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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A47L
管理番号 1059491
異議申立番号 異議2001-70938  
総通号数 31 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-07-11 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-03-21 
確定日 2002-03-20 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3108583号「循環掃除方法及び掃除機」の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3108583号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由
1. 本件は、特許第3108583号(特願平6-101233号)に関し、その特許請求の範囲の【請求項1〜5】に係る発明の特許のすべてにつき、取消を請求して提起された特許異議申立事件に存する。

2. 本件の手続き経緯の概要は、以下のとおりである。
1).出願日:平成5年10月26日(優先権主張出願:特願平5-267567号の優先日)
2).特許権設定登録日:平成12年9月8日
3).特許公報発行日:平成12年11月13日
4).特許異議申立:平成13年3月21に特許異議申立人 樋口守孝より、同年5月14日に特許異議申立人 松本一也及び三洋電機株式会社より、それぞれ特許異議の申立
5).取消理由:平成13年11月5日付けを以て、当審より取消理由の通知
6).訂正請求等:平成14年1月11日付けで、特許権者より、意見書の提出とともに訂正請求

3. 上記平成14年1月11日付けの訂正請求の骨子とする内容は、以下のとおりである。
“特許請求の範囲の【請求項1〜5】に係る、
「【請求項1】 ブラシを清掃面に摺接させ乍ら、吸引口から清掃面に散在する異物を空気と共に吸引し、この吸引された空気をフィルターにかけて固気分離した後、1部排気はフィルターを介して外界に排出し、残余の排気を前記吸引口付近にもどし、該吸引口付近において吸引方向に放出させることを特徴とした循環掃除方法。
【請求項2】 ブラシを清掃面に摺接させ乍ら、吸引口から清掃面に散在する異物を空気と共に吸引し、この吸引された空気をフィルターにかけて固気分離した後、1部排気はフィルターを介して外界に排出し、残余の排気を循環させて、吸引口付近に吹き出し、回転ブラシを回転させた後、該排気を吸引方向に放出させることを特徴とした循環掃除方法。
【請求項3】 吸入匣の下面に吸入口を設けると共に、清掃面と摺接するブラシを架設し、前記吸入匣の上部には、吸引管の一端を連結し、下部には排気管の一端を夫々連結し、前記排気管から吸入口付近に吸引空気の方向へ排気を吹き出す如く構成し、前記吸引管と排気管を一体的に並列させると共に夫々の他端を固気分離手段及び動力手段を供えた分離匣の吸入口及び排気路に夫々連結し、前記分離匣にフィルターを介して排気の一部を外界へ放出する排気口を設けたことを特徴とする循環掃除機。
【請求項4】 ブラシは清掃面に摺接する固定ブラシと、清掃面に対面して循環排気により回転する回転ブラシとした請求項3記載の循環掃除機。
【請求項5】 回転ブラシは固定ブラシと平行に架設され、回転ブラシの一端に、排気により回転する羽根を固定した請求項4記載の循環掃除機。」を、

『【請求項1】 ブラシを清掃面に摺接させ乍ら、吸引口から清掃面に散在する異物を空気と共に吸引し、この吸引された空気をフィルターにかけて固気分離した後、1部排気はフィルターを介して外界に排出し、全排気の10%〜80%を前記吸引口付近にもどし、該吸引口付近において吸引方向に放出させることを特徴とした循環掃除方法。
【請求項2】 ブラシを清掃面に摺接させ乍ら、吸引口から清掃面に散在する異物を空気と共に吸引し、この吸引された空気をフィルターにかけて固気分離した後、1部排気はフィルターを介して外界に排出し、全排気の10%〜80%を循環させて、吸引口付近の回転ブラシを回転させた後、該排気を吸引方向に放出させることを特徴とした循環掃除方法。
【請求項3】 吸入匣の下面に吸入口を設け、前記吸入口の中央部へ清掃面と摺接する固定ブラシを架設すると共に、該固定ブラシを挟んで、これと平行に排気により回転する2本の回転ブラシを架設し、前記吸入匣の上部には、吸引管の一端を連結し、下部には排気管の一端を夫々連結し、前記排気管から吸入口付近に吸引空気の吸引方向へ排気を放出するごとく構成し、前記吸引管と排気管を一体的に並列させると共に夫々の他端を固気分離手段及び動力手段を供えた分離匣の吸入口及び排気路に夫々連結し、前記分離匣にフィルターを介して排気の一部を外界へ放出する排気口を設けたことを特徴とする循環掃除機。
【請求項4】 回転ブラシは固定ブラシと平行に架設され、排気により回転させるべく、回転ブラシの一端に、排気により回転する羽根を固定した請求項3記載の循環掃除機。』と、
訂正し、併せて、

明細書中の段落番号【0010】における
「排気が供給されても排気は流動方向に吸引する為の助成となり十分の吸引力を保有し」とある記載を、

『排気は、吸引口からの吸引流動方向に放出されるので、吸引力の助成となり、十分の吸引力を保有し』と、
訂正することを請求する”
ことにある。

4. そこで、この訂正請求の内容が、適法であるか否かにつき、審案する。
1) 上記訂正請求後の特許請求の範囲の【請求項1,2】に係る記載中の『 全排気の10%〜80%』は、願書に添付した明細書の段落番号【0011】における「前記における排気の循環量は全吸気の10%〜80%が使用範囲と認められ、」に依拠するものであって、新規事項の付加には当たらないものというべきであり、これら各請求項に記載の発明における排気の循環量を特定しているから特許請求の範囲の減縮を目的とするものに当たり、
特許法第120条の4第2項但し書き第1号の規定の趣意に適合し適切なものというべきである。
そして、この訂正事項により、課題に向けた目的には何ら異変はなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには当たらないものである。

