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審決分類 審判 一部申し立て 特29条の2  G02F
審判 一部申し立て 2項進歩性  G02F
管理番号 1058107
異議申立番号 異議2001-72462  
総通号数 30 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-05-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-09-06 
確定日 2002-03-11 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3143591号「表示装置」の請求項1ないし4、13に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3143591号の請求項13、1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3143591号の特許請求の範囲の請求項1〜4及び13に係る発明は、平成8年9月12日(国内優先権主張平成7年9月14日)に特許出願され、平成12年12月22日に設定登録がなされ、佐藤光男より特許異議の申立がなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成14年1月28日に訂正請求がなされたものである。
2.訂正の適否について
ア.訂正の内容
訂正事項a
(イ)特許明細書の特許請求の範囲の請求項1に係る下記の記載
「【請求項1】 複数の反射電極を有する一方の基板と、前記基板に対向し透明電極を有する他方の基板と、前記双方の基板の間に液晶材料を備える表示装置において、
前記反射電極の間もしくは、前記反射電極からなる表示部の周辺領域の少なくとも一部に遮光層が配され、前記反射電極と前記遮光層との表面粗さが異なることで、両者の反射特性を異ならせたことを特徴とする表示装置。」

「【請求項1】 複数の反射電極を有する一方の基板と、前記基板に対向し透明電極を有する他方の基板と、前記双方の基板の間に液晶材料を備える表示装置において、
前記反射電極の間もしくは、前記反射電極からなる表示部の周辺領域の少なくとも一部に遮光層が配され、前記反射電極表面がケミカルメカニカルポリッシング処理され、前記反射電極と前記遮光層との表面粗さが異なることで、両者の反射特性を異ならせたことを特徴とする表示装置。」
と訂正する。
(ロ)特許明細書の特許請求の範囲の請求項3に係る下記の記載
「【請求項3】 前記反射電極と前記遮光層は、材料が異なる請求項1に記載の表示装置。」

「【請求項3】 前記反射電極と前記遮光層は、材料が異なり、peak to valleyによる評価において、反射電極の表面粗さが1000Å以下、遮光層の表面粗さが1500Å以上である請求項1に記載の表示装置。」
と訂正する。
訂正事項b
特許明細書の段落【0006】の
「【課題を解決するための手段】
以上の問題を解決するために、本発明者らが鋭意努力した結果、以下の発明を得た。すなわち、本発明の表示装置は、複数の反射電極を有する一方の基板と、前記基板に対向し透明電極を有する他方の基板と、前記双方の基板の間に液晶材料を備える表示装置において、前記反射電極の間もしくは、前記反射電極からなる表示部の周辺領域の少なくとも一部に遮光層が配され、前記反射電極と前記遮光層との表面粗さが異なることで、両者の反射特性を異ならせたことを特徴とする。さらに、前記反射電極が照明光を反射させ、前記反射電極が主に照明光を反射させる方向と別の方向に前記照明光を反射させる遮光層を、前記複数の反射電極の間に設けることができ、遮光層は、反射電極の表面と異なる角度の面を有するのが望ましい。また、反射電極の表面と遮光層の表面のなす角をθ、液晶材料の屈折率をn、投影光学系のF数をFとすると、θが」

