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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C04B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C04B
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C04B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C04B
管理番号 1064299
異議申立番号 異議2001-71337  
総通号数 34 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2000-09-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-05-07 
確定日 2002-06-15 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3106160号「窒化アルミニウム焼結体及びその製造方法」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3106160号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3106160号の請求項1〜3に係る発明は、平成11年3月11日に特許出願され、平成12年9月8日に特許の設定登録がなされたものである。
その後、請求項1〜3に対して特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、指定期間内に訂正請求がなされたものである。
2.訂正の適否についての判断
ア.訂正の内容
A)特許請求の範囲の請求項1〜3
「【請求項1】窒化アルミニウム粉末に希土類酸化物を混合して1800℃以上の温度で焼結し、焼結体を3℃/分以下の冷却速度で冷却することを特徴とする窒化アルミニウム焼結体の製造方法。
【請求項2】前記希土類酸化物はアルミナと共に混合され、前記焼結の温度は1900℃であり,焼結体の冷却速度は2℃/分である請求項1記載の窒化アルミニウム焼結体の製造方法。
【請求項3】請求項1又は2に記載の製造方法によって製造され、希土類元素-アルミニウム-酸素化合物の針状又は柱状組織の粒界相を全体に対して8.6容積%の割合で有し、前記希土類元素がイットリウムである窒化アルミニウム焼結体。」を
「【請求項1】窒化アルミニウム粉末にイットリアをアルミナと共に混合して1800℃以上の温度で焼結し、焼結体を3℃/分以下の冷却速度で冷却する窒化アルミニウム焼結体の製造方法であって、前記イットリア及びアルミナは、窒化アルミニウム焼結体全体に対するイットリウムーアルミニウムー酸素化合物の粒界相の割合が8.6容積%となりイットリア/アルミナ比がモル比で0.94であるように前記窒化アルミニウム粉末に混合されることを特徴とする窒化アルミニウム焼結体の製造方法。
【請求項2】前記焼結の温度は1900℃であり、焼結体の冷却速度は2℃/分である請求項1記載の窒化アルミニウム焼結体の製造方法。
【請求項3】請求項1又は2に記載の製造方法によって製造され、窒化アルミニウム粒界に、Al2Y4O9及びAlYO3からなる柱状粒子が析出した窒化アルミニウム焼結体。」と訂正する。
B)明細書段落番号【0005】の
「【課題を解決するための手段】
本発明に係る窒化アルミニウム焼結体は、希土類元素ーアルミニウム-酸素化合物の針状又は柱状組織の粒界相を有する。」を、
「【課題を解決するための手段】
本発明に係る窒化アルミニウム焼結体は、窒化アルミニウム粒界に、Al2Y4O9及びAlYO3からなる柱状粒子が析出した窒化アルミニウム焼結体である。」
と訂正し、明細書段落番号【0006】の記載を削除し、明細書段落番号【0007】の
「又、本発明に係る窒化アルミニウム焼結体の製造方法は、窒化アルミニウム粉末に希土類酸化物を混合して焼結し、焼結体を10℃/分未満の冷却速度で冷却するものである。」を、
「又、本発明に係る窒化アルミニウム焼結体の製造方法は、窒化アルミニウム粉末にイットリアをアルミナと共に混合して焼結し、焼結体を3℃/分以下の冷却速度で冷却するもので、前記イットリア及びアルミナは、窒化アルミニウム焼結体全体に対するイットリウムーアルミニウムー酸素化合物の粒界相の割合が8.6容積%となりイットリア/アルミナ比がモル比で0.94であるように前記窒化アルミニウム粉末に混合される。」と訂正し、明細書段落番号【0008】の記載を削除する。
明細書段落番号【0009】の
「【発明の実施の形態】
窒化アルミニウム焼結体は等軸状粒子で構成されているために、クラックのデフレクンョン効果による破壊靱性の向上が期待できない。窒化アルミニウムに助剤としてイットリアを添加した場合、Al2Y4O9(以下、YAMと称する)、AlYO3(同、YAP)及びY3Al5O12(同、YAG)などのイットリアーアルミナ結晶が単独もしくは共存状態で粒界相として析出する。これらのイットリアーアルミナ結晶のなかで、YAMは結晶の異方性が高いことが知られている。そこで、異方性YAMの析出条件を検討し、YAM生成による窒化アルミニウム焼結体の高靱性化を試みた。その結果、窒化アルミニウム焼結体の粒界にYAMを生成させるためにイットリア及びアルミナを窒化アルミニウム粉末に添加して焼結し、焼結後に徐冷すると、焼結体に柱状組織が析出するという知見が得られた。この様にして得られる窒化アルミニウム焼結体では、クラックは柱状組織の存在によって粒界に沿って進行し、焼結体の破壊靭性値は従来の窒化アルミニウム焼結体に比べて2倍程度高いことが確認された。」を、明瞭でない記載の釈明を目的として、
