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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  D06F
管理番号 1067493
異議申立番号 異議2001-73054  
総通号数 36 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-12-03 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-11-12 
確定日 2002-08-30 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3164884号「衣類乾燥機」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3164884号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 〔1〕手続の経緯
特許3164884号の請求項1、2に係る発明についての出願は、平成4年5月25日に特許出願され、平成13年3月2日にその発明についての特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、異議申立人株式会社東芝より特許異議の申立てがされ、取消しの理由が通知され、その指定期間である平成14年6月10日に訂正請求がされたものである。

〔2〕訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
ア.訂正の内容
特許権者が求めている訂正の内容は、以下のa〜eのとおりである。
a特許請求の範囲の請求項1を削除する。
b特許請求の範囲の請求項2を請求項1に繰り上げるとともに、同請求項中の「前記送風手段または前記ドラムを回転駆動するモータと、」を「前記送風手段または前記ドラムをベルトを介して回転駆動するモータと、」と訂正する。
c発明の詳細な説明中の段落【0005】の「ために、衣類を乾燥させるドラムと、前記ドラム内へ温風を循環させる送風手段と、前記ドラムへの送風経路に設けた加熱手段と、前記送風手段または前記ドラムを回転駆動するモータと、前記モータの回転数を制御する回転数制御手段とを備え、前記回転制御手段は、前記モータへの通電を制御するパワースイッチング手段と、このパワースイッチング手段の導通角を制御する導通時間制御手段と、モーターの回転数を設定する回転数設定手段と、前記モータの回転数を検知する回転数検知手段を具備し、前記回転数設定手段と前記回転数検知手段の検知の差に応じてパワースイッチング手段の導通角を制御し、前記モータを設定回転数に制御するようにしたことを課題解決手段としている。また、衣類を乾燥させるドラムと、前記ドラム内へ温風を循環させる送風手段と、前記ドラムへの送風経路に設けた加熱手段と、前記送風手段または前記ドラムを回転駆動するモータと、」を「ために、衣類を乾燥させるドラムと、前記ドラム内へ温風を循環させる送風手段と、前記ドラムへの送風経路に設けた加熱手段と、前記送風手段または前記ドラムをベルトを介して回転駆動するモータと、」と訂正する。
d発明の詳細な説明中の段落【0013】を「【発明の効果】以上の実施例から明らかなように本発明によれば、衣類を乾燥させるドラムと、前記ドラム内へ温風を循環させる送風手段と、前記ドラムへの送風経路に設けた加熱手段と、前記送風手段または前記ドラムをベルトを介して回転駆動するモータと、前記モータの回転数を制御する回転制御手段とを備え、前記回転制御手段は、前記モータへの通電を制御するパワースイッチング手段と、このパワースイッチング手段の導通角を制御する導通角制御手段と、ドラムの回転数を設定する回転数設定手段と、前記ドラムの回転数を検知する回転数検知手段を具備し、前記回転数設定手段と前記回転数検知手段の検知の差に応じてパワースイッチング手段の導通角を制御し、前記ドラムを前記回転数に制御し、交流電源周波数によらず前記ドラムを設定回転数に制御するようにしたから、交流電源周波数にかかわらずドラムあるいは送風手段の安定した回転数が得られるばかりでなく、ドラムとモータ間の回転伝達手段であるベルトのベルト切れ、ベルトスリップなどの故障を検知できる。」と訂正する。
e発明の詳細な説明中の段落【0014】を「特に、回転制御手段は、ドラムの回転数を検知し、回転数を判定するごとに設定回転数に制御するようにしたから、設定回転数に達する時間も短く、かつ安定した回転数が得られる。」と訂正する。

イ.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正aは、請求項の削除であるから、特許請求の範囲の減縮に相当する。そして、新規事項の追加に該当しない。
