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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03B
管理番号 1065572
審判番号 不服2002-2481  
総通号数 35 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-05-13 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-02-14 
確定日 2002-10-04 
事件の表示 平成 4年特許願第306174号「電動ズーム機能を有するカメラ」拒絶査定に対する審判事件[平成 6年 5月13日出願公開、特開平 6-130445]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成4年10月19日に出願した特願平4-306174号であって、その請求項1に係る発明は、平成14年2月14日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という)
「カメラ本体と、
このカメラ本体に取り付けられ、モータを介してズーミングさせる事のできる電動ズームレンズと、
前記電動ズームレンズを露光動作中に駆動させる露光間ズーム制御手段と、
前記電動ズームレンズでの現在の焦点距離を検出する検出手段と、
前記電動ズームレンズのテレ端およびワイド端のそれぞれの焦点距離を検出する第2の検出手段と、
前記電動ズームレンズのテレ端とワイド端の間の位置を表す基準値を、前記第2の検出手段によって検出されたテレ端の焦点距離をF1、ワイド端の焦点距離をF2、Aを0<A<1の定数として、下記の定義、
基準値=(F1+F2)×A
で算出し、該算出された基準値と、前記検出手段によって検出される現在の焦点距離とを比較し、前記比較の結果に基づいて露光間ズーム動作におけるズーム駆動の方向を規定するズーム方向規定手段と、
を備えることを特徴とする電動ズーム機能を有するカメラ。」

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願日前の平成4年8月3日に頒布された特開平4-212134号公報(以下、「引用例1」という)には、次の事項が記載されている。
(1)「本発明は、フィルム露光中にズームレンズを駆動する露光間ズーミング機構を有するカメラに関する。」(【0001】【産業上の利用分野】)

(2)「上記の課題を解決するために、本発明の露光間ズーミング装置を有するカメラは、電動ズームレンズを用いて露光間ズーミングを行う露光間ズーミング装置とストロボ発光手段とを有し、この露光間ズーミング装置とストロボ発光手段が、露光時間を決定する露光時間決定手段と、シャッタ機構の開閉を行う露出制御部と、前記シャッタ機構が「開」状態になってからの時間を測る計時手段と、前記ズームレンズにズーミング動作を行なわせるズームレンズ制御手段と、ストロボの発光を制御するストロボ制御手段とを具備し、前記露出制御部が前記シャッタ機構を「開」状態にし、前記計時手段の計時した時間が前記露光時間決定手段の決定した露光時間と一致した時に、前記ストロボ制御手段により前記ストロボを発光し、その後、前記ズームレンズ制御手段により前記電動ズームレンズに所定のズーミング動作を行なわせ、このズーミング動作の終了後に前記露出制御部が前記シャッタ機構を「閉」状態にするものである。」(【0008】【課題を解決するための手段】)

(3)「図において、・・・109はズームレンズ、110はズームレンズ109を駆動させるズームレンズ駆動手段、111はズームレンズ109の位置を検出するズームレンズ位置検出手段、112は露光間ズーミングを行なう際のズーミングの方向を決定するためのデータを記憶する記憶手段、113はズーミングの方向を指示するためのズーミング方向指示手段、115はレリーズボタンの1段目のスイッチ(以下、ファーストレリーズと記す)、116はズーミング方向指示手段の出力をズームレンズ駆動(「記憶」は、誤記と認める。)手段110に入力させるか記憶手段112に入力させるかを選択する切換えスイッチである。」(【0012】)

(4)「・・・ズーミングは、ズームレンズ位置検出手段111によりズームレンズの端部が検出されたとき或いはズーミングタイマ108が所定の計時を終えたときに終了する。」(【0013】)

(5)「パワーズームとは、ZOOM・TELEスイッチおよびZOOM・WIDEスイッチをモニタし、操作されているスイッチの方向にズームモータ265を回転させ、このZOOM・TELEスイッチ或いはZOOM・WIDEスイッチがオフされるとズームモータ265を停止させるものである。」【0060】

(6)「倍率は数点があらかじめ決められていて、上記A052で求められている被写体距離のデータと選択された倍率とにより、焦点距離が求められる。A128では、この求められた焦点距離に相当する位置までズーミングを行なう。ここで、ズーミングの制御は、ズームエンコーダ266の値を、メインCPU200に、インターフェイスIC210を介して通信で入力することにより行なう。(【0064】)

