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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16J
管理番号 1069580
審判番号 不服2002-452  
総通号数 38 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-05-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-01-10 
確定日 2002-12-11 
事件の表示 平成 9年特許願第257076号「パッキン用編み糸」拒絶査定に対する審判事件[平成10年 5月22日出願公開、特開平10-132085]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成2年2月8日に特許出願した特願平2-503018号の一部を平成9年9月22日に新たな特許出願 としたものであって、平成11年2月1日付け、平成12年8月28日付け及び平成13年9月17日付けで補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至12項に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1には次のとおり記載されている。(以下、請求項1に係る発明を「本願発明1」という。)
【請求項1】膨張黒鉛を基材とする編み糸中に、それの幅方向に相互に間隔をあけて長手方向に沿って配置した複数本の補強繊維糸の少なくとも片面を接着剤により一体に接着していると共に前記全ての補強繊維糸の外周が前記膨張黒鉛で覆われるように埋設してなることを特徴とするパッキン用編み糸。

2.引用例記載の発明
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物は下記に示すとおりのものである。

刊行物1:中華人民共和国発明権利申請公開説明書、第1,034,217号、(公開日 1989年7月26日)(原審において引用文献1として引用)
刊行物2:米国特許第3,404,061号明細書(1968年,Cl.161)(原審において引用文献2として引用)

刊行物1には、以下の技術的事項が開示されているものと認めることができる。
(イ)「6.上記第4項に記載の膨張黒鉛パッキンの製造方法の特徴は、芋虫状膨張黒鉛の層間に接着させる糸状、膜状、もしくは編物状の補強用補助材料をローラを使って接着剤を入れた槽の中を通す方法によって連続的に接着剤を染み込ませることができる点である。」(権利要求書、要求項6)
(ロ)「8.上記第4項に記載の膨張黒鉛パッキンの製造方法であって、その特徴は、芋虫状膨張黒鉛層と有機接着剤を染み込ませた補強補助材料の機械的加圧は、70-150kg/cm2の間であって、パッキン成形押し出し或いはダイスによる圧力は120-180kg/cm2の間である。」(権利要求書、要求項8)
(ハ)「実施例三:ガラス繊維、合成繊維、木綿、麻などの繊維、もしくは炭素繊維や銅細線の一種又は複数種を厚さが0.20mm以下になるように織り、これら金属線や繊維と親和性のある有機接着剤に染み込ませた後、密度0.003〜0.03g/cm3の芋虫状膨張黒鉛の層間にむらなく挟み、その後、圧延して厚さ0.15〜0.35mm、密度を0.5〜1.8g/cm3 の帯状膨張黒鉛とする。これを一定の幅、通常は幅5〜50mmのテープに裁断し、こより状に撚って糸状黒鉛とする。八つ編み機にかけて八つ編みするか、内側に紐状の膨張黒鉛を入れて袋編みするか、また袋編みを何層か重ねて、その後、成形と表面処理を施して異なった断面形状とサイズの膨張黒鉛製汎用パッキンを得る。」(説明書6頁7行〜14行)
以上の記載事項及び発明権利申請公開説明書の全記載からみて、刊行物1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

「芋虫状膨張黒鉛を基材とする帯状膨張黒鉛中に、むらなく配置した複数本の補強用補助材料を親和性のある有機接着剤により一体に接着していると共に圧延することにより前記芋虫状膨張黒鉛で覆われるように埋設してなる帯状膨張黒鉛。」

刊行物2には、以下の技術的事項が開示されているものと認めることができる。
(ニ)「高温化学的不活性ガスケット、ラプチャーディスク等は、適当な厚みの平板状の材料を所望の形状に切断することにより造ることができる。」(明細書13欄49行〜52行)
(ホ)「可撓性黒鉛シート又は帯の強度は、互いに接合された2つの重ねられた可撓性黒鉛層を持つ積層体とし、その間に適当な紐、糸、シート状材料のような補強手段を持つことによって増加する。図8は2つの可撓性黒鉛シート130及び132からなる積層体を表している。これらのシートは適当な粘着剤136によって接合され、粘着剤の中には略平行に隣り合って延長され、長さ方向に配置された一続き又は複数のフィラメント134が埋め込まれている。フィラメント又はストランドは金属、ガラス、可撓性黒鉛等とすればよい。」(明細書15欄25行〜36行)

