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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06K
管理番号 1063993
審判番号 不服2000-15405  
総通号数 34 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-08-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-09-28 
確定日 2002-08-28 
事件の表示 平成 5年特許願第 45939号「運転免許証装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 6年 8月23日出願公開、特開平 6-234292]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は、平成5年2月10日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成12年10月30日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものである。
「【請求項1】名前、本籍地、現住所、生年月日を第1データとして内蔵したメモリと、免許の種類、免許取得年月日、有効期限を第2データとして内蔵したメモリと、免停、その他の運転の可否を第3データとして内蔵したメモリと、違反歴、事故歴、再交付、住所変更を第4データとして内蔵したメモリと、暗証番号等パスワードを第5データとして内蔵したメモリと、有効期間内累積走行距離の距離積算記録および最高速度の記録等運行記録手段を内蔵したマイコンとを備えた運転免許証と、
当該運転免許証から第1〜第5データを読み出す手段、同運転免許証に有効期間内累積走行距離の距離記録および最高速度の記録等運行記録を追加書き込みする手段を備えた車内用A装置と、
有効期間内累積走行距離の距離記録および最高速度の記録等運行記録を上記運転免許証から読み出す手段、第1〜第5データを同運転免許証に訂正・追加書き込みする手段および同運転免許証から得たデータを他の公的機関、検問用端末機等に出す手段を備えた警察署、公安委員会等公的機関用B装置と、
から成る運転免許証装置。」
2.引用例の記載
これに対し、原査定の拒絶の理由に引用した特開昭62-11694号公報(以下「引用例1」という。)、実願昭61-146579号(実開昭63-51852号)のマイクロフィルム(以下「引用例2」という。)、実願昭60-64426号(実開昭61-180759号)のマイクロフィルム(以下「引用例3」という。)には、下記の事項が記載されている。
(引用例1)
「第1図はこの発明の一実施例に係わる車両運転免許カード装置に使用する運転免許用ICカード1を示す図である。この運転免許用ICカード1は、・・・EPROM等からなる多くの記憶容量を有するメモリおよびこのメモリを制御するマイクロコンピュータ等を構成している集積回路をカード内に埋め込んでいるものである。このICカード1は、・・・運転者の写真3がカードの表面にプリントまたは貼着されているとともに、外部装置と接続し、種々の情報を外部装置から前記集積回路メモリに入力して記憶し、また該メモリに記憶された情報を外部装置からアクセスして読み出すための複数の接点5を有している。
このように集積回路メモリに記憶される情報は、第2図(b)に示すように、資格を与えられている運転免許の種類、有効期限、氏名、生年月日、違反情報等のような運転者の運転免許および交通違反等に関する各種情報である。」(第2頁右上欄第1行〜左下欄第2行)
「第4図はこの発明の他の実施例に係わる車両運転免許カード装置のブロック図である。同図の車両運転免許カード装置は、第1図に示すものと同じ運転免許用ICカード1を使用するものである。この車両免許用ICカード装置は、車両内に設けられて使用され、運転免許用ICカード1の所有者が予め登録した特定の暗証番号をキー入力した時のみ車両のエンジンを始動し得るように制御するものである。具体的には、運転免許用ICカード1を読み取るICカード読取装置9と、このICカード読取装置9に接続され、ICカード1の記憶されている情報等を表示する表示装置11と、例えば暗証番号等やその他の情報を入力するキー入力装置13と、ICカード読取装置9からのエンジン始動許可指令信号に応じて回路を形成するエンジン始動許可回路15と、バッテリ17と、車両用のその他の電気回路19とエンジンキー21とから構成されている。」(第2頁右下欄8行〜第3頁左上欄第5行)