2) 上記訂正後の特許請求の範囲【請求項3】に係る記載のうち、
『、前記吸入口の中央部へ清掃面と摺接する固定ブラシを架設すると共に、該固定ブラシを挟んで、これと平行に排気により回転する2本の回転ブラシを架設し、』
および『吸引方向へ排気を放出するごとく』
の各記載は、
願書に添付した明細書の段落番号【0016】における記載並びに図面(図3、4、5)の態様に依拠するものであるところ、新規事項の付加には当たらず、ブラシに関する技術的構成をより特定的に限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮に当たり、
特許法第120条の4第2項但し書第1号の規定の趣意に適合し適切なものというべきである。
そして、この訂正事項により、課題に向けた目的には何ら異変はなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには当たらないものである。

3) 上記にみられるとおり、訂正前の【請求項4】に係る発明は削除されている(即ち「訂正事項d」)が、これは特許請求の範囲の削除であるから、勿論特許請求範囲の減縮の趣意に因み、特許法第120条の4第2項但し書第1号の規定に適合し適切なものといってしかるべきである。

4) 訂正後の【請求項4】に係る記載は、訂正前の【請求項5】に係る記載に対応する発明であり、該発明の回転する羽根を固定するにつき、排気により回転されるように態様を特定したものであり、特許請求の範囲の減縮に当たるものであるから、特許法第120条の4第2項但し書第1号の規定に適合しているものというべきである。
勿論斯かる記述的契機は、願書に添付した明細書の段落番号【0013】、【0017】の記載、並びに【図4】における羽根14の固定軸15への固定態様が斜めに取り付けられていることに依拠しており、新規事項の付加には当たらないものといってしかるべきである。
そして、この訂正事項により、課題に向けた目的には何ら異変はなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには当たらないものである。

また、訂正前の【請求項5】を斯様に【請求項4】に繰り上げた点は、前記の如く訂正前の【請求項4】の削除に伴う項の数の序列を整合させるためのもので、明りょうでない記載の釈明に当たるものというべきである。

5) 更にまた、上記訂正請求後の明細書の段落番号【0010】における、訂正事項のうち『吸引口からの吸引流動方向に放出されるので、』は、文字通り排気の放出方向を明らかにしたものであり、願書に添付した明細書における段落番号【0021】、【0017】の記載並びに【図3】、【図5】の態様に依拠しており、新規事項の付加には当たらず、明りょうでない記載の釈明を目的としたものというべきであるから、特許法第120条の4第2項の但し書第3号の規定に適合し適切なものというべきである。
上記のとおり、上記訂正請求は、すべて特許法の趣意に適合し適法なものとして容認することが出来るものである。

5. 上記のとおり、平成14年1月11日付け訂正請求は、悉く適法であるというべきであるところ、本件特許請求の範囲の各請求項に記載の発明は、以下のとおりのものである。

『【請求項1】 ブラシを清掃面に摺接させ乍ら、吸引口から清掃面に散在する異物を空気と共に吸引し、この吸引された空気をフィルターにかけて固気分離した後、1部排気はフィルターを介して外界に排出し、全排気の10%〜80%を前記吸引口付近にもどし、該吸引口付近において吸引方向に放出させることを特徴とした循環掃除方法。
【請求項2】 ブラシを清掃面に摺接させ乍ら、吸引口から清掃面に散在する異物を空気と共に吸引し、この吸引された空気をフィルターにかけて固気分離した後、1部排気はフィルターを介して外界に排出し、全排気の10%〜80%を循環させて、吸引口付近の回転ブラシを回転させた後、該排気を吸引方向に放出させることを特徴とした循環掃除方法。
【請求項3】 吸入匣の下面に吸入口を設け、前記吸入口の中央部へ清掃面と摺接する固定ブラシを架設すると共に、該固定ブラシを挟んで、これと平行に排気により回転する2本の回転ブラシを架設し、前記吸入匣の上部には、吸引管の一端を連結し、下部には排気管の一端を夫々連結し、前記排気管から吸入口付近に吸引空気の吸引方向へ排気を放出するごとく構成し、前記吸引管と排気管を一体的に並列させると共に夫々の他端を固気分離手段及び動力手段を供えた分離匣の吸入口及び排気路に夫々連結し、前記分離匣にフィルターを介して排気の一部を外界へ放出する排気口を設けたことを特徴とする循環掃除機。
【請求項4】 回転ブラシは固定ブラシと平行に架設され、排気により回転させるべく、回転ブラシの一端に、排気により回転する羽根を固定した請求項3記載の循環掃除機。』

「異議申立人の提出した証拠」
6. 特許異議申立人 三洋電機株式会社の提出した刊行物は、以下のとおりである。
(1) 「実願昭61-111144号(実開昭63-18944号)のマイクロフィルム」(甲第1号証刊行物:以下、「第1引用例」という。)、
(2) 「実公昭39-36553号公報」(甲第2号証刊行物:以下、「第2引用例」という。)、
(3) 「実願昭51-125768号(実開昭53-42874号)のマイクロフィルム」(甲第3号証刊行物:以下、「第3引用例」という。)、
(4) 「実願昭49-5730号(実開昭50-97269号)のマイクロフィルム」(甲第4号証刊行物:以下、「第4引用例」という。)」
(5) 「特開平1-308513号公報」(甲第5号証刊行物:以下、「第5引用例」という。)
(6) 「特開平3-162814号公報」{甲第6号証刊行物:以下「第6引用例」という。