「【発明の実施の形態】
窒化アルミニウム焼結体は等軸状粒子で構成されているために、クラックのデフレクション効果による破壊靱性の向上が期待できない。窒化アルミニウムに助剤としてイットリアを添加した場合、Al2Y4O9(以下、YAMと称する)、AlYO3(同、YAP)及びY3Al5O12(同、YAG)などのイットリアーアルミナ結晶が単独もしくは共存状態で粒界相として析出する。これらのイットリアーアルミナ結晶のなかで、YAMは結晶の異方性が高いことが知られている。そこで、異方性YAMの析出条件を検討し、YAM生成による窒化アルミニウム焼結体の高靱性化を試みた。その結果、窒化アルミニウム焼結体の粒界にYAMを生成させるためにイットリア及びアルミナを窒化アルミニウム粉末に添加して焼結し、焼結後に徐冷すると、焼結体に柱状粒子が析出するという知見が得られた。この様にして得られる窒化アルミニウム焼結体では、クラックは柱状粒子の存在によって粒界に沿って進行し、焼結体の破壊靭性値は従来の窒化アルミニウム焼結体に比べて2倍程度高いことが確認された。」と訂正する。
C)明細書段落番号【0012】の
「本発明の高靱性窒化アルミニウム焼結体の製造においては、まず、窒化アルミニウム粉末に希土類酸化物を添加する。添加の際にアルコールなどの分散媒を用いて混合することかでき、粉末が均一に混合されたら適宜乾燥して分散媒を除去すればよい。窒化アルミニウム粉末は一般的に使用されるものから適宜選択して用いることができる。希土類酸化物には、イットリウム、スカンジウム、ランタノイド元素及びアクチノイド元素からなる希土類元素の酸化物があり、好ましくはイットリアが用いられる。焼結によって窒化アルミニウム粒界に生成する希土類元素-アルミニウム-酸素化合物相つまり希土類酸化物-アルミナ相は、前述したイットリアによる場合のように、組成の異なる複数種の結晶が生じ得、例えば、イットリア/アルミナ比が0.94であると、YAM及びYAPの相が生成する。従って、イットリアの添加量は、所望の粒界相の生成に適する希土類酸化物/アルミナ比、窒化アルミニウム粉末の酸素(アルミナ)含有量、及び、焼結体に生成させる粒界相の容積割合を考慮して適宜算定し、粒界相を生成するためのアルミナ量が不足する場合は必要に応じてアルミナ粉末を添加することができる。」を、明瞭でない記載の釈明を目的として、
「本発明の高靭性窒化アルミニウム焼結体の製造においては、まず、窒化アルミニウム粉末に希土類酸化物を添加する。添加の際にアルコールなどの分散媒を用いて混合することができ、粉末が均一に混合されたら適宜乾燥して分散媒を除去すればよい。窒化アルミニウム粉末は一般的に使用されるものから適宜選択して用いることができる。希士類酸化物には、イットリウム、スカンジウム、ランタノイド元素及ひアクチノイド元素からなる希土類元素の酸化物があり、好ましくはイットリアが用いられる。焼結によって窒化アルミニウム粒界に生成する希土類元素-アルミニウム‐酸素化合物相つまり希土類酸化物一アルミナ相は、前述したイットリアによる場合のように、組成の異なる複数種の結晶が生じ得、例えば、イットリア/アルミナ比がモル比で0.94であると、YAM及びYAPの相が生成する。従って、イットリアの添加量は、所望の粒界相の生成に適する希土類酸化物/アルミナ比、窒化アルミニウム粉末の酸素(アルミナ)含有量、及び焼結体に生成させる粒界相の容積割合を考慮して適宜算定し、粒界相を生成するためのアルミナ量が不足する場合は必要に応じてアルミナ粉末を添加することができる。」と訂正する。
D)明細書段落番号【0017】の
「(試料1)粒界相としてYAM及ひYAPの混合相を形成するためにイットリア/アルミナ比が0.94となるように、且つ、粒界相の全体に対する容積比が8.6容積%となるように、窒化アルミニウム粉末の酸素含有量を考慮して、窒化アルミニウム粉末、イットリア粉末及びアルミナ粉末を計量し、2一プロパノールを用いてボールミル中で混合した後に乾燥した。得られた混合粉を用いて一軸加圧成形により直径14mm×厚さ46mmの円板状の成形体を作製した。」を、明瞭でない記載の釈明を目的として,
「(試料1)粒界相としてYAM及びYAPの混合相を形成するためにイットリア/アルミナ比がモル比で0.94となるように、且つ、粒界相の全体に対する容積比が8.6容積%となるように、窒化アルミニウム粉末の酸素含有量を考慮して、窒化アルミニウム粉末、イットリア粉末及びアルミナ粉末を計量し、2-プロパノールを用いてボールミル中で混合した後に乾燥した。得られた混合粉を用いて一軸加圧成形により直径14mm×厚さ46mmの円板状の成形体を作製した。」と訂正する。
E)明細書段落番号【0026】の
「以上の結果から、焼結後の冷却速度を調整することにより、窒化アルミニウム焼結体の粒界相の形態を制御することができ、上記の柱状粒子のような異方性結晶組織の発現による破壊靱性の向上が実現されることを確認した。」を、明瞭でない記載の釈明を目的として、
「以上の結果から、焼結後の冷却速度を調整することにより、窒化アルミニウム焼結体の粒界相の形態を制御することができ、上記の柱状粒子のような異方性結晶相の発現による破壊靱性の向上が実現されることを確認した。」と訂正する。
