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審決分類 審判 訂正 発明同一 訂正しない A63F
管理番号 1059050
審判番号 訂正2001-39172  
総通号数 31 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-08-13 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2001-09-28 
確定日 2002-05-10 
事件の表示 特許第2991650号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.請求の要旨
本件審判の請求の要旨は、特許第2991650号発明(平成5年9月10日に出願された特願平5-225358号を分割した特願平7-329337号、平成11年10月15日設定登録)の明細書を審判請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものである。
上記訂正明細書の請求項1に係る発明(以下、訂正発明という)は、分説すると、次のとおりである。
A:複数のリールと、
B:これらのリールの回転を開始させるスタートスイッチと、
C:乱数を発生させる乱数発生手段と、
D:前記スタートスイッチからのスタート信号に基づいて、前記乱数発生手段から発生される乱数値から一つの乱数値を抽選する乱数抽選手段と、
E:この乱数抽選手段により抽選された乱数値が、前記乱数発生手段から発生する乱数値がとる全領域中予め設定された領域に含まれると、入賞信号を出力する入賞判定手段と、
F:この入賞判定手段からの入賞信号に基づいて、遊技機を制御する遊技制御手段と、
G:前記入賞判定手段からの入賞信号に基づいて、メダルを払い出すメダル払出手段とを備えたスロットマシンにおいて、
H:上記入賞判定手段での入賞を条件に、サブ抽選をするサブ抽選手段を備え、
I:このサブ抽選手段におけるサブ抽選での入賞を条件に、乱数発生手段から発生する乱数値がとる全領域中予め設定された領域を変更することにより、入賞確率を設定する確率変更手段と、
J:前記サブ抽選手段による入賞には、入賞確率を変更した状態で、前記入賞判定手段によって行われる、前記乱数抽選手段により抽選された乱数値が前記乱数発生手段から発生する乱数値がとる全領域中予め設定された領域に含まれるか否かの判断を、前記サブ抽選手段による抽選を行うことなく継続して前記入賞判定手段での入賞回数が1回に達するまで行うように設定された第1入賞と、入賞確率を変更した状態で、前記入賞判定手段によって行われる、前記乱数抽選手段により抽選された乱数値が前記乱数発生手段から順次発生する乱数値がとる全領域中予め設定された領域に含まれるか否かの判断を、前記サブ抽選手段による抽選を行うことなく継続して前記入賞判定手段での入賞回数が複数回に達するまで行うように設定された第2入賞とからなり、
K:前記確率変更手段は、前記入賞判定手段における入賞確率を、前記サブ抽選手段の抽選において入賞以外のはずれであることを条件に、前記サブ抽選手段の抽選において入賞したときの前記入賞判定手段における入賞確率よりも低い値に設定することを特徴とするスロットマシン。

2.先願明細書
訂正拒絶理由に引用され、訂正発明の出願日前の他の出願(特願平5ー127525号)であって、訂正発明の出願後に出願公開されたものの願書に最初に添付された明細書又は図面(特開平6ー335560号参照、以下、「先願明細書」という。)には、ビッグボーナスのフローを主に追うと、以下のような事項が記載されている。

