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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
管理番号 1065902
異議申立番号 異議2001-73131  
総通号数 35 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-02-20 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-11-21 
確定日 2002-07-26 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3167625号「基板のウェット洗浄方法」の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3167625号の請求項1ないし5に係る特許を取り消す。 
理由 第1 手続の経緯
特許第3167625号の請求項1ないし5に係る発明についての出願は、平成8年7月29日に出願され、平成13年3月9日に設定登録がされ、その後、特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成14年4月22日に訂正請求がなされたものである。
第2 訂正の適否
1 訂正請求の内容
(1)訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1における「基板上の付着物を除去するための基板のウェット洗浄方法において、」を、「基板上の有機物あるいは無機物の付着物を除去するための基板のウェット洗浄方法において、」と訂正し、また、「洗浄剤を使用する直前に、大気中において波長が172nmにピークをもつ紫外線を基板の表面に照射することを特徴とする基板のウェット洗浄方法。」を、「洗浄剤を使用するブラシ洗浄の直前に、大気中において波長が172nmにピークをもつ紫外線を基板の表面に照射し、下記式1および式2で示す生成反応式によって発生したオゾンラジカルにより前記基板の表面の有機物の汚れを酸化分解して除去するとともに、下記式1および式2で示す生成反応式によって発生したオゾンラジカルにより前記基板の表面張力を下げて濡れ性を向上し、前記洗浄剤を使用する前記ブラシ洗浄のときに前記基板の表面の無機物の汚れの除去効率を向上させて、前記基板の表面の付着物を除去することを特徴とする基板のウェット洗浄方法。
【化1】
172nm オゾンラジカル
(式1) O2 → O(1D)
【化2】
172nm オゾンラジカル
(式2) O2 → O3 → O(1D)
」と訂正する。
(2)訂正事項b
特許請求の範囲の請求項2における「基板上の付着物を除去するための基板のウェット洗浄方法において、」を、「基板上の有機物あるいは無機物の付着物を除去するための基板のウェット洗浄方法において、」と訂正し、また、「洗浄剤を使用する直前に、基板を加熱し、加熱された前記基板の表面に大気中において波長が172nmにピークをもつ紫外線を基板の表面に照射することを特徴とする基板のウェット洗浄方法。」を、「洗浄剤を使用するブラシ洗浄の直前に、基板を加熱し、加熱された前記基板の表面に大気中において波長が172nmにピークをもつ紫外線を照射し、下記式1および式2で示す生成反応式によって発生したオゾンラジカルにより前記基板の表面の有機物の汚れを酸化分解して除去し、該基板の表面の有機物の汚れの酸化分解の効果を前記基板の加熱により向上させるとともに、下記式1および式2で示す生成反応式によって発生したオゾンラジカルにより前記基板の表面張力を下げて濡れ性を向上し、前記洗浄剤を使用する前記ブラシ洗浄のときに前記基板の表面の無機物の汚れの除去効率を向上させて、前記基板の表面の付着物を除去することを特徴とする基板のウェット洗浄方法。
【化3】
172nm オゾンラジカル
(式1) O2 → O(1D)
【化4】
172nm オゾンラジカル
(式2) O2 → O3 → O(1D)
」と訂正する。
(3)訂正事項c
特許請求の範囲の請求項3における「基板上の付着物を除去するための基板のウェット洗浄方法において、」を、「基板上の有機物あるいは無機物の付着物を除去するための基板のウェット洗浄方法において、」と訂正し、また、「洗浄剤を使用する直前に、大気中において波長が172nmにピークをもつ紫外線と遠赤外線とを基板の表面に照射することを特徴とする基板のウェット洗浄方法。」を、「洗浄剤を使用するブラシ洗浄の直前に、大気中において波長が172nmにピークをもつ紫外線と遠赤外線とを基板の表面に照射し、下記式1および式2で示す生成反応式によって発生したオゾンラジカルにより前記基板の表面の有機物の汚れを酸化分解して除去し、該基板の表面の有機物の汚れの酸化分解の効果を前記基板の表面への遠赤外線の照射により向上させるととも、下記式1および式2で示す生成反応式によって発生したオゾンラジカルにより前記基板の表面張力を下げて濡れ性を向上し、前記洗浄剤を使用する前記ブラシ洗浄のときに前記基板の表面の無機物の汚れの除去効率を向上させて、前記基板の表面の付着物を除去することを特徴とする基板のウェット洗浄方法。
【化5】
172nm オゾンラジカル
(式1) O2 → O(1D)
【化6】
172nm オゾンラジカル
(式2) O2 → O3 → O(1D)
」と訂正する。
(4)訂正事項d
特許請求の範囲の請求項4における「請求項3に記載の基板のウエット洗浄方法において、前記波長が172nmにピークをもつ紫外線を前記基板の一方の側の表面に照射し、前記遠赤外線を前記基板の他方の側の表面に照射することを特徴とする基板のウェット洗浄方法。」を、「基板上の有機物あるいは無機物の付着物を除去するための基板のウェット洗浄方法において、
洗浄剤を使用するブラシ洗浄の直前に、大気中において波長が172nmにピークをもつ紫外線を前記基板の一方の側の表面に照射し、遠赤外線を前記基板の他方の側の表面に照射し、下記式1および式2で示す生成反応式によって発生したオゾンラジカルにより前記基板の一方の側の表面の有機物の汚れの酸化分解して除去し、該基板の一方の側の表面の有機物の汚れの酸化分解の効果を前記基板の他方の側の表面への遠赤外線の照射により向上させるとともに、下記式1および式2で示す生成反応式によって発生したオゾンラジカルにより前記基板の表面張力を下げて濡れ性を向上し、前記洗浄剤を使用する前記ブラシ洗浄のときに前記基板の一方の側の表面の無機物の汚れの除去効率を向上させて、前記基板の表面の付着物を除去することを特徴とする基板のウェット洗浄方法。
【化7】
172nm オゾンラジカル
(式1) O2 → O(1D)
【化8】
172nm オゾンラジカル
(式2) O2 → O3 → O(1D)
」と訂正する。
(5)訂正事項e
特許明細書の段落番号【0009】における「【課題を解決するための手段】」を、
「【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、基板上の有機物あるいは無機物の付着物を除去するための基板のウェット洗浄方法において、洗浄剤を使用するブラシ洗浄の直前に、大気中において波長が172nmにピークをもつ紫外線を基板の表面に照射し、下記式1および式2で示す生成反応式によって発生したオゾンラジカルにより上記基板の表面の有機物の汚れを酸化分解して除去するとともに、下記式1および式2で示す生成反応式によって発生したオゾンラジカルにより前記基板の表面張力を下げて濡れ性を向上し、上記洗浄剤を使用する上記ブラシ洗浄のときに上記基板の表面の無機物の汚れの除去効率を向上させて、上記基板の表面の付着物を除去するようにしたものである。
【化1】
172nm オゾンラジカル
(式1) O2 → O(1D)
【化2】
172nm オゾンラジカル
(式2) O2 → O3 → O(1D)
」と訂正する。
(6)訂正事項f