F)明細書段落番号【0027】の
「【発明の効果】
以上述ベたように、本発明によれば、焼成後の冷却速度を制御することにより、窒化アルミニウム焼結体に柱状または針状組織の粒界相を発現でき、これにより高靭性及び高熱伝導性を有する窒化アルミニウム焼結体の製造が可能となる。従って、信頼性の高い構造材として使用することができ、工業的価値は極めて大である。」を、明瞭でない記載の釈明を目的として、
「【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、焼成後の冷却速度を制御することにより、窒化アルミニウム焼結体に柱状または針状粒子が析出した粒界相を発現でき、これにより高靭性及び高熱伝導性を有する窒化アルミニウム焼結体の製造が可能となる。従って、信頼性の高い構造材として使用することができ、工業的価値は極めて大である。」と訂正する。
イ.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項A)は、請求項1で「希土類酸化物」を「イットリア」に限定し、イットリアを「アルミナと共に」混合することを付加し、窒化アルミニウム焼結体全体に対するイットリウムーアルミニウムー酸素化合物の粒界相の割合を限定し、さらに、イットリア/アルミナモル比を限定するものであり、また請求項3で、粒界相の成分及び組織を限定するものであり、いずれのものも、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当し、また、この記載事項は訂正前請求項2および3、段落【0012】、【0017】に記載されているものであるから、新規事項の追加に該当せず、そしてまた実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
さらに、訂正事項B)〜F)も、特許請求の範囲の記載の訂正に伴い、これに、整合させるためのものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び第3項において準用する特許法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
3.特許異議申立について
(1)本件訂正発明
本件訂正発明は、2.A)に記載されたとおりである。
(2)特許異議申立ての理由の概要
申立人は、甲第1〜2号証を提出して、(a)請求項1に係る発明は、甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により許を受けることができないものである、(b)請求項2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものである、又は、甲第1〜2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである、(c)請求項3に係る発明は甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許を受けることができないものである、と主張している。さらに、異議申立人は、「冷却速度」、「希土類酸化物」、「イットリア/アルミナ比」、「柱状又は針状組織」について、明細書の記載不備があると主張する。
(3)証拠の記載内容
甲第1〜2号証には、それぞれ以下の事項が記載されている。
甲第1号証(特開平5-238830号公報):
(a)「【請求項4】窒化アルミニウム粉末に対して、粒界相形成成分として希土類元素およびアルカリ土類金属元素の少なくとも一方を添加した原料混合体を成形脱脂し、得られた成形体を1700〜2000℃の焼結温度で所定時間加熱焼結した後に、上記焼結温度から、上記希土類元素および/またはアルカリ土類金属元素により焼結時に形成された液相が凝固する温度までに至る焼結体の冷却速度を毎時100℃以下に設定したことを特徴とする窒化アルミニウム焼結体の製造方法。」
(b)「【0022】希土類元素・・・は、窒化アルミニウム原料粉末に添加される。・・・、特に酸化イットリウム・・・が好ましい。」
甲第2号証(「Morphological Effect of Second Phase on the Thermal Conductivity of AlN Ceramics」「J. Am. Ceram. Soc.」79[4]1066-1072頁、1996年:
(a)「(1)試料の製造
出発原料は、市販のAIN粉末(F等級、徳山曹達、日本国東京)、および焼結助剤としてのY2O3(ファイングレード、ヘルマンC、ドイツ国ベルリン市スターク)である。このY2O3粉末をAIN粉末に対して2〜8重量%の範囲内の量で添加し、この混合物を12時間にわたってボールミル中で2-プロパノールを液状媒体として使用して湿式混合した。混合後、スラリーを家庭用マイクロウエーブオーブン中で乾燥し、60℃で真空オーブン中で完全に乾燥させた。こうして乾燥した粉末を一軸プレス法によって直径16mmに成形し、次いで200MPaでコールドアイソスタティックプレスを行った。この圧密物を、BNの粉末床を収容する被覆BNルツボ中に収容した。次いで、この試料を1800℃と1900℃との間の温度で2〜4時間窒素雰囲気中でグラファイト製抵抗炉(アストロ サーマルテクノロジー社、カリフォルニア州サンタバーバラ)中で焼結させた。 」(第1066頁右欄24〜39行)
