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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01R
管理番号 1068885
異議申立番号 異議2002-70521  
総通号数 37 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-05-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-03-04 
確定日 2002-10-12 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3204183号「フラットケーブル用コネクタ」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3204183号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3204183号の請求項1〜3に係る発明は、平成9年11月13日に特許出願され、平成13年6月29日に特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人坂本聡より特許異議の申立がなされ、当審において取消理由が通知され、その指定期間内である平成14年8月30日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否について
(1)訂正を求める事項
特許権者は、願書に添付した明細書及び図面(以下、「特許明細書」という)について、以下の訂正を求めている。
a)特許明細書の請求項1の「前記回動中心より手前側にケーブルの挿入口を配置し、」を「前記回動中心より手前側で、かつコネクタのプリント基板等への取付側とは反対側にケーブルの挿入口である大きく開口された開口部を有し、」と訂正する。
b)特許明細書の段落【0013】の「前記回動中心より手前側にケーブルの挿入口を配置し、」を「前記回動中心より手前側で、かつコネクタのプリント基板等への取付側とは反対側にケーブルの挿入口である大きく開口された開口部を有し、」と訂正する。
c)特許明細書の段落【0038】の2箇所の「奥まったを方向に」を「奥まった方向に」に夫々訂正する。
d)特許明細書の段落【0042】の「奥まったを方向に」を「奥まった方向に」に訂正する。
e)特許明細書の段落【0044】の「備えており、」を「備えている。」に、「離れたの外側」を「離れた外側」に、「屈曲しなければならないため」を「屈曲するが」に夫々訂正する。
f)特許明細書の段落【0046】の「このつながっている部分において、」を「加圧部材5のつながっている部分に、」に、「加圧部材5が開かれ、」を「加圧部材5の加圧部5dが開かれ、」に、「加圧部材5を開く方向」を「加圧部材5の加圧部材5dを開く方向」に、「加圧部材6」を「加圧部材5」に夫々訂正する。

(2)訂正の適否についての判断
(イ)上記訂正事項a)については、本件請求項1に係る発明の発明特定事項である「ケーブルの挿入口」の位置と構成を限定し、かつ明確にするものであるから、特許請求の範囲の減縮、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
そして、上記訂正事項a)における「前記回動中心より手前側で、」「ケーブルの挿入口である大きく開口された開口部を有し」ているという事項は、特許明細書の「加圧部材5は、軸部5b及び回動軸部5cを中心として、その手前側の上面部にケーブル6の挿入口である開口部5gを設け」(【0025】)という記載、および「加圧部材の上方に大きく開口する開口部を設け、」(【0053】)という記載に基づくものである。そして、「コネクタのプリント基板等への取付側とは反対側に」「大きく開口された開口部を有し」ているという事項は、特許明細書の「ハウジング2の両端には、コネクタ本体をプリント基板7上に取付けるための金具を備えている」(【0032】)という記載、「コネクタ1は、電気接触子3の半田付け部3eおよび金具4の半田付け部4eによりプリント基板7上に取りつけられている。また、接触子3の半田付け部3eはプリント基板と電気的に接続されている。」(【0037】)という記載、並びに、図3および図4(b)の記載から、コネクタ(1)において、半田付け部(3e及び4e)はコネクタ(1)の下面側に設けられていることが明らかであり、かつコネクタ(1)の下面側がプリント基板(7)に取付られることから、大きく開口された開口部(5g)が設けられる加圧部材(5)の上面部は、「コネクタのプリント基板等への取付側とは反対側に」あることが理解されるので、これら上記の明細書および図面の記載に基づくものである。
(ロ)上記訂正事項b)については、上記訂正事項a)により、請求項1の記載を訂正することに伴うものであり、請求項1の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るための、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
(ハ)上記訂正事項c)〜f)については、まず、上記訂正事項c)およびd)の「奥まったを方向に」を「奥まった方向に」と訂正すること、上記訂正事項e)の「離れたの外側」を「離れた外側」と訂正すること、および、上記訂正事項f)の「加圧部材6」を「加圧部材5」と訂正することは、明らかな誤記の訂正を目的とするものである。
