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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E02D
管理番号 1057956
審判番号 不服2001-14742  
総通号数 30 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-10-06 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-08-21 
確定日 2002-05-08 
事件の表示 平成 9年特許願第 70218号「盛土の発泡性合成樹脂ブロックの積み上げ方法とその積み上げ構造」拒絶査定に対する審判事件[平成10年10月 6日出願公開、特開平10-266212]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 本願発明
本願は、平成9年3月24日の出願であって、その請求項1〜5に係る発明は、平成13年5月25日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1〜5に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち請求項1に係る発明は次のとおりである。

「【請求項1】発泡性合成樹脂ブロックを積み上げて盛土を構築する積み上げ方法において、前記ブロックを厚さ方向に複数段に重ね、これらブロックの厚さ方向に連結部材を挿通し、この連結部材の上下両端に受圧板を有する締付用止め具を設け、これら締付用止め具により前記複数段のブロックを締め付けて一体化したブロックユニットを工場又は現場において形成した後、このブロックユニットを盛土箇所に設置することを特徴とする盛土の発泡性合成樹脂ブロックの積み上げ方法。」
(なお、出願人により、本願の願書に添付した明細書について、特許法第17条の2第1項第3号の規定に基づいて平成13年9月18日付け手続補正書が提出されたが、これは補正の却下の決定により却下された。)

2 引用刊行物の記載
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された特開昭62-197521号(以下「引用例1」という。)には、図面と共に「ブロック状又は板状の硬質発泡プラスチック製軽量盛土材を盛土内に敷設した軽量盛土構造において、一又は複数個の軽量盛土材を敷設単位として帯状材が捲着され、かつ敷設単位間の帯状材が連結されていることを特徴とする軽量盛土構造。」(特許請求の範囲)が記載され、「[作用] 軽量盛土材1の敷設単位間を帯状材3を介して連結することによって、積み重ねて敷設された軽量盛土材1全体を一体化することができる。従って、・・・敷設された軽量盛土材1が相互にずれるおそれがない。」(2頁右上欄9〜15行)、「地盤面4を掘り下げ、地中から軽量盛土材1を積み重ねて敷設し、その上を盛土2で覆ってある。」(2頁左下欄6〜8行)、「軽量盛土材1は、・・・その敷設単位毎に帯状体3が捲着されている、また、敷設単位間の帯状材3は、結合索7によって連結され、軽量盛土材1全体の一体化が図られている。」(2頁左下欄12〜16行)、「複数の軽量盛土材1を並べたり重ねたものを敷設単位とし、これに帯状体3を捲着してまとめておくと、軽量盛土材1の敷設作業を効率的に行えるようになるので好ましい。」(2頁左下欄20行〜右下欄3行)、「軽量盛土材1間の一体化により、・・・不等沈下やくずれのない盛土2による地盤を構成することができる。」(4頁左下欄3〜7行)と記載されている。第1図には、盛土箇所において軽量盛土材を複数段に積み重ねて敷設することが示されている。
以上の記載によると、引用例1には、ブロック状の硬質発泡プラスチック製軽量盛土材(以下、「軽量盛土材」という。)を盛土内に積み重ね、軽量盛土構造を構築する方法において、重ねた複数の軽量盛土材に帯状体を捲着して敷設単位を形成し、それを盛付箇所に積み重ねると共に各敷設単位の帯状体を連結し全体を一体化する盛土構造の構築方法が開示されていると認められる。
同じく特開平5-214703号(以下「引用例2」という。)には、図面と共に「発泡樹脂ブロックにより構築物を構築する方法」に係る発明が記載され、「即ち、本発明は発泡樹脂ブロックを多数積み重ねて特定の構築物を構築し、さらに、これら発泡樹脂ブロックを相互に固定して、地震等の外力によっても崩壊しない恒久的な構築物を構築しようとするものである。」(2頁1欄38〜42行)、「このように、この発明は、所定の形状に形成された発泡樹脂ブロックを、盛土体或いは自立壁体等の構築物の形状に並列に或いは複数の層を形成するように積み重ね、これら発泡樹脂ブロック相互を緊結して、・・・建築物の当初の構造が外力によって変形したり、崩壊したりしないように保持するようにしたものである。」(1頁1欄43〜49行)、「図5,図6に示すものは、個々の発泡樹脂ブロック30に孔150,160を前記のものと同様に設け、同ブロック30を千鳥状に又は交互に配列し、発泡樹脂ブロック30相互を一体化させ、発泡樹脂ブロック層34を形成したものである。そのうち・・・図6は横方向にそれぞれ一体化させたものを示す。尚、図中162(これは161の誤記と認める。)はワイヤー・・・、161(これは162の誤記と認める。)はワイヤー・・・の両端部に設ける金属或いはプラスチックプレートある。」(2頁2欄41〜49行)と記載されている。
該引用例の8頁以降は、7頁までの記載事項を補正したもの(補正後の明細書及び図面内容)であり、そこには、「請求項1記載の発明は、「ブロック内部に孔を設けた発泡樹脂ブロックを前記孔が重なり合うように積み重ねて構築物を構築し、これら複数の発泡樹脂ブロックにより形成された連通孔に、・・・連結材を挿入することにより、発泡樹脂ブロック相互を固定して前記構築物の構築を保持する・・・方法」をその要旨とするものである。」(8頁右欄1〜8行)、「連結材は・・・ワイヤー・・・を好ましい例として挙げることができる」(9頁左欄3〜5行)、「或いは図4に示すように、連結材18とし、ワイヤー・・・を用い、・・・連通孔17の両端に、金属或いはプラスチックよりなるプレート20を取付け、このプレート20に連結材18の両端を固着して連結材18を連結孔17内に固定したものなどを好ましい例として挙げることができる。」(9頁左欄15〜21行)と記載されている。図4(9頁)(6頁の図6に対応する。図中の番号に変更がある。)には、連通孔17内にワイヤー(連結材)18を挿入しブロック相互を横方向に固定したブロック構築物23が示されている。