(1)「図1は、本発明に係るスロットマシンの一例を示す全体正面図である。」(【0008】)、
(2)「・・・遊技者がコインを投入してスタートレバー12を押圧操作すれ ば、可変表示装置90が可変開始されて各可変表示部5L〜5Rにより複数種類の識別情報が可変表示される。・・・」(【0009】)、
(3)「・・・可変表示装置70は、複数(図面では3個)のリール6L,6C,6Rを有し、・・・」(【0014】)、
(4)「図6(b)はランダムカウンタ更新処理の割込プログラムを示すフローチャートである。この図6(b)に示す割込プログラムは前述したパルス分周回路53から定期的に入力されるパルス信号に基づいて行なわれるものであり、たとえば4msec毎に1回ずつ実行される。まずS15により、 ランダムカウンタの値Rを所定の数N加算更新する処理が行なわれる。・・・」(【0035】、【図5】)、
(5)「制御部45は次の各種機器に対し制御信号を出力する。・・・モータ回路57を介してコイン払出モータ38にコイン払出用制御信号を出力する。・・・ランプ回路60を介して遊技効果ランプ24,投入指示ランプ19,有効ライン表示ランプ21,22,23,左操作有効ランプ11L,中操作有効ランプ11C,右操作有効ランプ11R,ゲームオーバランプ20,再ゲーム表示ランプ64にそれぞれランプ制御用信号を出力する。サウンドジェネレータ50,アンプ61を介してスピーカ28に音発生用制御信号を出力する。」(【0028】、【図5】)、
(6)「以上説明したように、1ゲームにおけるゲーム結果に賭ける賭数を入力設定するべく遊技者がコインをコイン投入口18から投入するごとにS58によりランダムカウンタのランダム値Rが読出される。・・・」(【0049】、【図8】)、
(7)「・・・なお、ランダム値Rの抽出をスタート操作により行なうようにしてもよい。・・・」(【0049】)、
(8)「図9および図12は、リール回転処理のプログラムを示すフローチャートである。・・・1ゲームタイマが終了すれば、S65に進み、1ゲームタイマが新たにセットされ、操作無効タイマがセットされ、全リールの回転が開始される。(【0051】)、
(9)「次にS66に進み、格納されているランダム値Rを用いて所定の演算を行なう処理がなされる。・・・次にS67に進み、その演算結果を、投入数・設定値・確率変動カウンタ・小役判定モードに応じた当選許容値と比較する処理が行なわれる。」(【0052】、【図9】)、
(10)「この当選許容値は、たとえば図10(c),(d)や図11に示されているように、ビッグボーナスゲーム(BB)当選許容値・・・から構成されている。この各当選許容値は、テーブルの形でROM47に記憶されている。・・・また、RMAXは、ランダム値Rを用いた演算結果がとり得る上限値である。」(【0053】、【0054】)、
(11)「図10(c)の場合は、3枚賭で、小役判定モードが通常時で、確率変動カウンタの値が「0」で、確率設定が「4」である場合であるために、図10(a)の設定「4」で投入数が「3」でビッグボーナスゲームの発生確率が「通常時」に該当する欄に記載された数値、すなわち、ビッグボーナスゲーム当選許容値としてA34が、レギュラーボーナスゲーム当選許容値としてB34が用いられる。」(【0056】)、
(12)「・・・確率変動カウンタとは、ビッグボーナスゲームの発生確率を何回向上させるかを記憶しておくためのものであり、後述するS195Nにより「2」となり、S195Pにより「1」となる。そして、確率を向上させない場合には「0」が記憶された状態となっている。・・・」(【0053】、【図17】)、
(13)「図11(a)は、・・・確率変動カウンタの値が「0」以外の場合・・・を示している。この場合には、図10(a),(b)に従えば、ビッグボーナスゲーム当選許容値b0 =A44・・・となる。」(【0058】)、
(14)「・・・また、確率変動カウンタの値が「0」のときよりも「0」以外のときの方が、ビッグボーナスゲームの発生確率が高くなる。・・・」(【0060】)、
(15)「次にS68に進み、ボーナスゲームフラグがセットされているか否かの判断が行なわれ、ボーナスゲームフラグがセットされていない場合にはS71に進み、ビッグボーナスゲームフラグがセットされているか否かの判断が行なわれ、ビッグボーナスゲームフラグがセットされていない場合にはS74に進む。・・・次ぎにS75に進み、・・・ビッグボーナス当選フラグが・・・セットされていない場合にはS76に進む。」(【0061】)、
(16)「S76では、前記S67による比較結果、ランダム値Rを用いた演算結果がビッグボーナス当選許容値に含まれているか否かすなわち0≦演算結果<b0 であるか否かの判断がなされ、含まれている場合にはS77に進み、ビッグボーナス当選フラグがセットされてS80に進む。・・・」(【0062】、【図9】)、
(17)「次にS85では、操作無効タイマが終了したか否かの判断がなされ、終了するまで待機する。・・・そして操作無効タイマが終了すればS86に進み、リール停止タイマをセットし、操作有効ランプ11L,11C,11R(図1参照)を点灯する制御が行なわれる。」(【0066】)、
(18)「・・・次にS87に進み、全リールが停止したか否かの判断がなされ、・・・」(【0068】)、
(19)「・・・次に、すべてのリールが停止した段階でS87によりYESの判断がなされて図16に示す入賞判定の処理に移行する。」(【0069】)、
(20)「図16は、入賞判定処理のプログラムを示すフローチャートである。まずS153により、ボーナスゲームフラグがセットされているか否かの判断がなされ、セットされていない場合にはS159に進み、ビッグボーナスゲームフラグがセットされているか否かの判断がなされてセットされていない場合にS163に進み、有効ライン上に入賞があったか否かの判断がなされる。・・・S163により有効ライン上に入賞があったと判断された場合にはS165に進み、・・・次にS166に進み、その入賞がビッグボーナス入賞であるか否かの判断がなされる。・・・」(【0081】)、
