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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 F22B |
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管理番号 | 1064371 |
異議申立番号 | 異議2000-72332 |
総通号数 | 34 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1998-03-17 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2000-06-06 |
確定日 | 2002-07-10 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第2986917号「新しい水冷壁管ブロック構造」の請求項1ないし15に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第2986917号の請求項1ないし9に係る特許を維持する。 |
理由 |
〔1〕本件特許及び本件特許異議事件の手続の経緯 本件特許及び本件特許異議事件(特許第2986917号(以下「本件特許」という。)異議申立て)に係る手続の経緯の概要は、以下のとおりである。 1)本件特許の出願日:平成7年5月31日(優先日:1994年6月2日) 2)特許権の設定の登録:平成11年10月1日 3)特許掲載公報の発行:平成11年12月6日 4)特許異議の申立て(全請求項に係る特許に対して):平成12年6月6日付け 5)取消理由の通知:平成13年2月23日付け(発送日:平成13年3月6日) 6)特許異議意見書(特許権者):平成13年9月6日付け(発送日:平成13年3月6日) 7)訂正請求書:平成13年9月6日付け 8)口頭審理陳述要領書(異議申立人):平成14年6月12日 9)口頭審理陳述要領書(特許権者):平成14年6月12日 10)口頭による審尋:平成14年6月12日 11)口頭審理:平成14年6月12日 〔2〕訂正事項と訂正の適否についての判断 1.本件訂正請求は、以下の事項について訂正するものである。 (ア)特許請求の範囲の請求項1を下記のとおりとする。 「請求項1 管ブロックと組体とから構成され、該組体が、少なくとも1つの薄膜によって相互に連結された複数の平行な管を具備し、該管ブロックが、基部と、該基部から外方へ延びる複数の平行に離間した突条とを具備し、少なくとも1つの該突条の表面が前記薄膜を受ける面を構成して、該薄膜が該突条の該面に固定され、それら離間した突条が相互間に、前記複数の管をそれぞれに受容する複数の平行な溝を形成してなる水冷壁伝熱装置において、前記薄膜が固定される前記突条の、前記基部からの高さが、前記複数の平行な管と前記複数の平行な溝との間に隙間を形成する寸法であるとともに、複数の平行な管と前記管ブロックとの直接接触を防止する寸法であることを特徴とする水冷壁伝熱装置。」 (イ)特許請求の範囲の請求項10〜15を削除する。 2.そこで、上記訂正事項について検討すると、まず、訂正事項(ア)は、請求項1に係る発明の構成中、「複数の平行な管と前記管ブロックとの直接接触を防止する寸法であること」を明確にしたものであるから、明りょうでない記載の釈明に当り、訂正事項(イ)は特許請求の範囲の減縮に当たる。 訂正事項(ア)は、願書に添付した明細書の第6頁第24〜25行(特許掲載公報第4頁第7欄第6〜7行)の記載からみて、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてしたものと認められ、しかも、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 3.以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する同法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 〔3〕特許異議申立てについての判断 1.本件請求項1乃至請求項9に係る発明は、訂正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜9記載された以下のものにあると認める。 