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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C12N |
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管理番号 | 1066889 |
審判番号 | 審判1997-12852 |
総通号数 | 36 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1991-02-07 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1997-08-04 |
確定日 | 2002-10-15 |
事件の表示 | 昭和63年特許願第504561号「ウシ顆粒球マクロファージコロニー刺激因子」拒絶査定に対する審判事件[昭和63年12月29日国際公開、WO88/10310、平成 3年 2月 7日国内公表、特表平 3-500481]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、1988年5月9日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1987年6月25日、米国)を国際出願日とする出願であって、その請求項1に係る発明は、平成9年3月3日付手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。) 「1.以下のアミノ酸配列: (式略) を有するウシ顆粒球-マクロファージ制御因子(bGM-CSF)タンパク質、あるいは上記アミノ酸配列から1または2以上の置換、欠失または挿入によって変化している、bGM-CSFと実質的に同じタンパク質をコードするDNAセグメント。」 2.引用刊行物記載の発明 当審の平成13年9月11日付拒絶理由で引用した本願の優先日前に頒布された引用例1(EMBO J.,5[6]1193-1197頁)には、 「マウス(m)とヒト(h)の顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)は、交尾フェロモンα因子のプロモーターとリーダー配列を含む分泌ベクターを用いてSaccharomyces cerevisiaeで大量に発現されている。因子依存性の細胞系を用いる増殖アッセイおよび骨髄細胞を用いる顆粒球マクロファージコロニー形成アッセイから機能的に活性のmGM-CSFを同定した。ヒト臍帯血細胞を用いる顆粒球マクロファージ形成の刺激でhGM-CSFの活性を確認した。多様な見かけの分子量(より高分子量のスメアと同様13、18、24、34、40kd)をもつマウスのGM-CSFを、mGM-CSFのN末端領域ペプチドに特異的なラットモノクローナル抗体を用いるタンパク質ブロッティングにより酵母培養培地中で検出した。hGM-CSFのN末端領域に特異的なラットのモノクローナル抗体を用いるタンパク質ブロッティングで、15.6kdおよびそれ以上の分子量の不均一な種が分泌されたことが示された。mGM-CSFの2個の潜在的N結合グリコシル化部位のそれぞれに導入した突然変異から、13kdのタンパク質はグリコシル化されず、主要な18kdのタンパク質は主としてよりC末端側の部位でグリコシル化されたが、不均一なより高分子量の種は突然変異の影響を受けなかったことが示された。13kdのタンパク質のN末端アミノ酸は融合点からC末端の方向に4アミノ酸のSerであることが示された。」、 「緒言 同引用例2(特表昭61-502682号公報)は、ヒトGM-CSFに関するもので、 「この発明において、CSFクローンを単離するために、CSF活性の検定技術だけを必要とする新規方法を使用した。先ず、Tリンパ球細胞(・・・)のようなCSF活性を生産する細胞を同定する。次いで、この細胞のmRNAを回収する。好ましくは、Tリンパ球細胞を使用する。」(5頁右下欄16〜末行)、 「[第4段階]cDNAライブラリーの作成 Mo細胞をPHAおよびPMAで16〜20時間誘導すると、リンホカイン産生が高まった。細胞を20%FCS、0.3%(v/v)PHAおよび5ng/mlTPAを含有するイソコープ培地に5×105細胞/mlの密度で培養した。」(13頁左下欄17行〜右上欄1行)との記載とともに、「第1図」として、該CSFのDNA配列及びアミノ酸配列が記載されている。 同引用例3(特開昭61-199787号公報)は、ヒトGM-CSFに関するもので、 「ヒトCSF産生細胞の細胞源 ヒトGM-CSFをコードする遺伝子を得るためのcDNAライブラリーは、予め他のリンフォカインを比較的高い水準で生産する細胞を、それらがヒトGM-CSFも生産するであろうという仮定のもとで、使用して作成するのが望ましい。これらの細胞源は、ヒトリンパ腫T細胞系のような、悪性細胞系を含んでいてもよい。本発明者らは、cDNAライブラリーをHUT-102やジュルカットのような、数種のヒトリンパ腫T細胞系から調製した。」(3頁左下欄5〜15行)、 「本発明者らは、前出のものを含む多数のヒト細胞系および、末梢血液T細胞をヒトGM-CSFをコードする遺伝子の細胞源として研究してきた。」