「【課題を解決するための手段】
以上の問題を解決するために、本発明者らが鋭意努力した結果、以下の発明を得た。すなわち、本発明の表示装置は、複数の反射電極を有する一方の基板と、前記基板に対向し透明電極を有する他方の基板と、前記双方の基板の間に液晶材料を備える表示装置において、前記反射電極の間もしくは、前記反射電極からなる表示部の周辺領域の少なくとも一部に遮光層が配され、前記反射電極表面がケミカルメカニカルポリッシング処理され、前記反射電極と前記遮光層との表面粗さが異なることで、両者の反射特性を異ならせたことを特徴とする。さらに、前記反射電極が照明光を反射させ、前記反射電極が主に照明光を反射させる方向と別の方向に前記照明光を反射させる遮光層を、前記複数の反射電極の間に設けることができ、遮光層は、反射電極の表面と異なる角度の面を有するのが望ましい。また、反射電極の表面と遮光層の表面のなす角をθ、液晶材料の屈折率をn、投影光学系のF数をFとすると、θが」
と訂正する。
訂正事項c
特許明細書の段落【0010】中の
「Mecheuical」を「Mechanical」と訂正する。
訂正事項d
特許明細書の段落【0012】の「遮光槽の表面粗さについては、」を「遮光層の表面粗さについては、」と訂正し、「遮光層の表面粗さとし1500Å以上」を「遮光層の表面粗さとして1500Å以上」と訂正する。
イ.訂正の目的の適否、新規事項の追加及び特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
訂正事項a(イ)について
請求項1において「反射電極表面がケミカルメカニカルポリッシング処理される」ことに限定することは、請求項1に係る発明を減縮するものであり、明細書の段落【0010】、【0018】、【0047】の記載から直接的かつ一義的に導き出せる事項であるから、新規事項を追加するものでなく、特許請求の範囲を実質的に拡張又は変更するものでもない。
訂正事項a(ロ)について
請求項3において「反射電極の表面粗さを1000Å以下に、遮光層の表面粗さを1500Å以上」に限定することは、請求項3に係る発明の減縮に該当し、特許明細書の段落【0012】の記載から直接的かつ一義的に導き出せる事項であるから、新規事項を追加するものでなく、特許請求の範囲を実質的に拡張又は変更するものでもない。
訂正事項bについて
この訂正事項bは、上記訂正事項a(イ)に整合するように特許明細書の段落【0006】の記載を訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明に該当し、新規事項を追加するものでなく、特許請求の範囲を実質的に拡張又は変更するものでもない。
訂正事項cについて
この訂正事項cは、「Mecheulcal」の誤記「u」を「n」と訂正するものであるから、誤記の訂正に該当し、新規事項を追加するものでなく、特許請求の範囲を実質的に拡張又は変更するものでもない。
訂正事項dについて
この訂正事項dは、誤記「遮光槽」を「遮光層」に、そして、誤記「さとし」を「さとして」に、それぞれ訂正するものであるから、誤記の訂正に該当し、新規事項を追加するものでなく、特許請求の範囲を実質的に拡張又は変更するものでもない。
ウ.むすび
以上のとおり、上記訂正請求は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
3.特許異議申立について
ア.本件発明1〜4及び13
訂正後の特許明細書の特許請求の範囲の請求項1〜4及び13に係る発明(以下、本件発明1〜4及び13という。)は次のとおりである。
「【請求項1】 複数の反射電極を有する一方の基板と、前記基板に対向し透明電極を有する他方の基板と、前記双方の基板の間に液晶材料を備える表示装置において、
前記反射電極の間もしくは、前記反射電極からなる表示部の周辺領域の少なくとも一部に遮光層が配され、前記反射電極表面がケミカルメカニカルポリッシング処理され、前記反射電極と前記遮光層との表面粗さが異なることで、両者の反射特性を異ならせたことを特徴とする表示装置。
【請求項2】 前記反射電極と前記遮光層と、両者の間の絶縁層で保持容量を形成する請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】 前記反射電極と前記遮光層は、材料が異なり、peak to valleyによる評価において、反射電極の表面粗さが1000Å以下、遮光層の表面粗さが1500Å以上である請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】 前記反射電極は、主にAlからなり、前記遮光層は、主に、Ti,TiN,W,Moから選ばれる材料からなる請求項3に記載の表示装置。
【請求項13】 前記一方に基板は、複数の走査配線と、複数の信号配線と、前記走査配線と前記信号配線の交差部に配された画素スイッチを有する請求項1〜12のいずれか1項に記載の表示装置。」
イ.異議申立の理由の概要
異議申立人 佐藤光男は、証拠として甲第1号証〜甲第4号証を提出し、本件発明1〜4及び13は特許法第29条第2項の規定、若しくは、同法同条の2の規定に違反して特許されたものであるから、それらの特許は取り消されるべき旨主張している。
ウ.証拠に記載の発明
取消理由通知に引用した刊行物1(異議申立人 佐藤光男が証拠として提出した甲第1号証(特開平1-156725号公報)の第2頁右上欄第14行乃至第2頁右下欄第8行、第3頁右上欄第17行乃至同第19行、及び第1図には、電気光学材料として液晶を用い、データ配線2と走査線3、およびこれらの交点に能動素子としてTFT4と画素電極1とを設けた表示装置であって、画素電極1,48が形成された絶縁基板40と、前記絶縁基板40に対向し透明導電膜からなる対向電極51を有するもう一つの絶縁基板50と、前記2つの絶縁基板40,50の間に液晶49を備える表示装置が、そして、前記画素電極1,48どうしの間隙がデータ配線と走査線上にくるようにすることにより、これらの配線が遮光層として働き、高コントラストの画像が得られることが、また、前記画素電極48にアルミニウム、金、プラチナ等の金属を用いることにより反射型の表示装置が得られることが、それぞれ記載されている。
取消理由通知に引用した刊行物2(異議申立人 佐藤光男が証拠として提出した甲第2号証(特開昭57-20778号公報)の第3頁左下欄第3行乃至同頁右下欄第1行、第4頁左下欄第7行乃至第5頁左上欄第5行、および第5図には、半導体基板上にトランジスタが2次元マトリックスに配置され、その上に絶縁膜20、21を介して金属反射電極19が形成され、絶縁膜20、21の層間に前記金属反射電極19の間を光シールドするための金属層24を形成した画像装置が、更に、その第2頁左下欄第9行、および第4頁左下欄第7行乃至第19行には、前記金属反射電極19がアルミニウム電極であることが、そして更に、その第4頁左下欄第20行乃至右下欄第4行には、光シールド用の前記金属層24がMo等の反射率の低い材質で形成されることが、そして更に、金属層24をシリコン基板10の電位と同じくすることにより、蓄積用コンデンサ2の容量を増大させることができることが、それぞれ記載されている。
取消理由通知に引用した刊行物3(異議申立人 佐藤光男が証拠として提出した甲第3号証(特開平6-194687号公報))の段落【0018】、【0025】、【0026】、及び図1、図2には、主基板と対向基板及び液晶材からなるTFTを用いた液晶表示装置において、前記主基板となるガラス基板101にクロムからなる画素間遮光層を兼ねた蓄積容量電極107が形成され、また絶縁層104を介してそれぞれ、クロムからなる走査配線102、信号配線103、TFT素子105、画素電極106を形成し、また対向基板となるガラス基板108に対向電極109が設けられることが記載されている。
取消理由通知に引用した刊行物4(異議申立人 佐藤光男が証拠として提出した甲第4号証(特願平6-306558号の願書に最初に添付された明細書及び図面(特開平8-160463号公報)))の第4頁右欄段落【0021】乃至【0022】には、
「【0021】
ゲート絶縁層(12)上には、活性層(11)と同様に減圧CVDにより3000Å程度のp-Si(13P)を成膜し、POCl3(三塩化ホスホリル)を拡散源とした減圧CVDによりN+型にドープし、この上に、スパッタリングによりタングステン(W)あるいはモリブデン(Mo)のシリサイド(13S)を形成して、ポリサイド構造と成し、これをフォトエッチによりパターニングすることにより、ゲートライン(13)、ゲート電極(13G)及び第2の補助容量電極(13C)のパターンに形成され、更に、900℃程度の活性化アニールを行って整膜している。第2の補助容量電極(13C)はゲートライン(13)方向に沿って画素間で接続され、共通電極電圧が印加される。第2の補助容量電極(13C)は、ソース電圧が印加される第1の補助容量電極(11C)とゲート絶縁層(12)を挟んで重畳され、電荷保持用の補助容量を構成している。活性層(11)には、ゲート電極(13G)をマスクとして燐などのN型不純物のイオン注入を行うことにより、ソース・ドレイン領域(11s,11d)が形成されるとともに、ノンドープのチャンネル領域(11n)が形成されている。
【0022】
ゲートライン(13)、ゲート電極(13G)及び第2の補助容量電極(13C)を覆う全面には熱CVDによりSiO2が積層され、第1の層間絶縁層(14)とされている。ドレイン領域(11d)上のゲート絶縁層(12)及び第1の層間絶縁層(14)にコンタクトホール(CT1)を開口したあと、スパッタリングなどによりAlを6000〜7000Åの厚さに積層し、フォトエッチによりドレインライン(15)のメインライン(15M)が形成され、コンタクトホール(CT1)を介してドレイン領域(11d)に接続されている。更に、スパッタリングによりCrあるいはTi、Moなど、耐熱性の高いメタルを1500Å程度の厚さに積層し、フォトエッチによりメインライン(15M)よりも大きなパターンでメインライン(15M)覆い、BMを兼ねたサブライン(15S)が形成されている。」と記載されている。
更に、その第5頁右欄段落【0027】には、
「【0027】
ソース領域(11s)上のゲート絶縁層(12)、第1の層間絶縁層(14)及び第2の層間絶縁層(16)にコンタクトホール(CT2)を開口したあと、Alのスパッタリングとフォトエッチを行うことにより反射層を兼ねた画素電極(17)が形成され、コンタクトホール(CT2)を介して、ソース領域(11s)にも接続されている。画素電極(17)は、平坦化された第2の層間絶縁層(16)上に形成されているため、高い平坦性が得られている。」と記載されている。
エ.当審の対比・判断
(1)特許法第29条第2項の規定の違反について
本件発明1〜4及び13の「反射電極表面をケミカルメカニカルポリッシング処理する」ことは甲第1号証〜甲第3号証のいずれにも記載も示唆もされておらず、周知又は自明の事項でもない。
そして、本件発明1〜4及び13は、「反射電極表面をケミカルメカニカルポリッシング処理する」ことにより、反射電極と遮光層の表面粗さに違いを持たせることができ、コントラストの高い画像表示を観ることができるという作用効果を呈するものである。
したがって、本件発明1〜4及び13は、上記甲第1号証〜甲第3号証に記載された発明及び技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができないものである。
(1)特許法第29条の2の規定の違反について
本件発明1、3、4及び13は「反射電極表面をケミカルメカニカルポリッシング処理する」ことにより反射電極表面を平坦にしているのに対して、刊行物4(特願平6-306558号の願書に最初に添付された明細書及び図面(特開平8-160463号公報))に記載の発明は、第2層間絶縁膜表面を化学的機械的研磨することにより、その上に形成される反射画素電極の表面を平坦にしているから、本件発明1、3、4及び13は刊行物4に記載された発明と同一であるとすることができない。
オ.むすび
以上のとおり、異議申立の理由及び証拠によっては、本件発明1〜4及び13についての特許を取り消すことができない。
また、他に本件発明1〜4及び13についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
表示装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数の反射電極を有する一方の基板と、前記基板に対向し透明電極を有する他方の基板と、前記双方の基板の間に液晶材料を備える表示装置において、前記反射電極の間もしくは、前記反射電極からなる表示部の周辺領域の少なくとも一部に遮光層が配され、前記反射電極表面がケミカルメカニカルポリッシング処理され、前記反射電極と前記遮光層との表面粗さが異なることで、両者の反射特性を異ならせたことを特徴とする表示装置。
【請求項2】 前記反射電極と前記遮光層と、両者の間の絶縁層で保持容量を形成する請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】 前記反射電極と前記遮光層は、材料が異なり、peak to valleyによる表面粗さの評価において、反射電極の表面粗さが1000Å以下、遮光層の表面粗さが1500Å以上である請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】 前記反射電極は、主にAlからなり、前記遮光層は、主に、Ti,TiN,W,Moから選ばれる材料からなる請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】 前記反射電極と前記遮光層が、光を反射させる方向が異なる請求項1に記載の表示装置。
【請求項6】 前記遮光層は、前記反射電極の表面と異なる角度の面を有する請求項5に記載の表示装置。
【請求項7】 前記反射電極の表面と前記遮光層の表面のなす角をθ、前記液晶材料の屈折率をn、投影光学系のF数をFとすると、θが
【外1】

