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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C22C
管理番号 1059255
審判番号 不服2001-7376  
総通号数 31 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1992-12-04 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-05-07 
確定日 2002-06-25 
事件の表示 平成 3年特許願第124362号「耐久性に優れたFe-Cr-Al合金およびそれを用いた触媒担体」拒絶査定に対する審判事件〔平成 4年12月 4日出願公開、特開平 4-350148、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 【手続の経緯および本願発明】
本願は、平成3年5月29日に出願されたされたものであって、本願請求項1-6にかかる発明は、平成12年7月24日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲に記載された、次のとおりのものである。
「請求項1 C :0.05重量%以下 Si:0.2重量%以下 Mn:1.0重量%以下 P :0.040重量%以下 Cr:18〜28重量% Ni:0.3重量%以下 Cu:0.3重量%以下 Al:1〜10重量% N :0.02重量%以下 B:0.0005〜0.01重量%を含有し、かつSi、Mn、P、Ni、Cuが下記の(I)式を満足し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる、耐久性に優れたFe-Cr-Al合金。
9.5Si+2Mn+10P+3.6(Ni+Cu)-2.5≦0 …(I)
請求項2 請求項1に記載の合金がさらにLa:0.01〜0.20重量%を含有する合金。
請求項3 請求項1または2に記載の合金がさらにLaを除くランタノイドの合計で0.01〜0.20重量%、Y:0.05〜0.5重量%、およびHf:0.01〜0.3重量%のうち1種または2種以上を含有する合金。
請求項4 請求項1ないし3のいずれかに記載の合金がさらに、Ti、Nb、Ta、およびVから選ばれた少なくとも1種を合計で1.0重量%以下含有する合金。
請求項5 請求項1、3ないし4のいずれかに記載の合金がさらにZr:0.01〜1.0重量%を含有する合金。
請求項6 請求項1ないし5のいずれかに記載の合金製の箔を用いて組み立てられた触媒担体。」
【引用例】
これに対して、拒絶査定において引用された刊行物である、特開平2-254136号公報(以下、「引用例」という。)には、「[産業上の利用分野]本発明は耐熱性、耐酸化性、製造性に優れたFe-Cr-Al系合金に関し、高温の排ガス雰囲気下で特に異常酸化発生に対する抵抗力が要求される自動車排ガス浄化用触媒支持体に好適の他、石油、ガス等炭化水素系燃料を用いる高温装置用材料、例えば石油ストーブや温風ヒータ等の各種暖房器具部品やバーナー、電熱線等の発熱体にも有用である。なお、ここでいう異常酸化とはAl2O3主体の酸化被膜の保護性が失われ、Feを主体とした酸化物が急速に発達し、その後短時間のうちに合金箔の中心部まで酸化物となってしまう現象のことである。・・・[従来の技術]従来、自動車を中心とした排ガス浄化装置にはセラミック製ハニカムが使用されてきたが、・・・このハニカム体をFe-Cr-Al系耐熱合金箔で構成する技術が提案されている。・・・[発明が解決しようとする課題]・・・従って、本発明は特に触媒支持体として用いた場合、燃焼排ガス中での異常酸化に対する抵抗力が優れると同時に製造性の優れたFe-Cr-Al系合金箔を製造することを主な目的としたものである。[課題を解決するための手段]・・・特に燃焼排ガス浄化装置用合金箔として、価格上昇を抑えつつ特に熱間での加工性に優れ、また熱延板の靱性にも優れ、かつ・・・箔としての耐酸化性即ち排気ガス中での異常酸化発生に対する抵抗力にも優れたFe-Cr-Al系合金を得ることに成功したのである。即ち本発明は重量%でP:31/233(REM+0.021)以上0.04%以下、Cr:18以上28以下、Ti:0.02以上(0.03+4C+24N/7)以下、Al:4.5以上6.5以下、REM:0.06を超え0.15以下(ただし、REMは希土類元素のうちのランタノイド)を含有し、不純物としてC:0.015以下、N:0.015以下でかつ、C+N:0.02以下、S:0.003以下、Si:0.5以下、Mn:1.0以下、Ni:0.3以下に制限し、残部実質的にFeよりなることを特徴とする製造性に優れた耐熱、耐酸化性Fe-Cr-Al系合金であって、必要に応じて、0.05以上(0.1+93・C/12+93・N/14)以下のNbを添加することによりさらに熱延コイルの靱性および耐酸化性を向上させることができる。・・・[作用]・・・Si:Siは耐酸化性向上には有用であるものの、著しく熱延コイルの靱性を低下させるため、もともと耐酸化性を有するが靱性の低いFe-Cr-Al系合金を対象とした本発明にあっては0.5%以下とする。Mn:Mnは本発明にあっては耐酸化性をやや低下する傾向を持つため1.0%以下とする。P:Pは本発明にあってはREMとの関わりにおいて熱間での加工性を向上するのに重要な意味を持つ元素である。・・・一方でFe-Cr-Al系合金のとくに450〜520℃程度の温度域でのぜい化を促進するため、その上限は、0.04%に制限される。・・・Ni:NiはAlとの結合力の強い元素でありFe-Cr-Al系合金を著しく脆化させるため、本発明にあっては0.3以下とする。