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審決分類 |
審判 全部無効 2項進歩性 無効としない G01R |
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管理番号 | 1062309 |
審判番号 | 審判1999-35315 |
総通号数 | 33 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1988-06-14 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 1999-06-22 |
確定日 | 2001-12-03 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第2077044号発明「実装基板検査位置生成装置および方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
1.手続の経緯・本件発明 本件特許第2077044号(昭和61年12月5日出願、平成7年12月20日出願公告特公平7-119780号、平成8年8月9日設定登録)の請求項1及び3に係る発明は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び3に記載された次のとおりのものである。(以下、「本件発明1」及び「本件発明2」という。) [請求項1](本件発明1) 部品が実装された実装基板を検査するための検査位置を生成する実装基板検査位置生成装置であって、 基板に対する前記実装される部品の装着位置を指定するための部品装着情報を記憶する第1の記憶手段と、 部品の種類毎に検査対象となり得る場所の相対位置データを含む部品情報を記憶する第2の記憶手段と、 前記第1の記憶手段に記憶される部品装着情報と前記第2の記憶手段に記憶される部品情報とから実装基板を検査するための検査位置を生成する検査位置生成手段とを備えることを特徴とする実装基板検査位置生成装置。 [請求項3](本件発明2) 部品が実装された実装基板を検査するための検査位置を生成する実装基板を検査するための検査位置を生成する実装基板検査位置生成方法であって、 基板に対する前記実装される部品の装着位置を指定するための部品装着情報と、部品の種類毎に検査対象となり得る場所の相対位置データを含む部品情報とから実装基板を検査するための検査位置を生成することを特徴とする実装基板検査位置生成方法。 2.請求人の主張 本件特許の特許請求の範囲第1項及び第3項に記載された発明は、その出願前国内または外国において頒布された甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、これに適用される平成5年改正前の特許法第123条第1項第1号の規定により無効とされるべきであると主張し、証拠方法として、甲第1号証(特開昭59-125469号公報)、甲第2号証(特開昭61-74398号公報)及び甲第3号証(DEC(Digital Equipment Corporation)TECHNICAL PAPER 1985 June p.MS85-534-1〜11(1986.06.26 特殊法人日本科学技術情報センター受け入れ))を提出している。 3.甲第1号証乃至甲第3号証に記載された発明 [甲第1号証] 甲第1号証には次の記載がある。 (ア)「この発明は、自動設計のための入力情報をできるだけ少なくしてそのための労力と時間の短縮を図り、入力誤りの発生をなくし、しかも装置の処理時間の短縮を達成することのできるプリント基板の自動設計装置を提供することを目的とする。」(第2頁右上欄第2〜7行) (イ)「ステップ(145)はこのような結線情報を作成するための処理である。この処理では部品ファイル(11)が参照される。 部品ファイル(11)内には、第7図に示すように、論理ゲートファイルと(IC)チップ・ファイルとがある。論理ゲート・ファイルは、各ゲートについて、出力端子の位置を基準として(座標(0,0))、出力端子と入力端子の位置の座標を表わしたものである。チップ・ファイルは、各ICについて、そこに内蔵されているゲート名、個数、ICの形名、ピン数、ピン種類等をストアしたものである。ここでOは出力端子を、Iは入力端子をそれぞれ表わしている。 まず、各ゲートのゲート位置エリヤにストアされている位置座標(基準点の座標、これは上述のように出力端子の位置を表わしている)にもとづいて、論理ゲート・ファイルを参照して、そのゲートの入力端子の座標が求められる。たとえば、2ANDゲート(G2)の基準点(B)の座標は(22,10)であるから、論理ゲート・ファイルを参照すると、この2ANDゲート(G2)の入力端子((D)、(E)点)の座標は(18,11)(18,9)となる。」