7. 上記各引用例に記載された事項は、以下のとおりである。
(1) 第1引用例には、以下の記載が図面とともに記載されている。
イ) 「この添付図において、1は本体ケースを示し、2は吸入管を示す。本体ケース1内には、図の左方から、塵埃貯留部3,除塵用フイルタ4,吸気ファン5及びフアン用モータ6が順次装備されている。塵埃貯留部3には、その入力段に吸入管2が着脱自在に装備されている。この吸入管2は、本実施例では図の如く上側に吸気管路2Aを備え、下側には排気管路2Bを備えた二重管が使用されている。そして、この吸入管2は、全体的には可搬性を考慮して1及び2の2ケ所にて分離し得る構造となっている。
また、排気管路2Bは、一端部が前記吸気管路2A部分の吸気口2Cに、他端部が前記吸気フアン5の下流側にそれぞれ連通した構造となっている。
前記ケース本体1の図における右端部に、排気孔1Aが形成され、この排気孔1A部分に微細フイルタ10が設けられている。11は必要に応じて着脱し得る構造の密閉蓋を示す。」(第3頁第13〜第4頁第12行)
ロ) 「次に、上記実施例の作用を床面Eを掃除する場合について説明する。この場合、まず、ファン5の稼働とともに排気管路2Bの一端部から空気が吐出される。同時に吸気管路2Aは、その吸入口2Cより空気の吸入を開始する。このため、この吸入口2C部分における密閉領域に近似した領域での空気流に吸引されて、床面Eの塵埃は吸入口2Cから吸気管路2A内へ吸引され塵埃貯留部3へ導かれ、続いて、塵埃用フイルタ4にて除塵される。
一方、この塵埃用フイルタ4を通過した微細塵埃は、吸入された空気とともに排気管路2Bへ送り出され、再び床面Eに巡環送風される。矢印Aは吸引された空気の巡環経路を示す。
このため、床両E上の塵埃の内、塵埃用フイルタ4の細孔径より大きい塵埃は塵埃貯留部3に貯留され綱孔径より小さい粒子の塵埃は掃除機内に閉じ込められ、通気路内を操り返し巡環する形態をとる。かかる状態では、前述した密閉蓋11を装備した場合に顕著になる。
他方、この密閉蓋11を取りはずした場合、掃除機内を吸気及び排気の形で巡環する空気は、排気管路2Bの空気抵抗が本体ケース1内の空気抵抗より幾分大きいことから、その影響を受け微細フイルタ10を介して一部外部へ排出される。この微細フイルタ10部材から排出される空気は、当該微細フイルタ10の作用によって塵埃がほとんど取り除かれた状態のものとなっている。」(第4頁第13〜第5頁第20行目)

(2) 第2引用例には、以下の事項が、図面とともに記載されている。
イ) 「1は掃除機本体で後部に電動送風機2を内設すると共に前部に集塵袋3を着脱自在に内装し、かつ前後の関口部に前蓋4と後蓋5とを覆着して全体として密開筺体に形成し、さらに電動送風機2の後部に吐気管6を形設すると共に前蓋4の上部に吸気管7を形設し、掃除機本体1の上部に装設した提げ手8を管状に形成してその一端を吸気管7に連結すると共にその他端を吐気管6の中心部分に挿入し、かつ本体1の下面に前後の車輪9を装備したものである。
10は吸込口本体で吸込管部11と、吐気管部12と吐気管部12の中央を膨張して形設したファン部13とを有し、吸込管部11の先端吸込口14を床面の前方に向けて開口し、かつ吐気管部12の先端吐気口15を吸込口14の前方において吸込口14の前面に開口するように設けると共に吸込管部11の他端を吐気管部12の他端に挿入して二重管に形成し、さらにフアン部13に内挿したフアン13´にベルト16およびプーリ17,18を介して駆動される回転ブラシ19を吸込口14と吐気口15との間に設け、吸込口本体10の下面外周に吸込口14と吐気口15とを囲繞するように遮蔽ブラシ20を値設し、吸込口本体10の下面前後に車輪21を装備したものである。」(第1頁左欄第33行〜同頁右欄第16行目)

ロ) 「上記のごとく掃除機本体1および吸込口本体10ならびにこれ等両者を連結する二重ホース22により成るものにおいて電動送風機2を駆動するとその吸込作用によって上記三者の中に、吸込口14近傍の掃除面A→吸込口14→吸込管部11→内管24→提げ手8→吸気管7→集塵袋3→電動送風機2→吐気管6→外管23→吐気管部12→吐気口15→吸気口本体10の吐気口15近傍の掃除面Aのごとき循環空気流れが生じて掃除面Aの塵埃を集塵袋3内に貯集する。」(第1頁右欄第29行〜同欄第38行目)

ハ) 「また吐気管部12に空気が流れることによってそのフアン部13内のフアン13´が回転するためにベルト16およびプーリ17,18を介して回転ブラシ19が駆動されてそれが掃除面Aを接触摩擦する。」(第2頁左欄第2行〜同欄第5行目)