特許明細書の段落番号【0011】の記載を、「従って、本発明のうち請求項1に記載の発明によれば、基板上の有機物あるいは無機物の付着物を除去するための基板のウェット洗浄方法において、洗浄剤を使用するブラシ洗浄の直前に、基板の表面に波長が172nmにピークをもつ紫外線を大気中で照射することにより、図2の式1および式2に示す生成反応式によってオゾンラジカルが発生される。これら式1および式2の2つの生成反応式によると、特開平5-224167号公報に開示された洗浄方法たる波長が184.9nmと253.7nmとの紫外線の同時照射によるよりも、オゾンラジカルを効率よく多量に発生することができ、オゾンラジカルを高濃度に発生することができる。」と訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無および拡張・変更の存否
(1)訂正事項aについて
この訂正は、特許請求の範囲の請求項1において、 付着物を「有機物あるいは無機物の付着物」に限定し、また、洗浄剤を使用するウエット洗浄について、「洗浄剤を使用するブラシ洗浄」と限定すると共に、オゾンラジカルの発生方法とオゾンラジカルの付着物除去の機能を「下記式1および式2で示す生成反応式によって発生したオゾンラジカルにより前記基板の表面の有機物の汚れを酸化分解して除去するとともに、下記式1および式2で示す生成反応式によって発生したオゾンラジカルにより前記基板の表面張力を下げて濡れ性を向上し、前記洗浄剤を使用する前記ブラシ洗浄のときに前記基板の表面の無機物の汚れの除去効率を向上させて、前記基板の表面の付着物を除去する
【化1】
172nm オゾンラジカル
(式1) O2 → O(1D)
【化2】
172nm オゾンラジカル
(式2) O2 → O3 → O(1D)
」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮に該当する。また、この訂正は、特許明細書の段落番号【0001】と、同【0010】と、同【0012】と、同【0022】と、同【0027】との記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
(2)訂正事項bについて
特許請求の範囲の請求項2において、付着物を「有機物あるいは無機物の付着物」に限定し、また、洗浄剤を使用するウエット洗浄について、「洗浄剤を使用するブラシ洗浄」と限定すると共に、オゾンラジカルの発生方法とオゾンラジカルの付着物除去の機能を「下記式1および式2で示す生成反応式によって発生したオゾンラジカルにより前記基板の表面の有機物の汚れを酸化分解して除去し、該基板の表面の有機物の汚れの酸化分解の効果を前記基板の加熱により向上させるとともに、下記式1および式2で示す生成反応式によって発生したオゾンラジカルにより前記基板の表面張力を下げて濡れ性を向上し、前記洗浄剤を使用する前記ブラシ洗浄のときに前記基板の表面の無機物の汚れの除去効率を向上させて、前記基板の表面の付着物を除去する
【化3】
172nm オゾンラジカル
(式1) O2 → O(1D)
【化4】
172nm オゾンラジカル
(式2) O2 → O3 → O(1D)
」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮に該当する。また、この訂正は、特許明細書の段落番号【0001】と、同【0010】と、同【0011】と、同【0013】と、同【0022】と、同【0025】と、同【0027】との記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
(3)訂正事項cについて
特許請求の範囲の請求項3において、付着物を「有機物あるいは無機物の付着物」に限定し、また、洗浄剤を使用するウエット洗浄について、「洗浄剤を使用するブラシ洗浄」と限定すると共に、オゾンラジカルの発生方法とオゾンラジカルの付着物除去の機能を「下記式1および式2で示す生成反応式によって発生したオゾンラジカルにより前記基板の表面の有機物の汚れを酸化分解して除去し、該基板の表面の有機物の汚れの酸化分解の効果を前記基板の表面への遠赤外線の照射により向上させるととも、下記式1および式2で示す生成反応式によって発生したオゾンラジカルにより前記基板の表面張力を下げて濡れ性を向上し、前記洗浄剤を使用する前記ブラシ洗浄のときに前記基板の表面の無機物の汚れの除去効率を向上させて、前記基板の表面の付着物を除去する
【化5】
172nm オゾンラジカル
(式1) O2 → O(1D)
【化6】
172nm オゾンラジカル
(式2) O2 → O3 → O(1D)
」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮に該当する。また、この訂正は、特許明細書の段落番号【0001】と、同【0010】と、同【0011】と、同【0014】と、同【0022】と、同【0025】と、同【0027】との記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
(4)請求項dについて
特許請求の範囲の請求項4を、請求項3の従属項から独立項に記載を改めて、付着物を「有機物あるいは無機物の付着物」と限定し、また、洗浄剤を使用するウエット洗浄について、「洗浄剤を使用するブラシ洗浄」と限定すると共に、オゾンラジカルの発生方法とオゾンラジカルの付着物除去の機能を「下記式1および式2で示す生成反応式によって発生したオゾンラジカルにより前記基板の一方の側の表面の有機物の汚れの酸化分解して除去し、該基板の一方の側の表面の有機物の汚れの酸化分解の効果を前記基板の他方の側の表面への遠赤外線の照射により向上させるとともに、下記式1および式2で示す生成反応式によって発生したオゾンラジカルにより前記基板の表面張力を下げて濡れ性を向上し、前記洗浄剤を使用する前記ブラシ洗浄のときに前記基板の一方の側の表面の無機物の汚れの除去効率を向上させて、前記基板の表面の付着物を除去する
【化7】
172nm オゾンラジカル
(式1) O2 → O(1D)
【化8】
172nm オゾンラジカル
(式2) O2 → O3 → O(1D)
」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮に該当する。また、この訂正は、特許明細書の段落番号【0001】と、同【0010】と、同【0011】と、同【0015】と、同【0017】と、同【0022】と、同【0025】と、同【0027】との記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
(5)訂正事項e,fについて
これらの訂正は、訂正事項aによる特許請求の範囲の請求項1の訂正に伴い、発明の詳細な説明の記載をこれに整合するように訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的にするものに該当する。そして、これらの訂正は、明らかに新規事項の追加に該当せず、かつ、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものでない。
3 むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書及び同条第3項で準用する第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
第3 取消理由についての判断
1 本件発明
本件特許第3167625号の請求項1ないし5に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」、「本件発明2」、「本件発明3」、「本件発明4」、及び「本件発明5」という。)は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「 【請求項1】 基板上の有機物あるいは無機物の付着物を除去するための基板のウェット洗浄方法において、
洗浄剤を使用するブラシ洗浄の直前に、大気中において波長が172nmにピークをもつ紫外線を基板の表面に照射し、下記式1および式2で示す生成反応式によって発生したオゾンラジカルにより前記基板の表面の有機物の汚れを酸化分解して除去するとともに、下記式1および式2で示す生成反応式によって発生したオゾンラジカルにより前記基板の表面張力を下げて濡れ性を向上し、前記洗浄剤を使用する前記ブラシ洗浄のときに前記基板の表面の無機物の汚れの除去効率を向上させて、前記基板の表面の付着物を除去する
ことを特徴とする基板のウェット洗浄方法。
【化1】
172nm オゾンラジカル
(式1) O2 → O(1D)
【化2】
172nm オゾンラジカル