(21)「S166によりビックボーナス入賞であると判断された場合にはS167に進み、各小役当選判定値をビックボーナス時の値にし、ビックボーナスゲームカウンタを「30」にセットし、ボーナス回数カウンタを「3」にセットし、ビックボーナス当選フラグをクリアし、払出し予定数を「15」にセットし、ビックボーナスゲームフラグをセットし、遊技効果ランプを第1態様で点滅させ、ビッグボーナス音をスピーカから発生させる処理が行なわれる。・・・」(【0082】)、
(22)「図17は、コイン払出制御のプログラムを示すフローチャートである。まずS176により、払出数が払出予定数に達したか否かの判断がなされ、・・・払出数が払出予定数に達した段階でS181に進む。」(【0092】)、
(23)「S181では、・・・ボーナスゲームフラグがセットされている場合にはS185に進み、・・・JAC入賞カウンタが「0」に・・・なっている場合にはS186によりボーナスゲームカウンタがクリアされた後、S188により、JAC入賞カウンタがクリアされ、ボーナスゲームフラグがクリアされる。・・・」(【0093】)、
(24)「次に、S189では、・・・ビッグボーナスゲームフラグがセットされている場合にはS191に進み、ボーナス回数カウンタを「1」ディクリメントする処理がなされ、S192により、・・・ボーナス回数カウンタが「0」になっている場合にはS194に進み、ビッグボーナスゲームカウンタをクリアした後S195に進む。」(【0094】)、
(25)「一方、ボーナスゲームフラグがセットされておらずかつビッグボーナスゲームフラグがセットされている場合には、S183に進み、ビッグボーナスゲームカウンタが・・・「0」である場合にはS184に進み、ボーナス回数カウンタをクリアする処理がなされてS195Aに進む。S195Aでは、ビッグボーナスゲームフラグをクリアしてビッグボーナスゲームを終了させる・・・つまりビッグボーナスゲームカウンタが「0」になった段階あるいはボーナス回数カウンタが「0」になった段階でビッグボーナスゲームが終了する・・・」(【0095】)、
(26)「次にS195Bに進み、現時点におけるランダム値Rを格納する処理がなされS195Cにより、その格納した値を用いて所定の演算を行なう処理がなされる。・・・次にS195Dに進み、その演算結果を確率変動当選許容値と比較する処理がなされる。この確率変動当選許容値とは、ビッグボーナスゲーム発生確率を向上させることができる許容値のことである。この確率変動当選許容値は、確率変動状態を2回発生させる確率変動2回当選許容値と、確率変動状態を1回だけ発生させる確率変動1回当選許容値との2種類が定められている。S195Eにより、演算結果が、確率変動2回当選許容値の範囲内であれば、S195Fに進み、ゲーム回数・可変表示器25の予定停止図柄を「77」にセットする処理が行なわれてS195Jに進む。一方、演算結果が確率変動1回当選許容値の範囲内である場合には、S195EによりNOの判断がなされてS195GによりYESの判断がなされてS195Hに進み、ゲーム回数・可変表示器25の予定停止図柄を「33」にセットする処理がなされてS195Jに進む。一方、演算結果が確率変動2回当選許容値の範囲内ではなくかつ確率変動1回当選許容値の範囲内でもなかった場合にはS195Iに進み、ゲーム回数・可変表示器25の予定停止図柄をはずれ停止図柄にセットする処理がなされる。」(【0096】)、
(27)「次に、S195Jでは、ゲーム回数・可変表示器25を可変表示させるためのタイマがセットされて、可変表示が開始制御される。次にS195Kに進み、そのセットされたタイマが終了したか否かの判断がなされ、終了するまで待機し、ゲーム回数・可変表示器25を可変表示させ続ける。そして、タイマが終了した段階でS195Lに進み、ゲーム回数・可変表示器25を、前記S195F,195Hあるいは195Iによりセットされた停止図柄になるように停止制御する。次にS195Mに進み、停止図柄が「77」となる特別の遊技状態が発生しているか否かの判断がなされ、「77」である場合にはS195Nに進み、確率変動カウンタを「2」にセットする処理がなされてS195Qに進む。一方、停止図柄が「33」となる特別の遊技状態が発生している場合には、S195OによりYESの判断がなされてS195Pに進み、確率変動カウンタを「1」にセットする処理がなされてS195Qに進む。停止図柄がはずれ図柄であった場合には、S195N,S195Pの処理が行なわれない。次にS195Qに進み、確率変動カウンタの値が「0」であるか否かの判断がなされ、「0」の場合にはS196に進むが、「0」でない場合にはS195Rに進み、遊技効果ランプを第3の態様で点滅させ、ビッグボーナスゲーム発生確率が向上した確率変動状態であることを遊技者に表示した後S196に進む。・・・ さらに、確率変動回数は2種類に限定されることなく、1種類または3種類以上の回数であってもよい。・・・また、確率変動カウンタが「0」でない場合には、当選を無効とするようにしてもよいし、抽選を行なわないようにしてもよい。」(【0097】)、
(28)「さらに、確率変動を行なうか否かの抽選時期は実施例に限定されるものではない。たとえば、ビッグボーナス当選時,ビッグボーナス発生時,・・・の時期であってもよい。・・・また、前記S195BないしS195P,S77A,S77B,S67,図10(a),(b),図11(a),(b)に示したテーブルデータにより、前記遊技機の遊技状態が予め定められた特別の遊技状態になった場合に、前記可変表示装置の表示結果が前記特定の表示態様となる確率を変動させる確率変動制御手段が構成されている。」(【0098】)、
(29)次にS196に進み、ゲームオーバー有にセットされているか否かの判断が行なわれる。・・・このS196により、ゲームオーバーの有無を判定し、ゲームオーバー無の場合にはS200に進み、以降図7(b)に示すゲームスタートに戻り、ゲームスタート処理が開始される。」(【0099】)。

