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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1069639
審判番号 不服2000-19320  
総通号数 38 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1992-12-02 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-12-07 
確定日 2002-12-12 
事件の表示 平成 3年特許願第118944号「遊技機」拒絶査定に対する審判事件[平成 4年12月 2日出願公開、特開平 4-347190]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 [1]手続の経緯・本願発明。
本願は、平成3年5月24日の出願であって、特許請求の範囲に記載された請求項1乃至3に係わる発明は、当該請求項1乃至3に記載された次のとおりのものと認める(以下「本願発明1乃至3」という)。
【請求項1】 遊技に関わる情報が移動表示される表示装置を備えた遊技機であって、 前記表示装置は、複数の表示素子がマトリックス状に配設され、該複数の表示素子が選択的に表示駆動することにより表示動作を行ない、制御用プログラムに従って動作するプロセッサを有し、前記複数の表示素子を表示制御する表示制御手段を含み、
該表示制御手段は、
前記制御用プログラムに従って動作して、前記複数の表示素子を表示駆動させるための信号を表示素子列毎に順次出力する表示信号出力手段と、
前記制御用プログラムに従って動作して、前記表示信号出力手段により出力される信号に対応する表示素子列を指定するためのアドレス信号を生成し、該生成したアドレス信号を出力するアドレス信号出力手段とを含み、 前記遊技機は、さらに、前記アドレス信号出力手段から出力されたアドレス信号をデコードして該アドレス信号に対応する表示素子列を選択し、該選択した表示素子列が前記表示信号出力手段から出力された信号に対応して表示駆動可能となるように、当該表示素子列を能動化させるための信号を出力する能動化信号出力手段を含み、
該能動化信号出力手段が前記表示制御手段とは独立して設けられた集積回路からなることを特徴とする、遊技機。
【請求項2】 前記表示装置は、表示状態が変化可能な可変表示部を有し、該可変表示部の表示結果が予め定められた特定の表示態様となった場合に所定の遊技価値を付与可能となるように定められた可変表示装置で構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の遊技機。
【請求項3】 前記アドレス信号出力手段は、表示素子列の数に対応した更新範囲内で数値データを更新する数値データ更新手段を含み、該数値データ更新手段の更新値に対応する表示素子列を指定するためのアドレス信号を出力することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の遊技機。


[2]刊行物に記載された発明。
原査定の拒絶理由に引用された
(1)実願昭62-79990号(実開昭63-188077号)のマイクロフィルム、
(2)特開昭54-150926号公報、
(3)特開昭61-259292号公報、
さらに、本願発明出願前に頒布された刊行物である、
(4)実願昭63-166164号(実開平2-85481号)のマイクロフィルム、
(5)特開平1-266595号公報
には、各々以下の事項が記載されている。

