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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効としない B65G
管理番号 1059051
審判番号 無効2001-35392  
総通号数 31 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1986-09-19 
種別 無効の審決 
審判請求日 2001-09-07 
確定日 2002-05-07 
事件の表示 上記当事者間の特許第1856791号発明「小物物品検査装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 【1】手続の経緯・本件発明
本件特許第1856791号発明は、昭和60年3月14日に出願されたものであって、その特許請求の範囲に記載された発明に対して特許権の設定がなされたものである。
そして、その発明の要旨は、願書に添付された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲第1項に記載された次のとおりのもの(以下、「本件発明」という。)と認める。
「(イ)上下面がそれぞれ凸面をなす小物物品を検査する装置であって、
(ロ)吸気口となるスリットとこのスリットの両側の各縁部にそれぞれ設けたガイドレールと排気口とを有する負圧室と、
(ハ)前記各ガイドレールに個別に案内されて走行する2本の搬送用索条と、
(ニ)この2本の搬送用索条により前記スリットの前記縁部に形成した吸着搬送経路と、
(ホ)前記排気口に接続され、前記負圧室から空気を排気する吸引手段とを有する第1および第2の2つの搬送装置を備え、
(へ)前記第1の搬送装置の吸着搬送経路下流端と前記第2の搬送装置の吸着搬送経路上流端とを対向させて、前記小物物品が第1の搬送装置から第2の搬送装置に受け渡されるとき、前記2本の搬送用索条にまたがりかつ、前記凸面の一部が前記2本の搬送用索条の間に入り込んだ状態で吸着保持される前記小物物品の前記凸面と反対の面が新たに吸着保持されるように配設するとともに、
(ト)前記第1および第2の搬送装置の吸着搬送経路のそれぞれを前記小物物品の外観または欠陥の検査部に臨ませた小物物品検査装置。」

【2】請求人の主張および提出した証拠方法
(1)請求人の主張
請求人は、「特許第1856791号の特許を無効にする、審判請求費用は被請求人の負担とする」との審決を求め、その理由として、「本件特許の特許請求の範囲第1項に記載された発明は、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基づき、または甲第2号証及び甲第5号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明である。よって、上記特許請求の範囲第1項に記載された発明の特許は特許法第123条第1項第2号により無効とすべきである。」旨主張すると共に、
平成14年1月31日付けの口頭審理陳述要領書において、次のように主張している。
(イ)「甲第3号証に記載の小物物品搬送装置には、負圧の吸引口となるスリットが設けられていないことは明らかである。しかし、参考資料1の図1及び図3に示すように、密に列設された吸引ノズル群を有することは、実質上ノズル幅に相当する幅のスリット状の吸気口と同様の吸引作用を有するものであることが明らかである。つまり、甲第3号証のものの「密に列設された吸引ノズル群」が本件特許発明の「スリット」に相当すると言える。そして、「吸気口となるスリットの両側の各緑部にそれぞれガイドレールを有する。」とは、甲第3号証においては、「密に列設された吸引ノズル群」が「スリット」に相当し、該スリットの両側にガイドレールを有することに疑いはない。」(第4頁第17〜25行)、
(ロ)「特許請求の範囲の構成要件B[当審註:構成要件(ロ)と同じ。]の記載「吸気口となるスリットとこのスリットの両側の各縁部にそれぞれ設けたガイドレールと排気口とを有する負圧室と」は、「スリット及びガイドレールが負圧室に一体的に形成される」構成とは異なるからである。即ち、「負圧室にスリットとガイドレールとが一体的に形成されて」おらずとも、何らかの手段によってスリットとガイドレールと排気口とを「有する」負圧室が構成されてさえいれば、本件特許発明の構成要件Bは満足されるものである。ちなみに甲第3号証に記載のもので、ヘッダー管とベルトガイド板とが別体であると断定することは出来ず、何らかの固定若しくは連結手段を介して、両者が一体になっている可能性もあり、又、ヘッダー管がベルトガイド板を有する構成でないとも言えない。そもそも2物体が一体に結合するか、別体に構成するかは、当業者の単なる設計事項であり、かかる相違をもって本件特許発明のものと甲第3号証のものとの構成が異なると主張するのは妥当でない。」(第6頁第7〜19行)、
