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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B42D
管理番号 1063923
審判番号 不服2000-16674  
総通号数 34 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-12-15 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-10-19 
確定日 2002-08-29 
事件の表示 平成 9年特許願第139986号「半導体装置及びその製造方法」拒絶査定に対する審判事件[平成10年12月15日出願公開、特開平10-329461]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は、平成9年5月29日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成12年8月24日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの次のものである。
「【請求項1】リードフレームの主面に半導体素子を搭載し樹脂封止してパッケージを形成するとともに、前記リードフレームの反対面を露出させる半導体装置において、前記半導体素子を搭載するアイランドおよび前記アイランドの周囲に形成される複数のリードのそれぞれの外周端部の一部に且つ封止する樹脂と接触する位置に形成した凸型フック形状のアンカー部を有し、前記アンカー部を前記リードフレームの主面側に折り曲げたことを特徴とする半導体装置。」
なお、平成12年11月7日付け手続補正は同日付けで却下された。
2.引用例の記載
これに対し、原査定の拒絶の理由に引用した特許第2604340号公報(以下「引用例1」という。)、特開平7-147374号公報(以下「引用例2」という。)には、下記の事項が記載されている。
(引用例1)
「本発明は、接続導体を有するリードフレームを用意し、絶縁材料でマイクロモジュールの形を画成する型を使用して、リードフレーム上に絶縁材料を被せるようにモールドし(すなわち、リードフレーム上に絶縁材料をモールドするかまたはリードフレームと一緒に絶縁材料をモールドし)、そのとき、(a)リードフレームの導体の間の開口を絶縁材料で埋め、(b)コンタクト領域を除くリードフレームの第1の面の領域を絶縁材料で覆い、(c)絶縁材料の壁部が、コンタクト領域を囲む凹所を画成するようにし、集積回路チップを凹所内において、アクセス可能なコンタクト領域と電気的に接続し、ついで、凹所を保護材料で満たす工程からなる集積回路を封止する方法を提案する。好ましくは、リードフレームの第2の面は、ICカードの場合には特に、完全に裸のままにする。
」(第4欄第11行〜第29行)
「更に図面からわかるように、絶縁材料20をリードフレーム10に固定する手段が設けられている。この固定手段の一つはタペット26である。このタペット26は、リードフレームの絶縁材料が置かれる面から絶縁材料中に突き出すように上方に折り曲げられたリードフレームの一部で構成されている。固定手段のもう1つは、望ましい固定点に位置するリードフレームの一部の導体の縁の斜面である。リードフレームの面に対して直角に縁を切り出す代わりにリードフレームの一部の導体を斜めに切り出す。そして、互いに隣接する2つの導体ごとに、その斜面を反対向きにすることも可能である。この方法により、参照番号28で示すような固定点は、台形の断面を有する導体間開口で構成され、その台形断面の長辺側はリードフレーム背面側に位置する。このような開口に樹脂を充填すれば、樹脂を引き抜くことはできず、従って、絶縁材料20のリードフレームに対する優れた固定手段を実現する。
」(第6欄第19行〜第35行)
「プラスチック材料すなわち絶縁材料20を注入して冷却した後、リードフレームをモールド(型)から外すと、絶縁材料20で覆われたリードフレームが得られる。次いで、集積回路チップを領域14にボンディングし、接続ワイヤを領域18と集積回路チップのコンタクト領域との間に半田付けする。そして、壁22により画成される凹所に保護用樹脂を充填して、マイクロモジュールは完成する。」(第7欄第32行〜第39行)
上記記載によれば、引用例1には、リードフレームの主面に集積回路チップ12を搭載し樹脂封止して、パッケージを形成するとともに、前記リードフレームの反対面を露出させる半導体装置において、前記集積回路チップ12を搭載するリードフレームの領域のタペット26及びリードフレームの一部の導体の縁に形成された斜面を有する半導体装置が記載されている。
(引用例2)
「【0011】本発明の目的は、一般的な半導体装置に関して、ダイボンディング剤の剥離に伴う界面膨張が原因となる新しいメカニズムのリフロークラックの発生を防止することである。」
「【0014】
