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審決分類 審判 補正却下不服 (159条1項、163条1項、174条1項で準用)  G11B
管理番号 1057753
審判番号 補正2001-50098  
総通号数 30 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-05-31 
種別 補正却下不服の審決 
審判請求日 2001-10-18 
確定日 2002-05-01 
事件の表示 平成 4年特許願第292520号「小型光ディスク自動判別起動方式」において、平成11年10月29日付けでした手続補正に対してされた補正の却下の決定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 経緯
特許出願 平成 4年10月30日
手続補正書 平成11年10月29日
補正却下の決定 平成13年 9月 3日
補正却下不服の審判請求 平成13年10月18日

2 補正の概要
平成11年10月29日付け手続補正の内容は、
(1)【発明の名称】「小型光ディスク自動判別起動方式」を、
「電子装置、制御装置及び記憶媒体処理制御方法」と変更する。

(2)【特許請求の範囲】
「【請求項1】 同一形状であり、情報格納フォーマットの異なる複数種の小型光ディスクを再生可能とするシステムにおいて、
前記小型光ディスクに格納されている情報の読み出しを行う読み出し手段(1)と、
前記読み出し手段(1)の読み出した情報のフォーマットに基づいて前記小型光ディスクの属性を識別する識別手段(2)と、
個々の小型光ディスクの属性に対応する実行部を有し、前記小型光ディスクの属性に対応する実行部により小型光ディスクの再生・実行を行う処理手段(3)と、
前記各部の制御を行う制御手段(4)とを備え、
前記制御手段(4)は、前記読み出し手段(1)に任意の小型光ディスクがセットされた場合に、この読み出し手段(1)を動作させて当該小型光ディスクの上位に格納されている情報を読み出し、
前記識別手段(2)は、前記読み出し手段(1)により読み出される情報のフォーマットを解析して、当該小型光ディスクの属性を判別し、
前記処理手段(3)は、前記識別手段(2)により識別される属性に対応する実行部を起動させて当該小型光ディスクに格納されている情報の再生・実行を行うことを特徴とする小型光ディスク自動判別起動方式。
【請求項2】 前記処理手段(3)は、ディジタル信号形式の音楽情報をアナログ信号形式の音情報に変換・出力する第一の実行部(3a)と、
任意のデータにかかる情報を検索・出力する第二の実行部(3b)と、
システムプログラムを実行する第三の実行部(3c)とを有し、
前記処理手段(3)は、前記識別手段(2)により小型光ディスクに格納されている情報の属性を音楽情報として認識した場合に、前記第一の実行部(3a)を起動させてアナログ信号形式のデータに変換・出力することで当該音楽情報の再生・出力を行い、
前記格納情報の属性をデータベースと認識した場合に、前記第二の実行部(3b)を起動させて、任意のデータにかかる情報を前記小型光ディスクから検索・出力し、
前記格納情報の属性をシステムプログラムと識別した場合には、前記第三の実行部(3c)を起動させて、当該システムプログラムを実行することを特徴とする請求項1記載の小型光ディスク自動判別起動方式。
【請求項3】 前記識別手段(2)は、前記読み出し手段(1)を介して小型光ディスクにアクセスし、最上位アドレスに格納されているリードインエリアを読み込み、このエリアに、音楽情報以外のデータ格納状態を示すデータ格納情報が登録されているか否かを判別し、
データ格納情報が未登録の場合には、当該小型光ディスクの属性を音楽情報と識別し、
データ格納情報が登録されている場合には、前記リードインエリアの下位アドレスに格納されているユーザデータエリアにアクセスし、データベース識別情報が記録されているか、または自動起動プログラムが記録されているか否かを判別し、
データベース識別情報が記録されている場合には、当該小型光ディスクの属性をデータベースとして識別し、
自動起動プログラムが記録されている場合には、当該小型光ディスクの属性をシステムプログラムとして識別することを特徴とする請求項1記載の小型光ディスク自動判別起動方式。」を、
「【請求項1】 情報形式の異なる複数種の記憶媒体を処理可能とする電子装置において、
前記記憶媒体に格納されている情報の読み出しを行う読み出し手段と、
前記読み出し手段の読み出した情報に基づいて前記記憶媒体の種類を識別する識別手段と、
前記記憶媒体が音楽媒体であるとき、前記音楽の再生の制御を行う音楽再生制御手段と、
前記記憶媒体がプログラムを格納したものであるときの前記プログラムを処理するプログラム処理手段と、
制御手段とを有し、
前記制御手段は、前記読み出し手段を動作させて当該記憶媒体に格納されている情報を読み出し、前記識別手段に前記読み出し手段により読み出される情報に基づき当該記録媒体の種類を判別させ、前記識別手段の識別の結果、前記記憶媒体が音楽媒体である場合は、前記音楽再生制御手段を起動し、前記識別手段の識別の結果、前記記憶媒体がプログラムを格納したものである場合は、前記プログラム処理手段が前記プログラムを処理するよう制御する制御手段であることを特徴とする電子装置。
【請求項2】 前記記憶媒体がデータベース用のデータを格納するものであるときに、前記データの検索を行うデータ検索手段を更に有し、
前記制御手段は、更に、前記識別手段の識別の結果、前記記憶媒体がデータベースである場合は、前記データベース検索手段を起動するよう制御することを特徴とする請求項1記載の電子装置。
【請求項3】 前記プログラムはシステムプログラムであることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子装置。
【請求項4】 情報形式の異なる複数種の記憶媒体を処理可能であり、前記記憶媒体に格納されている情報の読み出しを行う読み出し手段と、前記記憶媒体が音楽媒体であるとき前記音楽の再生の制御を行う音楽再生制御手段と、前記記憶媒体がプログラムを格納したものであるときの前記プログラムを処理するプログラム処理手段とを有する電子装置のための、制御装置において、
前記読み出し手段により読み出された情報に基づいて前記記憶媒体の種類を識別する識別手段と、
前記読み出し手段を動作させて当該記憶媒体に格納されている情報を読み出し、前記識別手段に前記読み出し手段により読み出される情報に基づき当該記録媒体の種類を判別させ、前記識別手段の識別の結果、前記記憶媒体が音楽媒体である場合は、前記音楽再生制御手段を起動し、前記識別手段の識別の結果、前記記憶媒体がプログラムを格納したものである場合は、前記プログラム処理手段が前記プログラムを処理するよう制御する制御手段とを有する制御装置。
【請求項5】 情報形式の異なる複数種の記憶媒体を処理可能であり、前記記憶媒体に格納されている情報の読み出しを行う読み出し手段と、前記記憶媒体が音楽媒体であるとき前記音楽の再生の制御を行う音楽再生制御手段と、前記記憶媒体がプログラムを格納したものであるときの前記プログラムを処理するプログラム処理手段と、前記記憶媒体がデータベース用のデータを格納するものであるときに、前記データの検索を行うデータ検索手段を有する電子装置のための、制御装置において、
前記読み出し手段により読み出された情報に基づいて前記記憶媒体の種類を識別する識別手段と、
前記読み出し手段を動作させて当該記憶媒体に格納されている情報を読み出し、前記識別手段に前記読み出し手段により読み出される情報を解析させて当該記録媒体の種類を判別させ、前記識別手段の識別の結果、前記記憶媒体が音楽媒体である場合は、前記音楽再生制御手段を起動し、前記識別手段の識別の結果、前記記憶媒体がプログラムを格納したものである場合は、前記プログラム処理手段が前記プログラムを処理するよう制御し、前記識別手段の識別の結果、前記記憶媒体がデータベースである場合は、前記データベース検索手段を起動するよう制御する制御手段とを有する制御装置。
【請求項6】 前記プログラムはシステムプログラムであることを特徴とする請求項4又は5に記載の制御装置。
【請求項7】 情報形式の異なる複数種の記憶媒体のための記憶媒体処理制御方法において、記憶媒体に格納されている情報の読み出す第一の手順と、
前記第一の手順により読み出された情報に基づいて前記記憶媒体の種類を識別する第二の手順と、
前記第二の手順の結果、前記記憶媒体が音楽媒体である場合は、音楽再生制御手段を起動する第三の手順と、
前記第二の手順の結果、前記記憶媒体がプログラムを格納したものである場合は、前記プログラムを処理する第四の手順を有する記憶媒体処理制御方法。」と変更する。