(b)図2には、1850〜1900℃で焼結した後、3℃/minの低速度、及び(60℃/min、25℃/min)の高速度で窒化アルミニウム粉末を冷却することが示されている。
(4)当審の判断
訂正後の請求項1(以下、「本件発明1」という。)と甲第1号証に記載された発明とを比較する。
甲第1号証には、上記3(3)甲第1号証(a)及び(b)の記載から明らかなように、窒化アルミニウム粉末に対して、粒界相形成成分としてイットリア(酸化イットリウムに同じ)を混合して1800℃以上の温度で焼結し、焼結体を3℃/分以下(甲第1号証に記載の「冷却速度毎時100℃以下」は本件発明1の「3℃/分以下」と重複する)の冷却速度で冷却する窒化アルミニウム焼結体の製造方法に関する発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると云うことができる。
本件発明1と甲1発明とは、この点で一致し、以下の点で相違する。
相違点:本件発明では、イットリア及びアルミナが混合され、かつ、該イットオリア及びアルミナは、窒化アルミニウム焼結体全体に対するイットリウムーアルミニウムー酸素化合物の粒界相の割合が8.6容積%となりイットリア/アルミナ比がモル比で0.94であるように窒化アルミニウム粉末に混合混合されるのに対し、甲1発明では、かかる限定はしていない点。
この相違点につき検討する。
本件明細書の記載によると、イットリア/アルミナ比がモル比で0.94となるように、且つ、窒化アルミニウム焼結体全体に対するイットリウムーアルミニウムー酸素化合物の粒界相の割合が8.6容積%となるように窒化アルミニウム粉末に、イットリア及びアルミナを混合し、そして、冷却速度を3℃/分以下とすることにより、同焼結体において、高い破壊靱性値と高い熱伝導率を達成するものである(表1参照)。
これに対して、甲1発明では、前記したモル比及び粒界相の割合を規定するものではなく、これらの規定と破壊靱性との関連については教示するところがない。
してみれば、本件発明1は、甲1発明と同一でないばかりか、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるということもできない。
次に、甲第2号証の記載をみると、そこには、窒化アルミニウム焼結体を異なる冷却速度で冷却した場合の、熱伝導性の違いが記載されている。しかし、同号証では、イットリアとアルミナとを共に用いること、そして、所定のイットリア/アルミナ比となし、かつ、イットリアーアルミニウムー酸素化合物の粒界相の割合を所定の値となすことが示されず、また、これらの規定と破壊靱性との関連についても教示されない。
してみれば、甲第2号証の記載を併せてみても、甲1発明において、上記相違点に関する構成を適用することが、当業者の容易に導き出せるものではない。
このように、相違点に関する構成が容易に想到することができないのであるから、本件発明1は、甲1発明及び甲第2号証に記載された発明と同一でないばかりかこれらの発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるとすることもできない。
訂正後の請求項2に係る発明は本件発明1を引用するものであるから、甲1発明と同一でないばかりか甲1発明及び甲第2号証に記載された発明から、当業者が容易に発明をすることでできたものではなく、また、訂正後の請求項3に係る発明は本件発明1または訂正後の請求項2にかかる製造法によって製造される焼結体であるから、前記した理由と同様な理由で、甲1発明及び甲第2号証に記載された発明から当業者が容易に発明することができたものではない。
特許異議申立人は、さらに、明細書の記載不備を主張するが、明細書の記載を精査するも、問題となるような不備があるとすることはできない。
4むすび
以上のとおり、本件発明の特許は、特許異議申立の理由によっては、取り消すことができない。
また、他に本件発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
窒化アルミニウム焼結体及びその製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 窒化アルミニウム粉末にイットリアをアルミナと共に混合して1800℃以上の温度で焼結し、焼結体を3℃/分以下の冷却速度で冷却する窒化アルミニウム焼結体の製造方法であって、前記イットリア及びアルミナは、窒化アルミニウム焼結体全体に対するイットリウム-アルミニウム-酸素化合物の粒界相の割合が8.6容積%となりイットリア/アルミナ比がモル比で0.94であるように前記窒化アルミニウム粉末に混合されることを特徴とする窒化アルミニウム焼結体の製造方法。
【請求項2】 前記焼結の温度は1900℃であり、焼結体の冷却速度は2℃/分である請求項1記載の窒化アルミニウム焼結体の製造方法。
【請求項3】 請求項1又は2に記載の製造方法によって製造され、窒化アルミニウム粒界に、Al2Y4O9及びAlYO3からなる柱状粒子が析出した窒化アルミニウム焼結体。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、窒化アルミニウム焼結体及びその製造方法に関し、詳しくは、高熱伝導性と高靭性とを兼ね備え、半導体回路基板やプリント配線基板などを製造するための電気絶縁材料や高熱伝導性及び高靭性を要する機械部品を製造するための構造材料としての使用に適した高靭性窒化アルミニウム焼結体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