そして、上記訂正事項e)の「備えており、」を「備えている。」に、「屈曲しなければならないため」を「屈曲するが」に、夫々訂正することは、加圧部材の構成に関する記載とケーブルをコネクタに接続したときの状態を説明する記載とを分けて記載し、かつケーブル接続状態を示す表現を客観的にすることにより、加圧部材の構成およびコネクタの接続状態に関する記載を明確にするものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、特許明細書の第10図の記載に基づくものである。
さらに、上記訂正事項f)の「このつながっている部分において、」を「加圧部材5のつながっている部分に、」に、「加圧部材5が開かれ、」を「加圧部材5の加圧部5dが開かれ、」に、そして、「加圧部材5を開く方向」を「加圧部材5の加圧部材5dを開く方向」に、夫々訂正することは、加圧部材(5)の開かれる部分を「加圧部5d」と明確にし、コネクタの動作に関する記載を明りょうとするものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、特許明細書の「図5及び図6に示すように、加圧部材5の操作部5fを上方向に押し上げると、・・・加圧部材5の加圧部5dと電気接触子3の弾性接触子3dとの間の隙間が拡大され、その隙間が加圧部材5の開口部5gを通して外部に向けて開放される。」(【0028】)という記載、および「次に図7に示すように、ケーブル6を加圧部材5の開口部5gに通して、拡大された加圧部材5の加圧部5dと電気接触子3の弾性接触子3dとの隙間に挿入し、ケーブル6の先端部をコネクタ1内の奥の方まで差込む。この状態で加圧部材5の操作部5fを時計方向に押圧すると、・・・加圧部材5の加圧部5dと電気接触子3の弾性接触子3dとの間の隙間が縮小され、ケーブル6は、加圧部材5の加圧部5dと電気接触子3の弾性接触子3dとにより加圧し挟持され、かつケーブル6の接点に電気接触子3の弾性接触子3dが電気的に接触する。」(【0029】)という記載に基づくものである。
そして、上記いずれの訂正事項も、特許明細書に記載した事項の範囲内でなされているものであるし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)むすび
したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項から第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについて
(1)本件発明
本件特許第320418号の請求項1〜3に係る発明(以下、「本件発明1〜3」という)は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜3に記載されたとおりの次のものと認める。

本件発明1:
「ハウジングと加圧部材との組合せからなるフラットケーブル用コネクタであって、
前記ハウジングは、電気絶縁体からなり、ケーブルに電気的及び機械的に接触させる電気接触子を一定間隔に並設したものであり、
前記電気接触子は、前記加圧部材を回動可能に支持する回動支持部と、前記回動支持部からコネクタ内の奥まった方向に延在する略平坦部とが連続して形成されたものであり、
前記加圧部材は、前記電気接触子の回動支持部に支持される回動軸部と、前記回動軸部からコネクタ内の奥まった方向に延在する略平坦部とが連続して形成され、さらに前記ハウジングに回動可能に支持され、その回動中心付近に前記電気接触子との間にケーブルを加圧・挟持する加圧部を有し、前記回動中心より手前側で、かつコネクタのプリント基板等への取付側とは反対側にケーブルの挿入口である大きく開口された開口部を有し、かつ前記ケーブル挿入口とは反対側に延在する操作部を配置したものであることを特徴とするフラットケーブル用コネクタ。」

本件発明2:
「前記加圧部材が前記操作部の操作により回動されるのに伴って前記加圧部は、コネクタ内部方向に入り込み、ケーブルとの間に生じる摩擦力によりケーブルを前記電気接触子の弾性接触部に加圧するものであることを特徴とする請求項1に記載のフラットケーブル用コネクタ。」

本件発明3:
「前記ハウジングはロック係合溝を有し、前記加圧部材はロック突起を有しており、前記ロック係合溝と前記ロック突起を係合させて前記加圧部材をロックするようにしたものであることを特徴とする請求項1に記載のフラットケーブル用コネクタ。」

(2)申立て理由の概要
特許異議申立人坂本聡は、甲第1号証(特開平9-134763号公報)、甲第2号証(実願平3-85502号(実開平5-36761号)のCD-ROM)、および甲第3号証(実願平4-18293号(実開平5-69881号)のCD-ROM)を提出し、本件発明1〜3は、甲第1〜3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、特許を取り消すべきであると主張している。

(3)当審で通知した取消理由
当審で通知した取消理由は、概略、以下のとおりである。
本件特許は、明細書及び図面の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。すなわち、請求項1中の「前記回動中心より手前側にケーブルの挿入口を配置し」という記載は、ケーブルがコネクタに対し上方に引抜く力を受けた際にケーブル上面が加圧部材に接しないという加圧部材の機能・構造を特定するには不明瞭な表現となっており、本件発明を不明確にしている。

(4)甲号証に記載の発明
(4-1)甲第1号証には、「フレキシブル基板用電気コネクタ」に関して、以下の事項が記載されている。