(3)明細書【0012】
「【課題を解決するための手段】
本発明では、前記課題を解決するために以下のようにした。これを図1の原理図に基づいて説明する。」を、
「「【課題を解決するための手段】
本発明では、前記課題を解決するために、以下の構成を提供する。
本発明の情報形式の異なる複数種の記憶媒体を処理可能とする電子装置において、前記記憶媒体に格納されている情報の読み出しを行う読み出し手段と、前記読み出し手段の読み出した情報に基づいて前記記憶媒体の種類を識別する識別手段と、前記記憶媒体が音楽媒体であるとき、前記音楽の再生の制御を行う音楽再生制御手段と、前記記憶媒体がプログラムを格納したものであるときの前記プログラムを処理するプログラム処理手段と、制御手段とを有し、前記制御手段は、前記読み出し手段を動作させて当該記憶媒体に格納されている情報を読み出し、前記識別手段に前記読み出し手段により読み出される情報に基づき当該記録媒体の種類を判別させ、前記識別手段の識別の結果、前記記憶媒体が音楽媒体である場合は、前記音楽再生制御手段を起動し、前記識別手段の識別の結果、前記記憶媒体がプログラムを格納したものである場合は、前記プログラム処理手段が前記プログラムを処理するよう制御する。
さらに、上記電子装置は、前記記憶媒体がデータベース用のデータを格納するものであるときに、前記データの検索を行うデータ検索手段を更に有し、前記制御手段は、更に、前記識別手段の識別の結果、前記記憶媒体がデータベースである場合は、前記データベース検索手段を起動するよう制御しても良い。
また、さらに、前記プログラムはシステムプログラムであっても良い。
本発明では、前記課題を解決するために、さらに、制御装置も提供する。前記制御装置は、「情報形式の異なる複数種の記憶媒体を処理可能であり、前記記憶媒体に格納されている情報の読み出しを行う読み出し手段と、前記記憶媒体が音楽媒体であるとき前記音楽の再生の制御を行う音楽再生制御手段と、前記記憶媒体がプログラムを格納したものであるときの前記プログラムを処理するプログラム処理手段とを有する電子装置」のための制御装置であり、本発明の制御装置は、前記読み出し手段により読み出された情報に基づいて前記記憶媒体の種類を識別する識別手段と、前記読み出し手段を動作させて当該記憶媒体に格納されている情報を読み出し、前記識別手段に前記読み出し手段により読み出される情報に基づき当該記録媒体の種類を判別させ、前記識別手段の識別の結果、前記記憶媒体が音楽媒体である場合は、前記音楽再生制御手段を起動し、前記識別手段の識別の結果、前記記憶媒体がプログラムを格納したものである場合は、前記プログラム処理手段が前記プログラムを処理するよう制御する制御手段を有する。
また、制御装置は、「情報形式の異なる複数種の記憶媒体を処理可能であり、前記記憶媒体に格納されている情報の読み出しを行う読み出し手段と、前記記憶媒体が音楽媒体であるとき前記音楽の再生の制御を行う音楽再生制御手段と、前記記憶媒体がプログラムを格納したものであるときの前記プログラムを処理するプログラム処理手段と、前記記憶媒体がデータベース用のデータを格納するものであるときに、前記データの検索を行うデータ検索手段を有する電子装置」のためのものであっても良く、前記制御装置は、前記読み出し手段により読み出された情報に基づいて前記記憶媒体の種類を識別する識別手段と、前記読み出し手段を動作させて当該記憶媒体に格納されている情報を読み出し、前記識別手段に前記読み出し手段により読み出される情報を解析させて当該記録媒体の種類を判別させ、前記識別手段の識別の結果、前記記憶媒体が音楽媒体である場合は、前記音楽再生制御手段を起動し、前記識別手段の識別の結果、前記記憶媒体がプログラムを格納したものである場合は、前記プログラム処理手段が前記プログラムを処理するよう制御し、前記識別手段の識別の結果、前記記憶媒体がデータベースである場合は、前記データベース検索手段を起動するよう制御する制御手段を有する。
更に、前記プログラムはシステムプログラムであることを特徴とするものである場合に、前記制御装置は制御を行っても良い。
本発明では、前記課題を解決するために、さらに、記憶媒体処理制御方法も提供する。本発明の、情報形式の異なる複数種の記憶媒体のための記憶媒体処理制御方法は、記憶媒体に格納されている情報の読み出す第一の手順と、前記第一の手順により読み出された情報に基づいて前記記憶媒体の種類を識別する第二の手順と、前記第二の手順の結果、前記記憶媒体が音楽媒体である場合は、音楽再生制御手段を起動する第三の手順と、前記第二の手順の結果、前記記憶媒体がプログラムを格納したものである場合は、前記プログラムを処理する第四の手順を有する。
これらを図1の原理図に基づいて説明する。」と変更する。