(式2) O2 → O3 → O(1D)
【請求項2】 基板上の有機物あるいは無機物の付着物を除去するための基板のウェット洗浄方法において、
洗浄剤を使用するブラシ洗浄の直前に、基板を加熱し、加熱された前記基板の表面に大気中において波長が172nmにピークをもつ紫外線を照射し、下記式1および式2で示す生成反応式によって発生したオゾンラジカルにより前記基板の表面の有機物の汚れを酸化分解して除去し、該基板の表面の有機物の汚れの酸化分解の効果を前記基板の加熱により向上させるとともに、下記式1および式2で示す生成反応式によって発生したオゾンラジカルにより前記基板の表面張力を下げて濡れ性を向上し、前記洗浄剤を使用する前記ブラシ洗浄のときに前記基板の表面の無機物の汚れの除去効率を向上させて、前記基板の表面の付着物を除去する
ことを特徴とする基板のウェット洗浄方法。
【化3】
172nm オゾンラジカル
(式1) O2 → O(1D)
【化4】
172nm オゾンラジカル
(式2) O2 → O3 → O(1D)
【請求項3】 基板上の有機物あるいは無機物の付着物を除去するための基板のウェット洗浄方法において、
洗浄剤を使用するブラシ洗浄の直前に、大気中において波長が172nmにピークをもつ紫外線と遠赤外線とを基板の表面に照射し、下記式1および式2で示す生成反応式によって発生したオゾンラジカルにより前記基板の表面の有機物の汚れを酸化分解して除去し、該基板の表面の有機物の汚れの酸化分解の効果を前記基板の表面への遠赤外線の照射により向上させるととも、下記式1および式2で示す生成反応式によって発生したオゾンラジカルにより前記基板の表面張力を下げて濡れ性を向上し、前記洗浄剤を使用する前記ブラシ洗浄のときに前記基板の表面の無機物の汚れの除去効率を向上させて、前記基板の表面の付着物を除去する
ことを特徴とする基板のウェット洗浄方法。
【化5】
172nm オゾンラジカル
(式1) O2 → O(1D)
【化6】
172nm オゾンラジカル
(式2) O2 → O3 → O(1D)
【請求項4】 基板上の有機物あるいは無機物の付着物を除去するための基板のウェット洗浄方法において、
洗浄剤を使用するブラシ洗浄の直前に、大気中において波長が172nmにピークをもつ紫外線を前記基板の一方の側の表面に照射し、遠赤外線を前記基板の他方の側の表面に照射し、下記式1および式2で示す生成反応式によって発生したオゾンラジカルにより前記基板の一方の側の表面の有機物の汚れの酸化分解して除去し、該基板の一方の側の表面の有機物の汚れの酸化分解の効果を前記基板の他方の側の表面への遠赤外線の照射により向上させるとともに、下記式1および式2で示す生成反応式によって発生したオゾンラジカルにより前記基板の表面張力を下げて濡れ性を向上し、前記洗浄剤を使用する前記ブラシ洗浄のときに前記基板の一方の側の表面の無機物の汚れの除去効率を向上させて、前記基板の表面の付着物を除去する
ことを特徴とする基板のウェット洗浄方法。
【化7】
172nm オゾンラジカル
(式1) O2 → O(1D)
【化8】
172nm オゾンラジカル
(式2) O2 → O3 → O(1D)
【請求項5】 請求項3または請求項4のいずれか1項に記載の基板のウエット洗浄方法において、
前記波長が172nmにピークを持つ紫外線と遠赤外線とを同時に照射する
ことを特徴とするウエット洗浄方法。」
2 引用刊行物
(1)刊行物1
当審が通知した取消理由通知に引用した刊行物1(特開平5-134397号公報:異議申立人日野貴美子の提出した甲第1号証)には、次の事項が記載されている。
a「ガラス基板に付着した異物を除去するガラス基板洗浄方法であって、前記ガラス基板の表面を親水性化する第1工程と;前記第1工程によって親水性化された前記の表面に純水、或いは温純水を拡散浸透させる第2工程と;前記第2工程によって純水、或いは温純水が拡散浸透した前記ガラス基板の表面に付着した前記異物を除去する第3工程と;を有することを特徴とするガラス基板洗浄方法。」(第2頁第1欄第2〜9行)
b「ガラスの表面に紫外線を照射すると紫外線のエネルギーによりガラス基板表面近傍に存在する酸素分子(O2 )がオゾン分子(O3 )に変化する。さらにオゾン分子が紫外線エネルギー又は熱エネルギーにより分解し、反応性の高い活性基(O* )を生じる。この酸素(O* )はガラス基板表面の有機物を酸化除去すると同時にガラス基板表面のSi-O-H基の水素原子(H)と結合をもち、ガラス基板表面を親水化する。親水性の表面では界面エネルギーは増大するとともに、水の濡れ性(浸透性)は極めて大きくなり水分子(H2 O)はガラス基板上の微細な部分まで拡散浸透してゆく。」(第3頁第3欄第6〜17行)
c「ガラス基板表面が親水化され、水分子が拡散浸透している状態では水又は温水を用いたブラシレス又は超音波などの洗浄作用が最も効率よく働き、ガラス基板表面に存在する微小ゴミはすべて表面から除去される。」(第3頁第3欄第17〜20行)
d「本実施例ではSi-Oで作られたガラス基板10を250nm以下の波長を有するUV光で照射し、このUV光照射によりガラス基板表面を十分に親水性化するものとする。」(第3頁第4欄第33〜35行)
e「〔ステップ1〕・・・(中略)・・・第1の洗浄槽20は・・・、ガラス基板10が投入されるとランプ強度は最大(Full)となり、強力なUV光の照射状態となる。・・・(中略)・・・〔ステップ2〕〔ステップ1〕におけるUV光照射により、十分親水性となったガラス基板10は搬送系5により第2の洗浄槽30に搬送され、ガラス基板10はアーム11a、11bにより温水シャワーノズル32a、32b付近に移動される。ここではまず温水シャワーノズル32a、32bで純水又は温純水のリンスを行い、ガラス基板全面を純水又は温純水で濡らす。ガラス基板10は十分親水化されており、前述の作用の項で述べたように、水分子はガラス基板10に拡散浸透する。その後、アーム11a、11bはガラス基板10を回転ブラシ35a、35b近傍に移動する。そして、純水シャワーノズル33a、33bで純水又は温純水を噴出させながら回転ブラシ35a、35bによるスクラブ洗浄を行う。」(第4頁第5欄第22〜48行)
f「ガラス表面の親水性化をはかったのち、純水、又は温純水による洗浄を行うので、フォトマスク又はレチクルなどのガラス基板上の1ミクロン以下の異物の除去が実現可能となる。」(第4頁第6欄第30〜33行)
以上の記載事項a〜fから、刊行物1には次の発明(以下「刊行物1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。
ガラス基板上の有機物あるいは微少ゴミを除去するための基板のウェット洗浄方法において、純水又は温純水を使用するブラシ洗浄の前に、大気中において250nm以下の波長をもつ紫外線を基板の表面に照射し、発生した反応性の高い活性基(O* )により前記基板の表面の有機物の汚れを酸化分解して除去するとともに、反応性の高い活性基(O* )により前記基板の表面を親水化し、水の濡れ性(浸透性)の極めて大きくなったガラス基板を純水又は温純水で濡らして水分子を拡散浸透させ、その後、ガラス基板に前記純水又は温純水を使用する前記ブラシ洗浄のときに前記基板の表面の微少ゴミの除去効率を向上させて、前記基板の表面の付着物を除去する基板のウェット洗浄方法。
(2)刊行物5
同じく当審で引用した刊行物5(「“誘電体バリア放電を利用したエキシマランプ”,光技術コンタクト,社団法人日本オプトメカトロニクス,Vol.32,No.2(1994),p.30-37」:異議申立人日野貴美子の提出した甲第3号証)には、次の事項が記載されている。
a「誘電体バリヤ放電を励起源としたキセノンエキシマランプは、172nmを中心とした約160nmから180nmの領域にのみ発光を有する,高効率の単色光真空紫外光源である」(第33頁右欄第20〜24行)
b「6.1 光洗浄(UV/O3洗浄)
精密光洗浄の1つとして紫外線とオゾンを使用する光洗浄がある。従来は185nmと254nm光を放射する低圧水銀灯が用いられてきた。原理を下記に示す。185nmは空気中の酸素に吸収されオゾンを発生し,254nm光はオゾンに吸収され,活性な原子状酸素に分解する。一方185nmのような短波長紫外線は有機物の結合を切断し,原子状酸素の酸化作用と切断の作用により,有機物は酸化分解揮発される。