「請求項1 管ブロックと組体とから構成され、該組体が、少なくとも1つの薄膜によって相互に連結された複数の平行な管を具備し、該管ブロックが、基部と、該基部から外方へ延びる複数の平行に離間した突条とを具備し、少なくとも1つの該突条の表面が前記薄膜を受ける面を構成して、該薄膜が該突条の該面に固定され、それら離間した突条が相互間に、前記複数の管をそれぞれに受容する複数の平行な溝を形成してなる水冷壁伝熱装置において、前記薄膜が固定される前記突条の、前記基部からの高さが、前記複数の平行な管と前記複数の平行な溝との間に隙間を形成する寸法であるとともに、複数の平行な管と前記管ブロックとの直接接触を防止する寸法であることを特徴とする水冷壁伝熱装置。 請求項2 前記複数の離間した突条が前記基部の全長に渡って延びる請求項1に記載の水冷壁伝熱装置。 請求項3 前記薄膜が固定される前記突条が前記基部の約50%以下に延びる請求項1に記載の水冷壁伝熱装置。 請求項4 前記薄膜が、該薄膜から延設された軸方向スタッドを前記突条の前記面から前記管ブロックを通って延びる穴に挿通することにより、該突条の該面に固定される請求項1に記載の水冷壁伝熱装置。 請求項5 前記管ブロックの前記基部にて前記穴を被覆する蓋をさらに具備する請求項4に記載の水冷壁伝熱装置。 請求項6 前記スタッドを取巻くセラミックカラーをさらに具備する請求項4に記載の水冷壁伝熱装置。 請求項7 前記管と前記溝との間に約0.3cm〜1cmの隙間を有する請求項1に記載の水冷壁伝熱装置。 請求項8 前記薄膜が固定される前記突条が、他の前記突条よりも前記基部から遠くへ延びる請求項1に記載の水冷壁伝熱装置。 請求項9 前記管と前記溝との間に約0.32cm〜0.95cmの隙間を有する請求項8に記載の水冷壁伝熱装置。」 2.これに対して、特許異議申立人の提示した甲号各証には、本件請求項1〜9に係る発明の、薄膜が1つの突条の面に固定され、かつ、薄膜が固定される突条の基部からの高さが複数の平行な管と複数の平行な溝との間に隙間を形成する寸法であるとともに、複数の平行な管と前記管ブロックとの直接接触を防止する寸法であるという構成に関しては記載も示唆もない。そして、甲号各証に記載された発明を組み合わせたとしても、上記構成を有する本件請求項1〜9に係る発明に到達することにはならない。 したがって、その余について検討するまでもなく、本件請求項1〜9に係る発明が甲号各証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。 〔4〕まとめ 以上によれば、特許異議申立人の主張する申立ての理由及び提出した証拠方法によっては、本件特許を取り消すことはできない。また、ほかに本件特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 新しい水冷壁管ブロック構造 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 管ブロックと組体とから構成され、該組体が、少なくとも1つの薄膜によって相互に連結された複数の平行な管を具備し、該管ブロックが、基部と、該基部から外方へ延びる複数の平行に離間した突条とを具備し、少なくとも1つの該突条の表面が前記薄膜を受ける面を構成して、該薄膜が該突条の該面に固定され、それら離間した突条が相互間に、前記複数の管をそれぞれに受容する複数の平行な溝を形成してなる水冷壁伝熱装置において、 前記薄膜が固定される前記突条の、前記基部からの高さが、前記複数の平行な管と前記複数の平行な溝との間に隙間を形成する寸法であるとともに、該複数の平行な管と前記管ブロックとの直接接触を防止する寸法であることを特徴とする水冷壁伝熱装置。 【請求項2】 前記複数の離間した突条が前記基部の全長に渡って延びる請求項1に記載の水冷壁伝熱装置。 【請求項3】 前記薄膜が固定される前記突条が前記基部の約50%以下に延びる請求項1に記載の水冷壁伝熱装置。 【請求項4】 前記薄膜が、該薄膜から延設された軸方向スタッドを前記突条の前記面から前記管ブロックを通って延びる穴に挿通することにより、該突条の該面に固定される請求項1に記載の水冷壁伝熱装置。 【請求項5】 前記管ブロックの前記基部にて前記穴を被覆する蓋をさらに具備する請求項4に記載の水冷壁伝熱装置。 【請求項6】 前記スタッドを取巻くセラミックカラーをさらに具備する請求項4に記載の水冷壁伝熱装置。 【請求項7】 前記管と前記溝との間に約0.3cm〜1cmの隙間を有する請求項1に記載の水冷壁伝熱装置。 【請求項8】 前記薄膜が固定される前記突条が、他の前記突条よりも前記基部から遠くへ延びる請求項1に記載の水冷壁伝熱装置。 