(4)明細書【0013】
「 本発明におけるシステムは、同一形状であり、情報格納フォーマットの異なる複数種の小型光ディスクを再生可能とするシステムにおいて、読み出し手段1、識別手段2、処理手段3、制御手段4を備える。」を、
「 本発明が適用される電子装置又はシステムは、情報形式の異なる複数種の記憶媒体を再生又は処理可能である。前記記憶媒体として、特に、情報格納フォーマットの異なる複数種の小型光ディスクに適用可能である。図1の原理図のシステムでは、読み出し手段1、識別手段2、処理手段3、制御手段4を備える。」と変更する。

(5)明細書【0014】
「 前記読み出し手段1は、小型光ディスクに格納されている情報を読み出すものであり、例えば、小型光ディスク専用のディスクドライブが考えられる。
識別手段2は、前記読み出し手段1により読み出される情報のフォーマットを解析し、小型光ディスクに格納されている情報の属性を識別する。」を、
「 前記読み出し手段1は、記憶媒体、小型光ディスクに格納されている情報を読み出すものであり、例えば、小型光ディスク専用のディスクドライブが考えられる。識別手段2は、前記読み出し手段1により読み出される情報にもとづき、記憶媒体の種類を判別する。具体的には、読み出された情報のフォーマットを解析し、小型光ディスクに格納されている情報の属性を識別する。」と変更する。

(6)明細書【0015】
「 処理手段3は、小型光ディスクの個々の属性に対応する少なくとも一つの実行部を有し、小型光ディスクの属性に対応する実行部を起動させて小型光ディスクの再生を行うものである。」を、
「 処理手段3は、記憶媒体の種類に応じた処理部や実行部を有する。又は、小型光ディスクの個々の属性に対応する少なくとも一つの実行部を有し、記憶媒体、小型光ディスクの種類、属性に対応する実行部、処理部等を起動させて記憶媒体、小型光ディスクの再生を行うものである。」と変更する。

(7)明細書【0016】
「 制御手段4は、前記各部の動作を制御するものである。
ここで、前記処理手段3の有する実行部としては、第一に、ディジタル信号形式の音楽情報をアナログ信号形式の音情報に変換・出力する第一の実行部3aが考えられる。この第一の実行部3aは、例えばコンパクトディスクプレーヤとこの動作を制御するアプリケーションプログラムである。」を、
「 制御手段4は、前記各部の動作を制御するものである。
ここで、前記処理手段3の有する実行部、処理部等としては、前記記憶媒体が音楽媒体であるときに前記音楽の再生の制御を行う音楽再生制御手段がある。より具体的には、ディジタル信号形式の音楽情報をアナログ信号形式の音情報に変換・出力する第一の実行部3aが考えられる。この第一の実行部3aは、例えばコンパクトディスクプレーヤとこの動作を制御するアプリケーションプログラムである。」と変更する。

(8)明細書【0017】
「 第二に、任意のデータにかかる情報を検索・出力する第二の実行部3bが考えられる。この第二の実行部3bは、例えばデータ検索を行うアプリケーションプログラムである。」を、
「 第二に、前記記憶媒体がデータベース用のデータを格納するものであるときに、前記データの検索を行うデータ検索手段や任意のデータにかかる情報を検索・出力する第二の実行部3bが考えられる。この第二の実行部3bは、例えばデータ検索を行うアプリケーションプログラムである。」と変更する。

(9)明細書【0018】
「 さらに、第三に、システムプログラムを実行する第三の実行部3cが考えられる。この第三の実行部3cは、例えば小型光ディスクに格納されているシステムプログラムを実行するCPU(CENTRAL PROCESSING UNIT;中央処理装置)である。」を、
「」 さらに、第三に、前記記憶媒体がプログラムを格納したものであるときの前記プログラムを処理するプログラム処理手段や、システムプログラムを実行する第三の実行部3cが考えられる。この第三の実行部3cは、例えば小型光ディスクに格納されているシステムプログラムを実行するCPU(CENTRAL PROCESSING UNIT;中央処理装置)である。」と変更する。

(10)明細書【0019】
「【作用】
本発明によれば、制御手段4は、電源投入後、読み出し手段1に任意の小型光ディスクがセットされた場合、前記読み出し手段1により当該小型光ディスクの上位に格納されている情報を読み出させる。」を、
「【作用】
本発明によれば、制御手段4は、電源投入後、読み出し手段1に任意の記憶媒体や小型光ディスクがセットされた場合、前記読み出し手段1により当該記憶媒体や小型光ディスクに格納されている情報を読み出させる。」と変更する。

(11)明細書【0020】
「 そして、識別手段4は、読み出し手段1の読み出した情報を解析して、当該小型光ディスクに格納されている情報の属性を判別し、その属性情報を処理手段3へ通知する。」を、
「 そして、識別手段4は、読み出し手段1の読み出した情報にもとづいて、記録媒体の種類を識別する。具体的には、前記識別手段4は、前記情報を解析して、当該小型光ディスクに格納されている情報の属性を判別し、その属性情報を処理手段3へ通知する。」と変更する。