キセノンエキシマランプの放射紫外線の波長は中心波長172nmで半値幅は14nmである。やはり大気中の酸素に吸収される。175nmより短波長は直接原子状の酸素に分解すると報告されている。172nmはまた185nm光と同様にO3を生成し、原子状の酸素を生成する経路も有する。

172nmでの酸素の吸収係数は185nmでの1桁以上高く空気中で強度が1/eになるのがわずか3mmである。この間でオゾン,原子状酸素を生成するので,いままで光源から数十mmの距離で吸収され,オゾン,原子状の酸素を生成していた,低圧水銀ランプに比較し,管壁数ミリの距離では,本ランプのそれら生成濃度は10倍以上であると考えられる。
この効果と172nm光が185nm光より光子のエネルギーが大きいため,有機物の切断力が高いことと相まって,従来の低銀水銀ランプより,洗浄効果が高いと予想される。図8に本装置,およびウシオ電機製高出力低圧水銀ランプ(450W,254nm:120mW)/cm2 ,185nm:約20mW/cm2 )を使用し,石英ガラスの光洗浄を行った結果を示す。
照射前に試料はエチルアルコールで超音波洗浄を行なった。縦軸に純水の接触角,横軸に照射時間を示した。本ランプは60秒で3度になったのに対し,低圧水銀ランプは13-14度であった。10度で汚れが約単分子程度,4度で約0.1度分子程度の厚さとの報告があり,この実験により,本ランプの洗浄速度が高いことが確認された。
用途としてはレンズ,液晶基板,レチクルなどのガラス部品,半導体素子等の電子部品や磁気ヘッド,塗装前の金属板などの洗浄などが考えられる。」(第34頁右欄第2行〜第35頁右欄第12行)
(3)刊行物9
同じく当審で引用した刊行物9(特開平3-159237号公報:異議申立人高橋友之輔の提出した甲第5号証)には、次の事項が記載されている。
a「マスク,ガラス基板等の表面を清浄化する洗浄装置において、UVランプ及び赤外線ランプを同時又は交互に用いて被洗浄物を照射することにより洗浄効果を高める機能を有することを特徴とする洗浄装置。」(特許請求の範囲)
b「従来の方法によれば基板表面に付着した有機物の酸化分解反応の進行が遅いため洗浄効果が充分でなく、又洗浄時間も長時間を要する等の問題があった。」(第1頁右欄第10〜13行)
c「オゾンの生成と分解の過程で発生する中間生成物は原子状の酸素でありこれは強力な酸化剤として作用する。」(第2頁左上欄第16〜18行)
d UVランプ及び赤外線ランプをガラス基板の両面に照射していること。(第1図参照)
e「上記実施例による洗浄装置を用いてガラス基板を洗浄した結果基板温度を約80度に上げた場合基板温度を常温に保った場合に比較して洗浄時間を約1/2に短縮することができた。又従来は非常に洗浄効果を得にくかった段差部コーナー部に於いても有機物の残渣ががなく洗浄効果は非常に高いといえる。」(第2頁右上欄第16行〜同頁左下欄第3行)
3 対比・判断
(1)本件発明1について
本件発明1と刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明の「反応性の高い活性基(O* )」、及び「純水又は温純水」は、それぞれ本件発明1の「オゾンラジカル」、及び「洗浄剤」に相当し、刊行物1記載の発明の「微少ゴミ」には無機物の汚れが含まれていると認められ、また、基板表面を親水化し、水の濡れ性(浸透性)を大きくすることは、基板の表面張力を下げて濡れ性を向上することと同義であることは明かであるので、両者は、
「基板上の有機物あるいは無機物の付着物を除去するための基板のウェット洗浄方法において、洗浄剤を使用するブラシ洗浄の前に、紫外線を基板の表面に照射し、発生したオゾンラジカルにより前記基板の表面の有機物の汚れを酸化分解して除去すると共に、発生したオゾンラジカルにより前記基板の表面張力を下げて濡れ性を向上し、前記洗浄剤を使用する前記ブラシ洗浄のときに前記基板の表面の無機物の汚れの除去効率を向上させて、前記基板の表面の付着物を除去する基板のウェット洗浄方法。」である点で一致し、次の点で相違している。
相違点1:本件発明1においては、基板の表面に紫外線の波長が172nmにピークをもつ紫外線を大気中で照射し、オゾンラジカルは前記式1および式2で示す生成反応式によって発生するものであるのに対して、刊行物1記載の発明においては、基板の表面に紫外線の波長が250nm以下の紫外線を照射するが、大気中で照射することについては不明である点。
相違点2:本件発明1においては、洗浄剤を使用するブラシ洗浄の直前に、紫外線を照射するのに対して、刊行物1記載の発明においては、紫外線を照射した後、純水又は温純水を拡散浸透させる工程を経て、洗浄剤を使用するブラシ洗浄がなされる点。
前記相違点について検討すると、
相違点1については、刊行物5には、照射前に試料はエチルアルコールで超音波洗浄を行っているにしても、その後の紫外線の照射では、試料の表面に紫外線の波長が172nmにピークをもつ紫外線を大気中で照射し、励起酸素原子O(1D)(本件発明1の「オゾンラジカル」に相当する。)が本件発明1の前記式1および式2で示す生成反応式と同様の生成反応式によって発生して、有機物を酸化分解するとともに、前記試料(本件発明1の「基板」に対応する。)の表面の水の接触角を下げる、即ち表面張力を下げるものであって、従来の紫外線の波長が185nmと254nmのものよりも洗浄効果が高い旨記載されており、そして、刊行物1記載の発明と、前記刊行物5記載の技術的事項とは、基板の表面に紫外線を照射し、発生したオゾンラジカルにより前記基板の表面の有機物の汚れを酸化分解して除去して基板を洗浄する点で共通しているので、刊行物1記載の発明に刊行物2記載の前記技術的事項を適用して、前記相違点1に関する構成のごとく構成することは当業者が容易に想到し得たことである。
相違点2については、刊行物1記載の発明において、洗浄剤を使用するブラシ洗浄の前に、純水又は温純水を拡散浸透させることは、水分子が拡散浸透している状態では水又は温水を用いたブラシレス又は超音波などの洗浄作用が最も効率よく働き、ガラス基板表面に存在する微小ゴミはすべて表面から除去するためであって(前記刊行物1の記載事項c参照)、洗浄作用の効率が多少落ちても構わないのであれば当該工程を経ることなしに洗浄剤を使用するブラシ洗浄を行うことは、当業者が適宜なし得る設計上の選択的事項にすぎない。
また、本件発明1の奏する効果も、前記刊行物1記載の発明、及び刊行物5記載の技術的事項から当業者であれば予測できる程度のものであって格別なものでもない。
(2)本件発明2について
本件発明2と刊行物1記載の発明とを対比すると、両者は、前記相違点1、及び相違点2に加えて、さらに次の相違点3で相違している。
相違点3:
本件発明2においては、紫外線の照射の際に基板を加熱し、該基板の表面の有機物の汚れの酸化分解の効果を前記基板の加熱により向上させるのに対して、刊行物1記載の発明においては、紫外線の照射の際に基板を加熱しない点。