「第5図は公安委員会または警察官等が有しているICカード読取及び書込装置23を示しているものである。このICカード読取及び書込装置23にICカード1を挿入することにより記憶されている情報をチェックすることができる。これにより運転者の運転免許情報や交通違反情報も詳細に知ることができるし、更に公安委員会における免許の更新、発行時、または運転者が交通違反した時にはこのICカード読取及び書込装置23によって関連する情報を運転免許用カードIC1に書き込むこともできるのである。」(第3頁右上欄第13行〜左下欄第3行)
「この運転免許用カードの免許証不携帯の場合は車両を運転できないことは勿論のこと無免許運転者も車両を運転することはできないし、他の運転資格を必要とする車種の車両も運転することができなくなるため、交通違反を減少させ、交通の安全を向上することができるとともに、更に車両の盗難も防止できるし、また交通違反等に関する詳細な情報も簡単に記録しチェックすることができるし、運転免許証を書き替え忘れた場合の無免許運転も防止することができる。」(第3頁右下欄第10行〜第20行)
以上の記載によれば、引用例1には、名前、生年月日、免許の種類、有効期限、違反情報等のような運転者の運転免許及び交通違反等に関する各種情報が記憶されたメモリと、このメモリには種々の情報を外部装置から入力して記憶でき、このメモリを制御するマイクロコンピュータを備えた運転免許用ICカード1と、
運転免許用ICカード1を読み取るICカード読取装置9と、その他の情報を入力するキー入力装置13を備えた車内装置と、
ICカード読取及び書込装置23を備えた公安委員会又は警察官等が有する装置と、
からなる車両運転免許カード装置が記載されている。
(引用例2)
「本考案は速度の出し過ぎが原因で生ずる死亡者を確実に少なくするのが最大の目的として現在の免許証に液晶板によるデジタル表示で運転走行数と走行中の速度を記録表示し、必要な場合何時でも読み取る事が出来るようにしたのである。」(明細書第2頁第8行〜第13行)
「平均走行速度、或いは最高速度を記録表示するのである。」(明細書第3頁第6,7行)
「次に走行数の記録表示ですが走行数10米如に第7図のように(3)の部分に加算記録表示されます。」(明細書第4頁第15行〜第17行)
「この免許証は自動車を運転するたびに自動車本体に有する発信器に差し込んで使用するのであるが、有効に解決出来ることは、現在3ケ年更新時に免許証に記録されている走行数を数段階に区分し、走行数の多い者は無事故、無違反であることが条件に更新講習なく新免許証の交付を受けられるようにする。また走行数の少ない者は法規定に実技講習を定められた時間数有料で受けるようにする。また無事故、無違反者表彰は走行数によって実施し、ペーパードライバー等は対象外とする。」(明細書第5頁第7行〜第17行)
(引用例3)
「第1図(A)(B)はこの考案の一実施例を示す平面図、側面図である。
図中(5)は、台紙(1)上に固定され、各種の運転免許情報が電気的に記録されたICカードである。このICカードに記録される運転免許情報としては免許証番号、暗証番号、運転免許者の氏名、住所、運転免許の交付年月日、有効期限等である。」(明細書第3頁第5行〜第11行)
3.対比・判断
本願の請求項1に係る発明(以下「前者」という。)と上記引用例1に記載の発明(以下「後者」という。)を比較する。
両者は、いずれも運転免許証装置であって、
後者の「メモリ」、「マイクロコンピュータ」、「運転免許用ICカード1」は、それぞれ前者の「メモリ」、「マイコン」、「運転免許証」に対応している。
後者の「名前」、「生年月日」は前者の「第1データ」に、後者の「免許の種類」、「有効期限」は前者の「第2データ」に、後者の「交通違反」は前者の「第4データ」に対応している。
後者の「車内装置」は前者の「車内用A装置」に対応し、後者の「運転免許用ICカード1を読み取るICカード読取装置9」、「キー入力装置13」は、それぞれ前者の「当該運転免許証から第1〜第5データを読み出す手段」、「追加書き込みする手段」に対応している。
後者の「警察官等」は警察署も含むから、後者の「公安委員会又は警察官等が有する装置」は、前者の「警察署、公安委員会等公的機関用B装置」に対応し、後者の「ICカード読取及び書込装置23」は、前者の「上記運転免許証から読み出す手段、第1〜第5データを同運転免許証に訂正・追加書き込みする手段」に対応している。
したがって、両者は、名前、生年月日を第1データとして内蔵したメモリと、免許の種類、有効期限を第2データとして内蔵したメモリと、違反歴を第4データとして内蔵したメモリと、マイコンとを備えた運転免許証と、
当該運転免許証から各データを読み出す手段、追加書き込みする手段を備えた車内用A装置と、
上記運転免許証から読み出す手段と、各データを同運転免許証に訂正・追加書き込みする手段を備えた警察署、公安委員会等公的機関用B装置と、
から成る運転免許証装置である点で一致し、
(1)第1データとして、前者は、本籍地、現住所を有するのに対し、後者は、それらを有していない点、
(2)第2データとして、前者は、免許取得年月日を有するのに対し、後者は、それを有していない点、