(ハ)「甲第5号証のものにおいても、負圧室に相当するサクションチャンバー16がガイドレールに相当するアイドラローラー38群を「有して」おり、スリット状の吸引口17とその両側に配したアイドラローラー38群との間の空隙を可及的に無い状態に両者を接近させることは当業者の設計的事項である。」(第8頁第3〜6行)
(2)請求人の提出した証拠方法
請求人は上記主張を立証するために、以下の証拠方法を提示している。
・甲第2号証;特開昭55-22370号公報
・甲第3号証;実願昭55-40126号(実開昭56-144011号)のマイクロフィルム
・甲第5号証;米国特許第3,433,375号明細書

【3】甲第2、3、5号証の記載事項
(1)甲第2号証:
甲第2号証(以下、「刊行物1」という。)には、以下の技術的事項が記載されている。
「第2図に示すごとく、供給ドラム2は内方空間14を錠剤貯蔵室とし、かつ外周には定所間隔に配列された貫通孔としてなる錠剤収容孔15が設けられ、しかもドラムの下部外周域には収容孔15からの錠剤の脱落を防ぐ外側ガイド16が設置されている。一方、第1および第2ドラム3,4の外周には前記の収容孔15と等ピッチの所定間隔で、外周にポケット状としてなる収容穴17が設けられている。またドラム3,4における錠剤搬送域範囲に区画してドラム内方には固定仕切壁18によって真空室19が設けられ、周方向のスリット状真空吸引溝20を介して前記の収容穴17と連通し、収容穴17に負圧が作用するよう構成されている。」(第2頁左上欄第9行〜右上欄第2行)、
「この構成により、各ドラムの回転に伴ってホッパ1より供給ドラム2内へ導入貯蔵された錠剤12は1個づつ収容孔15内へ落ち込み、ガイド16にガイドされながら右上方へ移送される。錠剤12がドラム2とドラム3と相接する転送位置Pまで移送されると、ドラム3側の負圧作用を受けて錠剤12はドラム2の収容孔15からドラム3の収容穴17へ吸着転送される。その後、錠剤はドラム3の上面域を搬送され、更にドラム3とドラム4との間の転送箇所Pを経てドラム4の下面域を吸着搬送される。この搬送行程の途中でテレビカメラ5,6により錠剤12は片側半分づつの表面が観測される。判別結果により不良品と判定された錠剤は、ノズル22の作動で不良品回収タンク11へ選別排出され、残りの良品は全てノズル21の作動で良品回収タンク8へ搬出回収される。」(第2頁右上欄第11行〜左下欄第6行)
そして、真空室19は該真空室から空気を排気する吸引手段を有するものであることは、当業者にとって技術常識であるから、上記記載、及び、図面の第1、2図の記載からみて、
刊行物1には、
「錠剤を検査する装置であって、
所定間隔に配列されたポケット状収容穴17及び該収容穴17に連通するスリット状真空吸引溝20を外周に設けた第1及び第2のドラム3,4と、
前記ドラム3,4内方に固定仕切壁18により設けられた真空室19と、
前記真空室19から空気を排気する吸引手段とを有する第1および第2の2つの回転ドラム搬送装置を備え、
前記第1の回転ドラム搬送装置の錠剤搬送域範囲下流端と前記第2の回転ドラム搬送装置の錠剤搬送域範囲上流端とを対向させて、前記錠剤が第1の回転ドラム搬送装置から第2の回転ドラム搬送装置に受け渡されるとき、前記2つのドラムにまたがりかつ、前記錠剤の一部が前記2つのドラムの間に入り込んだ状態で吸着保持される前記錠剤が吸着される面と反対の面で新たに吸着保持されるように配設するとともに、
前記第1および第2の回転ドラム搬送装置の錠剤搬送域範囲のそれぞれを前記錠剤の表面を観測するテレビカメラ5,6に臨ませた錠剤検査装置」、
という発明が記載されているものと認められる。
(2)甲第3号証:
甲第3号証(以下、「刊行物2」という。)には、以下の技術的事項が記載されている。
「適宜の間隙をおき、平行且つ天地方向に張設せられ、異なる速度で同一方向に移動する一対の無端ベルトを利用して物体を回転させながら上昇又は下降させる物体移送装置であって、該一対の無端ベルトは、その少なくとも一側が同一平面上にあり、その同一平面上にあるベルト面の背後に、該移送される物体に引力を及ぼす手段を、前記間隙に面して配置してあることを特徴とする物体移送装置。」(実用新案登録請求の範囲)、
