpHが下がらないことが判明した。従って、より低濃度の塩を含む供給液においても、亜硫酸水素ナトリウムの殺菌効果が、嫌気状態になることが原因ではなく、pHの低下が効果的であり、高価な亜硫酸水素ナトリウムを高濃度添加する必要はなく、単に硫酸など安価な酸を添加してpHを低下させるだけで、充分殺菌できることを見出し、本発明に到達したものである。
【課題を解決するための手段】本発明の目的は下記の構成により達成される。即ち本発明は、「膜分離装置を用いて水を分離精製しながら、膜分離装置へ供給する供給水のpHを2.5〜4の範囲内にする酸性水処理工程を1日〜1週間に1回の割合で間欠的に、かつ、0.5〜2.5時間の範囲内で連続して実施することを特徴とする膜の殺菌方法。」、「上記に記載の膜の殺菌方法を用いることを特徴とする造水方法」、「逆浸透膜を分離膜とする膜分離装置と、膜分離装置へ供給する供給水に酸性水を1日〜1週間に1回の割合で間欠的に、かつ、0.5〜2.5時間の範囲内で連続して供給しpHを2.5〜4の範囲内にする手段とを有していることを特徴とする水処理装置。」からなるものである。
【発明の実施の形態】本発明において、膜分離装置とは造水、濃縮、分離などの目的で、被処理液を加圧下で膜モジュールに供給し、透過液と濃縮液に分離するための装置をいう。膜モジュールには逆浸透膜モジュール、限外ろ過膜モジュール、精密ろ過膜モジュールなどがあり、膜分離装置はそこで主に使用する膜モジュールの種類によって逆浸透膜装置、限外ろ過膜装置、精密ろ過膜装置に分けられるが、具体的には逆浸透膜装置が挙げられる。逆浸透膜装置は、通常は逆浸透膜エレメント、耐圧容器、加圧ポンプなどで構成される。該逆浸透膜装置に供給される被分離液は通常、殺菌剤、凝集剤、さらに還元剤、pH調整剤などの薬液添加と凝集、沈殿、砂濾過、ポリッシングろ過、活性炭濾過、精密ろ過、限外ろ過、保安フィルターなどの前処理が行なわれる。例えば、海水の脱塩の場合には、海水を取込んだ後、沈殿池で粒子などを分離し、またここで塩素などの殺菌剤を添加して殺菌を行なう。さらに塩化鉄、ポリ塩化アルミニウムなどの凝集剤を添加して砂濾過を行なう。濾液は貯槽に貯められ、硫酸などでpHを調整した後高圧ポンプに送られる。この送液中に亜硫酸水素ナトリウムなどの還元剤を添加して殺菌剤を消去し、保安フィルターを透過した後、高圧ポンプで昇圧されて逆浸透モジュールに供給される。ただし、これらの前処理は用いる供給液の種類、用途に応じて適宜採用される。
ここで逆浸透膜とは、被分離混合液中の一部の成分、例えば溶媒を透過させ他の成分を透過させない半透性の膜である。ナノフィルトレーション膜またはルースRO膜なども広い意味では逆浸透膜に含まれる。その素材には酢酸セルロース系ポリマー、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ビニルポリマーなどの高分子素材がよく使用されている。またその膜構造は膜の少なくとも片面に緻密層を持ち、緻密層から膜内部あるいはもう片方の面に向けて徐々に大きな孔径の微細孔を有する非対称膜、非対称膜の緻密層の上に別の素材で形成された非常に薄い活性層を有する複合膜がある。膜形態には中空糸、平膜がある。中空糸、平膜の膜厚は10μm〜1mm、中空糸の外径は50μm〜4mmである。また平膜では非対称膜、複合膜は織物、編み物、不織布などの基材で支持されていることが好ましい。しかし、本発明の方法は、逆浸透膜の素材、膜構造や膜形態によらず利用することができ、いずれも効果がある。代表的な逆浸透膜としては、例えば酢酸セルロース系やポリアミド系の非対称膜およびポリアミド系、ポリ尿素系の活性層を有する複合膜などがあげられる。これらの中でも、酢酸セルロース系の非対称膜、ポリアミド系の複合膜に本発明の方法が有効であり、さらに芳香族系のポリアミド複合膜では効果が大きい(特開昭62-121603号公報、特開平8-138658号公報、米国特許第4277344号明細書)。
逆浸透膜モジュールとは、上記逆浸透膜を実際に使用するために形態化したものであり、平膜はスパイラル、チューブラー、プレート・アンド・フレームのモジュールに組み込んで、また中空糸は束ねた上でモジュールに組み込んで使用することができるが、本発明はこれらの逆浸透膜モジュールの形態に左右されるものではない。
