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審判番号(事件番号) データベース 権利
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異議200070098 審決 特許
異議199970627 審決 特許
異議200271165 審決 特許
異議200171414 審決 特許

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審決分類 審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  B01J
審判 全部申し立て 2項進歩性  B01J
審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  B01J
管理番号 1068870
異議申立番号 異議2000-73713  
総通号数 37 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-08-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-10-04 
確定日 2002-09-24 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3027739号「光触媒体およびその製造方法」の請求項1〜15に係る発明の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3027739号の請求項1〜14に係る発明の特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第3027739号の出願は、平成6年6月27日に出願された特願平6-165836号の一部を平成10年3月20日に新たな特許出願としたものであって、平成12年1月28日に特許の設定登録がなされ、その後、福島一郎、氏原さち、及び、市川誠司より、それぞれ、特許異議申立がなされ、その後、当審において、以下の手続がなされたものである。
取消理由通知書 平成13年10月3日
特許異議意見書 平成13年12月12日
取消理由通知書 平成14年3月27日
特許異議意見書 平成14年6月7日
訂正請求書 平成14年6月7日
取消理由通知書 平成14年7月17日
訂正請求取下書 平成14年7月23日
(平成14年6月7日付け訂正請求書の取下げ)
訂正請求書 平成14年7月23日

II.訂正の適否
II-1.訂正事項
本件明細書につき、平成14年7月23日付け訂正請求書に添付された訂正明細書に記載されるとおりの次の(イ)〜(ト)の訂正を求めるものである。
(イ)特許請求の範囲の請求項1における、
「基体上に、難分解性結着剤を塗布しあるいは吹き付けて、難分解性結着剤からなる、光触媒粒子を含有しない第一層を設け、さらに、第一層の上に難分解性結着剤(セメント及び/又はセッコウを除く)と光触媒粒子との混合物からなる第二層を設け、光触媒粒子の量が光触媒粒子と第二層の難分解性結着剤との合量に対する容積基準で20〜98%であることを特徴とする光触媒体。」を、
「基体上に、難分解性結着剤を塗布しあるいは吹き付けて、難分解性結着剤からなる、光触媒粒子を含有しない第一層を設け、さらに、第一層の上に難分解性結着剤(セメント及び/又はセッコウを除く)と光触媒粒子との混合物からなる第二層を設け、光触媒粒子の量が光触媒粒子と第二層の難分解性結着剤との合量に対する容積基準で20〜98%であり、かつ、前記の第一層または第二層に使用される難分解性結着剤と第二層に配合される結着剤以外の成分とを前記第二層の組成と同じとして層を形成したとき、得られた当該各層の表面に紫外光強度が7mW/cm2になるようにブラックライトの光を5時間照射した後の当該各層中の結着剤の重量減少がいずれも10%以下であることを特徴とする光触媒体。」と訂正する。
(ロ)特許請求の範囲の請求項10における、
「基体上に、難分解性結着剤を塗布しあるいは吹き付けて、難分解性結着剤からなる、光触媒粒子を含有しない第一層を設け、さらに、第一層の上に無機系結着剤からなる難分解性結着剤(セメント及び/又はセッコウを除く)と光触媒粒子との混合物からなる第二層を設けることを特徴とする光触媒体。」を、
「基体上に、難分解性結着剤を塗布しあるいは吹き付けて、難分解性結着剤からなる、光触媒粒子を含有しない第一層を設け、さらに、第一層の上に無機系結着剤からなる難分解性結着剤(セメント及び/又はセッコウを除く)と光触媒粒子との混合物からなる第二層を設け、かつ、前記の第一層または第二層に使用される難分解性結着剤と第二層に配合される結着剤以外の成分とを前記第二層の組成と同じとして層を形成したとき、得られた当該各層の表面に紫外光強度が7mW/cm2になるようにブラックライトの光を5時間照射した後の当該各層中の結着剤の重量減少がいずれも10%以下であることを特徴とする光触媒体。」と訂正する。
(ハ)特許請求の範囲の請求項12における、
「有害物質、悪臭物質、油分、細菌、放線菌、菌類、藻類などを除去し、・・・」を、
「有害物質、悪臭物質、油分、細菌、放線菌、菌類、藻類を除去し、・・・」と訂正する。
(ニ)特許請求の範囲の請求項13を削除する。
(ホ)特許請求の範囲の請求項14における、
「基体上に、光触媒粒子を含有しない難分解性結着剤を塗布しあるいは吹き付けして被覆し、次いで固化して、基体上に光触媒粒子を含有しない難分解性結着剤からなる第一層を設け、さらに第一層の上に難分解性結着剤(セメント及び/又はセッコウを除く)と光触媒粒子との混合物を配置させ、次いで固化して、難分解性結着剤と光触媒粒子との混合物からなる第二層を設けることを特徴とする光触媒体の製造方法。」を、
「基体上に、光触媒粒子を含有しない難分解性結着剤を塗布しあるいは吹き付けして被覆し、次いで固化して、基体上に光触媒粒子を含有しない難分解性結着剤からなる第一層を設け、さらに第一層の上に難分解性結着剤(セメント及び/又はセッコウを除く)と光触媒粒子との混合物を配置させ、次いで固化して、難分解性結着剤と光触媒粒子との混合物からなる第二層を設け、かつ、前記の第一層または第二層に使用される難分解性結着剤と第二層に配合される結着剤以外の成分とを前記第二層の組成と同じとして層を形成したとき、得られた当該各層の表面に紫外光強度が7mW/cm2になるようにブラックライトの光を5時間照射した後の当該各層中の結着剤の重量減少がいずれも10%以下である難分解性結着剤を用いることを特徴とする光触媒体の製造方法。」と訂正する。
(ヘ)特許請求の範囲第15項における、
「・・・特徴とする請求項14に記載の光触媒体の製造方法。」を、
「・・・特徴とする請求項13に記載の光触媒体の製造方法。」
(ト)特許請求の範囲第14及び第15項における請求項番号を、14及び15から、13及び14に、それぞれ、訂正する。

II-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、拡張・変更の存否
上記(イ)、(ロ)及び(ホ)の訂正について
当該(イ)、(ロ)及び(ホ)の訂正では、第一層及び第二層で用いる難分解性結着剤につき、
「前記の第一層または第二層に使用される難分解性結着剤と第二層に配合される結着剤以外の成分とを前記第二層の組成と同じとして層を形成したとき、得られた当該各層の表面に紫外光強度が7mW/cm2になるようにブラックライトの光を5時間照射した後の当該各層中の結着剤の重量減少がいずれも10%以下である」と付加し、第一層及び第二層の難分解性結着剤の難分解性の程度が、各層の表面に紫外光強度が7mW/cm2になるようにブラックライトの光を5時間照射して難分解性結着剤の重量減少が10%以下であるものと規定し、かつ、その表面に当該照射がなされる層は、第二層の難分解性結着剤の場合は当該第二層の組成の層で、また、第一層の結着剤の場合は当該第二層の組成に準じた層である旨、規定するとするものであるから、以上の訂正は、難分解性結着剤の難分解性の程度を限定するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、当該(イ)、(ロ)及び(ホ)の訂正で付加する事項は、本件明細書の段落0006、段落0011、及び、段落0016〜0021の記載から、導き出されるものであり、当該訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされるものである。
更に、当該(イ)、(ロ)及び(ホ)の訂正は、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるということもできない。
上記(ハ)の訂正について
当該(ハ)の訂正は、除去するものにつき、「有害物質、悪臭物質、油分、細菌、放線菌、菌類、藻類など」から、「など」を削除し、「有害物質、悪臭物質、油分、細菌、放線菌、菌類、藻類」に限定するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、当該訂正は、「など」を削除するだけのものであるから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされるものであり、更に、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
上記(ニ)の訂正について
当該(ニ)の訂正は、請求項13を削除するもので、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、当該訂正は、請求項を削除するだけのものであるから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされるものであり、更に、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
上記(ヘ)及び(ト)の訂正について
当該(ヘ)及び(ト)の訂正は、前記(ニ)の訂正の請求項13の削除に伴い、それ以降の請求項の請求項番号を繰り上げ、又は、引用する請求項を整合させるものであって、いずれも、特許請求の範囲の明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
そして、当該訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされるものであり、更に、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
II-3.訂正の適否の結論
よって、上記訂正請求は特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

III.本件発明
本件特許第3027739号の請求項に係る発明は、上記するように平成14年7月23日付で訂正請求がなされ、その請求どおり訂正された明細書の特許請求の範囲に記載される次のとおりのものである。
(以下、訂正後の請求項1〜14に係る発明を、それぞれ、必要に応じて、「本件発明1」〜「本件発明14」という)
【請求項1】基体上に、難分解性結着剤を塗布しあるいは吹き付けて、難分解性結着剤からなる、光触媒粒子を含有しない第一層を設け、さらに、第一層の上に難分解性結着剤(セメント及び/又はセッコウを除く)と光触媒粒子との混合物からなる第二層を設け、光触媒粒子の量が光触媒粒子と第二層の難分解性結着剤との合量に対する容積基準で20〜98%であり、かつ、前記の第一層または第二層に使用される難分解性結着剤と第二層に配合される結着剤以外の成分とを前記第二層の組成と同じとして層を形成したとき、得られた当該各層の表面に紫外光強度が7mW/cm2になるようにブラックライトの光を5時間照射した後の当該各層中の結着剤の重量減少がいずれも10%以下であることを特徴とする光触媒体。
【請求項2】光触媒粒子の量が、光触媒粒子と難分解性結着剤との合量に対する容積基準で50〜98%であることを特徴とする請求項1に記載の光触媒体。
【請求項3】光触媒粒子の量が、光触媒粒子と難分解性結着剤との合量に対する容積基準で70〜98%であることを特徴とする請求項1に記載の光触媒体。
【請求項4】第二層の難分解性結着剤が、フッ素系ポリマー、シリコン系ポリマー、ケイ素化合物から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の光触媒体。
【請求項5】第二層が、難分解性結着剤(セメント及び/又はセッコウを除く)と光触媒粒子と吸着剤とからなることを特徴とする請求項1に記載の光触媒体。
【請求項6】第一層の難分解性結着剤が、フッ素系ポリマー、シリコン系ポリマー、ケイ素化合物から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の光触媒体。
【請求項7】第一層が、難分解性結着剤と光触媒機能を有さない無機粒子とからなることを特徴とする請求項1に記載の光触媒体。
【請求項8】光触媒粒子が、酸化チタンであることを特徴とする請求項1に記載の光触媒体。
【請求項9】光触媒粒子が、光触媒粒子の内部および/又はその表面に、第二成分として、V、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ru、Rh、Pd、Ag、PtおよびAuからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属および/又は金属化合物を含有してなる粒子であることを特徴とする請求項1に記載の光触媒体。
【請求項10】基体上に、難分解性結着剤を塗布しあるいは吹き付けて、難分解性結着剤からなる、光触媒粒子を含有しない第一層を設け、さらに、第一層の上に無機系結着剤からなる難分解性結着剤(セメント及び/又はセッコウを除く)と光触媒粒子との混合物からなる第二層を設け、かつ、前記の第一層または第二層に使用される難分解性結着剤と第二層に配合される結着剤以外の成分とを前記第二層の組成と同じとして層を形成したとき、得られた当該各層の表面に紫外光強度が7mW/cm2になるようにブラックライトの光を5時間照射した後の当該各層中の結着剤の重量減少がいずれも10%以下であることを特徴とする光触媒体。
【請求項11】無機系結着剤がケイ素化合物であることを特徴とする請求項10に記載の光触媒体。
【請求項12】有害物質、悪臭物質、油分、細菌、放線菌、菌類、藻類を除去し、あるいは、藻類、ゴミ、汚れの付着を防止するために用いることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の光触媒体。
【請求項13】基体上に、光触媒粒子を含有しない難分解性結着剤を塗布しあるいは吹き付けして被覆し、次いで固化して、基体上に光触媒粒子を含有しない難分解性結着剤からなる第一層を設け、さらに第一層の上に難分解性結着剤(セメント及び/又はセッコウを除く)と光触媒粒子との混合物を配置させ、次いで固化して、難分解性結着剤と光触媒粒子との混合物からなる第二層を設け、かつ、前記の第一層または第二層に使用される難分解性結着剤と第二層に配合される結着剤以外の成分とを前記第二層の組成と同じとして層を形成したとき、得られた当該各層の表面に紫外光強度が7mW/cm2になるようにブラックライトの光を5時間照射した後の当該各層中の結着剤の重量減少がいずれも10%以下である難分解性結着剤を用いることを特徴とする光触媒体の製造方法。
【請求項14】第一層上に、光触媒粒子と難分解性結着剤(セメント及び/又はセッコウを除く)とを溶媒に分散させた塗料組成物を塗布しあるいは吹き付けて、光触媒粒子と難分解性結着剤との混合物からなる第ニ層を配置させることを特徴とする請求項13に記載の光触媒体の製造方法。