また、図9には、以下の記載がある。
(30)「S76において、S76-Y(ランダム値を用いた演算値がビッグボーナス当選許容値である)→S77Aにおいて、S77A-N(確率変動カウンタが0でない)→S77B(確率変動カウンタから1を引く)」。

3.対比及び判断
訂正発明と上記先願明細書記載の発明(以下、「先願発明」という。)とを対比する。
(3-1)訂正発明の「A」ないし「G」について
先願発明の「リール6L、6C、6R」(上記(3)参照)が訂正発明の「複数のリール」に、「スタートレバー12」(上記(2)参照)が「スタートスイッチ」に、制御部45(上記(5)参照)が「遊技制御手段」に、それぞれ相当する。
上記(4)によれば、先願発明は、パルス分周回路53から定期的に入力されるパルス信号に基づいて、ランダムカウンタの値Rを更新する処理が行なわれ、訂正発明の「乱数発生手段」を備えている。
上記(6)ないし(7)によれば、先願発明は、スタート操作によりランダム値の抽出を行うことから、訂正発明の「乱数抽選手段」を備えている。
上記(22)によれば、先願発明は、コイン払出制御のプログラムを有し、訂正発明の「メダル払出手段」を備えている。
上記(8)ないし(21)によれば、先願発明は、リールを回転させ、ランダム値を用いた演算値が、演算値のとる全領域(0〜Rmax)中予め設定された領域(0〜b0)に含まれると、ビッグボーナス当選許容値となり、全リールが停止された後、有効ライン上に入賞があった場合には、ビッグボーナス入賞となり、払出予定数をセットすることから、訂正発明の「入賞判定手段」を備えている。
また、「入賞判定手段」において乱数を用いるか乱数(ランダム値)を用いた演算値を利用するかは設計上の微差にすぎないから、先願発明は、訂正発明の「A」ないし「G」を備えている。

