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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1066953
審判番号 審判1999-441  
総通号数 36 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1992-03-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-01-14 
確定日 2002-10-10 
事件の表示 平成 2年特許願第205043号「プリント配線基板」拒絶査定に対する審判事件[平成 4年 3月24日出願公開、特開平 4- 91489]、請求項の数[2]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.(手続の経緯、本願発明)
本件出願は、平成2年8月3日の出願であって、その特許請求の範囲1及び2に係る発明(以下、「請求項1に係る発明」及び「請求項2に係る発明」という。)は、願書に添付した明細書、平成9年2月7日付けの手続補正書、平成10年10月26日付けの手続補正書及び平成11年1月14日付けの手続補正書並びに図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
1.プリント配線基板のスルーホール内に、エポキシ樹脂系またはフエノール樹脂系の樹脂ペーストからなる非導電性の充填物を充填し、この充填物の表面に、半田付性のよいめっき層形成し、この充填してなる該スルーホールの上面と下面が該スルーホール内のめっきにより電気的に接続されることを特徴とするプリント配線基板。
2.スルーホールめっきを有するプリント配線基板のスルーホール内に充填してなる非導電性の充填物の上下面に半田付性のよいランド部を形成し、面付部品を半田クリームでリフロー半田付けしてマウントしてなることを特徴とするプリント配線基板。
2.(引用例)
これに対し、(1)原査定の拒絶の理由に引用した特開平1-241895号公報(以下、「引用例」という。)には、(a)発明が解決しようとする問題点に関し、「より一層実装密度を上げるには、面実装用パッドをブラインドスルホールの上に設けることが考えられていた」(1頁右下欄17行乃至19行)との記載、(b)発明の目的に関し、「本発明は・・・表裏両面のブラインドスルホール部分に銅メッキからなる平坦な面実装用パッドを設けて実装部品の搭載を可能にし、高密度、高実装化のできる多層型ブラインドスルホール配線板の製造方法を提供すること」(2頁左上欄4行乃至9行)との記載、(c)発明の構成に関し、「多層型ブラインドスルホール配線板の製造法において、スルホール配線板を複数接合すると共に、そのスルホールに樹脂を表裏両面に僅かに溢れるように充填してブラインドスルホールとなし、次いで表裏両面の銅箔を接続するための貫通穴を穿設し、次に表裏両面を整面加工した後、表裏両面及び貫通穴内面を銅めっきし、次いで表裏両面のブラインドスルホール部分の銅めっきが面実装用パッドとして残るようにエッチングすること」(2頁左上欄12行乃至右上欄1行、特許請求の範囲参照)との記載、(d)実施例に関し、「第1図A乃至Iは本発明の加工工程を示す断面図である。第1図Aに示すように、絶縁層の両面に銅箔を有する2枚の基板5、5’にそれぞれ個別に穴6、6’を穿設して設ける。そして第1図Bに示すように無電解銅めっき7、7’をすると、スルホール8、8’が形成される。次に内層面9、9’の銅箔を各々エッチングにより第1図Cに示す導体回路10、10’を形成する。次いで導体回路10、10’を内側にして第1図Dに示すようにプリプレグ11を間に入れて、プレスにより加熱圧着して接合すると同時に、スルホール8、8’内にプリプレグ11を表裏両面に僅かに溢れるようにて流動充填して、第1図Eに示すようにブラインドスルホール12、12’を形成する。次に表裏両面の銅箔13、13’を接続するため第1図Fに示すように貫通穴14を穿設し、次に第1図Gに示すように表裏両面を整面した後、再度第1図Hに示すように表裏両面及び貫通穴14の内面に無電解めっき15をして、貫通スルホール16を形成すると共に、ブラインドスルホール12、12’の表面に銅めっきをする。次いで外層面のブラインドスルホール12、12’部分の銅めっきが残るようにしてエッチングして、第1図Iに示すようにブラインドスルホール12、12’の表面に面実層用(「面実層用」は「面実装用」の誤記であるものと認められる。)パッド17、17’を設け多層型ブラインドスルホール配線板を得た。」(2頁右上欄11行乃至左下欄16行)との記載、(e)作用に関し、「本発明の多層型ブラインドスルホール配線板の製造方法は、ブラインドスルホールに樹脂を溢れるように充填し、その後工程で表裏両面を整面加工するので、ブラインドスルホールの部分は平坦となり銅めっきに凹凸が無くなり平坦な面実装用パッドが得られるのである。」(2頁右上欄3行乃至8行)との記載、及び(f)発明の効果に関する「本発明による多層型ブラインドスルホール配線板の製造方法によれば、表裏両面のブラインドスルホール部分に平坦な面実装用パッドを容易に設けることができ、したがって配線板の小型化が可能となり、配線及び表面実装が高密度となり、・・・より一層の小型化に対応可能な多層ブラインドスルホール配線板を提供できる」(2頁右下欄2行乃至9行)との記載がある。
そして、プリント配線板の基板5、5’そのものはプリント配線板の絶縁層であるので、銅めっき7、7’をしたスルホール8、8’内に流動充填された上記樹脂は当然のことながら非導電性の樹脂であることは明らかである。