(1)実願昭62-79990号(実開昭63-188077号)のマイクロフィルム(以下「刊行物1」という)。
(1-1).「〈問題点を解決するための手段〉 本考案は上記に鑑み提案されたもので、縦横複数のLED素子を配列した表示基板を第1基板の前面に添設すると共に、上記第1基板にはチップ素子を配設して電気回路を形成し、第2基板にはMCUを有する処理部を形成すると共に、該第2基板にはパチンコ機の制御装置に連絡可能な外部接続端子を設け、上記第1基板と第2基板とを電気的に接続したものである。
〈作用〉 第1基板に添設した表示基板のLED素子を第2基板に形成したMCUを有する処理部により制御することができ、上記LED素子を選択発光させることにより図柄などを表示することができる。」(第3頁第4〜18行)
(1-2).「上記のような表示装置1は、処理部6を含めて例えば90X45X25mm以内に構成でき、一つの表示基板について10X10ドットの図柄表示が可能である。
本考案に係わる表示装置1は、例えば第4図に示すようなブロック回路を有する制御装置16によって制御される。しかし、本考案では表示装置1自体も処理部6を有しているので、制御装置16のメインMCU17の負担が軽くなると共に、配線接続が極めて簡単になる。即ち、メインMCU17はセンター役物18などに設けた継続スイッチ19、10カウントスイッチ20、始動口スイッチ21、駆動ソレノイド22、あるいは電子音発生回路23,ランプ表示器24などを制御し、一方、本考案に係わる表示装置1が内蔵する処理部6はメイン回路からデータ及びリセット信号を受け取って、表示基板4に配列した各LED素子9を制御して所定の図柄、文字などを表示する。・・・。そして、本考案によれば、データ4本、電源2本、リセット1本、割込1本、制御信号(8ビットの上下、明暗、桁選択)3本の計11本の配線で足りるが、従来のようにメインMCU17に頼る場合には少なくとも40本の配線が必要である。また、表示装置1の各LED素子9をメインMCU17で制御する場合には処理時間が長くなって表示がチラ付い見難いものになってしまう。」(第5頁第10〜第6頁末行)
してみると、
(1-3).刊行物1には、パチンコ機において、センター役物18などに設けた継続スイッチ19、10カウントスイッチ20、始動口スイッチ21、駆動ソレノイド22、あるいは電子音発生回路23,ランプ表示器24などを制御するメインMCU17とは別に、複数のLED素子をマトリックス状に配設した表示装置自体にも処理部を具備させ、当該処理部においてメイン回路からデータ及びリセット信号を受け取って、LED素子9を制御して所定の図柄、文字などを表示することにより、メインMCU17の負担を軽くすることが記載されており、さらに、メインMCU17はセンター役物などパチンコ遊技機を制御し、そのデータを処理部に送り、処理部のMCU5によりLED素子9が制御されるものであるから、当該MCUは制御用プログラムに従って動作するものであることは明らかである。

(2)特開昭54-150926号公報(以下「刊行物2」という)
(2-1).「しかして、まず、メモリー12から第1番目のディスプレイ部8の文字コードが読みだされ、それがキャラクタジェネレータ5へ送られる。キャラクタジェネレータ5ではアドレスカウンタ3からの信号と、コントロール信号発生部10からの信号とを受けてディスプレイ部8の横の列を選び出す。ディスプレイ部8の縦の列はアドレスカウンタ3からの2進信号をアドレスデコーダ4でデコードすることで選ばれる。そして、クロック発生回路2からのクロックによりアドレスカウンタ3が1つ進むと、ディスプレイ部8の縦の列が1つ進み、それと同時にキャラクタジェネレータ5からの横の信号も変化して行く。そして、ディスプレイ部8の縦の列が5つ進むとアドレスカウンタ3からのケタ上げパルスによりディスプレイスキャナー9が1つ進み、第2番目のディスプレイ部8が選ばれ、発光ダイオードセレクトドライバー7のゲートが開けられ、又第1番目のディスプレイ部8の時と同じような動作がくりかえされ、これが16番目のディスプレイ部8まで進んでいく。」(第2頁右下欄第10行〜第3頁左上欄第10行)
(2-2).「そして、t1という時間には発光ダイオードディスプレイ部8の一番左側の列が選択され、しかも゛F″を表示するためには一番左側の列の発光ダイオード7コは全部点灯しなければならない。このため、t1という時間にキャラクタジェネレータ5からの7本の信号線のすべてによって点灯信号がドライバー6に与えられる」(第2頁左上欄第11〜17行) してみると、
(2-3).刊行物2には、複数のLEDがマトリックス状に配置された表示素子の駆動に際して、アドレス信号がアドレスデコーダでデコードされ、当該デコードに基づいて列が特定され、さらに、信号線から点灯信号が横の行に入力される表示制御の構成が記載されている。