を満たす請求項6に記載の表示装置。
【請求項8】 前記θは、10〜30°である請求項7に記載の表示装置。
【請求項9】 前記反射電極の下部に厚い絶縁層、前記反射電極間の境界部に薄い絶縁層を有する請求項5〜8のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項10】 複数の信号線と同一層の配線層の間隔が、前記反射電極の間の下部で、前記反射電極の下部よりも広い請求項5〜9のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項11】 隣合う前記反射電極の端部が、画素の境界平面に対して非対称である請求項5〜10のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項12】 前記反射電極と前記透明電極の角度が異なる請求項1〜11のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項13】 前記一方に基板は、複数の走査配線と、複数の信号配線と、前記走査配線と前記信号配線の交差部に配された画素スイッチを有する請求項1〜12のいずれか1項に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、画像・文字などを表示する装置、特に液晶パネルを使った表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
今日、世の中はマルチメディア時代の到来により、画像情報を簡単、感覚的に受信、発信を実現するマンマシンインタフェイスとしての表示装置の開発が望まれている。なかでも、液晶表示装置は、薄型で消費電力が小さく、高解像のものが得られるため、注目を集めている。
【0003】
現在、液晶表示装置は、主に10インチサイズのノートパソコンに使用されている。その方式の主流は、透過型である。これは、簡単な構造で高コントラストな表示が実現できるからである。しかし、開口率が30〜50%と小さく、明るい表示のためには、バックライトのパワーが必要であり、消費電力が小さい液晶表示装置の本来の特質が失われてしまう。一方、反射型は、明るい外光を照明光として利用できるため、照明光などのパワーが不要になるなど透過型よりも、技術的ポテンシャルが高い。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、現実的には反射型はあまり実用化されていない。反射型の場合、反射電極からの信号光以外に、あらゆる箇所から表示信号と無関係の反射光が使用者の目に入ってしまい、なかなかコントラストの高い表示ができないからである。なお、透過型の場合、不要な光は、遮光層などで遮られるので使用者の目に入らない。
【0005】
そこで、本発明は、反射型の表示装置を実用化するために、ノイズとなる表示信号と無関係の反射光成分を取り除き高コントラストの表示を実現することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
以上の問題を解決するために、本発明者らが鋭意努力した結果、以下の発明を得た。すなわち、本発明の表示装置は、複数の反射電極を有する一方の基板と、前記基板に対向し透明電極を有する他方の基板と、前記双方の基板の間に液晶材料を備える表示装置において、前記反射電極の間もしくは、前記反射電極からなる表示部の周辺領域の少なくとも一部に遮光層が配され、前記反射電極表面がケミカルメカニカルポリッシング処理され、前記反射電極と前記遮光層との表面粗さが異なることで、両者の反射特性を異ならせたことを特徴とする。さらに、前記反射電極が照明光を反射させ、前記反射電極が主に照明光を反射させる方向と別の方向に前記照明光を反射させる遮光層を、前記複数の反射電極の間に設けることができ、遮光層は、反射電極の表面と異なる角度の面を有するのが望ましい。また、反射電極の表面と遮光層の表面のなす角をθ、液晶材料の屈折率をn、投影光学系のF数をFとすると、θが
【0007】
【外2】