(12)明細書【0021】
「 処理手段3では、前記の属性に対応する実行部3を起動させ、当該小型光ディスクに記録されている情報を実行する。
すなわち、小型光ディスクの属性が音楽用の小型光ディスクの場合には、この小型光ディスクに記録されている音楽情報を出力すべく第一の実行部3aを起動させる。」を、
「 処理手段3では、前記種類や属性に対応する実行部3が起動される。そして、当該記憶媒体や小型光ディスクに記録されている情報を実行する。
すなわち、記憶媒体、小型光ディスクの属性/種類が音楽用の記憶媒体や小型光ディスクの場合には、この記憶媒体や小型光ディスクに記録されている音楽情報を出力すべく図1では第一の実行部3aを起動させる。前記第一の実行部3aは、音楽再生制御手段の一例である。」と変更する。

(13)明細書【0022】
「 また、小型光ディスクの属性がデータベース、例えば、国語辞書、英語辞書等の辞書データの場合には、第二の実行部3bを起動する。第二の実行部3bは、当該システムのユーザが入力する情報にかかるデータをこの小型光ディスクから検出することができる。」を、
「 また、記憶媒体、小型光ディスクの属性がデータベースの場合は、例えば、国語辞書、英語辞書等の辞書データの場合には、図1では第二の実行部3bを起動する。第二の実行部3bは、当該システムのユーザが入力する情報にかかるデータをこの記憶媒体、小型光ディスクから検出することができる。図1の第二の実行部3bは、データ検索手段の一例である。」と変更する。

(14)明細書【0023】
「 上記した小型光ディスクの属性がシステムプログラムの場合、第三の実行部3cを起動させて、当該小型光ディスクに記録されているシステムプログラムを実行することが可能である。」を、
「 図1では、上記した記憶媒体、小型光ディスクの属性/種類がシステムプログラムの場合、第三の実行部3cを起動させて、当該記憶媒体や当該小型光ディスクに記録されているシステムプログラムを実行することが可能である。前記第三の実行部3cは、プログラム処理手段の一例であり、記憶媒体に格納されているプログラムを実行可能である。」と変更する。

(15)明細書【0024】
「 ここで、識別手段2は、小型光ディスクの上位アドレスに格納されているリードインエリアにアクセスし、ここに音楽情報以外のデータを格納している旨を示すデータ格納情報が登録されているか否かを判別する。ここで、リードインエリアにデータ格納情報が未登録の場合は、当該小型光ディスクの属性を音楽情報として識別する。」を、
「 ここで、識別手段2は、記憶媒体、小型光ディスクの上位アドレスに格納されているリードインエリアにアクセスし、ここに音楽情報以外のデータを格納している旨を示すデータ格納情報が登録されているか否かを判別する。ここで、リードインエリアにデータ格納情報が未登録の場合は、当該記憶媒体、当該小型光ディスクの属性を音楽情報として識別する。」と変更する。

(16)明細書【0027】
「 ここで、自動起動プログラムが格納されている場合には、当該小型光ディスクの属性をシステムプログラムとして識別する。
一方、データベース識別情報が格納されている場合には、当該光小型ディスクの属性をデータベースとして識別する。」を、
「 ここで、自動起動プログラムが格納されている場合には、当該記憶媒体、小型光ディスクの属性/種類をシステムプログラムとして識別する。 一方、データベース識別情報が格納されている場合には、当該記憶媒体、小型ディスクの属性をデータベースとして識別する。」と変更する。

(17)明細書【0028】
「 そして、処理手段3は、識別手段2から受け取った属性情報に基づき、その属性に対応する実行部(3a、3b、3c)を実行させる。
以上から、ユーザは、当該システムに小型光ディスクをセットするだけでよく、システムは読み出し手段2にセットされる小型光ディスクの属性を自動的に判別し、その属性に従った実行部を動作させることができる。」を、
「 そして、処理手段3は、識別手段2から受け取った属性情報に基づき、その属性に対応する実行部(3a、3b、3c)を実行させる。
以上から、ユーザは、当該システムに当該記憶媒体、小型光ディスクをセットするだけでよく、システムは読み出し手段2にセットされる記憶媒体、小型光ディスクの属性/種類を自動的に判別し、その属性に従った実行部を動作させることができる。」と変更する。

(18)明細書【0029】
「 なお、前記した第一〜第三の実行部の他に、小型光ディスクの属性に応じた事実行部を備えることも可能である。」を、
「なお、前記した第一〜第三の実行部の他に、記憶媒体、小型光ディスクの属性/種類に応じた事実行部を備えることも可能である。」と変更する。

4 原審における補正却下決定の理由

上記手続補正は主として特許請求の範囲を変更するものであり,

・出願当初の「小型光ディスク」を,単なる「記憶媒体」とする
・「種類」を識別すること
・「〜方式」とあるを「電子装置」,「制御方式」,「方法」とする

をその要旨とするものと認められる。
しかしながら,出願当初の明細書及び図面からは,以下の(A)〜(C)に示すように,上記の補正を担保することができるような記載はなされておらず,補正による記載による広い概念のものが,出願当初の明細書及び図面の記載のみからして,たとえ当業者であっても,自ずと明らかなこととは到底認めることなどできない。

(A)「小型光ディスク」,その例として「コンパクトディスク(CD)」が開示されているだけであり,そのようなものには外見上の形状に何も相違はなく,出願当初の明細書でいう「属性」の相違はあるものの,追加されたような「種類」の相違(一般に,「種類」とは外見等の相違も含む)は存在しないものである。

(B)「小型光ディスク」の例としてのCDが開示されているだけで,他のディスクや,テープ状のもの,メモリ等をも包含する「記憶媒体」という上位の概念で捉えられるような事項は何も開示していない。

(C)同様に「電子装置」のような上位の概念で捉えられるような装置の構成は一切開示されていない。

したがって,この補正は,開示した「CD」以外のものにその発明の範囲を拡張しようとするがために明細書の要旨を変更するものと認められ,特許法第53条第1項の規定により,却下をすべきものと決定する。