(3)特開昭61-259292号公報(以下「刊行物3」という)。
(3-1).「[従来の技術] 従来、マイクロコンピュータを用いたシステムにおいて、複数のLEDを点灯させるためにダイナミック方式を使用して点灯させていた。
[発明が解決しようとする問題点] しかし、LEDの数が非常に多くなると点灯しているLEDがちらついてみえるため、・・・。この発明は、かかる問題点を解決するためになされたもので、常時はマイクロコンピュータを使用せずに表示することができ、表示のためのプログラムを記憶する記憶回路も小規模となり、非常に多くのLEDを点灯できる表示回路を得ることを目的とする。
[問題点を解決するための手段] この発明に係わる表示回路は、多数の発光ダイオードを点灯させるための表示専用のレジスタを設けたものである。」(第2頁左上欄第2行〜同頁右上欄第1行)
(3-2).「第1図はこの中央制御装置に適用されるこの発明の表示回路を示す回路図であり、この第1図において、70はカウンタで、・・・、C2端子はデコーダ72の端子D1に接続され、D2端子はデコーダ72のD2端子に接続されている。(第2頁右上欄第12行〜同頁左下欄第2行) (3-3).「デコーダ72の出力はドライバ73に出力するようになっている。このドライバ731の出力はLED77の各列線78〜81を駆動するようになっており、このLED77の行線はドライバ732〜734の出力で駆動するようになっている。」(第2頁左下欄第8〜13行)
(3-4).「信号線85は各レジスタ711〜716、D0端子〜D2端子に接続されている。レジスタ711と712、713と714、715と716がそれぞれ対になってドライバー732〜734と抵抗761〜763を介して各LEDを駆動するようになっている。 なお、信号線85はレジスタ711〜716にデータを送るものである。」(第2頁左下欄末行〜同頁右下欄第7行)
してみると、
(3-5).刊行物3には、複数のLEDがマトリックス状に配置され表示素子の駆動に際してアドレス信号がアドレスデコーダでデコードされ、当該デコードに基づいて列が特定され、また、点灯信号が信号線から横の行に入力される表示制御の構成が記載されている。

(4)実願昭63-166164号(実開平2-85481号)のマイクロフィルム(以下「刊行物4」という)。
(4-1).「前記表示装置は、装置自体を制御・監視する中央処理装置(以下、CPUと略称する)10、前記CPU10に直結し、装置自体の制御に関する時間を計測するためのクロック20、本考案の画面のスクロール動作処理も含むプログラム群および表示に関する固定のデータを格納するメモリROM30、入出力インターフェイス70を介して取込まれる外部映像データまたは制御信号を記憶するメモリRAM40、ROM30の表示処理(スクロール動作を含む)プログラムにより生成されるコード化された表示情報を処理し複数の出力を選び出すアドレスデコーダ60を含む。さらに前記表示装置は、出力インターフェイス80を介して受信するアドレスデコーダ60の出力信号により表示素子を駆動する行ドライバ100と列ドライバ110とを持つ表示ユニット120も含む。前述の各電子機器は、バスライン50を介して相互のデータ転送を行っている。」(第5頁末行〜第6頁第18行)
してみると、
(4-2).刊行物4には、複数の表示素子がマトリックス状に配置された表示装置において、アドレスデコーダの出力信号により行ドライバと列ドライバが表示素子を駆動すること、及び表示処理(スクロール動作を含む)プログラムによりコード化された表示情報が処理されてアドレスデコーダから出力されることが記載されている。

(5).特開平1-266595号公報
(5-1).「第1図は本発明の一実施例を示すブロック図であり、本実施例では、L.M.D.10は16×16個のLED12によって形成されている。このLED12はK0〜K7およびC0〜C7の8本ずつ2組のコモン信号ライン14とK00〜K15およびC00〜C15の16本ずつ2組の点灯信号ライン16によってマトリックス接続されている。
L.M.D.10の各コモン信号ライン14には、コモン信号ライン駆動部20よりコモン信号が順次供給される。コモン信号ライン駆動部20は、制御部60からの3ビットの信号(A〜C)をデコードして8つの信号(Y0〜Y7)を生成するデコーダ22、デコーダ22の出力するY0信号〜Y7信号を増幅し、コモン信号としてK0〜K7のコモン信号ライン14へ供給するPNPドライバ24、同じくデコーダ22からのY0信号〜Y7信号を増幅し、コモン信号としてC0〜C7のコモン信号ライン14へ供給するPNPドライバ26を備えている。」(第2頁左下欄第17行〜同頁右下欄第14行)
(5-2).「L.M.D.10の各点灯信号ライン16には、コモン信号ライン駆動手段20よりコモン信号が供給されているコモン信号ライン14の、各LED12の点灯/消灯を制御するための点灯信号が、点灯信号ライン駆動部40より供給される。この点灯信号ライン駆動部40は、制御部60からの点灯情報をラッチする16ビットの2つのレジスタ42、44、レジスタ42の出力を増幅し、点灯信号としてK00〜K15の点灯信号ライン16に供給するNPNドライバ46、同じくレジスタ44の出力を増幅し、点灯信号としてC00〜C15の点灯信号ライン16に供給するNPNドライバ48を備えている。」(第3頁左上欄第3行〜14行)
してみると、
(5-3).刊行物5には、
複数のLEDがマトリックス状に配置され表示素子の駆動に際してアドレス信号がアドレスデコーダでデコードされ、当該デコードに基づいて列が特定され、また、点灯信号が信号線から横の行に入力される表示制御の構成が記載されている。

