• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16J
管理番号 1060353
審判番号 不服2001-13161  
総通号数 32 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-10-05 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-07-26 
確定日 2002-06-12 
事件の表示 平成11年特許願第 24010号「パッキン用編み糸」拒絶査定に対する審判事件[平成11年10月 5日出願公開、特開平11-270692]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成2年2月8日に特許出願した特願平2-503018号の一部を平成9年9月22日に特願平9-257074号とし、更にその一部を平成11年2月1日に新たな特許出願としたものであつて、平成13年5月28日付け及び平成13年8月27日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至10に記載された事項により特定されとおりのものと認められるところ、その請求項1には次のとおり記載されている(以下、請求項1に係る発明を「本願発明1」という。)
【請求項1】 相互に間隔をあけて長手方向にのみ配置した複数本の補強繊維糸を接着剤により芋虫状黒鉛粉からなる膨張黒鉛と一体に接着していると共に前記全ての補強繊維糸の外周が前記膨張黒鉛で覆われるように埋設してなることを特徴とするパッキン用編み糸。

2.引用例記載の発明
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物は下記に示すとおりのものである。
刊行物1:中華人民共和国発明権利申請公開説明書、第1,034,217号、(公開日 1989年7月26日)(原審において引用文献1として引用)
刊行物2:米国特許第3,404,061号明細書(1968年,Cl.161)(原審において引用文献2として引用)

刊行物1には、以下の技術的事項が開示されているものと認めることができる。
(イ)「6.上記第4項に記載の膨張黒鉛パッキンの製造方法の特徴は、芋虫状膨張黒鉛の層間に接着させる糸状、膜状、もしくは編物状の補強用補助材料をローラを使って接着剤を入れた槽の中を通す方法によって連続的に接着剤を染み込ませることができる点である。」(権利要求書、要求項6)
(ロ)「実施例三:ガラス繊維、合成繊維、木綿、麻などの繊維、もしくは炭素繊維や銅細線の一種又は複数種を厚さが0.20mm以下になるように織り、これら金属線や繊維と親和性のある有機接着剤に染み込ませた後、密度0.003〜0.03g/cm3の芋虫状膨張黒鉛の層間にむらなく挟み、その後、圧延して厚さ0.15〜0.35mm、密度を0.5〜1.8g/cm3 の帯状膨張黒鉛とする。これを一定の幅、通常は幅5〜50mmのテープに裁断し、こより状に撚って糸状黒鉛とする。八つ編み機にかけて八つ編みするか、内側に紐状の膨張黒鉛を入れて袋編みするか、また袋編みを何層か重ねて、その後、成形と表面処理を施して異なった断面形状とサイズの膨張黒鉛製汎用パッキンを得る。」(説明書6頁7行〜13行)
以上の記載事項及び発明権利申請公開説明書の全記載からみて、刊行物1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。
「むらなく配置した補強用補助材料を親和性のある有機接着剤により芋虫状黒鉛からなる膨張黒鉛と接着し埋設してなるパッキング用の帯状膨張黒鉛を一定の幅のテープに裁断するか、更に、こより状に撚った糸状黒鉛(編み糸)。」

刊行物2には、以下の技術的事項が開示されているものと認めることができる。
(ハ)「高温化学的不活性ガスケット、ラプチャーディスク等は、適当な厚みの平板状の材料を所望の形状に切断することにより造ることができる。」(明細書13欄49行〜52行)
(ニ)「可撓性黒鉛シート又は帯の強度は、互いに接合された2つの重ねられた可撓性黒鉛層を持つ積層体とし、その間に適当な紐、糸、シート状材料のような補強手段を持つことによって増加する。図8は2つの可撓性黒鉛シート130及び132からなる積層体を表している。これらのシートは適当な粘着剤136によって接合され、粘着剤の中には略平行に隣り合って延長され、長さ方向に配置された一続き又は複数のフィラメント134が埋め込まれている。フィラメント又はストランドは金属、ガラス、可撓性黒鉛等とすればよい。」(明細書15欄25行〜36行)