また、逆浸透膜モジュールはスパイラル形状では供給水の流路材、透過水流路材などの部材を組み込んでおり、これら部材の構成はいずれの物を用いても良いが特に高濃度用、高圧用に設計されたモジュールで効果がある(特開平9-141060号公報、特開平9-141067号公報)。
逆浸透膜装置の運転圧力は0.1MPa〜15MPaであり、供給液の種類、運転方法などで適宜使い分けられる。かん水や超純水など浸透圧の低い溶液を供給液とする場合には比較的低圧で、海水淡水化や廃水処理、有用物の回収などの場合には比較的高圧で使用される。
逆浸透膜装置の運転温度は0℃から100℃の範囲であり、0℃よりも低いと供給液が凍結して使用できず、100℃よりも高い場合には供給液の蒸発が起こり使用できない。
また、分離装置の回収率は5から100%まで分離操作、装置に応じて設定することが出来る。逆浸透膜装置の回収率は5から98%の間で適宜選択することが出来る。ただし、供給液や濃縮液の性状、濃度、浸透圧に応じて前処理、運転圧力、を考慮しなければならない(特開平8-108048号公報)。例えば海水淡水化の場合には、通常10〜40%、高効率の装置の場合には40〜70%の回収率である。かん水淡水化や超純水製造の場合には70%以上、90〜95%の回収率で運転することもできる。
逆浸透装置の構成は主に高圧ポンプと逆浸透膜モジュールからなるが、高圧ポンプは装置の運転圧力に応じて最適のポンプを選定することができる。
また、逆浸透膜モジュールの配列は1段で使用することもできるが供給水に対して直列、並列に多段に配列することが出来る。直列に配列する場合は逆浸透膜モジュールの間に昇圧ポンプを設置することが出来る。海水淡水化の直列の配列では装置コストの観点から特に2段の配列が好ましく、直列に配列したモジュールの間に昇圧ポンプを設置して供給液を1.0〜5.0MPa程度、昇圧して後段のモジュールに供給することが好ましい(特開平8-108048号公報)。供給液に対して直列に配列した場合には膜モジュールと供給水が接触する時間が長いので本発明の方法の効果が大きい。さらに、逆浸透膜モジュールは透過水に対して直列に配列することもできる。透過水の水質が不十分な場合や透過水中の溶質成分を回収したい場合には好ましい方法である。透過水に対して直列に配列する場合には、間にポンプを設置し、透過水を再び加圧するか、前段で余分に圧力をかけておき背圧をかけて膜分離することが出来る。透過水に対して直列に配置する場合には後ろの膜モジュール部分の殺菌を行うために酸の添加装置を膜モジュールと膜モジュールの間に設ける。
逆浸透膜の装置においては供給水のうち膜を透過しなかった部分は濃縮水として膜モジュールから取り出される。この濃縮水は用途に応じて処理した後に廃棄したり、さらに他の方法で濃縮することも可能である。また、濃縮水はその一部又は全てを供給水に循環することもできる。膜を透過した部分においても用途に応じて廃棄したり、そのまま利用したり、あるいは供給水にその一部又は全てを循環することができる。
一般に逆浸透装置の濃縮水は圧力エネルギーを有しており、運転コストの低減化のためにはこのエネルギーを回収することが好ましい。エネルギー回収の方法としては任意の部分の高圧ポンプに取り付けたエネルギー回収装置で回収することもできるが、高圧ポンプの前後や、モジュールの間に取り付けた専用のタービンタイプのエネルギー回収ポンプで回収することが好ましい。また、膜分離装置の処理能力は一日当たり水量で0.5m3〜100万m3の装置である。
また本発明が使用される分離装置では、装置配管は出来るだけ滞留部の少ない構造とすることが好ましい。