(イ)「上記ハウジング1の開口部には、紙面に直角な方向に長く延びる蓋状の加圧部材6が回動自在に設けられている。該加圧部材6は加圧部7を有し、長手方向の両端部には、該加圧部材6の同方向に突出する軸部(図示せず)がそれぞれ設けられており、該軸部は上記ハウジング1の半円状の上記軸支部により回動自在に支持されている。また、上記加圧部材6は加圧部7と対向する側に、上記軸部がハウジング1の軸支部に収められた際、一連の接触子2の回動案内部4と係合する円弧部を有する回動被案内部8が形成されている。したがって、上記一連の板状の接触子2が上記ハウジング1の保持溝に挿入されると、回動案内部4は、櫛歯状に配列された軸状をなし、ここで上記加圧部材6の回動被案内部8が回動案内される。その結果、加圧部材6の回動の際の支持力は金属製の上記回動案内部4により支持されその強度がきわめて高くなる。」(【0025】)
(ロ)「先ず、図1に示すごとく、加圧部材7を上方へ向け回動して開放位置にもたらし、ハウジング1の開口部を大きく開放し、ここからフレキシブル基板Fをその結線部が下面となるようにして、上記加圧部材6と接触子2の接触部3Aとの間の挿入空間に挿入する。この状態にあっては、上記挿入空間はフレキシブル基板Fの厚みに対し十分大きいものとなっており、該フレキシブル基板Fは容易に上記挿入空間に入り込み、その先端部はハウジング1の受部1Bにより若干もち上げられた状態で支持される。」(【0029】)
(ハ)「しかる後、図2に示すごとく上記加圧部材6を下方に回動する。すると、該加圧部材6の加圧部7がフレキシブル基板Fに当接するようになり、接触子2の弾性接触部3Aとハウジング1の受部1Bで支持されている上記フレキシブル基板Fを、下方に圧する。その結果、フレキシブル基板Fは比較的大きく撓み弾性変形を生じ、当接圧をもって接触部3Aと接触するようになる。上記加圧部7のフレキシブル基板Fへの加圧力は、当然のことながら、該加圧部7が回動案内部4の中心4Aとこれに近い方の弾性接触部3Aを結ぶ線上に到達したときに最大値をとる。加圧部材6は、加圧部7がフレキシブル基板Fと当接するとこれを圧するので、該加圧部7を中心として回動しようとして回動操作力(モーメント)Pに応じた力で回動被案内部8が回動案内部4を左方に押し、該回動被案内部8は自ら左方に移動、すなわち弾性変形して回動案内部4から外れようとする傾向を示す。しかし、本例では回動案内部4と回動被案内部8はそれぞれの係止部4B,8Bで上記方向に互いに係止し合っているため、加圧部材6は弾性変形して撓んだりあるいは回動案内部4から外れることもない。なお、本例では接触子2の弾性接触部3Aは前後の二位置に互いにずらして配置しているので、上記加圧力も次第に増大するようなものとなり最大値も然程大きくはならない。換言すれば、この加圧力を生じせしめる回動操作力、したがって、回動被案内部8が回動案内部4を押す力も大きくならない。」(【0030】)
(ニ)「かくして、フレキシブル基板Fと接触子2が接続された後は、上記フレキシブル基板Fに外力として引張力が作用して、上記加圧部7を原位置(開放位置)に向けて回動せしめんとしても、該加圧部材6の上記加圧部7は最大加圧力の位置よりも大きく内方に位置しているので、フレキシブル基板Fからの反力が加圧部材6を閉じる方向にモーメントを生じ、加圧部材6は容易には開かない。かくして、上記最大加圧力に十分抗する外力を加圧部材6に加えない限り、結線状態は確保される。」(【0032】)

(4-2)甲第2号証には、「平面表示装置用電極コネクタ」に関して、以下の事項が記載されている。
(イ)「14は押え板13を電極に接触させるための回転板、15は回転板の回転中心、3は平面表示装置1から電極取りだしコネクタ2を通して外部制御装置に接続されたリード線である。」(【0008】)
(ロ)「図に示したように、平面表示装置1に印刷された内部電極から外部への引きだし電極1-aに、外部への引きだし電極1-aと同じピッチで電極接触部13-aを持ち、さらに、リード線3の圧接部13-aを有した押え板13を回転板14による回転押え機構で押え、各電極の接触を保持する。・・・押え板13を押える回転板14の機構を第3図に示している。回転板14は約180°の回転が出来る。この回転によって、回転板14の回転中心15からの半径r1〜r3は、各々大きさが異なりr1<r2<r3となっている。この結果回転板14を回転させることにより押え板13が押え込まれることとなり、押え板13と引きだし電極1-aの接触が保たれることになる。」(【0009】)

(4-3)そして、甲第3号証には、「コネクタ」に関して、以下の事項が記載されている。
(イ)「図1及び図2は本考案に係るFPC用コネクタの一実施例を示し、この例のFPC用コネクタ1は、基板にマウントされるコネクタ本体10とそれに摺動可能に装着されるスライドカバー部材20とからなっている」(【0015】)
(ロ)「スライドカバー部材20は、傾斜押付部23を有する基体部21とこの基体部21の両端に設けられた一対の挟持板部22とを有し、一対の挟持板部22の内側には、それぞれ上記係止突起17及び抜け止め突起19に係止される断面平行四辺形状の係止凸部27が設けられるとともに、上記コネクタ本体10に設けられた案内凸部12が嵌合する案内溝部24が設けられている。」(【0019】)
(ハ)「このような構成を有する本実施例のFPC用コネクタ1においては、コネクタ本体10にスライドカバー部材20を装着するにあたっては、コネクタ本体10に設けられた案内凸部12にスライドカバー部材20に設けられた案内溝部24を嵌合させたもとでスライドカバー部材20をコネクタ本体10に対して、案内凸部12の長さ方向に沿って斜め下方に摺動させて押し込む。」(【0020】)
(ニ)「それにより、スライドカバー部材20の係止凸部27がコネクタ本体10の抜け止め突起19及び係止突起17を乗り越えた後係止突起17に係止され、スライドカバー部材20がコネクタ本体10に装着される。この状態では、コネクタ本体10の上板部前端15がスライドカバー部材20の当接端面26に当接し、上板部前端15と傾斜押付部23との間にFPCの挿入・引き出し用の隙間が形成される。」(【0021】)