(3) 第3引用例には、以下の事項が、図面とともに記載されている。 イ) 「図面について説明すると、電気掃除機の排気の1部又は全部等の気流が送風管2より送風口1に供給されて開口5と30度末満の鋭角に移動し開口と接する面から塵を除去しつつ流速を増し吸入口3、吸入管4を経て電気掃除機本体に戻る様に構成された吸込具である。」(第1頁第20行〜第2頁第5行)

ロ) 「又30度以上の鋭角で気流が移動すると吸引力を低下させ、塵を吹き飛ばし余り好ましくなかった。」(第2頁第9行〜同頁第11行)

(4) 第4引用例には、以下の事項が、図面とともに記載されている。
イ) 「 本考案は排出口よりの吹出空気を再使用し、ノズルの形を1のようにすることによって運転効率を高め清掃作業をむらなく行なえるようにしたものである。」(第3頁2行〜6行目)

ロ) 「吹出吸込併設ノズルにおいて、吸込口1の1、吹出口1の2を設けてなる掃除機の態様を示した機能説明図の内容」(第二図)

(5) 第5引用例には、以下の事項が、図面とともに記載されている。
イ) 「含塵空気は吸気室33からホース38を通って集塵室29内に至った後、集塵袋30の下方に設けたフィルター40でさらに細塵が濾過され、電動送風機23を通って排気通路35を通り、タービン37を経て中空の回転ブラシ32の内部を通り、排気孔34より吸気室33内に排出される。このように排気がタービン37に当ることによりタービン37が回転して回転ブラシ32を回転させることができる。」(第2頁下段右欄第19行〜第3頁上段左欄第7行目)
ロ) 「タービン(羽根車)が取付けられた回転ブラシ32の断面図が示されている態様。」(第4図)

(6) 第6引用例には、以下の事項が、図面とともに記載されている。
イ) 「主体11内にはファン13、モータ14、ダストフィル夕18が設けられ、主体11は車輪12により床面上を移動自在とされている。この例では床面用であるため、主体11の底面の前方部に床面用吸気口17が半円筒状に開口され、その中心部が吸込気管16でフィル夕18の吸込側に連結されている。吸気口17の外周端部は床面と適当な圧力で接触する。モータ14と主体11の後端に設けられた排気口15との間のファン後流の通路に還流気管21の一端が連結され、還流気管21は前方に延長され、その他端は、吸気口17の開口部に形成されたノズル22に連結される。排気口15に分岐調整翼23が設けられ、分岐調整翼23を調整して排気量と還流との比を調整し、還流量は98%以下とされる。つまり吸気口17からの吸気量が、ノスル22からの噴出量より多くされる。
ファン後流の一部は還流気管21を通ってノズル22から高速噴気(ジェット気流)として噴出し、これを被掃除体に当てることによりダストを被掃除体から遊離させる。一度遊離して気流中に入ったダストは吸気口17より容易に吸込まれてフィル夕18に導かれる。」(第6頁上段左欄10行〜同段右欄12行)

ロ) 「第2図は「からざを(連枷)」方式を用いた例である。吸気口12と還流気管21の出口とを並べ還流気管21の出口に円筒状回転体28が回転自在に保持され、円筒状回転体28の周面には図示の如く例えば5ヶ所に切欠部が形成され、その各切欠部には回転体28の軸と平行な軸29の回りに自由に回転する弁翼31が設けられている。弁翼31は還流により回転体28の外へ引き起され、回転体28とその外側の還流気管21との間に形成される空間を弁翼31がふさぐようになって還流で弁翼31が駆動され回転体28が回転し、床面に弁翼31が衝突して、床面を叩打する。」(第7頁上段左欄8行〜同欄20行目)

8. 上記各引用例に記載された事項と本件【請求項1〜4】に係る発明との対比と判断
(1) 【請求項1】に係る発明について
一). 本件【請求項1】に係る発明(以下、「本件第1発明」という。)と前掲第1〜第4、第6の各引用例に記載された発明とを対比しつつ審案する。
第1引用例に記載の循環掃除に係る技術も、全体的に考察すると、循環掃除方法を包括しているというべきであり、その「吸引口2C」、「フィルタ4」(なお、「フィルタ10」は、外界排出に係る)は、
本件第1発明の「吸引口」 、「フィルター」に、相当している。
そして、第1引用例に記載の発明においても、排気を一部フィルターを介して外界に排出して、その残余を吸引口付近にもどしていることが分かる(第1引用例における「この密閉蓋11を取りはずした場合、掃除機内を吸気及び排気の形で巡環する空気は、排気管路2Bの空気抵抗が本体ケース1内の空気抵抗より幾分大きいことから、その影響を受け微細フイルタ10を介して一部外部へ排出される。」参照)。
以上のとおりであるかから、第1引用例に記載の発明を、本件第1発明との牽連性において抽出してみると、
「吸引口から清掃面に散在する異物を空気と共に吸引し、この吸引された空気をフィルターにかけて固気分離した後、1部排気はフィルターを介して外界に排出し、排気の一部を前記吸引口付近にもどし、該吸引口付近において放出させる循環掃除方法。」が、
開示されていると捉えられる。