「7は前記同一平面上に位置している側のベルト背面に天地方向に亘って設けられたベルトガイド板で、図示しないフレームに保持されている。該ベルトガイド板7はベルトの撓みを防ぐベルト受け板であるとともに、無端ベルト2a,2bの裏面に一体に形成されたVベルト部と係合する溝を有して、ベルトの蛇行の減少を図っている。」(第7頁第4〜10行)、
「又、アルミ缶等の移送に適用する場合には、磁石に代えて両ベルト間の間隔箇所に位置する吸引ノズルを天地方向に密に列設し、各ノズルをヘッダー管に連結し、該ヘッダー管を真空ポンプに接続してこれを運転することにより、磁石同様の吸引力を得ることができる。吸引ノズルを用いる場合も一対の無端ベルト2a , 2bの間隙6は前述した範囲内に採ることが必要であるが、この場合にはさらに缶体底部を指向するノズル開口部がベルトで覆われることがないように設定する。」(第8頁第15行〜第9頁第5行)、
「本考案移送設置は上昇回転移送だけでなく、下降回転移送が可能なことは勿論であり、又、回転移送可能な物体も缶体に限らず、被吸引面が座りの良い形状の物体であれば、断面円形の円筒状物体以外にも種々の物体に適用可能である。/以下本考案の実施例を示す。/ 実施例1/‥‥(中略)‥‥/ ベルト間隙:20mm」(第10頁第3〜17行)、
「実施例2/ 磁石を吸引ノズルに代えて内面塗布塗料が未乾燥のアルミ缶の回転上昇移送を行った。/‥‥(中略)‥‥/ 吸引ノズル:ノズル幅1mm/‥‥(中略)‥‥/ その他の条件は実施例1と同一として缶体の移送を実施した」(第11頁第11〜19行)
[当審註: スラッシュ「/」の箇所は、原文では文章の段落である。]
そして、以上の記載、及び、第4、5図の記載からみて、
刊行物2には、
「物体(缶体)を移送する装置であって、
ベルトガイド板7と、
ベルトガイド板7に個別に案内されて走行する2本の無端ベルト2a,2bと、
前記無端ベルト2a,2b間の適宜の間隙6に面して密に列設した吸引ノズルと、
前記吸引ノズルに連結したヘッダー管と、
前記ヘッダー管から空気を排気する真空ポンプとを有する物体移送装置」、
という発明が記載されているものと認められる。
(3)甲第5号証[抄訳]:
甲第5号証(以下、「刊行物3」という。)には、以下の技術的事項(抄訳)が記載されている。
「本発明は、負圧により、物品をコンテナから取り出すバキュームデパンニング装置と称される装置、特にべ一キングパンからパンその他の焼成製品を取り出す装置に関する。」(第1欄第32〜36行)、
「全長にわたり開口する細長形状のサクションチャンバー16は、頂部と底部の双方においてパンコンベヤ12の上方にセンタリングされており、」(第2欄第53〜55行)、
「このサクションチャンバーは、サクションファン装置を有するケーシング18に、サクションチャンバーの夫々の角部近傍に垂直配置された4つのボルト24によって吊り下げられており、これらボルトは、容器コンベヤ12とサクションチャンバー間の高さを、焼成製品15の大きさに合わせて調節できるように構成されている。」(第2欄第61〜66行)、
「2本の無端コンベアベルト30(以下、便宜上負圧コンベヤベルトという)は、好ましくは断面V字形で、サクションチャンバー16の下部の両側部に配設され、2対の同軸上のプーリー32、33に案内されている。」(第3欄第36〜41行)、
「サクションコンベアベルトの下索は、それぞれサクションチャンバーの吸入口17の両側近傍に配設され、それぞれのベルトの上面は、それぞれ対応する一連のアイドルローラー群38に係合される。これら一連のアイドルローラー群38は近接して離間され、前記チャンバーのそれぞれの側で支持される。後述するように、該下索に作用する吸引力に基づき、パンの焼成製品15により前記ベルト30の下索が押し上げられた時に、これらアイドルローラー群は、パンの焼成製品15により上方に変形されないようにすることが出来る。」(第3欄第52〜61行)、
「夫々の仕切壁40又は41にはファンへと通ずる吸気導入口52が形成されており、ファン46への吸気導入口は、対角線となる隔壁44の下側の上記吸気導入路22に連通され、ファン47への吸気導入口は、同様に、対角線となる隔壁44の上側の吸気導入路42に連通される。」(第4欄第18〜24行)、