上記訂正bは、「ベルトを介して」と文言を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮に相当する。そして、願書に添付した明細書(以下、「特許明細書」という。)の段落【0008】に「…、ドラム1とモータ4間の回転伝達手段であるベルト…」との記載及び第2図に図示されているところから、新規事項の追加に該当しない。
上記訂正c、eは、上記訂正a、bの訂正に伴い、発明の詳細な説明の記載を整合させるためのものであるから、明りょうでない記載の釈明に相当し、新規事項の追加に該当しない。
上記訂正dは、特許明細書の段落【0008】の「…、ドラム1とモータ4間の回転伝達手段であるベルトの故障を検知できる。…」の記載及び上記訂正a、bの訂正に伴い、発明の詳細な説明の記載を整合させるものであるから、明りょうでない記載に釈明に相当し、新規事項の追加に該当しない。
そして、上記いずれの訂正も実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
ウ.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

〔3〕特許異議の申立てについての判断
(1)本件発明
上記〔2〕で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】衣類を乾燥させるドラムと、前記ドラム内へ温風を循環させる送風手段と、前記ドラムへの送風経路に設けた加熱手段と、前記送風手段または前記ドラムをベルトを介して回転駆動するモータと、前記モータの回転数を制御する回転制御手段とを備え、前記回転制御手段は、前記モータへの通電を制御するパワースイッチング手段と、このパワースイッチング手段の導通角を制御する導通時間制御手段と、ドラムの回転数を設定する回転数設定手段と、前記ドラムの回転数を検知する回転数検知手段を具備し、前記回転数設定手段と前記回転数検知手段の検知の差に応じてパワースイッチング手段の導通角を制御し、前記ドラムを設定回転数に制御するようにした衣類乾燥機。」

(2)引用刊行物に記載された発明
当審で通知した取消の理由で引用した刊行物1(特開平3-7200号公報、以下、「引用例」という。)には、回転ドラムの駆動装置に関して、第1〜10図とともに以下の事項が記載されている。
ア)「この発明は、ドラム式洗濯機、ドラム式乾燥機に用いられる回転ドラムの駆動装置に係り、特に回転ドラムの周壁に設けた開口部及びそのドラム扉を所定の開閉位置に位置決めできる回転ドラムの駆動装置に関するものである。」(第1頁右欄第6〜10行)
イ)「前記回転ドラムを駆動するモータの回転速度を検出するモータ回転速度検出手段と、前記駆動モータに供給される交流電源のゼロボルトを検出するゼロボルト検出手段と、前記駆動モータへの交流電源の通電を制御するモータ駆動手段と、前記モータ回転速度検出手段からの出力信号に応じ、前記モータ駆動手段から前記モータに供給される交流電源の通電角を前記ゼロボルト検出手段からのゼロボルト信号を基準に制御して前記駆動モータを低速の一定速度に制御する」(第2頁右上欄第6〜16行)
ウ)「フォトトライアックカプラ81の二次側出力をゲート入力とするトライアック(双方向性サイリスタ)83とから構成され、・・・また、モータ7の回転速度を検出する回転速度検出器10で、第3図に示すようにモータ7の回転速度に比例した周波数のパルス信号を発生する回転センサ101と、この回転センサ101から出力されるパルス周波数を直流電圧に変換する周波数-電圧変換器102と、電源電圧V∞を抵抗Rおよび可変抵抗VRにより設定される基準電圧Vrefと周波数-電圧変換器102からの出力電圧とを比較するコンパレータ103とから構成され、コンパレータ103からはモータ回転数が設定回転数より小さい時“L”信号を、大きい時“H”信号をそれぞれ出力するようになっている。また、前記回転センサ101は、フォトダイオード101aと、これからの光を受信するフォトトランジスタ101bと、このフォトダイオード101aとフォトトランジスタ101b間に配置されたスリット円盤101cとから構成され、スリット円盤101cはモータ7の回転軸に取り付けられている。」(第3頁左上欄第4行〜右上欄第14行)
エ)「前記制御装置12は、ドラム位置検出器9、モータ回転速度検出器10およびゼロボルト検出器11から出力される信号に基づいてモータ7及びドラムブレーキ13を制御し、回転ドラム1を扉開閉位置に停止させるもので、マイクロコンピュータから構成されている。」(第3頁左下欄第7〜12行)