[3]対比
(1)刊行物1に記載された発明と、本願請求項1に記載された発明とを対比する前に、当該請求項に記載されている、「表示信号出力手段」、「アドレス信号出力手段」、「能動化信号出力手段」等の用語の具体的意義を明らかにしておく。
前記各用語に関連する記載として、本願明細書の詳細な説明には以下の記載が認められる。
【0019】に、
「しかし、上述の遊技機のように構成したのでは、可変表示装置の制御も含め、すべての遊技機の制御を基本回路に含まれるMPUで、遊技制御プログラムにより行なうことになる。そのため、遊技機制御プログラムの負担が大きく、そのステップ数も大きくなるという問題が生じる。一方、遊技機制御プログラムの負担を軽減させるために制御を全てハード的に行なおうとすると、そのための回路が複雑化し、コストも高くなるという問題が生じる。」
【0042】に、
「LEDデジット回路70は、上述のように基本回路37から図柄表示器2の図6における縦方向の列のうちのどの列のLEDを表示駆動するかを特定するための情報を受取り、この情報をデコードして図柄表示器2の、特定された列を能動化するための信号を出力する。」(同欄第13〜末行)
【0043】に、
(A).「図6を参照して、基本回路37は、14行×15列のマトリックス状に配置されたLEDのうち、第1〜第7行目までの各LEDを駆動するための信号を出力するポートA60と、LEDマトリックスの第8〜第14行のLEDを駆動するための信号を出力するポートB61とを含む。LEDドライブ回路30Aは、ポートA60から出力される信号に基づきスイッチングされて、図柄表示器2の第1〜第7行の各LEDに点灯信号を与えるためのトランジスタ64と、ポートB61から出力される信号に基づきスイッチングされて、図柄表示器2の第8〜第14行目の各LEDに点灯信号として与えるためのトランジスタ65とを含む。」(同欄第1〜8行)
(B).「LEDデジット回路(ポートC)70は、基本回路37(図5参照)から、図6のLEDマトリックスの第1〜15番のLED列ならびに飾りLED10および記憶表示LED9のうちの1つを特定するための4ビットのアドレス信号A0〜A3を受取り、選択されたLED列のみに“1”を、他のLED列には“0”を与える16ビットの信号に変換(デコード)してLEDドライブ回路30Bに与えるためのものである。」(同欄第9〜14行)
【0048】に、
(A).「基本回路37はLEDデジット回路(ポートC)70に、0〜15の16通りの値を取るアドレス信号A0〜A3を与える。LEDデジット回路70は、入力されるアドレス信号をデコードし、16ビットの出力のうち、アドレス信号で特定される特定の1つの出力のみを“1”に、他のすべての出力を“0”としてLEDドライブ回路30Bに与える。LEDドライブ回路30Bはこの信号に基づきスイッチングされて、図柄表示器2のLEDマトリックスの各列のLEDに信号を与える。これにより、“1”が与えられたLED列に接続されたLEDのみが点灯可能な状態となる。」(同欄第5〜13行)
(B).「一方、基本回路37は、ポートA60、ポートB61を介して、表示されるべきデータをLEDのオン/オフで表わした信号をLEDドライブ回路30Aに与える。LEDドライブ回路30Aはこの信号に基づきスイッチングされて図柄表示器2に点灯信号を与える。したがって、図柄表示器2のうち、LEDデジット回路70によって能動化されたLEDのうち、ポートA60およびポートB61から「点灯」を示す信号が与えられたもののみが点灯することになる。(同欄第13〜19行)
【0068】に、
「SB4においては、ポートA60およびポートB61に、選択されたLED列の各LEDで表示されるべきデータを示す信号が出力される。この処理により、選択された列に接続されたLEDのうち、ポートA、Bから「点灯」を示すデータを受けたLEDのみが点灯し、その他のLEDは点灯しない。」
【0074】に、
「以上のようにこの発明にかかる遊技機においては、コモンカウンタの内容を1インクリメントし、その値をLEDデジット回路70に対して与えるだけで、LEDデジット回路70が与えられたデータをデコードし、表示制御すべきLED列に接続されたLEDを能動化する。その他のLEDはすべて能動化されない。」(同欄第1〜4行)
【0075】に、
「それに対し、本発明にかかる遊技機においては、基本回路で管理すべきデータとしてはコモンカウンタの値のみでよく、LEDデジット回路がコモンカウンタの値をデコードすることにより、所望のLED列のみを能動化することができる。そのため、プログラム量は図12に示される構成に比べて比較的少なくてすむ。」(同欄第1〜4行)
【0076】に、
「また、前述のようにLEDデジット回路70としては、通常アドレスデコーダとして用いられる集積回路を使用することができる。」
【0078】に、
(A).「図10のLED出力処理のSB4により、前記制御用プログラムに従って動作して、前記複数の表示素子を表示駆動させるための信号を表示素子列毎に順次出力する表示信号出力手段が構成されている。」(同欄第7〜9行)
(B).「図10のLED出力処理のSB1〜SB3により、前記制御用プログラムに従って動作して、前記表示信号出力手段により出力される信号に対応する表示素子列を指定するためのアドレス信号を生成し、該生成したアドレス信号を出力するアドレス信号出力手段が構成されている。」(同欄第9〜13行)
(C).「LEDデジット回路70により、前記アドレス信号出力手段から出力されたアドレス信号をデコードして該アドレス信号に対応する表示素子列を選択し、該選択した表示素子列が前記表示信号出力手段から出力された信号に対応して表示駆動可能となるように、当該表示素子列を能動化させるための信号を出力する能動化信号出力手段が構成されている。そして、該能動化信号出力手段が前記表示制御手段とは独立して設けられた集積回路(LEDデジット回路70)からなる。」(同欄第13〜19行)