IV.特許異議申立の概要
特許異議申立人〈福島一郎〉は、証拠として
甲第1号証:特表平6-502340号公報
(以下、適宜、「引用例1」という)、
甲第2号証:特開平4-284851号公報
(以下、適宜、「引用例2」という)、
甲第3号証:特開平4-90763号公報
(以下、適宜、「引用例3」という)、
甲第4号証:特開平1-218635号公報
(以下、適宜、「引用例4」という)、
を引用し、本件請求項1〜15(訂正後の本件請求項1〜14)に係る発明は、甲第1〜4号証に記載される発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり(理由I-イ)、その特許は取り消されるべきものである旨、主張する。
特許異議申立人〈氏原さち〉は、証拠として
甲第1号証:特開昭63-5301号公報
(以下、適宜、「引用例5」という)、
甲第2号証:特開平4-90763号公報
(以下、適宜、「引用例3」という)、
甲第3号証:特開平5-309267号公報
(以下、適宜、「引用例6」という)、
甲第4号証:特開平4-284851号公報
(以下、適宜、「引用例2」という)、
甲第5号証:特開平5-253544号公報
(以下、適宜、「引用例7」という)、
甲第6号証:特開平4-174679号公報
(以下、適宜、「引用例8」という)、
甲第7号証:特開平1-218635号公報
(以下、適宜、「引用例4」という)、
甲第8号証:社団法人色材協会編、「塗料用語辞典」、1993年1月
20日、技報堂出版株式会社、第192頁
(以下、適宜、「引用例9」という)、
甲第9号証:児玉正雄等著、「塗料と塗装(増補版)」、平成6年2月
10日、株式会社パワー社、第7、8及び414頁
(以下、適宜、「引用例10」という)、
を引用し、本件請求項1〜15(訂正後の本件請求項1〜14)に係る発明は、甲第1〜9号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり(理由II-イ)、また、本件請求項1〜15(訂正後の本件請求項1〜14)に係る発明の特許は、特許法第36条第4項及び第5項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり(理由II-ロ)、したがって、本件請求項1〜15(訂正後の本件請求項1〜14)に係る発明の特許は取り消されるべきである旨、主張する。
特許異議申立人〈市川誠司〉は、証拠として
甲第1号証:特開平5-111673号公報
(以下、適宜、「引用例11」という)、
甲第2号証:伊藤邦雄編、「シリコーンハンドブック」、1990年8月
31日、日刊工業新聞社、第32及び33頁
(以下、適宜、「引用例12」という)、
甲第3号証:特開平4-168170号公報
(以下、適宜、「引用例13」という)、
甲第4号証:児玉正雄等著、「塗料と塗装(増補版)」、平成6年2月
10日、株式会社パワー社、第6〜9頁及び第22〜33頁
(以下、適宜、「引用例10」という)、
甲第5号証:清野学著、「酸化チタン-物性と応用技術」、1993年3
月30日、技報堂出版株式会社、第10〜45頁及び第16
4〜209頁(以下、適宜、「引用例14」という)、
甲第6号証:特開昭63-5301号公報
(以下、適宜、「引用例5」という)、
甲第7号証:特開平1-218635号公報
(以下、適宜、「引用例4」という)、
を引用し、本件請求項1〜15(訂正後の本件請求項1〜14)に係る発明は、甲第1〜7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり(理由III-イ)、また、本件請求項1〜15(訂正後の本件請求項1〜14)に係る発明の特許は、特許法第36条第4項及び第5項(第6項と表示されるが、その主張内容からみて第5項の不備について指摘するものと解した)に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり(理由III-ロ)、したがって、本件請求項1〜15(訂正後の本件請求項1〜14)に係る発明の特許は取り消されるべきである旨、主張する。

V.証拠の記載内容
引用例1(特表平6-502340号公報)には、
(A-1)「光照射と空気の存在下で水に浮かぶ有機化合物の酸化を促進することのできる材料で少なくとも部分的に被覆された外部表面を有し、水に浮かぶことができ、約2mmより小さい相当直径をもつ被覆されたビーズ。」(特許請求の範囲第1項)
(A-2)「被覆材料が二酸化チタンからなる請求項1記載の被覆されたビーズ。」(特許請求の範囲第14項)
(A-3)「空気によるプラスチック材料の酸化を促進せず、光照明と空気の存在下に外部被覆物質によりそれ自体酸化されない物質からなる中間層で被覆されたプラスチック材料からビーズがなる請求項1記載の被覆されたビーズ。」(特許請求の範囲第18項)
(A-4)「この発明は、水に浮かぶ有機化合物、特に漏出油に由来する有機化合物の酸化を光触媒する物質及び方法に関する。」(第3頁左下欄第4〜6行)
(A-5)「代わりに、ビーズを有機化合物からなるようにすることもできる。しかし、光触媒被覆材料は、ビーズの有機材料の酸素による酸化を光触媒する傾向にあるので、特定の材料からなる中間層でビーズを保護するのが望ましい。この中間層は、外部被覆材料による光触媒作用の過程の中で酸素によりビーズの有機材料や中間層自身が酸化されるのを防止する材料からなる。ビーズの有機材料として、例えばポリエチレンやポリプロピレンのようなプラスチック材料が挙げられる。保護中間層として、例えば二酸化ケイ素や酸化アルミニウムが挙げられる。」(第4頁右下欄下から第2行〜第5頁左上欄第9行)
(A-6)「例えば、ビーズの表面は、流動床装置にジまたはトリアルコキシ(またはクロロ)シランを含む乾燥した窒素ガスの気流を通すことにより処理される。続いて、酸化チタン色素粒子のガス状の散布が、活性化されたビーズ球体を敷き詰めたベッド上になされる。」(第6頁右上欄第10〜14行)ことが記載されている。
引用例2(特開平4-284851号公報)には、
(B-1)「多孔性ニッケル基体に、光触媒粉末とフッ素樹脂結着剤との混合物を積層・圧着してなることを特徴とする光触媒体。」(特許請求の範囲)
(B-2)「光触媒粉末-フッ素樹脂混合層の意義は、既にさまざまの分野でよく知られているように結着力が強く、良好な耐食性を示すフッ素樹脂を結着剤に用いることによる混合層の堅牢さにかてて加えて、光触媒活性が極めて高く、しかもその活性の持続性が良好であることである。」(段落0012)
(B-3)「<実施例1>・・・気孔率が85%、厚さ1.5mmの多孔性焼結ニッケル基体を得た。一方、ルチル型の結晶構造を有するn型半導体である酸化チタン粉末(粒径:0.3μm)100gに、ポリテトラフルオロエチレンの水懸渇液(固形分60%,比重約1.5)300mlを加え、充分攪拌したのち、さらにアルコールを加えて、凝集を進ませて泥状混練物を得た。
次に、この混練物を、90×90(mm)の方法に切り出した前記多孔性焼結ニッケル基体の片面に、コテで塗着(酸化チタンとして6g)したのち、100kg/cm2 の圧力でプレスし、さらに、150℃で1時間熱処理を施した。・・・。 かくして、図1に示すような多孔性ニッケル基体-光触媒粉末・フッ素樹脂混合光触媒層の二重構造からなる極性堅牢な光触媒体が得られた。」(段落0015及び0016の抜粋)ことが記載されている。
引用例3(特開平4-90763号公報)には、
(C-1)「(1)有機けい素をバインダとし、それにチタン、ジルコニウム、ランタンおよびマンガンの内の少なくとも一種の金属酸化物又は塩類を含有する脱臭材。
(2)無機けい素をバインダとし、それにランタンの金属酸化物又は塩類を含有する脱臭材。
(3)有機けい素および無機けい素をバインダとし、それにチタン、ジルコニウム、ランタンおよびマンガンの内の少なくとも一種の金属酸化物又は塩類を含有する脱臭材。
(4)特許請求の範囲第1項ないし第3項記載のものにおいて、バインダが5〜98wt%、チタン、ジルコニウム、ランタン、マンガンの内の少なくとも一種の金属酸化物又は塩類が0.50〜90wt%、着色材、増量材が0〜94.5wt%、添加物が0〜5wt%である脱臭材。」(特許請求の範囲第1〜4項)
(C-2)「特許請求の範囲第1項ないし第5項記載の脱臭材を、悪臭の存在する部分の壁面または悪臭を導入する経路中に塗布し、脱臭、消臭する機能を有する脱臭材を用いた製品。」(特許請求の範囲第6項)
(C-3)「被塗装物がステンレス等、表面が不活性なものでも十分な密着性を持った塗装物が得られる。」(第2頁右下欄第8〜10行)
(C-4)「さらに本発明の別の発明は、バインダとして、無機けい素と有機けい素を適当に配合して用い、所定の硬化条件で硬化することにより、適度なクラックを生じせしめ脱臭、消臭機能を有する触媒と悪臭との接触を十分なものにし、熱や紫外線による劣化が少なく、長時間にわたる厳しい使用にも耐えることができる。」(第2頁右下欄第11〜17行)ことが記載されている。
引用例4(特開平1-218635号公報)には、
(D-1)「1.吸着剤と光触媒とを含んでなることを特徴とする脱臭剤。
2.吸着剤と、光触媒と、・・・の少なくとも1種の元素を含有する第2成分と、を含んでなることを特徴とする脱臭剤。
3.前記吸着剤が、活性炭・アルミナ・シリカの少なくとも1種であり、前記光触媒が、TiO2・SnO2・ZnOの少なくとも1種であり、前記第2成分は、Cu・Zn・La・Mo・V・Sr・Ag・Ba・Ce・Sn・Fe・W・Pt・Pd・Mg・Alの少なくとも1種を含有するものであることを特徴とする請求項1または2記載の脱臭剤。」(特許請求の範囲第1〜3項)
(D-2)「上記本発明に係る脱臭剤に用いられる光触媒は、5〜50重量%含有されることが望ましい。」(第2頁右下欄第15及び16行)ことが記載されている。
引用例5(特開昭63-5301号公報)には、
(E-1)「(1)鏡面を有する反射鏡であって、前記鏡面上の最上層に、透明な光触媒層が形成されていることを特徴とする反射鏡。
(2)光触媒層が、TiO2,Fe2O3,In2O3およびWO3からなる群より選ばれた少なくとも1つである特許請求の範囲第1項記載の反射鏡。
(3)光触媒層に、Pt,Pd,RhおよびIrよりなる群から選ばれた少なくとも1つの金属が担持されている特許請求の範囲第1項または第2項記載の反射鏡。」(特許請求の範囲第1〜3項)
(E-2)「ところが、このような反射鏡1´は、長期間使用すると、その表面に、雰囲気中の浮遊物(主に有機物質)が汚れとして付着し、反射効率が低下する、と言う問題がある。・・・。この発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであって、初期の高い反射率を長期間に渡って維持することができる反射鏡を提供することを目的としている。」(第1頁右下欄第16行〜第2頁左上欄第11行)
(E-3)「鏡面5の表面には、必要に応じて、従来と同様な保護被膜6を形成してもよい。このような保護被膜6の材料としては、これに限定されるものではないが、たとえば、鏡面5が金属基材表面を研磨したものである場合には、その表面を酸化してなるアルマイト等の酸化膜を、また、鏡面5が基材3表面に光輝性金属膜4を形成してなるものである場合には、有機塗料等の透明塗装膜、SiO2,Al2O3,CeO2,MF2等を真空蒸着等の方法で形成した金属酸化物膜等を使用することができる。」(第2頁右上欄第13行〜右下欄第4行)
(E-4)「前記光触媒層とする方法は、・・・・真空プロセス、前記化合物の金属(Ti,Fe,In,W等)を含む有機金属化合物溶液を、鏡面5上に塗布し、乾燥したあと、それを高温で焼き付ける方法、前記化合物の微粒子粉末を透明塗料中に混合分散させておき、これを鏡面5上に塗布乾燥させて塗膜を形成する方法等。なお、最後の、微粒子粉末を透明塗料中に混合分散させておいて、それによって塗膜を形成する方法では、分散させる化合物の微粒子粉末の粒径が0.1μm以下であり、透明塗料に対する添加量が10〜20%であることが好ましい。」(第2頁左下欄第12行〜右下欄第8行)
(E-5)「鏡面を得た。この鏡面に対し、酸化チタンの微粒子粉末(粒径0.08μm)を10%添加したシリコン系透明塗料をスプレー法によって塗布し、・・・光触媒層が形成された反射鏡を得た。」(第3頁左下欄第5〜10行)ことが記載される。
引用例6(特開平5-309267号公報)には、
(F-1)「光触媒粉末を基体に担持固定化してなる光触媒体であって、光触媒粉末の担持固定化材として金属酸化物ゾルより生成する金属酸化物を用いてなることを特徴とする光触媒体。」(特許請求の範囲)
(F-2)「<実施例3>
チタンイソプロポキシド3gを50ミリリットルのエタノールに溶解しここに、20ミリリットルのエタノール、2ミリリットルの水及び、0.3ミリリットルの濃塩酸の混合溶液を加え酸化チタンゾルを得た。これに、あらかじめ350℃で2時間熱処理したアナターゼ型酸化チタン(粒子径0.2μm )5gを分散してこれを、30mm×30mmのガラス板にディップコーティング法にて光触媒層を形成した。」(段落0021)ことが記載されている。
引用例7(特開平5-253544号公報)には、
(G-1)「居住空間の壁面、床面或いは天井面を構成する板状部材の表面にバインダ層を形成し、このバインダ層の表面にアナターゼ型TiO2を主体とする光触媒微粉末をその一部がバインダ層から露出するように吹き付けて付着させ、次いで300℃以上850℃以下の範囲で加熱してバインダ層を溶融せしめた後、冷却してバインダ層を固化せしめるようにしたことを特徴とする脱臭機能を備えた板状部材の製造方法。」(特許請求の範囲第1項)
(G-2)「本発明方法にあっては先ず図1(a)に示すように、壁面、床面或いは天井面を構成する板状部材としてのタイル素地1の表面に釉薬層2を塗布し、次いで図1(b)に示すように釉薬層2の表面にスプレー等を用いて光触媒微粉末としてのアナターゼ型TiO2微粉末3をゾル状にして吹き付け、次いで図1(c)に示すように釉薬層2を加熱溶融せしめた後、冷却して固化せしめる。尚、TiO2ゾルにはCuやAg等を添加して殺菌効果をもたせるようにしてもよい。」(段落0007の抜粋)ことが記載されている。
引用例8(特開平4-174679号公報)には、
(H-1)「金属アルコキシドの加水分解生成物及び光反応性半導体を含有して成る光反応性有害物質除去剤」(特許請求の範囲第1項)
(H-2)「本発明において、金属アルコキシドの使用量は、光反応性半導体100重量部に対して、加水分解物換算で1〜1000重量部の範囲が好ましい。」(第3頁右上欄第15〜17行)
(H-3)「有害物質除去剤を各種基材に担持させる方法は、・・・、例えば、除去剤をそのままで又は適当な溶剤の溶液もしくは懸濁液として、塗布、含浸又はスプレーする方法を示すことができる。」(第4頁右下欄末行〜第5頁左上欄第3行)ことが記載されている。
引用例9(「塗料用語辞典」)には、
(I-1)シリコーン樹脂塗料はシリコーン樹脂を原料とするものである(第192頁左欄下から第9行〜下から第2行)ことが記載されている。
引用例10(「塗料と塗装(増補版)」)には、
(J-1)「下塗り塗料 下塗りは,塗装する素材に直接に接する最下層の塗膜層で,その第一の目的は素材面に対する塗膜の付着性を強化することである。・・・。なお,金属塗装の場合は下塗りには付着性強化のほかに防食性強化の機構をもたせることも多い。」(第7頁下から第3行〜第8頁第2行)
(J-2)「冷蔵庫では熱硬化アクリル樹脂系の下塗りと上塗りをウエットオンウエット方式で,洗濯機では防食性のよいエポキシ樹脂系下塗りと熱硬化アクリル樹脂系上塗りをツーコート・ツーベーク方式で塗装する場合が多い。」(第414頁第3〜5行)ことが記載されている。
引用例11(特開平5-111673号公報)には、
(K-1)「【請求項1】セメント系基材に、直接あるいは下塗り層を介して、塗膜を形成する塗装方法において、上塗り層として下記単量体単位(a)、(b)および(c)より構成される含フッ素共重合体を主成分とする上塗り塗料を塗装して乾燥塗膜を形成することを特徴とするセメント系基材の塗装方法。
(a)フルオロオレフィン単量体単位 30〜60モル%
(b)クロトン酸ヒドロキシアルキル単量体単位 3〜30モル%
(c)上記以外のビニル単量体単位 10〜67モル%
【請求項2】セメント系基材に、下塗り層を介して塗膜を形成する塗装方法において、下塗り層としてアルコキシ基含有シラン化合物を主成分とするセメント系基材浸透型吸水防止剤を塗布し、上塗り層として下記成分(x)および(y)を含有する上塗り塗料を塗装して乾燥塗膜を形成することを特徴とするセメント系基材の塗装方法。
(x)1分子中に少なくとも2個の水酸基を有する含フッ素共重合体
(y)硬化剤」(特許請求の範囲)
(K-2)「本発明は、長期の屋外使用においても優れた耐久性を有するセメント系基材を得ることができ、必要に応じて、特に美粧性を損なうことなく、外観上の劣化を防止したり、特に内部劣化を防止することができる、セメント系基材の塗装方法を提供しようとするものである。」(段落0004)
(K-3)「本発明における上塗り塗料は、含フッ素共重合体、上記の硬化剤、有機溶剤以外に、屋外使用塗料に通常添加される酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラック、キナクリドンレッド、フタロシアニンブルー等の顔料、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系等の紫外線吸収剤、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系等の酸化防止剤、表面調整剤および艶消し剤等を添加することもできる。これら添加剤の好ましい使用量は、含フッ素共重合体100重量部あたり、顔料では5〜60重量部、その他の添加剤では0.1〜10重量部である。耐候耐久性の点で、顔料としては無機系顔料が特に好ましく、さらに、硬化触媒、硬化助剤、シランカップリング剤等も必要に応じて添加できる。」(段落0014)
(K-4)「本発明において、セメント系基材の内部劣化を特に防止しようとする場合には、下塗り層としてアルコキシ基含有シラン化合物を主成分とするセメント系基材浸透型吸水防止剤を塗布することが重要である。ここで使用するセメント系基材浸透型吸水防止剤とは、下記一般式で示されるアルコキシ基含有シラン化合物、またはその部分縮合物を主成分として含有する塗料であって、基材の細孔に浸透して、該化合物の縮合反応および、該化合物と基材中の親水性基との縮合反応によって、吸水防止層を形成するものである。
RnSi(OR)4-n
(n=0〜3、Rは炭素数が1〜8のアルキル基)」(段落0016の抜粋)
(K-5)「(実施例1)
a)含フッ素共重合体を主成分とする塗料の調製
・・・フッ素含有量が23重量%である含フッ素共重合体を使用し、下記に示す割合で各成分を混合した。
含フッ素共重合体 100g
CR-50(石原産業(株)製酸化チタン) 50g
キシレン/メチルイソブチルケトン(50/50) 350g
2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン 3g
次いで、上記混合物に、コロネートHX(日本ポリウレタン工業(株)製多価イソシアネート)21gを添加して、硬化性塗料を得た。
b)上記塗料を塗布するセメント系基材
厚さ6mmのスレート板に、アクリル/ウレタン系白色塗料を乾燥膜厚40μとなるようにスプレー塗装し、室温で2週間乾燥させて、下塗り層を形成した。(基材-1とする)上記と同様にして、コンクリート板および石膏スラグ板にも下塗り塗装した。(基材-2および基材-3とする)
上記の基材-1、基材-2および基材-3の表面に、前記含フッ素共重合体を主体とする硬化性塗料をスプレー塗装法により、それぞれ、乾燥膜厚が50μになるように塗装した。」(段落0019と0020の抜粋)
ことが記載されている。
引用例12(「シリコーンハンドブック」)には、
(L-1)「アルコキシシランは,・・・,加水分解によりシラノールを経てポリシロキサンを生成する」(第33頁第25〜27行)ことが記載されている。
引用例13(特開平4-168170号公報)には、
(M-1)「本発明は弗素樹脂被覆物の製造に用いる弗素樹脂組成物に関する。」(第1頁左下欄下から第2行及び末行)
(M-2)「本発明の弗素樹脂塗料中には、着色のための顔料、たとえば、・・・、チタン白、・・・、その他の無機顔料を添加してもよく」(第3頁左下欄下から第2行〜右下欄第2行)
(M-3)アルミニウム板からなる基材上に、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PAI(ポリアミドイミド)、マイカ、カーボン等を含む塗料をコーティングし、焼き付け、この上に、PFA(テトラフロロエチレン〜パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)を含む樹脂組成物をコーティングし、焼き付けた(第4頁右下欄本文第1行〜第5頁左上欄第1行)ことが記載されている。
引用例14(「酸化チタン-物性と応用技術)には、酸化チタン顔料の製法(第2章)、酸化チタン顔料の分類(第3章)、及び耐候性(第8章)に関し、詳細な記載があり、そこには、
(N-1)「乾式粉砕製品
この製品は・・・酸化チタン素材をエアーセパレーター付きのリングロールミルあるいはジェットミルで乾式粉砕しただけの顔料である.従って,表面処理製品に比べて微粒化度がやや劣り,水可溶分の残留が多く,・・・.しかしアナターゼではこの乾式粉砕製品が比較的多い.特に水分分散型製品は・・・,製紙用,水性塗料用に供している.」(第28頁第8〜15行)
(N-2)「水ひ処理製品
この製品は・・・,酸化チタン素材を乾式粉砕し,水と分散剤を加えスラリーとし湿式粉砕後遠心沈降式分離機で粗粒分を分級・除去し,・・・.従って,・・・表面処理がないため,・・・。アナターゼには,この型の製品が多いが、ルチルにはないようである.」(第28頁第17行〜第29頁第3行)
(N-3)「酸化チタンは,・・・,一般名は酸化チタンであり,白色顔料として定着した当時からチタン白(・・・)ともよばれている.」(第35頁第2〜5行)
(N-4)石原産業製顔料用酸化チタンCR-50は、結晶形はルチルで、Al2O3とTiO2により表面処理されたものであり、石原産業製顔料用酸化チタンA-100は、結晶形はアナターゼで、表面処理剤では処理されていないこと〔第37頁、表-3.3顔料用酸化チタン製品の分類(その1)〕
(N-5)「光触媒反応機構
同一塗料組成であっても,使用酸化チタン顔料の種類が変れば,塗膜の劣化速度が大幅に変り,酸化チタン顔料がこの劣化反応に大きく寄与していることは周知の事実である.」(第175頁第1〜4行)
(N-6)「工業製品の酸化チタン顔料には,アナターゼとルチルの2種類の結晶形があり,アナターゼのほうが光化学活性が強く、暴露による塗膜劣化速度もルチルより速いことはよく知られており,・・・表面処理したアナターゼでも表面処理のないルチルより耐候性が劣るのが通常である.」(第177頁第11〜14行)
(N-7)「大部分のルチル型酸化チタン顔料はルチル結晶粒子表面をアルミナ,シリカ,チタニヤその他の水和物で被覆している.この表面処理は主として顔料の分散性と耐候性の向上を目的としている.」(第178頁第27行〜第179頁第1行)こと等が記載されている