本発明において、pHを4以下にすることは膜に対して高い殺菌効果を提供する上で極めて重要であり、特に海水を供給水として使用する膜濾過においてこの効果は顕著である。微生物の死滅するpHは個々の微生物に特有であり、例えば大腸菌の場合生育の下限はpH4.6であるが、死滅はpH3.4以下でおこる。一方海水中にも多種多様の微生物が存在し、それぞれ死滅するpHが異なる。しかし、本発明において、多種の生菌を含む海水をpH4以下に一定時間保持すれば、50〜100%を死滅させることが可能である。またpH3.9以下の酸性度、さらにpH3.7以下の酸性度も、海水由来の菌を死滅させるという観点で好ましい範囲である。pHを所望の状態にするためには、通常は酸を用いる。酸としては、有機酸、無機酸いずれを用いても差し支えないが、経済的な面を考えると、硫酸を用いることが好ましい。また硫酸の添加量は供給液の塩濃度に比例する。例えば加圧滅菌(120℃、15分)した生理食塩水(食塩濃度0.9%)では硫酸50ppmの添加でpH3.2まで低下するが、加圧滅菌(120℃、15分)した3カ所の海水および市販の人工海水(塩濃度約3.5%)では、硫酸を100ppm添加した場合でもpH5.0〜5.8であった。これは主に海水のMアルカリ度によって大きく変動すると考えられる。さらにpH4以下にするためには、120ppm以上の添加が好ましい。最大添加量は経済性や配管等設備への影響を考えると、400ppm、更に好ましくは300ppmである。なお上記の海水、人工海水への硫酸添加濃度を更に150ppm、200ppmとすると、それぞれpH3.2〜3.6、pH2.8〜2.9と、添加濃度が高くなるに従ってpH変動は減少する。
本発明の膜の殺菌は、被処理水が前処理を終えて膜モジュールに供給される工程において、間欠的に実施される。その添加時間、添加頻度は、使用場所、使用条件などで大きく異なる。例えば、0.5〜2.5時間の添加を1日ごと、1週間ごと、と言った間隔で行うことができる。これらは膜の透過水量の減少、濃縮液の生菌数や含有有機炭素の増加、膜圧の上昇などによって変動する。
さらに、本願の殺菌方法は、塩素などの他の殺菌方法と併用することも可能である。
本発明の膜の殺菌方法は、単に膜分離装置のみならず、膜分離装置を一部に含む水の分離システムにも適用できる。例えば以下に示す構成のシステムである。
A.取水装置。これは原水を取り込む装置であって、通常取水ポンプ、薬品注入設備などで構成される。
B.取水装置に連通した前処理装置。これは分離膜装置に供給する水を前処理して所望の程度まで精製するものである。例えば以下の順に構成することができる。
B-1 凝集濾過装置。
B-2 ポリッシング濾過装置。ただし前記B-1、B-2の替わりに限外濾過装置や精密濾過装置を用いても良い。
B-3 凝集剤、殺菌剤、pH調整剤などの薬品注入設備。
C.前処理装置に連通し必要に応じて設置される中間槽。これは水量調節、水質の緩衝作用の機能を提供するものである。
D.Cを設置する場合には中間槽に連通し、またはCを設置しない場合には前処理装置から連通したフィルター。これは膜分離装置に供給される水の固形不純物を除去する。
E.膜分離装置。高圧ポンプおよび分離膜モジュールからなる。膜分離装置は複数設置して、これらを並列に設置しても、直列に設置してもよい。直列に設定する場合には、後段の分離膜装置に供給する水圧を上げるためのポンプを膜分離装置間に設けることができる。
F.膜分離装置の膜透過側出口部分に連通した後処理装置。以下の装置が例示される。
F-1 脱気装置。これは脱炭酸の機能を有するものである。
F-2 カルシウム塔。
F-3 塩素注入。
G.膜分離装置の原水側出口部分に連通した後処理装置。以下の装置が例示される。
G-1 pHを4とした供給液を処理する装置。例えば中和装置。
G-2 放流設備。
H.その他、廃水の処理装置を適宜設けても良い。
このような装置においては任意のところにポンプを設けることができる。またpHを4と以下とするために薬剤または薬剤の溶液を添加するのは、Aの取水装置、Bの前処理装置において、もしくは前処理装置の前、または、Dのフィルターの前、もしくはフィルターの後であることが好ましい。
また、本願発明の効果をより高めるために、酸添加装置は自動制御できるものが好ましく、適宜注入量をコントロールできるポンプを備え付けていることが好ましい。また、コントロールのために装置内の適当な箇所に供給液、濃縮液のpHを測定する装置を備え付けていることが好ましい。また、間欠的添加をコントロールするために時間を測定できる装置を有していることが好ましい。さらに好ましくは自動運転できる自動制御装置を具備してなることが好ましい。