したがって、引用例には、上記(c)乃至(d)の記載によれば、「導体回路10、10’を内側にしてプリプレグ11を間に入れて、加熱圧着して接合され銅めっきをしたスルホール8,8’内にプリプレグ11の樹脂ペーストからなる非導電性の充填物を充填してブラインドスルホールとなし、表裏両面のブラインドスルホール部分を銅めっきして面実装用パッド17、17’を設けた多層型ブラインドスルホール配線板I」(第1図I参照)が実質上、記載されているものと認められる。
3.(本件請求項1に係る発明と引用例との対比)
そこで、本願明細書の請求項1に係る発明と引用例に開示された上記多層型ブラインドスルホール配線板Iとを対比すると、引用例における多層型ブラインドスルホール配線板I、スルホール及びブラインドスルホール部分を銅めっきして形成した面実装用パッド17、17’は、それぞれ、本件請求項1に係る発明におけるプリント配線基板、スルーホール及び半田付性のよいめっき層に相当するものと認められるので、両者は、プリント配線基板のスルーホール内に、樹脂ペーストからなる非導電性の充填物を充填し、この充填物の表面に半田付性のよいめっき層形成してなるプリント配線基板である点で一致しており、(1)スルーホール内に充填する充填物が、引用例においては、プリプレグ11より流動充填する樹脂ペーストであるのに対し、本件請求項1に係る発明においては、エポキシ樹脂系またはフェノール樹脂系の樹脂ペーストである点、及び(2)引用例においては、スルーホール8の上面(すなわち、ブラインドスルホール部分の銅めっきである面実装パッド17)と導体回路10が、そしてスルーホール8’の下面(すなわち、ブラインドスルホール部分の銅めっきである面実装パッド17’)と導体回路10’がそれぞれのスルーホール内のめっきにより電気的に接続されていて、スルーホール8の上面とスルーホール8’の下面とが電気的に接続されていないのに対し、本件請求項1に係る発明においては、スルーホールの上面と下面がスルホール内のめっきにより電気的に接続される点で相違している。
4.(当審の判断)
ア.上記相違点(1)について検討すると、プリント配線基板の基板として紙フェノール積層板、紙エポキシ積層板、ガラスエポキシ積層板が使用されること[たとえば、(社)日本プリント回路工業会編、「プリント回路技術便覧」、日刊工業新聞社(昭和63年6月30日)発行、7頁21行〜23行及び77頁 a)材料の項参照、特開昭63-97000号公報、特開平1-143292号公報、特開昭62-224996号公報参照]は従来周知の技術的事項であるので、スルーホールを充填する充填物としてエポキシ樹脂系またはフェノール樹脂系の樹脂ペーストを用いることは、当業者が容易に想到しうることである。
イ.上記相違点(2)について検討すると、プリント配線基板において、スルーホール内のめっき層によりプリント配線基板の表裏の回路を電気的に接続すること[たとえば、(社)日本プリント回路工業会編、「プリント回路技術便覧」、日刊工業新聞社(昭和63年6月30日)発行、68〜71頁参照]、絶縁性基板の両面に露出する導電性金属膜筒を有するスルーホール内にエポキシ樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂を充填し、基板表面には前記金属膜筒の露出部と接続されてなる金属膜導体回路が設けられてなり、前記金属膜筒及び前記金属膜導体がメッキ法により形成されてなるプリント配線板(たとえば、特開昭62-224996号公報参照)、表裏の両面を電気的に接続するために両面プリント配線板を貫通する貫通穴を穿設し、貫通穴に導電性樹脂組成物よりなる充填物を充填してプリント配線基板の両面を電気的に接続するとともにプリント配線基板を小型化して部品の実装密度を上げること[たとえば、特開昭62-193197号公報、実願昭56-194055号(実開昭58-99856号)のマイクロフイルム参照]は、それぞれ、従来周知の技術的事項である。そして、引用例においても、上記したように、実装密度を上げるために、スルホール8、8’に非導電性であると認められる樹脂を充填してブラインドスルホールとなし、ブラインドスルホールの表面に銅めっきをして面実装パッドを形成することが記載されているので、プリント配線基板のめっきされたスルーホール内に、樹脂ペーストからなる非導電性の充填物を充填し、この充填物の表面に、半田付性のよいめっき層を形成し、この充填してなるスルーホールの上面と下面がスルーホール内のめっきにより電気的に接続されるようにすることは、上記した従来周知の技術的事項及び引用例の上記記載に基づいて、当業者が容易に想到しうることというべきである。
ウ.そして、本件請求項1に係る発明は、引用例及び従来周知の技術的事項に記載されたものから当業者であれば容易に予測しうる程度のものである。
5.(むすび)
以上のとおりであるので、本件請求項1に係る発明は、引用例及び従来周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2000-07-10 
結審通知日 2000-07-25 
審決日 2000-08-14 
出願番号 特願平2-205043
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岡田 和加子  
特許庁審判長 蓑輪 安夫
特許庁審判官 井口 嘉和
大島 祥吾
発明の名称 プリント配線基板  
代理人 長崎 博男  
代理人 高橋 明夫  

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