5 請求人の主張
(ア)審査官指摘(A)について
審査官は、「「小型光ディスク」、その例として「コンパクトディスク(CD)」が開示されているだけであり、」と指摘されていますが、当初明細書段落0003には、「ここで、次世代の記憶媒体としての小型光ディスク」との記載があります。当初明細書が「記憶媒体」を開示していることは明らかです。尚、審査官指摘(B)の部分も、更の理由として挙げられていますので、この補正が要旨変更でないことは、更に詳細に後述します。
更に、審査官は「そのようなものには外見上の形状に何も相違はなく、出願当初の明細書でいう「属性」の相違はあるものの、追加されたような「種類」の相違(一般に、「種類」とは外見等の相違も含む)は存在しないものである。」と理由を述べられていますが、審査官のこの理由は、「種類とは外見等の相違も含む」との判断が前提になっています。
しかしながら、岩波書店発行の「広辞苑」(1989年9月25日発行 第三版第七刷)によると、「種類」とは「いくつかの個体に共通の性質によって分類しまとめたもの。また、そのようにして総体を分類したときに生ずるまとまり。」を意味します。又、「属性」は、同じく「広辞苑」によると、「その物の有する特徴・性質」を意味します。
当初明細書段落0021には、「属性」として音楽用の小型光ディスク、段落0022にデータベース、段落0023にプログラムが開示されています。属性の識別の手順は、段落0041乃至0043に開示されています。従いまして、当初明細書は、その物の有する特徴・性質である属性として、情報形式の異なる音楽用小型光ディスク、データベースを格納した小型光ディスク、プログラムを格納した小型光ディスクを開示しており、これらの情報形式は、記憶媒体の性質にあたります。
一方、前述した通り「種類」とは、広辞苑によると「いくつかの個体に共通の性質によって分類しまとめたもの」であり、従って、当初明細書が、音楽用小型光ディスク、プログラムを格納した小型光ディスク等を開示して、これらの情報形式を記憶媒体の性質として開示していることを鑑みると、当初明細書は同時に「記憶媒体の種類」として、音楽用小型光ディスク、データベースを格納した小型光ディスク、プログラムを格納した小型光ディスクを開示しています。従って、「属性」を「種類」と訂正する補正は、単なる表現の相違の関係となり、実質的な意味は同じであり、要旨変更に該当しないものです。
又、補正請求項1のおいて書きが「情報形式の異なる複数種の記憶媒体を処理可能とする電子装置において」と表現し且つ、識別手段が「前記読み出し手段の読み出した情報に基づいて前記記憶媒体の種類を識別する」と表現されていることを合わせて考慮すると、「情報形式の異なる複数種の記憶媒体に格納された前記情報に基づいて、前記記憶媒体の種類を識別して、情報形式を識別する」を意図することが、当業者にとって明らかであります。即ち、補正請求項1の「複数種」及び「種類」の語を、その部分の語のみから意を判断するのではなく、おいて書き及び識別手段の動作を説明する上記部分から判断すると、「種類」は音楽データやプログラム等の情報(データ形式)に対応することは、明白であります。請求項1の「制御手段は、前記読み出し手段を動作させて・・・前記プログラムを処理するように制御する制御手段であることを特徴とする電子装置。」と結びますが、この部分が、制御手段が読み出し手段に読み出された記憶媒体の情報からその記録媒体の種類を判別し且つ音楽媒体及びプログラム格納媒体であることを判別していることからも、請求項1の「種類」は音楽データやプログラム等の情報(データ形式)に対応することは、当業者にとって明白であります。審査官は、「「種類」を識別すること」に補正したと認定し、種類とは外見等の装置も含むと判断されていますが、請求項1全体の表現を総合的に判断すると、審査官の認定及び判断は誤ったものであります。
更に、審査官は、「種類とは外見等の相違も含む」と判断されておりますが、この判断自体も誤った判断です。審査官はこの判断を基に、「属性」を「種類」と訂正したことが要旨変更と認定されていますが、しかりとすれば、前記判断以前に、「補正の却下の決定」の理由の欄には記載されていないものの、「属性は外見等の相違を含まない」と判断されたものと思われます。しかしながら、広辞苑によれば、「属性」は「その物の有する特徴・性質」の意であり、外見等の相違を含まないことを意味するものではなく、又「種類」は「いくつかの個体に共通の性質によって分類しまとめたもの」の意であり、外見等の相違を主とするものではありません。「属性」及び「種類」両者何れの意も、外見等に関しては異なる所はありません。
よって、上述した通り、「属性」を「種類」と訂正する補正は、単なる表現の相違の関係であり実質的な意味は同じものであり、要旨変更に該当しないものです。以上、補正請求項1について反論しましたが、他請求項も同様に要旨変更に該当いたしません。
従いまして、出願当初の「小型光ディスク」を単なる記憶媒体とする点は、要旨変更ではありません。「種類」に関する補正も、要旨変更ではありません。