(ホ)「そして、FPCをロックする際には、まず、スライドカバー部材20を図4に示される状態からコネクタ本体10に対して斜め上方に向けて引っ張る。そうすると、図3に示される如くに、コネクタ本体10の案内凸部12にスライドカバー部材20の案内溝部24が案内されて、スライドカバー部材20がコネクタ本体10に対して斜め上方に摺動して引き出される。」(【0022】)
(ヘ)「かかる状態で上記上板部前端15と傾斜押付部23との間に形成される隙間からFPCをコネクタ本体10内に挿入してその先端側に形成された接点部を各コンタクト金具30A,30Bの押圧片部35の下側に位置させ、この状態でスライドカバー部材20を斜め下方に向けて押す。そうすると、図4に示される如くに、コネクタ本体10の案内凸部12にスライドカバー部材20の案内溝部24が案内されて、スライドカバー部材20がコネクタ本体10に対して斜め下方に摺動して押し込まれる。」(【0023】)
(ト)「このようにしてFPCがロックされた状態においては、コネクタ本体10の上板部前端15とスライドカバー部材20の傾斜押付部23との間に形成された隙間からFPCが引き出されるので、FPCの引き出し方向は、図4において実線で示される如くに水平方向でもよいし、図4において一点鎖線で示される如くに垂直方向でもよく、その引き出し方向は任意に設定できる。」(【0025】)
(チ)「そのため、例えば、基板にマウントされた本例のFPC用コネクタ1の周辺に他の電子部品等が配されている場合でも、それらの電子部品等に干渉することなくそれを避けたもとでセット内でFPCの配線を行え、また、コネクタ1の上方にさほどスペースがない場合には水平方向に引き出すことで対拠でき、コネクタの設置自由度が高められる。」(【0026】)
(リ)「上述の如くの構成とされた本例のFPC用コネクタ1においては、スライドカバー部材20がコネクタ本体10及びスライドカバー部材20に設けられた案内凸部12,案内溝部24に案内されてコネクタ本体10に対して斜め方向に摺動せしめられるので、FPCのロック及びその解除を行う際には、スライドカバー部材20がコネクタ本体10の前方ではなく斜め上方に引き出されることになる。」(【0028】)

(5)対比・判断
(5-1)特許法第36条第6項第2号違反の有無
上記3.(3)に摘記した点は、上記訂正の結果、解消された。

(5-2)特許法第29条第2項違反の有無
本件発明1〜3と甲第1〜3号証に記載された発明とを対比すると、甲第1〜3号証に記載された発明には、少なくとも、本件発明1〜3に共通する構成であって、その発明の発明特定事項である、「加圧部材」が「前記回動中心より手前側で、かつコネクタのプリント基板等への取付側とは反対側にケーブルの挿入口である大きく開口された開口部を有し」ている構成が具備されていない。
そして、上記構成により本件発明1〜3は、「ケーブルの接続後において、他部のケーブル接続作業中および他部の修理作業中に何らかのはずみでケーブルをコネクタに対し垂直方向へ引抜く力が生じた場合においても、ケーブル結線状態を確実に維持することができる。」(【0050】)という顕著な作用効果を奏するものである。
よって、本件発明1〜3は、甲第1〜3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであると言うことはできない。

4.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては、請求項1〜3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1〜3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (54)【発明の名称】
フラットケーブル用コネクタ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 ハウジングと加圧部材との組合せからなるフラットケーブル用コネクタであって、
前記ハウジングは、電気絶縁体からなり、ケーブルに電気的及び機械的に接触させる電気接触子を一定間隔に並設したものであり、
前記電気接触子は、前記加圧部材を回動可能に支持する回動支持部と、前記回動支持部からコネクタ内の奥まった方向に延在する略平坦部とが連続して形成されたものであり、
前記加圧部材は、前記電気接触子の回動支持部に支持される回動軸部と、前記回動軸部からコネクタ内の奥まった方向に延在する略平坦部とが連続して形成され、さらに前記ハウジングに回動可能に支持され、その回動中心付近に前記電気接触子との間にケーブルを加圧・挟持する加圧部を有し、前記回動中心より手前側で、かつコネクタのプリント基板等への取付側とは反対側にケーブルの挿入口である大きく開口された開口部を有し、かつ前記ケーブル挿入口とは反対側に延在する操作部を配置したものであることを特徴とするフラットケーブル用コネクタ。
【請求項2】 前記加圧部材が前記操作部の操作により回動されるのに伴って前記加圧部は、コネクタ内部方向に入り込み、ケーブルとの間に生じる摩擦力によりケーブルを前記電気接触子の弾性接触部に加圧するものであることを特徴とする請求項1に記載のフラットケーブル用コネクタ。
【請求項3】 前記ハウジングはロック係合溝を有し、前記加圧部材はロック突起を有しており、前記ロック係合溝と前記ロック突起を係合させて前記加圧部材をロックするようにしたものであることを特徴とする請求項1に記載のフラットケーブル用コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フラットケーブル用コネクタに関し、特にフレキシブル・フラット・ケーブルやフレキシブル・プリント配線板接続用コネクタに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、フレキシブル・フラット・ケーブルやフレキシブル・プリント配線板の接続には、フラットケーブル用コネクタが用いられており、その中でも、フラット・ケーブルの装着が容易な無挿抜力コネクタが多く用いられる。