【実施例】本発明の第1の実施例である半導体装置6を図1から図4に示す。図1は半導体装置6を形成するのに用いるリードフレーム1の部分平面図である。図2は図1におけるII-II線矢視のフックリード15近傍の断面図である。図3は半導体装置6の、封止用樹脂5を除いた状態のフックリード15近傍の部分斜視図である。ただし、簡単にするため金(以下、Auという)ワイヤ3、リード13ほかは省略してある。図4は同実施例の半導体装置6の、図3におけるIV-IV線矢視断面に封止用樹脂5とリード13を含んだフックリード15近傍の部分断面図である。
【0015】本実施例の半導体装置6は、半導体素子2と、厚さが0.15〜0.2mmの方形状の面内に半導体素子2がダイボンディング剤4を介して搭載されたタブ11と、前記半導体素子2の電極21とAuワイヤ3を介して接続されたリード13と、前記タブ11の四辺のそれぞれの中央部11Dから突出され前記タブ11と同一平面をなしている突出部15Aの平面幅より広い平面幅の先端部15Bが矩形状をし前記突出部15Aの途中で半導体素子2が搭載された面の方向に折り曲げられたフックリード15と、これらを封止している封止用樹脂5と、を含んで構成されている。
【0016】前記半導体装置6が封止用樹脂5で封止された後除かれるものには、前記タブ11の四隅に接続され前記タブ11の欠落を防止するタブ吊りリード12と、前記リード13を前記タブ11の四辺に向けて形成し封止用樹脂5の流出を防ぐタイバー16と、該タイバー16の周囲を支持しているリードフレーム1がある。
【0017】上記構成の半導体装置6とすれば、図3に示すように、前記フックリード15は、その先端部15Bの有効断面積18(AH2)が、その突出部15A近傍の有効断面積17(AH1)よりも大きくなっており、かつ、前記フックリード15を、該フックリード15とタブ11の接続面に対して垂直に投影したとき、その投影面積が前記フックリード15とタブ11の接続面の面積より大きくなっている。さらに、図4に示すように、半導体装置の半導体素子の回路形成面に対して垂直をなす厚さ方向の1次元の位置関係を示す補助線SL1において、タブ上面11Cとフックリードの先端部15Bとの間にダイボンディング剤4が位置している。これらの条件により、リフロー時にダイボンディング剤4の界面が剥離しても、前記有効断面積AH1とAH2との差によって形成される図3に示すフック部15Cが、図4における封止用樹脂5のタブ上面11Cに対する相対変位を機械的に拘束することにより、同界面の膨張が抑制され、封止用樹脂5のクラック進展方向の変形が効果的に低減される。
【0018】なおフックリード15の実質的な折り曲げ角θBは、その目的を達成するために最適化されるべきであるが、それはリフロー条件や封止用樹脂5の吸湿状態などにより進展角が変化するクラックを対象とするため、とくに厳密に限定されるものではない。しかし一般的には折り曲げ角が前記タブの下面を基準線とし、これに対して30度から150度とすることが望ましい。」
「【0022】本発明の第4の実施例である半導体装置6のタブ11のフックリード15近傍の部分を図11から図13に示す。本実施例の前記半導体装置6の構成は、フックリード15の形状を除いて、第1の実施例と同様である。図11は半導体素子2を載せる面側からみたタブ11のフックリード15近傍の平面図であり、図12及び図13は半導体装置の、封止用樹脂5を除いた状態のフックリード15近傍の部分斜視図である。本実施例では第1の実施例と異なり、フックリード15が、図12の例では前記タブ11と同一平面をなしている突出部15Aの幅が先端部15Bに向かって拡大しているものと、図13の例では、突出部15Aの幅と厚さが先端部15Bに向かって共に拡大しているものであり、いずれも前記突出部15Aの途中で半導体素子2が搭載された面の方向に折り曲げられた形状をしている。フックリード15の形状をこのように形成しても、図12及び図13に示すように第1の実施例で述べた条件は満足していることから、同様の効果を得ることができる。さらに、図13の例ではフックリード15の先端部15Bの有効断面積18(AH2)から突出部15Aの有効断面積17(AH1)を引いた面積差が増大するので、これまでの例と同等以上の効果を得ることができる。」
3.対比・判断
本願の請求項1に係る発明(以下「前者」という。)と上記引用例1に記載の発明(以下「後者」という。)を比較する。
両者は、いずれも半導体装置であって、
後者の「集積回路チップ12」、「集積回路チップ12を搭載するリードフレームの領域」は、それぞれ前者の「半導体素子」、「アイランド」に対応しており、
後者の「タペット26」は、リードフレームの絶縁材料が置かれる面から絶縁材料中に突き出すように上方に折り曲げられたリードフレームの一部で構成されており、前者の「半導体素子を搭載するアイランドに且つ封止する樹脂と接触する位置にフック形状のアンカー部」に対応し、しかも、「前記アンカー部を前記リードフレームの主面側に折り曲げた」点でも対応する。
両者は、リードフレームの主面に半導体素子を搭載し樹脂封止してパッケージを形成するとともに、前記リードフレームの反対面を露出させる半導体装置において、前記半導体素子を搭載するアイランドに且つ封止する樹脂と接触する位置にアンカー部を有し、前記アンカー部を前記リードフレームの主面側に折り曲げたことを特徴とする半導体装置である点で一致し、