二). そこで、本件第1発明と第1引用例に記載の発明とを比較すると、
1) 本件第1発明は、ブラシを摺接させ乍ら、吸引するのに対して、第1引用例に記載の発明においては、斯かる技術的事項を欠如している点、
2) 本件第1発明は、全排気の10%〜80%を、吸引口付近にもどすのに対して、第1引用例に記載の発明においては、具体的にもどす排気量を開示してはいない点
3) 本件第1発明は、吸引口付近にもどした排気を、該付近において吸引方向に放出させるものであるのに対して、
第1引用例に記載された発明においては、単に吸引口に向けて排気を戻しているのみで、明確に吸引方向に放出させることまでを包括しているとはいい得ない点、
において、それぞれ相違している。

三). そこで、上記相違点につき、審案する。
i) 相違点1)について
ところで、一般にこの種「循環掃除方法」において、
ブラシを摺接させ乍ら、吸引することは、普通に行われていることである(例えば、前掲第3引用例(第3図の態様))。
したがって、この点は、単なる周知技術の付加の域を出ないものというべきである。

ii) 相違点2)について
排気を吸引口の方に戻すにつき全排気量の何%を戻すかにつき、本件第1発明の如く具体的数値即ち80〜10%を明示した技術内容は、前掲何れの引用例にも明示がない(なお、第6引用例に記載の発明は、環流率の言及は存するものの、その目的は、ダストの掻き落とし、ダストの遊離の容易性等のダストの取り除きを容易にすることを狙いとするものであって、本件各発明とは技術的趣旨を異にするものというべきである。)。
それゆえ、この点は、此等引用例に記載の発明の内容を以ては、当業者予測可能の域を超越し、容易に創設する限りではなかったものというべきである。

iii) 相違点3)について
第1引用例には、第3図図示のとおり矢印が吸引口に向いているような様相がみられるも、これは、単に排気の流れを示したものに過ぎず、排気の吸引方向に符合させて戻していることまでを包括しているという明確な記述的契機を欠如しているものというべきである(第4引用例における第二図の態様においても、排気は吸引口付近において床面方向に直に向かっており、吸引方向に符合しないものである)。
よって、外に、 吸引方向に放出させることを示唆するする技術的事項を開示したした証拠が存しないところ、第1引用例に記載された発明にその余の引用例に記載の発明を如何様に組合せ勘案しても、本件第1発明を創設することを得なかったというべきである(尚、第3引用例に記載の発明は、吸引力を低下させることを目途として創作されたものであって、吸引力の増強を図ろうとする本件発明の進歩性否定の判断に供することは相当でない。)。
本件第1発明は、上掲各引用例に記載の発明が備えない構成要件要素を包含する上記本件第1発明の構成要件により、明細書に記載されたとおりの効果を奏するものである。
それゆえ、前掲第1引用例に記載の発明に、前掲第2〜第4の各引用例に記載された発明を組合勘案して、当業者が容易に想到することができたものとすることはできないというべきである。

(2) 本件【請求項2】に係る発明(以下、「本件第2発明」という。)ついて
上記本件第1発明が、単にもどした排気を吸引方向に放出させるのに対して、
本件第2発明は、該排気を、吸引口付近の回転ブラシを回転させた後、該排気を吸引方向に放出させるものであるから、
第1発明に、循環排気を用いて吸引口付近の回転ブラシを回転させるという技術的事項を介入させたものと捉えられる。
前掲第2引用例には、排気を利用して回転ブラシを回転させる技術が開示されており、これを第1引用例に記載の発明に付加介入して容易に想到し得たかどうかが問題となるが、前掲第2引用例に記載の発明においては、回転ブラシの駆動源として排気が利用されているものの、該排気は、吸引口を向いているだけで、必ずしも吸引方向を向いていると捉えることはできず、単に第2引用例に記載された発明を付加することを以て、この相違点の間隙が埋まるわけではないといってしかるべきである。
むろん、先に本件第1発明につき審案した際に挙示した第2、第3の各相違点も依然本件第2発明においても等しく相違点となっており、此等の相違点に伴う間隙も依然埋まらないものである。
本件第2発明は、前掲各引用例に記載の発明が備えない構成要件要素を含む本件第2発明の構成要件により、明細書に記載されたとおりの効果を奏するものである。
以上のとおりであるから、本件第2発明は、前掲第1〜第4引用例及び第6引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到することができたものとすることができない。

(3) 本件第3発明について
本件第3発明と、前掲第1〜第4引用例並びに第5、6引用例に記載の発明との対比判断をするに、
本件第3発明の特徴的構成部分ともいうべき、
「掃除面と摺接する固定ブラシを挟んで、これと平行に排気により回転する2本の回転ブラシを架設し、前記吸入匣の上部には、吸引管の一端を連結し、下部には排気管の一端を夫々連結し、前記排気管から吸入口付近に吸引空気の吸引方向へ排気を放出するごとく構成し、」
については、前掲各引用例に記載の何れの発明もこの内容を備えないものである。
本件第3発明は、上記特徴的構成部分により、吸入匣の前進・後退の両用に使用して、同等の有用性を期待することが出来るものといえる。
したがって、他の相違点につき審案するまでもなく本件第3発明は、上掲第1〜6引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到することを得た限りではないというべきである。

(4) 本件第4発明について
本件第4発明は、前記本件第3発明を引用する形式を採用しており、第3発明における回転ブラシの一端に、
「排気により回転させるべく、排気により回転する羽根を固定した」
ものであって、本件第3発明の構成要件をより限定した発明である。
上記において審示したとおり、本件第3発明につき、前掲第1〜第6引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到することができたものとすることができないと審案したところ、それ以上に発明の構成要件を限定した本件第4発明についてはなおさら、此等の引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができた限りではないというべきである。