(3頁右下欄11〜13行)、 「実施例1A 末梢血液T-リンパ腫細胞からのポリアデニル化されたmRNAの調製 1ml当たり約2×103細胞の濃度の末梢血液T-リンパ腫細胞(・・・)を、10%(v/v)FCS、・・・さらに、20μgコンカナバリンA(“ConA”)(・・・)および10μg/mlホルボールミリステートアセテート(“PMA”)(・・・)を加えた100-500mlのRPMI-1640培地で培養した。上記細胞は、大気中に5%CO2を含む、湿潤大気中で約20時間培養した。上記期間後、生存細胞を、遠心分離によって得た。その後、全RNAを末梢血液T細胞から抽出し、上記実施例1に示した方法で、抽出したタンパク質からポリアデニル化されたmRNAを調製した。」(12頁左上欄7行〜右上欄5行)との記載とともに、「第1図」として、マウスGM-CSFのアミノ酸配列及びヌクレオチド配列が、並びに「第2図」として、ヒトGM-CSFのアミノ酸配列及びヌクレオチド配列が記載されている。 同引用例4(Immunolgy 57,131-136頁)には、ウシTリンパ球細胞株である「BT2」について記載されている。 3.判断 本願発明は、ウシ顆粒球-マクロファージ制御因子(bGM-CSF)タンパク質をコードするDNAセグメントに係るところ、本願明細書の記載によると、当該セグメントは、ウシBT2細胞ライブラリーのcDNAから単離されたものである。 しかるに、引用例1には、形質転換された微生物において、マウスとヒトのGM-CSFが発現されて均一にまで精製されていることが記載され、引用例2には、ヒトGM-CSFをTリンパ球細胞から調製すること、及びヒトGM-CSFのDNA配列とアミノ酸配列が記載され、並びに、引用例3には、ヒトGM-CSFをヒトリンパ腫T細胞系から調製すること、及びヒトGM-CSFとマウスGM-CSFのアミノ酸配列とDNA配列がそれぞれ記載されており、これらの記載によると、本願優先日前には、マウスやヒトのGM-CSFは、よく知られており、しかもこれらは、「Tリンパ球細胞」や「ヒトリンパ腫T細胞系」というTリンパ球細胞から調製されるものであることが分かる。 ところで、ウシは、マウスやヒトと同じく哺乳類に属するものであって、家畜としても有用であるから、ウシについても、そのGM-CSF遺伝子を得ようとする課題自体に意外性はなく、これを調製するにあたり、それ自体公知(引用例4)のウシTリンパ球細胞株である「BT2細胞」に着目してcDNAライブラリーを作成し、公知のヒト或いはマウスGM-CSF cDNAをプローブとしてウシGM-CSF cDNAをクローニングすることは、上記の知見を踏まえれば格別困難なことではなく、加えて、そのDNA配列を決定することも常套手段であるから、本願発明は、引用例1乃至引用例4に記載の発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたといえる。 ところで、本願出願人は、平成14年3月22日付意見書において、審判理由補充書に添付したベイカー博士の宣誓書に係る「ヒトGM-CSF cDNAプローブを用いてプローブ探査を行った場合に、ウシのリンパ節細胞においては、レクチン刺激を行っても行わなくても、ウシGM-CSF RNAの有意な発現は検出されなかったが、一方、刺激されたBT-2細胞に由来するRNAは、非常に顕著なシグナルを与える。このデータは、ウシのリンパ節細胞は、ウシのGM-CSF cDNAを単離するための適当なGM-CSF mRNA供給源ではないであろうことを示す。」という記載を根拠に、本願発明は、BT2細胞がウシのGM-CSF cDNAの単離に適切である、と予想外の発見がされたことによって初めて想到されたものである旨、主張している。 しかし、「BT2細胞」は、引用例2に係る「Tリンパ球細胞」や引用例3に係る「ヒトリンパ腫T細胞系」と同じくTリンパ球細胞に属することは明らかであり、また、本願明細書には、「実施例1」として「その細胞は、GM-CSFに特異的メッセンジャーRNAの最大産生を引き出すために、10%ウシ胎児血清を添加されたRPMI11640培地中で5%フィトヘムアグルチニン-A(PHA-P)及び10ng/mlのホルボールミリステートアセテート(PMA)の存在下で16時間培養された。」(20頁25行〜21頁3行)と記載されているところ、引用例2には、Tリンパ球細胞である「Mo細胞」をPHA及びPMAで16〜20時間誘導してリンホカイン産生を高めること、並びに、引用例3には、末梢血液T-リンパ腫細胞をPMA等を加えた培地で培養するというように本願発明と同じ手段で実施している記載があることに照らし、本願発明に係る「BT2細胞」に対する刺激手段は、当技術分野では格別な手段であるとはいえないから、ベイカー博士の宣誓書を根拠とした上記主張は失当である。 4.むすび したがって、本願発明は、引用例1乃至引用例4に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。 |
審理終結日 | 2002-05-13 |
結審通知日 | 2002-05-24 |
審決日 | 2002-06-04 |
出願番号 | 特願昭63-504561 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(C12N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 植野 浩志、滝本 晶子 |
特許庁審判長 |
徳廣 正道 |
特許庁審判官 |
佐伯 裕子 田中 久直 |
発明の名称 | ウシ顆粒球マクロファージコロニー刺激因子 |
代理人 | 村上 清 |
代理人 | 社本 一夫 |