前記相違点3について検討すると、刊行物9には、紫外線の照射の際に基板を加熱して洗浄効果を高める旨記載されており、そして、刊行物1記載の発明と、前記刊行物9記載の技術的事項とは、基板の表面に紫外線を照射し、発生したオゾンラジカル(刊行物9に記載の「原子状の酸素」がこれに相当する。)により前記基板の表面の有機物の汚れを酸化分解して除去して基板を洗浄する点で共通しているので、刊行物1記載の発明に刊行物9記載の前記技術的事項を適用して、前記相違点3に関する構成のごとく構成することは当業者が容易に想到し得たことである。
また、本件発明2の奏する効果も、前記刊行物1記載の発明、及び刊行物5、刊行物9記載の各技術的事項から当業者であれば予測できる程度のものであって格別なものでもない。
(3)本件発明3について
本件発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、両者は、前記相違点1、相違点2に加えて、さらに次の相違点4で相違している。
相違点4:
本件発明3においては、紫外線と遠赤外線とを基板の表面に照射し、該基板の表面の有機物の汚れの酸化分解の効果を前記基板の表面への遠赤外線の照射により向上させるのに対して、刊行物1記載の発明においては、紫外線のみを基板の表面に照射する点。
前記相違点4について検討すると、前記刊行物9には、紫外線と赤外線とを基板の表面に照射し、該基板の表面の有機物の汚れの酸化分解の効果を前記基板の表面への赤外線の照射での加熱によって洗浄効果を高める旨記載されており、また、加熱手段として遠赤外線は周知なものである。そして、刊行物1記載の発明と、前記刊行物9記載の技術的事項とは、基板の表面に紫外線を照射し、発生したオゾンラジカル(刊行物9に記載の「原子状の酸素」がこれに相当する。)により前記基板の表面の有機物の汚れを酸化分解して除去して基板を洗浄する点で共通しているので、刊行物1記載の発明に刊行物9記載の前記技術的事項を適用し、その際に加熱手段として周知な遠赤外線を採用することにより、相違点4に関する構成のごとく構成することは当業者が容易に想到し得たことである。
また、本件発明3の奏する効果も、前記刊行物1記載の発明、刊行物5、刊行物9記載の各技術的事項、及び前記周知技術から当業者であれば予測できる程度のものであって格別なものでもない。
(4)本件発明4について
本件発明4と刊行物1記載の発明とを対比すると、両者は、前記相違点1、及び相違点2に加えて、さらに次の相違点5で相違している。
相違点5:
本件発明4においては、紫外線を前記基板の一方の側の表面に照射し、遠赤外線を前記基板の他方の側の表面に照射し、前記基板の一方の側の表面の有機物の汚れの酸化分解の効果を前記基板の他方の側の表面への遠赤外線の照射により向上させるのに対して、刊行物1記載の発明においては、紫外線のみを基板の表面に照射する点。
前記相違点5について検討すると、刊行物9には、紫外線と赤外線とを基板の表面の両側に照射し、該基板の表面の有機物の汚れの酸化分解の効果を前記基板の表面への赤外線の照射での加熱によって洗浄効果を高める旨記載されており、また、加熱手段として遠赤外線は周知なものである。そして、刊行物1記載の発明と、前記刊行物9記載の技術的事項とは、基板の表面に紫外線を照射し、発生したオゾンラジカル(刊行物9に記載の「原子状の酸素」がこれに相当する。)により基板を洗浄する点で共通しているので、刊行物1記載の発明に刊行物9記載の前記技術的事項を適用することは当業者が容易になし得たことであり、その際に、加熱手段として周知の遠赤外線を採用すること、また、基板の片面のみを洗浄するために、基板の両面に紫外線と遠赤外線とを照射してその両面を洗浄することに代えて基板の一方の側の表面にのみ紫外線を照射するように変更することは、基板の種類等に応じて適宜なし得る設計的事項にすぎないものである。
従って、相違点4に関する構成のごとく構成することは、前記刊行物1記載の発明、刊行物5、刊行物9記載の各技術的事項、及び前記周知技術から当業者であれば容易に想到し得たことである。
また、本件発明4の奏する効果も、前記刊行物1記載の発明、刊行物5、刊行物9記載の各技術的事項、及び前記周知技術から当業者であれば予測できる程度のものであって格別なものでもない。
(5)本件発明5について
本件発明5と刊行物1記載の発明とを対比すると、両者は、前記相違点1、相違点2、及び相違点4または相違点5に加えて、さらに次の相違点6で相違している。
相違点6:
本件発明5においては、紫外線と遠赤外線とを同時に照射するのに対して、刊行物1記載の発明においては、紫外線のみを基板の表面に照射する点。
前記相違点6について検討すると、刊行物9には、紫外線と赤外線とを同時に照射する旨が記載されており、そして刊行物1記載の発明と、前記刊行物9記載の技術的事項とは、基板の表面に紫外線を照射し、発生したオゾンラジカル(刊行物9に記載の「原子状の酸素」がこれに相当する。)により基板を洗浄する点で共通しているので、刊行物1記載の発明に刊行物9記載の前記技術的事項を適用することにより、相違点6に関する本件発明5のように構成することは当業者であれば容易に想到し得たことである。
また、本件発明5の奏する効果も、前記刊行物1記載の発明、刊行物5、刊行物9記載の各技術的事項、及び前記周知技術から当業者であれば予測できる程度のものであって格別なものでもない。
第4 むすび
以上のとおりであるから、本件発明1ないし5は、前記刊行物1記載の発明、刊行物5及び刊行物9記載の技術的事項、及び前記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1ないし5についての特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件発明1ないし5についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
基板のウェット洗浄方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 基板上の有機物あるいは無機物の付着物を除去するための基板のウェット洗浄方法において、
洗浄剤を使用するブラシ洗浄の直前に、大気中において波長が172nmにピークをもつ紫外線を基板の表面に照射し、下記式1および式2で示す生成反応式によって発生したオゾンラジカルにより前記基板の表面の有機物の汚れを酸化分解して除去するとともに、下記式1および式2で示す生成反応式によって発生したオゾンラジカルにより前記基板の表面張力を下げて濡れ性を向上し、前記洗浄剤を使用する前記ブラシ洗浄のときに前記基板の表面の無機物の汚れの除去効率を向上させて、前記基板の表面の付着物を除去する
ことを特徴とする基板のウェット洗浄方法。
【化1】