V.異議申立に対する当審の判断
ここでは、訂正後の発明につき、判断する。
V-1.理由I-イ(特許法第29条第2項に規定する要件)について
V-1-1.請求項1について
引用例1には、本件発明1に関し、「光照射と空気の存在下で水に浮かぶ有機化合物の酸化を促進することのできる二酸化チタンで被覆された外部表面を有し、かつ、空気によるプラスチック材料の酸化を促進せず、光照明と空気の存在下に外部被覆物によりそれ自体酸化されない物質からなる中間層を有する、プラスチック材料からなるビーズ」〔前記(A-1)〜(A-3)を参照〕であって、該中間層は、二酸化珪素や酸化アルミニウムで構成され〔前記(A-5)を参照〕、具体的には、ジまたはトリアルコキシ(またはクロロ)シランを含む乾燥した窒素ガスの気流を通すことにより形成されるものであり、また、該二酸化チタンの被覆は、酸化チタン色素粒子のガス状の散布により形成される〔前記(A-6)を参照〕、発明が記載される。
そこで、本件発明1と引用例1に記載される発明とを対比する。
引用例1に記載される発明では、プラスチック材料からなるビーズに、中間層と二酸化チタンで被覆された外部表面の層との二層を設けたものである。
そして、引用例1に記載に発明の「プラスチック材料からなるビーズ」、「酸化チタン色素粒子(二酸化チタン)」は、本件発明1の「基体」、「光触媒粒子」にそれぞれ相当する。
よって、両者は、
「基体上に、光触媒粒子を含有しない第一層を設け、さらに、第一層の上に光触媒粒子の第二層を設けてなる光触媒体」である点で、一致する。
しかし、該第一層が、(1)本件発明1では、「難分解性結着剤を塗布しあるいは吹き付けて、難分解性結着剤からなる」ものであり、かつ、該第二層が、「難分解性結着剤(セメント及び/又はセッコウを除く)と光触媒粒子との混合物からなる」ものであるのに対し、引用例1のものではそのことが示されず(相違点1)、
該光触媒粒子の量が、(2)本件発明1では、「光触媒粒子と第二層の難分解性結着剤との合量に対する容積基準で20〜98%である」のに対し、引用例1のものではそのことが示されず(相違点2)、
難分解性結着剤の難分解性が、(3)本件発明1では、「前記の第一層または第二層に使用される難分解性結着剤と第二層に配合される結着剤以外の成分とを前記第二層の組成と同じとして層を形成したとき、得られた当該各層の表面に紫外光強度が7mW/cm2になるようにブラックライトの光を5時間照射した後の当該各層中の結着剤の重量減少がいずれも10%以下である」のに対し、引用例1のものではそのことが示されず(相違点3)、以上の点で、両者は相違する。
以下、以上の相違点につき検討する。
まず、相違点1について検討する。
本件明細書によれば、本件発明1は、「光触媒粒子をあらゆる基体上に、その光触媒機能を損なうことなく、強固に、かつ、長期間にわたって接着させる」(段落0003の抜粋)ことを発明の課題とし、「結着剤を用いて光触媒粒子を基体上に接着させた場合、・・・難分解性結着剤を用いると、光触媒粒子をあらゆる基体上に脱離することなく接着できること、さらに、意外にも、本発明の光触媒体は充分な光触媒機能が得られること」及び「基体上に、結着剤からなる、光触媒粒子を含有しない第一層を設け、さらに、該第一層の上に、難分解性結着剤と光触媒粒子とからなる第二層を設けることができる。光触媒粒子を含有しない第一層を設けることによって、基体と、光触媒粒子を含有した第二層との結びつきが強固になって、該光触媒粒子を基体上に、一層強固に、かつ、一層長期間にわたって接着させることができる。・・・このような結着剤としては、・・・前記の難分解性結着剤がより好ましい。」との知見に基づき、その発明の構成として、光触媒体において、「基体上に難分解性結着剤を塗布しあるいは吹き付けて難分解性結着剤からなる、光触媒粒子を含有しない第一層を設け」、そして、「第一層の上に難分解性結着剤と光触媒粒子との混合物からなる第二層を設ける」ことを具備することにより、その余の構成と相俟って、上記の課題を解決したものである。
そして、このことは、本件明細書の実施例8の記載、及び、平成11年7月9日の手続補足書により提出された「平成11年6月30日作成の実験成績証明書」において、難分解性結着剤からなる塗布層を第一層とした場合は、二酸化ケイ蒸着層又はアクリル系ポリマー塗布層を第一層とした場合に比べ、耐久性が著しく改善されるという事実により、確認されるものである。
一方、引用例1には、第一層に関し、空気によるプラスチック材料の酸化を促進せず、光照明と空気の存在下に外部被覆物によりそれ自体酸化されない物質からなる材料である、二酸化珪素や酸化アルミニウムを用いることが示され、該二酸化珪素や酸化アルミニウムは難分解性の結着剤に該当するとしても、そこには、「難分解性結着剤を塗布しあるいは吹き付け」により形成することが、具体的に、示されず、また、光触媒粒子を基体上に強固に、かつ、長期間にわたって接着させるために、該第一層を、「難分解性結着剤を塗布しあるいは吹き付け」により形成することが(蒸着による形成に比べ)有効であることが教示されないものであり、したがって、引用例1に記載のものからは、該第一層を、「難分解性結着剤を塗布しあるいは吹き付けて、難分解性結着剤からなる」ものとすることが当業者の容易に想到することができない。
また、引用例1には、該第二層を、光触媒粒子(酸化チタン色素粒子)のガス状の散布により形成することが示されるだけであって、「難分解性結着剤(セメント及び/又はセッコウを除く)と光触媒粒子との混合物からなる」もので構成することが示されず、また、そのように構成することが、光触媒粒子を光触媒機能を損なうことなく、強固に、かつ、長期間にわたって接着させるうえで有効であることが示されず、したがって、引用例1に記載のものからは、該第二層を、「難分解性結着剤(セメント及び/又はセッコウを除く)と光触媒粒子との混合物からなる」もので構成することが容易に想到することができない。
そうすると、引用例1に記載の発明からは、本件発明1の上記相違点1に関する構成が、当業者の容易に導き出せるものではない。
次に、引用例2〜4の記載を順次みる。
引用例2には、多孔性ニッケル基体に、光触媒粉末とフッ素樹脂結着剤との混合物を積層して光触媒体とすること〔前記(B-1)を参照〕が記載され、引用例3には、ステンレス等の表面に、有機けい素および無機けい素をバインダとし、それにチタンの金属酸化物等を含有するものを塗布することにより光触媒体とすること〔前記(C-1)〜(C-4)を参照〕が記載され、また、引用例4には、吸着剤と光触媒とを含んでなる脱臭剤が記載される。この内、引用例2及び3で、本件発明1の上記相違点1の該第二層の構成が示されるものの、上記相違点1の構成である、該第一層を、「難分解性結着剤を塗布しあるいは吹き付けて、難分解性結着剤からなる」ものとすることについては、引用例2〜4のいずれにおいても、教示されない。
してみれば、引用例1に記載の発明に、引用例2〜4に記載のものを併せてみても、そこから、上記相違点1における該第一層の構成を容易に導き出すことができず、したがって、光触媒体において、「基体上に難分解性結着剤を塗布しあるいは吹き付けて難分解性結着剤からなる、光触媒を含有しない第一層を設け」、そして、「第一層の上に難分解性結着剤と光触媒との混合物からなる第二層を設ける」ことに容易に想到することができない。
したがって、上記相違点1に関する構成が容易に想到することができないのであるから、上記相違点2及び3に関する構成について判断するまでもなく、本件発明1は、引用例1〜4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