窒化アルミニウムは、高い熱伝導性及び珪素に近い熱膨張率並びに高い電気絶縁性を有するために、半導体実装用放熱性基板材料として注目され、更なる改良が研究されている。例えば、Journal of Materials Science Letter,vol.11,1508(1992)には、窒化アルミニウムの焼結性及び熱伝導特性の向上を図るために、窒化アルミニウム粉末に少量のイットリア、希土類酸化物又はアルカリ土類金属酸化物を添加して焼結する方法が記載されている。これにおいては、酸化物の添加量は数%であり、焼成は1800℃以上で数時間行われる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、得られる焼結体の破壊靭性は低く、例えば、前述の従来方法で得られる焼結体の破壊靭性値は概して1〜2MPa・m1/2である。このようなことから、窒化アルミニウム焼結体は構造部品用材料としては普及されていない。
【0004】
本発明は、これらの状況に鑑みて成されたもので、高靭性を有する窒化アルミニウム焼結体を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る窒化アルミニウム焼結体は、窒化アルミニウム粒界に、Al2Y4O9及びAlYO3からなる柱状粒子が析出した粒界相を有する。
【0006】
又、本発明に係る窒化アルミニウム焼結体の製造方法は、窒化アルミニウム粉末にイットリアをアルミナと共に混合して焼結し、焼結体を3℃/分以下の冷却速度で冷却するもので、前記イットリア及びアルミナは、窒化アルミニウム焼結体全体に対するイットリウム-アルミニウム-窒素化合物の粒界相の割合が8.6溶積%となりイットリア/アルミナ比がモル比で0.94であるように前記窒化アルミニウム粉末に混合される。
【0007】
【発明の実施の形態】
窒化アルミニウム焼結体は等軸状粒子で構成されているために、クラックのデフレクション効果による破壊靭性の向上が期待できない。窒化アルミニウムに助剤としてイットリアを添加した場合、Al2Y4O9(以下、YAMと称する)、AlYO3(同、YAP)及びY3Al5O12(同、YAG)などのイットリア-アルミナ結晶が単独もしくは共存状態で粒界相として析出する。これらのイットリア-アルミナ結晶のなかで、YAMは結晶の異方性が高いことが知られている。そこで、異方性YAMの析出条件を検討し、YAM生成による窒化アルミニウム焼結体の高靭性化を試みた。その結果、窒化アルミニウム焼結体の粒界にYAMを生成させるためにイットリア及びアルミナを窒化アルミニウム粉末に添加して焼結し、焼結後に徐冷すると、焼結体に柱状粒子が析出するという知見が得られた。この様にして得られる窒化アルミニウム焼結体では、クラックは柱状粒子の存在によって粒界に沿って進行し、焼結体の破壊靭性値は従来の窒化アルミニウム焼結体に比べて2倍程度高いことが確認された。
【0008】
このような結果を踏まえて研究を重ねた結果、本発明は、窒化アルミニウム粉末に希土類酸化物を添加して焼結し、焼結後に徐冷して希土類元素-アルミニウム-酸素化合物(希土類酸化物-アルミナ)の異方性結晶による粒界相を生成させる窒化アルミニウム焼結体の製造方法を提案する。この方法によって、異方性結晶による粒界相を有する窒化アルミニウム焼結体が得られ、4MPa・m1/2以上の高い破壊靭性及び150W/mK以上の高い熱伝導性を有する窒化アルミニウム焼結体の製造が可能となる。
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
本発明の高靭性窒化アルミニウム焼結体の製造においては、まず、窒化アルミニウム粉末に希土類酸化物を添加する。添加の際にアルコールなどの分散媒を用いて混合することができ、粉末が均一に混合されたら適宜乾燥して分散媒を除去すればよい。窒化アルミニウム粉末は一般的に使用されるものから適宜選択して用いることができる。希土類酸化物には、イットリウム、スカンジウム、ランタノイド元素及びアクチノイド元素からなる希土類元素の酸化物があり、好ましくはイットリアが用いられる。焼結によって窒化アルミニウム粒界に生成する希土類元素-アルミニウム-酸素化合物相つまり希土類酸化物-アルミナ相は、前述したイットリアによる場合のように、組成の異なる複数種の結晶が生じ得、例えば、イットリア/アルミナ比がモル比で0.94であると、YAM及びYAPの相が生成する。従って、イットリアの添加量は、所望の粒界相の生成に適する希土類酸化物/アルミナ比、窒化アルミニウム粉末の酸素(アルミナ)含有量、及び、焼結体に生成させる粒界相の容積割合を考慮して適宜算定し、粒界相を生成するためのアルミナ量が不足する場合は必要に応じてアルミナ粉末を添加することができる。
【0011】
上述に従って希土類酸化物粉末及び必要に応じてアルミナ粉末を添加した窒化アルミニウム粉末は、適宜成形して、非酸化性雰囲気中で焼結する。成形は、一軸加圧による方法、溶媒やバインダーを添加して行うドクターブレード法、型に粉末を投入するのみの自重による成形などの一般的な成形方法から適宜選択することができる。焼結温度及び時間は、少なくとも窒化アルミニウム粒界に希土類元素-アルミニウム-酸素化合物の液相が生成可能な程度以上に設定し、通常、約1800℃以上で2時間程度、好ましくは1900℃程度の温度で焼結する。
【0012】
焼結後、希土類元素-アルミニウム-酸素化合物の液相から針状晶や柱状晶などの異方性結晶相が生成するように冷却速度を制御しながら窒化アルミニウム焼結体を冷却する。この冷却速度は、10℃/分未満、好ましくは5℃/分以下、より好ましくは2℃/分程度とする。
