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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E01B
管理番号 1059071
審判番号 不服2000-438  
総通号数 31 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-04-02 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-01-13 
確定日 2002-05-22 
事件の表示 平成 6年特許願第246827号「フローティングスラブの耐震装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 8年 4月 2日出願公開、特開平 8- 85904]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成6年9月16日に出願されたものであり、その請求項1ないし5に係る発明は、平成12年2月14日付けで補正された明細書及び出願当初図面の記載からみて、その請求項1ないし5に記載されたとおりのものであり、請求項1は次の通りのものである。

【請求項1】 基礎構造物とフローティングスラブとの間に、該基礎構造物側に取り付けられる金属製の下板と、上記フローティングスラブ側に取り付けられる金属製の上板と、これらの板の間に配列して介挿される複数個のコイルばねと、から構成される防振ユニットを、介装せしめて成るフローティングスラブの防振装置において、上記基礎構造物とフローティングスラブとの間に上下方向耐震装置および/または水平方向耐震装置を設けたことを特徴とするフローティングスラブの耐震装置。

2.引用例記載の発明

これに対して、原査定の拒絶の理由の概要は、本願の請求項1に記載された発明(以下、「本願発明1」という。)は、本願出願前に頒布された刊行物である特開平4-1301号公報(以下、引用例1という。)、及び、実公昭62-42192号公報(以下、「引用例2」という。)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本願発明1は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というにある。

そして
(1)引用例1には、には、下記(イ)ないし(ト)の記載がある。
(イ)「一般に、鉄道や自動車道路等のような交通振動の発生源の付近に構築された住宅・マンション・ホテル・劇場・病院等の建物や、精密機械工場・コンピューター施設等の建築物は、上記地震対策に加えて交通振動による被害を被ることのないように、対策を講ずる必要がある。」(第1頁右欄2行〜7行)
(ロ)「本発明は、上記従来の問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、上下の微小な振動、すなわち交通振動などに対して十分な防振効果を発揮することができるばかりでなく、長期間にわたって安定して機能が低下することのない道床の防振装置を提供することにある。」(第2頁左上欄8行〜13行)
(ハ)「本発明の道床の防振装置は、コンクリート路盤上に天然ゴム系の標準積層ゴム或いは従来の高減衰積層ゴムに比べて減衰量が少ない減衰積層ゴムを設置して、該積層ゴム上に道床スラブを設置し、上記コンクリート路盤に形成したブラケット部と上記道床スラブとの間に水平方向の振動を止め、上下方向の振動に対して十分な減衰性能を与える高減衰積層ゴムや粘弾性体から構成された積層ゴムを介在せしめたことを特徴とする。」(第2頁左上欄15行〜右上欄3行)
(ニ)「上記コンクリート路盤1上には積層ゴム2が設置されている。該積層ゴム2はクリープ等の問題が生じない天然ゴム系の標準積層ゴム或いは従来の高減衰積層ゴムに比べて減衰量が少ない減衰積層ゴムであって、積層方向すなわち上下方向に柔らかい構造となっている。該積層ゴム2は複数個配置してもよい。」(第2頁右上欄14行〜20行)
(ホ)「上記積層ゴム2上には、道床スラブ3が載っている。」(第2頁左下欄1〜2行)
(ヘ)「上記道床スラブ3の側面3aはやや下面方向に傾斜していて、該傾斜側面3aに平行な傾斜面1a’を形成したコンクリート路盤1のブラケット部1aとの間に積層ゴムが介在されている。該積層ゴム4は、水平方向の振動を止め、上下方向の振動に対して十分な減衰性能を与える高減衰積層ゴムや粘弾性体から構成されている。」(第2頁左下欄5行〜11行)
(ト)「本実施例の防振装置は以上のように構成されているので、上記道床スラブ3に交通振動による微少振動が働いた場合には、該上下方向の微少振動は積層ゴム2によりコンクリート路盤1への伝達は阻止する。また、道床スラブ3の側面に取り付けている積層ゴム4も水平方向の振動を止め、上下方向の振動に対して十分な減衰性能を発揮し、コンクリート路盤1には伝わらない。」(第2頁左下欄12行〜20行)

したがって、引用例1には、「コンクリート路盤1上に天然ゴム系の標準積層ゴム2或いは従来の高減衰積層ゴムに比べて減衰量が少ない減衰積層ゴム2を設置して、該積層ゴム上に道床スラブ3を設置し、上記コンクリート路盤1に形成したブラケット部1aと上記道床スラブ3との間に水平方向の振動を止め、上下方向の振動に対して十分な減衰性能を与える高減衰積層ゴムや粘弾性体から構成された積層ゴム4を介在せしめた道床の防振装置」が記載されていると認められる。