(3-2)訂正発明の「H」及び「I」について
上記(20)ないし(21)には、図16のビッグボーナス入賞(S166Y)になることが、上記(23)ないし(25)には、何回かのゲームの後、ビッグボーナスゲームカウンタ=0(S183Y、S194)になりビッグボーナスゲームが終了したことが、上記(26)ないし(27)には、図17のS195Aに進み、S195Dにおいて、演算結果を確率変動値と比較し、S195E→・・・S195Lを経て、確率変動カウンタを「2」、「1」又は「0」にセットすることが記載されている。
また、上記(28)には、「S195BないしS195P,S77A,S77B,S67,図10(a),(b),図11(a),(b)に示したテーブルデータにより、前記遊技機の遊技状態が予め定められた特別の遊技状態になった場合に、・・・確率を変動させる確率変動制御手段が構成されている。」と記載されている。
したがって、先願発明は、「上記入賞判定手段での入賞(ビッグボーナス入賞)を条件に、サブ抽選(S195D)をするサブ抽選手段」及び「このサブ抽選手段におけるサブ抽選での入賞を条件に(S195Cの演算結果が、確率変動2回当選許容値、又は、確率変動1回当選許容値になると)、乱数発生手段から発生する乱数値がとる全領域中予め設定された領域を変更することにより、入賞確率を設定する確率変更手段」を備え、先願発明は上記訂正発明の「H」及び「I」を備えている。