オ)「回転速度検出器10からCPU121に取り込まれる信号は、モータ7の回転数が設定回転数より小さい場合“L”となり、大きい場合は“H”となる。・・・モータ7の回転数が設定回転数より大きいと判断された時は、ステップS14に進み、また設定回転数より小さいと判定された場合はステップS17に進む。・・・ゼロボルト信号を基準にして点呼指令時間tが遅れるように、すなわち点呼位相角が大きくなるようにCPU121で演算し、次のステップS16に移行する。・・・モータ7には第8図(a)に示す電圧波形のうち、ハッチングを施した部分の電圧が供給され、これによりモータ7の回転速度を低下させ、設定回転数になるように制御する。・・・一方、第7図のステップS13において、設定回転数以下と判定された時は、・・・ゼロボルト信号を基準にして点呼指令時間tが早くなるように、すなわち点呼位相角が小さくなるようにCPU121で演算する。・・・その結果、モータ7には第9図(a)に示す電圧波形のうち、ハッチングを施した部分の電圧が供給され、これによりモータ7の回転速度を上昇させ設定回転数になるよう制御する。」(第4頁左上欄第10行〜右下欄第7行)
したがって、引用例には、「乾燥させるドラムと、前記ドラムを回転駆動するモータと、前記モータの回転数を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記モータへの通電を制御するトライアックと、このトライアックの通電角を制御する導通時間制御手段と、モータの回転数を設定する回転数設定装置と、前記モータの回転数を検知するモータ回転速度検出器を具備し、前記回転数設定装置と前記回転速度検出器の検知の差に応じてトライアックの通電角を制御し、前記モータを設定回転数に制御するようにしたドラム式乾燥機」なる発明が記載されているものと認められる。

(3)対比・判断
本件発明と引用例に記載された発明を対比すると、引用例に記載された発明の「ドラム」は、本件発明の「乾燥させるドラム」に相当するものと認められ、同様に、「制御手段」は「回転制御手段」に、「トライアック」は「パワースイッチング手段」に、「通電角」は「導通角」に、「回転速度検出器」は「回転数検知手段」に、「ドラム式乾燥機」は「乾燥機」に、それぞれ相当するものと認められ、引用例に「ドラム式洗濯機、ドラム式乾燥機に用いられる」と記載されているところから、引用例のものも衣類に用いられているものというべきであり、また、乾燥機である以上、技術常識に照らし、送風手段及び加熱手段を備えていることは当然である。
したがって、両者は、「衣類を乾燥させるドラムと、前記ドラム内へ温風を循環させる送風手段と、前記ドラムへの送風経路に設けた加熱手段と、前記送風手段または前記ドラムを回転駆動するモータと、前記モータの回転数を制御する回転制御手段とを備え、前記回転制御手段は、前記モータへの通電を制御するパワースイッチング手段と、このパワースイッチング手段の導通角を制御する導通時間制御手段と、回転数設定手段と回転数検知手段の検知の差に応じてパワースイッチング手段の導通角を制御し、設定回転数に制御するようにした衣類乾燥機」の点で一致しており、
ア)ドラムをモータにより回転駆動するのに、前者は、「ベルトを介して」いるのに対し、後者は、その構成が不明である点、
イ)前者は、「ドラムの回転数を設定する回転数設定手段と、前記ドラムの回転数を検知する回転数検知手段を具備」したのに対し、後者は、モータの回転数を設定し、モータの回転数を検出する回転速度検出器を具備した点で相違する。
しかしながら、上記相違点ア)のドラムをベルトを介してモータにより回転駆動した点は、乾燥機の技術分野では周知技術であり(例えば、特開平3-168199号公報、実願平1-109001号(実開平3-49796号)のマイクロフィルム参照)、上記周知技術を引用例に適用することは当業者が適宜なし得るところである。
また、上記相違点イ)の「ドラムの回転数を設定する回転数設定手段と、前記ドラムの回転数を検知する回転数検知手段を具備」した点も、同技術分野における周知技術であり(特公平3-23077号公報、特開平3-37099号公報参照)、モータとドラムのいずれの回転数を検知するかは、安定した回転数を得るとの目的の下に、適宜選択しうる事項であるから、モータの回転数を検知するものに代えて、ドラムの回転数を検知する技術を採用することは、当業者が容易に想到することができたものと認められる。
そして、本件発明の効果も、引用例及び上記周知技術から当業者が容易に予測できる程度のものと認められる。