「サクションファン46、47が駆動されると、大気がサクションチャンバー16を通って高速で上方に次々と吸引される。一方、パンコンベア12と2つの並行なコンベアベルト30が適切な関連の速度で駆動される。焼成製品の容器14は、それぞれ焼成製品15を収納しており、パンコンベア12の受け取り端部上に連続して横向きに載置され、サクションチャンバー16及びコンベアベルト30の下方に向け後方に移動する。2つのコンベアベルト30の隣接する下端部は、焼成製品15上面から微小距離だけ離れる高さに配設されるのが好ましい。焼成製品15は、第3図に示すように、吸引口17に導かれる空気の高速流によって吸引効果を受けながら、サクションチャンバー16下方の吸引領域の後方へと移動する。」(第4欄第32〜49行)、
「図示したように、焼成製品15は、サクションチャンバー16の下方に横方向に間隔を保って配設されると、ローフ間を通ってサクションチャンバー16に導入される空気の流れがローフの上方で横方向に拡散され、このためサクションチャンバー内の上方への空気流はこの領域全体で実質的に均一となる。しかし、導入口17に近接して配設されたベンチュリ通路が充分狭い絞り19である場合は、焼成製品間の隙間から流れてくる空気が拡散したとしても、上方に流れる空気速度が増大する。このような状況の中で、境界層条件が極めて安定し、その後空気を加速しても、焼成製品上からベンチュリ通路19に延びる圧力領域57が極めて低圧の状態を作り出す。サクションコンベヤが、吸入口を塞がないように該吸入口の両側に符号30のように配設した2本の並行なべルトを含んでいると、孔明きベルト及びその他の従来公知な類似のコンベアに比べて、空気力学効果を増大させることが出来るし、また一方、記述したサクションファン機構が簡単でかつ使用に便となり、更に、ベンチュリ通路内の圧力条件を実質的に均一に維持して、適当な動力節約になり、ファンチップ速度を過大にすることなく、大きな騒音を発生することもない。」(第5欄第41〜64行)
そして、以上の記載、及び、第1〜3図の記載からみて、
刊行物3には、
「上面が凸面をなす焼成製品(小物物品)を搬送する装置であって、
吸気口となるスリット状の吸引口17と、この吸引口17の両側にそれぞれ設けたアイドラローラー38群と、吸気導入路22、42とを有するサクションチャンバー16と、
前記各アイドラローラー38群に個別に案内されて走行する2本の無端コンベアベルトと、
この2本のコンベアベルトにより前記吸引口17の両側近傍に形成した吸着搬送経路と、
吸気導入路22、42に接続され、前記サクションチャンバーから空気を排気するサクションファン46、47とを有する搬送手段」、
という発明が記載されているものと認められる。

【4】対比・判断
(刊行物1記載の発明との対比)
そこで、本件発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、刊行物1記載の発明における2つの搬送装置は、所定間隔に配列されたポケット状収容穴17及び該収容穴17に連通するスリット状真空吸引溝20を外周に設けたドラム3,4を有する回転ドラム搬送装置であるから、
刊行物1に記載された発明は、本件発明の構成に欠くことができない事項である「(ロ)吸気口となるスリットとこのスリットの両側の各縁部にそれぞれ設けたガイドレールと排気口とを有する負圧室と、(ハ)前記各ガイドレールに個別に案内されて走行する2本の搬送用索条と、(ニ)この2本の搬送用索条により前記スリットの前記縁部に形成した吸着搬送経路」(以下、「構成A」という。)を具備していないことは明らかである。
(刊行物2記載の発明との対比)
次に、本件発明と刊行物2に記載された発明とを対比すると、刊行物2に記載される「無端ベルト2a,2b」、「真空ポンプ」は、それぞれ、本件発明の「搬送用索条」、「吸引手段」に相当し、また、刊行物2に記載される「ヘッダー管」は、吸引手段により空気が排気されるものである限りにおいて、本件発明の「負圧室」と同様の機能を奏するものである。
しかし、この刊行物2記載の発明の「ヘッダー管」は密に列設した吸引ノズルを有するのみであって、吸気口となる「スリット」も、このスリットの両側の各縁部にそれぞれ設けられるはずの「ガイドレール」も有していない。
それゆえ、刊行物2に記載される「密に列設した吸引ノズル」群は、本件発明の「スリット」に相当しない。
