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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C22C
管理番号 1059006
審判番号 不服2000-5010  
総通号数 31 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-05-06 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-04-07 
確定日 2002-06-13 
事件の表示 平成 8年特許願第262453号「耐熱性耐食性の保護被覆層」拒絶査定に対する審判事件〔平成 9年 5月 6日出願公開、特開平 9-118960、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 (手続の経緯・本願発明)
本願は、1989年8月10日を国際出願日とする特願平1-508939号の一部を平成8年9月11日に分割して新たな特許出願としたものであって、その請求項1〜8に係る発明は、明細書の特許請求の範囲の請求項1〜8記載された次のとおりのものである(以下、「本願発明1」〜「本願発明8」という)。
「【請求項1】 クロム 28〜32重量%、アルミニウム 7〜9重量%、珪素 1〜2重量%、希土類の反応性元素の少なくとも1種 0.3〜1重量%、レニウム 15重量%以下、残り ニッケル25〜40重量%、コバルト少なくとも5重量%及び不純物を含むことを特徴とする耐熱性耐食性の保護被覆層。
【請求項2】 希土類の反応性元素がイットリウムであることを特徴とする請求項1記載の保護被覆層。
【請求項3】 クロム 29〜31重量%、アルミニウム 7.5〜8.5重量%、珪素 1〜2重量%、イットリウム 0.3〜1重量%、ニッケル 25〜35重量%を含むことを特徴とする請求項1記載の保護被覆層。
【請求項4】 クロム 30重量%、アルミニウム 8重量%、珪素 1.5重量%、イットリウム 0.6重量%、ニッケル 30重量%を含むことを特徴とする請求項3記載の保護被覆層。
【請求項5】 レニウム1〜15重量%を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の保護被覆層。
【請求項6】 レニウム4〜10重量%を含むことを特徴とする請求項5記載の保護被覆層。
【請求項7】 レニウム7重量%を含むことを特徴とする請求項6記載の保護被覆層。
【請求項8】 プラズマ噴射又は蒸着により被覆されたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の保護被覆層。」

(引用例)
原査定の拒絶理由に引用された特開昭57-177952号公報(以下、「引用例1」という)には、超合金用被覆組成物が、同じく引用された特開昭51-33717号公報(以下、「引用例2」という)には、耐酸化性Ni-Cr-Al-Y合金が、同じく引用された特開昭62-30037号公報(以下、「引用例3」という)には、超合金基体と該基体上に形成される被覆とを含む耐酸化性を有する物品が、それぞれ記載されている。