を満たすのが望ましい。このなかでもθは、10〜30°であるとよい。反射電極の下部に厚い絶縁層、反射電極間の境界部に薄い絶縁層を有することでこの構造が作製できる。反射電極と反射電極の下部の遮光層と、両者の間の絶縁層で保持容量を形成することもできる。複数の信号線と同一層の配線層の間隔が、反射電極の間の下部で、反射電極の下部よりも広くても、本発明の構造を作製できる。隣合う前記反射電極の端部が、画素の境界平面に対して非対称であってもよい。反射電極と他方の基板の透明電極の角度が異なるとさらに効果がある。一方の基板は、複数の走査配線と、複数の信号配線と、前記走査配線と前記信号配線の交差部に配された画素スイッチを有するアクティブマトリックス基板であるとよい。
【0008】
また、遮光層で反射する光の方向と反射電極で反射させる光の方向を、反射させる以外にも、反射電極と遮光層の反射特性を変えるために、それぞれが反射する光の方向を変えないで、材料を変えることができる。このとき、反射電極の材料が主にAlで、遮光層の材料が主にTi,TiN,W,Moから選ばれる材料であるのが望ましい。
【0009】
ここで、主にAlであるというのは、材料がAl,AlSi,AlSiCu,AlCu,AlGe,AlGeCuを含む。また、本発明の遮光層は、反射電極の下層にあるとよい。
【0010】
反射電極の反射率としては、望ましくは、80%以上であり、さらに望ましくは90%以上が良い。これらの高反射率は、Al表面をCMP(Chemical Mechanical Polishing)技術よりミラー面に仕上げることにより実現できる。一方、遮光層の反射率は、望ましくは、70%以下であり、さらに望ましくは60%以下、さらに40%以下が好適である。反射電極と遮光層から形成される保持容量のリーク防止を考えるとTi材料が良く、その成膜時の反射率は、58%となる。さらにTiNを用いれば表面反射率は30%となり好適である。
【0011】
本発明の反射電極と遮光層の反射率を変える形態により、反射電極と遮光層との反射率が、ほぼ同等の時に比べて、反射電極の反射率が80%、遮光層の反射率が70%の時、コントラストは、10%向上する。また反射電極の反射率が90%に向上し、一方遮光層の反射率が、60%さらに40%に低下すると、さらにコントラストは、30%、50%向上する。
【0012】
一方、反射電極表面粗さと遮光層の表面粗さとの違いをつけ、反射特性を変える事によっても、高コントラストを達成することが可能になる。反射電極の表面粗さをpeak to valleyで評価した時、望ましくは1000Å以下であり、さらには500Å以下になっていることが好適である。一方、遮光層の表面粗さについては、望ましくは1500Å以上さらには、2000Å以上が望ましい。上記反射電極の表面粗さとして、500Å以下かつ、遮光層の表面粗さとして1500Å以上を用いると、ほぼ同等の表面粗さに比べて25%コントラストが向上する。これは、照明光が遮光層表面で、入射方向と異なる角度に反射されることによりノイズ成分の光がアパーチャーで切断されることにより達成できる。
【0013】
上記表面粗さを実現するためには、反射電極の形成時に、反射電極の下地絶縁層の表面平坦性を向上し、高真空のスパッタ装置でAl系の成膜をすることにより1000Å下が実現できる。さらにその表面をCMP処理を施し、表面に付着したスラリーを洗浄し、とり除くことにより500Å以下が実現できる。
【0014】
一方、遮光層の表面粗さに関しては、たとえば、W材料を用いて、CVD装置により成膜することにより1500Å以上の表面粗さとなる。さらに、表面粗さを増加されるためには、遮光層膜厚を増加させることにより制御可能である。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を5つ液晶パネルを挙げて記述するが、それぞれの形態に限定されるものではない。相互の形態の技術を組み合わせることによって効果が増大することはいうまでもない。また、液晶パネルの構造は、半導体基板を用いたもので記述しているが、必ずしも半導体基板に限定されるものではなく、通常の透明基板上に以下に記述する構造体を形成してもいい。また、以下に記述する液晶パネルは、すべてTFT型であるが、MIM型や単純マトリックス型であってもいい。さらに、以下に記述する液晶パネルは、家庭用テレビはもちろん、プロジェクタ、ヘッドマウントディスプレイ、3次元映像ゲーム機器、ラップトップコンピュータ、電子手帳、テレビ会議システム、カーナビゲーション、飛行機のパネルなどの表示装置として有効である。
【0016】
(実施形態1)
本発明の実施形態1は、画素反射電極のすき間に画素反射電極と異なる角度を有する遮光層を設けるため、各画素反射電極のすき間と画像表示領域の外周部にフィールド酸化膜のくびれ部を形成し、その段差を上層の遮光金属層の形状に反映させる。また、画素反射電極の周辺領域の遮光層も同様に角度を異ならせる。画素反射電極は、入力される信号に応じて液晶材料の透過率を変え、照明光を変調する。変調された反射光は、画素反射電極の表面で正反射し、使用者の目に届く。一方、画素反射電極のすき間または周辺領域の遮光層の角度は、画素反射電極の角度と異なるために、遮光層の表面からの正反射光は、画素反射電極に変調された反射光とは、別の方向に反射され、使用者の目に届かない。このため、画素反射電極の正反射光のみ通過させる光学系を介して、変調された信号を取り出せば、反射液晶パネルの問題であるコントラスト低下が解消できる。
【0017】
図1は、実施形態1を使った反射型TFT型アクティブマトリックス液晶表示パネルの平面図(a)と、平面図(a)のX1-X’1での断面図(b)を表す。図中、1は半導体基板、2はフィールド酸化膜、3,4,5はパネルの駆動用周辺回路を構成するMOSFETのソース・ドレイン・ゲートである。6,7,8は表示領域における画素スイッチになる薄膜トランジスタのソース・ドレイン・ゲート、9はデータ配線、10は金属電極、11は画素反射電極、12は遮光金属層、13は絶縁層である。14は液晶材料、15は対向透明基板、16は共通透明電極、17はスルーホール、18は各画素の境界部、19はフィールド酸化膜のくびれ部、20は表示領域周辺の駆動回路である。
【0018】
図1の場合、半導体基板1はp型基板、パネルの駆動用周辺回路を構成するMOSFETはnチャンネルであるが、基板がn型で、MOSFETがpチャンネルであってもいい。表示領域周辺の駆動回路20は低消費電力特性のために、pチャンネルMOSFETを組み込んだCMOSで構成するのがよい。このとき、CMOSで構成するだけでなく、npn、pnpバイポーラも設け、液晶駆動用回路にビデオ回路を組み込むこともできる。薄膜トランジスタ6,7,8は、ソース6を垂直方向に配置した信号線9と、ドレイン7をスルーホール17に形成した金属電極10を介して画素反射電極11と、ゲート8を水平方向に配置した駆動線と接続する。画素反射電極11の下部には、共通透明電極16と同電位にした遮光金属層12があり、絶縁層13を画素反射電極11と遮光金属層12とで挟むことで保持容量として機能する。このとき、絶縁層13に高誘電率の材料を用いると保持容量が大きくなり、映像信号の保持効果が大きくなる。このため、絶縁層13に、通常のSiO2を使う以外に、SiON、SiN、TA2O5、BSTなどが適している。また、画素反射電極11の下部と遮光金属層12の上部に、ヒロックを防止できるTi、TiN、TiWなどと設けるといい。画素反射電極11の表面はケミカルメカニカルポリッシング(CMP)法で平坦化するのが望ましい。液晶材料14には、ゲストホストタイプ型やFLCなどの偏光型や、高分子分散型液晶などの散乱型を用いることができる。共通透明電極16は、透明基板15の液晶材料側の面に設ける。
【0019】
くびれ部のあるフィールド酸化膜2は、半導体基板1上に、選択酸化法(LOCOS)によって形成する。つぎに、フィールド酸化膜2の厚い部分に、よく知られた工程によってTFT(Thin Film Transistor)を作製し、それぞれを分離する絶縁層を形成する。この絶縁層は、フィールド酸化膜2のくびれ部の形を保っている。そして、遮光金属層12をくびれ部の形を保った絶縁層の上に積層させると、図1のように遮光金属層12は画素反射電極11のすき間でくびれ部の形を保ったものになる。
【0020】
つぎに、照明系からの入射光がすき間の遮光金属層12に反射されたノイズ光が、投射光学系へ入らないようにするには、すき間の遮光金属層12の角度をどのくらいにすればいいかについて考える。図6は、照明系からの射出光が液晶パネル(LCD)で映像によって変調され、反射されて投射光学系へ入射される様子を表す。照明系射出瞳と投射光学系の入射瞳が共役な光学系の場合、照明系の射出瞳から発生された光のうち液晶パネルの画素反射電極上の反射面で反射された光はすべて投射光学系へ入射される。液晶パネルの画素反射電極で反射された光は、光線▲1▼→▲4▼,▲2▼→▲5▼,▲3▼→▲6▼の経路をたどる。そこで、照明系から射出され、すき間の遮光金属層12で反射したノイズ光は、必ず投射光学系の入射瞳の外側に導いてやらねばならない。例えば、入射瞳の端の光線▲1▼がすき間の遮光金属層12で1回反射されたとき、その反射光が投射光学系の入射瞳に入らないようにするには、本来、画素反射電極12で反射されて進む光線▲4▼より2α以上時計回り傾いて進む必要がある。ここでαは、投射光学系のF数をFとすると、α=tan-1(1/2F)で表せる。
【0021】
図2(a)〜(e)は、画素反射電極11のすき間にある遮光金属層12の角度による反射光の方向を表す図である。(a)は入射光が液晶パネルに垂直に入ってきて遮光金属層12で1回反射して射出される場合、(b)は2回反射して射出される場合、(c)は3回反射して射出される場合、(d)は4回反射して射出される場合、(e)は5回反射して射出される場合の反射光の方向を表している。ここで、まず、1回反射する場合の(a)について考える。すき間の遮光金属層12と画素反射電極11のなす角度をθとする。画素反射電極12で反射光の方向は、液晶パネルにほぼ垂直な方向なので、すき間の遮光金属層12で反射されて、射出されるノイズ光の方向は、液晶パネルの法線2α以上の角度がなければならない。液晶材料の屈折率をn、液晶材料内でのすき間の遮光金属層12の反射光と法線のなす角を2βとすると、2β=2nαとなる。また1回反射の場合、θ=βなので、θ>α/n={tan-1(1/2F)}/nとすればいい。実際の液晶材料の屈折率nは約1.5であり、Fとして4,2.8,2.0を当てはめたのが表1である。
【0022】
【表1】