そして、刊行物2記載の発明のベルトガイド板7は、搬送用索条を案内するものであるが、負圧室に設けられていないことは明らかであり、その結果、該ベルトガイド板7は、負圧室を構成する「スリットの両側の各縁部」に設けられるものではないから、本件発明の「ガイドレール」に相当するものではない。
したがって、刊行物2に記載された発明は、本件発明の構成に欠くことができない事項である上記「構成A」を具備していないというべきである。
それゆえ、【2】(1)の箇所で既述した請求人の主張(イ)、(ロ)は採用できない。
(刊行物3記載の発明との対比)
また、本件発明と刊行物3に記載された発明とを対比すると、刊行物3に記載される「無端コンベアベルト」、「サクションファン」は、それぞれ、本件発明の「搬送用索条」、「吸引手段」に相当し、また、刊行物3に記載される「サクションチャンバー」は、吸気口となるスリットを有すると共に、チャンバー内から吸引手段により空気が排気される限りにおいて、本件発明の「負圧室」に相当する。
そして、この刊行物3に記載される発明の「負圧室」には、スリットの両側に搬送用索条を案内するアイドラローラー群が設けられているが、このアイドラローラー群はスリットの両側の各縁部ではなく、該各縁部より若干離れた箇所に設けられていることは明らかである。
しかるに、本件発明の「ガイドレール」は、スリットの両側の各縁部に設けられるものであり、「ガイドレール」なくして「スリットの各縁部」はあり得ないものと云うべきであるから、このアイドラローラー群は本件発明の「ガイドレール」に相当するものでないと云える。
したがって、該「負圧室」は、スリットの両側の各縁部にそれぞれ設けられる「ガイドレール」を有していない。
このことは、刊行物3に記載された発明は、スリットと搬送用索条との間に(搬送方向左右の)外部から空気流が流れ込む空隙が存在することからも明らかである。
したがって、刊行物3に記載された発明は、本件発明の構成に欠くことができない事項である上記「構成A」を具備していない。
また、スリット状の吸引口とその両側に配したアイドラローラー群との間の空隙を可及的に無い状態に両者を接近させることは、当業者の技術常識に反するものというべきであるから、【2】(1)の箇所で既述した請求人の主張(ハ)を採用することはできない。
(まとめ)
このように、刊行物1〜3に記載された発明は、いずれも本件発明の構成に欠くことができない事項である上記「構成A」を具備していない。
しかも、この「構成A」を、刊行物1〜3に記載された発明に基いて当業者が容易になし得るとするいかなる根拠も見いだせない。
そして、本件発明は、上記「構成A」により、明細書記載の「吸引口となるスリットの両側の各縁部にそれぞれガイドレールを設け、ガイドレールに搬送用索条を案内して吸着搬送経路を形成したため、スリットと搬送用索条との間に空隙を有しないので、小物物品と搬送用索条とが接触している部分における小物物品の左右からの空気流は生じず、前後方向からの空気流のみである。その結果、小物物品の下方の空気流の速度差は第1の従来例と比較して大きなものとなり、相応の大きな吸引力を得ることができ、そのため小物物品を効率よく吸引でき搬送用索条に保持することができる。」(特公平5-65405号公報第13欄第32〜43行参照)という、刊行物1〜3に記載された発明にはない格別の効果を奏するものと認められる。

【5】むすび
以上のとおりであるから、本件発明は、刊行物1〜3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、本件発明の特許は、無効とすべきものではない。
本件審判費用の負担については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定を適用して請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-03-01 
結審通知日 2002-03-06 
審決日 2002-03-22 
出願番号 特願昭60-50970
審決分類 P 1 112・ 121- Y (B65G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 菅野 あつ子  
特許庁審判長 西野 健二
特許庁審判官 清田 栄章
氏原 康宏
登録日 1994-07-07 
登録番号 特許第1856791号(P1856791)
発明の名称 小物物品検査装置  
代理人 笹島 富二雄  
代理人 村上 智司  

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