【0003】
この種のフラットケーブル用コネクタとしては、例えば特開平8-50968号公報に開示されているものがある。図12に示す特開平8-50968号公報に開示された従来のコネクタ91は、プリント基板97に設置されたハウジング92が開口部の近傍位置に回動支持部93cを備え、加圧位置と開放位置との間に加圧部材95が回動支持部93cにより回動自在に支持され、加圧部材95が加圧位置に向けて回動した際に、電気接触子93内のケーブル96を電気接触子93の弾性接触部93dに突状の加圧部95dにより圧する構造であり、加圧部材95が開放位置から加圧位置に回動した際に、加圧部95dがケーブル96の挿入方向と逆方向に移動しながらケーブル96を圧するようになっている。92a,93aは係止部である。
【0004】
また、図13に示す実公平4-33671号公報に開示された従来のコネクタ91は、上方に向けた開口部をもつハウジング92に加圧部材95が、ハウジング92の回動支持部92cと加圧部材95の回動軸部95cが接するように回動自在に取り付けられており、弾性接触部93dを有する電気接触子93が取り付けられている。加圧部材95は、加圧部95dを有しており、加圧部材95が回動する際に、加圧部材95の回転方向に移行し、加圧部材95が時計回りに回動する際には、電気接触子93の弾性接触部93dとの間隔が狭められ、反時計回りに回動する際には、電気接触子93の弾性接触部93dとの間隔が広げられる構造になっている。97はプリント基板である。
【0005】
ケーブル96を挿入する際には、あらかじめ加圧部材95の加圧部95dと電気接触子93の弾性接触子93dとの間隔を広げておき、無負荷の状態でケーブル96を挿入し、ケーブル96を接続する際には、加圧部材95を回動軸部95cの円弧中心を軸中心として時計回りに回動し、ケーブル96を介して電気接触子93の弾性接触子93dを加圧するようになっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図12、図13に示す従来例のコネクタ91では、ケーブル96の接続後に、例えば他のコネクタ91のケーブル96の接続作業および他部品の修理中にケーブル96に対し、何らかのはずみでケーブル96への引抜き力および衝撃が加わった際に、特にケーブル96がコネクタ91に対し垂直方向の引き抜き力が作用するとケーブル96が外れやすくなるという問題がある。
【0007】
その理由は、ケーブル96がコネクタ91に対し垂直方向の引抜き力が作用するときに加圧部材95の蓋状部分がケーブル96と接しているために、コネクタ91に対して垂直方向の引抜き力が加圧部材95の蓋状部分に伝わり、その結果、加圧部材95が開かれる方向の力を受けるためである。
【0008】
さらに図12、図13に示す従来例のコネクタ91では、ケーブル96が装着しにくいという問題がある。
【0009】
その理由は、ケーブル96の装着口である加圧部材95の開口部が小さい、或いは斜め方向に設けられているために、開口部の視認性が悪く、結果として、ケーブル96の開口部への挿入が困難となるためである。
【0010】
さらに図13に示す従来例では、加圧部材95を操作しにくいという問題がある。
【0011】
その理由は、ケーブル96をコネクタ91に対し上方向から接続する際に、ケーブル96が加圧部材95の操作部を押圧するためには、ケーブル96の背面から操作部を操作する必要があり、加圧部材95の操作部の操作が困難であること、及び操作部の操作前後のケーブル96の装着確認および操作部の操作終了確認が困難であるためである。
【0012】
本発明の目的は、コネクタサイズの小型化・低背化を実現し、かつコネクタのケーブル接続の操作性向上、およびケーブル接続信頼性の向上を図るフラットケーブル用コネクタを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明に係るフラットケーブル用コネクタは、ハウジングと加圧部材との組合せからなるフラットケーブル用コネクタであって、前記ハウジングは、電気絶縁体からなり、ケーブルに電気的及び機械的に接触させる電気接触子を一定間隔に並設したものであり、前記電気接触子は、前記加圧部材を回動可能に支持する回動支持部と、前記回動支持部からコネクタ内の奥まった方向に延在する略平坦部とが連続して形成されたものであり、前記加圧部材は、前記電気接触子の回動支持部に支持される回動軸部と、前記回動軸部からコネクタ内の奥まった方向に延在する略平坦部とが連続して形成され、さらに前記ハウジングに回動可能に支持され、その回動中心付近に前記電気接触子との間にケーブルを加圧・挟持する加圧部を有し、前記回動中心より手前側で、かつコネクタのプリント基板等への取付側とは反対側にケーブルの挿入口である大きく開口された開口部を有し、かつ前記ケーブル挿入口とは反対側に延在する操作部を配置したものである。
【0014】
また前記加圧部材が前記操作部の操作により回動されるのに伴って前記加圧部は、コネクタ内部方向に入り込み、ケーブルとの間に生じる摩擦力によりケーブルを前記電気接触子の弾性接触部に加圧するものである。
また前記ハウジングはロック係合溝を有し、前記加圧部材はロック突起を有しており、前記ロック係合溝と前記ロック突起を係合させて前記加圧部材をロックするようにしたものである。
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
本発明のフラットケーブル用コネクタによれば、ケーブル接続後においては、ケーブルがコネクタに対し垂直方向の引抜力を受けた場合、加圧部材が開かれる方向への力、即ちケーブルの引抜き力と同じ方向の力が加圧部材5には作用しないために、加圧部材は、ケーブルのコネクタに対し垂直方向の力により開かれることはない。