V-1-2.請求項2〜14について
本件発明2〜14は、いずれも、光触媒体において、「基体上に難分解性結着剤を塗布しあるいは吹き付けて難分解性結着剤からなる、光触媒粒子を含有しない第一層を設け」、そして、「第一層の上に難分解性結着剤と光触媒粒子との混合物からなる第二層を設ける」との構成を具備するものである。
そして、本件発明2〜12は、光触媒体に関する発明であり、上記構成を具備することにより、上記V-1-1.で記載したとおりの顕著な効果を奏するものである。
また、本件発明13及び14は、該光触媒体の製造方法に関するものであるが、上記構成を具備することにより、「光触媒粒子をあらゆる基体上に、その光触媒機能を損なうことなく、強固に、かつ、長期間にわたって接着させる」光触媒体を製造することができるという顕著な効果を奏するものである。
そして、上記第一層と第二層に関する構成については、当業者が容易に想到することができないことは、上記V-1-1.で記載したとおりである。
したがって、本件発明2〜14は、引用例1〜4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

V-2.理由II-イ(特許法第29条第2項に規定する要件)について
V-2-1.請求項1について
引用例5には、本件発明1に関連する記載として、「鏡面を有する反射鏡であって、前記鏡面上の最上層に、TiO2等から選ばれる透明な光触媒層が形成されている反射鏡」〔前記(E-1)を参照〕であって、「鏡面5の表面に、保護被膜6として、有機塗料等の透明塗装膜、SiO2,Al2O3,CeO2,MF2等を真空蒸着等の方法で形成した金属酸化物膜等を使用する」〔前記(E-3)を参照〕ことができ、該光触媒層として、透明塗料に微粉末微粒子を10〜20%添加し〔前記(E-4)を参照〕、具体的には、「酸化チタンの微粒子粉末(粒径0.08μm)を10%添加したシリコン系透明塗料をスプレー法によって塗布」〔前記(E-5)を参照〕して形成することができる発明が記載されている。
そこで、本件発明1と引用例5に記載される発明とを対比する。
引用例5に記載される発明では、鏡面を構成する基体に、保護被膜とTiO2等から選ばれる透明な光触媒層との二層を設けてもよいものである。
また、引用例5に記載の発明では、該光触媒層として、酸化チタンの微粒子粉末(粒径0.08μm)を20%添加したシリコン系透明塗料をスプレー法によって塗布して形成することも可能なものである。
そして、引用例5に記載される発明の「鏡面を構成する基体」、「酸化チタンの微粒子粉末」、「シリコン系透明塗料」は、本件発明1の「基体」、「光触媒粒子」、「難分解性結着剤」に、それぞれ、相当する。
引用例5に記載される発明を以上のとおりのものとすると、両者は、
「基体上に、光触媒粒子を含有しない第一層を設け、さらに、第一層の上に難分解性結着剤(セメント及び/又はセッコウを除く)と光触媒粒子との混合物からなる第二層を設けた光触媒体」である点で一致する。
しかし、該第一層が、(イ)本件発明1では、「難分解性結着剤を塗布しあるいは吹き付けて、難分解性結着剤からなる」ものであるのに対し、引用例5のものでは、そのことが示されず(相違点イ)、
該光触媒粒子の量が、(ロ)本件発明1では、「光触媒粒子と第二層の難分解性結着剤との合量に対する容積基準で20〜98%である」のに対し、引用例1のものでは、光触媒粒子の第二層の難分解性結着剤との合量に対して20%であることが示されるが、その数値が容積基準では示されず(相違点ロ)、
難分解性結着剤の難分解性が、(ハ)本件発明1では、「前記の第一層または第二層に使用される難分解性結着剤と第二層に配合される結着剤以外の成分とを前記第二層の組成と同じとして層を形成したとき、得られた当該各層の表面に紫外光強度が7mW/cm2になるようにブラックライトの光を5時間照射した後の当該各層中の結着剤の重量減少がいずれも10%以下である」のに対し、引用例1のものではそのことが示されず(相違点ハ)、以上の点で、両者は相違する。
以下、以上の相違点につき検討する。
まず、相違点イについて検討する。
上記V-1-1.で記載したとおり、本件発明1は、光触媒体において、「基体上に難分解性結着剤を塗布しあるいは吹き付けて難分解性結着剤からなる、光触媒粒子を含有しない第一層を設け」、そして、「第一層の上に難分解性結着剤と光触媒粒子との混合物からなる第二層を設ける」ことを具備することにより、その余の構成と相俟って、光触媒粒子をあらゆる基体上に、その光触媒機能を損なうことなく、顕著に、強固に、かつ、長期間にわたって接着させるという効果を奏したものである。
これに対して、引用例5に記載されるものは、前記(E-2)により、反射鏡において、雰囲気中の浮遊物の汚れを抑制して、初期の高い反射率を長期に渡り維持することを目的とするものの、本件発明1のように、光触媒粒子を、強固に、かつ、長期間にわたって接着させることについては配慮するものでなく、また、第一層の構成として、「鏡面の表面に、保護被膜6として、有機塗料等の透明塗装膜、SiO2,Al2O3,CeO2,MF2等を真空蒸着等の方法で形成した金属酸化物膜等を使用する」ことが示されるだけで、該第一層を、「難分解性結着剤を塗布しあるいは吹き付けて、難分解性結着剤からなる」もので構成することにつき、示唆するものはない。
したがって、引用例5に記載の発明では、上記相違点に関する、第一層の構成を容易に導き出すことができない。
次に、引用例2〜4及び6〜10の記載を順次みることとする。
引用例2には、多孔性ニッケル基体に、光触媒粉末とフッ素樹脂結着剤との混合物を積層してなる光触媒体〔前記(B-1)〕が記載され、また、その具体例で、酸化チタン粉末100gにポリテトラフルオロエタンの水性懸濁液(固形分60%)300mlを加えること〔前記(B-3)〕が記載される。
引用例3には、有機けい素および無機けい素をバインダとし、それにチタン、・・・の内の少なくとも一種の金属酸化物を含有する脱臭材〔前記(C-1)〕が記載され、また、その成分の配合割合として、バインダーが5〜98wt%、チタン、・・・の内の少なくとも一種の金属酸化物が0.50〜90wt%とすること〔前記(C-1)〕が記載されている。
引用例4には、吸着剤と光触媒とを含んでなる脱臭剤〔前記(D-1)〕が記載されている。
引用例6には、光触媒粉末の担持固定化材として金属酸化物ゾルより生成する金属酸化物を用いてなる光触媒体〔前記(F-1)〕が記載され、その具体例として、チタンイソプロポキシド3gに対してアナターゼ型酸化チタン5gを用いること〔前記(F-2)〕が記載されている。
引用例7には、板状部材の表面に釉薬層を形成し、該釉薬層の表面に、光触媒微粉末としてのアナターゼ型TiO2微粉末3を、光触媒微粉末の一部がバインダ層から露出するように吹き付けて、実質上、単一層である脱臭機能層を備えた板状部材を製造すること〔前記(G-1)及び(G-2)〕が記載されている。
引用例8には、金属アルコキシドの加水分解生成物及び光反応性半導体を含有して成る光反応性有害物質除去剤において、金属アルコキシドの使用量を、光反応性半導体100重量部に対して、加水分解物換算で1〜1000重量部の範囲とすること〔前記(H-1)及び(H-2)〕が記載される。
引用例9には、シリコーン樹脂塗料を構成する原料につき記載されるだけである。
このように、引用例2〜4及び6〜9には、難分解性結着剤とその添加量につき記載はあるが、そこには、光触媒体において、中間層である第1層を設けること、更には、光触媒粒子をあらゆる基体上に、その光触媒機能を損なうことなく、顕著に、強固に、かつ、長期間にわたって接着させるために、第1層を、「難分解性結着剤を塗布しあるいは吹き付けて難分解性結着剤からなる」ものとすることにつき教示するものはない。
次に、引用例10の記載をみると、そこには、下塗りは,その第一の目的は素材面に対する塗膜の付着性を強化することであり、また、金属塗装の場合は防食性強化の機構をもたせることも多いこと〔前記(J-1)〕が記載され、また、冷蔵庫では下塗りと上塗りに熱硬化アクリル樹脂系のものを用いた例〔前記(J-2)〕が記載される。
しかし、塗装の前に下塗りを施す場合、塗装膜の付着性ないしは防食性を高めることを目的とするのであれば、下塗り材料として、通常、塗装に用いるものと異なる機能を持つ材料を用いるものであり、したがって、引用例10に記載される冷蔵庫の例をみても、当業者であれば、引用例5に記載される保護被膜の材質として、光触媒層に用いられる結着剤と同種のものを用いることが、直ちに、着想できるものではない。
また、引用例10には、下塗りの結着剤として難分解性結着剤を用いることが記載されないものである。そして、引用例10では、下塗りを施す場合の塗膜の接着性などの一般的な効果が記載されるだけであって、光触媒体において第1層(下塗り)を、「難分解性結着剤を塗布しあるいは吹き付けて難分解性結着剤からなる」ものとした場合に奏するところの効果、すなわち、光触媒粒子を、顕著に、強固に、かつ、長期間にわたって接着させることにつき、教示するものは何もない
してみると、引用例10の記載をみても、上記相違点に関する構成が、容易に導き出すことができない。
そうすると、引用例5に記載の発明に対して、引用例2〜4及び6〜10に記載の技術を併せてみても、上記相違点イに関する構成である、第1層を、「難分解性結着剤を塗布しあるいは吹き付けて難分解性結着剤からなる」ものとすることが当業者の容易に想到できるものではない。
したがって、上記相違点イに関する構成が容易に想到することができないのであるから、上記相違点ロ及びハに関する構成について判断するまでもなく、本件発明1は、引用例5、2〜4及び6〜10に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

V-2-2.請求項2〜14について
本件発明2〜14は、いずれも、光触媒体において、「基体上に難分解性結着剤を塗布しあるいは吹き付けて難分解性結着剤からなる、光触媒粒子を含有しない第一層を設け」、そして、「第一層の上に難分解性結着剤と光触媒粒子との混合物からなる第二層を設ける」との構成を具備するものである。
そして、本件発明2〜14は、上記構成を備えることにより、所定の効果を奏するものであることは、前記V-1-2.で記載したとおりである。
そしてまた、上記第一層に関する構成については、当業者が容易に想到することができないことは、上記V-2-1.で記載したとおりである。
したがって、本件発明2〜14は、引用例5、2〜4及び6〜10に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

V-3.理由III-イ(特許法第29条第2項に規定する要件)について
V-2-1.請求項1について
引用例11には、本件発明1に関連する記載として、
「セメント系基材に、下塗り層を介して、塗膜を形成する塗装方法において、上塗り層として含フッ素共重合体を主成分とする上塗り塗料を塗装して乾燥塗膜を形成するセメント系基材の塗装方法」〔前記(K-1)〕であって、該下塗り層には、RnSi(OR)4-nで示されるアルコキシ基含有シラン化合物を用いることができ〔前記(K-4)〕、また、該上塗り塗料には、屋外使用塗料に通常添加される酸化チタンを添加することができ〔前記(K-3)〕、そして、具体例として、スレート板等に、アクリル/ウレタン系白色塗料をスプレー塗装して下塗り層を形成した後、その表面に、含フッ素共重合体100g、CR-50(石原産業(株)製酸化チタン)50g、等からなる硬化性塗料を塗装した〔前記(K-5)〕、とする発明が記載されている。
そこで、本件発明1と引用例11に記載される発明とを対比する。
引用例11に記載される発明は、セメント基材に下塗り層と上塗り層の二層を形成するものである。
そして、「セメント系基材」、「下塗り層のRnSi(OR)4-nで示されるアルコキシ基含有シラン化合物」、「上塗り層の含フッ素共重合体」は、本件発明1の「基材」、「難分解性結着剤」、「難分解性結着剤」に、それぞれ、相当する。
よって、両者は、
「基体上に、難分解性結着剤を塗布しあるいは吹き付けて、難分解性結着剤からなる、光触媒粒子を含有しない第一層を設け、さらに、第一層の上に難分解性結着剤(セメント及び/又はセッコウを除く)と酸化チタンとの混合物からなる第二層を設けてなる被覆体」である点で共通する。
しかし、該酸化チタンが、(a)本件発明1では、「光触媒粒子」であるのに対し、引用例11に記載のものでは、屋外使用塗料に通常添加される酸化チタンないしはCR-50(石原産業(株)製酸化チタン)が示されるだけであって、光触媒機能を、実質上、具備するものでなく(相違点a)、
酸化チタンの含有量が、(b)本件発明1では、「光触媒粒子と第二層の難分解性結着剤との合量に対する容積基準で20〜98%である」のに対し、引用例11に記載のものでは、上塗り塗料中の含フッ素共重合体100gに対して酸化チタンが50g用いることが示されるが、その数値が容積基準では示されず(相違点b)、
難分解性結着剤の難分解性が、(c)本件発明1では、「前記の第一層または第二層に使用される難分解性結着剤と第二層に配合される結着剤以外の成分とを前記第二層の組成と同じとして層を形成したとき、得られた当該各層の表面に紫外光強度が7mW/cm2になるようにブラックライトの光を5時間照射した後の当該各層中の結着剤の重量減少がいずれも10%以下である」のに対し、引用例11のものではそのことが示されず(相違点c)、
該被覆体が、(d)本件発明では、「光触媒体」であるのに対し、引用例11に記載の発明では、そのことが示されず(相違点d)、以上の点で、両者は相違する。