3.対比・判断
本願発明1と引用発明を対比すると、引用発明の「補強用補助材料」は、本願発明1の「補強繊維糸」に相当し、以下同様に「親和性のある有機接着剤」は、「接着剤」に、「芋虫状膨張黒鉛」は、膨張黒鉛自体は、黒鉛粒子の結晶のC軸方向に膨張させた外観上芋虫粒子(粉体)であるので、「芋虫状黒鉛粉」に、「帯状膨張黒鉛を一定の幅のテープに裁断するか、更に、こより状に撚った糸状黒鉛」は、「編み糸」に各々相当すると認められるので、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。
[一致点]
「補強繊維糸を接着剤により芋虫状黒鉛粉からなる膨張黒鉛と接着し埋設してなるパッキン用編み糸である点。」
[相違点1]
「本願発明1では、複数本の補強線維糸を相互に間隔をあけて長手方向にのみ配置したのに対し、引用発明では、補強繊維糸をむらなく配置した点。」
[相違点2]
「本願発明1では、補強繊維糸を接着剤により膨張黒鉛と一体に接着していると共に前記全ての補強繊維糸の外周が膨張黒鉛で覆われるように埋設したのに対し、引用発明では、そのような表現では説明されていない点。」

そこでこれらの相違点について検討する。
相違点1については、上記(ニ)の記載内容及び刊行物2の図8を参照すると、「膨張黒鉛中に補強繊維に相当するフィラメントが略平行に隣り合って延長され、相互に間隔をあけて長手方向にのみに配置されたガスケット」が開示されており、中芯に使用する補強繊維糸として、縦糸のみを一方向多数の平行糸状体に配置する構成のものも慣用されている技術(例えば、特開昭60-84476号公報参照)であることを考慮すると、膨張黒鉛中に設けられる補強繊維糸の配置は、従来周知の各種物品の補強技術と同様に膨張黒鉛製品の強度等を考慮して適宜決められるべきものであり、刊行物2に示す相互に間隔をあけて長手方向にのみ配置する構成を引用発明に適用し、相違点1に係る本願発明1の構成とする程度のことは、当業者であれば、適宜なし得たものと認める。
相違点2については、上記記載事項(ロ)には、「これら金属線や繊維と親和性のある有機接着剤に染み込ませた後、密度0.003〜0.03g/cm3の芋虫状膨張黒鉛の層間にむらなく挟み、その後、圧延して厚さ0.15〜0.35mm、密度を0.5〜1.8g/cm3の帯状膨張黒鉛とする。これを一定の幅、通常は幅5〜50mmのテープに裁断し、こより状に撚って糸状黒鉛とする」ことが記載されていることから、補強繊維糸には、それと親和性のある有機接着剤が染み込ませてあるので、接着剤は補強繊維糸の内外周のみに存在し、膨張黒鉛の層間を圧延することにより補強線維糸が膨張黒鉛と接し接着されている部分を除く全ての補強繊維糸の外周(最外周に位置する補強繊維糸の外周部分も含め)が膨張黒鉛で覆われるように埋設されているものと認められる。したがつて、引用発明のものも、補強繊維糸を接着剤により膨張黒鉛と一体に接着していると共に前記全ての補強繊維の外周が膨張黒鉛で覆われるように埋設した構成が開示されているものと認められる。
したがつて、この相違点は単なる表現上の相違点に過ぎず、実質的な相違点とは認めることができない。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願請求項1に係る発明は、刊行物1、2に記載された発明及び慣用技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本願請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
そして、本願請求項1に係る発明が特許を受けることができないものである以上、本願の請求項2乃至10に係る発明について審究するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-03-25 
結審通知日 2002-04-02 
審決日 2002-04-15 
出願番号 特願平11-24010
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山岸 利治仁木 浩小谷 一郎  
特許庁審判長 船越 巧子
特許庁審判官 長屋 陽二郎
秋月 均
発明の名称 パッキン用編み糸  
代理人 鈴江 正二  
代理人 鈴江 孝一  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