【0020】
さらにコネクタにおいて、加圧部材の上面に大きく開口された開口部を設けている。このため、ケーブル挿入時は、ケーブルガイドの役目を果たすべく加圧部材の開口部におけるケーブル収納ガイドにケーブルを装着する際の視認性が良好になり、ケーブルを所定位置へ確実に装着できる
【0021】
さらに、コネクタにおいて、加圧部材の操作部をケーブル挿入口である開口部とは対向する方向に設けている。このため、操作部は、十分な操作作業領域を確保し、操作部を押圧する動作が確実にできるとともに、操作部を操作した前後におけるケーブルの装着確認および操作部の操作終了確認が確実に行える。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
(実施形態1)図1において、本発明の実施形態1に係るコネクタ1は、ハウジング2と加圧部材5との組合せからなっている。ハウジング2は、電気絶縁体からなり、ハウジング2には、電気接触子3を一定間隔に並設しており、更にハウジング2の両側には、基板への取付け用金具4を具備している。
【0024】
さらに、加圧部材5は、軸部5b、回動軸部5c、加圧部5d、操作部5f、開口部5gを有している。
【0025】
加圧部材5は、両側に軸部5bを張出して設け、両側の軸部5b,5b間に回動軸部5cを設けており、軸部5bはハウジング2に、回動軸部5cは電気接触子3の回動支持部3cにそれぞれ回動可能に軸支し、軸部5b及び回動軸部5cを略支点として回動するように取付けられている。さらに、加圧部材5は、軸部5b及び回動軸部5cを中心として、その手前側の上面部にケーブル6の挿入口である開口部5gを設け、開口部5gとは軸部5bを中心としてその反対の奥側に延在する梃子状の操作部5fを設けている。
【0026】
図2に示すように電気接触子3は、加圧部材5の開口部5gに挿入されるケーブル6に電気的及び機械的に接触する弾性接触子3dを有しており、その凸状係止部3aをハウジング2の凹状係止部2aに嵌合してハウジング2に装着されている。また電気接触子3は、ハウジング2の外部に張出して半田付け部3eを設けており、複数の電気接触子3は、その弾性接触子3dをケーブル6の接続端子にそれぞれ対応させて列状に一定間隔に並設している。また、加圧部材5は、加圧部5dを、開口部5gから内部に奥まった回動軸部5c付近の位置で、かつ電気接触子3の弾性接触子3dに対向させて設けている。したがってケーブル6は、加圧部材5の加圧部5dと電気接触子3の弾性接触子3dとにより加圧し挟持され、かつケーブル6の接点に電気接触子3の弾性接触子3dが電気的に接触する構造になっている。
【0027】
また加圧部材5は、電気接触子3の回動支持部3cに回動自在に支持されてコネクタ1のハウジング2に取付けられている。したがって加圧部材5は、ケーブル6を加圧し始めてから回動支持部3cに沿って回動軸部5cを略支点として回動する。また、加圧部材5の操作部5fは、加圧部材5の開口部5gと同一面側に設けられている。
【0028】
図5及び図6に示すように、加圧部材5の操作部5fを上方向に押し上げると、加圧部材5が軸部5b付近を中心として回動し、加圧部材5の加圧部5dと電気接触子3の弾性接触子3dとの間の隙間が拡大され、その隙間が加圧部材5の開口部5gを通して外部に向けて開放される。
【0029】
次に図7に示すように、ケーブル6を加圧部材5の開口部5gに通して、拡大された加圧部材5の加圧部5dと電気接触子3の弾性接触子3dとの隙間に挿入し、ケーブル6の先端部をコネクタ1内の奥の方まで差込む。この状態で加圧部材5の操作部5fを時計方向に押圧すると、加圧部材5は軸部5b付近を中心として時計方向に回動し、加圧部材5の加圧部5dと電気接触子3の弾性接触子3dとの間の隙間が縮小され、ケーブル6は、加圧部材5の加圧部5dと電気接触子3の弾性接触子3dとにより加圧し挟持され、かつケーブル6の接点に電気接触子3の弾性接触子3dが電気的に接触する。そして、挺子状の操作部5fにより、ケーブル6の挿入口である開口部5gよりも奥に位置する加圧部5dのケーブル6との圧接位置がコネクタ1内の所定位置まで移動し、その摩擦力によりケーブル6をコネクタ1内の奥の方へ押し込む。
【0030】
図11に示すように、コネクタ1にケーブル6を接続した状態においては、ケーブル6は、回動軸部5cから開口部5g側の位置でコネクタ1から引出されているため、ケーブル6をコネクタ1に対し上方向へ引抜く力が生じた際には、その外力は、加圧部材5を回動軸部5cを中心として時計方向に回動させる方向に作用することとなる。これにより、ケーブル6は、加圧部材5の加圧部5dと電気接触子3の弾性接触子3dとにより加圧し挟持される度合が大きくなり、ケーブル6の結線状態がより確実に保持されることとなる。
【0031】
(実施例)
次に、本発明の実施形態1に係るフラットケーブル用コネクタの具体例を一実施例として図面を参照して詳細に説明する。
【0032】
図3に示すように、本発明の一実施例に係るフラットケーブル用コネクタは、電気的絶縁体であるハウジング2に、ケーブル6に電気的及び機械的に接触させる電気接触子3を一定間隔に並設しており、ハウジング2の両端には、コネクタ本体をプリント基板7上に取付けるための金具4を具備しており、さらにケーブル6を加圧する役目を果たす上方に大きく開口する開口部5gを備えた加圧部材5を具備している。
【0033】
電気接触子3は、ハウジング2に固定するための係止部3aを有しており、ハウジング2に設けられた係止部2aと嵌合し、ハウジング2に取り付けられている。また金具4は、ハウジング2に固定するための係止部4aを有しており、その係止部4aを使ってハウジング2に取り付けられている。また加圧部材5は、両端に突出した軸部5bを有しており、その軸部5bがハウジング2の両側の軸保持部2bに支持されて、ハウジング2に回動自在に取り付けられている。