なお、特許異議申立人は、引用例14の記載を引用し、一般の顔料用酸化チタンの多くが光触媒機能を有するものであり、したがって、引用例11に記載の発明の酸化チタンは、光触媒粒子たる酸化チタンに相当する旨主張する。
そこで、検討すると、確かに、引用例14の記載をみる限り、顔料用酸化チタンには、表面処理がなされていないものが存在すると解される。
しかし、引用例14で具体的に例示されるCR-50(石原産業(株)製酸化チタン)は、前記(N-4)〜(N-7)により、光化学活性(光触媒活性)が弱いルチル結晶形のものに光化学活性を抑制するために表面処理を施したものであり、したがって、当該CR-50(石原産業(株)製酸化チタン)は、実質上、光触媒機能を保有しないものと解される。
また、引用例11に記載の発明は、前記(K-2)により、「長期の屋外使用においても優れた耐久性を有するセメント系基材を得ることができ、必要に応じて、・・・、外観上の劣化を防止したり、特に内部劣化を防止することができる、セメント系基材の塗装方法を提供しようとする」ことを発明の目的とするのであるから、そこでの発明で用いられる「屋外使用塗料に通常添加される酸化チタン」には、塗料に劣化をもたらす光触媒機能を保有する酸化チタンが利用されるはずはないものである。
そうすると、一般の顔料用酸化チタンには光触媒機能を有するものがあるとしても、引用例11に記載の発明の酸化チタンは、光触媒粒子たる酸化チタンを用いるものではなく、したがって、その被覆物(セメント系基材の塗装物)は、光触媒体とはなりえないものであって、上記異議申立人の主張は当を得ない。

以下、以上の相違点につき検討する。
まず、相違点a及びdについて検討する。
上記V-1-1.で記載したとおり、本件発明1は、光触媒体において、「基体上に難分解性結着剤を塗布しあるいは吹き付けて難分解性結着剤からなる、光触媒粒子を含有しない第一層を設け」、そして、「第一層の上に難分解性結着剤と光触媒粒子との混合物からなる第二層を設ける」ことを具備することにより、その余の構成と相俟って、光触媒粒子をあらゆる基体上に、その光触媒機能を損なうことなく、顕著に、強固に、かつ、長期間にわたって接着させるという効果を奏したものである。
これに対して、引用例11に記載の発明では、上記するとおり、長期の屋外使用においても優れた耐久性を有するセメント系基材を得ることができるセメント系基材の塗装方法を提供することを発明の目的とするのである。
そして、光触媒粒子は、その光触媒機能により、被覆物の耐久性を劣化させることは、明らかなことである。
したがって、引用例11に記載される発明の上塗り層(第二層)に含有される酸化チタンを、光触媒粒子に置き換えることは、当業者ならば、容易に想到することができない。
また、このように引用例11に記載の発明は、上塗り層に光触媒粒子を含有することができず、他に、引用例11に記載の発明のものに光触媒性機能を付与することも教示されず、したがって、そこでの被覆物を、光触媒体とすることは、当業者といえども、容易に想到することができない。
次に、引用例4、5、10及び12〜14の記載を順次みる。
引用例4には、吸着剤と光触媒(第2成分を含む)とを含んでなる脱臭剤が記載され〔前記(D-1)〕、また、該光触媒は5〜50重量%含有されること〔前記(D-2)〕が記載されるが、この発明に示される光触媒又は光触媒機能を有する脱臭剤の技術を、引用例11に記載される発明に適用する動機付けがない。
引用例5には、前記したとおり、「鏡面を有する反射鏡であって、前記鏡面上の最上層に、TiO2等から選ばれる透明な光触媒層が形成されている反射鏡」〔前記(E-1)〕であって、「鏡面5の表面に、保護被膜6として、有機塗料等の透明塗装膜、SiO2,Al2O3,CeO2,MF2等を真空蒸着等の方法で形成した金属酸化物膜等を使用する」〔前記(E-3)〕ことができ、該光触媒層として、「酸化チタンの微粒子粉末(粒径0.08μm)を10%添加したシリコン系透明塗料をスプレー法によって塗布」〔前記(E-5)〕して形成することができる発明が記載されている。しかし、この発明に示される光触媒層の成分であるTiO2等又は触媒機能を有する反射鏡の技術を、引用例11に記載される発明に適用する動機付けがない。
引用例10には、前記したとおり、下塗りは,その第一の目的は素材面に対する塗膜の付着性を強化することであること〔前記(J-1)〕が記載されるが、光触媒粒子及び光触媒体につき示唆するものは何もない。
引用例12には、アルコキシシランからポリシロキサンが生成することが記載されるだけであり、上記相違点に関する構成につき示唆するものは何もない。
引用例13には、アルミニウム板に、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等を含む塗料をコーティングし、この上に、PFA(テトラフロロエチレン〜パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)を含む樹脂組成物をコーティングすること〔前記(M-3)〕、また、弗素樹脂塗料中には、着色のための顔料、たとえば、チタン白、を添加してもよいこと〔前記(M-2)〕が、個々に、記載されるだけであり、また、そこで添加してもよいとされるチタン白は、着色のために用いられるのであるから、通常、光触媒機能を有する特殊なものまでは含まれないと解される。したがって、ここでの記載の発明からは、光触媒粒子を保有する光触媒体が示唆されない。
(なお、引用例13に記載の発明については、その発明に、ここで提示される他の引用例に記載のものを併せてみても、引用例13に記載の発明を、光触媒粒子を有する光触媒体とする動機付けがなく、したがって、本件発明1を当業者が容易に想到することができない。)
引用例14には、酸化チタン顔料の製法、酸化チタン顔料の分類、及び耐候性に関し、詳細な記載があり、前記したとおり、そこでは、酸化チタン顔料のあるものは光化学活性(光触媒活性)を有することが示されるとしても、その顔料を、引用例11に記載される発明に適用する動機付けがなく、またそこでは、光化学反応を積極的に活用した本件発明1のような光触媒体が示唆されない。
してみれば、引用例4、5、10及び12〜14に記載のものからは、引用例11に記載の発明の酸化チタンを、「光触媒粒子」とすること、及びその被覆体(セメント系基材の塗装物)を「光触媒体」とすることが当業者の容易に想到できるものではない。
したがって、上記相違点a及びdに関する構成が容易に想到することができないのであるから、上記相違点b及びcに関する構成について判断するまでもなく、本件発明1は、引用例4、5及び10〜14に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

V-3-2.請求項2〜14について
本件発明2〜14は、いずれも、光触媒体において、「基体上に難分解性結着剤を塗布しあるいは吹き付けて難分解性結着剤からなる、光触媒粒子を含有しない第一層を設け」、そして、「第一層の上に難分解性結着剤と光触媒粒子との混合物からなる第二層を設ける」との構成を具備するものである。
そして、本件発明2〜14は、上記の「光触媒粒子」と「光触媒体」との構成を具備することにより、その余の構成と相俟って、所定の効果を奏するものであることは、前記V-1-2.で記載したとおりである。
そしてまた、上記相違点a及びdに関する構成については、当業者が容易に想到することができないことは、上記V-3-1.で記載したとおりである。
したがって、本件発明2〜14は、引用例4、5及び10〜14に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

V-4.理由II-ロ及びIII-ロ(特許法第36条第4項、第5項に規定する要件)について
ここでの特許異議申立人の主張の概略は、次のとおりである。
A.本件発明の「難分解性」がどのようなものを意味するのかは、明細書の記載からみて不明であり、難分解性結着剤にどのような材料が含まれることとなるのか明細書の記載からみて不明である。また、意味不明の「難分解性結着剤」を用いることによる本件発明の効果も不明である。
更に、「難分解性結着剤」は、その範囲、外延が不明確である。
したがって、本件明細書の発明の詳細な説明には、当業者が容易にその実施ができる程度に発明が記載されておらず、また、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであるといえない。更に、特許請求の範囲において発明が明確に記載されていない。
B.本件発明の光触媒粒子たる酸化チタン粒子は、一般の顔料用酸化チタン粒子と区別できないから、本件明細書の発明の詳細な説明には、当業者が容易にその実施ができる程度に発明が記載されておらず、また、特許請求の範囲において発明が明確に記載されていない。
C.請求項4及び6に記載の「フッ素系ポリマー、シリコン系ポリマー、ケイ素化合物」、並びに、請求項11の「ケイ素化合物」は、その範囲、外延が不明確であるから、本件明細書の発明の詳細な説明には、当業者が容易にその実施ができる程度に発明が記載されておらず、また、特許請求の範囲において発明が明確に記載されていない。
以下に、検討する。
上記A.について
(1)本件明細書については、前記訂正請求により、請求項1、10及び13の記載に対して、当該「難分解性結着剤」の「難分解性」の程度を規定する記載が付加されたものであり、これによれば、当該請求項である又は当該請求項を直接ないしは間接的に引用するところの本件請求項1〜14では、そこに記載される「難分解性結着剤」が定義されたことになる。
してみれば、本件請求項1〜14において、そこに記載される「難分解性」がどのようなものを意味するか不明である、ないしは、「難分解性結着剤」がにどのような材料が含まれるか不明であるとは、いえない。また、難分解性結着剤がこのように定義された結果、それが意味不明であるとはいえないのであるから、当該難分解性結着剤を用いた本件請求項1〜14に係る発明の効果が特許異議申立人がいうように不明であるすることができない。
そして、「難分解性結着剤」が定義された結果、その範囲、外延が不明確であるということもできない。
したがって、難分解性結着剤に関し、本件明細書は、特許異議申立人がいうように特許法第36条第4項、第5項第1号、又は、同項第2号に規定する要件を満たしていないとはいえない。
(2)上記主張に関連して、特許異議申立人氏原さちは、本件明細書の実施例1で用いられている結着剤と同じフッ素系ポリマー(旭硝子社製、ルミフロンLF200C)を結着剤として用い試験を行ったところ、該実施例1と同じ結着剤を用いたにもかかわらず、本件明細書の段落0006で定義する要件「光触媒体中の結着剤の重量減少が10%以下」を満たさない場合がある旨、更に主張する。
しかし、権利者より、上記フッ素系ポリマーにつき、同特許異議申立人の試験方法を含む複数の試験条件により試験を行った実験成績証明書(平成14年6月7日付け特許異議意見書)が提示され、これによれば、本件明細書の実施例1で用いたフッ素系ポリマーを結着剤として用いた場合には、いずれの実験条件においても、上記「光触媒体中の結着剤の重量減少が10%以下」を満たすとの結果が得られている。
(なお、権利者より提出された、上記実験成績証明書によれば、光触媒体に設けられる光触媒粒子と難分解性結着樹脂の混合物からなる層においては、難分解性結着樹脂の当該重量減少率に対する膜厚の影響は小さいものであることも導き出されるものである。)
これに対して、特許異議申立人氏原さちの試験結果が示される同人提出の特許異議申立書第26頁の表の記載では、「照射前結着剤重量mg」の数値が、試料1〜6の間で整合が取れておらず、とりわけ、当該重量減少が10%を超えたとされる試料2及び3(結着剤がフッ素系ポリマー)のものは、その数値が、1.8及び2.1と異常と解される程度に低い値となっているものである。
してみれば、同特許異議申立人の試験が適正に実施されたものと認めることができず、その試験結果に基づく上記主張は合理的なものとはいえない。

上記B.について
(1)本件請求項1〜14に係る発明では、光触媒粒子を用いるものであり、そして、本件明細書の段落0008においては、該光触媒粒子として酸化チタンの粒子が利用できることが記載されている。
そして、本件明細書には、「光触媒粒子にそのバンドギャップ以上のエネルギーを持つ波長の光を照射すると光励起により伝導帯に電子を、価電子帯に正孔を生じる。この光励起により生じた電子の持つ強い還元力や正孔の持つ強い酸化力は、有機物質の分解・浄化、水の分解などに利用されている。このような処理に用いられる光触媒粒子は、」(段落0002の抜粋)と記載され、光触媒粒子は、それに所定に波長の光を照射し、それによって生じた電子や正孔を積極的に利用して各種処理を実施することが説明され、また、「前記の第一層には、充填剤として、光触媒機能を有さない無機粒子を含有させるのが好ましい。このような無機粒子としては、光触媒機能を有さないように、酸化ケイ素、酸化アルミニウムや酸化ジルコニウムなどで表面処理を施した、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムなどを用いることができる。」(段落0011の抜粋)と、光触媒機能を有さないように酸化ケイ素、酸化アルミニウムや酸化ジルコニウムなどで表面処理を施した酸化チタン粒子が、光触媒粒子を含有しないとされる第1層に添加されることからみると、当該表面処理を施した酸化チタン粒子は光触媒粒子には該当しないと説明されるものであ
以上のこと及び当該分野の技術常識からすると、一般の顔料用酸化チタンにあっては、それが、使用に耐えうる光触媒機能を有し、光触媒機能を発現する状況で用いられるものであれば、本件請求項1〜14に係る発明の光触媒粒子に該当するものであり、また、それが光触媒機能を有さないようにされたものは、該光触媒粒子に該当しないものである。
してみると、本件明細書で、一般の顔料用酸化チタン粒子が本件請求項1〜14に係る発明の光触媒粒子に該当するか否かが示されていないとしても、当該光触媒粒子の意味するところが特段不明瞭とまでいえず、また、その選定も、光触媒機能を基に適宜選定しうるものである。
したがって、酸化チタンを素材とする光触媒粒子につき、本件明細書の発明の詳細な説明には、当業者が容易にその実施ができる程度に発明が記載されておらず、また、特許請求の範囲において発明が明確に記載されていないとまではいえない。

上記C.について
フッ素系ポリマー、シリコン系ポリマー及びケイ素化合物については、当該分野を含む塗布、塗装分野では極く普通に用いられる用語でもあり、その用語に含まれる範囲、外延が、特段、不明確であるということもできない。
そのうえ、これらフッ素系ポリマー、シリコン系ポリマー及びケイ素化合物につき、その例示が、本件明細書の段落0006が記載されるものである。
してみれば、フッ素系ポリマー、シリコン系ポリマー及びケイ素化合物に関し、本件明細書の発明の詳細な説明には、当業者が容易にその実施ができる程度に発明が記載されておらず、また、特許請求の範囲において発明が明確に記載されていないとまではいえない。