(3-3)訂正発明の「J」について
先願明細書のS195BないしS195Q(図17、上記(26)ないし(27)参照)において、S195Cの演算結果が、確率変動2回当選許容値、又は、確率変動1回当選許容値になるということは、訂正発明の「入賞を変更した状態」に相当し、この状態(入賞を変更した状態)でゲームスタートすると、前回のゲームのS188、195A(図17)及びS167(図16)によりボーナスゲームフラグ、ビッグボーナスゲームフラグ及びビッグボーナス当選フラグがクリアされていることから、図9のS66→S67→S68N→S71N→S74→S75N→S76(上記(9)ないし(16)参照)のフローは、訂正発明の「入賞確率を変更した状態で、前記入賞判定手段によって行われる、前記乱数抽選手段により抽選された乱数値が前記乱数発生手段から発生する乱数値がとる全領域中予め設定された領域に含まれるか否かの判断を行う」ことに対応する。
(確率変動カウンタの値が「2」以上の場合)
(i)確率変動カウンタの値が「2」の場合であって、ビッグボーナス当選許容値でないときは、図9によれば、S76N→S78ないしS84を経て、図9→図12→図16と進み、前回のゲームのS188及び195A(図17)によりボーナスゲームフラッグ及びビッグボーナスゲームフラグがクリアされていることから、図16のS153N→S159N→S163N→S164を経て、図17のS181N→S182N→S200→ゲームスタートに戻り、S195Aに進まず、これは、ビッグボーナス当選許容値になるまで(図9のS76Y)継続して行われる。
(ii)確率変動カウンタ「2」の場合であって、ビッグボーナス当選許容値であるときは、図9によれば、S76Y→S77AN→S77Bのフローにおいて、確率変動カウンタの値2から1を引くから確率変動カウンタの値は「1」となる。そして、S77C→S80→図9→図12→図16と進み、前回のゲームのS188及び195A(図17)によりボーナスゲームフラッグ及びビッグボーナスゲームフラグがクリアされていることから、図16のS153N→S159N→S163Y→S165→S166Y→S167になれば、ビッグボーナスカウンタ=30、ボーナス回数カウンタ=3となり、図17においてビッグボーナスカウンタ及びボーナス回数カウンタが0でない(S183N、S192N)ことから、S195Aには進まず、S200に進み、ゲームスタートに戻り、何回かのゲームが行われた後、S195Aに進む。
(iii)上記(ii)の結果、確率変動カウンタが「1」となった場合であって、ビッグボーナス当選許容値でないときは、上記(i)と同様に、図17のS200に進み、ゲームスタートに戻り、S195Aに進まず、これは、ビッグボーナス当選許容値になるまで(図9のS76Y参照)継続して行われる。
(iv)上記(ii)の結果、確率変動カウンタが「1」となった場合であって、ビッグボーナス当選許容値であるときは、図9によれば、S76Y→S77AN→S77Bのフローにおいて、確率変動カウンタの値1から1を引くから確率変動カウンタの値は「0」となる。上記(ii)と同様に、図17のS200に進み、ゲームスタートに戻り、何回かのゲームが行われた後、S195Aに進む。
また、上記(27)には、「さらに、確率変動回数は2種類に限定されることなく、1種類または3種類以上の回数であってもよい。」と記載されている。
さらに、上記(27)には、確率変動について記載されており、「・・・確率変動カウンタが「0」でない場合には、当選を無効とするようにしてもよいし、抽選を行なわないようにしてもよい。」(【0097】末尾)の当選及び抽選は、サブ抽選について記載されていると認められ、上記(i)ないし(iii)においては、S195B以降のサブ抽選は行われない。
仮に、先願発明の確率変動カウンタが「0」でない場合(確率を向上させた場合)に、訂正発明にいう「入賞判定手段」による当選を無効としたり、抽選を行わないようにしたと解すると、確率を向上させた意味がなくなり、このような解釈は不自然である。
したがって、先願発明は、確率変動回数が複数回の場合に、「入賞確率を変更した状態で、前記入賞判定手段によって行われる、前記乱数抽選手段により抽選された乱数値が前記乱数発生手段から順次発生する乱数値がとる全領域中予め設定された領域に含まれるか否かの判断」を、「前記サブ抽選手段による抽選を行うことなく継続して前記入賞判定手段での入賞回数が複数回に達するまで行うように設定された」ことを備えており、先願発明は、訂正明細書の発明の「第2入賞」を備えている。
(確率変動カウンタ「1」の場合)
この場合は、上記(iii)、(iv)に同じである。
また、上記(27)には、「・・・確率変動カウンタが「0」でない場合には、・・・抽選を行なわないようにしてもよい。」(【0097】末尾)と記載されていることから、上記(iii)の場合は、上記S195B以降のサブ抽選は行われない。
したがって、先願発明は、確率変動回数が1回の場合に、「入賞確率を変更した状態で、前記入賞判定手段によって行われる、前記乱数抽選手段により抽選された乱数値が前記乱数発生手段から発生する乱数値がとる全領域中予め設定された領域に含まれるか否かの判断」を、「前記サブ抽選手段による抽選を行うことなく継続して前記入賞判定手段での入賞回数が1回に達するまで行うように設定された」ことを備えており、先願発明は、訂正明細書記載の発明の「第1入賞」を備えている。
よって、先願発明は、訂正発明の構成「J」を備えている。