(対比・判断)
引用例1の特許請求の範囲の第10項において第1項ないし第4項を引用して記載された被覆組成物は、プラズマ溶射法によって基体上に形成され、高温における耐酸化性を有し基体を保護するものであるから(第5頁右下欄第2行〜第6頁左上欄第4行、第6頁左上欄第15行〜右上欄第1行、第6頁右下欄第11行〜16行等参照)、引用例1には、「5〜35重量%のコバルトと、3〜25重量%のアルミニウムと、0.01〜15重量%のタンタルと、5〜35重量%のクロムと、10重量%以下のマンガンと、5重量%以下のタングステンと、12重量%以下のシリコンと、10重量%以下のハフニウムと、5重量%以下のランタン、イットリウムおよびその他の稀土類元素から成る群より選ばれた1つの反応性金属と、残部ニッケルとから実質的に構成される被覆組成物からなる耐酸化性の保護被覆層。」の発明が記載されていると認められる。
本願発明1(前者)と引用例1記載の発明(後者)とを対比すると、後者における「シリコン」は、前者における「珪素」に、後者における「ランタン、イットリウムおよびその他の稀土類元素から成る群より選ばれた1つの反応性金属」は、前者における「希土類の反応性元素の1種」に、それぞれ相当し、また、後者の被覆組成物における構成成分であるマンガン、タングステン、ハフニウムは、それらの含有量の下限が限定されていないこと、及び、第1表(第10頁参照)には、それらを含有しない組成のものが実施例として記載されていることからみて、それらは、添加しなくてもよい任意成分であると認められる。そうすると、両者は、「クロム、アルミニウム、珪素、希土類の反応性元素の1種、ニッケル、コバルトを含む保護被覆層。」であり、クロム、アルミニウム、珪素、希土類の反応性元素の1種、ニッケル、コバルトの含有量が重複する点で一致するが、本願発明1は、保護被覆層の腐食特性を明らかに改善するために、保護被覆層がレニウムを15重量%以下含むものである(本願明細書段落【0015】参照)のに対し、引用例1記載の発明は、保護被覆層の耐酸化性を著しく改良するために、保護被覆層がタンタルを0.01〜15重量%含むものである(第8頁左上欄第10〜13行参照)点で相違する。
以下、上記相違点について検討する。
引用例2には、耐酸化性Ni-Cr-Al-Y合金が、「約15%以下の、モリブデン、レニウム、ハフニウム、タングステンおよびタンタルで成る群の1またはそれ以上の部材」(特許請求の範囲第1項)を含むこと、「モリブデン、レニウム、ハフニウム、タングステンおよびタンタルが単独または総合して約15w/oまで、・・・基本合金に、優れた強度を得るために加えられることが多い」(第3頁右上欄第12〜16行)ことが記載されており、これらの記載からみて、耐酸化性Ni-Cr-Al-Y合金の構成成分としてのモリブデン、レニウム、ハフニウム、タングステン及びタンタルは、優れた強度を得るために加えられる相互に置換可能な合金成分と認められる。しかしながら、引用例2に記載されたモリブデン、レニウム、ハフニウム、タングステンないしタンタルは、保護被覆層の構成成分として添加されるものではないし、また、本願発明1におけるレニウムのように、腐食特性を改善するために添加されるものでも、引用例1記載の発明におけるタンタルのように、耐酸化性を改良するために添加されるものでもない。
引用例3には、超合金基体と該基体上に形成される被覆とを含む耐酸化性を有する物品に関して、「商業用の構造用超合金は、γ’相によるのみならず、タンタル、タングステン、モリブデン、レニウム、ニオブの如き高融点金属の添加によっても強化されている。」(第3頁右下欄第15〜18行)と記載されており、該超合金の構成成分としてのタンタル、タングステン、モリブデン、レニウム及びニオブは、強化するために加えられる相互に置換可能な合金成分と認められる。しかしながら、引用例3に記載されたタンタル、タングステン、モリブデン、レニウム及びニオブは、本願発明1におけるレニウムのように、保護被覆層の腐食特性を改善するために添加されるものでも、引用例1記載の発明におけるタンタルのように、保護被覆層の耐酸化性を改良するために添加されるものでもない。
以上のとおり、引用例2ないし3に記載のものは、保護被覆層の耐酸化性を改良するために、タンタルやレニウムを添加することについて教示するものではなく、引用例1記載の発明とは、タンタルの添加理由を異にするから、引用例1記載の発明におけるタンタルと、引用例2ないし3に記載されたタンタルと置換可能なレニウムとを、同列に扱って置換することは、当業者が容易に想到し得たとすることはできない。
そして、本願発明1は、請求項1に記載された構成要件を具備することにより、腐食特性の改善等の明細書記載の顕著な効果を奏するものと認められる。
したがって、本願発明1は、引用例1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
本願発明2は、本願発明1を引用し、希土類の反応性元素がイットリウムであることをさらに限定するものであり、本願発明3は、本願発明1を引用し、さらに、各構成成分の含有範囲を狭く限定すると共に、希土類の反応性元素がイットリウムであることを限定するものであり、本願発明4は、本願発明3を引用し、各構成成分の含有範囲をさらに狭く限定するものであり、本願発明5は、本願発明1ないし本願発明4を引用し、構成成分であるレニウムの含有範囲をさらに狭く限定するものであり、本願発明6は、本願発明5を引用し、構成成分であるレニウムの含有範囲をさらに狭く限定するものであり、本願発明7は、本願発明6を引用し、構成成分であるレニウムの含有範囲をさらに狭く限定するものであり、本願発明8は、本願発明7を引用し、保護被覆層がプラズマ噴射又は蒸着により被覆されたことをさらに限定するものであるから、本願発明2ないし本願発明8は、本願発明1と同様の理由で、引用例1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。

(むすび)
以上のとおりであるから、原査定の理由によっては本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2002-05-29 
出願番号 特願平8-262453
審決分類 P 1 8・ 121- WY (C22C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 板谷 一弘佐藤 陽一  
特許庁審判長 三浦 悟
特許庁審判官 平塚 義三
綿谷 晶廣
発明の名称 耐熱性耐食性の保護被覆層  
代理人 山口 巖  

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