(第5頁左上欄第9行から右上欄第20行) (ウ)「次にIC個数エリヤのデータにもとづいて、使用すべき必要数のICについての配置が行われる(ステップ(146))。配置方法には種々考えられるが、その一例が第9図に示されている。この例では各ICについて一定の大きさが仮想され、各IC間に一定の間隔をあけてそれぞれ配置されている。ICのピン数、配線パターン等を考慮して、各ICの基準ピン(第9図に黒点で示す、ICの1ピンである)の座標が決定される。例えば14ピンのICであれば、X軸方向は11ピッチ間隔、Y方向は7ピッチ間隔というように等間隔で配置される。ここで1ピッチはICのピン間隔である。配置が完了すると、部品ファイル(11)のチップ・ファイル(第7図)のピン種類のデータを参照して、入力ピンおよび出力ピンの座標が割付けられる。このようにして配置された全ICの配置座標はワーキング・エリヤの配線パターン・バッファにストアされる。」(第5頁左下欄第20行から第6頁左上欄第2行) [甲第2号証] 甲第2号証には次の記載がある。 (エ)「組立ロボットによる電子部品自動組立て方法」(発明の名称の項目) (オ)「印刷回路基板6の設計情報・・・に含まれる各電子部品の印刷回路基板6上の各位置データXp,Yp,αp,Zp,βpを読取って電子部品位置データメモリ20へ格納する。次に作業者によってキー入力された、動作位置データ作成のための周辺条件や補正値等の条件データを条件データメモリ21へ格納する。 各条件データの設定が終了すると、電子部品位置データメモリ20に格納された各位置データXp,Yp,αp,Zp,βpを読み出して座標変換式を用いて組立ロボット4の座標(Xr,Yr,Zr)系の各動作位置データXr,Yr,αr,Zr,βrへ変換して第7図の動作位置データメモリ22の該当領域へ格納する。」(第4頁右上欄第12行から左下欄第10行) (カ)「印刷回路基板6の座標(Xp,Yp)と組立ロボット4の座標(Xr,Yr)との傾斜角θを求めるために、二つの座標間で座標系の平行移動と回転の公式を応用すれば(5)および(6)式が求まる。 Xrs=Xr0+Xpscosθ-Ypssinθ ・・・(5) Yrs=Yr0+Xpssinθ+Ypscosθ ・・・(6) 」(第5頁右上欄第16行から左下欄第4行) 上記記載事項(エ)乃至(カ)から、甲第3号証には、組立ロボットにより電子部品を自動組み立てる際に、各電子部品の印刷回路基板6上の各位置データXp,Yp,αp,Zp,βpを読取って、座標変換式((5)及び(6))を用いて組立ロボット4の座標(Xr,Yr,Zr)系の各動作位置データXr,Yr,αr,Zr,βrへ変換することが記載されていると認められる。 [甲第3号証] 甲第3号証には、概ね次の記載がある。 (キ)「被検査印刷回路基板のロボットによるプロービング」(名称の項目) (ク)「[要約] ロボットは、電気的検査が行われている印刷回路基板上の接続パッドをプローブ(探針移動操作)することによって、検査位置を支援するために使用される。・・・ロボットは、次に、CADデータによって特定された基板上の位置に移動する。」(要約の項目、訳文第1頁第4〜7行) (ケ)「[検査装置自動プローブソフトウェア] ・・・ 例えば、プローブフラッグがセットされたときの、ロボット指令プログラムの流れは次のとおりである:エグゼクティブからプローブされるべき点を得る、X-Yデータベースにその部品のピンのX-Yデータを要求する、その後、プローブされる検査点のX-Yデータを含んだプローブ指令を発生する。」(MS85-534-5頁第8〜25行、訳文第4頁第3〜19行) (コ)「[CADデータ] このCADデータベースは、部品名、ピン番号、回路(ネットワーク)番号、部品上の各ピンに対するX-Y位置等のその部品特有の情報を含んでいる。このCADファイルは、事後処理(ポストプロセス)される。CADデータベース中の部品の全てが自動プロービングの候補となるわけではない:その部品実装基板データベースで分かっている特定の部品だけが候補として扱われる、特定された一組の部品がアクセスされると一つのファイルが生成される。 このファイルは、検査装置にX-Yデータベースを発生するために用いられる。部品実装基板X-Yデータベースが生成された後は、このデータベース中のCADデータは、検査プログラム制御のもとでアクセスされ、ノードに接触させるために、ロボットとコミュニケーションされる命令(コマンド)中にフォーマットされることができる。」(MS85-534-6頁第23〜37行、訳文第5頁第4〜16行) 上記記載事項(キ)乃至(コ)から、甲第3号証には、被検査印刷回路基板をロボットによりプロービング(探針移動操作)するために、CADデータを用いて、印刷回路基板上における、プローブを移動させるべき検査点のX-Yデータを生成することが記載されていると認められる。 4.本件発明1について [対比] 本件発明1と甲第3号証記載の発明とを対比する。 