【化2】

【請求項2】 基板上の有機物あるいは無機物の付着物を除去するための基板のウェット洗浄方法において、
洗浄剤を使用するブラシ洗浄の直前に、基板を加熱し、加熱された前記基板の表面に大気中において波長が172nmにピークをもつ紫外線を照射し、下記式1および式2で示す生成反応式によって発生したオゾンラジカルにより前記基板の表面の有機物の汚れを酸化分解して除去し、該基板の表面の有機物の汚れの酸化分解の効果を前記基板の加熱により向上させるとともに、下記式1および式2で示す生成反応式によって発生したオゾンラジカルにより前記基板の表面張力を下げて濡れ性を向上し、前記洗浄剤を使用する前記ブラシ洗浄のときに前記基板の表面の無機物の汚れの除去効率を向上させて、前記基板の表面の付着物を除去する
ことを特徴とする基板のウェット洗浄方法。
【化3】

【化4】

【請求項3】 基板上の有機物あるいは無機物の付着物を除去するための基板のウェット洗浄方法において、
洗浄剤を使用するブラシ洗浄の直前に、大気中において波長が172nmにピークをもつ紫外線と遠赤外線とを基板の表面に照射し、下記式1および式2で示す生成反応式によって発生したオゾンラジカルにより前記基板の表面の有機物の汚れを酸化分解して除去し、該基板の表面の有機物の汚れの酸化分解の効果を前記基板の表面への遠赤外線の照射により向上させるとともに、下記式1および式2で示す生成反応式によって発生したオゾンラジカルにより前記基板の表面張力を下げて濡れ性を向上し、前記洗浄剤を使用する前記ブラシ洗浄のときに前記基板の表面の無機物の汚れの除去効率を向上させて、前記基板の表面の付着物を除去する
ことを特徴とする基板のウェット洗浄方法。
【化5】

【化6】

【請求項4】 基板上の有機物あるいは無機物の付着物を除去するための基板のウェット洗浄方法において、
洗浄剤を使用するブラシ洗浄の直前に、大気中において波長が172nmにピークをもつ紫外線を前記基板の一方の側の表面に照射し、遠赤外線を前記基板の他方の側の表面に照射し、下記式1および式2で示す生成反応式によって発生したオゾンラジカルにより前記基板の一方の側の表面の有機物の汚れを酸化分解して除去し、該基板の一方の側の表面の有機物の汚れの酸化分解の効果を前記基板の他方の側の表面への遠赤外線の照射により向上させるとともに、下記式1および式2で示す生成反応式によって発生したオゾンラジカルにより前記基板の表面張力を下げて濡れ性を向上し、前記洗浄剤を使用する前記ブラシ洗浄のときに前記基板の一方の側の表面の無機物の汚れの除去効率を向上させて、前記基板の表面の付着物を除去する
ことを特徴とする基板のウェット洗浄方法。
【化7】

【化8】

【請求項5】 請求項3または請求項4のいずれか1項に記載の基板のウェット洗浄方法において、
前記波長が172nmにピークをもつ紫外線と遠赤外線とを同時に照射する
ことを特徴とする基板のウェット洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、基板のウェット洗浄方法に関し、さらに詳細には、半導体基板、液晶素子用ガラス基板、カラーフィルタ基板などのような各種の基板の洗浄方法に関し、特に、半導体、液晶素子、カラーフィルタなどの製造工程において、不良の原因となる各種の基板上のゴミや汚れのような有機物や無機物の付着物(以下、単に「付着物」と称する。)を除去する基板のウェット洗浄方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、半導体基板、液晶素子用ガラス基板、カラーフィルタ基板などの各種の基板(以下、単に「基板」と称する。)をウェット洗浄する技術としては、例えば、薬剤(H2SO4、H2O2、HCl、NH4OH、有機アルカリ剤、界面活性剤など)や純水などの洗浄剤(以下、単に「洗浄剤」と称する。)を使用しての浸漬洗浄、超音波洗浄、ブラシ洗浄、スプレー洗浄などを組み合わせて洗浄を行って基板上の付着物を除去し、洗浄剤として純水ではなくて薬剤を使用した場合にはそれから純水などによるリンス洗浄を行った後に、IPA(イソプロピルアルコール)の蒸気による乾燥やスピンナーあるいはエアーナイフによる乾燥などを行うことが一般的であった。
【0003】
しかしながら、上記した従来の技術のように、基板上の付着物を除去するための洗浄として、洗浄剤を使用して浸漬洗浄、超音波洗浄、ブラシ洗浄、スプレー洗浄などの種々の洗浄方法を組み合わせて洗浄しても、充分な洗浄効果を得るためには、所定の時間が必要となるので、洗浄装置としてスループットが悪化するという問題点があった。
【0004】
また、高スループットを維持するためには、当該洗浄装置の長さが長くなるという問題点があった。
【0005】
一方、特開平5-224167号公報に開示されたように、ウェット洗浄の直前に、ガラス単基板の表面に波長が184.9nmと253.7nmの紫外線を大気中で照射し、ガラス単基板上の無機物の付着物を効率よく除去する洗浄方法が提案されている。
【0006】
しかしながら、この特開平5-224167号公報に開示された洗浄方法においては、洗浄効率を決定するO(1D)(オゾンラジカル:活性化酸素)の生成方法が1条件しかないので、充分な濃度のオゾンラジカルを得ることができずに、充分な洗浄効果を得ることができないという問題点があった。
【0007】
即ち、波長が184.9nmと253.7nmの紫外線によるオゾンラジカルの生成反応式は、図1に示すように、波長が184.9nmの紫外線によりO2からO3を生成し、波長が253.7nmの紫外線によりO3からO(1D)(オゾンラジカル)を生成するというように、必ず2段階の生成過程を必要とするために、オゾンラジカルの発生効率が低く、充分な濃度のオゾンラジカルを発生させることができないものであった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記したような従来の技術の有する種々の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、充分な濃度のオゾンラジカルを発生させることにより、基板上の付着物を効率よく除去することができるようにして、それによりウェット洗浄時間の短縮を図ることを可能にし、ウェット洗浄時間の短縮により洗浄剤の使用量も低減させることができる基板のウェット洗浄方法を提供しようとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、基板上の有機物あるいは無機物の付着物を除去するための基板のウェット洗浄方法において、洗浄剤を使用するブラシ洗浄の直前に、大気中において波長が172nmにピークをもつ紫外線を基板の表面に照射し、下記式1および式2で示す生成反応式によって発生したオゾンラジカルにより上記基板の表面の有機物の汚れを酸化分解して除去するとともに、下記式1および式2で示す生成反応式によって発生したオゾンラジカルにより上記基板の表面張力を下げて濡れ性を向上し、上記洗浄剤を使用する上記ブラシ洗浄のときに上記基板の表面の無機物の汚れの除去効率を向上させて、上記基板の表面の付着物を除去するようにしたものである。
【化1】