【請求項9】 前記管と前記溝との間に約0.32cm〜0.95cmの隙間を有する請求項8に記載の水冷壁伝熱装置。 【発明の詳細な説明】 技術分野 本発明は、金属製の水冷壁管を高温かつ高腐食性の炉ガスから防護すると同時に優れた熱伝導性を維持する耐火性の管ブロックに関する。 発明の背景 都市固形廃棄物(MSW)設備は、炉内で廃物及びごみ屑を約1644K(2500度F)に至る温度で焼却する。このようなMSW設備で生産される多様なエネルギを再生するために、炉に隣接した金属製の水冷壁管を通して水が流され、高温により蒸気に変換される。薄膜Mによって連結された金属管Tを備える従来の水冷壁ボイラ管組体を図1に示す。この管組体で生成された蒸気はその後、タービン駆動式発電機を駆動するために使用される。しかし、MSW設備はガス生成物も生成し、このガス生成物が金属管に接触可能な場合には金属管を化学的に侵食する。ガス生成物による管への直接の侵食を防止しつつ、管を充分に加熱できるようにするために、水冷壁管と炉の炉辺との間に防護用の耐火性ライニングが設置される。 この耐火性ライニングは金属管の侵食を低減するのに役立つが、その使用により炉の炉辺から水冷壁管への熱流が妨害される。最大熱流は、ボイラ効率を獲得するために不可欠である。耐火性ライニングが不充分な熱伝達作用を有する場合は、耐火物の炉辺表面が設計範囲を超えて高温になる。温度が上昇するに従い、燃焼している燃料からの灰が炉辺表面に固着して絶縁層を形成する。一旦この現象が始まると、絶縁層は次第に厚くなり、熱伝達が極端に悪化する。次いで、燃焼ゾーンの上方の「燃焼排ガス」の速度及び温度がしばしば設計範囲を超えて増加し、炉内の下流に腐食/侵食の問題を引き起こす。さらに、灰/スラグ形成層は、それが大きくなるといずれは脱落し、燃焼ゾーンのストーカ火格子棒面積に重大な損傷を生じさせる。耐火性ライニングの伝熱効率がその厚みと反対の関係を有することは周知である。例えば0.05m(2インチ)の厚みを有する耐火物は、0.025m(1インチ)の奥行きを有する同じ防護物のたった50%の伝熱効率しか有しない。したがって、耐火性ライニングの厚みを低減するとともに耐火性ライニングを可及的に薄くするように作用する耐火性ライニング材料を使用することが、産業界で所望されている。 金属製水冷壁管と耐火性ライニングとはしばしば、炉を収容する建造物の天井からそれらを吊り下げることにより設備される。これら水冷壁管及び耐火性ライニングはしばしば約30m(100フィート)の高さに達し得るので、これら吊設された水冷壁管及び耐火性ライニングの重量は安全性に関する問題を生じる。したがって安全性を考慮することにより、耐火性防護物を可及的に薄くするためのさらなる動機づけが付与される。 産業界では、薄い耐火性防護物の必要性が考慮されてきたが、一般に性能を低下させることなくそのような防護物の奥行きを減少させることはできないと見做されている。特に、奥行きを極度に(すなわち約0.012m(1/2インチ)まで)減少させることにより、高温で管により生じる応力に抵抗できない程度まで、防護物の強度が弱まることが見出されている。したがって産業界では、最小断面において少なくとも約0.022m〜0.025m(0.875〜1.00インチ)の奥行きを有する防護物が日常的に使用されている。 MSW産業は、優れた伝熱性を維持しつつ金属製水冷壁管を同時に防護するために、様々な形式の耐火性構造物を開発してきた。そのような耐火物の1つは「一体構造」耐火物として知られている。一体構造耐火物は、離間配置された水冷壁管にセラミック材料を直接に吹付けることにより作製される。しかし幾つかの一体構造耐火物は、低い熱伝導性、低強度及び難接合性の課題を有することが知られている。これらの課題は、高い熱伝導性を妨げる過剰なスラグ堆積を生じて効率を劣化させ得るものである。 他の形式の商業的耐火物は「管タイルないしブロック」構造である。図2は従来の管ブロック構造を示す。典型的に管ブロックは、正方形又は長方形の耐火性タイルであり(典型的に0.2〜0.3m(8〜12インチ)以下の高さLと0.2〜0.3m(8〜12インチ)の幅Wと0.025m(1インチ)の奥行きDとを有する)、その背面に、水冷壁管構造に正確に適合すべく複数の溝Cと突条(ridges)Rとが形成される。耐火壁は、これらの管ブロックを布設ブロックと同様の方法で、すなわち1つの管ブロックをその表面をモルタルで被覆して適所に配置し、もう1つのブロックを最初のブロックの上方又は側方のいずれかに配置して組合せることにより構築される。この構築は、所望の壁が築造されるまで継続される。