IV. まとめ
特許異議申立の理由及び証拠によっては、訂正後の本件請求項1〜14に係る発明の特許を取り消すことができない。
また、他に訂正後の本件請求項1〜14に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
光触媒体およびその製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】基体上に、難分解性結着剤を塗布しあるいは吹き付けて、難分解性結着剤からなる、光触媒粒子を含有しない第一層を設け、さらに、第一層の上に難分解性結着剤(セメント及び/又はセッコウを除く)と光触媒粒子との混合物からなる第二層を設け、光触媒粒子の量が光触媒粒子と第二層の難分解性結着剤との合量に対する容積基準で20〜98%であり、かつ、前記の第一層または第二層に使用される難分解性結着剤と第二層に配合される結着剤以外の成分とを前記第二層の組成と同じとして層を形成したとき、得られた当該各層の表面に紫外光強度が7mW/cm2になるようにブラックライトの光を5時間照射した後の当該各層中の結着剤の重量減少がいずれも10%以下であることを特徴とする光触媒体。
【請求項2】光触媒粒子の量が、光触媒粒子と難分解性結着剤との合量に対する容積基準で50〜98%であることを特徴とする請求項1に記載の光触媒体。
【請求項3】光触媒粒子の量が、光触媒粒子と難分解性結着剤との合量に対する容積基準で70〜98%であることを特徴とする請求項1に記載の光触媒体。
【請求項4】第二層の難分解性結着剤が、フッ素系ポリマー、シリコン系ポリマー、ケイ素化合物から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の光触媒体。
【請求項5】第二層が、難分解性結着剤(セメント及び/又はセッコウを除く)と光触媒粒子と吸着剤とからなることを特徴とする請求項1に記載の光触媒体。
【請求項6】第一層の難分解性結着剤が、フッ素系ポリマー、シリコン系ポリマー、ケイ素化合物から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の光触媒体。
【請求項7】第一層が、難分解性結着剤と光触媒機能を有さない無機粒子とからなることを特徴とする請求項1に記載の光触媒体。
【請求項8】光触媒粒子が、酸化チタンであることを特徴とする請求項1に記載の光触媒体。
【請求項9】光触媒粒子が、光触媒粒子の内部および/又はその表面に、第二成分として、V、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ru、Rh、Pd、Ag、PtおよびAuからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属および/又は金属化合物を含有してなる粒子であることを特徴とする請求項1に記載の光触媒体。
【請求項10】基体上に、難分解性結着剤を塗布しあるいは吹き付けて、難分解性結着剤からなる、光触媒粒子を含有しない第一層を設け、さらに、第一層の上に無機系結着剤からなる難分解性結着剤(セメント及び/又はセッコウを除く)と光触媒粒子との混合物からなる第二層を設け、かつ、前記の第一層または第二層に使用される難分解性結着剤と第二層に配合される結着剤以外の成分とを前記第二層の組成と同じとして層を形成したとき、得られた当該各層の表面に紫外光強度が7mW/cm2になるようにブラックライトの光を5時間照射した後の当該各層中の結着剤の重量減少がいずれも10%以下であることを特徴とする光触媒体。
【請求項11】無機系結着剤がケイ素化合物であることを特徴とする請求項10に記載の光触媒体。
【請求項12】有害物質、悪臭物質、油分、細菌、放線菌、菌類、藻類を除去し、あるいは、藻類、ゴミ、汚れの付着を防止するために用いることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の光触媒体。
【請求項13】基体上に、光触媒粒子を含有しない難分解性結着剤を塗布しあるいは吹き付けして被覆し、次いで固化して、基体上に光触媒粒子を含有しない難分解性結着剤からなる第一層を設け、さらに第一層の上に難分解性結着剤(セメント及び/又はセッコウを除く)と光触媒粒子との混合物を配置させ、次いで固化して、難分解性結着剤と光触媒粒子との混合物からなる第二層を設け、かつ、前記の第一層または第二層に使用される難分解性結着剤と第二層に配合される結着剤以外の成分とを前記第二層の組成と同じとして層を形成したとき、得られた当該各層の表面に紫外光強度が7mW/cm2になるようにブラックライトの光を5時間照射した後の当該各層中の結着剤の重量減少がいずれも10%以下である難分解性結着剤を用いることを特徴とする光触媒体の製造方法。
【請求項14】第一層上に、光触媒粒子と難分解性結着剤(セメント及び/又はセッコウを除く)とを溶媒に分散させた塗料組成物を塗布しあるいは吹き付けて、光触媒粒子と難分解性結着剤との混合物からなる第ニ層を配置させることを特徴とする請求項13に記載の光触媒体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、基体上に光触媒粒子を接着させてなる光触媒体およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
光触媒粒子にそのバンドギャップ以上のエネルギーを持つ波長の光を照射すると光励起により伝導帯に電子を、価電子帯に正孔を生じる。この光励起により生じた電子の持つ強い還元力や正孔の持つ強い酸化力は、有機物質の分解・浄化、水の分解などに利用されている。このような処理に用いられる光触媒粒子は、通常、光触媒粒子の飛散や流出を防止し、処理系からの分離を容易にするために、光触媒粒子より大きな基体の上に光触媒粒子を接着させている。基体上に光触媒粒子を接着させるには、基体上で光触媒粒子を400℃以上の温度で焼結して接着させたり、加熱分解して光触媒粒子となる物質を400℃程度の温度に加熱した基体上に吹き付けて接着させたりする方法が採られている。また、ある種のフッ素系ポリマーを用いて光触媒粒子を固定化する方法が提案されている。例えば、特開平4―284851号公報には、光触媒粒子とフッ素系ポリマーとの混合物を積層、圧着する方法が記載されている。また、特開平4―334552号公報には、光触媒粒子をフッ素系ポリマーに熱融着する方法が記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
近年、光触媒粒子を用いて日常の生活環境で生じる有害物質、悪臭物質や油分などを分解・浄化したり、殺菌したりする試みがあり、光触媒粒子の適用範囲が拡大している。これに伴い、光触媒粒子をあらゆる基体上に、その光触媒機能を損なうことなく、強固に、かつ、長期間にわたって接着させる方法が求められている。しかしながら、前記の従来技術の方法では、外圧によって剥がれやすいなど接着強度が充分でなく、また、高温で加熱する必要があるため、プラスチックなどの熱に脆弱な基体、加熱し難いオフィスの壁などの建材や種々の製品の表面を基体とする場合などには適用し難く、さらに、高温加熱処理に伴い光触媒粒子の比表面積が低下し、そのため光触媒粒子の光触媒機能の低下が起こるなどの問題がある。また、圧着手段や熱融着の手段などの特殊な手段が必要となったりする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、光触媒粒子をあらゆる基体上に、その光触媒機能を損なうことなく、強固に、かつ、長期間にわたって接着させる方法を探索した結果、(1)結着剤を用いて光触媒粒子を基体上に接着させた場合、該光触媒粒子の光触媒機能により結着剤が分解・劣化し、該光触媒粒子が基体から脱離するが、難分解性結着剤を用いると、光触媒粒子をあらゆる基体上に脱離することなく接着できること、さらに、意外にも、本発明の光触媒体は充分な光触媒機能が得られること、(2)光触媒粒子を、該光触媒粒子と難分解性結着剤との合量に対する容積基準で5〜98%とすることにより、得られる光触媒体の光触媒機能を低下せしめることなく接着できること、(3)難分解性結着剤としてフッ素系ポリマー、シリコン系ポリマーの有機系結着剤或いは無機系結着剤を用いると、光触媒粒子が持つ光触媒機能による結着剤の分解・劣化が極めて少なく、光触媒粒子を強固に、かつ、長期間にわたって接着することができること、特に、ビニルエーテルおよび/またはビニルエステルとフルオロオレフィンとのコポリマーを主成分としたフッ素系ポリマーが好ましいこと、(4)光触媒粒子としては、高い光触媒機能を有し、化学的に安定であり、かつ、無害である酸化チタンが好ましいこと、(5)光触媒粒子を接着させる方法としては、光触媒粒子と難分解性結着剤を基体上に配置させ、次いで、固化する方法が簡便、かつ、容易であり好ましいこと、特に、光触媒粒子と難分解性結着剤と溶媒とを含有させてなる塗料組成物を各種製品などの基体表面に塗布し或いは吹き付けて配置させ、次いで、固化することにより、各種製品の表面を比較的容易に光触媒体とすることができ、その光触媒機能を手軽に各家庭内でも活用することができることなどを見出し、本発明を完成した。
【0005】
すなわち、本発明は光触媒粒子をあらゆる基体上に、その光触媒機能を損なうことなく、強固に、かつ、長期間にわたって接着させた光触媒体を提供することにある。
【0006】
本発明は、難分解性結着剤を介して光触媒粒子を基体上に接着させた光触媒体である。本発明において、難分解性結着剤とは、光触媒粒子が持つ光触媒機能による分解の速度が極めて遅い結着剤であり、実施例記載の方法で測定した光触媒体中の結着剤の重量減少が10%以下、好ましくは5%以下、特に好ましくは3%以下、最も好ましくは1%以下のものである。前記重量減少が10%より大きい場合は、結着剤の分解・劣化が激しく、光触媒粒子の脱離が極めて多いため望ましくない。本発明の難分解性結着剤としては、例えば、水ガラス、コロイダルシリカ、ポリオルガノシロキサンなどのケイ素化合物、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウムなどのリン酸塩、重リン酸塩、セメント、石灰、セッコウ、ほうろう用フリット、グラスライニング用うわぐすり、プラスターなどの無機系結着剤、フッ素系ポリマー、シリコン系ポリマーなどの有機系結着剤などが挙げられ、これらの結着剤を単一または2種以上を組み合わせて用いることができる。特に、接着強度の観点から無機系結着剤、フッ素系ポリマー、シリコン系ポリマーが好ましい。セメントとしては、例えば早強セメント、普通セメント、中庸熱セメント、耐硫酸塩セメント、ホワイト(白色)セメント、油井セメント、地熱井セメントなどのポルトランドセメント、フライアッシュセメント、高硫酸塩セメント、シリカセメント、高炉セメントなどの混合セメント、アルミナセメントなどを用いることができる。プラスターとしては、例えばセッコウプラスター、石灰プラスター、ドロマイトプラスターなどを用いることができる。フッ素系ポリマーとしては、例えばポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化三フッ化エチレン、ポリ四フッ化エチレン、ポリ四フッ化エチレン-六フッ化プロピレンコポリマー、エチレン-ポリ四フッ化エチレンコポリマー、エチレン-塩化三フッ化エチレンコポリマー、四フッ化エチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテルコポリマーなどの結晶性フッ素樹脂、パーフルオロシクロポリマー、ビニルエーテル-フルオロオレフィンコポリマー、ビニルエステル-フルオロオレフィンコポリマーなどの非晶質フッ素樹脂、各種のフッ素系ゴムなどを用いることができる。特に、ビニルエーテル-フルオロオレフィンコポリマー、ビニルエステル-フルオロオレフィンコポリマーを主成分としたフッ素系ポリマーが分解・劣化が少なく、また、取扱が容易であるため好ましい。シリコン系ポリマーとしては、直鎖シリコン樹脂、アクリル変性シリコン樹脂、各種のシリコン系ゴムなどを用いることができる。
【0007】
本発明において、光触媒粒子とは、そのバンドギャップ以上のエネルギーを持つ波長の光を照射すると光触媒機能を発現する粒子のことであり、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化タングステン、酸化鉄、チタン酸ストロンチウムなどの公知の金属化合物半導体を、単一または2種以上を組み合わせて用いることができる。特に、高い光触媒機能を有し、化学的に安定であり、かつ、無害である酸化チタンが好ましい。さらに、光触媒粒子の内部および/またはその表面に、第二成分として、V、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ru、Rh、Pd、Ag、PtおよびAuからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属および/または金属化合物を含有させると、一層高い光触媒機能を有するため好ましい。前記の金属化合物としては、例えば、金属の酸化物、水酸化物、オキシ水酸化物、硫酸塩、ハロゲン化物、硝酸塩、さらには金属イオンなどを含む。第二成分の含有量はその物質により適宜設定できる。前記の金属および/または金属化合物を含有させる光触媒粒子としては、酸化チタンが好ましい。光触媒粒子の含有量は、該光触媒粒子と難分解性結着剤との合量に対する容積基準で5〜98%が好ましい。光触媒粒子の量が前記範囲より小さいと光触媒体としたときの光触媒機能が低下し易いため好ましくなく、また、前記範囲より大きいと接着強度が低下し易いため好ましくない。難分解性結着剤としてセメントまたはセッコウを用いる場合には、光触媒粒子の含有量は5〜40%、特に5〜25%が好ましい。また、難分解性結着剤としてセメント、セッコウ以外の無機系結着剤或いは有機系結着剤を用いる場合には、光触媒粒子の含有量は好ましくは20〜98%、より好ましくは50〜98%、もっとも好ましくは70〜98%である。
【0008】
本発明において光触媒粒子は、公知の方法で得られる。例えば酸化チタンを得る方法としては、▲1▼硫酸チタニル、塩化チタン、チタンアルコキシドなどのチタン化合物を、必要に応じて核形成用種子の存在下に、加熱加水分解する方法、▲2▼必要に応じて核形成用種子の存在下に、硫酸チタニル、塩化チタン、チタンアルコキシドなどのチタン化合物にアルカリを添加し、中和する方法、▲3▼塩化チタンやチタンアルコキシドなどを気相酸化する方法、▲4▼前記▲1▼、▲2▼の方法で得られた酸化チタンを焼成或いは水熱処理する方法などがあり、特に、前記▲1▼の方法で得られた酸化チタン或いは100℃以上の温度で水熱処理して得られた酸化チタンは、光触媒機能が高いため好ましい。本発明において酸化チタンとは、酸化チタンのほか、含水酸化チタン、水和酸化チタン、メタチタン酸、オルトチタン酸、水酸化チタンなどと一般に呼ばれているものを含み、その結晶型は問わない。光触媒粒子の内部および/またはその表面に、第二成分として、V、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ru、Rh、Pd、Ag、PtおよびAuからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属および/または金属化合物を含有させるには、光触媒粒子を製造する際に該金属および/または該金属化合物を添加し、吸着させる方法、光触媒粒子を製造した後に該金属および/または該金属化合物を添加し、吸着させ、必要に応じて加熱したり、或いは必要に応じて還元したりする方法を用いることができる。
【0009】
本発明において、基体としては、セラミックス、ガラスなどの無機材質の物品、プラスチック、ゴム、木、紙などの有機材質の物品、アルミニウムなどの金属、鋼などの合金などの金属材質の物品を用いることができる。基体の大きさや形には特に制限されない。また、塗装した物品でも用いることができる。
【0010】
本発明においては、難分解性結着剤を介して、光触媒粒子と吸着剤とを基体上に接着させると、被処理物質を吸着する作用を兼ね備えることができるため好ましい。前記の吸着剤としては、一般的な吸着剤を用いることができ、例えば、活性炭、ゼオライト、シリカゲルなどを用いることができる。
【0011】
さらに、本発明においては、基体上に、結着剤からなる、光触媒粒子を含有しない第一層を設け、さらに、該第一層の上に、難分解性結着剤と光触媒粒子とからなる第二層を設けることができる。光触媒粒子を含有しない第一層を設けることによって、基体と、光触媒粒子を含有した第二層との結びつきが強固になって、該光触媒粒子を基体上に、一層強固に、かつ、一層長期間にわたって接着させることができる。このような結着剤としては、有機系結着剤が好ましく、前記の難分解性結着剤がより好ましい。さらに、前記の第一層には、充填剤として、光触媒機能を有さない無機粒子を含有させるのが好ましい。このような無機粒子としては、光触媒機能を有さないように、酸化ケイ素、酸化アルミニウムや酸化ジルコニウムなどで表面処理を施した、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムなどを用いることができる。
【0012】
本発明の光触媒体を製造するには、光触媒粒子と難分解性結着剤とを基体の少なくとも一部に配置させ、次いで、固化して、該基体上に難分解性結着剤を介して光触媒粒子を接着させる。本発明においては、特に、光触媒粒子と難分解性結着剤とを溶媒に分散させて塗料組成物とし、次いで、該塗料組成物を基体に塗布し或いは吹き付けて、該光触媒粒子と該難分解性結着剤とを基体の少なくとも一部に配置させるのが好ましい。前記の溶媒としては、水やトルエン、アルコールなどの有機溶媒を用いることができる。前記塗料組成物中に含有させる難分解性結着剤は前述のものを用いることができるが、含有する溶媒に可溶なものが好ましい。本発明においては、塗料組成物中に含有する難分解性結着剤として前記のフッ素系ポリマーおよび/またはシリコン系ポリマーが好ましい。塗料組成物中の光触媒粒子の量は、該光触媒粒子と難分解性結着剤との合量に対する容積基準で5〜98%、好ましくは20〜98%、より好ましくは50〜98%、もっとも好ましくは70〜98%である。前記塗料組成物には、架橋剤、分散剤、充填剤などを配合させることができる。架橋剤としては、イソシアネート系、メラミン系などの通常の架橋剤を、分散剤としては、カップリング剤などを使用することができる。特に、塗料組成物中の光触媒粒子の含有量を、該光触媒粒子と難分解性結着剤との合量に対する容積基準で40〜98%とする場合には、該塗料組成物中にカップリング剤を配合するのが好ましい。このカップリング剤の添加量は、好ましくは5〜50%、より好ましくは7〜30%である。
【0013】
基体に塗料組成物を塗布したり或いは吹き付けたりするには、例えば、含浸法、ディップコーティング法、スピナーコーティング法、ブレードコーティング法、ローラーコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、リバースロールコーティング法などの通常の方法で塗布したり、或いは、スプレーコーティング法などの通常の方法で吹き付けたりして、基体の少なくとも一部に光触媒粒子と難分解性結着剤とを配置させることができる。なお、基体に該塗料組成物を塗布したり或いは吹き付けたりする前に、必要に応じて、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂などの有機系結着剤や難分解性結着剤を基体に塗布し或いは吹き付けたりして、光触媒粒子を含有しない第一層とし、さらに、該第一層の上に、該塗料組成物を塗布或いは吹き付けて、光触媒粒子と難分解性結着剤とからなる第二層を設けることができる。
【0014】
前記のようにして塗布或いは吹き付けた後、固化させて本発明の光触媒体を得る。固化は、乾燥したり、紫外線を照射したり、加熱したり、冷却したり、架橋剤を使用したりする方法で行なうことができが、固化の温度は、400℃より低い温度、好ましくは室温〜200℃の温度で行なう。この場合、400℃より高いと結着剤が熱劣化し、光触媒粒子が脱離し易くなるため好ましくない。本発明においては、イソシアネート系、メラミン系などの架橋剤を使用して固化させる方法が好ましい。
【0015】
本発明の光触媒体は、このものにその光触媒粒子のバンドギャップ以上のエネルギーを持つ波長の光を照射させることにより、その回りに存在する有害物質、悪臭物質、油分などを分解して浄化したり、殺菌したりすることができる。照射する光としては、紫外線を含有した光などが挙げられ、例えば、太陽光や蛍光灯、ブラックライト、ハロゲンランプ、キセノンフラッシュランプ、水銀灯などの光を用いることができる。特に、300〜400nmの近紫外線を含有した光が好ましい。光の照射量や照射時間などは処理する物質の量などによって適宜設定できる。
【0016】
【実施例】
実施例1
硫酸チタニルを加熱加水分解して得た酸性チタニアゾル(石原産業株式会社製、CS-N)に水酸化ナトリウムを加えpH7に調節した後濾過、洗浄を行なった。次いで、得られた酸化チタン湿ケーキに水を加え、TiO2に換算して100g/lのスラリーを調製した。このスラリーに水酸化ナトリウムを加えpH10に調節した後、オートクレーブで150℃の温度で3時間水熱処理を行なった。次いで、水熱処理後のスラリーに硝酸を加えpH7に中和し、濾過、水洗を行なった後、110℃の温度で3時間乾燥させて酸化チタンを得た。
次に、以下に示す組成の混合物をペイントシェイカーで3時間振とうして充分混合し、分散させて塗料組成物を得た。なお、下記のルミフロンLF200Cは、ビニルエーテルとフルオロオレフィンとのコポリマーを主成分としたフッ素系ポリマーである。
酸化チタン 9.80g
フッ素系ポリマー(旭ガラス社製、ルミフロンLF200C) 0.80g
イソシアネート系硬化剤 0.16g
チタンカップリング剤(味の素社製、プレーンアクト338X)1.00g
トルエン 23.60ml
前記組成の塗料組成物を20cm2のガラス板に塗布した後、120℃の温度で20分間乾燥させて、本発明の光触媒体(試料A)を得た。この試料Aの酸化チタン含有量は、該酸化チタンと難分解性結着剤との合量に対する容積基準で90%であった。
【0017】
実施例2
実施例1で使用したものと同一の酸化チタンを以下に示す組成の混合物としてペイントシェイカーで3時間振とうして充分混合し、分散させて塗料組成物を得た。
酸化チタン 7.64g
フッ素系ポリマー(旭ガラス社製、ルミフロンLF200C) 2.36g
イソシアネート系硬化剤 0.47g
チタンカップリング剤(味の素社製、プレーンアクト338X)0.76g
トルエン 22.50ml
前記組成の塗料組成物を20cm2のガラス板に塗布した後、120℃の温度で20分間乾燥させて、本発明の光触媒体(試料B)を得た。この試料Bの酸化チタン含有量は、該酸化チタンと難分解性結着剤との合量に対する容積基準で70%であった。
【0018】
実施例3
実施例1で使用したものと同一の酸化チタンを以下に示す組成の混合物としてペイントシェイカーで1時間振とうして充分混合し、分散させて塗料組成物を得た。
酸化チタン 9.8g
ポリオルガノシロキサン系無機結着剤(日本合成ゴム社製、T2202AとT2202Bの3:1混合品)
2.7g
イソプロピルアルコール 21.5ml
前記組成の塗料組成物を20cm2のガラス板に塗布した後、180℃で10分間乾燥させて、本発明の光触媒体(試料C)を得た。この試料Cの酸化チタン含有量は、該酸化チタンと難分解性結着剤との合量に対する容積基準で90%であった。
【0019】
実施例4
硫酸チタニルを加熱加水分解して得た酸性チタニアゾル(石原産業株式会社製、CS-N)に水酸化ナトリウムを加えpH7に調節した後濾過、洗浄を行なった。次いで、得られた酸化チタン湿ケーキを110℃の温度で3時間乾燥させて酸化チタンを得た。
次に、以下に示す組成の混合物としてペイントシェイカーで3時間振とうして充分混合し、分散させて塗料組成物を得た。
酸化チタン 7.0g
ポリオルガノシロキサン系無機結着剤(日本合成ゴム社製、T2202AとT2202Bの3:1混合品)
4.3g
イソプロピルアルコール 22.5ml
前記組成の塗料組成物を20cm2のガラス板に塗布した後、180℃で10分間乾燥させて、本発明の光触媒体(試料D)を得た。この試料Dの酸化チタン含有量は、該酸化チタンと難分解性結着剤との合量に対する容積基準で80%であった。
【0020】
比較例1
実施例1で使用したものと同一の酸化チタンを以下に示す組成の混合物としてペイントシェイカーで1時間振とうして充分混合し、分散させて塗料組成物を得た。
酸化チタン 9.8g
酢酸ビニル-アクリルコポリマー(大日本インキ化学工業社製、ボンコート6290)
0.7g
水 24.8ml
前記組成の塗料組成物を20cm2のガラス板に塗布した後、120℃で10分間乾燥させて、光触媒体(試料E)を得た。この試料Eの酸化チタン含有量は、該酸化チタンと結着剤との合量に対する容積基準で90%であった。
【0021】
前記実施例および比較例で得た光触媒体(試料A〜E)を用いて、各試料の表面で紫外光強度が7mW/cm2となるようにブラックライトの光を照射し、5時間続けた。ブラックライト照射前後の光触媒体中の結着剤の重量減少を測定した。この結果、本発明の試料A〜Dは重量減少が認められず、結着剤は分解されなかった。しかし、難分解性結着剤を使用していない比較例の試料Eは85%の重量減少があり、酸化チタンの光触媒機能によって結着剤の大部分は分解された。しかも、試料Eは、黄変が認められ、酸化チタンが部分的に剥離した。実施例の試料A、Cおよび比較例の試料Eのブラックライト照射による光触媒体中の結着剤の重量減少の推移を図1に示す。なお、実施例1および2の試料AおよびBでは、カップリング剤を配合しているが、このカップリング剤が光触媒粒子の表面に吸着して、難分解性結着剤と光触媒粒子との間を架橋するため、光触媒粒子が直接結着剤に接触しないから、結着剤は分解され難い。
【0022】
次に、本発明の試料A〜Dを3リットルのガラス容器にそれぞれ別個に入れた後、悪臭成分であるアセトアルデヒドを90ppmの濃度となるように添加してガラス容器を密封した。次に、各試料の表面で紫外光強度が14mW/cm2となるように水銀灯を照射し、60分間続けた。照射後、ガラス容器中のアセトアルデヒドの濃度を測定した。この結果を表1に示す。試料A〜Dは、酸化チタンの光触媒機能によりアセトアルデヒドが効率良く分解された。
【0023】
【表1】