例えば投射光学系のF数が2.8なら、θは6.75°以上が適当ということになる。
【0023】
しかし、θがあまりに大きすぎると(b)のようにすき間の遮光金属層12で2回反射することになる。(b)のようなすき間で2回反射するとき、θ=45°±θ2とすると、2β=4nθとなる。このとき、すき間からのノイズ光が、2α以上の角度になるためには、2β=2nαより、θが表2の45°±θ2の範囲以外であればいい。すなわち、θは45°±{tan-1(1/2F)}/2n)の範囲以外がいい。
【0024】
【表2】

【0025】
また、(c)のように3回反射する場合は、θ=60°±θ3とすると2β=6nθとなる。このとき、θは表3の60°±θ3の範囲以外であればいい。すなわち、θは60°±{tan-1(1/2F)}/(3n)の範囲以外がいい。
【0026】
【表3】

【0027】
また、(d)のように4回反射する場合は、θ=72°±θ4とすると2β=8nθとなる。このとき、θは表4の72°±θ4の範囲以外であればいい。すなわち、θは67.5°±{tan-1(1/2F)}/(4n)の範囲以外がいい。
【0028】
【表4】

【0029】
また、(e)のように5回反射する場合は、θ=72°±θ5とすると2β=10nθとなる。このとき、θは表4の72°±θ5の範囲以外であればいい。すなわち、θは72°±{tan-1(1/2F)}/(5n)の範囲以外がいい。
【0030】
【表5】