管ブロックと管組体とは一般に、スタッドSを薄膜M又は直接に水冷壁管に付加し、スタッドを管ブロックの突条Rの穴Hに挿通して、ねじAによりスタッドSを締付けることにより固定される。図3を参照のこと。一般に管ブロックの溝群は、それらが受容する金属管に直接には接触しない。溝と管とは、モルタル中間層(図示せず)によって一体に接合される。モルタルは、管と管ブロックとの間に優れた接合を付与するが、それ自体の熱伝導性が低いので炉から管への熱流を妨害する。一般に管ブロックは、一体構造物に比べて高い強度、優れた接合性及び高い熱伝導性の利点を供与する。 従来の1つの水冷壁管ブロック構造は、管ブロックを管組体の頂部から吊るすものである。例えば欧州特許公開公報第281863号は、管組体が管から延出する「複数の短いフィン」を備え、管ブロックがこれら短いフィンの上部に支持されてなる水冷壁管ブロック構造を開示する。したがってそれら短いフィンは、その上に管ブロックを引っ掛ける手段を提供する。引っ掛け式管ブロックが本質的に管に並んで吊設されるので、管ブロックの下方部分を管組体に密接すべく押付けるものがない。その結果、その間のモルタルが不足した場合には、空隙が形成され、熱伝導性を悪化させるとともに腐食の危惧を生じる。 従来の管組体が、中心を0.1m(4インチ)間隔に離間配置した直径0.076m(3インチ)の複数の金属管を備える場合、1つの管ブロックは典型的に約0.2m(7と7/8インチ)の高さと、約0.2m(7と7/8インチ)の幅と、0.025m(1インチ)の奥行きとを有する。この間隔により、管ブロック同士が密に(すなわち約0.003m(1/8インチ))取付けられ、管と管ブロック組体との間の熱流を妨害する空隙の生じる機会が減少する。 1つの商業的耐火性管ブロックは、図4に示す構造を有する。この構造は、ブロックの周縁を取巻く溝以外は、上記した従来技術構造に類似するものである。この構造は、一体防護物に比べて前述した利点を有するにも関わらず、少なくとも約0.025m(1インチ)の奥行きを有するので熱流を悪化させ、しかも重い。 他の商業的管ブロック構造は相互はぎ(ship-lap)構造である。循環流動層ボイラで本来使用される相互はぎ構造は、図5に示すように、隣接する管ブロックの間の隙間に微粒子群(砂等)が浸入することを防止する協働構造を有する。しかし協働構造は、相互はぎ構造の製造を極めて高価にする。しかも典型的な相互はぎブロックの奥行きは、少なくとも約0.022m(0.875インチ)である。この大きな奥行きは、割れに対する保護作用を管ブロックに付与するが、やはり耐火物を通る熱流を著しく妨害するとともに、非常に重いブロックが形成される。 管ブロック構造の熱伝導性を改善するために、ノートンカンパニーに譲渡された米国特許第5,154,139号(「ジョンソン特許」)は、溝内に複数のリブを備えた奥行き0.012m(1/2インチ)の管ブロックを開示する。図6に示すように、このリブ付管ブロックを管組体に対して位置決めすると、リブ群が管壁に接触する。この直接接触により、熱は熱伝導性の低いモルタルを迂回できるので、従来の他の管ブロック構造に比べて高い熱伝導性が供与される。しかもこの構造の小さな(すなわち0.012m(1/2インチ))奥行きは、その熱伝導性を向上させる。しかしジョンソン特許の商業的実施形態は、現場で故障することが発見された。特に、管ブロックの図6に「X」で示す部分に割れが生じ始めた。 したがって、軽量で、信頼でき、かつ優れた熱伝導性を有する耐火性管ブロックが所望されている。 発明の要約 図7を参照すると、本発明によれば、管ブロックと組体とを具備し、組体が、薄膜92によって相互に連結された複数の平行な管91を具備する水冷壁伝熱装置において、管ブロックは、a)基部1と、b)基部1から上方へ延びる複数の離間突条2であって、少なくとも1つの離間突条2の上面が略水平面3を画成し、それら突条が離間配置されて相互間に溝4を画成し、少なくとも1つの離間突条2の高さがその上に組体の薄膜92を据えるようなものである複数の離間突条2とを具備し、管ブロックが、管ブロックを組体に固定する手段を備える水冷壁伝熱装置が提供される。 図面の簡単な説明 図1は従来の管組体の斜視図である。 図2は従来技術による一般的な管ブロック構造の斜視図である。 図3は従来の管ブロックに固定された管組体の側面図である。 図4は従来技術構造の斜視図である。 図5は従来技術による相互はぎ構造の斜視図である。 図6は従来技術によるジョンソン特許構造の側面図である。 図7は本発明の一実施形態の側面図である。 図8は管組体に固定された本発明の一実施形態の断面図である。 