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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B
管理番号 1065387
審判番号 不服2001-19577  
総通号数 35 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-01-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-11-01 
確定日 2002-09-25 
事件の表示 平成 5年特許願第 20612号「衛星通信を利用した受信端末装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 7年 1月31日出願公開、特開平 7- 30476]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成5年1月12日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。
「衛星通信により送受信される各種データを受信するための受信端末母体と可搬型端末とからなり、上記受信端末母体にはチューナと、受信データを処理すると共に周辺装置を制御するCPUと、バッファとして機能するRAMと、受信データを蓄積する記憶装置と、上記記憶装置内の蓄積データから任意のデータを選択するためのキーボードとを備え、上記可搬型端末にはデータを読み書きするメモリと、読み出すデータを選択する操作パネルと読み出したデータを表示する表示パネルとを備え、上記端末母体に上記可搬型端末を接続あるいは挿入することで、上記可搬型端末に母体で受信した各種データを選択的に書き込むことを特徴とした受信端末装置。」

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開平2-26191号公報(平成2年1月29日出願公開、以下、「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。
A.「本発明は、放送局の特定の情報を確実に取得可能とした可搬型端末機付きインテリジェント・テレビジョン装置に係わり、特に登録受信者の家庭等に設置され放送局から送信されてくる所望とする情報を取り込んで記憶すると共にその登録受信者が必要な時にキーボードから領域指定を行って記憶情報から特定の情報を読出して表示装置に表示し、また前記記憶情報を可搬型端末機に移し替えて本体と分離して適宜な時期にその情報を利用可能とする可搬型端末機付きインテリジェント・テレビジョン装置に関する。」(第2頁左上欄第8〜18行)
B.「第1図は本発明装置のシステム構成図であって、10は常時,特定の番組情報または使用料金の安い時間帯(例えば夜間)のときに発信情報,種別情報のほか、映像情報(文字情報を含む)を空中線として送信する放送局である。
20は可搬型端末機付インテリジェント・テレビジョン装置であって、これは前記放送局10からの発信情報,種別情報,映像情報等を受信すると共に発信情報を受けて装置20の電源をオン制御する受信器21、この受信器21で受信した発信情報を除く情報をコード変換して出力するコード変換部22および中央演算処理部(以下、CPUと指称する)23等が設けられている。このCPU23にはバスを介して大容量記憶装置24が設けられている。このCPU23のメモリあるいは大容量記憶装置24の何れかに予め登録受信者において特定の情報を取得したい場合にはその特定の情報ごとの種別情報が記憶されている。従って、CPU23はコード変換部22からの情報のうち放送局10から送信されてくる種別情報と予めメモリ等に格納されている種別情報とを照合し一致したとき映像情報等を大容量記憶装置24の所定のエリアに特定の情報ごとに順次ファイルしていく。ここで、特定の情報とは例えば国内ニュース情報あるいは国外ニュース情報等が上げられる。この大容量記憶装置24の記憶情報は、登録受信者において必要な時例えば帰宅後等にキーボード25から索引用コードを指定したとき、CPU23で読出してCRT表示装置26に表示する構成となっている。・・・(中略)・・・
次に、このインテリジェント・テレビジョン装置20においては、CPU23に入出力ポート28を介して可搬型端末機29が接続されている。この可搬型端末機29はフロッピーディスケット30の装着が可能となっている。従って、登録受信者は必要な時例えば朝の出勤前等に可搬型端末機29にフロッピーディスケット30を装着し、キーボード25から領域指定のための索引用コードを入力すれば、CPU23はその索引用コードにしたがって所望とする情報を大容量記憶装置24から読出してフロッピーディスケット30に書込むことができる。その結果、登録受信者はテレビ装置本体から可搬型端末機29を離脱し携帯しながら適宜な時に特定の情報を視聴可能となる。
この可搬型端末機29は、第2図に示す外観図から明らかなようにテレビ装置本体から取り外し可能に取付けられ、かつ、ハード的には第3図に示すようなシステム構成となっている。すなわち、この可搬型端末機29は、前記入出力ポート28を介してCPU23と接続される可搬型演算制御部291、この演算制御部291の指令に基づいて動作し前記大容量記憶装置24から読み出した記憶情報をフロッピーディスケット30に格納するフロッピー駆動装置292、このフロッピーディスケット30に格納された情報の読出し指令を行う可搬型キーボード293およびフロッピーディスケット30から情報を読出して表示するLCD表示装置294等で構成され・・・(中略)・・・ている。」(第3頁右下欄第9行〜第4頁左下欄第15行、及び第1〜3図参照)

上記A.〜B.の記載事項、及び第1〜3図を参照すると、引用例には、次の発明(以下、「引用例記載の発明」という。)が記載されていると認められる。
放送局10から送信されてくる映像情報(文字情報を含む)等を受信するためのテレビ装置本体と可搬型端末機29とからなり、上記テレビ装置本体には受信器21と、映像情報等を処理すると共にCRT表示装置26等を制御するCPU23と、映像情報等を記憶する大容量記憶装置24と、上記大容量記憶装置24内の記憶情報から任意の情報を選択するためのキーボード25とを備え、上記可搬型端末機29には情報を読み書きするフロッピーディスケット30と、読み出す情報を選択する可搬型キーボード293と読み出した情報を表示するLCD表示装置294とを備え、上記テレビ装置本体に上記可搬型端末機29を接続することで、上記可搬型端末機29にテレビ装置本体で受信した映像情報等を選択的に書き込む可搬型端末機付きインテリジェント・テレビジョン装置20。