【0031】
以上のような考察から、画素反射電極11のすき間の遮光金属層12の角度θとして最適なのは、
【0032】
【外3】

となる。図8は、照明系の射出光がすき間部の遮光金属層12で複数回反射する場合を考慮し、すき間部の遮光金属層12の適切な角度θを、投影光学系のF数を縦軸にして当てはめたグラフである。ここで、斜線はすき間部の遮光金属層12がとってはいけない角度を表し、白は可能な領域を表す。ここで、角度θが90°に近いところを可能な領域としているのは、反射回数が多ければ、実質的にノイズ光が外部に出ないからである。また、θの値に少し余裕を持たせれば、θは10〜30°が望ましい。
【0033】
(実施形態2)
本発明の実施形態2は、画素反射電極のすき間と表示部の周辺領域に画素反射電極と異なる角度を有する遮光層を設けるため、配線層を用いて、各画素反射電極のすき間と周辺領域に段差形状を作り、その段差を上層の遮光金属層の形状に反映させる。つまり、各画素反射電極のすき間には、配線層を設けず、画素反射電極の下部には、配線として機能しなくても平坦性を実現するダミー配線を設ける。これは、配線の間隔が所望のものよりも狭くなると配線上部の相関絶縁膜は平坦に、一方、広くすると段差が生じる特性を利用している。
【0034】
図3は、実施形態2を使った反射型TFT型アクティブマトリックス液晶表示パネルの断面図を表す。22はウェル領域、23はウェル電位固定用高濃度不純物層、24は反射防止膜、26はダミー配線、27は配線層のすき間の大きいところ、28は配線層のすき間の小さいところである。図1と同じ部品については説明を省略する。
【0035】
半導体基板1は図3のようにn型であっても、p型であってもいい。ウェル領域22は半導体基板1と逆導電型になる。図3は、周辺回路3,4,5と画素スイッチ6,7,8をnチャンネルMOSFETで構成することを表しているが、走査回路を含む周辺回路をCMOSで構成し、画素スイッチをnチャンネルとpチャンネルのMOSFETからなるトランスミッションゲート構成にする方が望ましい。ウェル電位固定用高濃度不純物層23は図3ではp+であるがn+であってもいい。
【0036】
対向透明基板15と共通透明電極16は、ノイズ反射光が同一方向に射出されることを防止するために、図3の25のように表面の角度を画素反射電極11と異なるように山型の形状にしている。この山型の周期は、1画素につき1山の半分作るのが最もよいが、1画素につき複数山でも、複数画素につき1山でも大きな効果がある。もちろんこの間の周期でも効果があることはいうまでもない。また、山の周期と画素の周期が合っていなくてもよい。また、25の表面の角度は1〜25°が望ましいが、投射光学系のF数が2〜4程度の場合、4〜12°だとさらに望ましい。
【0037】
実施形態2では、配線層9,10,26を用いて、画素反射電極11のすき間あるいは外周部に段差形状を作り、すき間あるいは外周部の遮光金属層12の表面角度と画素反射電極11の角度を変える。このとき、図3の26のように、配線として機能しなくても、平坦性を実現するダミー配線を設ける。つまり、配線の間隔がある程度狭くなると、配線上部の層間絶縁層30は平坦に、一方、広くすると層間絶縁膜29に段差が生じる特性を利用している。この段差を生じさせる配線の間隔は、1.5μm以上が望ましい。これらの層間絶縁膜の材料として望ましいのは、プラズマCVDで形成したSiO2、p-SiO/O3-TEOS/p-SiOの3層構造などステップカバレッジの良好な絶縁層成膜技術で積層した絶縁層が適している。ここでp-SiOは、プラズマCVDで形成したSiO膜を表す。これは、3層構造にすることにより、TEOSの水分吸収の防止などにより、層間絶縁膜の安定化が図れるからである。したがって、図3の27,28に表すように、画素反射電極11間における配線層間隔は、それ以外の表示領域よりも広くなっている。
【0038】
また、表示部の周辺領域に同一構造の領域(ダミー領域)52を設けるといい。周期構造が急になくなるとその境界部から回折反射光が入る。このダミー領域52は、回折反射光を防止でき、高コントラストが実現できる。さらに、表示部の周辺領域の配線とダミー配線に、表示部の画素反射電極11のすき間と同じような間隔をあけて、遮光金属層12表面に凹凸をつけとおくといい。これによって、画素反射電極11のすき間同様、周辺領域からの反射光も画素反射電極11からの反射光と異なる方向に進むのでさらに高コントラストが実現できる。
【0039】
実施形態2は、画素スイッチに単結晶MOSFETを用いているので、高速に駆動できるだけでなく、素子の特性ばらつきはなく、安定性、信頼性も高くなり歩留まりも向上する。
【0040】
(実施形態3)
本発明の実施形態3は、画素反射電極のすき間に画素反射電極と異なる角度を有する遮光層を設けるため、多結晶Si上に遮光層を設けて多結晶Siの粒径に対応した凹凸を形成する。つまり、粒径に対応した凹凸をよって光が散乱し、ノイズ光が使用者の目に入るのが防げる。
【0041】
図4は、表示部の隣接する画素部の断面構造を表す図である。図中、31は画素スイッチ用TFTのチャンネル、32は多結晶Si、33は画素反射電極のすき間にある段差付きの光散乱層である。図1と図3と同じ部品については説明を省略する。
【0042】
半導体基板1とウェル領域22は、図4でそれぞれn型、p型になっているが、それぞれが入れ替わってもいい。また、選択酸化法で形成することで、フィールド酸化膜2の画素と画素との境界部34に、フィールド酸化膜2のない領域が形成できる。画素スイッチのゲート部8は、下層32に多結晶Si、上層33にタングステンシリサイド(WSi)もしくはタングステン(W)の2層構造となる。このとき、上層33は多結晶Siの粒径に対応した凹凸が形成される。この凹凸は、下層32の多結晶Siを成膜した後、酸化処理とHFによる酸化膜剥離をおこなうことによって形成できる。この表面にWを成膜し、熱処理することによって、以上のような構造が実現できる。このとき、画素スイッチのゲート部8と同時に、画素反射電極11のすき間部の下部に多結晶SiとWの2層構造77を作っておく。
【0043】
実施形態3は、信号配線などの配線層10と走査配線などの配線層8やそれと同じ層にあるダミー配線33を使って、遮光をおこなっている。つまり、配線層10が覆えない部分は、配線層10の下部の多結晶SiとWの2層構造8,33に覆われている。このため、実施形態3は、実施形態1や2のような遮光金属層を使わずに、画素スイッチヘの光を遮光することができる。よって製造コストが省ける。また、多結晶Siの配線層32,33の表面にWを積層させているので、光の反射率が小さくなって遮光の効果がおおきいばかりでなく、配線層32,33の抵抗が下がり高品位パネルでの高速駆動に有利である。
【0044】
(実施形態4)
本発明の実施形態4は、画素反射電極のすき間に使用者の目に入る光の散乱を防止する遮光層を設けるため、隣接する画素反射電極の端部の形を異ならせる。これにより、ノイズ光を使用者の目に入る方向とは別の方向に進ませることができ、液晶パネルの光コントラストが実現できる。
【0045】
図5は、表示部の隣接する画素部の断面構造を表す図である。図中、40は画素反射電極11のすき間にある遮光層、41は画素反射電極11のすき間のちょうど真ん中を表す。図4までと同じ符号は、図4までと同じ部分を表すので説明を省略する。実施形態4は、フィールド酸化膜2のない領域と、配線層の間隔の広い領域の中心位置41に対して、隣接する画素反射電極11の位置関係を非対称にする。つまり、画素反射電極11のすき間に入った光は、遮光金属層12の画素反射電極11の主面と違う角度をもった部分40によって、使用者の目に入らない方向に反射される。このため、遮光金属層の40付近からの反射光は、使用者の目には入らず高コントラストを実現できる。