(イ)審査官指摘(B)について
審査官は、「「小型光ディスク」の例としてCDが開示されているだけで、他のディスクや、テープ状のもの、メモリ等も包含する「記憶媒体」という上位の概念で捉えられるような事項は何も開示していない。」と判断されております。
しかしながら、昭和60年法第53条の要旨を変更するか否かの判断は、「明細書又は図面に記載された、発明の構成に関する技術的事項」にもとづき行うものであり、「記載した事項の範囲内」とは、一字一句同じことが記載されていることをいうのではなく、出願時において、当業者が当初明細書の記載範囲から見て自明な事項も上記「記載した事項の範囲内」と見るべきであると思慮します。ここで「当初明細書の記載範囲から見て自明な事項」とは、その事項自体を直接表現する記載はないが、当初明細書に記載されている技術内容を、出願時において当業者が客観的に判断すれば、その事項自体が記載してあったことに相当することを言うものです。
本願当初明細書の実施例は、小型光ディスク、その具体例としてコンパクトディスクを開示しております。明細書に記載した「小型光ディスク」や「コンパクトディスク」が「記憶媒体」であることは、出願時に当業者が客観的に判断すれば、自明な事項です。
又、本願当初明細書の段落0003には、「ここで次世代の記憶媒体として小型光ディスク(以下、コンパクトディスクと記す)が注目されています。このコンパクトディスクは、・・・大記憶容量・・・・が考え出されました。」との記載があります。よって「記憶媒体」の語自体が出願当初明細書に記載されており、「記憶媒体」は、「当初明細書に記載されている技術内容を、出願時において当業者が客観的に判断すれば、その事項自体が記載してあったことに相当する」ものです。
更に、平成5年7月20日に初版発行された社団法人発明協会の「特許実用新案審査基準」の「第III部 明細書の補正 第1章 出願公告決定前の補正」の章の第29頁には、「発明の構成要素が変更されたもので要旨変更に当らないもの」として「例23」があり、補正によって「球状黒板」の受け台が「球状物体」の受け台に訂正され、その補正は要旨変更に当らないとして説明されております。この例23は、「黒板」を上位概念である「物体」として補正しても要旨変更にならないとされています。つまり、出願人の「小型光ディスク」を「記憶媒体」とする補正は、この例23に相当するものと思料します。
即ち、補正請求項1等は、読み出し手段を動作させて当該記憶媒体に格納されている情報を読み出し、前記識別手段に前記読み出し手段により読み出される情報に基づき当該記憶媒体の種類を判別させ、前記識別手段の識別の結果、前記記憶媒体が音楽媒体である場合は、前記音楽再生制御手段を起動し、前記識別手段の識別の結果、前記記憶媒体がプログラムを格納したものである場合は、前記プログラム処理手段が前記プログラムを処理するよう制御するものですが、「小型光ディスクや記憶媒体」の情報を読み出して、その種類を判別し、「小型光ディスクや記憶媒体」が音楽媒体である場合は、音楽再生手段を起動し、「小型光ディスクや記憶媒体」がプログラムを格納するものである場合は、プログラム処理手段がプログラムを処理するように制御するように作用します。この作用は、識別や読み出しの対象が「小型光ディスク」である場合についてのみ作用するものではなく、その対象が「記憶媒体」でも作用することは当業者にとって自明です。従って、「小型光ディスク」を「記憶媒体」に訂正したことは、出願当初の明細書に記載した事項の範囲内のことであって、発明の構成に関する技術的事項を変更するものではなく、この補正は要旨変更には該当しません。
他の請求項についてですが、請求項2は、前記記憶媒体がデータベース用のデータを格納するものであるときに、前記データベース検索手段を起動する請求項1記載の電子装置であり、
請求項3は、前記プログラムはシステムプログラムであることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子装置です。
請求項4は、電子装置の構成のうち制御装置の部分を構成要件とする、請求項1の電子装置に対応する制御装置の発明であり、識別手段に前記読み出し手段により読み出される情報に基づき「記憶媒体」の種類を判別させ、前記識別手段の識別の結果、前記記憶媒体が音楽媒体である場合は、前記音楽再生制御手段を起動し、前記識別手段の識別の結果、前記記憶媒体がプログラムを格納したものである場合は、前記プログラム処理手段が前記(プ)ログラムを処理するよう制御する制御装置です。
請求項5は、電子装置の構成のうち制御装置の部分を構成要件とする、請求項2の電子装置に対応する制御装置の発明であり、識別手段に前記読み出し手段により読み出される情報を解析させて当該記憶媒体の種類を判別させ、前記識別手段の識別の結果、前記記憶媒体が音楽媒体である場合は、前記音楽再生制御手段を起動し、前記識別手段の識別の結果、前記記憶媒体がプログラムを格納したものである場合は、前記プログラム処理手段が前記プログラムを処理するよう制御し、前記識別手段の識別の結果、前記記憶媒体がデータベースである場合は、前記データベース検索手段を起動するよう制御する制御手段とを有する制御装置の発明です。
請求項6は、前記プログラムはシステムプログラムであることを特徴とする請求項4又は5に記載の制御装置の発明です。
請求項7は、請求項4に対応する制御方法の発明です。
これら請求項2乃至7の作用も、識別や読み出しの対象が「小型光ディスク」である場合についてのみ作用するものではなく、その対象が「記憶媒体」でも作用することは当業者にとって自明なことです。従って、「小型光ディスク」を「記憶媒体」に訂正したことは、出願当初の明細書に記載した事項の範囲内のことであって、発明の構成に関する技術的事項を変更するものではなく、この補正は要旨変更にはあたらないものです。

(ウ)審査官指摘(C)について
この指摘では、「電子装置」のような上位概念で捉えられる装置の構成は、一切開示されていないとのことですが、当初明細書に記載された「小型光ディスク自動判別起動システム」が「電子装置」であることは、当業者にとって明白です。この補正も、平成5年7月20日に初版発行された社団法人発明協会の「特許実用新案審査基準」の「第III部 明細書の補正 第1章 出願公告決定前の補正」の章の第29頁には、「発明の構成要素が変更されたもので要旨変更に当らないもの」の「例23」に相当するものと思料され、要旨変更に該当しないものです。
又、当初明細書段落0013では、「本発明におけるシステムは、・・・」と開示しており、システムが、電子装置であることは、当業者にとって明白です。
更に、補正した請求項1のおいて書き及び末尾の部分は、「電子装置」となっていますが、その電子装置は、読み出し手段、識別手段、音楽再生制御手段、プログラム処理手段及び制御手段を有しています。つまり、請求項1は、「電子装置がこれらの構成を有している」ことを限定しており、請求項1のおいて書き及び末尾こそ「電子装置」と表現されているものの、請求項の要旨は請求項全体の記載から判断すべきものであり決してその一部分のみを取り出して要旨を判断することは適切ではないことを合わせて考慮すると、請求項1は「記憶媒体自動判別起動装置」であることは、当業者にとって明白です。
よって、審査官の指摘(B)の「記憶媒体」に関する補正は要旨変更でなく、「方式」を「装置」に訂正しているものの、補正した請求項1が手段を有し対応する構成が当初明細書に開示されている以上、この訂正は要旨変更ではありません。従いまして、「小型光ディスク自動判別起動方式」を「電子装置」に訂正した補正は、要旨変更に該当しないものです。他の請求項は、「制御方法」や「方法」と補正されておりますが、請求項1と同様に請求項の要旨は請求項全体の記載から判断すると、それぞれ「記憶媒体自動判別起動制御装置」や「記憶媒体自動判別起動制御方法」であることは、当業者にとって明白であり、又、これらの請求項も上記審査基準の例23に相当するものであり、要旨変更に該当いたしません。
尚、審査官は、「「方式」とあるを「電子装置」、「制御方式」、「方法」とする」と認定されておりますが、「制御方式」とは補正しておりません。