3.対比
本願発明と引用例記載の発明とを対比すると、まず、引用例記載の発明における「映像情報(文字情報を含む)等」、「テレビ装置本体」、「可搬型端末機29」は、それぞれ、本願発明における「各種データ」、「受信端末母体」、「可搬型端末」に対応する。
そして、引用例記載の発明における「テレビ装置本体」及び本願発明における「受信端末母体」の構成要素として、引用例記載の発明における「受信器21」、「映像情報等を処理すると共にCRT表示装置26等を制御するCPU23」、「映像情報等を記憶する大容量記憶装置24」、「大容量記憶装置24内の記憶情報から任意の情報を選択するためのキーボード25」は、それぞれ、本願発明における「チューナ」、「受信データを処理すると共に周辺装置を制御するCPU」、「受信データを蓄積する記憶装置」、「記憶装置内の蓄積データから任意のデータを選択するためのキーボード」に対応する。
また、引用例記載の発明における「可搬型端末機29」及び本願発明における「可搬型端末」の構成要素として、引用例記載の発明における「情報を読み書きするフロッピーディスケット30」は、情報を記憶するメモリの一種であることは明らかであるから、本願発明における「データを読み書きするメモリ」に対応する。
さらに、同じく、引用例記載の発明における「可搬型端末機29」及び本願発明における「可搬型端末」の構成要素として、引用例記載の発明における「読み出す情報を選択する可搬型キーボード293」、「読み出した情報を表示するLCD表示装置294」は、本願発明における「読み出すデータを選択する操作パネル」、「読み出したデータを表示する表示パネル」に対応する。
そして、本願発明において、「端末母体に可搬型端末を接続あるいは挿入することで、上記可搬型端末に母体で受信した各種データを選択的に書き込むことを特徴とした受信端末装置」となっており、「端末母体」に対して「可搬型端末」は、「接続」するのでも「挿入」するのでもよいのであるが、そのうち、「接続」するものについての上記記載は、引用例記載の発明における「テレビ装置本体に可搬型端末機29を接続することで、上記可搬型端末機29にテレビ装置本体で受信した映像情報等を選択的に書き込む可搬型端末機付きインテリジェント・テレビジョン装置20」に対応する。

よって、本願発明と引用例記載の発明とは、
各種データを受信するための受信端末母体と可搬型端末とからなり、上記受信端末母体にはチューナと、受信データを処理すると共に周辺装置を制御するCPUと、受信データを蓄積する記憶装置と、上記記憶装置内の蓄積データから任意のデータを選択するためのキーボードとを備え、上記可搬型端末にはデータを読み書きするメモリと、読み出すデータを選択する操作パネルと読み出したデータを表示する表示パネルとを備え、上記端末母体に上記可搬型端末を接続することで、上記可搬型端末に母体で受信した各種データを選択的に書き込む受信端末装置
である点で一致し、次の点が相違する。
相違点(1):各種データが、本願発明においては、「衛星通信により送受信される」ものであるのに対し、引用例記載の発明においては、「放送局10から送信されてくる」ものである点。
相違点(2):受信端末母体が、本願発明においては、「バッファとして機能するRAM」を備えるのに対し、引用例記載の発明においては、そのようなバッファとして機能するRAMを備えるのかどうかが明らかでない点。

4.当審の判断
上記相違点(1)、(2)について検討する。
[相違点(1)について]
一般に、通信技術において、衛星通信により各種データの送受信を行うことは、本願出願前周知技術にすぎないから、引用例記載の発明において、映像情報(文字情報を含む)等を衛星通信により送受信されるものとすることは、当業者が適宜になし得ることにすぎないものと認められる。

[相違点(2)について]
一般に、データを記憶装置に記憶させる場合、バッファとして機能するRAMを介してデータを記憶装置に記憶させるようにすることは、本願出願前ごく普通に行われていることにすぎないから、引用例記載の発明において、テレビ装置本体に「バッファとして機能するRAM」を設けるようにすることは、当業者が適宜になし得ることにすぎないものと認められる。

そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、引用例記載の発明から当業者ならば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

なお、請求人は、審判請求書において、「日経BP社2000年5月発行のデジタル用語事典2000-2001年版」(正確には、「日経BPデジタル大事典2000-2001年版」であると思われる。)の記載を引用し、当業者において一般にメモリとは、「主記憶装置(メインメモリーともいう)を指してメモリーという場合が多い。」のである旨の主張をしているが、上記事典の上記記載の前段には、「メモリー」の説明として、「コンピュータ内部で使用されるデータやプログラムを一時的に蓄え、必要な場合に取り出すことのできる記憶装置。主記憶装置と、フロッピーディスク装置やハードディスク装置などの補助記憶装置がある」との記載がなされており、上記事典において、たとえ、主記憶装置(メインメモリーともいう)を指してメモリーという場合が多いと記載されていたとしても、フロッピーディスク装置などの補助記憶装置がメモリの概念に含まれないと記載されているわけではない。
よって、本願発明にいう「メモリ」が、引用例記載の発明における「フロッピーディスケット30」とは明らかに使い分けられているとする請求人の主張を採用することはできない。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用例記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-07-18 
結審通知日 2002-07-23 
審決日 2002-08-05 
出願番号 特願平5-20612
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 聡史  
特許庁審判長 馬場 清
特許庁審判官 長島 孝志
吉見 信明
発明の名称 衛星通信を利用した受信端末装置  
代理人 濱田 俊明  

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