・・・[実施例]・・・(第1表のMarkX4の欄にC:51,N:95,C+N:146,Si:15,Mn:16,P:21,S:13,Ni:0.05,Cr:27.12,Al:4.82,Ti:54,REM:0.096と表示されている。)[発明の効果]・・・本発明によるFe-Cr-Al系合金は、より安価な形で添加元素成分を選択可能であると上に、熱間での加工性および熱延板靱性が良好で箔等の製造性に優れているため製造コストをより低く抑えることが可能であり、かつ酸化被膜の耐剥離性はもとより合金箔としての排ガス中での異常酸化発生に対する抵抗力に優れ、さらに合金箔のロウ付けによるハニカム構造体としても排ガス中での耐酸化性および形状変化に対する抵抗力にも優れている。したがって、・・・とりわけ自動車の排気ガス浄化装置の触媒支持体として最適である。」と記載(第1頁右下欄第10行〜第13頁左上欄第15行)されている。
【対比】
そこで、本願請求項1に記載の発明(以下、単に「本願発明」という。)と、引用例に開示された発明とを対比する。
本願発明と、引用例に開示の発明とは、C,Si,Mn,P,Cr,Ni,Al,Nの含有量の範囲が重複したFe-Cr-Al系合金である点で一致し、本願発明は、Cuの含有量の上限値を規定し、Si,Mn,P,Ni,Cuの含有量に関して、9.5Si+2Mn+10P+3.6(Ni+Cu)-2.5≦0 …(I)式を満足し、B:0.0005〜0.01重量%を含有し、耐久性に優れたものであり、REMを含有していないのに対して、引用例に開示の発明は、Cuの含有量が不明であり、上記(I)式についての規定はなく、Bを含有しておらず、製造性に優れた耐熱、耐酸化性のものであり、REM:0.06を越え0.15重量%以下を必須成分として含有する点で相違する。
【当審の判断】
上記相違点について、以下検討する。
1.Cuの含有量の上限値および上記(I)式について
引用例には、Cuについて特に記載されていないが引用例に開示のものは、不純物量程度のCuを含有しているといえ、本願発明とCuの含有量に関して、格別な相違があるとはいえない。本願発明は、Si、Mn、P、Ni、Cuが上記(I)式を満足することによって、1000℃を越える高温での脆化の原因となる金属間化合物の粒界への析出を防止したものであるのに対して、引用例に開示のものは、Siは熱延コイルの靱性を低下させないために、Mnは耐酸化性を低下させないために、Pは450〜520℃程度の温度域でのぜい化を促進させないために、Niは著しく脆化させないためにと、それらの上限を限定した理由が、各々相違しており、また、Si、Mn、P、Ni、Cuが上記(I)式を満足することによって、1000℃を越える高温での脆化の原因となる金属間化合物の粒界への析出を防止するという技術認識が全くないから、引用例に開示のものから(I)式を導き出すことは容易に想到し得ることでない。
2.Bについて
Bについて、拒絶査定において引用した刊行物である特開昭48-41918号公報(以下、「周知例」という。)には、再燃焼式排気ガス浄化装置部品材料に適するFe-Cr-Al系合金において、Bを本願発明と重複する範囲で含むものが記載されているものの、引用例において、Bは高温強度を改良するために添加されているものであって、本願発明のように、粒界を強化し、高温脆化を改善するために添加されているものではない。周知例に記載のものは、Bの添加目的が本願発明と相違するから、周知例に記載のものを適用し、粒界を強化し、高温脆化を改善するためにBを添加することは、当業者といえども容易に想到するところとはいえない。
3.性質について
本願発明における耐久性に優れたとは、1000℃高温下で脆化し破損することがないことを意味(段落【0003】)するところ、引用例には、燃焼排ガス浄化装置用合金箔として、熱間での加工性に優れ、また熱延板の靱性にも優れ、箔としての耐酸化性即ち排気ガス中での異常酸化発生に対する抵抗力にも優れたものを得ることは、開示されているものの、1000℃を越える高温での脆化破損についての技術認識は、開示されておらず、性質として、引用例に開示のものは、耐久性に優れるという本願発明と顕著な相違があるものといえる。
上記1-3のとおりであるから、REMの含有の有無について検討するまでもなく、引用例および周知例に開示の発明から本願発明を容易に想到することができたとはいえない。
そして、本願発明は、請求項1に記載の構成とすることにより、耐久性に優れた、即ち、1000℃の高温下で脆化し破損することがないという、引用例に開示の発明から予測することができない格別顕著な作用効果を奏するものといえる。
【むすび】
したがって、本願発明は、引用例および周知例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。
また、請求項2-6にかかる発明は、本願発明をその構成の一部とするものであるから、本願発明と同様に、引用例および周知例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2002-06-13 
出願番号 特願平3-124362
審決分類 P 1 8・ 121- WY (C22C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小川 武佐藤 陽一  
特許庁審判長 三浦 悟
特許庁審判官 平塚 義三
中村 朝幸
発明の名称 耐久性に優れたFe-Cr-Al合金およびそれを用いた触媒担体  
代理人 三和 晴子  
代理人 渡辺 望稔  

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