上記記載から、以下のことが明らかである。
(あ).「能動化信号出力手段」について、
(ア).上記【0078】(C)の記載から、「集積回路(LEDデジット回路70)」からなるものであること。
(イ).当該「LEDデジット回路70」は、前記【0076】及び【0042】、【0043】(B)、【0048】(A)の記載から、アドレス信号をデコードするアドレスデコーダであること、その出力は、LEDドライブ回路に与えられること。
(ウ).したがって、「能動化信号出力手段」は、アドレスデコーダとしての、LEDデジット回路70である。

(い).「アドレス信号出力手段」について、
前記【0043】(B)、【0048】(A)、及び【0042】、【0078】(B)、【0074】、【0075】の記載から、
(ア).アドレス信号が、図柄表示器2における縦方向の列のうちのどの列のLEDを表示駆動するかを特定するために基本回路37から出力される信号であること、
(イ).この信号はデジット回路70に入力され、デコードされて、LEDドライブ回路30Bに出力されること、
(ウ).カウンタから出力されること。
(エ).したがって、「アドレス信号出力手段」とは、どの列のLEDを表示駆動するかを特定するための信号を生成・出力するものであり、当該出力された信号は、デジット回路70に入力されてデコードされるものである。

(う).「表示信号出力手段」について、
(ア).前記【0078】(A)の記載から、表示素子を表示駆動させるための信号を表示素子列毎に順次出力するものであること。
(イ).前記【0068】の記載から、特定された表示素子列(LED列)において、各表示素子(LED)で表示されるべきデータの信号がポートA、ポートBに出力されること。
(ウ).前記【0043】(A)、【0048】(B)の記載から、当該表示されるべきデータに関する信号が、基本回路37からポートA、ポートBを介してLEDドライブ回路に与えられること。
(エ).したがって、「表示信号出力手段」は、表示素子を表示駆動させるための信号、すなわち、デコーダで特定される列における各LEDを点灯表示する為の信号を表示素子列毎に順次ポートA、ポートBを介して出力するものである。