図9はスタッドの周囲にカラーが巻かれ、かつスタッドを収容する管ブロック穴に蓋が設置される本発明の実施形態の図である。 図10は中央の突条が管ブロックの全長に延長されない本発明の実施形態の図である。 発明の詳細な説明 推測に縛られることは望まないが、ジョンソン特許の商業的実施形態の故障は、管ブロックと複数の金属管との間の接触部位に多大な応力が集中することに起因したと思われる。管ブロックの中央の突条を高くして管組体の薄膜を中央突条に据付けるようにすること(したがって管ブロックと複数の金属管との間の直接接触を防止すること)により、管ブロックが0.019m(0.750インチ)の薄さの奥行きを有する場合でさえも前述した故障が生じないことに予期せず気付いたのである。 図8を参照すると、管ブロック50を管組体60に対して位置決めする際に、中央突条2の水平面3は、組体のねじ付スタッド63を中央突条2に設けた穴5に挿通することにより、管組体60の薄膜62に固定される。中央突条2の高さ(水平面3から管ブロックの前面までの距離として規定される)が管ブロック50の奥行き65と管61の半径との合計を超えるので、管61は溝4に直接に接触することができない。管61と溝4との間の隙間は、好ましくは約0.003m(1/8インチ)と0.01m(3/8インチ)との間である。ねじ付スタッド63を締付けると、管ブロック50のモルタル充填(図示せず)した溝4は管組体に押付けられ、それにより空隙が排除される。モルタルは管ブロック50を管組体60に接触した状態に保持するように作用するが、取付手段すなわちスタッド63及びボルトは長期の使用の間に腐食する。 管ブロックの寸法は、最終使用用途及び適用対象炉の管寸法によって変化するであろうが、個々の管ブロックは概略として約0.15m(6インチ)〜0.3m(12インチ)の幅と0.15m(6インチ)〜0.3m(12インチ)の高さと0.016m(0.625インチ)〜0.019m(0.750インチ)の奥行きとからなる寸法を有する。しかし、中心を0.1m(4インチ)間隔に離間配置した直径0.076m(3インチ)の複数の管を備える管組体を提供する実施形態では、管ブロックの前面は僅か約0.196m(7と3/4インチ)×0.196m(7と3/4インチ)である。推測に縛られることは望まないが、0.2m(7と7/8インチ)×0.2m(7と7/8インチ)の従来構造は、管ブロック同士の間に0.003m(1/8インチ)の隙間を生成し、この隙間が管ブロックの熱膨張に対し充分な余地を残さないので早期に割れを生じ易いものと思われる。本発明のこの実施形態(すなわち相互間に0.006m(1/4インチ)の隙間を形成するブロック群)の寸法縮小により、管ブロックへの応力はさらに軽減されるであろうと思われる。管ブロック50の奥行き65は、典型的に約0.013m(0.5インチ)と0.025m(1.0インチ)との間であり、好ましくは約0.013m(0.5インチ)と0.019m(0.750インチ)との間である。この奥行きの削減により、従来の0.025m(1インチ)管ブロックよりも熱伝導率が約33%増加すると思われる。さらに寸法削減により、管ブロックの重量が軽減される。0.196m(7と3/4インチ)×0.196m(7と3/4インチ)×0.019m(0.750インチ)の管ブロックが本質的にオキシナイトライド(oxynitride)又は窒化物結合(nitride-bonded)炭化珪素からなる一実施形態では、管ブロックの重量は僅か約28.86N(6.5ポンド)である。 離間した3つの突条を備える実施形態では、中央の突条は両側の突条よりも遠くへ延びる。典型的にこの延出寸法は、両側の突条の延出寸法よりも0.013m(0.5インチ)〜0.025m(1.0インチ)だけ長い。 管ブロックを使用した主燃焼ゾーン(又は第1通路)で発生する極高温のために、管ブロックは典型的に炭化珪素からなり、好ましくはオキシナイトライド(oxynitride)、窒化物又は酸化物結合(nitride- or oxide-bonded)炭化珪素からなる。しかしアルミナ、ジルコニア及びカーボン等の、他の適当な耐火性材料を採用することもできる。本質的な耐火性材料に加えて、管ブロックは高い熱伝導性結合系をさらに含む。好適な管ブロック組成物は、約80部〜約95部の炭化珪素と、約5部〜約20部の窒化物又は酸化物基材の材料等の接着剤とを含有する。さらに好ましいブロックは、マサチューセッツ州ウスターのノートンカンパニーから各々入手可能なCN-163、CN-183、CN-127若しくはCN-101のいずれか、又は比較可能な耐火物から形成される。 