甲第3号証記載の「印刷回路基板」は本件発明1の「部品が実装された実装基板」に相当するものであり、また甲第3号証記載の「プローブを移動させるべき検査点のX-Yデータ」は本件発明1の「検査位置」に相当する。 そして、甲第3号証記載の発明が「プローブを移動させるべき検査点のX-Yデータを生成する」ものであるから、「検査位置生成手段」を有することは明らかである。 してみると、両者は次の一致点で一致し、相違点で相違する。 (一致点) 部品が実装された実装基板を検査するための検査位置を生成する実装基板検査位置生成装置であって、実装基板を検査するための検査位置を生成する検査位置生成手段を備える実装基板検査位置生成装置。 (相違点) 本件発明1においては、「基板に対する実装される部品の装着位置を指定するための部品装着情報を記憶する第1の記憶手段」及び「部品の種類毎に検査対象となり得る場所の相対位置データを含む部品情報を記憶する第2の記憶手段」を有しており、検査位置生成手段が「第1の記憶手段に記憶される部品装着情報と第2の記憶手段に記憶される部品情報とから」検査位置を生成するのに対して、甲第3号証には、「基板に対する実装される部品の装着位置を指定するための部品装着情報を記憶する第1の記憶手段」及び「部品の種類毎に検査対象となり得る場所の相対位置データを含む部品情報を記憶する第2の記憶手段」は明記されておらず、検査位置生成手段が「第1の記憶手段に記憶される部品装着情報と第2の記憶手段に記憶される部品情報とから」検査位置を生成することも記載されていない点。 なお、甲第3号証に、検査位置を生成するための具体的構成が記載されていないことについては、請求人も第二弁駁書で「甲第3号証には、「被検査印刷回路基板のロボットによるプロービング」と題する記事において、上に摘記したように、本件第2特許発明の構成「a部品が実装された実装基板を検査するための検査位置を生成する実装基板検査位置生成方法」に相当する「プローブされる検査点(ノード)のX-Yデータを含んだプローブ指令を発生する」ことが記載され、また、「このCADデータベースは、部品名、ピン番号、回路(ネットワーク)番号、部品の各ピンに対するX-Y位置等のその部品特有の情報を含んでいる。」と記載され、「相対位置」を窺わせる記載はあるが、被検査印刷回路基板の検査対象となる場所をプローブ(探針移動操作)するためのX-Y座標を得る方法については具体的かつ明確に説明されていない。」(第二弁駁書第6頁第5〜14行)と記載している。 [相違点の検討] 請求人は、第二弁駁書において、上記相違点は甲第1号証及び甲第2号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであると主張しているので、先ずこの点について検討する。 甲第1号証の上記記載事項(イ)によれば、各ゲート(NANDゲートなど)について、出力端子の位置を基準として(座標(0,0))、出力端子と入力端子の位置の座標を表した論理ゲート・ファイルをあらかじめ記憶しておき、次に各ゲートのゲート位置エリヤにストアされている位置座標にもとづいて、論理ゲート・ファイルを参照して、そのゲートの入力端子の座標を求めることが記載されている。しかし、記載事項(イ)は、第6図に記載されているような回路図においてどの配線がどのゲートの入力と出力とを結ぶのかというような配線情報を作成するための処理について記載しているものであって、論理ゲート・ファイルに記憶されている座標は、基板に実装される実際の部品の端子の座標ではなく、回路図上の電気素子であるゲートの端子の座標を記憶するものであり、また、各ゲートのゲート位置エリヤにストアされている位置座標も、基板に実装される部品の実際の装着位置を指定するものではなく、回路図上のゲートの位置を指定するものである。したがって、記載事項(イ)には、基板に対する実装される部品の装着位置を指定するための部品装着情報を記憶することも、部品の種類毎に端子の相対位置データを含む部品情報を記憶することも、また、部品装着情報と部品情報とから基板上の端子等の位置を生成することも記載若しくは示唆されていない。そして、抽象化された回路図と実装基板上の実際の検査位置とは共通するものではないから、回路図上の技術を実装基板上の検査位置に用いることが容易とはいえず、したがって、上記記載事項(イ)から上記相違点が容易であるとすることはできない。 また、甲第1号証の上記記載事項(ウ)によれば、あらかじめチップ・ファイルを記憶しておき、各ICの基準ピンの座標を決定して各ICを配置し、次に部品ファイル(11)のチップ・ファイルのピン種類のデータを参照して、入力ピンおよび出力ピンの座標を割付けることが記載されている。しかし、甲第1号証記載のチップ・ファイルは、第7図の「ピン種類」の項目に「O(3)I(1)I(2)」などと記載されているように、何番ピンが入力端子か出力端子かを記憶しているものであって、端子の場所の相対位置データを含むものではない。