なお、特許権者は、平成14年6月10日付け意見書において、「ドラムはベルトを介してモータにより駆動されており、ベルトが切れた場合は、ドラムを駆動することができなくなり、また、ドラムをベルトを介して駆動する場合、ドラム内の負荷によりベルトのスリップ率が異なり、また、経年変化による摩耗、ドラム内から洩れた蒸気が結露しベルトに付着することなどによっても、ベルトのスリップ率が異なります。したがって、モータの回転数を検知して、モータを設定回転数に制御しても、ベルトのスリップ率の変動によりドラムの回転数が変動するものであります。」(上記意見書第4頁第6〜12行)と主張しているが、乾燥機において、ベルト駆動のもので、かつドラムの回転数を検知するものは、上記の特開平3-37099号公報、特開平3-23077号公報等により周知技術であるから、ベルトのスリップ率の変動があってもドラムの回転数が変動しない旨の上記の特許権者の主張は、本件発明のみに特有の効果としては採用できない。
また、同意見書の「ドラムとモータ間の回転伝達手段であるベルトのベルト切れ、ベルトスリップなどの故障を検知できるものであります。」(上記意見書第4頁第26〜27行)との特許権者の主張は、特許請求の範囲の記載に基づくものではないので、採用できない。

〔4〕むすび
以上のとおりであるから、本件発明は、上記引用例及び上記周知技術に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明についての特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
衣類乾燥機
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 衣類を乾燥させるドラムと、前記ドラム内へ温風を循環させる送風手段と、前記ドラムへの送風経路に設けた加熱手段と、前記送風手段または前記ドラムをベルトを介して回転駆動するモータと、前記モータの回転数を制御する回転制御手段とを備え、前記回転制御手段は、前記モータへの通電を制御するパワースイッチング手段と、このパワースイッチング手段の導通角を制御する導通時間制御手段と、ドラムの回転数を設定する回転数設定手段と、前記ドラムの回転数を検知する回転数検知手段を具備し、前記回転数設定手段と前記回転数検知手段の検知の差に応じてパワースイッチング手段の導通角を制御し、前記ドラムを設定回転数に制御するようにした衣類乾燥機。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、衣類を乾燥させるドラム内へ温風を循環させ、衣類を乾燥させる衣類乾燥機に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の衣類乾燥機は、ドラムおよび送風手段であるファンを駆動するモータの回転数が交流電源周波数に依存しているため、モータの減速比を50Hz用と60Hzで変えてドラムおよびファンの回転数を同一にすることで、乾燥性能の周波数による影響をなくしていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来の衣類乾燥機では、交流電源周波数に応じて部品の交換をする必要があり、50Hz用と60Hz用の製品を別々に管理、販売しなければならなかった。また、交流電源周波数を間違えて使用すると運転音が大きくなったり、未乾燥で終了したり、乾燥時間が長くなったりするという問題点があった。
【0004】
本発明は上記課題を解決するもので、交流電源周波数が異なっても部品を交換する必要がなく、交流電源周波数の50Hz、60Hzに関係なくドラムとファンの回転数を設定回転数に制御し、電源周波数が変わっても最適に乾燥できるようにすることを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するために、衣類を乾燥させるドラムと、前記ドラム内へ温風を循環させる送風手段と、前記ドラムへの送風経路に設けた加熱手段と、前記送風手段または前記ドラムをベルトを介して回転駆動するモータと、前記モータの回転数を制御する回転制御手段とを備え、前記回転制御手段は、前記モータへの通電を制御するパワースイッチング手段と、このパワースイッチング手段の導通角を制御する導通時間制御手段と、ドラムの回転数を設定する回転数設定手段と、前記ドラムの回転数を検知する回転数検知手段を具備し、前記回転数設定手段と前記回転数検知手段の検知の差に応じてパワースイッチング手段の導通角を制御し、前記ドラムを設定回転数に制御するようにしたことを課題解決手段としている。
【0006】
【作用】
本発明は上記した課題解決手段により、交流電源周波数の50Hzまたは60Hzにかかわらず回転数を設定回転数に制御できるので、交流電源周波数の違いによる部品交換が不要で、かつどちらの周波数の地域でも使用でき、回転数の判定ごとに設定回転数に制御するので安定した回転数が得られる。
【0007】
【実施例】
以下、本発明の一実施例を図1および図2を参照しながら説明する。