【0013】
上述に従って得られる窒化アルミニウム焼結体は、高い破壊靭性及び熱伝導性を有するので、これを用いて作製した基板は、窒化アルミニウムの高靭性化により、従来の基板に比べて厚さを薄くでき、これを用いた電子部品などの小型化が図られるなどの利点を有する。又、高靭性化により、構造用部品材料として使用した場合に高い信頼性が得られ、基板材料以外の用途においても窒化アルミニウム焼結体の利用価値を飛躍的に高めることができる。
【0014】
【実施例】
以下、本発明について実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって何等限定されるものではない。
【0015】
(試料1)
粒界相としてYAM及びYAPの混合相を形成するためにイットリア/アルミナ比がモル比で0.94となるように、且つ、粒界相の全体に対する容積比が8.6容積%となるように、窒化アルミニウム粉末の酸素含有量を考慮して、窒化アルミニウム粉末、イットリア粉末及びアルミナ粉末を計量し、2-プロパノールを用いてボールミル中で混合した後に乾燥した。得られた混合粉を用いて一軸加圧成形により直径14mm×厚さ46mmの円板状の成形体を作製した。
【0016】
得られた成形体を電気炉中に配置して高温に加熱して焼結を行った。焼結条件は、昇温速度を10℃/分として1900℃で3時間保持した。また、焼結は窒素ガス雰囲気中で行った。この後、焼結体の冷却速度が2℃/分となるように雰囲気温度を制御して常温まで焼結体を冷却した。
【0017】
得られた焼結体の密度をアルキメデス法により、熱伝導率をレーザーフラッシュ法により、破壊靭性を圧痕法によって各々測定した。これらの結果を表1に示す。又、焼結体の研磨面の微構造の分析をSEMにより、組織の元素分析をEPMAにより、結晶相の同定をX線回折法により各々行った。
【0018】
(試料2〜6)
焼結後の冷却速度を、各々、3℃/分(試料2)、5℃/分(試料3)、10℃/分(試料4)、100℃/分(試料5)及び600℃/分(試料6)に変更したこと以外は試料1と同様の操作を繰り返して焼結体を製造し、測定及び分析を行った。測定により得られた密度、熱伝導率及び破壊靭性を表1に示す。
【0019】
【表1】


【0020】
アルキメデス法により測定した試料1〜6の窒化アルミニウム焼結体の密度はいずれも窒化アルミニウムの理論密度を超え、いずれの焼結体も緻密化していた。
【0021】
表1の結果では、焼結後の冷却速度を600℃/分から2℃/分に変化させると熱伝導率は140W/mKから178W/mKに増加しており、明らかに、冷却速度の低下により得られる焼結体の熱伝導率は上昇する傾向にある。又、破壊靭性は冷却速度が遅くなるに従って増加し、冷却速度が2℃/分において5MPa・m1/2を示した。この破壊靭性値は、従来の窒化アルミニウム焼結体の破壊靭性値に比べて2倍以上高いものである。
【0022】
試料1の窒化アルミニウム焼結体の研磨面に圧痕を打ち込みクラックが発生したものの研磨面をSEMにより撮影した写真を図1に示す。この焼結体では、窒化アルミニウム粒界に白い柱状粒子が析出しているのが観察される。この白い柱状粒子は、EPMA分析においてイットリウムの強いピークを示し、X線回折の結果からYAM及びYAPからなる相に対応する。これに対し、試料4及び6の焼結体を同様に分析すると、写真で白く表れるYAM及びYAPからなる相は球状窒化アルミニウム粒子の隙間に存在したが、柱状粒子は観察されなかった。
【0023】
又、図1において、クラックは白い柱状粒子や窒化アルミニウム粒子に沿って進行しているのが分かる。これに対し、試料4及び6の焼結体では、クラックが球状窒化アルミニウム粒子内を通過し、典型的な粒内破壊を示していた。このようなことから、破壊モードの違いが破壊靭性に強い影響を与えていると考えられる。
【0024】
以上の結果から、焼結後の冷却速度を調整することにより、窒化アルミニウム焼結体の粒界相の形態を制御することができ、上記の柱状粒子のような異方性結晶相の発現による破壊靭性の向上が実現されることを確認した。
【0025】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、焼成後の冷却速度を制御することにより、窒化アルミニウム焼結体に柱状または針状粒子が析出した粒界相を発現でき、これにより高靭性及び高熱伝導性を有する窒化アルミニウム焼結体の製造が可能となる。従って、信頼性の高い構造材として使用することができ、工業的価値は極めて大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明に係る窒化アルミニウム焼結体の研磨面のSEM写真である。
 
訂正の要旨 ア.訂正の内容
A)特許請求の範囲の請求項1〜3
「【請求項1】窒化アルミニウム粉末に希土類酸化物を混合して1800℃以上の温度で焼結し、焼結体を3℃/分以下の冷却速度で冷却することを特徴とする窒化アルミニウム焼結体の製造方法。
【請求項2】前記希土類酸化物はアルミナと共に混合され、前記焼結の温度は1900℃であり,焼結体の冷却速度は2℃/分である請求項1記載の窒化アルミニウム焼結体の製造方法。
【請求項3】請求項1又は2に記載の製造方法によって製造され、希土類元素-アルミニウム-酸素化合物の針状又は柱状組織の粒界相を全体に対して8.6容積%の割合で有し、前記希土類元素がイットリウムである窒化アルミニウム焼結体。」を