9. 結び
以上のとおりであるから、本件第1〜第4発明は、異議申立人の提出に係る第1〜第6引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとするができない。
また、その余の異議申立人の提出に係る刊行物に記載の発明についても、何れも、本件第1〜第4発明の構成要件と大幅に懸隔しているというべきであるところ、逐一判断するまでもなく、上記刊行物類に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることができないというべきである。
それ故、本件第1〜第4発明については、異議申立人の提出した証拠並びに主張する理由を以て、此等につき受けた特許を取り消すことはできない。
また、外に、本件第1〜第4発明に係る特許につき、取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
循環清掃方法及び掃除機
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 ブラシを清掃面に摺接させ乍ら、吸引口から清掃面に散在する異物を空気と共に吸引し、この吸引された空気をフィルターにかけて固気分離した後、1部排気はフィルターを介して外界に排出し、全排気の10%〜80%を前記吸引口付近にもどし、該吸引口付近において吸引方向に放出させることを特徴とした循環掃除方法。
【請求項2】 ブラシを清掃面に摺接させ乍ら、吸引口から清掃面に散在する異物を空気と共に吸引し、この吸引された空気をフィルターにかけて固気分離した後、1部排気はフィルターを介して外界に排出し、全排気の10%〜80%を循環させて、吸引口付近の回転ブラシを回転させた後、該排気を吸引方向に放出させることを特徴とした循環掃除方法。
【請求項3】 吸入匣の下面に吸入口を設け、前記吸入口の中央部へ清掃面と摺接する固定ブラシを架設すると共に、該固定ブラシを挟んで、これと平行に排気により回転する2本の回転ブラシを架設し、前記吸入匣の上部には、吸引管の一端を連結し、下部には排気管の一端を夫々連結し、前記排気管から吸入口付近に吸引空気の吸引方向へ排気を放出するごとく構成し、前記吸入管と
排気管を一体的に並列させると共に夫々の他端を固気分離手段及び動力手段を供えた分離匣の吸入口及び排気路に夫々連結し、前記分離匣にフィルターを介して排気の一部を外界へ放出する排気口を設けたことを特徴とする循環掃除機。
【請求項4】 回転ブラシは固定ブラシと平行に架設され、排気により回転させるべく、回転ブラシの一端に、排気により回転する羽根を固定した請求項3記載の循環掃除機。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は清掃面からの空気を吸入すると共に、固気分離により生じた排気の一部はフィルターを介して外界へ放出し、他部を循環させて前記吸引空気の方向へ吹き出して吸引空気の流速を早めさせることを目的とした循環掃除方法及び掃除機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来知られている掃除機は、室内に排気する方式が多かった。また排気を清掃面へ吹きつけて循環させた電気掃除機が知られている(特開昭57-72620号)。
【0003】
【発明により解決すべき課題】
前記従来の掃除機によれば、排気は室内に放出される為に、固気分離の為の集塵袋では、微粉が透過して室内空気を汚損するこを防止し難く、時には細菌類を浮遊或いは拡散させることにもなる問題点があった。
【0004】
また排気が全部放出される為にその駁音が大きくなる問題点もあった。
【0005】
更に排気を清掃面へ吹きつける方式にあっては、ノズル移動時に塵埃を吹きちらすおそれがあるのみならず、吸引力を著しく弱め、更には吸気より排気が強いと横方向へ塵埃を散らすおそれがあるなどの問題点があった。
【0006】
【課題を解決する為の手段】
然るにこの発明は、吸気の一部を循環使用し、吸気の補助とし、放出空気はフィルターを通すので、微粉塵などの混入した排気がそのまま室内に放出されることなく、排気による塵埃の吹きちらしのおそれがないのみならず、駁音も少なくなり、かつ吸引力の低下も或程度防止して前記従来の問題点を解決したのである。
【0007】
即ち方法の発明は、ブラシを清掃面に摺接させ乍ら、吸引口から清掃面に散在する異物を空気と共に吸引し、この吸引された空気をフィルターにかけて固気分離した後、1部排気はフィルターを介して外界に排出し、残余の排気を前記吸引口付近にもどし、該吸引口付近において吸引方向に放出させることを特徴とした循環掃除方法であり、ブラシを清掃面に摺接させ乍ら、吸引口から清掃面に散在する異物を空気と共に吸引し、この吸引された空気をフィルターにかけて固気分離した後、1部排気はフィルターを介して外界に排出し、残余の排気を循環させて、吸引口付近に吹き出し、回転ブラシを回転させた後、該排気を吸引方向に放出させることを特徴とした循環掃除方法である。
【0008】
また掃除機の発明は、吸入匣の下面に吸入口を設けると共に、清掃面と摺接するブラシを架設し、前記吸入匣の上部には、吸引管の一端を連結し、下部には排気管の一端を夫々連結し、前記排気管から吸入口付近に吸引空気の方向へ排気を吹き出す如く構成し、前記吸引管と排気管を一体的に並列させると共に夫々の他端を固気分離手段及び動力手段を供えた分離匣の吸入口及び排気路に夫々連結し、前記分離匣にフィルターを介して排気の一部を外界へ放出する排気口を設けたことを特徴とする循環掃除機である。次にこの発明のブラシは清掃面に摺接する固定ブラシと、清掃面に対面して回転する回転ブラシとしたものであり、回転ブラシは、固定ブラシと平行に架設され、回転ブラシの一端に、排気により回転する羽根を固定したものである。
【0009】
前記における回転ブラシは、固定ブラシの両側に対称的に二本架設することが好ましいが、この本数に限定されるものではない。また排気は回転ブラシを回転した後、吸引空気の方向に吹き出されるので、、吸引口附近の吸引力を助長する。即ち吸引量と放出量及び放出方向との関係で回転ブラシ間に減圧空間を生じ、この吸引力により清掃面の異物を吸引する。また回転ブラシの回転が塵埃の吸入を容易にする。