(エ)むすび
以上、説明しました通り、審査官の理由(A)乃至(C)いずれも要旨変更の理由をなさないものであり、よって平成11年10月29日付けの補正は要旨変更に該当するものではなく、補正の却下の決定を取り消すべきである。

6 当審の判断
(1) 出願当初の明細書記載事項
出願当初の明細書において、次の記載が認められる。
a 特許請求の範囲において
請求項1〜3において、末尾が「小型光ディスク自動判別起動方式」。
b 【0001】において
「 【産業上の利用分野】
本発明は、音楽用コンパクトディスク、辞書検索用コンパクト、システムコンパクトディスク等の各種コンパクトディスクの読み出し・書き込みを可能とするシステムにおいて、特に、ディスクドライブにセットされたコンパクトディスクの属性を自動的に識別して、その属性に対応するソフトウェアを自動的に起動する方式に関する。」
c 【0002】において
「 【従来の技術】
最近では、ソフトウェア技術の進歩と共に、ハードウェア技術の進歩が図られ
ており、コンパクト且つ大容量である効率の良い記憶媒体の開発が進められてい
ます。」
d 【0003】において
「 ここで、次世代の記憶媒体として小型光ディスク(以下、コンパクトディスクと記す)が注目されています。このコンパクトディスクは、元々音楽情報を記録するために開発されたものであり、高密度のディジタル情報を格納し、良質の音を再生可能としています。そこで、従来では、このコンパクトディスクの特徴である小型形状且つ大記憶容量、さらに複製が容易な点に着目し、この応用形態としてコンパクトディスク・ロム(以下CDーROMと略称する)が考え出されました。このCDーROMは、その特性から主にデータベースとして利用されていますが、システム起動にかかるプログラムを格納するシステムフロッピーディスクに代わるものとしても普及してきています。即ち、パーソナルコンピュータ等に、このコンパクトディスクを再生可能とするディスクドライブを接続したシステムが知られています。」
e 【0004】において、音楽用コンパクトディスクの場合を述べ、【0005】〜【0007】において、データベース格納用コンパクトディスクの場合を述べ、【0008】において、システム格納コンパクトディスクの場合を述べている。
f 【0009】、【0010】及び【0011】の【発明が解決しようとする課題】、【0012】〜【0018】の【課題を解決するための手段】、【0019】〜【0029】の【作用】、【0030】〜【0059】の【実施例】、【0060】の【発明の効果】、【図面の簡単な説明】においても、「小型光ディスク」及び「コンパクトディスク」の言葉が見られるのみである。
そして、「小型光ディスク」及び「コンパクトディスク」は、【0003】での定義によれば、同じものである。
(2) 補正書での記載事項
a 補正前の「同一形状であり、情報格納フォーマットの異なる複数種の小型光ディスクを再生可能とするシステム」及び、
「情報形式の異なる複数種の記憶媒体を処理可能とする電子装置」を、
「情報形式の異なる複数種の記憶媒体を処理可能であり、前記記憶媒体に格納されている情報の読み出しを行う読み出し手段と、前記記憶媒体が音楽媒体であるとき前記音楽の再生の制御を行う音楽再生制御手段と、前記記憶媒体がプログラムを格納したものであるときの前記プログラムを処理するプログラム処理手段とを有する電子装置のための、制御装置」および
「情報形式の異なる複数種の記憶媒体のための記憶媒体処理制御方法」に、変更することが記載されている。
b 課題を解決するために、「情報形式の異なる複数種の記憶媒体を処理可能とする電子装置において、」の解決手段と、「情報形式の異なる複数種の記憶媒体を処理可能であり、前記記憶媒体に格納されている情報の読み出しを行う読み出し手段と、前記記憶媒体が音楽媒体であるとき前記音楽の再生の制御を行う音楽再生制御手段と、前記記憶媒体がプログラムを格納したものであるときの前記プログラムを処理するプログラム処理手段とを有する電子装置のための制御装置」の解決手段を、「記憶媒体処理制御方法」の解決手段と記載している。
c 「同一形状であり、情報格納フォーマットの異なる複数種の小型光ディスクを再生可能とするシステム」を「電子装置又はシステムは、情報形式の異なる複数種の記憶媒体を再生又は処理可能である。前記記憶媒体として、特に、情報格納フォーマットの異なる複数種の小型光ディスクに適用可能である。」としている。
d 「小型光ディスクの属性が音楽用の小型光ディスク」を「記憶媒体、小型光ディスクの属性/種類が音楽用の記憶媒体や小型光ディスク」としている。
「小型光ディスクの属性がシステムプログラムの場合」を、「上記した記憶媒体、小型光ディスクの属性/種類がシステムプログラムの場合」としている。
「自動起動プログラムが格納されている場合には、当該小型光ディスクの属性をシステムプログラムとして識別する。
一方、データベース識別情報が格納されている場合には、当該光小型ディスクの属性をデータベースとして識別する。」を、「自動起動プログラムが格納されている場合には、当該記憶媒体、小型光ディスクの属性/種類をシステムプログラムとして識別する。 一方、データベース識別情報が格納されている場合には、当該記憶媒体、小型ディスクの属性をデータベースとして識別する。」としている。
「そして、処理手段3は、識別手段2から受け取った属性情報に基づき、その属性に対応する実行部(3a、3b、3c)を実行させる。 以上から、ユーザは、当該システムに小型光ディスクをセットするだけでよく、システムは読み出し手段2にセットされる小型光ディスクの属性を自動的に判別し、その属性に従った実行部を動作させることができる。」を、「そして、処理手段3は、識別手段2から受け取った属性情報に基づき、その属性に対応する実行部(3a、3b、3c)を実行させる。 以上から、ユーザは、当該システムに当該記憶媒体、小型光ディスクをセットするだけでよく、システムは読み出し手段2にセットされる記憶媒体、小型光ディスクの属性/種類を自動的に判別し、その属性に従った実行部を動作させることができる。」としている。