「【請求項1】窒化アルミニウム粉末にイットリアをアルミナと共に混合して1800℃以上の温度で焼結し、焼結体を3℃/分以下の冷却速度で冷却する窒化アルミニウム焼結体の製造方法であって、前記イットリア及びアルミナは、窒化アルミニウム焼結体全体に対するイットリウムーアルミニウムー酸素化合物の粒界相の割合が8.6容積%となりイットリア/アルミナ比がモル比で0.94であるように前記窒化アルミニウム粉末に混合されることを特徴とする窒化アルミニウム焼結体の製造方法。
【請求項2】前記焼結の温度は1900℃であり、焼結体の冷却速度は2℃/分である請求項1記載の窒化アルミニウム焼結体の製造方法。
【請求項3】請求項1又は2に記載の製造方法によって製造され、窒化アルミニウム粒界に、Al2Y4O9及びAIYO3からなる柱状粒子が析出した窒化アルミニウム焼結体。」と訂正する。
これに伴い特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合をとるため、明瞭でない記載の釈明を目的として、明細書段落番号【0005】の
「【課題を解決するための手段】
本発明に係る窒化アルミニウム焼結体は、希土類元素ーアルミニウム-酸素化合物の針状又は柱状組織の粒界相を有する。」を、
「【課題を解決するための手段】
本発明に係る窒化アルミニウム焼結体は、窒化アルミニウム粒界に、A12Y4O9及びAIYO3からなる柱状粒子が析出した窒化アルミニウム焼結体である。」
と訂正し、明細書段落番号【0006】の記載を削除し、明細書段落番号【0007】の
「又、本発明に係る窒化アルミニウム焼結体の製造方法は、窒化アルミニウム粉末に希土類酸化物を混合して焼結し、焼結体を10℃/分未満の冷却速度で冷却するものである。」を、
「又、本発明に係る窒化アルミニウム焼結体の製造方法は、窒化アルミニウム粉末にイットリアをアルミナと共に混合して焼結し、焼結体を3℃/分以下の冷却速度で冷却するもので、前記イットリア及びアルミナは、窒化アルミニウム焼結体全体に対するイットリウムーアルミニウムー酸素化合物の粒界相の割合が8.6容積%となりイットリア/アルミナ比がモル比で0.94であるように前記窒化アルミニウム粉末に混合される。」と訂正し、明細書段落番号【0008】の記載を削除する。
B)明細書段落番号【0009】の
「【発明の実施の形態】
窒化アルミニウム焼結体は等軸状粒子で構成されているために、クラックのデフレクンョン効果による破壊靭性の向上が期待できない。窒化アルミニウムに助剤としてイットリアを添加した場合、A12Y4O9(以下、YAMと称する)、AIYO3(同、YAP)及びY3A15O12(同、YAG)などのイットリアーアルミナ結晶が単独もしくは共存状態で粒界相として析出する。これらのイットリアーアルミナ結晶のなかで、YAMは結晶の異方性が高いことが知られている。そこで、異方性YAMの析出条件を検討し、YAM生成による窒化アルミニウム焼結体の高靱性化を試みた。その結果、窒化アルミニウム焼結体の粒界にYAMを生成させるためにイットリア及びアルミナを窒化アルミニウム粉末に添加して焼結し、焼結後に徐冷すると、焼結体に柱状組織が析出するという知見が得られた。この様にして得られる窒化アルミニウム焼結体では、クラックは柱状組織の存在によって粒界に沿って進行し、焼結体の破壊靭性値は従来の窒化アルミニウム焼結体に比べて2倍程度高いことが確認された。」を、明瞭でない記載の釈明を目的として、
「【発明の実施の形態】
窒化アルミニウム焼結体は等軸状粒子で構成されているために、クラックのデフレクション効果による破壊靱性の向上が期待できない。窒化アルミニウムに助剤としてイットリアを添加した場合、A12Y4O9(以下、YAMと称する)、AIYO3(同、YAP)及びY3A15O12(同、YAG)などのイットリアーアルミナ結晶が単独もしくは共存状態で粒界相として析出する。これらのイットリアーアルミナ結晶のなかで、YAMは結晶の異方性が高いことが知られている。そこで、異方性YAMの析出条件を検討し、YAM生成による窒化アルミニウム焼結体の高靱性化を試みた。その結果、窒化アルミニウム焼結体の粒界にYAMを生成させるためにイットリア及びアルミナを窒化アルミニウム粉末に添加して焼結し、焼結後に徐冷すると、焼結体に柱状粒子が析出するという知見が得られた。この様にして得られる窒化アルミニウム焼結体では、クラックは柱状粒子の存在によって粒界に沿って進行し、焼結体の破壊靭性値は従来の窒化アルミニウム焼結体に比べて2倍程度高いことが確認された。」と訂正する。
C)明細書段落番号【0012】の
「本発明の高靱性窒化アルミニウム焼結体の製造においては、まず、窒化アルミニウム粉末に希土類酸化物を添加する。添加の際にアルコールなどの分散媒を用いて混合することかでき、粉末が均一に混合されたら適宜乾燥して分散媒を除去すればよい。窒化アルミニウム粉末は一般的に使用されるものから適宜選択して用いることができる。希土類酸化物には、イットリウム、スカンジウム、ランタノイド元素及びアクチノイド元素からなる希土類元素の酸化物があり、好ましくはイットリアが用いられる。焼結によって窒化アルミニウム粒界に生成する希土類元素-アルミニウム-酸素化合物相つまり希土類酸化物-アルミナ相は、前述したイットリアによる場合のように、組成の異なる複数種の結晶が生じ得、例えば、イットリア/アルミナ比が0.94であると、YAM及びYAPの相が生成する。従って、イットリアの添加量は、所望の粒界相の生成に適する希土類酸化物/アルミナ比、窒化アルミニウム粉末の酸素(アルミナ)含有量、及び、焼結体に生成させる粒界相の容積割合を考慮して適宜算定し、粒界相を生成するためのアルミナ量が不足する場合は必要に応じてアルミナ粉末を添加することができる。」を、明瞭でない記載の釈明を目的として、