(3-4)訂正発明の「K」について
先願発明の、演算結果が確率変動2回当選許容値の範囲内ではなく且つ確率変動1回当選許容値の範囲内でもなかった場合(S195G-N)は、訂正発明の「前記サブ抽選手段の抽選において前記入賞以外のはずれであること」に相当し、先願発明の、演算結果が確率変動2回当選許容値の範囲内(S195EーY)、及び、演算結果が確率変動1回当選許容値の範囲内(S195G-Y)である場合は、訂正発明の「前記サブ抽選手段の抽選において入賞したとき」に相当し、上記(14)「確率変動カウンタの値が「0」のときよりも「0」以外のときの方が、ビッグボーナスゲームの発生確率が高くなる」ことは、訂正発明の「前記入賞判定手段における前記入賞確率を、前記サブ抽選手段の抽選において入賞したときの前記入賞判定手段における入賞確率よりも低い値」とすることに相当する。そして、S195のフローの中で確率変更され、事実上の確率変更手段を備えていることから、先願発明は、訂正発明の構成「K」(前記確率変更手段は、前記入賞判定手段における入賞確率を、前記サブ抽選手段の抽選において前記入賞以外のはずれであることを条件に、前記サブ抽選手段の抽選において入賞したときの前記入賞判定手段における入賞確率よりも低い値に設定すること)を備えている。

したがって、訂正発明と上記先願発明とに実質的な相違は認められず、両者は同一である。

請求人は、意見書において、「本件訂正発明の「サブ抽選手段」は、訂正発明の明細書の段落番号「0025」に具体的に記載されているように、乱数を用いた抽選であり、先願明細書の「S195BないしS195Q」に記載されているように、停止図柄の如何によって、サブ抽選を行わないとする、入賞判定手段での入賞回数を決定するような処理を行っていません。」(6頁8〜12行)と主張する。

しかし、訂正明細書の【0025】に、サブ抽選手段は乱数を用いた抽選であるとの記載があるとしても、訂正後の特許請求の範囲には、サブ抽選手段は乱数を用いた抽選であるとの限定はなく、特許請求の範囲の記載に基づかない主張である。しかも、上記(26)に、「S195Bに進み、現時点におけるランダム値Rを格納する処理がなされS195Cにより、その格納した値を用いて所定の演算を行なう処理がなされる。・・・次にS195Dに進み、その演算結果を確率変動当選許容値と比較する処理がなされる。・・・」(【0096】)と記載されているように、先願発明は、サブ抽選において、乱数(ランダム値)を直接用いるわけではなく、乱数を用いた演算値を用いているが、サブ抽選において、乱数を用いるか乱数を用いた演算値を用いるかは、設計上の微差にすぎないから、先願発明は、訂正発明と同様に、サブ抽選が乱数を用いた抽選を事実上行っている。

また、訂正発明は、サブ抽選を行わないとする、入賞判定手段での入賞回数を決定するような処理について、訂正後の特許請求の範囲に具体的に記載されているわけではなく、停止図柄の如何によって、このような処理を行うことを排除するものではない。

よって、上記訂正発明は、その出願日前の出願であって、その出願後に出願公開された他の出願の願書に最初に添付された上記先願明細書に記載された発明と同一であり、しかも、訂正発明の発明者が上記先願明細書に記載された発明の発明者と同一であるとも、本件出願の時において、その出願人が上記他の出願の出願人と同一であるとも認められないから、特許法第29条の2第1項の規定により、出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号。以下、「平成6年法」という。)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成6年改正法による改正前の特許法第126条第3項の規定に適合しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-03-13 
結審通知日 2002-03-18 
審決日 2002-03-29 
出願番号 特願平7-329337
審決分類 P 1 41・ 161- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神 悦彦  
特許庁審判長 村山 隆
特許庁審判官 木原 裕
鈴木 寛治
藤井 俊二
小沢 和英
登録日 1999-10-15 
登録番号 特許第2991650号(P2991650)
発明の名称 スロットマシン  
代理人 北村 仁  
代理人 米山 淑幸  

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