したがって、部品の種類毎に端子の場所の相対位置データを含む部品情報を記憶し、この部品情報から実装基板上の端子の位置を生成することは記載若しくは示唆されていないから、記載事項(ウ)から上記相違点が容易であるとすることもできない。 次に、甲第2号証には、組立ロボットにより電子部品を自動組み立てる際に、各電子部品の印刷回路基板6上の各位置データXp,Yp,αp,Zp,βpを読取って、座標変換式を用いて組立ロボット4の座標(Xr,Yr,Zr)系の各動作位置データXr,Yr,αr,Zr,βrへ変換することが記載されているが、部品の種類毎に端子の場所の相対位置データを含む部品情報を記憶することも、部品装着情報と部品情報とから実装基板上の端子の位置を生成することも記載若しくは示唆されていないので、甲第2号証記載の発明から上記相違点が容易であるとすることもできない。 したがって、甲第1号証及び甲第2号証記載の発明から、甲第3号証記載の発明において、「基板に対する前記実装される部品の装着位置を指定するための部品装着情報を記憶する第1の記憶手段」及び「部品の種類毎に検査対象となり得る場所の相対位置データを含む部品情報を記憶する第2の記憶手段」を設け、検査位置生成手段により「前記第1の記憶手段に記憶される部品装着情報と前記第2の記憶手段に記憶される部品情報とから」検査位置を生成することを当業者が容易に想到し得たとすることはできない。 次に、請求人は、審判請求書や口頭審理陳述要領書で、本件発明1は甲第1号証記載の発明を基本にして当業者が容易に発明をすることができたものである旨を主張しているので、この点について検討する。 甲第1号証記載の発明はそもそも「プリント基板自動設計装置」に関するものであって、本件発明の「実装基板検査位置生成装置および方法」に関するものではない。 また、先に検討したように、甲第1号証の記載事項(イ)は、回路図上の素子に関するものであって、基板に実装される実際の部品に関するものではなく、また、記載事項(ウ)には、部品の種類毎に端子の場所の相対位置データを含む部品情報を記憶することは記載されていない。 したがって、甲第1号証記載の発明を基本にしても本件発明1を当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。 [まとめ] したがって、本件発明1は甲第1号証乃至甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。 5.本件発明2について [対比] 甲第3号証記載の発明と本件発明2とを対比すると、上記「4.本件発明1について[対比]」で検討した事項から、両者は次の一致点で一致し、相違点で相違する。 (一致点) 部品が実装された実装基板を検査するための検査位置を生成する実装基板検査位置生成方法。 (相違点) 本件発明2が、「基板に対する実装される部品の装着位置を指定するための部品装着情報と、部品の種類毎に検査対象となり得る場所の相対位置データを含む部品情報とから」実装基板を検査するための検査位置を生成するのに対して、甲第3号証記載の発明が、「基板に対する実装される部品の装着位置を指定するための部品装着情報と、部品の種類毎に検査対象となり得る場所の相対位置データを含む部品情報とから」という構成を備えていない点。 [相違点の検討] 上記「4.本件発明1について[相違点の検討]」で検討したのと同様の理由で、甲第3号証記載の発明において、「基板に対する実装される部品の装着位置を指定するための部品装着情報と、部品の種類毎に検査対象となり得る場所の相対位置データを含む部品情報とから」実装基板を検査するための検査位置を生成することを当業者が容易に想到し得たとすることはできない。 したがって、本件発明2も甲第1号証乃至甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。 6.むすび 以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件特許の請求項1及び3に係る発明の特許を無効とすることはできない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2001-10-05 |
結審通知日 | 2001-10-11 |
審決日 | 2001-10-23 |
出願番号 | 特願昭61-290790 |
審決分類 |
P
1
112・
121-
Y
(G01R)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 村田 尚英 |
特許庁審判長 |
高瀬 浩一 |
特許庁審判官 |
高橋 泰史 平井 良憲 |
登録日 | 1996-08-09 |
登録番号 | 特許第2077044号(P2077044) |
発明の名称 | 実装基板検査位置生成装置および方法 |
代理人 | 井上 正 |
代理人 | 浜野 哲郎 |
代理人 | 岡田 春夫 |
代理人 | 牛久 健司 |