【0008】
図に示すように、ドラム1は被乾燥物を収容し、熱交換ファン(送風手段)2によりドラム1内に温風を循環させる。熱交換ファン2は、ドラム1内に温風を循環させると同時に外部からの空気を取り入れてファンを冷却し、ドラム1の循環空気を除湿する。PTCヒータ(加熱手段)3は、ドラム1への送風経路、すなわち循環空気取り入れ口に配設して循環空気を加熱する。モータ4は、ドラム1と熱交換ファン2を回転駆動し、モータ4の回転数を制御することによりドラム1と熱交換ファン2の回転数の制御が可能となる。回転制御のための回転センサ50は、モータ4に取りつけてもよいが、本実施例では、ドラム1の回転数を検知するもので、磁気センサ50aを本体部に固定し、磁石50bをドラムに取りつけている。ドラム1に磁石50bを3〜6個取り付けることにより回転数を検知して設定値に制御できる。このようにすれば、モータ4とドラム1の安定な回転制御が可能となるばかりでなく、ドラム1とモータ4間の回転伝達手段であるベルトの故障を検知できる。ドラム1と熱交換ファン2をそれぞれ別々のモータにより駆動する場合は、ドラム1または熱交換ファン2の駆動モータに回転センサ50を取りつける。
【0009】
回転制御手段5は、回転数設定手段6の設定回転数にドラム1の回転数を制御するもので、回転センサ50と回転数検知手段51により検知したドラム1の回転数と回転数設定手段6の回転数の差を回転数比較手段52により比較し、導通時間制御手段53により双方向性サイリスタなどのパワースイッチング手段54を制御することにより、モータ4の回転数を可変する。最も簡単な導通時間制御方法として位相制御が考えられる。インバータの場合は導通時間だけではなく周波数も制御する。交流電源7は、PTCヒータ3a、3bとリレーの接点8a、8bとをそれぞれ直列に接続して接続する。
【0010】
上記構成において図3および図4を参照しながら動作の概略を説明すると、図3(a)は、モータ4の全波通電時の電流波形で、このときドラム1の回転数は最大となる。図3(b)は導通時間Tのみ通電させるため、ドラム1の回転数は導通時間Tに応じて変えることができる。回転センサ50の磁気センサ50aと磁石50bによるオン、オフ信号は、図4に示すように、磁石50bを4個ドラム1に取りつけた場合、ドラム1が1回転する間に磁気センサ50aは4回オンする。回転数検知手段51は、磁気センサ50aのオン、オフ周期(ドラム1/4回転)ごとに、周期TXによりドラム1の回転数を検知し判定する。回転数比較手段52は、回転数検知手段51により検知、判定したドラム1の回転数と回転数設定手段6の回転数の差を比較し、導通時間制御手段53によりパワースイッチング手段54を制御し、回転数が判定されるたびにドラム1を設定回転数に制御する。したがって、設定回転数に達する時間も短く、かつ安定した回転数が得られる。
【0011】
つぎに、図5を参照しながら動作の詳細を説明すると、まず、ステップ11にてドラム1の回転数を設定する。ステップ12にて磁気センサ50aのオン信号を検出し、検出するたびにステップ13の回転制御サブルーチンで、回転数設定手段6により設定した設定回転数Nsと回転数検知手段51により検知した回転数を比較し、設定からの誤差に応じて回転数制御の操作量、すなわち導通角を制御し、回転数制御を行う。ステップ15で乾燥検知すると乾燥運転の終了を判断する。
【0012】
なお、本実施例では、回転センサ50は、ドラム1に取りつけているが、熱交換ファン2またはモータ4に設けても同様の効果が得られる。また、ドラム1と熱交換ファン2の回転数を1個のモータ4で駆動する場合を示したが、それぞれにモータを設けた2モータでも効果は同じである。また、回転センサ50として磁気センサ50aと磁石50bとを用いたが反射型あるいは透過型の光センサでもよい。また、磁気センサ50aのオン信号ごとに回転数の制御を行ったが、一定時間ごとに回転数制御を行ってもかまわない。
【0013】
【発明の効果】
以上の実施例から明らかなように本発明によれば、衣類を乾燥させるドラムと、前記ドラム内へ温風を循環させる送風手段と、前記ドラムへの送風経路に設けた加熱手段と、前記送風手段または前記ドラムをベルトを介して回転駆動するモータと、前記モータの回転数を制御する回転制御手段とを備え、前記回転制御手段は、前記モータへの通電を制御するパワースイッチング手段と、このパワースイッチング手段の導通角を制御する導通時間制御手段と、ドラムの回転数を設定する回転数設定手段と、前記ドラムの回転数を検知する回転数検知手段を具備し、前記回転数設定手段と前記回転数検知手段の検知の差に応じてパワースイッチング手段の導通角を制御し、前記ドラムを前記回転数に制御し、交流電源周波数によらず前記ドラムを設定回転数に制御するようにしたから、交流電源周波数にかかわらずドラムあるいは送風手段の安定した回転数が得られるばかりでなく、ドラムとモータ間の回転伝達手段であるベルトのベルト切れ、ベルトスリップなどの故障を検知できる。