本願発明の装置はその構成部材、例えば配管、バルブなどはpH4以下の条件で変化しにくいものを使用する。
pHを4以下とすることによって高い殺菌効果が得られると同時に、配管内のスケールを除去できるという効果も得ることができる。さらには、塩素等の酸化物による膜劣化を防止するために亜硫酸水素ナトリウムを添加する場合があるが、その添加量が膜面上に付着する微生物(イオウ細菌などが考えられる)、金属塩等の影響で、増加するような場合に、本発明の酸性水によって膜分離装置を処理によってその添加量を著しく低減できる効果も得ることができる。
本発明の方法は、膜を用いる分離に好適に使用できるが、特に水溶液の分離に効果が大きい。さらに、分離の用途としては精密ろ過膜を用いた液体と固形分の分離・濃縮、限外ろ過膜を用いた濁質分の分離・濃縮、逆浸透膜を用いた溶解成分の分離・濃縮に効果がある。特に、海水の淡水化や、かん水の淡水化、工業用水の製造、超純水、純水の製造、医薬用水の製造、食品の濃縮、水道原水の除濁、水道における高度処理で効果が大きい。従来の酸化性殺菌剤で分解しやすい有機物、等を分離・濃縮する場合にも、殺菌による分解なしで濃縮、回収することができ、本発明の方法の効果が大きい。また、飲料水製造の場合には塩素殺菌によるトリハロメタン発生を防止できる効果がある。特に本発明の殺菌方法は海水に起因する菌に対して有効である。
一般に、膜分離装置より前に供給水を処理する工程、例えば前記A〜Dの装置における殺菌は、いずれかのところで、従来の技術の欄で説明したとおり塩素系殺菌剤の連続、又は間欠注入が実施されている。この方法により供給水は耐性菌が出現しない限りほぼ完全に殺菌できるが、塩素系殺菌剤が通常は逆浸透膜の化学的劣化をもたらすため、膜分離装置の手前で亜硫酸水素ナトリウムを代表とする還元剤を添加する。しかし、還元剤により塩素を除去した後の供給水は微生物が容易に繁殖できる状態となる。しかも殺菌剤添加前の原海水のように種々雑多な微生物ではなく、かなり選別された微生物群がそこに存在し、その中には耐酸性菌も多く含まれることになる。また亜硫酸水素ナトリウムを代表とする還元剤添加が不充分な場合は、塩素系殺菌剤が完全には消去できずに膜の劣化をもたらす場合があるが、一方過剰添加することによってある種の細菌が繁殖することもある。従って本発明の膜分離装置の供給液に、硫酸などの酸を添加して殺菌方法を実施する際には、塩素系殺菌剤を添加しないことが好ましいが、この場合は逆に前の処理工程で生物が繁殖することになる。
この問題に対しては、間欠的に、前工程において塩素系殺菌剤、および膜分離装置への供給前に還元剤を注入することによって、非注入時に前処理工程の配管や濾過槽等に付着、堆積した生物を殺菌することで解決される。この方法によれば、同時に膜の劣化を防止するためにも有効である。塩素系殺菌剤の時間的な注入間隔は原海水の水質、すなわち生物の存在状態に合わせて、1日〜6ヶ月に1回、30分〜2時間程度実施すればよい。この塩素系殺菌剤の添加時期に合わせて、かつ塩素系添加剤を含有する水の移動にともなった時間に、前処理装置と膜分離装置との間に還元剤を供給して、塩素系殺菌剤を非活性化するのがよい。さらに、その時期に合わせて膜分離装置の供給液に、本発明の硫酸などの酸を添加して、膜分離装置の殺菌を実施するのがよい。この様な、前処理工程に対する間欠的塩素殺菌剤注入方法は、連続的な殺菌剤の注入に対して、薬品代など処理費の著しい低減効果をもたらすが、これは本発明の酸による膜分離装置の殺菌方法が存在してはじめて達成されるもので、従来の高濃度の亜硫酸水素ナトリウム添加による膜の殺菌方法では、殺菌効果が不十分なため到底実施できるものではなかったのである。
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
参考例1