【0024】
実施例5
硫酸チタニルを加熱加水分解して得た酸性チタニアゾル(石原産業株式会社製、CS-C)に水酸化ナトリウムを加えてpH7に調節した後、濾過、洗浄、乾燥し、次いで粉砕して酸化チタンを得た。この酸化チタン0.2g、白色セメント(小野田セメント株式会社製)0.8g、水0.7gとを混合し、面積50cm2のガラス板に全量塗布し、室温で乾燥して光触媒体(試料F)を得た。この試料Fの酸化チタン含有量は、該酸化チタンと難分解性結着剤との合量に対する容積基準で17%であった。
【0025】
実施例6
実施例5において、白色セメントに代えてデンカハイアルミナセメント(電気化学工業株式会社製、Hi)を0.8g用いること以外は、実施例5と同様にして本発明の光触媒体(試料G)を得た。この試料Gの酸化チタン含有量は、該酸化チタンと難分解性結着剤との合量に対する容積基準で17%であった。
【0026】
比較例2
実施例5で使用した白色セメント1.0gと水0.7gとを混合し、面積50cm2のガラス板に全量塗布し、室温で乾燥して試料Hを得た。
【0027】
比較例3
実施例6で使用したデンカハイアルミナセメント(Hi)1.0gと水0.7gとを混合し、面積50cm2のガラス板に全量塗布し、室温で乾燥して試料Iを得た。
【0028】
前記実施例および比較例で得た試料F〜Iをそれぞれ容量4リットルの容器に入れ、次いで一酸化窒素標準ガスを注入した。次に、各試料の表面で紫外光強度が1mW/cm2となるようにブラックライトの光を照射し、各容器のNOxガスの濃度をNOx検知管(ガステック社製11L)で経時的に測定した。この結果を表2に示す。実施例5および6の試料F、GはNOxガスの濃度が大幅に減少しているのに対して、比較例2および3の試料H、IではNOxガスの濃度は殆ど変化していないことがわかる。このことから、本発明の光触媒体は一酸化窒素を酸化し、除去するのに有効であることが明らかとなった。なお、前記方法で試料FおよびG中のセメントの重量減少を測定したところ重量減少は認められず、セメントは分解されなかった。
【0029】
【表2】

