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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F01D
管理番号 1057742
審判番号 審判1999-20723  
総通号数 30 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-10-14 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-12-27 
確定日 2002-04-25 
事件の表示 平成8年特許願第316049号「翼形の表面から保護コーティングを除去する方法」拒絶査定に対する審判事件[平成9年10月14日出願公開、特開平9-268903]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成8年11月27日(パリ条約による優先権主張1995年11月27日、米国)の出願であって、その請求項1〜16に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1〜16にそれぞれ記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「翼形の表面から保護コーティングを除去する方法において、除去されるべき保護コーティングおよびコーティング除去ステップの間において保護を必要とする離間した重要部位を有する翼形を用意するステップを含み、
前記翼形の前記重要部位のそれぞれに紫外線硬化型のマスキング材料を選択的に塗布することで前記重要部位をマスクするステップを含み、前記マスキング材料は、化学的な工程の間においてその両端が持ち上がったり漏れを起こさない十分な接着性を有しており、
前記UV硬化型のマスキング材料を硬化するステップを含み、および
前記翼形のマスクしない部分から前記保護コーティングを剥ぎ取るステップを含むことを特徴とする方法。」

2.刊行物記載の発明
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され、本出願の優先権主張の日前に頒布された米国特許第4,530,861号明細書(1985年7月23日発行。以下、「刊行物1」という。)には、
(イ)「この発明は、・・・翼の選択された表面の処理からマスクするためのマスキング方法及び装置に関する。」(第1欄5行〜8行)、
(ロ)「発明の背景 ・・・このような処理の例には、・・・コーティングの除去・・・が含まれる。広く用いられているマスキングの形態には、・・・選択された物品の保護すべき表面に・・・注がれる(flowed)硬化可能なプラスチックフィルムの適用が含まれる。・・・処理の後、保護フィルム・・・は除去されねばならない。・・・このようなマスキング方法は、・・・時間を要するとともに、保護マスクの端から処理媒体の有害な浸透を許してしまう。」(第1欄9行〜31行)、
(ハ)「処理から保護すべき翼表面を正確にマスク可能とし、翼にマスクを迅速に提供、除去可能とすることが、本発明の主要な目的である。」(第1欄37行〜41行)、
(ニ)「本発明の方法は、処理からマスクされるべき選択された表面を含む翼の第1の部分を、該選択された表面は第2の部分から離間させつつ、処理する方法に有用である。」(第1欄53行〜57行)、
と記載されている。
上記(イ)〜(ニ)の記載から、刊行物1には、従来技術として、
「翼の表面からコーティングを除去する方法において、除去されるべきコーティングおよびコーティング除去ステップの間において、保護を必要とする選択された表面を有する翼を用意するステップを含み、
前記翼の前記保護を必要とする選択された表面に硬化可能なプラスチックフィルムを選択的に注ぐことで前記保護を必要とする選択された表面をマスクするステップを含み、
前記翼のマスクしない部分から前記コーティングを剥ぎ取るステップを含む、方法」の発明(以下、「刊行物1記載の発明」)、及び、
「マスキングに、時間を要するとともに、保護マスクの端から処理媒体の有害な浸透を許してしまう、との課題」(以下、「刊行物1記載の課題」という。)のあることが、
それぞれ記載されているものと認められる。

また、原査定の拒絶の理由に引用され、本出願の優先権主張の日前に頒布された特開平4-34914号公報(以下、「刊行物2」という。)には、
(ホ)「エッチング耐性を持つ樹脂によりマスキング」(第1頁左下欄9行〜10行)、
(ヘ)「トリミング対象部分である所定面積部分の材料除去は、除去してはならない部分をマスキングした後の化学エッチングによるため、基板表面には何等の損傷をも与えず、その後の印刷工程上、問題となる傷を生じないで済む。」(第2頁左下欄14行〜18行)、
(ト)「この第一の実施例では、・・・まず、上記のような導体パターン2,2の全体を感光性樹脂3で覆った。実際に用いた感光性樹脂3は、・・・紫外線露光用液状フォト・レジストで・・・ある。・・・全体を紫外線UVに曝し、全てを感光させた。その結果、当該液状であったフォト・レジスト3は、・・・その全体が硬化した。・・・次いで、・・・硬化したフォト・レジスト3’の所定面積部分を除去し、当該フォト・レジスト3’に所定面積の開口4を開けた。このように加工したものを硝酸を満たした化学エッチング槽に入れ、反応性の化学エッチングを施した。・・・その後、水酸化ナトリウム溶液を用いて硬化したまま残存しているフォト・レジスト3’を除去し」(第3頁左上欄14行〜同頁左下欄4行)と記載されている。
これら(ホ)〜(ト)の記載からみて、刊行物2には、
「紫外線硬化型であって、硝酸による化学エッチングを施しても、保護すべき基板表面に何等の損傷をも与えず、問題となる傷を生じないで済む、マスキング樹脂」の発明(以下、「刊行物2記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。