加圧滅菌(120℃、15分)後硫酸を添加してpHを調整した生理食塩水(食塩濃度0.9%)に、大腸菌(Escherichia coli K12 IFO 3301)の懸濁液をそれぞれ一定量ずつ加え、20℃で一定時間保持した後に残存する生菌数を添加時の生菌数で割って生存率を求めた。この結果、硫酸10ppmの添加(pH4.7)では2.5時間保持しても生存率は90%以上であったが、50ppmの添加(pH3.2)では、0.5時間の保持で生存率が90%、1時間で20%、2.5時間で1%以下となった。硫酸を100ppm添加すれば、0.5時間の保持で1%以下の生存率となった。
参考例2
加圧滅菌(120℃、15分)後硫酸を添加してpHを調整した市販の3.5%人工海水に、実施例1で使用した大腸菌、海水の脱塩に使用した逆浸透膜の堆積物懸濁液、およびその懸濁液から分離した中で最も数の多かった未同定細菌をそれぞれ一定量ずつ加え、20℃で一定時間保持した後の生存率を求めて表1の結果を得た。なお比較のため、硫酸に代えて亜硫酸水素ナトリウムを500ppm添加した結果も列記した。表1から、pH4.0以下に0.5時間以上保持することによって極めて高い殺菌効果が提供されることが理解できる。
【表1】

実施例1
海水を供給水として用い、ポリアミドからなる逆浸透膜を用いた膜分離装置2機を同時並行で運転し、淡水への逆浸透濾過を行った。このうち1機は、前処理後の海水に硫酸を加えてpHを3.5〜4.0に調整した供給水を、1日に30分通水した。1ヶ月間連続運転を行った結果、硫酸を加えなかったほうの装置は膜圧の上昇が見られたが、硫酸を加えたほうは変化がなかった。また通常運転時に濾過濃縮水の生菌数を測定したところ、硫酸処理を行った後の装置では、硫酸処理をしていない装置と比較して、1/100以下に減少していた。
実施例2
寒天塗抹法で測定した生菌数が1mlあたり200個である海水を供給水として用い、ポリアミドからなる逆浸透膜を用いた膜分離装置を運転して逆浸透分離を行った。前処理工程において供給海水に塩素の残存濃度が1ppmとなるよう塩素系殺菌剤を連続添加し、逆浸透膜モジュールの手前で亜硫酸水素ナトリウムを添加した。亜硫酸水素ナトリウムの添加濃度は、逆浸透膜モジュールから排出されるブライン中の残存濃度が1ppm以上になるように調節した。亜硫酸水素ナトリウムの消費量は当初5ppmであったのが、10日間連続運転を行った結果、35ppmまで上昇した。この間膜差圧は約0.01MPa上昇した。硫酸を加えてpHを3〜4に調整した供給水を、1日30分通水したところ、亜硫酸水素ナトリウムの消費量は8ppmまで減少した。その時の膜差圧は0.01MPa上昇した状態を維持していた。
実施例3
寒天塗抹法で測定した生菌数が1mlあたり20万個である海水を供給水として用い、ポリアミドからなる逆浸透膜を用いた膜分離装置を運転して逆浸透分離を行った。前処理工程では塩素系殺菌剤を1ppm、脱塩素剤として亜硫酸水素ナトリウムを6ppm、それぞれ連続注入し、膜分離工程では亜硫酸水素ナトリウム500ppmを1週間に1時間添加した。約1ヶ月経過後膜差圧は約0.02MPa上昇した。同じ装置を用いて、前処理工程では、塩素系殺菌剤1ppmを1日1時間、亜硫酸水素ナトリウム6ppmを1日3時間それぞれ間欠的に添加し、膜分離工程では硫酸を加えてpH4に調整した供給水を1日1時間通水した。約1ヶ月経過しても膜差圧はほとんど変化しなかった。
実施例4
前処理工程までは実施例3の後半と同じ条件で、膜分離工程での殺菌を行わないで50日間運転した結果、膜差圧が0.03MPa上昇した。この時点から膜分離工程で硫酸を加えてpH3に調整した供給水を1日1時間通水した結果、8日後には膜差圧が0.015MPa低下した。さらに膜分離工程での殺菌を中止して20日間運転した結果、膜差圧が0.02MPa上昇した。この時点から膜分離工程で硫酸を加えてpH4に調整した供給水を1日1時間通水した結果、12日後には膜差圧が0.012MPa低下した。
【発明の効果】膜分離装置を用いて水を精製する際に、膜面あるいは膜付近に存在する微生物を殺菌する方法として、従来用いられてきた高濃度亜硫酸水素ナトリウムの間欠添加に比べ、本発明の方法によれば確実な殺菌が可能となる。
 
訂正の要旨 特許第3087750号の明細書を、
特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的として、