(2-2)対比・検討
(a)本願の請求項1に係る発明について
本願の請求項1に係る発明(以下「本願第1発明」という。)(前者)と上記引用例1に記載された発明(後者)を対比すると、後者における「軽量盛土材」、「積み重ね」、「敷設単位」が前者の「発泡性合成樹脂ブロック」、「積み上げ」、「一体化したブロックユニット」にそれぞれ相当すること、後者における盛土構造の構築方法が積み上げによる構築方法であることは明らかであることから、両者は、発泡性合成樹脂ブロックを積み上げて盛土を構築する積み上げ方法において、前記ブロックを一体化したブロックユニットを形成した後、この複数段のブロックユニットを盛土箇所に設置する盛土の発泡性合成樹脂ブロックの積み上げ方法である点で一致しているが、
前者では、「一体化したブロックユニット」が、複数段に重ねたブロックに厚さ方向に連結部材を挿通し、この連結部材の上下両端に受圧板を有する締付用止め具を設け、それら締付用止め具により複数段のブロックを締め付け一体化したものであるのに対し、後者では、ブロックを厚さ方向に複数積み重ねこれに帯状体を捲着したものである点(相違点1)、前者では「一体化したブロックユニット」が工場又は現場で形成されるのに対し、後者ではそのことが不明ではある点(相違点2)で相違している。
以下、上記相違点について検討する。
相違点1について、
引用例1記載の「敷設単位」は、複数の軽量盛土材を厚さ方向に積み重ね帯状材を捲着したものである。「敷設単位」を帯状体の捲着以外の方法で形成することは記載がないが、「敷設単位」の形成は作業の効率化のために行われている(2頁左下欄20行〜右下欄3行)。そして、捲着以外の方法による「敷設単位」の形成であっても作業効率の向上は自明であり、盛土の構築も可能であるから、帯状体の捲着以外の方法により形成された「敷設単位」が使用できないというものではない。
ところで、引用例2には「図5,図6に示すものは、・・・同ブロック30を千鳥状に又は交互に配列し、発泡樹脂ブロック30相互を一体化させ、発泡樹脂ブロック34層を形成したものである。そのうち・・・図6は横方向にそれぞれ一体化させたものを示す。」(2頁2欄41〜47行)、「或いは図4に示すように、連結材18とし、ワイヤー・・・を用い、・・・連通孔17の両端に、金属或いはプラスチックによりなるプレート20を取付け、このプレート20に連結材18の両端を固着して・・・を好ましい例として」(9頁左欄15〜21行)という記載があり、これら記載と図4(9頁)からみて発泡樹脂ブロックの孔にワイヤー(連結材)を挿入し、その両端をプレートに固着することにより発泡樹脂ブロックを一体化したものが記載されていると認められる。
ブロックをワイヤーで一体化するとき、単にワイヤーを挿入、配置しただけではブロックの結束、一体化ができないことは常識であるから、引用例2に記載のワイヤーにより一体化されたブロックはある程度の締め付けがなされ、その状態で固定されているものであると解さざるを得ない。該ワイヤー(本願第1発明の「連結部材」に相当する。)の両端におけるワイヤーのプレートへの止め部材の存在は自明である。そして、締め付け状態下ではワイヤー両端のプレートは引っ張りにより圧力を受け、ワイヤー両端のプレートと前記ワイヤーの止め部材とからなるものは、締付用止め具としての機能しているということになるので、本願第1発明の「受圧板を有する締付用止め具」に相当すると言える。
又、引用例2に記載の一体化した発泡樹脂ブロック構築物(9頁、図4等参照。)は、引用例1に記載の「一体化したブロックユニット」(敷設単位)と同様に盛土内の敷設用である。
そうであるから、引用例1に記載の発明において帯状体の捲着による一体化を、ワイヤー(連結部材)を挿通し、プレートと、ワイヤーの止め部材とからなるもの、即ち受圧板を有する締付用止め具で締め付ける一体化に置き換えることは当業者が容易に想到し得ることと認められ、それによりもたらされる効果も当業者の予測を越えるものではない。
相違点2について
「一体化したブロックユニット」を工場又は現場で形成することは、盛土工事においてそのようにするのが当然のことであるので、この点に格別の技術的意味は認められない。

4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用例1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-03-06 
結審通知日 2002-03-11 
審決日 2002-03-26 
出願番号 特願平9-70218
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E02D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 深田 高義  
特許庁審判長 嶋矢 督
特許庁審判官 鈴木 公子
中田 誠
発明の名称 盛土の発泡性合成樹脂ブロックの積み上げ方法とその積み上げ構造  
代理人 牛木 護  
代理人 牛木 護  

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