【化2】

【0010】
ここで、基板とは、上記したように、半導体基板、液晶素子用ガラス基板、カラーフィルタ基板などの各種の基板を意味する。また、付着物とは、上記したように、各種の基板上のゴミや汚れのような有機物や無機物を意味する。また、洗浄剤とは、薬剤(H2SO4、H2O2、HCl、NH4OH、有機アルカリ剤、界面活性剤など)や純水などを意味する。
【0011】
従って、本発明のうち請求項1に記載の発明によれば、基板上の有機物あるいは無機物の付着物を除去するための基板のウェット洗浄方法において、洗浄剤を使用するブラシ洗浄の直前に、基板の表面に波長が172nmにピークをもつ紫外線を大気中で照射することにより、図2の式1および式2に示す生成反応式によってオゾンラジカルが発生される。これら式1および式2の2つの生成反応式によると、特開平5-224167号公報に開示された洗浄方法たる波長が184.9nmと253.7nmとの紫外線の同時照射によるよりも、オゾンラジカルを効率よく多量に発生することができ、オゾンラジカルを高濃度に発生することができる。
【0012】
こうして発生された高濃度のオゾンラジカルにより、基板の表面の有機物の汚れを酸化分解して除去することができるとともに、表面張力を下げて濡れ性を向上させることができ、洗浄剤に使用による洗浄時に無機物の汚れの除去効率を向上することができる。
【0013】
また、こうした酸化分解の効果をさらに向上させるために、例えば、請求項2に記載の発明のように、基板を加熱し、加熱された上記基板の表面に大気中において波長が172nmにピークをもつ紫外線を照射するようにしてもよい。
【0014】
基板を加熱する際には、例えば、請求項3に記載の発明のように、波長が172nmにピークをもつ紫外線と遠赤外線とを照射し、遠赤外線により基板を加熱するようにしてもよい。
【0015】
そして、波長が172nmにピークをもつ紫外線と遠赤外線とを照射する場合には、例えば、請求項4に記載の発明のように、波長が172nmにピークをもつ紫外線を基板の一方の側の表面に照射し、遠赤外線を基板の他方の側の表面に照射するようにしてもよい。
【0016】
さらに、波長が172nmにピークをもつ紫外線と遠赤外線とは、例えば、請求項5に記載の発明のように、両者を基板の表面に同時に照射するようにしてもよい。
【0017】
具体的には、例えば、波長が172nmにピークをもつ紫外線を基板の表側の表面に照射するとともに、基板の裏側の表面に遠赤外線を照射して基板を加熱し、基板の表側の表面の温度を上昇させて、基板の表側の表面に存在するオゾンラジカルによる基板の表側の表面上の有機物の酸化分解作用を促進するようにする。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて、本発明による基板のウェット洗浄方法の実施の形態の一例を詳細に説明するものとする。
【0019】
図3は、本発明による基板のウェット洗浄方法の実施に用いる枚葉式の洗浄装置の概略断面構成説明図である。
【0020】
この洗浄装置は、第1槽10と、第2槽12と、第3槽14と、第4槽16との4槽を備えており、これら第1槽10、第2槽12、第3槽14および第4槽16の中央部を搬送用ローラー18が貫通するようになされていて、この搬送用ローラー18によって、基板20が第1槽10→第2槽12→第3槽14→第4槽16へと入口から出口へ向けて連続的に送られるようになされている。
【0021】
第1槽14内には、搬送用ローラー18の上方に波長が172nmにピークをもつ紫外線を基板20に照射する紫外線ユニット22が設けられ、搬送用ローラー18の下方に遠赤外線を基板10に照射する遠赤外線ユニット24が設けられている。また、搬送用ローラー18と紫外線ユニット22との間には、波長が172nmの紫外線を透過する石英ガラス板26が配設されている。
【0022】
第2槽12乃至第4槽16は、ウェット洗浄を行うための槽である。ここで、第2槽12はブラシ洗浄ユニットであり、第2槽12内には、搬送用ローラー18の上方および下方に基板20へ洗浄剤を噴射するための洗浄剤用シャワーノズル28が設けられているとともに、基板20をブラシ洗浄するためのロールブラシ30が設けられている。
【0023】
また、第3槽14はリンス用ユニットであり、第3槽14内には、搬送用ローラー18の上方および下方に基板20へ純水を噴射するためのリンス用シャワーノズル32が設けられている。
【0024】
そして、第4槽16は乾燥用ユニットであり、第4槽16内には、搬送用ローラー18の上方および下方に基板20を乾燥するためのエアーナイフ34が設けられている。
【0025】
従って、この洗浄装置においては、入口から送られた基板20は、まず紫外線ユニット22によって、表側の表面に波長が172nmにピークをもつ紫外線が照射される。また、このときに、波長が172nmにピークをもつ紫外線の照射により発生されるオゾンラジカルの酸化分解作用を促進するために、遠赤外線ユニット24によって基板20の裏側の表面に遠赤外線を照射し、基板20を加熱するようになされている。
【0026】
上記のようにして、第1槽10において波長が172nmにピークをもつ紫外線を基板20の表側の表面に照射した後に、搬送用ローラー18によって基板20を第2槽12以降へ順次搬送し、ウェット洗浄を行うものである。
【0027】
ウェット洗浄としては、ブラシ洗浄ユニットたる第2槽12において、洗浄剤用シャワーノズル28から基板20の表面に洗浄剤を噴射し、ロールブラシ30により洗浄を行う。
【0028】
次に、リンス用ユニットたる第3槽14において、リンス用シャワーノズル32から基板20の表面に純水を噴射し、洗浄剤をリンスする。
【0029】
その後に、乾燥用ユニットたる第4槽16において、エアーナイフ34により水切り乾燥を行うものである。
【0030】
出願人は、本発明による基板のウェット洗浄方法の洗浄効果を評価するために実験を行ったものであり、以下にその実験の結果を説明するが、この実験においては基板20として「300mm×400mm×1.1mm」のCr膜付き基板を用いた。洗浄条件としては、以下の洗浄条件(A)乃至洗浄条件(D)の4つの条件で実験を行った。
【0031】
(A)図3に示す洗浄装置を用いて、「波長が172nmの紫外線を照射する(第1槽10)→洗浄剤として純水を用いてブラシ洗浄する(第2槽12)→純水を用いてリンスする(第3槽14)→エアーナイフ34で乾燥する(第4槽16)」という処理を行う(本発明による基板のウェット洗浄方法である。)。
【0032】
(B)図3に示す洗浄装置を用いて、「波長が172nmの紫外線および遠赤外線を同時に照射する(第1槽10)→洗浄剤として純水を用いてブラシ洗浄する(第2槽12)→純水を用いてリンスする(第3槽14)→エアーナイフ34で乾燥する(第4槽16)」という処理を行う(本発明による基板のウェット洗浄方法である。)。
【0033】
(C)「洗浄剤として純水を用いてブラシ洗浄する→純水を用いてリンスする→エアーナイフで乾燥する」という処理を行う(従来の基板の洗浄方法である。)。
【0034】
(D)「波長が184.9nmと253.7nmの紫外線を同時に照射する→洗浄剤として純水を用いてブラシ洗浄する→純水を用いてリンスする→エアーナイフで乾燥する」という処理を行う(従来の基板の洗浄方法である。)。
【0035】
なお、各波長の紫外線ならびに遠赤外線の照射強度に関しては、波長が172nmにピークをもつ紫外線はおよそ80Wであり、波長が184.9nmと253.7nmの紫外線はおよそ600Wであり、遠赤外線はおよそ32Wであった。また、照射時間は、それぞれ60秒であった。
【0036】
ブラシ洗浄の条件は、100rpmで回転しているナイロン製のロールブラシ30で60秒間ブラシ洗浄を行い、その際に洗浄剤用シャワーノズル28から60秒間純水を噴射した。
【0037】
リンスの処理の条件は、リンス用シャワーノズル32から60秒間純水を噴射した。
【0038】
また、実験にあたって、基板に付着した無機物の評価に関しては、基板の洗浄前の1μm以上のパーティクルを1000個付着した状態からの変化をみることとし、基板に付着した有機物の評価に関しては、基板の洗浄前の水に対する接触角度50度からの変化をみることとした。なお、この接触角度が小さいほど、基板上の有機物の付着が少ないことが知られている。
【0039】
ここで、パーティクルの個数の検査にあたっては、レーザー式のパーティクル検査装置を使用し、接触角度の検査にあたっては、接触角度測定器を使用した。そして、上記した洗浄条件(A)、洗浄条件(B)、洗浄条件(C)および洗浄条件(D)のそれぞれの洗浄条件で洗浄した後の基板の1μm以上のパーティクルの個数と水に対する接触角度とは、図4に示す図表のような結果となり、本発明による基板の洗浄方法たる洗浄条件(A)および洗浄条件(B)において良好な結集が得られ、特に、洗浄条件(B)において極めて良好な結果が得られた。
【0040】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したように構成されているので、充分な濃度のオゾンラジカルを発生させることができるものであり、それにより基板上の付着物を効率よく除去することができるようになり、このためウェット洗浄時間の短縮を図ることが可能となって、ウェット洗浄時間の短縮により洗浄剤の使用量も低減させることができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】
波長が184.9nmと253.7nmの紫外線によるオゾンラジカルの生成反応式を示す説明図である。
【図2】
本発明による基板のウェット洗浄方法におけるオゾンラジカルの生成反応式を示す説明図である。
【図3】
本発明による基板のウェット洗浄方法の実施に用いる枚葉式の洗浄装置の概略断面構成説明図である。
【図4】
本発明による基板のウェット洗浄方法と従来の基板の洗浄方法との比較実験の結果の図表を示す説明図である。
【符号の説明】
10 第1槽
12 第2槽
14 第3槽
16 第4槽
18 搬送用ローラー
20 基板
22 紫外線ユニット
24 遠赤外線ユニット
26 石英ガラス板
28 洗浄剤用シャワーノズル
30 ロールブラシ
32 リンス用シャワーノズル
34 エアーナイフ
 