(7)「露光間ズーミングが選択されている場合(F044)には、F046で、この露光間ズーミングを行なう。露光間ズーミングとは、文字通り、露光中にズーミングを行なって、レンズの焦点距離を連続的に変化させる撮影方法である。本実施例のカメラにおいては、露出開始前にZOOM・WIDEスイッチ或いはZOOM・TELEスイッチによって指示された方向に、露出時間と等しい時間、或いはレンズが端部に当てつくまで、ズーミングを行なう。以上の処理が終了すると、F048で後幕を走らせて露出を終了し、続いて、F050でミラーダウン、絞り開放等を行なって次回の露出に備える。」(【0085】)

引用例1の「カメラは、電動ズームレンズを用いて露光間ズーミングを行う露光間ズーミング装置とストロボ発光手段とを有し」の記載からカメラ本体に電動ズームレンズが取り付けられていることは明らかである。また、上記記載事項(3)、(6)等から引用例1のズームレンズ位置検出手段111は、焦点距離を検出する検出手段と言えることは明らかである。また、上記記載事項(4)の「ズームレンズ位置検出手段111によりズームレンズの端部が検出されたとき」の記載から、ズームレンズ位置検出手段111は、ズームレンズのテレ端とワイド端のそれぞれの焦点距離を検出する検出手段であることも明らかである。また、上記記載事項全般から、引用例1のものも電動ズームレンズを露光動作中に駆動させる露光間ズーム制御手段を有していることは明らかである。
したがって、引用例1には、図1、図9も参照すれば、カメラ本体と、このカメラ本体に取り付けられ、モータを介してズーミングさせる事のできる電動ズームレンズと、前記電動ズームレンズを露光動作中に駆動させる露光間ズーム制御手段と、前記電動ズームレンズでの現在の焦点距離と、テレ端およびワイド端のそれぞれの焦点距離とを、検出する検出手段と、露光間ズーム動作におけるズーム駆動の方向を指示するズーミング方向指示手段と、を備えることを特徴とする電動ズーム機能を有するカメラ。(以下、「引用発明」という。)、が記載されている。

3.対比
本願発明と、引用発明とを対比すると、前者の「ズーム方向規定手段」、後者の「ズーミング方向指示手段」は、共にズーム駆動の方向を決定するものであるので、とりあえず「ズーム方向決定手段」と呼ぶこととすると、両者は、「カメラ本体と、このカメラ本体に取り付けられ、モータを介してズーミングさせる事のできる電動ズームレンズと、前記電動ズームレンズを露光動作中に駆動させる露光間ズーム制御手段と、前記電動ズームレンズの焦点距離を検出する検出手段と、ズーム駆動の方向を決定するズーム方向決定手段と、を備えることを特徴とする電動ズーム機能を有するカメラ」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1;本願発明は、ズームレンズの焦点距離を検出する検出手段を、現在の焦点距離を検出する検出手段と、テレ端およびワイド端のそれぞれの焦点距離を検出する第2の検出手段としているのに対し、引用発明では、焦点検出手段で両者を兼ねている点。

相違点2;本願発明は、ズーム方向決定手段が、電動ズームレンズのテレ端とワイド端の間の位置を表す基準値を、前記第2の検出手段によって検出されたテレ端の焦点距離をF1、ワイド端の焦点距離をF2、Aを0<A<1の定数として、下記の定義、
基準値=(F1+F2)×A
で算出し、該算出された基準値と、前記検出手段によって検出される現在の焦点距離とを比較し、前記比較の結果に基づいて露光間ズーム動作におけるズーム駆動の方向を規定するズーム方向規定手段からなるのに対し、引用発明では、ズーミング方向指示手段からなっている点。

4.当審の判断
上記各相違点について検討する。
相違点1について;現在の焦点距離を検出する検出手段と、テレ端およびワイド端のそれぞれの焦点距離を検出する検出手段とで、焦点距離を検出する構成、作用・効果に格別の差異があるわけではないので、それらを区別するか否かは当業者が必要に応じて選択し得る設計事項である。

相違点2について;レンズの駆動方向を現在のレンズ位置に応じて決定することは、従来周知(例えば、特開平2-37332号公報、特開平2-154234号公報等参照)である。本願発明は、基準値=(F1+F2)×Aと比較して決定するものであるが、基準値自体、ズームレンズの端部も含め駆動範囲の全てを包含するものであり、それと比較するということは、結局、現在のレンズ位置に応じて決定することと、何ら変わりはない。したがって、相違点2のように限定することは、当業者にとって容易なことである。

5.むすび
したがって、本願発明は、上記引用例1に記載された発明、及び従来周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-08-07 
結審通知日 2002-08-07 
審決日 2002-08-26 
出願番号 特願平4-306174
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 江塚 政弘吉川 陽吾  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 國島 明弘
北川 清伸
発明の名称 電動ズーム機能を有するカメラ  
代理人 松岡 修平  

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