【0046】
(実施形態5)
実施形態5は、画素反射電極と各画素反射電極の間の遮光層とを平行なままに保ち、それぞれの材料を変えることにより、反射特性を変える。また、表示領域内に、一部フィールド酸化膜のない領域(ACT領域:通常はトランジスタを形成するアクティブ領域)を設け、その部分にウェル領域22あるいは基板電位を固定する高濃度不純物領域を設ける。図9は、実施形態5を使った反射型TFT型アクティブマトリックス液晶表示パネルの断面図を表す。12は照射光が半導体基板1上の素子や回路に当たらないようにする遮光金属層、21は絶縁層、18は電源の接続する配線である。以前と同じ符号は以前と同じ部品を表すので、説明を省略する。表示領域の半導体基板1とウェル領域22の電位は、フィールド酸化膜2の間に設けたp型の高濃度不純物領域23によって表示部の周辺部の電源電位に固定される。この高濃度不純物領域23は、周辺駆動回路にあるpチャンネルMOSFET3,4,5や表示領域にあるpチャンネルの薄膜トランジスタ6,7,8のソース・ドレインといったp+領域と一緒に形成できるので、製造工程が簡単でまた、濃度の濃い領域を形成することができる。よって、さらに低コストでパネルを構成でき、高濃度不純物領域の抵抗が小さくなり、基板電位の安定化ができる。
【0047】
ここで、スパッタ装置で画素反射電極11となるAlSi(Siは1%)の成膜をp-SiO上に形成した時の表面反射率は85%、一方、遮光層のTiも同様の装置にて成膜した時の表面反射率は58%であった。このときTiの表面凹凸(粗さ)は、成膜の厚さが1750Åの時、最大最小で190Åであった。また、画素反射電極11となるAlSiをCMPで研磨すると、表面反射率は、95%以上になる。このため、遮光金属層12で反射したノイズ光を大きく低減することができ、高コントラストな表示ができる。
【0048】
また、実施形態5では、遮光金属層12と画素反射電極11と、その間にある絶縁層13により、映像信号の保持容量を形成している。このとき、遮光金属層12の電位は透明共通電極16と同じ電位に保っておくとよい。遮光金属層12の上部または下部にTi、TiNなどを設けることによりヒロックなどで容量不良となることを防ぐことができる。絶縁層13に、通常のSiO2以外、SiN、Ta2O5、SiONを用いると、小さい面積で大きな容量を形成できる。これらにより、さらに小さい画素サイズが実現でき、高精細、高コントラストな表示が実現できる。
【0049】
【実施例】
(実施例1)
実施例1は、前述した実施形態1を適用した反射型液晶パネルでプロジェクタを作製した例である。本例の具体的な構造は図1に表す。まず、p型のSi基板1を用意して、周辺の駆動回路を作製する。そして、100℃で2時間、Wet熱酸化して、フィールド酸化膜を形成する。つぎに、TFTを作製して、それぞれをBPSG(Boron Phosphine doped Silicate Glass)などの絶縁層で絶縁分離する。絶縁層の上にTi,TiNで遮光金属層12を堆積させる。そして、遮光金属層12の上にp-SiN,p-SiOで絶縁層13を堆積させ、絶縁層13の上にp-SiN,p-SiOで画素反射電極11を形成する。これで、TFTなどを組み込んだデバイス基板が完成する。つぎに、このデバイス基板と共通透明電極16を有する対向基板15を貼り合わせて、液晶材料14としてTN液晶を注入して、図1の液晶パネルが完成する。
【0050】
つぎに、完成した液晶パネルを使って、反射型の光学系を作製する。図6は、この光学系の斜視図である。図中、101は液晶パネルの駆動と光源コントロール用ボード、102は光学ユニット、103は光源、104は非球面ミラー、105は色分解用プリズム、106は前述した液晶パネル、107はマイクロミラー、108はアパチャー、109は自由曲面プリズム光学系、110はスクリーン、118はテレセントリック系のレンズである。111,112,113,114,115,116は光を表す。
【0051】
光源103から射出した光束111は、非球面ミラー104で集光しマイクロミラー107に結像する。マイクロミラー107かの反射光113は色分解プリズム105で、赤、緑、青に分解され、液晶パネル106に平行光で入射する。液晶パネル106は、変調信号に応じて赤、緑、青に分解された光を変調し、変調された反射光115はレンズ118に再び入射し、暗表示光のみアパチャー108を通り抜け、自由曲面プリズム109に入射する。この自由曲面プリズム光学系を用いることにより、従来より薄型で収差の少ない像をスクリーン110に結像できる。これにより、リア型、フロント型プロジェクション表示装置を高解像度、高輝度、低コスト、小型、高コントラストに作製できた。
【0052】
(実施例2)
実施例2は、前述した実施形態2を適用した反射型液晶パネルで実施例1と同じくプロジェクション表示装置を作製した例である。本例の具体的な構造は図3に表す。まず、n型のSi基板1を用意して、p型ウェル22を作製する。そして、選択酸化法によってゲート酸化膜とフィールド酸化膜2を形成し、ゲート電極用の多結晶Siを成膜する。そしてパターニングして、ゲート電極5,8を作製する。その後、Bイオンを注入して、ソース3,6とドレイン4,7を形成して、周辺の駆動回路と画素用のMOSFETを作製する。それぞれをPSG,p-SiO2,p-SiNで絶縁分離する。そして、配線層9,10を作製して、その上にp-SiO/O3-TEOS/p-SiOで絶縁層を堆積させ、絶縁層の上にTi,TiN,Wで遮光金属膜を形成する。そして、絶縁層を堆積させたあと、画素反射電極12を形成する。これで、デバイス基板が完成する。あとは、実施例1と同様である。
【0053】
【発明の効果】
本発明によれば、画素反射電極の間もしくは、前記画素反射電極からなる表示部の周辺領域の下層に少なくとも一部に遮光層があり、前記画素反射電極と前記遮光層が異なる反射特性を有するので、使用者の目に周辺領域または画素反射電極のすき間からのノイズ光が入らない。このため、使用者はコントラストの大きい画像表示を見ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の実施形態1を表す図
【図2】
画素反射電極のすき間のノイズ光の反射を表す図(a)〜(e)
【図3】
本発明の実施形態2を表す図
【図4】
本発明の実施形態3を表す図
【図5】
本発明の実施形態4を表す図
【図6】
実施例1のプロジェクション表示装置を表す図
【図7】
照明系から射出光が液晶パネルで反射する光路図
【図8】
画素反射電極のすき間の遮光金属膜がとりうる角度を表すグラフ
【図9】
本発明の実施形態5の液晶パネルの断面図
【符号の説明】
1 半導体基板
2 フィールド酸化膜
3 MOSFETのソース
4 MOSFETのドレイン
5 MOSFETのゲート
6 画素トランジスタのソース
7 画素トランジスタのドレイン
8 画素トランジスタのゲート
9 データ配線
10 金属電極
11 画素反射電極
12 遮光金属層
13 絶縁層
14 液晶材料
15 対向透明基板
16 共通透明電極
17 スルーホール
18 画素の境界部
19 フィールド酸化膜のくびれ
20 表示領域周辺の駆動回路
21 層間絶縁膜
22 ウェル領域
23 ウェル領域固定用高濃度不純物層
24 反射防止膜
26 ダミー配線
27 配線層のすき間の大きいところ
28 配線層のすき間の小さいところ
31 薄膜トランジスタのチャンネル
 