(2).そこで、前記用語の意義の下で刊行物1に記載された発明(前記(1-3))と、本願発明とを比較する。
両者は、
遊技に関わる情報が表示される表示装置を備えた遊技機であって、前記表示装置は、複数の表示素子がマトリックス状に配設され、該複数の表示素子が選択的に表示駆動することにより表示動作を行ない、制御用プログラムに従って動作するプロセッサを有し、前記複数の表示素子を表示するための制御手段を備えた遊技機において一致し、以下の点において相違する。
(あ).表示装置における表示手法として、本願発明では、「移動表示」と限定されているのに対し、刊行物1に記載された発明では限定されていない点。
(い).表示素子の表示を制御する構成として、本願発明では、「表示信号出力手段」、及び「アドレス信号出力手段」を含む表示制御手段と、「能動化信号出力手段」の2者を備え、かつ後者は前者から独立して設けられた集積回路であるのに対し、刊行物1に記載された発明では、「処理部」と記載され、当該手段に区分けした構成として記載されていない点。

(3). 相違点の検討
相違点(あ)
表示手法としてスクロール等の移動表示は前記(4-2)に示されるように周知の表示手法であるから、当該手法の限定は単なる設計的事項である。
相違点(い)
複数の表示素子をマトリックス状に配置した表示装置においては、表示駆動すべき縦の列を特定する構成として、アドレスカウンタの出力をアドレスデコーダでデコードすることにより列を特定し、特定された列で点灯表示されるべき表示素子に関するデータを、信号線から横の行のドライバに入力する表示制御は、前記(2-3)、(3-5)、(5-3)に示されるように周知の表示制御の構成である。
(ア).そこで、本願の表示制御の構成と前記周知の表示制御の構成とを比較する。
前者の「能動化信号出力手段」は、後者のアドレスデコーダに相当する。 前者の「アドレス信号出力手段」とは、前記したように、表示駆動するLEDを特定するための信号を出力する為の手段であり、アドレスデコーダに入力される信号であることから、後者において、当該アドレス信号と同様の作用を行うアドレスカウンタの出力が認められる。
してみれば、「アドレス信号出力手段」が後者の表示制御の構成に具備されていることは明らかである。
前者の「表示信号出力手段」は、前記((1)(う)(エ))のように表示信号が、デコーダで特定される列において、各LEDを点灯表示する為の信号であり、後者においても当該表示信号と同様の作用を行う、点灯信号が認められ、しかも、共に表示素子列毎に順次出力されるものである。
してみれば、前者の表示信号出力手段に相当する構成が、表示制御の構成に具備されていることは明らかである。
以上のように、表示制御の構成として、両者とも「能動化信号出力手段」、「アドレス信号出力手段」、「表示信号出力手段」を具備するものであるから、両者の実質的な相違点は、「能動化信号出力手段」が、「アドレス信号出力手段」及び、「表示信号出力手段」と独立した集積回路から構成されているか否かの点となる。
しかしながら、機能・作用毎のブロック回路とし、それらを別構成とすることは、例えば、刊行物1にもメイン回路と、表示装置用処理部とを別基板に構成しているように、当業者が適宜行う慣用技術であり、このことは、例えば刊行物4にも、制御部60、点灯信号ライン駆動部40、及び「能動化信号出力手段」に相当するコモン信号ライン駆動部20と、3ブロック化されたものが記載されているように、マトリックス状の表示装置においても変わるものではない。
してみれば、機能・作用の観点から纏められることが明らかな「能動化信号出力手段」をブロック化すること、別回路構成とすることは当業者が容易に推考できることであり、しかも、回路を集積回路構成とすることも周知慣用技術である。
さらに、当該回路構成による効果も格別のものとは認められないから、当該相違点は当業者が容易に成し得る程度のことである。

[4]むすび
したがって、本願発明1は、引用刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
 
審理終結日 2002-09-27 
結審通知日 2002-10-08 
審決日 2002-10-25 
出願番号 特願平3-118944
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土屋 保光  
特許庁審判長 中村 和夫
特許庁審判官 松川 直樹
村山 隆
発明の名称 遊技機  
代理人 塚本 豊  
代理人 森田 俊雄  
代理人 深見 久郎  

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