訂正の要旨 訂正の要旨
特許第3167625号発明の明細書(以下「特許明細書」という。)を、訂正請求書に添付した訂正明細書のとおり、すなわち、次の各訂正事項a〜fのとおり訂正する。
(1)訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1の記載を、特許請求の範囲の減縮を目的として、
「 【請求項1】 基板上の有機物あるいは無機物の付着物を除去するための基板のウェット洗浄方法において、
洗浄剤を使用するブラシ洗浄の直前に、大気中において波長が172nmにピークをもつ紫外線を基板の表面に照射し、下記式1および式2で示す生成反応式によって発生したオゾンラジカルにより前記基板の表面の有機物の汚れを酸化分解して除去するとともに、下記式1および式2で示す生成反応式によって発生したオゾンラジカルにより前記基板の表面張力を下げて濡れ性を向上し、前記洗浄剤を使用する前記ブラシ洗浄のときに前記基板の表面の無機物の汚れの除去効率を向上させて、前記基板の表面の付着物を除去する
ことを特徴とする基板のウェット洗浄方法。
【化1】

【化2】

」と訂正をする。
(2)訂正事項b
特許請求の範囲の請求項2の記載を、特許請求の範囲の減縮を目的として、
「 【請求項2】 基板上の有機物あるいは無機物の付着物を除去するための基板のウェット洗浄方法において、
洗浄剤を使用するブラシ洗浄の直前に、基板を加熱し、加熱された前記基板の表面に大気中において波長が172nmにピークをもつ紫外線を照射し、下記式1および式2で示す生成反応式によって発生したオゾンラジカルにより前記基板の表面の有機物の汚れを酸化分解して除去し、該基板の表面の有機物の汚れの酸化分解の効果を前記基板の加熱により向上させるとともに、下記式1および式2で示す生成反応式によって発生したオゾンラジカルにより前記基板の表面張力を下げて濡れ性を向上し、前記洗浄剤を使用する前記ブラシ洗浄のときに前記基板の表面の無機物の汚れの除去効率を向上させて、前記基板の表面の付着物を除去する
ことを特徴とする基板のウェット洗浄方法。
【化3】

【化4】

」と訂正する。
明りょうでない記載の釈明を目的として削除し、また、特許請求の範囲の請求項4を、明りょうでない記載の釈明を目的として、請求項2に訂正する。
(3)訂正事項c
特許請求の範囲の請求項3の記載を、特許請求の範囲の減縮を目的として、
「 【請求項3】 基板上の有機物あるいは無機物の付着物を除去するための基板のウェット洗浄方法において、
洗浄剤を使用するブラシ洗浄の直前に、大気中において波長が172nmにピークをもつ紫外線と遠赤外線とを基板の表面に照射し、下記式1および式2で示す生成反応式によって発生したオゾンラジカルにより前記基板の表面の有機物の汚れを酸化分解して除去し、該基板の表面の有機物の汚れの酸化分解の効果を前記基板の表面への遠赤外線の照射により向上させるととも、下記式1および式2で示す生成反応式によって発生したオゾンラジカルにより前記基板の表面張力を下げて濡れ性を向上し、前記洗浄剤を使用する前記ブラシ洗浄のときに前記基板の表面の無機物の汚れの除去効率を向上させて、前記基板の表面の付着物を除去する
ことを特徴とする基板のウェット洗浄方法。
【化5】

【化6】

」と訂正する。
(4)訂正事項d
特許請求の範囲の請求項4の記載を、特許請求の範囲の減縮を目的として、
「 【請求項4】 基板上の有機物あるいは無機物の付着物を除去するための基板のウェット洗浄方法において、
洗浄剤を使用するブラシ洗浄の直前に、大気中において波長が172nmにピークをもつ紫外線を前記基板の一方の側の表面に照射し、遠赤外線を前記基板の他方の側の表面に照射し、下記式1および式2で示す生成反応式によって発生したオゾンラジカルにより前記基板の一方の側の表面の有機物の汚れの酸化分解して除去し、該基板の一方の側の表面の有機物の汚れの酸化分解の効果を前記基板の他方の側の表面への遠赤外線の照射により向上させるとともに、下記式1および式2で示す生成反応式によって発生したオゾンラジカルにより前記基板の表面張力を下げて濡れ性を向上し、前記洗浄剤を使用する前記ブラシ洗浄のときに前記基板の一方の側の表面の無機物の汚れの除去効率を向上させて、前記基板の表面の付着物を除去する
ことを特徴とする基板のウェット洗浄方法。
【化7】

【化8】

」と訂正する。
(5)訂正事項e
特許明細書の段落【0009】の記載を、明瞭でない記載の釈明を目的として、
「 【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、基板上の有機物あるいは無機物の付着物を除去するための基板のウェット洗浄方法において、洗浄剤を使用するブラシ洗浄の直前に、大気中において波長が172nmにピークをもつ紫外線を基板の表面に照射し、下記式1および式2で示す生成反応式によって発生したオゾンラジカルにより上記基板の表面の有機物の汚れを酸化分解して除去するとともに、下記式1および式2で示す生成反応式によって発生したオゾンラジカルにより前記基板の表面張力を下げて濡れ性を向上し、上記洗浄剤を使用する上記ブラシ洗浄のときに上記基板の表面の無機物の汚れの除去効率を向上させて、上記基板の表面の付着物を除去するようにしたものである。
【化1】

【化2】

」と訂正する。
(6)訂正事項f
特許明細書の段落番号【0011】の記載を、明瞭でない記載の釈明を目的として、
「従って、本発明のうち請求項1に記載の発明によれば、基板上の有機物あるいは無機物の付着物を除去するための基板のウェット洗浄方法において、洗浄剤を使用するブラシ洗浄の直前に、基板の表面に波長が172nmにピークをもつ紫外線を大気中で照射することにより、図2の式1および式2に示す生成反応式によってオゾンラジカルが発生される。これら式1および式2の2つの生成反応式によると、特開平5-224167号公報に開示された洗浄方法たる波長が184.9nmと253.7nmとの紫外線の同時照射によるよりも、オゾンラジカルを効率よく多量に発生することができ、オゾンラジカルを高濃度に発生することができる。」と訂正する。
異議決定日 2002-06-07 
出願番号 特願平8-216035
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (H01L)
最終処分 取消  
前審関与審査官 村山 睦  
特許庁審判長 小林 武
特許庁審判官 鈴木 孝幸
宮崎 侑久
登録日 2001-03-09 
登録番号 特許第3167625号(P3167625)
権利者 島田理化工業株式会社
発明の名称 基板のウェット洗浄方法  
代理人 上島 淳一  
代理人 上島 淳一  

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