訂正の要旨 訂正の要旨
▲1▼訂正事項a
特許請求の範囲に係る記載
「 【請求項1】 複数の反射電極を有する一方の基板と、前記基板に対向し透明電極を有する他方の基板と、前記双方の基板の間に液晶材料を備える表示装置において、前記反射電極の間もしくは、前記反射電極からなる表示部の周辺領域の少なくとも一部に遮光層が配され、前記反射電極と前記遮光層との表面粗さが異なることで、両者の反射特性を異ならせたことを特徴とする表示装置。
【請求項2】 前記反射電極と前記遮光層と、両者の間の絶縁層で保持容量を形成する請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】 前記反射電極と前記遮光層は、材料が異なる請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】 前記反射電極は、主にAlからなり、前記遮光層は、主に、Ti,TiN,W,Moから選ばれる材料からなる請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】 前記反射電極と前記遮光層が、光を反射させる方向が異なる請求項1に記載の表示装置。
【請求項6】 前記遮光層は、前記反射電極の表面と異なる角度の面を有する請求項5に記載の表示装置。
【請求項7】 前記反射電極の表面と前記遮光層の表面のなす角をθ、前記液晶材料の屈折率をn、投影光学系のF数をFとすると、θが
【外1】

を満たす請求項6に記載の表示装置。
【請求項8】 前記θは、10〜30°である請求項7に記載の表示装置。
【請求項9】 前記反射電極の下部に厚い絶縁層、前記反射電極間の境界部に薄い絶縁層を有する請求項5〜8のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項10】 複数の信号線と同一層の配線層の間隔が、前記反射電極の間の下部で、前記反射電極の下部よりも広い請求項5〜9のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項11】 隣合う前記反射電極の端部が、画素の境界平面に対して非対称である請求項5〜10のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項12】 前記反射電極と前記透明電極の角度が異なる請求項1〜11のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項13】 前記一方に基板は、複数の走査配線と、複数の信号配線と、前記走査配線と前記信号配線の交差部に配された画素スイッチを有する請求項1〜12のいずれか1項に記載の表示装置。」
を、
「 【請求項1】 複数の反射電極を有する一方の基板と、前記基板に対向し透明電極を有する他方の基板と、前記双方の基板の間に液晶材料を備える表示装置において、前記反射電極の間もしくは、前記反射電極からなる表示部の周辺領域の少なくとも一部に遮光層が配され、前記反射電極表面がケミカルメカニカルポリッシング処理され、前記反射電極と前記遮光層との表面粗さが異なることで、両者の反射特性を異ならせたことを特徴とする表示装置。
【請求項2】 前記反射電極と前記遮光層と、両者の間の絶縁層で保持容量を形成する請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】 前記反射電極と前記遮光層は、材料が異なり、peak to valleyによる表面粗さの評価において、反射電極の表面粗さが1000Å以下、遮光層の表面粗さが1500Å以上である請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】 前記反射電極は、主にAlからなり、前記遮光層は、主に、Ti,TiN,W,Moから選ばれる材料からなる請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】 前記反射電極と前記遮光層が、光を反射させる方向が異なる請求項1に記載の表示装置。
【請求項6】 前記遮光層は、前記反射電極の表面と異なる角度の面を有する請求項5に記載の表示装置。
【請求項7】 前記反射電極の表面と前記遮光層の表面のなす角をθ、前記液晶材料の屈折率をn、投影光学系のF数をFとすると、θが
【外1】

を満たす請求項6に記載の表示装置。
【請求項8】 前記θは、10〜30°である請求項7に記載の表示装置。
【請求項9】 前記反射電極の下部に厚い絶縁層、前記反射電極間の境界部に薄い絶縁層を有する請求項5〜8のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項10】 複数の信号線と同一層の配線層の間隔が、前記反射電極の間の下部で、前記反射電極の下部よりも広い請求項5〜9のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項11】 隣合う前記反射電極の端部が、画素の境界平面に対して非対称である請求項5〜10のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項12】 前記反射電極と前記透明電極の角度が異なる請求項1〜11のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項13】 前記一方に基板は、複数の走査配線と、複数の信号配線と、前記走査配線と前記信号配線の交差部に配された画素スイッチを有する請求項1〜12のいずれか1項に記載の表示装置。」
と訂正する。
▲2▼訂正事項b
明細書の段落【0006】の
「 【課題を解決するための手段】
以上の問題を解決するために、本発明者らが鋭意努力した結果、以下の発明を得た。すなわち、本発明の表示装置は、複数の反射電極を有する一方の基板と、前記基板に対向し透明電極を有する他方の基板と、前記双方の基板の間に液晶材料を備える表示装置において、前記反射電極の間もしくは、前記反射電極からなる表示部の周辺領域の少なくとも一部に遮光層が配され、前記反射電極と前記遮光層との表面粗さが異なることで、両者の反射特性を異ならせたことを特徴とする。さらに、前記反射電極が照明光を反射させ、前記反射電極が主に照明光を反射させる方向と別の方向に前記照明光を反射させる遮光層を、前記複数の反射電極の間に設けることができ、遮光層は、反射電極の表面と異なる角度の面を有するのが望ましい。また、反射電極の表面と遮光層の表面のなす角をθ、液晶材料の屈折率をn、投影光学系のF数をFとすると、θが」

「 【課題を解決するための手段】
以上の問題を解決するために、本発明者らが鋭意努力した結果、以下の発明を得た。すなわち、本発明の表示装置は、複数の反射電極を有する一方の基板と、前記基板に対向し透明電極を有する他方の基板と、前記双方の基板の間に液晶材料を備える表示装置において、前記反射電極の間もしくは、前記反射電極からなる表示部の周辺領域の少なくとも一部に遮光層が配され、前記反射電極表面がケミカルメカニカルポリッシング処理され、前記反射電極と前記遮光層との表面粗さが異なることで、両者の反射特性を異ならせたことを特徴とする。さらに、前記反射電極が照明光を反射させ、前記反射電極が主に照明光を反射させる方向と別の方向に前記照明光を反射させる遮光層を、前記複数の反射電極の間に設けることができ、遮光層は、反射電極の表面と異なる角度の面を有するのが望ましい。また、反射電極の表面と遮光層の表面のなす角をθ、液晶材料の屈折率をn、投影光学系のF数をFとすると、θが」
と訂正する。
▲3▼訂正事項c
明細書の段落【0010】中の
「Mecheuical」を「Mechanical」と訂正する。
▲4▼訂正事項d
明細書の段落【0012】の
「遮光槽の表面粗さについては、を「遮光層の表面粗さについては、」と訂正し、「遮光層の表面粗さとし1500Å以上」を「遮光層の表面粗さとして1500Å以上」と訂正する。
異議決定日 2002-02-19 
出願番号 特願平8-241937
審決分類 P 1 652・ 16- YA (G02F)
P 1 652・ 121- YA (G02F)
最終処分 維持  
特許庁審判長 森 正幸
特許庁審判官 東森 秀朋
稲積 義登
登録日 2000-12-22 
登録番号 特許第3143591号(P3143591)
権利者 キヤノン株式会社
発明の名称 表示装置  
代理人 山口 芳広  
代理人 西山 恵三  
代理人 渡邉 敬介  
代理人 山口 芳広  
代理人 豊田 善雄  
代理人 豊田 善雄  
代理人 内尾 裕一  
代理人 西山 恵三  
代理人 渡辺 敬介  
代理人 内尾 裕一  

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