訂正事項a:特許請求の範囲の「【請求項1】膜分離装置を用いて水を分離精製しながら、膜分離装置へ供給する供給水のpHを4以下にする酸性水処理工程を実施することを特徴とする膜の殺菌方法。【請求項2】酸性水処理工程を、0.5〜2.5時間の範囲内で連続して実施する、請求項1に記載の膜の殺菌方法。【請求項3】酸性水処理工程を、1日〜1ヶ月に1回の割合で実施する、請求項1または2に記載の膜の殺菌方法。【請求項4】逆浸透膜を用いる、請求項1〜3のいずれかに記載の膜の殺菌方法。【請求項5】供給水として海水を用いる、請求項1〜4のいずれかに記載の膜の殺菌方法。【請求項6】供給水中の硫酸濃度が120ppm以上となるように硫酸を供給水に添加する、請求項1〜5のいずれかに記載の膜の殺菌方法。【請求項7】請求項1〜6のいずれかに記載の膜の殺菌方法を用いることを特徴とする造水方法。【請求項8】膜分離装置の前段に前処理装置を設け、この前処理装置に供給する水に塩素を間欠的に供給する、請求項7に記載の造水方法。【請求項9】塩素の供給に対応して、膜分離装置へ供給する供給水に還元剤を供給する、請求項8に記載の造水方法。【請求項10】逆浸透膜を分離膜とする膜分離装置と、膜分離装置へ供給する供給水に酸性水を供給する手段とを有していることを特徴とする水処理装置。【請求項11】供給水が海水である、請求項10に記載の水処理装置。【請求項12】酸性水が硫酸を含んでいる、請求項10または11に記載の水処理装置。」を「【請求項1】膜分離装置を用いて水を分離精製しながら、膜分離装置へ供給する供給水のpHを2.5〜4の範囲内にする酸性水処理工程を1日〜1週間に1回の割合で間欠的に、かつ、0.5〜2.5時間の範囲内で連続して実施することを特徴とする膜の殺菌方法。【請求項2】逆浸透膜を用いる、請求項1に記載の膜の殺菌方法。【請求項3】供給水として海水を用いる、請求項1または2に記載の膜の殺菌方法。【請求項4】供給水中の硫酸濃度が120ppm以上となるように硫酸を供給水に添加する、請求項1〜3のいずれかに記載の膜の殺菌方法。【請求項5】請求項1〜4のいずれかに記載の膜の殺菌方法を用いることを特徴とする造水方法。【請求項6】膜分離装置の前段に前処理装置を設け、この前処理装置に供給する水に塩素を間欠的に供給する、請求項5に記載の造水方法。【請求項7】塩素の供給に対応して、膜分離装置へ供給する供給水に還元剤を供給する、請求項6に記載の造水方法。【請求項8】逆浸透膜を分離膜とする膜分離装置と、膜分離装置へ供給する供給水に酸性水を1日〜1週間に1回の割合で間欠的に、かつ、0.5〜2.5時間の範囲内で連続して供給しpHを2.5〜4の範囲内にする手段とを有していることを特徴とする水処理装置。【請求項9】供給水が海水である、請求項8に記載の水処理装置。【請求項10】酸性水が硫酸を含んでいる、請求項9に記載の水処理装置。」と訂正し、
明りょうでない記載の釈明を目的として、
訂正事項b:明細書段落【0004】の「供給水のpHを4以下にする酸性水処理工程を実施する」を「供給水のpHを2.5〜4の範囲内にする酸性水処理工程を1日〜1週間に1回の割合で間欠的に、かつ、0.5〜2.5時間の範囲内で連続して実施する」と訂正し、
訂正事項c:明細書段落【0018】の「1日ごと、1週間ごと、1ヶ月ごと」を「1日ごと、1週間ごと」と訂正し、
誤記の訂正を目的として、
訂正事項d:明細書段落【0028】の「表2」を「表1」と訂正する。
異議決定日 2001-12-06 
出願番号 特願平11-104985
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (B01D)
最終処分 取消  
前審関与審査官 谷口 博  
特許庁審判長 石井 良夫
特許庁審判官 西村 和美
冨士 良宏
登録日 2000-07-14 
登録番号 特許第3087750号(P3087750)
権利者 東レ株式会社
発明の名称 膜の殺菌方法  
代理人 高木 千嘉  
代理人 西村 公佑  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