(2)また、引用例2には、下記(イ)ないし(ニ)の記載がある。
(イ)「建造物の耐震方法としては下記2通りの方法が既知である。
1.建造物自体について方策を講じること。これは建築工学上の方法に関するものであり、地震による建造物各部位の応力を設計時にあらかじめ考慮しておくものである。
2.建造物と建築用地との間に一般にネオプレン等によりなる弾性板を介挿すること。この弾性板は鉛直方向の剛性が高く地震のスペクトル範囲に鑑みて所期の目的を達成する固有振動数を有するものである。」(第1頁左欄18行〜右欄10行)
(ロ)「ネオプレン板を用いた弾性支持構造は水平方向に生じる地震の影響に対し比較的限られた範囲内でのみ絶縁効果をあげる。この絶縁効果はある場合にはそれ自体で建造物を十分に防護するものである。これに対し鉛直方向には絶縁効果は生ぜず、むしろ増殖作用が生ずる。建造物は地震による水平方向の力より鉛直方向の力の影響を受けにくく、特にこのことは鉛直向きとの壁の場合にあてはまる。しかし建造物の床については、鉛直方向の防振力に対して何らかの対策を施す必要がある。」(第1頁右欄15行〜第2頁左欄7行)
(ハ)「それゆえ本考案は、このような弾性体としての圧縮バネの特性を水平方向および鉛直方向の特性の比が各使用目的に応じて任意に得られるように定めることを提案する。弾性板では僅か7%の最大臨界減衰効率しか得られないのに対し、本考案の減衰装置を用いれば20%〜30%の減衰効率が得られるので地震の影響に対し一層有効な保護を与えることができる。」(第2頁左欄27行〜34行)
(ニ)「本考案においては振動絶縁部材としての圧縮コイルばねと粘性減衰器とを共通の装置ハウジング内に収める。そして、鉛直方向および水平方向の弾性支持力がもっぱら圧縮コイルばねによって得られ、かつ、鉛直方向および水平方向の減衰力はもっぱら粘性減衰器によって得られる構成とする。このように圧縮コイルばねと粘性減衰器とを共通の装置ハウジングに収めてユニット化することにより、両者を設置場所(基礎)および支持質量(建造物)に対してそれぞれ個別的に結合する必要がなくなる。」(第2頁左欄35行〜右欄1行)

3.対比・判断

本願発明1と引用例1に記載された発明を対比すると、引用例1に記載された発明の「コンクリート路盤1」「道床スラブ3」は、各々本願発明1の「基礎構造物」「フローテイングスラブ」に相当し、引用例1に記載された発明は(イ)に記載のとおり、耐震(地震対策)を前提とするものであり、しかも、実願平2-88421号(実開平4-46247号)のマイクロフイルム、及び、実公平4-33481号公報等に記載されているように、防振装置も耐震装置も相互に対応できるものであるから、引用例1記載の「積層ゴム4」は本願発明1の「上下方向耐震装置および/または水平方向耐震装置」に相当する。
また、引用例1に記載された発明の積層ゴム2は、本願発明1におけると同様に、基礎構造物とフローティングスラブとの間に、該基礎構造物側に取り付けられる金属製の下板と、上記フローティングスラブ側に取り付けられる金属製の上板との間に設けられるものであることは当該技術分野においては技術的常識である。また、これらの板の間に配列して介挿される引用例1に記載された発明の「積層ゴム2」は、本願発明1における「複数個のコイルばね」とは、「複数の弾性体」として共通するものであるので、引用例1記載の発明の積層ゴム2は、本願発明1の「防振ユニット」に対応する。

したがって両者は、

「基礎構造物とフローティングスラブとの間に、該基礎構造物側に取り付けられる金属製の下板と、上記フローティングスラブ側に取り付けられる金属製の上板と、これらの板の間に配列して介挿される複数個の弾性体と、から構成される防振ユニットを、介装せしめて成るフローティングスラブの防振装置において、上記基礎構造物とフローティングスラブとの間に上下方向耐震装置および/または水平方向耐震装置を設けたフローティングスラブの耐震装置」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点
基礎構造物とフローティングスラブとの間に、該基礎構造物側に取り付けられる金属製の下板と、上記フローティングスラブ側に取り付けられる金属製の上板と、これらの板の間に配列して介挿される複数個の弾性体と、から構成される防振ユニットにおいて、当該弾性体が、本願発明1では、コイルばねであるのに対し、引用例1に記載された発明では、積層ゴムである点で相違する。

そこで、前記相違点について検討する。

弾性体として、本願発明1のようにコイルばねを用いることは、引用例2の実施例等に記載されている。

なお、引用例2に記載された事項には、本願発明1や引用例1に記載された発明のように、鉄道や自動車道路等のフローテイングスラブの耐震装置に関するものではなく、その対象が明細書に記載されているように、建造物の耐震用振動絶縁装置である。しかしながら、本願発明1のように交通振動を防止する防振装置も、引用例2のように地震に対する耐震装置も、実願平2-88421号(実開平4-46247号)のマイクロフイルム、及び、実公平4-33481号公報にみられるように、振動に関する設計上の工夫により、両者とも相互に対応できるものである。

してみれば、本願発明1の基礎構造物とフローティングスラブとの間に、該基礎構造物側に取り付けられる金属製の下板と、上記フローティングスラブ側に取り付けられる金属製の上板と、これらの板の間に配列して介挿される複数個のコイルばねと、から構成される防振ユニットをにおいて、当該弾性体を本願発明のようにコイルばねにすることは、引用例1に記載の発明に、引用例2に記載の発明を適用する際に、通常の技術常識上の設計上の工夫を施すことにより、それほどの技術的な困難性を要することなく、当業者ならば容易になし得たものである。

また、それによる効果も引用例1、引用例2の効果の総和の範囲内のものであり、当業者ならば容易に想到し得るもので何ら格別のものではない。

4.むすび
したがって、本願発明1は、本願出願前に頒布された刊行物である引用例1及び引用例2に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
 
審理終結日 2002-03-07 
結審通知日 2002-03-12 
審決日 2002-03-29 
出願番号 特願平6-246827
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E01B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 三輪 学伊藤 陽中槙 利明松浦 久夫  
特許庁審判長 木原 裕
特許庁審判官 中田 誠
小山 清二
発明の名称 フローティングスラブの耐震装置  
代理人 鈴木 征四郎  
代理人 鈴木 征四郎  
代理人 鈴木 征四郎  
代理人 鈴木 征四郎  

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