【0034】
加圧部材5は、コネクタ1に対し垂直方向に大きく開口する開口部5gを有しており、ケーブル6の収納位置決め及びケーブル6の挿入ガイドの役割を有している。開口部5gは、コネクタ4に対して垂直方向に大きく開口しているために、上方向には遮るものがない受け皿状に構成されている。
【0035】
図4(a)は図1を正面方向から見た図、(b)は図1を側面方向から見た図である。
【0036】
図4(a)に示すように、本発明の一実施例に係るコネクタ1は、ハウジング2に電気接触子3を一定間隔で並設しており、電気接触子3は、弾性接触子3dがコネクタ1に対し垂直方向において図中の上方向から下方向にケーブル6を加圧する配置となっており、加圧部材5は、加圧部5dが図中の下方向から上方向にケーブル6を加圧する配置となっている。
【0037】
図4(b)に示すように、加圧部材5は、軸部5bがハウジング2の軸保持部2bにより取り付けられている。コネクタ1は、電気接触子3の半田付け部3eおよび金具4の半田付け部4eによりプリント基板7上に取り付けられている。また電気接触子3の半田付け部3eは、プリント基板7と電気的に接続されている。
【0038】
図2に示すように、電気接触子3は、係止部3aがハウジング2の係止部2aと嵌合してハウジング2に取り付けられており、加圧部材5は、回動軸部5cが電気接触子3の回動支持部3cに沿って回動自在に取り付けられている。電気接触子3の弾性接触子3dは、コネクタ1に対して垂直方向、即ち、図中の上下方向に可動するばね構造となっており、弾性接触子3dにより、ケーブル6と電気的及び機械的な接触を行う。また、電気接触子3の回動支持部3cは、回動軸部5cの円弧部分を支える円弧部分と、その円弧部分からコネクタ1内の奥まった方向に延在する略平坦部3fとが連続して形成されている。また加圧部材5は、電気接触子3の円弧状回動支持部3cに支持される円弧状回動軸部5cと、その円弧状回動軸部5cからコネクタ1内の奥まった方向に延在する略平坦部5iとが連続して形成されている。
【0039】
次に、本発明の実施例1の動作について図面を参照して詳細に説明する。
【0040】
図5に示すように、加圧部材5をコネクタ1に対し垂直方向に開放した状態では、操作部5fがコネクタ1に対して上方向に上がっており、開口部5gが下方向に下がっている。また、加圧部材5は、ケーブル6を介して電気接触子3のばねの反力が加わらない状態においては、軸部5bの中心を支点として反時計方向に回動した状態になっている。
【0041】
図6に示すように、加圧部材5が開放されている状態のときには、加圧部5dは下がっており、ケーブル6が入りやすいように電気接触子3の弾性接触子3dと加圧部材5の加圧部5dの間隔が広くなっており、この間をケーブル6が無負荷の状態で出入りが可能となっている。ケーブル6は、弾性接触子3dと加圧部5dにより形成される隙間から挿入され、コネクタ1内の所定位置まで押し込むことが可能となっている。
【0042】
図7に示すように、加圧部材5は、操作部5fの操作により時計方向に回動される。それと伴って加圧部5dは、コネクタ1に対し垂直方向において上方向へ押し上げられ、コネクタ1に対し水平方向においてコネクタ1内部方向へ入り込み、これにより、ケーブル6との間に生じる摩擦力によりケーブル6をコネクタ1内の奥の方向へ押し込み、かつ、ケーブル6を上方向に加圧し、ケーブル6を介して電気接触子3の弾性接触子3dを加圧する。この際に生じる電気接触子3の弾性接触子3dに集中するばねの反力により、弾性接触子3dと加圧部5dにより形成される隙間においてケーブル6を挟持する。加圧部材5がケーブル6を加圧し回動する際には、加圧部材5の回動主軸が軸部5bの中心から電気接触子3の回動支持部3cの略中心へ移行し、加圧部材5は回動軸部5cを支点として回動する。このため、電気接触子3の回動支持部3cからコネクタ1内の奥まった方向に延在する略平坦部3fに、加圧部材5の円弧状回動軸部5cからコネクタ1内の奥まった方向に延在する略平坦部5iが当接し、加圧部5dは図中左方向から右方向、つまりケーブル6挿入方向へ加圧部材5の回動とともに移行し、ケーブル6を摩擦力によりコネクタ1内部の所定位置まで押し込んでいく。
【0043】
図10に示すように、プリント基板7上に電気接触子3の半田付け部3eおよび金具4の半田付け部4eにより半田付けされたコネクタ1がケーブル6を介して上下方向に接続されている。
【0044】
加圧部材5は、コネクタ1に対して上方に大きく開口された開口部5gを備えている。ケーブル6がコネクタ1上面よりも上方向へ接続される接続方法である場合、ケーブル6がコネクタ1に接しない部分、つまり、コネクタ1から離れた外側において図中のように屈曲するが、コネクタ1の上方に大きく開口された開口部5gを有する場合、図中のようにケーブル6を従来よりも長さを短くした配線が可能な構成となっている。
【0045】
図11に示すように、コネクタ1にケーブル6を接続した後の状態において、他部のコネクタ結線作業および修理中に何らかのはずみでケーブル6にケーブル6が上方向に引抜かれる力が加わった場合、ケーブル6は電気接触子3の弾性接触部3dと加圧部材5の加圧部5dに挟持されているが、ケーブル6はコネクタ1に対し上方向へ引抜く力を受け続けている。
【0046】
このとき、開口部5gがない場合、つまり、開口部5gがつながっている場合には、加圧部材5のつながっている部分に、ケーブル6を引抜く力が加圧部材5に作用し、加圧部材5の加圧部5dが開かれ、ケーブル6の結線状態が維持できなくなるが、加圧部材5の上方には、大きく開口された開口部5gが設けられているために、ケーブル6が図中の上方向へ引抜く力による加圧部材5の加圧部材5dを開く方向、即ち、上方向へ力が加圧部材5に作用しないため、ケーブル6が上方向に引抜く力を受けた場合においても、ケーブル6の結線状態が保たれる構造になっている。