3.対比
本願発明と上記の刊行物1記載の発明とを対比すると、それらの機能からみて、後者の「翼」は前者の「翼形」に、後者の「コーティング」は前者の「保護コーティング」に、後者の「保護を必要とする選択された表面」は前者の「保護を必要とする離間した重要部位」に、後者の「硬化可能なプラスチックフィルムを注ぐ」は前者の「硬化型のマスキング材料を塗布する」に、それぞれ相当する。また、後者の「プラスチックフィルム」は、「保護すべき表面に注がれる」かつ「硬化可能な」マスキング材料であるから、保護すべき表面に注がれたあと、当然に硬化されるステップを要するものというべきである。
してみれば、両者は、
「翼形の表面から保護コーティングを除去する方法において、除去されるべき保護コーティングおよびコーティング除去ステップの間において保護を必要とする離間した重要部位を有する翼形を用意するステップを含み、
前記翼形の前記重要部位のそれぞれに硬化型のマスキング材料を選択的に塗布することで前記重要部位をマスクするステップを含み、
前記硬化型のマスキング材料を硬化するステップを含み、および
前記翼形のマスクしない部分から前記保護コーティングを剥ぎ取るステップを含む、方法」で一致し、以下の点で相違する。
【相違点】硬化型のマスキング材料に関して、前者では、紫外線硬化型であって、化学的な工程の間においてその両端が持ち上がったり漏れを起こさない十分な接着性を有しているものであるのに対して、後者では、紫外線硬化型であるか否かが明らかではなく、また、マスクしているにもかかわらず、マスクの端から処理媒体の有害な浸透を許してしまうものである点。

4.当審の判断
そこで上記相違点につき、以下検討する。
上記相違点における本願発明の事項である「化学的な工程」とは、本願明細書の段落【0017】の記載をみると、「保護コーティングを除去するための酸による剥ぎ取り工程」を意味するものと認められる(なお、このような酸によって保護コーティングを除去することは、原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-42425号公報に記載されているように、本出願の優先権主張の日前、斯界において既知の事項である。)。
そして、刊行物2記載の発明の「硝酸による化学エッチング」及び「マスキング樹脂」はそれぞれ「化学的な工程」及び「マスキング材料」というべきものであって、また、刊行物2記載の発明のマスキング樹脂は、酸を用いる化学的な処理を施しても、保護すべき基板表面に何等の損傷をも与えず、問題となる傷を生じないで済むものであるから、本願発明と同様の、化学的な工程の間において漏れを起こさない十分な接着性を有しているものであるといわざるを得ない。さらに、刊行物2記載のような紫外線硬化型のマスキング材料を用いると、マスキングに時間を要しないことは、本出願の優先権主張の日前、マスキング技術の分野において周知の事項である(特に必要なら、特開平4-279089号公報の段落【0004】、特開平6-99134号公報の段落【0006】を参照)。
ところで、刊行物1記載の発明と刊行物2記載の発明とは、「マスキング」という同一の技術分野に属するとともに、刊行物2記載のマスキング材料が、「マスキングに、時間を要するとともに、保護マスクの端から処理媒体の有害な浸透を許してしまう」という、刊行物1記載の発明の抱える課題を解決することができるものであることは、当業者にとって容易に推測可能なことである。
してみれば、刊行物1記載の発明のマスキング材料に、刊行物2記載の発明のマスキング材料を適用して、上記相違点に係る事項を本願発明のように設けることは、当業者が容易になし得るものと認められる。
そして、本願発明の「化学的な漏れの問題を実質的に回避できる」、「塗布された場所に硬化するまでその場所にとどまるのに十分な粘性を有する」、「コーティングの取除きに関連した費用と時間を減じることができる」(本願明細書の段落【0005】〜【0007】)といった本願発明の目的の達成は、刊行物1、2記載の発明及び周知の事項から当業者が予測可能な範囲内のものであって、格別なものではないと認められる。

5.むすび
したがって、本願発明は、刊行物1、2記載の発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-11-14 
結審通知日 2001-11-26 
審決日 2001-12-07 
出願番号 特願平8-316049
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 阿部 寛田澤 英昭佐藤 正浩亀田 貴志  
特許庁審判長 西川 恵雄
特許庁審判官 飯塚 直樹
氏原 康宏
発明の名称 翼形の表面から保護コーティングを除去する方法  
代理人 鈴木 正剛  

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