【0014】
特に、回転制御手段は、ドラムの回転数を検知し、回転数を判定するごとに設定回転数に制御するようにしたから、設定回転数に達する時間も短く、かつ安定した回転数が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の一実施例の衣類乾燥機のブロック図
【図2】
同衣類乾燥機の断面図
【図3】
(a)、(b) 同衣類乾燥機のモータの電流波形図
【図4】
同衣類乾燥機の回転センサのオン、オフ信号波形図
【図5】
同衣類乾燥機の要部動作フローチャート
【符号の説明】
1 ドラム
2 熱交換ファン(送風手段)
3 PTCヒータ(加熱手段)
4 モータ
5 回転制御手段
 
訂正の要旨 訂正の要旨
特許権者が求めている訂正の内容は、以下のa〜eのとおりである。
a本件特許の明細書中の請求項1を削除する。
b本件特許の明細書中の請求項2を請求項1に繰り上げるとともに、同請求項中の「前記送風手段または前記ドラムを回転駆動するモータと、」を「前記送風手段または前記ドラムをベルトを介して回転駆動するモータと、」と訂正する。
c発明の詳細な説明中の段落【0005】の「ために、衣類を乾燥させるドラムと、前記ドラム内へ温風を循環させる送風手段と、前記ドラムへの送風経路に設けた加熱手段と、前記送風手段または前記ドラムを回転駆動するモータと、前記モータの回転数を制御する回転数制御手段とを備え、前記回転制御手段は、前記モータへの通電を制御するパワースイッチング手段と、このパワースイッチング手段の導通角を制御する導通時間制御手段と、モーターの回転数を設定する回転数設定手段と、前記モータの回転数を検知する回転数検知手段を具備し、前記回転数設定手段と前記回転数検知手段の検知の差に応じてパワースイッチング手段の導通角を制御し、前記モータを設定回転数に制御するようにしたことを課題解決手段としている。また、衣類を乾燥させるドラムと、前記ドラム内へ温風を循環させる送風手段と、前記ドラムへの送風経路に設けた加熱手段と、前記送風手段または前記ドラムを回転駆動するモータと、」を「ために、衣類を乾燥させるドラムと、前記ドラム内へ温風を循環させる送風手段と、前記ドラムへの送風経路に設けた加熱手段と、前記送風手段または前記ドラムをベルトを介して回転駆動するモータと、」と訂正する。
d発明の詳細な説明中の段落【0013】を「以上の実施例から明らかなように本発明によれば、衣類を乾燥させるドラムと、前記ドラム内へ温風を循環させる送風手段と、前記ドラムへの送風経路に設けた加熱手段と、前記送風手段または前記ドラムをベルトを介して回転駆動するモータと、前記モータの回転数を制御する回転制御手段とを備え、前記回転制御手段は、前記モータへの通電を制御するパワースイッチング手段と、このパワースイッチング手段の導通角を制御する導通角制御手段と、ドラムの回転数を設定する回転数設定手段と、前記ドラムの回転数を検知する回転数検知手段を具備し、前記回転数設定手段と前記回転数検知手段の検知の差に応じてパワースイッチング手段の導通角を制御し、前記ドラムを前記回転数に制御し、交流電源周波数によらず前記ドラムを設定回転数に制御するようにしたから、交流電源周波数にかかわらずドラムあるいは送風手段の安定した回転数が得られるばかりでなく、ドラムとモータ間の回転伝達手段であるベルトのベルト切れ、ベルトスリップなどの故障を検知できる。」と訂正する。
e発明の詳細な説明中の段落【0014】を「特に、回転制御手段は、ドラムの回転数を検知し、回転数を判定するごとに設定回転数に制御するようにしたから、設定回転数に達する時間も短く、かつ安定した回転数が得られる。」と訂正する。
異議決定日 2002-07-10 
出願番号 特願平4-132169
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (D06F)
最終処分 取消  
前審関与審査官 金丸 治之  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 平上 悦司
和泉 等
登録日 2001-03-02 
登録番号 特許第3164884号(P3164884)
権利者 松下電器産業株式会社
発明の名称 衣類乾燥機  
代理人 外川 英明  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 坂口 智康  
代理人 坂口 智康  

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