【0030】
実施例7
実施例1の方法に準じて得た塗料組成物を面積100cm2の透明アクリル板に全量塗布し、120℃の温度で20分間乾燥して本発明の光触媒体(試料J)を得た。この試料Jの酸化チタン含有量は、該酸化チタンと難分解性結着剤との合量に対する容積基準で90%であった。
【0031】
比較例4
実施例7で使用した透明アクリル板を試料Kとした。
【0032】
前記実施例および比較例で得た試料J、Kをそれぞれ容量50リットルの水槽の内壁に張りつけた。この水槽に水45リットルと金魚(和金)20匹とを入れ、水槽の外側から20Wの蛍光灯2本の光を照射した。
2週間飼育した時点で、比較例4の試料Kの表面には藻類の付着が認められたのに対し、実施例7の試料Jの表面には藻類の付着は認められなかった。これは実施例7の試料Jの表面では藻類が付着しても直ちに光触媒機能により藻類を分解するためである。なお、前記方法で試料J中のフッ素系ポリマーの重量減少を測定したところ、重量減少は認められず、フッ素系ポリマーは分解されなかった。
【0033】
実施例8
実施例7において、以下に示す組成の混合物をペイントシェイカーで1時間振とうして充分混合し、分散させて得た塗料組成物をスピンコーター(1000r.p.m.×10秒)で透明アクリル板に全量塗布して、該透明アクリル板上に、難分解性結着剤からなる、光触媒粒子を含有しない第一層を設けた基体を用いたこと以外は、実施例7と同様に処理して、本発明の光触媒体(試料L)を得た。この試料Lの第二層中の光触媒粒子である酸化チタン含有量は、該酸化チタンと難分解性結着剤との合量に対する容積基準で90%であった。
光触媒機能を有さない酸化チタン(CR-90、石原産業社製) 3.3g
フッ素系ポリマー(旭ガラス社製、ルミフロンLF200C) 5.5g
イソシアネート系硬化剤 1.1g
トルエン 20.7ml
【0034】
前記方法で試料Lに用いた結着剤の重量減少を測定したところ、本発明の試料Lは重量変化が認められず、結着剤は分解されず、酸化チタン光触媒粒子は基体から剥がれなかった。また、実施例8の試料Lの膜強度を鉛筆硬度で調べた結果3Hであり、酸化チタンの光触媒粒子が強固に接着していることがわかった。さらに、この試料Lを水流中に入れ表面の紫外光強度が2mW/cm2となるようにブラックライトの光を照射し、3週間続けたところ、酸化チタン光触媒粒子は基体から剥がれなかった。
【0035】
実施例9
実施例1において、酸化チタンに代えて、亜鉛化合物を担持した酸化チタンを用いたこと以外は、実施例1と同様に処理して、本発明の光触媒体(試料M)を得た。この試料M中の亜鉛化合物を担持した酸化チタン光触媒粒子の含有量は、該光触媒粒子と難分解性結着剤との合量に対する容積基準で90%であった。
なお、亜鉛化合物を担持した酸化チタンは次のようにして調製した。
硫酸チタニルを加熱加水分解して得た酸化チタンのスラリーに水と水酸化ナトリウムを加えて、pHが10であって、TiO2に換算して100g/lのスラリーとした。このスラリーをオートクレーブで150℃の温度で5時間水熱処理を行った後、硝酸で中和し、濾過、水洗を行った。得られた酸化チタン湿ケーキに水を加え、TiO2に換算して100g/lのスラリーに調製した後、塩酸を添加して、スラリーのpHを4とした。このスラリー1リットルに対し、攪拌下、1mol/lの塩化亜鉛水溶液7.2mlを滴下し、次いで2Nの水酸化ナトリウムで中和した後、濾過、水洗を行い、その後120℃の温度で16時間乾燥し、粉砕して、亜鉛化合物を担持した酸化チタンを得た。この酸化チタンには、ZnO:TiO2=1:99の量の亜鉛化合物をその酸化チタンの表面に含有していた。
【0036】
実施例10
実施例1において、酸化チタンに代えて、鉄化合物を担持した酸化チタンを用いたこと以外は、実施例1と同様に処理して、本発明の光触媒体(試料N)を得た。この試料N中の鉄化合物を担持した酸化チタン光触媒粒子の含有量は、該光触媒粒子と難分解性結着剤との合量に対する容積基準で90%であった。
なお、鉄化合物を担持した酸化チタンは次のようにして調製した。
硫酸チタニルを加熱加水分解して得た酸化チタン10gをTiO2に換算して100g/lのスラリーを調整した。このスラリーに塩化鉄(FeCl3・6H2O)の5g/l水溶液を2.9ml添加し、1時間攪拌した後、希アンモニア水を加えpH7に調節した。次いで、前記スラリーを1時間攪拌した後、濾過、水洗し、110℃の温度で3時間乾燥して、鉄化合物を担持した酸化チタンを得た。この酸化チタンには、Fe/TiO2=300ppmの量の鉄化合物をその酸化チタンの表面に含有していた。
【0037】
実施例11
実施例10において、塩化鉄水溶液の濃度を50g/lにしたこと以外は、実施例10と同様に処理して、本発明の光触媒体(試料O)を得た。この試料O中の鉄化合物を担持した酸化チタン光触媒粒子の含有量は、該光触媒粒子と難分解性結着剤との合量に対する容積基準で90%であった。この酸化チタンには、Fe/TiO2=3000ppmの量の鉄化合物をその酸化チタンの表面に含有していた。
【0038】
実施例12
実施例1において、酸化チタン8.9g、吸着剤として活性炭0.5gを含有した塗料組成物としたこと以外は実施例1と同様に処理して、本発明の光触媒体(試料P)を得た。この試料Pの酸化チタンと活性炭の合計の含有量は、酸化チタン、活性炭および難分解性結着剤との合量に対する容積基準で90%であった。
【0039】
実施例13
実施例12において、活性炭に代えてゼオライト0.8gを用いたこと以外は実施例12と同様に処理して、本発明の光触媒体(試料Q)を得た。この試料Qの酸化チタンとゼオライトの合計の含有量は、酸化チタン、ゼオライトおよび難分解性結着剤との合量に対する容積基準で90%であった。
【0040】
前記方法で試料L〜Qに用いた結着剤の重量減少を測定したところ、本発明の試料L〜Qは重量変化が認められず、結着剤は分解されず、酸化チタン光触媒粒子は基体から剥がれなかった。
【0041】
次に、本発明の試料A、NおよびOを0.8リットルのガラス容器にそれぞれ別個に入れた後、悪臭成分であるアセトアルデヒドを約100ppmの濃度となるように添加してガラス容器を密封した。次に、30分間紫外線を照射せずに放置した後、各試料の表面で紫外光強度が1mW/cm2となるようにブラックライトの光を照射し、60分間続けた。照射後、ガラス容器中のアセトアルデヒドの濃度を測定した。この結果を表3に示す。試料A、NおよびOは、酸化チタンの光触媒機能によりアセトアルデヒドが効率良く分解された。
【0042】
【表3】

【0043】
次に、本発明の試料M、PおよびQを0.8リットルのガラス容器にそれぞれ別個に入れた後、悪臭成分であるメチルメルカプタンを約500ppmの濃度となるように添加してガラス容器を密封した。次に、2時間紫外線を照射せずに放置した後、各試料の表面で紫外光強度が1mW/cm2となるようにブラックライトの光を照射し、60分間続けた。照射後、ガラス容器中のメチルメルカプタンの濃度を測定した。この結果を表4に示す。試料M、PおよびQは、酸化チタンの光触媒機能によりメチルメルカプタンを効率よく除去できた。
【0044】
【表4】

【0045】
なお、上記試験において、2時間紫外線を照射せずに放置した後のメチルメルカプタンの濃度はそれぞれ250ppmであり、この後さらに1時間紫外線を照射せずに放置した後のメチルメルカプタンの濃度は、実施例9、13の試料M、Qを用いた場合は240ppmであり、実施例12の試料Pを用いた場合は220ppmであった。
【0046】
【発明の効果】
本発明の光触媒体は、難分解性結着剤を介して光触媒粒子を基体上に接着させたものであって、その光触媒機能による結着剤の分解・劣化が極めて少なく、光触媒粒子をあらゆる基体上に、その光触媒機能を損なうことなく、強固に、かつ、長期間にわたって接着することができる。本発明の光触媒体の光触媒機能を利用して有害物質、悪臭物質、油分、細菌、放線菌、菌類、藻類などを迅速、かつ、効率よく除去することができるので、工業用途ばかりでなく一般家庭用の脱臭体、殺菌体などとして極めて有用なものである。また、本発明の光触媒体は、長期間にわたって使用でき、安全性が高く、適応できる有害物質の範囲が広く、さらに、廃棄しても環境を汚さないため、産業的に極めて有用なものである。本発明の光触媒体を製造するに際し、難分解性結着剤としてフッ素系ポリマーを用いた場合は、フッ素系ポリマー自体の粘着力が弱いために、光触媒体の表面にゴミや汚れが付着し難いという、好ましい光触媒体を製造することができる。
また、本発明の光触媒体の製造方法は、プラスチックなどあらゆる材質のものを基体として用いることができ、しかも、簡便、かつ、容易に安定した品質の光触媒体を製造できるなど有用な方法である。
さらに、本発明の塗料組成物は、あらゆる形状の基体や基体の必要箇所に塗布しあるいは吹き付けることができ、その光触媒機能を手軽に利用することができるなど、特に一般家庭用としても有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の試料A、Cおよび比較例の試料Eのブラックライト照射による光触媒体中の結着剤の重量減少の推移を示した図である。
 
訂正の要旨 訂正の要旨
特許第3027739号の明細書につき、平成14年7月23日付け訂正請求書に添付された訂正明細書に記載される、次の(イ)〜(ト)のとおりに訂正する。
(イ)特許請求の範囲の請求項1における、
「基体上に、難分解性結着剤を塗布しあるいは吹き付けて、難分解性結着剤からなる、光触媒粒子を含有しない第一層を設け、さらに、第一層の上に難分解性結着剤(セメント及び/又はセッコウを除く)と光触媒粒子との混合物からなる第二層を設け、光触媒粒子の量が光触媒粒子と第二層の難分解性結着剤との合量に対する容積基準で20〜98%であることを特徴とする光触媒体。」を、特許請求の範囲の減縮を目的として、
「基体上に、難分解性結着剤を塗布しあるいは吹き付けて、難分解性結着剤からなる、光触媒粒子を含有しない第一層を設け、さらに、第一層の上に難分解性結着剤(セメント及び/又はセッコウを除く)と光触媒粒子との混合物からなる第二層を設け、光触媒粒子の量が光触媒粒子と第二層の難分解性結着剤との合量に対する容積基準で20〜98%であり、かつ、前記の第一層または第二層に使用される難分解性結着剤と第二層に配合される結着剤以外の成分とを前記第二層の組成と同じとして層を形成したとき、得られた当該各層の表面に紫外光強度が7mW/cm2になるようにブラックライトの光を5時間照射した後の当該各層中の結着剤の重量減少がいずれも10%以下であることを特徴とする光触媒体。」と訂正する。
(ロ)特許請求の範囲の請求項10における、
「基体上に、難分解性結着剤を塗布しあるいは吹き付けて、難分解性結着剤からなる、光触媒粒子を含有しない第一層を設け、さらに、第一層の上に無機系結着剤からなる難分解性結着剤(セメント及び/又はセッコウを除く)と光触媒粒子との混合物からなる第二層を設けることを特徴とする光触媒体。」を、特許請求の範囲の減縮を目的として、
「基体上に、難分解性結着剤を塗布しあるいは吹き付けて、難分解性結着剤からなる、光触媒粒子を含有しない第一層を設け、さらに、第一層の上に無機系結着剤からなる難分解性結着剤(セメント及び/又はセッコウを除く)と光触媒粒子との混合物からなる第二層を設け、かつ、前記の第一層または第二層に使用される難分解性結着剤と第二層に配合される結着剤以外の成分とを前記第二層の組成と同じとして層を形成したとき、得られた当該各層の表面に紫外光強度が7mW/cm2になるようにブラックライトの光を5時間照射した後の当該各層中の結着剤の重量減少がいずれも10%以下であることを特徴とする光触媒体。」と訂正する。
(ハ)特許請求の範囲の請求項12における、
「有害物質、悪臭物質、油分、細菌、放線菌、菌類、藻類などを除去し、・・・」を、特許請求の範囲の減縮を目的として、
「有害物質、悪臭物質、油分、細菌、放線菌、菌類、藻類を除去し、・・・」と訂正する。
(ニ)特許請求の範囲の減縮を目的として、特許請求の範囲の請求項13を削除する。
(ホ)特許請求の範囲の請求項14における、
「基体上に、光触媒粒子を含有しない難分解性結着剤を塗布しあるいは吹き付けして被覆し、次いで固化して、基体上に光触媒粒子を含有しない難分解性結着剤からなる第一層を設け、さらに第一層の上に難分解性結着剤(セメント及び/又はセッコウを除く)と光触媒粒子との混合物を配置させ、次いで固化して、難分解性結着剤と光触媒粒子との混合物からなる第二層を設けることを特徴とする光触媒体の製造方法。」を、特許請求の範囲の減縮を目的として、
「基体上に、光触媒粒子を含有しない難分解性結着剤を塗布しあるいは吹き付けして被覆し、次いで固化して、基体上に光触媒粒子を含有しない難分解性結着剤からなる第一層を設け、さらに第一層の上に難分解性結着剤(セメント及び/又はセッコウを除く)と光触媒粒子との混合物を配置させ、次いで固化して、難分解性結着剤と光触媒粒子との混合物からなる第二層を設け、かつ、前記の第一層または第二層に使用される難分解性結着剤と第二層に配合される結着剤以外の成分とを前記第二層の組成と同じとして層を形成したとき、得られた当該各層の表面に紫外光強度が7mW/cm2になるようにブラックライトの光を5時間照射した後の当該各層中の結着剤の重量減少がいずれも10%以下である難分解性結着剤を用いることを特徴とする光触媒体の製造方法。」と訂正する。
(ヘ)特許請求の範囲の請求項15における、
「・・・特徴とする請求項14に記載の光触媒体の製造方法。」を、明りょうでない記載の釈明を目的として、
「・・・特徴とする請求項13に記載の光触媒体の製造方法。」
(ト)明りょうでない記載の釈明を目的として、特許請求の範囲の請求項14及び15における請求項番号を、14及び15から、13及び14に、それぞれ、訂正する。
異議決定日 2002-09-04 
出願番号 特願平10-92380
審決分類 P 1 651・ 121- YA (B01J)
P 1 651・ 534- YA (B01J)
P 1 651・ 531- YA (B01J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 野田 直人関 美祝  
特許庁審判長 多喜 鉄雄
特許庁審判官 唐戸 光雄
西村 和美
登録日 2000-01-28 
登録番号 特許第3027739号(P3027739)
権利者 東陶機器株式会社 橋本 和仁 藤嶋 昭 石原産業株式会社
発明の名称 光触媒体およびその製造方法  
代理人 山本 忠  
代理人 山本 忠  
代理人 山本 忠  
代理人 山本 忠  

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