(3) 補正却下の適否
請求人が主張するように、要旨を変更するか否かの判断は、「明細書又は図面に記載された、発明の構成に関する技術的事項」にもとづき行うものであり、「記載した事項の範囲内」とは、一字一句同じことが記載されていることをいうのではなく、出願時において、当業者が当初明細書の記載範囲から見て自明な事項も上記「記載した事項の範囲内」と見るべきである。ここで「当初明細書の記載範囲から見て自明な事項」とは、その事項自体を直接表現する記載はないが、当初明細書に記載されている技術内容を、出願時において当業者が客観的に判断すれば、その事項自体が記載してあったことに相当することを言うものである。
このような観点で以下判断する。

a 「電子装置、制御装置及び処理制御方法」について
そこで出願当初の明細書を見ると、電子装置、制御装置及び処理制御方法に関することは、小型光ディスク自動判別起動方式の明細書中に言葉としては、明記されていないが、小型光ディスクを自動判別し起動することから、実質的に記載されていると認められる。

b 「記憶媒体」について
出願当初の明細書を見ると、電子装置、制御装置及び処理制御方法は、小型光ディスク自動判別起動方式の明細書中に記載されているが、しかしながら、明細書中には、「小型光ディスク」及び「コンパクトディスク」の言葉が見られるのみであり、他の記憶媒体についての記載は見られない。してみると電子装置、制御装置及び処理制御方法は、コンパクトディスク用に限られるものであるといわざるを得ない。
確かに、当初明細書の【0003】には、「ここで、次世代の記憶媒体として小型光ディスク(以下、コンパクトディスクと記す)が注目されています。」の記載がされている。そして、「小型光ディスク」や「コンパクトディスク」が「記憶媒体」の一種であることは、出願時に当業者が客観的に判断すれば、自明な事項である。
しかしながら、記憶媒体は、「小型光ディスク」及び「コンパクトディスク」を含む上位概念の語句であり、審査官が原審で指摘しているように、テープ状のもの,メモリ等をも包含する上位の概念である。出願当初の明細書には、「小型光ディスク」及び「コンパクトディスク」の言葉が見られるのみである。その明細書の記載に、記憶媒体において、一般的に適応できる旨の記載はないのである。そうであるから、記録媒体とすることは、発明を変更するものである。
しかも、記録媒体において1つの実施例であるコンパクトディスクのみの記載で、上位の概念である記録媒体について適応することは、出願当初の明細書に開示されていないことであって、認められない。
ここで、請求人は、審査基準の例23を上げているが、この例は、黒板の受台を物体の受台とした例ではなく、球状黒板の受台を球状物体の受台とした例であり、球状の形状を自由に旋回、回転できる受台の要旨から補正可能としたものであって、本件の「小型光ディスク」及び「コンパクトディスク」を「記憶媒体」とすることは異なる例であり、参考とは成り得ないものである。

c 「属性/種類」について
岩波書店発行の「広辞苑」(1989年9月25日発行 第三版第七刷)によると、「種類」とは「いくつかの個体に共通の性質によって分類しまとめたもの。また、そのようにして総体を分類したときに生ずるまとまり。」と記載され、又、「属性」は、「その物の有する特徴・性質」と記載されている。してみると、「属性」を「種類」と訂正する補正は、単なる表現の相違の関係となり、実質的な意味は同じである場合もあるが、本補正では、「属性」を「種類」と訂正する補正ではなく、【0015】では、「小型光ディスクの属性に対応する実行部を起動させて」を、「記憶媒体、小型光ディスクの種類、属性に対応する実行部、処理部等を起動させて」と補正しており、【0021】では、「小型光ディスクの属性が音楽用の小型光ディスクの場合には」を、「記憶媒体、小型光ディスクの属性/種類が音楽用の記憶媒体や小型光ディスクの場合には」と補正しているように、「属性」を、「種類、属性」または、「属性/種類」と併記する補正である。
そして、特許請求の範囲の記載は、不明確な記載でもなく、特許請求の範囲内の記載で明確であり、かつ明細書で語句の定義をして、特定の意味に限定しているわけでもないので、「種類、属性」または、「属性/種類」は、媒体の種類、記録されているものの属性とすることを排除していないことは明らかである。
してみると、媒体に種類による区分を当初明細書の記載に欠いていることからみると、要旨を変更しているものといわざるを得ない。
請求人は、「当初明細書が、音楽用小型光ディスク、プログラムを格納した小型光ディスク等を開示して、これらの情報形式を記憶媒体の性質として開示していることを鑑みると、当初明細書は同時に「記憶媒体の種類」として、音楽用小型光ディスク、データベースを格納した小型光ディスク、プログラムを格納した小型光ディスクを開示しています。従って、「属性」を「種類」と訂正する補正は、単なる表現の相違の関係となり、実質的な意味は同じであり、要旨変更に該当しない」と主張しているが、本補正は、「小型光ディスク」を、「記憶媒体、小型光ディスク」と訂正しているのであり、種類を小型光ディスクに限るとしているわけではないので、「属性」を「種類」と訂正する補正であるとする主張は受け入れられない。

d まとめ
従って、上記b及びcの点では、本補正は、要旨を変更するものである。
審査官が、審査官指摘の(B)、(C)の点で要旨を変更するものとして、本補正を特許法第53条第1項の規定により補正却下したことに誤りはない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-02-04 
結審通知日 2002-02-15 
審決日 2002-03-11 
出願番号 特願平4-292520
審決分類 P 1 7・ 56- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 齊藤 健一  
特許庁審判長 張谷 雅人
特許庁審判官 麻野 耕一
内藤 二郎
発明の名称 小型光ディスク自動判別起動方式  
代理人 遠山 勉  

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