管ブロックの製造で典型的に使用される従来のあらゆる技術を、本発明を作製するために使用できる。好適な実施形態では、炭化珪素粒子と結合剤とを有する混合物を、乾式成形機(a dry press)に装填して未処理体へとプレス成形し、次いでこの未処理体を、酸素又は窒素雰囲気を有するトンネル窯内で乾燥かつ燃焼して、加熱耐火物を生成する。 本発明で使用される耐火性モルタルは、あらゆる適当な組成物から形成でき、好ましくは管ブロックと複数の水冷壁管との間に最高の熱伝導率及び伝熱性を付与する組成物から形成できる。適当なモルタル組成物は、一般に炭化珪素を基材とし、管ブロックと金属製水冷壁管とに強固に接着する接着剤をさらに含有する。好適な実施形態では、モルタルは銅金属と炭化珪素とを含有する。さらに好ましいモルタルは、マサチューセッツ州ウスターのノートンカンパニーから入手可能な銅含有モルタルMC-1015である。 図示しないが、管組体の隣接部位に追加の管ブロックを設置することができる。ボイラの寸法に応じて、通常は複数の管ブロックを互いに上下及び両側に配置し、保護の必要性に従って主燃焼ゾーン内の水冷壁管の大部分を覆うようにする。従来のMSW設備においてこれらの管ブロックは、劣化を被る水冷壁管全体を燃焼生成物から被覆するために普通は使用される。 本発明の幾つかの実施形態では、管ブロック50を管組体60に固定するスタッド63の周囲にセラミックカラー10が巻かれ、スタッド63を収容する管ブロックの穴5に蓋11が設置される。図9を参照のこと。このような変更例は、スタッドを比較的低温に保持してその腐食を遅らせるものと思われる。 幾つかの実施形態では、管ブロックの延設突条20はブロックの全長に延びず、穴5の周辺にのみ延設される。図10を参照のこと。この構造は、長尺管の熱膨張が軸方向へ不均一な力をブロック上に生じるような、大型炉で使用されるブロックへの応力を軽減するのに有用であると思われる。ある実施形態では、突条は基部の約50%以下に延びる。 幾つかの実施形態では、従来の管ブロック耐火装置が、従来の管ブロックの中央突条の水平面上に耐火性ストリップ(典型的に約0.013m(0.5インチ)×0.165m(6.5インチ)×0.015m(0.625インチ))を設置することにより、部分変更される。この変更例は、耐火性管ブロックを水冷壁管の表面から僅かに持上げて、水冷壁管の著しい膨張により生じた高応力を軽減するとともに管ブロック装置の完全性を高める、という所望の結果をも生じることが分かっている。 |
訂正の要旨 |
本件訂正請求は、以下の事項について訂正するものである。 (ア)特許請求の範囲の請求項1を下記のとおりとする。 「請求項1 管ブロックと組体とから構成され、該組体が、少なくとも1つの薄膜によって相互に連結された複数の平行な管を具備し、該管ブロックが、基部と、該基部から外方へ延びる複数の平行に離間した突条とを具備し、少なくとも1つの該突条の表面が前記薄膜を受ける面を構成して、該薄膜が該突条の該面に固定され、それら離間した突条が相互間に、前記複数の管をそれぞれに受容する複数の平行な溝を形成してなる水冷壁伝熱装置において、前記薄膜が固定される前記突条の、前記基部からの高さが、前記複数の平行な管と前記複数の平行な溝との間に隙間を形成する寸法であるとともに、複数の平行な管と前記管ブロックとの直接接触を防止する寸法であることを特徴とする水冷壁伝熱装置。」 (イ)特許請求の範囲の請求項10〜15を削除する。 |
異議決定日 | 2002-06-14 |
出願番号 | 特願平8-501229 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YA
(F22B)
|
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 鈴木 敏史 |
特許庁審判長 |
青山 紘一 |
特許庁審判官 |
櫻井 康平 井上 茂夫 |
登録日 | 1999-10-01 |
登録番号 | 特許第2986917号(P2986917) |
権利者 | サン-ゴバン/ノートン インダストリアル セラミックス コーポレイション |
発明の名称 | 新しい水冷壁管ブロック構造 |
代理人 | 金山 敏彦 |
代理人 | 辻本 重喜 |
復代理人 | 島田 哲郎 |
代理人 | 西山 雅也 |
代理人 | 石田 敬 |
復代理人 | 廣瀬 繁樹 |
代理人 | 石田 敬 |
代理人 | 辻本 重喜 |
代理人 | 戸田 利雄 |
代理人 | 戸田 利雄 |
代理人 | 西山 雅也 |