(3)第3データとして、前者は、免停、その他の運転の可否を有するのに対し、後者は、それらを有していない点、
(4)第4データとして、前者は、事故歴、再交付、住所変更を有するのに対し、後者は、それらを有していない点、
(5)第5データとして、前者は、暗証番号等パスワードを有するのに対し、後者は、それを有していない点、
(6)前者は、マイコンには、有効期間内累積走行距離の距離積算記録および最高速度の記録等運行記録手段を内蔵しており、車内用A装置により同運転免許証に有効期間内累積走行距離の距離記録および最高速度の記録等運行記録を追加書き込みするのに対し、後者は、それらのことが記載されていない点、
(7)上記運転免許証から読み出す手段が、前者は、有効期間内累積走行距離の距離記録および最高速度の記録等運行記録を読み出すのに対し、後者は、それらを読み出すことはない点、
(8)警察署、公安委員会等公的機関用B装置が、前者は、同運転免許証から得たデータを他の公的機関、検問用端末機等に出す手段を備えているのに対し、後者は、その手段を備えていない点で相違している。
次に、上記相違点について検討する。
相違点(1)について
運転免許証では、本人を特定するのに名前、生年月日の他に本籍地、現住所を用いることは実施されていることにすぎないから、第1データとして、本籍地、現住所も加えることに格別発明力を要するとすることはできない。
相違点(2)について
運転免許情報として、免許取得年月日は通常記載されているものであり、第2データとして、免許取得年月日も加えることに格別発明力を要するとすることはできない。
相違点(3)について
後者には、「違反情報等のような運転者の運転免許及び交通違反等に関する各種情報」と記載され、この「運転者の運転免許に関する各種情報」という記載に基づいて、免停、その他の運転の可否という情報は、当業者が容易に首肯し得ることであり、第3データとしてかかる情報をメモリに記憶するようにすることに格別発明力を要するとすることはできない。
相違点(4)について
後者には、「違反情報等のような運転者の運転免許及び交通違反等に関する各種情報」と記載され、この記載に基づいて、事故歴、再交付という情報は、当業者が容易に首肯し得ることであり、また相違点(1)で検討したように運転免許証に現住所が記載されていれば、住所変更した時にはそれを変更しなければならないことは当然のことであり、第4データとしてかかる情報をメモリに記憶するようにすることに格別発明力を要するとすることはできない。
相違点(5)について
引用例3には、運転免許用ICカードに暗証番号を記録することが記載されているから、後者において、第5データとして、暗証番号等パスワードをメモリに記憶するようにすることに格別発明力を要するとすることはできない。
相違点(6)について
引用例2の上記記載によれば、運転免許証に、その有効期間内の最高速度と走行距離数を記録表示することが読み取れるから、後者においても、同運転免許証に有効期間内累積走行距離の距離記録および最高速度の記録等運行記録を追加書き込みするようにすることは当業者が容易に推考し得ることである。
相違点(7)について
後者には、公安委員会又は警察官等が有する装置は、ICカード読取及び書込装置23を備えており、相違点(6)で検討したように、運転免許証に有効期間内累積走行距離の距離記録および最高速度の記録等運行記録が記載されていれば、後者において、それらの記録を読み出せるようにすることは当然のことである。
相違点(8)について
後者において、公安委員会又は警察官等が有する装置は、ICカード読取及び書込装置23を備えており、運転免許用ICカード1から読み取ったデータを検問に利用しようとすることは通常思考することであり、またそのデータを他の公的機関で利用しようとすることも適宜思考することにすぎない。そうすると、後者において、警察署、公安委員会等公的機関用B装置に、同運転免許証から得たデータを他の公的機関、検問用端末機等に出す手段を備えるようにすることは当業者が容易になし得ることである。
また、本願発明の効果についてみても、上記事項の採用に伴って当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものがあるとは認められない。
4.むすび
以上のとおりであって、本願の請求項1に係る発明は、上記引用例1〜3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-06-13 
結審通知日 2002-06-18 
審決日 2002-07-04 
出願番号 特願平5-45939
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 櫻井 茂行前田 仁相崎 裕恒多賀 実  
特許庁審判長 馬場 清
特許庁審判官 吉岡 浩
橋本 正弘
発明の名称 運転免許証装置  
代理人 杉山 泰三  

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