(1)アンカー部が、前者は、凸型フック形状であるのに対し、
後者は、そのような形状ではない点、
(2)前者は、前記アイランドの周囲に形成される複数のリードのそれぞれの外周端部の一部に凸型フック形状のアンカー部を有し、前記アンカー部を前記リードフレームの主面側に折り曲げるのに対し、
後者は、リードフレームの一部の導体の縁に形成された斜面を有する点で相違している。
次に、上記相違点について検討する。
相違点(1)について
引用例2には、半導体素子2が搭載されたタブ11と、前記タブ11と同一平面をなしているフックリード15の突出部15Aの平面幅より広い平面幅の先端部15Bが矩形状をし、又は突出部15Aの幅が先端部15Bに向かって拡大している形状と、突出部15Aの幅と厚さが先端部15Bに向かって共に拡大している形状をしており、いずれも前記突出部15Aの途中で半導体素子2が搭載された面の方向に折り曲げられた形状をし、その先端部15Bの封止用樹脂との接触面積を大きくすることが記載されている。
このような先端部15Bの形状は、前者の「凸型フック形状」に相当している。
そうすると、このようなフックリード15の先端部15Bの形状を後者に適用して、アンカー部を、凸型フック形状にすることは当業者が容易になし得ることである。
相違点(2)について
引用例1には、「固定手段のもう1つは、望ましい固定点に位置するリードフレームの一部の導体の縁の斜面である。リードフレームの面に対して直角に縁を切り出す代わりにリードフレームの一部の導体を斜めに切り出す。そして、互いに隣接する2つの導体ごとに、その斜面を反対向きにすることも可能である。この方法により、参照番号28で示すような固定点は、台形の断面を有する導体間開口で構成され、その台形断面の長辺側はリードフレーム背面側に位置する。このような開口に樹脂を充填すれば、樹脂を引き抜くことはできず、従って、絶縁材料20のリードフレームに対する優れた固定手段を実現する。」と記載され、リードフレームを樹脂により固定するための手段として、リードフレームの一部の導体を斜めに切り出すようにしたものが示されている。
また、当業者にとって周知な実願昭56-99171号(実開昭58-7353号)のマイクロフィルムには、ICチップを搭載するベットの周囲に形成される複数のリード封止する樹脂と接触する位置にリード並び方向の両側部に突出された突出部4aを有することにより、樹脂との密着性を向上させた半導体装置が記載されている。
このように、リードフレームの並び方向の両側部に突出部を設けて樹脂との密着性を向上させることが周知であるから、後者において、上記リードフレームに形成された斜面による固定手段の代わりに、引用例2に記載されるフックリード15の先端部15Bの形状を採用して、前記アイランドの周囲に形成される複数のリードのそれぞれの外周端部の一部に凸型フック形状のアンカー部を設け、前記アンカー部を前記リードフレームの主面側に折り曲げるようにすることは当業者が容易に推考し得ることである。
なお、請求人は、請求の理由において、「チップ12を封止する部材は保護樹脂24であり、この保護樹脂24はコンタクト領域18と、チップ12の搭載面外周部とで、リードフレーム10に接触しています。したがって、保護樹脂24とアイランドや複数のリード部との機械的接合強度(垂直、水平方向とも)を補償するものが引用文献1では無いため、別部材としての絶縁材料20が必要不可欠であり、しかもその絶縁材料20に壁22を形成したり、リードフレーム10のリード部にテーパ状固定部28を形成することが不可欠です。」と主張している。
しかしながら、引用例1の半導体装置も、リードフレームの主面に集積回路チップ12を搭載し、そのリードフレームの主面はプラスチック材料すなわち絶縁材料20と保護用樹脂とで覆われており、これらは樹脂であるから、本願発明と同様に、リードフレームの主面に半導体素子を搭載し樹脂封止しているということができるので、この主張を採用できない。
また、本願発明の効果についてみても、上記事項の採用に伴って当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものがあるとは認められない。
4.むすび
以上のとおりであって、本願の請求項1に係る発明は、上記引用例1、2に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-06-18 
結審通知日 2002-06-25 
審決日 2002-07-12 
出願番号 特願平9-139986
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B42D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 前田 仁  
特許庁審判長 馬場 清
特許庁審判官 井関 守三
橋本 正弘
発明の名称 半導体装置及びその製造方法  
代理人 河合 信明  
代理人 福田 修一  
代理人 京本 直樹  

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