「本発明の高靭性窒化アルミニウム焼結体の製造においては、まず、窒化アルミニウム粉末に希土類酸化物を添加する。添加の際にアルコールなどの分散媒を用いて混合することができ、粉末が均一に混合されたら適宜乾燥して分散媒を除去すればよい。窒化アルミニウム粉末は一般的に使用されるものから適宜選択して用いることができる。希士類酸化物には、イットリウム、スカンジウム、ランタノイド元素及ひアクチノイド元素からなる希土類元素の酸化物があり、好ましくはイットリアが用いられる。焼結によって窒化アルミニウム粒界に生成する希土類元素-アルミニウム‐酸素化合物相つまり希土類酸化物一アルミナ相は、前述したイットリアによる場合のように、組成の異なる複数種の結晶が生じ得、例えば、イットリア/アルミナ比がモル比で0.94であると、YAM及びYAPの相が生成する。従って、イットリアの添加量は、所望の粒界相の生成に適する希土類酸化物/アルミナ比、窒化アルミニウム粉末の酸素(アルミナ)含有量、及び焼結体に生成させる粒界相の容積割合を考慮して適宜算定し、粒界相を生成するためのアルミナ量が不足する場合は必要に応じてアルミナ粉末を添加することができる。」と訂正する。
D)明細書段落番号【0017】の
「(試料1)
粒界相としてYAM及ひYAPの混合相を形成するためにイットリア/アルミナ比が0.94となるように、且つ、粒界相の全体に対する容積比が8.6容積%となるように、窒化アルミニウム粉末の酸素含有量を考慮して、窒化アルミニウム粉末、イットリア粉末及びアルミナ粉末を計量し、2一プロパノールを用いてボールミル中で混合した後に乾燥した。得られた混合粉を用いて一軸加圧成形により直径14mm×厚さ46mmの円板状の成形体を作製した。」を、明瞭でない記載の釈明を目的として,
「(試料1)
粒界相としてYAM及びYAPの混合相を形成するためにイットリア/アルミナ比がモル比で0.94となるように、且つ、粒界相の全体に対する容積比が8.6容積%となるように、窒化アルミニウム粉末の酸素含有量を考慮して、窒化アルミニウム粉末、イットリア粉末及びアルミナ粉末を計量し、2-プロパノールを用いてボールミル中で混合した後に乾燥した。得られた混合粉を用いて一軸加圧成形により直径14mm×厚さ46mmの円板状の成形体を作製した。」と訂正する。
E)明細書段落番号【0026】の
「以上の結果から、焼結後の冷却速度を調整することにより、窒化アルミニウム焼結体の粒界相の形態を制御することができ、上記の柱状粒子のような異方性結晶組織の発現による破壊靱性の向上が実現されることを確認した。」を、明瞭でない記載の釈明を目的として、
「以上の結果から、焼結後の冷却速度を調整することにより、窒化アルミニウム焼結体の粒界相の形態を制御することができ、上記の柱状粒子のような異方性結晶相の発現による破壊靱性の向上が実現されることを確認した。」と訂正する。
F)明細書段落番号【0027】の
「【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、焼成後の冷却速度を制御することにより、窒化アルミニウム焼結体に柱状または針状組織の粒界相を発現でき、これにより高靭性及び高熱伝導性を有する窒化アルミニウム焼結体の製造が可能となる。従って、信頼性の高い構造材として使用することができ、工業的価値は極めて大である。」を、明瞭でない記載の釈明を目的として、
「【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、焼成後の冷却速度を制御することにより、窒化アルミニウム焼結体に柱状または針状粒子が析出した粒界相を発現でき、これにより高靭性及び高熱伝導性を有する窒化アルミニウム焼結体の製造が可能となる。従って、信頼性の高い構造材として使用することができ、工業的価値は極めて大である。」と訂正する。
異議決定日 2002-05-21 
出願番号 特願平11-65576
審決分類 P 1 651・ 113- YA (C04B)
P 1 651・ 536- YA (C04B)
P 1 651・ 537- YA (C04B)
P 1 651・ 121- YA (C04B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 深草 祐一  
特許庁審判長 多喜 鉄雄
特許庁審判官 服部 智
山田 充
登録日 2000-09-08 
登録番号 特許第3106160号(P3106160)
権利者 独立行政法人産業技術総合研究所 株式会社東芝
発明の名称 窒化アルミニウム焼結体及びその製造方法  
代理人 川又 澄雄  
代理人 中村 友之  
代理人 中村 友之  
代理人 高松 俊雄  
代理人 三好 秀和  
代理人 高橋 俊一  
代理人 伊藤 正和  
代理人 三好 秀和  
代理人 川又 澄雄  
代理人 三好 保男  
代理人 三好 秀和  
代理人 岩崎 幸邦  
代理人 岩崎 幸邦  
代理人 三好 秀和  
代理人 高橋 俊一  
代理人 三好 保男  
代理人 伊藤 正和  
代理人 高松 俊雄  

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