【0047】
(実施形態2)図8は、本発明の実施形態2を示す平面図、図9は、本発明の実施形態2を示す正面図である。
【0048】
図8に示すように、本発明の実施形態2では、加圧部材5の操作部5fを大きくし、さらに操作性が良くなる構造となっている。
【0049】
また図9に示すように、本発明の実施形態2では、ハウジング2はロック係合溝2hを有し、加圧部材5はロック突起5hを有しており、ロック係合溝2hとロック突起5hを係合させてロックし、加圧部材5が開くのを防止し、ケーブル6の結線状態の維持を高める構造になっている。
【0050】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、ケーブルの接続後において、他部のケーブル接続作業中および他部の修理作業中に何らかのはずみでケーブルをコネクタに対し垂直方向へ引抜く力が生じた場合においても、ケーブル結線状態を確実に維持することができる。
【0051】
【0052】
【0053】
その理由は、加圧部材の上方に大きく開口する開口部を設け、ケーブルがコネクタに対し上方向に引抜く力を受けた際に、ケーブル上面が加圧部材に接せず、加圧部材が開かれる方向、即ち、ケーブル引抜き方向と同じ方向の力が加圧部材に作用せず、加圧部材が安定した状態が保たれるためである。
【0054】
さらに、ケーブルの装着作業、及びケーブルの装着作業を確実に行うことができる。
【0055】
その理由は、加圧部材の上方に大きく開口する開口部を設け、ケーブル収納部自体の視認性が良好になり、ケーブルが確実に装着でき、ケーブル装着の確認が確実に行えることにより、ケーブル装着作業が容易になるためである。
【0056】
さらに、加圧部材を操作しやすいという効果がある。
【0057】
その理由は、加圧部材の操作部をケーブル挿入口と対向する位置に設けることにより、ケーブルと加圧部材の干渉をなくし、操作部を確実に操作できること、ケーブル接続作業の終了確認が確実に行えるためである。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の実施形態1に係るフラットケーブル用コネクタを示す斜視図である。
【図2】
図1のA-A’線断面図である。
【図3】
本発明の実施形態1を示す分解斜視図である。
【図4】
(a)は図1を正面方向から見た図、(b)は図1を側面方向からみた図である。
【図5】
本発明の一実施例における加圧部材を開放した状態を示す斜視図である。
【図6】
加圧部材を開放した状態における断面図である。
【図7】
加圧部材が所定回動位置に達した状態の断面図である。
【図8】
本発明の実施形態2を示す平面図である。
【図9】
本発明の実施形態2を示す正面図である。
【図10】
本発明におけるコネクタでの接続例を示す図である。
【図11】
ケーブルが上方向へ引き抜く力を受けた状態を示す断面図である。
【図12】
従来装置を示す断面図である。
【図13】
他の従来装置を示す断面図である。
【符号の説明】
1 コネクタ
2 ハウジング
2a 係止部
2b 軸保持部
2c 回動支持部
2h ロック係合溝
3 電気接触子
3a 係止部
3c 回動支持部
3d 弾性接触子
3h 半田付け部
4 金具
4a 係止部
4e 半田付け部
5 加圧部材
5b 軸部
5c 回動軸部
5d 加圧部
5f 操作部
5g 開口部
5h ロック突起
6 ケーブル
7 プリント基板
 
訂正の要旨 特許第3204183号発明の明細書を審判請求書に添付した訂正明細書のとおり、すなわち、下記a)〜f)のとおり訂正する。
a)明細書の請求項1の「前記回動中心より手前側にケーブルの挿入口を配置し、」を「前記回動中心より手前側で、かつコネクタのプリント基板等への取付側とは反対側にケーブルの挿入口である大きく開口された開口部を有し、」と訂正する。
b)明細書の段落【0013】の「前記回動中心より手前側にケーブルの挿入口を配置し、」を「前記回動中心より手前側で、かつコネクタのプリント基板等への取付側とは反対側にケーブルの挿入口である大きく開口された開口部を有し、」と訂正する。
c)明細書の段落【0038】の2箇所の「奥まったを方向に」を「奥まった方向に」に夫々訂正する。
d)明細書の段落【0042】の「奥まったを方向に」を「奥まった方向に」に訂正する。
e)明細書の段落【0044】の「備えており、」を「備えている。」に、「離れたの外側」を「離れた外側」に、「屈曲しなければならないため」を「屈曲するが」に夫々訂正する。
f)明細書の段落【0046】の「このつながっている部分において、」を「加圧部材5のつながっている部分に、」に、「加圧部材5が開かれ、」を「加圧部材5の加圧部5dが開かれ、」に、「加圧部材5を開く方向」を「加圧部材5の加圧部材5dを開く方向」に、「加圧部材6」を「加圧部材5」に夫々訂正する。
異議決定日 2002-09-09 
出願番号 特願平9-312163
審決分類 P 1 651・ 121- YA (H01R)
最終処分 維持  
前審関与審査官 金丸 治之稲垣 浩司  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 千壽 哲郎
平上 悦司
登録日 2001-06-29 
登録番号 特許第3204183号(P3204183)
権利者 エヌイーシートーキン株式会社
発明の名称 フラットケーブル用コネクタ  
代理人 池田 憲保  
代理人 後藤 洋介  
代理人 後藤 洋介  
代理人 池田 憲保  

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