【0010】
前記における回転ブラシは、放出する排気によって回転させる為に、強力ではないが、十分の清掃能力を保有する。例えば回転ブラシは清掃面に近接(例えば0〜5mm間隔)しているので、床上の異物を拾い上げることができる。また吸入匣の下面は、清掃面に当接して摺動できる為に、吸入匣の吸入口に清掃面が露出し、他部は封鎖される。そこで吸引により減圧現象を生じさせると共に、排気は、吸引口からの吸引流動方向に放出されるので、吸引力の助成となり、十分の吸引力を保有し、掃除の目的を達成することになる。
【0011】
前記における排気の循環量は全吸気の10%〜80%が使用範囲と認められ、好ましくは30%〜60%である。
【0012】
前記における固気分離手段(フィルターなど)、吸気手段(吸引ポンプ)及び動力手段(モータ)等は夫々従来公知の機器を用いる。
【0013】
【作用】
この発明によれば、吸気と排気を循環させるので、排気の一部はフィルターを介して室内に放出され、室内空気を排気により汚損するおそれもない。また循環排気は回転ブラシを回転すると共に、吸引空気の方向へ吹き出し、その流速を助長する。また回転ブラシは吸引気流を補助し、塵埃の吸引を容易にする。
【0014】
また排気に帰因する騒音も著しく減少させることができる。
【0015】
【実施例1】
この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0016】
吸入匣1の下面に吸入口2を設けると共に、該吸入口2の中央部に清掃面3と対向する固定ブラシ4を吸入口2の長縁と平行して固定し、前記吸入匣1の上部には、吸引管5の一端を連結開口し、下部一側には排気管6の一端を連結する。前記吸引管5と、排気管6の他端はホース8の一端に連結し、ホース8の他端は固気分離匣7に連結する。
【0017】
前記固気分離匣7内には、濾室9が内装され、その排気側は吸引ポンプ10の吸入側に対向してある。図中11はモータ、12はコード室、29は挿脱可能のフィルターである。前記固気分離匣7に入った吸引空気は、濾室9の集塵袋30で固気分離されて、吸引ポンプ10に吸引され、その吐出口から排気路17、ホース8、排気管6を経て吸入匣1の下部に架設した回転ブラシ13、13の夫々の一端に連結する。前記回転ブラシ13の一端には、羽根14が固定されている。前記羽根14の内端は中央部の固定軸15に遊嵌する軸受け16に固定し、外端は回転ブラシ枠13aに固定してある。前記排気路17の匣体壁にはフィルター29を介設した排気口33が設置してあり、排気の一部が矢示32のように外界へ排出される。
【0018】
前記回転ブラシ13は、円筒枠13aの外壁にブラシ板18が回転の中心軸と平行に固定してある。また吸引匣1の下面四辺にブラシ4が設けてある。
【0019】
前記回転ブラシ13の内側には、案内筒19が固定軸15に固定され、案内筒19の一端は前記排気管6と連通させてあると共に、その外壁には、前記固定軸15と平行に排気スリット20が穿設してある。
【0020】
【実施例2】
前記吸入匣1の内部の他の実施例を、図5に基づいて説明する。
【0021】
即ち吸入管5の基端部5aを吸入匣1内へ突入させ、基端部5aの端部へ回転ブラシ13、13の上部を覆う案内板34を設ける。このようにすれば、吸入匣1の吸入口2から矢示36のように吸入された塵芥入り空気は、矢示37のように、基端5aから吸入される。一方回転ブラシ13、13内へ放出された排気は、矢示38、38のように放出され、前記案内板34の上方から、基端部5aの吸入孔39を経て矢示38のように吸入される。
【0022】
前記ホース8内は吸気通路21と、排気通路22に分離されており、夫々吸排気に利用されている。
【0023】
前記実施例において、モータ11を始動し、吸引ポンプ10を作動させると、その吸引口2を介し、矢示23、24のように(図1)吸入匣1内の空気を吸引する。
【0024】
そこで吸引匣1内の空気が、矢示25のように吸引される結果(図2)、吸引匣1内の内腔26は減圧され、矢示27、27のように清掃面3の塵埃を吸引し(図3)、空気と共に吸引管5内へ吸い上げる。このようにして吸引された空気は、固気分離匣において、分離され、固形物は集塵袋30にたまり、微細粉塵をフィルター29で分離して、1部外界へ放出し、他の排気は排気路17、排気通路22、排気管6及び案内筒19を経て排気スリット20から矢示28のように排出され、吸引空気と合流し、その流速を助長して循環することになる。
【0025】
【発明の効果】
この発明は、排気を循環させる間に吸引及び濾過し、かつ放出排気は再度フィルターにかけるので、微細粒子などを室内に放出することがなく、空気を清浄に保つことができる効果がある。また排気は全部を放出することがないので、これに帰因した騒音が著しく低減される効果がある。
【0026】
次に吸引匣の下面四辺にブラシを設けたので、部屋の壁際など、直角隅部も容易に清掃できる効果がある。また循環排気により回転ブラシを回転させるので、別動力を要しない効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】
この発明の実施機の一部を切断した正面図。
【図2】
同じく一部縦断拡大図。
【図3】
同じく一部縦断拡大側面図。
【図4】
同じく一部拡大平面図。
【図5】
同じく他の実施例の一部縦断拡大側面図。
【符号の説明】
1 吸入匣
2 吸入口
3 清掃面
4 固定ブラシ
5 吸引管
6 排気管
7 固気分離匣
8 ホース
9 濾室
10 吸引ポンプ
11 モータ
12 コード室
13 回転ブラシ
14 羽根
15 固定軸
16 軸受け
17 排気路
18 ブラシ板
19 案内筒
20 排気スリット
21 吸気通路
22 排気通路
26 内腔
29 フィルター
30 集塵袋
33 排気口
34 案内板
 