3.対比・判断
本願発明1と引用発明を対比すると、引用発明の「芋虫状膨張黒鉛」は、本願発明1の「膨張黒鉛」に相当し、以下同様に「補強用補助材料」は、「補強繊維糸」に、「親和性のある有機接着剤」は、「接着剤」に、「帯状膨張黒鉛」は、「編み糸」または「パッキン用編み糸」に各々相当すると認められるので、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。
[一致点]
「膨張黒鉛を基材とする編み糸中に、複数本の補強繊維糸を接着剤により一体に接着していると共に前記膨張黒鉛で覆われるように埋設してなるパッキン用編み糸。」
[相違点1]
「本願発明1では、補強線維糸をそれの幅方向に相互に間隔をあけて長手方向に沿って配置したのに対し、引用発明では、補強繊維糸をむらなく配置した点。」
[相違点2]
「本願発明1では、複数本の補強繊維糸の少なくとも片面を接着剤により一体に接着していると共に前記全ての補強繊維糸の外周が前記膨張黒鉛で覆われるように埋設したのに対し、引用発明では、そのような表現では説明されていない点。」
そこでこれらの相違点1及び2について検討する。
相違点1については、上記(ニ)及び(ホ)の記載内容及び刊行物2の図8を参照すると、「膨張黒鉛に相当する可撓性黒鉛の帯間に補強繊維であるフィラメントが略平行に隣り合って延長され、相互に間隔をあけて長手方向沿って配置されたガスケット」が開示されており、また、中芯に使用する補強繊維糸として、縦糸のみを一方向多数の平行糸状体に配置する構成のものも慣用されている技術(例えば、特開昭60-84476号公報参照)であることを考慮すると、膨張黒鉛中に設けられる補強繊維糸の配置は、従来周知の各種物品の補強技術と同様に膨張黒鉛製品の強度等を考慮して適宜選択決定されるべきものであり、刊行物2等に示す補強線維糸をそれの幅方向に相互に間隔をあけて長手方向に沿って配置する構成を引用発明に適用し、相違点1に係る本願発明1の構成とする程度のことは、当業者であれば、容易に想到し得たものと認める。
相違点2については、上記記載事項(ハ)には、「これら金属線や繊維と親和性のある有機接着剤に染み込ませた後、密度0.003〜0.03g/cm3の芋虫状膨張黒鉛の層間にむらなく挟み、その後、圧延して厚さ0.15〜0.35mm、密度を0.5〜1.8g/cm3の帯状膨張黒鉛とする。」ことが記載されていることから、上記記載事項(イ)及び(ロ)も参照するに、引用発明のものも、補強繊維糸には、それと親和性のある有機接着剤が染み込ませてあるので、接着剤は補強繊維糸の外周表面部分から染み込むので外周表面部分に存在する。
そして、上記補強繊維糸を膨張黒鉛の層間に挟み、その後、圧延することにより、補強線維糸が膨張黒鉛と接し一体に接着されている部分、及び、接着剤が存在しないので接着されていない部分の全ての補強繊維糸の外周部分(すなわち、補強線維糸が膨張黒鉛と接し接着剤により一体に接着されている部分及び補強繊維糸間の接着されていない部分、更には最外周に位置する補強繊維糸の外周の接着されていない部分)を含む全面が膨張黒鉛で覆われるように埋設されているものと認められる。
してみると、引用発明のものも、複数本の補強繊維糸の全面が接着剤により一体に接着していると共に前記全ての補強繊維糸の外周が前記膨張黒鉛で覆われるように埋設した構成が開示されているものと認められる。
したがって、この相違点2は単なる表現上の相違点に過ぎず、実質的な相違点とは認めることができない。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願請求項1に係る発明は、刊行物1、2に記載された発明及び慣用技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本願請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
そして、本願請求項1に係る発明が特許を受けることができないものである以上、本願の請求項2乃至12に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-09-19 
結審通知日 2002-10-01 
審決日 2002-10-15 
出願番号 特願平9-257076
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 栗林 敏彦山岸 利治奥 直也  
特許庁審判長 船越 巧子
特許庁審判官 秋月 均
内田 博之
発明の名称 パッキン用編み糸  
代理人 鈴江 正二  
代理人 鈴江 孝一  

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