訂正の要旨 訂正の要旨
“特許請求の範囲の【請求項1〜5】に係る、
「【請求項1】 ブラシを清掃面に摺接させ乍ら、吸引口から清掃面に散在する異物を空気と共に吸引し、この吸引された空気をフィルターにかけて固気分離した後、1部排気はフィルターを介して外界に排出し、残余の排気を前記吸引口付近にもどし、該吸引口付近において吸引方向に放出させることを特徴とした循環掃除方法。
【請求項2】 ブラシを清掃面に摺接させ乍ら、吸引口から清掃面に散在する異物を空気と共に吸引し、この吸引された空気をフィルターにかけて固気分離した後、1部排気はフィルターを介して外界に排出し、残余の排気を循環させて、吸引口付近に吹き出し、回転ブラシを回転させた後、該排気を吸引方向に放出させることを特徴とした循環掃除方法。
【請求項3】 吸入匣の下面に吸入口を設けると共に、清掃面と摺接するブラシを架設し、前記吸入匣の上部には、吸引管の一端を連結し、下部には排気管の一端を夫々連結し、前記排気管から吸入口付近に吸引空気の方向へ排気を吹き出す如く構成し、前記吸引管と排気管を一体的に並列させると共に夫々の他端を固気分離手段及び動力手段を供えた分離匣の吸入口及び排気路に夫々連結し、前記分離匣にフィルターを介して排気の一部を外界へ放出する排気口を設けたことを特徴とする循環掃除機。
【請求項4】 ブラシは清掃面に摺接する固定ブラシと、清掃面に対面して循環排気により回転する回転ブラシとした請求項3記載の循環掃除機。
【請求項5】 回転ブラシは固定ブラシと平行に架設され、回転ブラシの一端に、排気により回転する羽根を固定した請求項4記載の循環掃除機。」を、
『【請求項1】 ブラシを清掃面に摺接させ乍ら、吸引口から清掃面に散在する異物を空気と共に吸引し、この吸引された空気をフィルターにかけて固気分離した後、1部排気はフィルターを介して外界に排出し、全排気の10%〜80%を前記吸引口付近にもどし、該吸引口付近において吸引方向に放出させることを特徴とした循環掃除方法。
【請求項2】 ブラシを清掃面に摺接させ乍ら、吸引口から清掃面に散在する異物を空気と共に吸引し、この吸引された空気をフィルターにかけて固気分離した後、1部排気はフィルターを介して外界に排出し、全排気の10%〜80%を循環させて、吸引口付近の回転ブラシを回転させた後、該排気を吸引方向に放出させることを特徴とした循環掃除方法。
【請求項3】 吸入匣の下面に吸入口を設け、前記吸入口の中央部へ清掃面と摺接する固定ブラシを架設すると共に、該固定ブラシを挟んで、これと平行に排気により回転する2本の回転ブラシを架設し、前記吸入匣の上部には、吸引管の一端を連結し、下部には排気管の一端を夫々連結し、前記排気管から吸入口付近に吸引空気の吸引方向へ排気を放出するごとく構成し、前記吸引管と排気管を一体的に並列させると共に夫々の他端を固気分離手段及び動力手段を供えた分離匣の吸入口及び排気路に夫々連結し、前記分離匣にフィルターを介して排気の一部を外界へ放出する排気口を設けたことを特徴とする循環掃除機。
【請求項4】 回転ブラシは固定ブラシと平行に架設され、排気により回転させるべく、回転ブラシの一端に、排気により回転する羽根を固定した請求項3記載の循環掃除機。』と、
訂正し、併せて、
明細書中の段落番号【0010】における
「排気が供給されても排気は流動方向に吸引する為の助成となり十分の吸引力を保有し」とある記載を、
『排気は、吸引口からの吸引流動方向に放出されるので、吸引力の助成となり、十分の吸引力を保有し』と、
訂正することを請求する”
ことにある。
異議決定日 2002-02-28 
出願番号 特願平6-101233
審決分類 P 1 651・ 121- YA (A47L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 金丸 治之  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 岡田 和加子
藤原 稲治郎
登録日 2000-09-08 
登録番号 特許第3108583号(P3108583)
権利者 本田 久男
発明の名称 循環掃除方法及び掃除機  
代理人 涌井 謙一  
代理人 鈴木 正次  
代理人 鈴木 正次  
代理人 涌井 謙一  
代理人 山口 隆生  

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