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審決分類 審判 査定不服 特29条の2 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1069747
審判番号 不服2001-22434  
総通号数 38 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-08-06 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-12-13 
確定日 2002-12-19 
事件の表示 平成 4年特許願第 7834号「投影露光装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 5年 8月 6日出願公開、特開平 5-198474]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成4年1月20日の出願であって、原審において拒絶査定され、その後審判請求された後、当審において本件請求項1に係る発明は、特許法第36条第4及び第5項の規定に違反している旨の拒絶理由を通知し、本件請求項1の補正がなされたものである。
1.1 本件請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)
「マスクに形成されたパターンを投影光学系を介してウェハ上に投影露光する投影露光装置において、
前記マスクを照明する2次光源位置のみに、2次光源の射出面内強度分布が周辺部と中央部の両者がその中間部分に対して大となる2次光源変調用のフィルタを設置してなり、
前記2次光源の半径をLとし、該2次光源の動径方向座標をrとした時、前記2次光源の射出面内強度分布が、2次光源上の0.67L≦r<Lから外側の範囲において大となり、且つ中心から0.3L≦r≦0.5Lの範囲までにおいて大となる領域を有することを特徴とする投影露光装置。」
2.原審の拒絶理由の概要
原審の拒絶の理由の概要は、
「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願の日前の特許(実用新案登録)出願であって、その出願後に出願公告(特許掲載公報の発行又は実用新案掲載公報の発行)又は出願公開がされた下記の特許(実用新案登録)出願の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明(考案)と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許(実用新案登録)出願に係る上記の発明(考案)をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許(実用新案登録)出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。
記(引用文献等については引用文献等一覧参照)
請求項1、2に対して:引用例1又は引用例2
引用文献等一覧
1.特願平02-307977号(特開平04-179958号)」
2.特願平03-315976号(特開平05-160002号)」
というものである。
3.引用文献1(以下、「引用例」という。)に記載された事項
3.1 記載1
第1頁左欄末行〜第1頁右欄第3行には、
「〔産業上の利用分野〕
本発明は半導体等回路パターン転写に使用される投影型露光装置に関し、特に、ホールパターンの転写に好適な投影型露光装置に関するものである。」
と記載されている。
3.2 記載2
第1頁右欄第4行〜第2頁左上欄第18行には、
「〔従来の技術〕
従来のこの種の投影露光装置の1つとして、照明光学系の瞳面で輪帯状の照明光量分布とする…空間フィルターを使用する装置が特開平2-166717号公報等で提案されている。
ここで投影光学系の瞳面(絞り面)付近に、輪帯状の透過部を有する空間フィルターを設けた場合の効果について、第8図、第9図を用いて簡単に説明する。…
第9図(a)は投影光学系の瞳面に輪帯状の透過部を持つ空間フィルター12を設けた光学系の略図である。このとき、輪帯の外側の径は、瞳の径と同一としてある。第9図(b)はこのときの、ウェハ13上での微小ホールパターン10の像を表わす。第9図(a)の空間フィルター12を設けることにより、像のピークから暗点までの距離が短くなる、すなわち、像の分布の広さが小さくなる。このことは、アポダイゼーションとして広く知られている。
また、このとき、同時に焦点深度の増大の効果も得られる。」
と記載されている。
3.3 記載3
第3頁右上欄第10行〜同頁右下欄第6行には、
「〔課題を解決する為の手段〕
上記目的の為に、本発明における投影型露光装置では、照明光学系の瞳面あるいはその近傍において照明光の光量分布を、光軸を中心とする半径r1のほぼ円形内の第1領域と、半径r2のほぼ円形と、半径r3のほぼ円形(r1<r2<r3)との中間の輪帯状の第2領域とで強くする光学部材を設け、この光学部材により、上記の第1領域に対する第2領域の光量の比を、少なくとも2倍以上となるようにした。
同時に、投影光学系の瞳面もしくはその近傍には着脱及び交換可能な、輪帯状の透過部を持つ空間フィルターを設けた。
[作用]
本発明においては、照明光学系の瞳面近傍での照明光量の分布は、前述のσ値の小さい照明系(半径r1内のほぼ円形の第1領域)と、輪帯状の照明系(半径r2からr3の輪帯状の第2領域)とを同時に使ったときの和として表わされる。ただし、輪帯状の照明系からの照明光量は、σ値の小さな照明系からの照明光に比べ半分以下である。
このため、σ値の小さな照明系を使ったときと等価な、半径r1内のほぼ円形部よりの照明光により、微細なホールパターンの像がウエハに投影され、輪帯状の照明系を使ったときと等価な半径r2〜r3の輪帯部からの照明により、大きなホールパターンの像がウエハに投影される。

また、前述のとおり投影光学系内の瞳面に設けた輪帯状の空間フィルターにより、解像度が向上し、焦点深度が増大する効果は本発明においても同様に得られる。」
と記載されている。
3.4 記載4
第2頁右下欄第8行〜同欄第9行には、「照明光学系中の瞳面にできる光源像を輪帯状にした」
と記載されている。
3.5 記載5
第3頁右下欄第11行〜第20行には、
「照明光は…フォトマスク9のフーリエ変換面に設けられた空間フィルター5により一部遮光される。第2図は、空間フィルター5を光軸方向から見た図であり、中心O…から半径r1の円内5cと、中心Oから半径r2とr3までの間の輪帯部5eは透過部…である。…中心の円内5cからの透過光量が、輪帯部5eからの透過光量に比べて、少なくとも2倍以上である」
と記載されている。
なお、上記空間フィルター5は、記載3の「光学部材」と同義である。
3.2 本願発明と引用例に記載された発明との対比
3.2.1
上記記載1からすると、引用例は、本願発明と同じ投影露光装置に関し、露光対象物も同一である。
また、上記記載2からすると、投影露光装置の1つとして、照明光学系の瞳面で輪帯状の照明光量分布とする空間フィルターを使用する装置が引用例の出願前に既に公知であると認められ、その効果も公知であると認められる。
3.2.2
さらに、上記記載3には、投影光学系の瞳面もしくはその近傍に、輪帯状の透過部を持つ空間フィルターを、「着脱」可能に設ける旨記載され、「また、前述のとおり投影光学系内の瞳面に設けた輪帯状の空間フィルター(以下、「引用例の構成A」という。)により、「解像度が向上し、焦点深度が増大する効果は本発明においても同様に得られる。」と記載され、また、「本発明における投影型露光装置では、照明光学系の瞳面あるいはその近傍において照明光の光量分布を、光軸を中心とする半径r1のほぼ円形内の第1領域と、半径r2のほぼ円形と、半径r3のほぼ円形(r1<r2<r3)との中間の輪帯状第2領域とで強くする光学部材を設け、この光学部材により、上記第1領域に対する第2領域の光量の比を、少なくとも2倍以上となるようにした」(上記記載3)構成(以下、「引用例の構成B」という。)により、「σ値の小さな照明系を使ったときと等価な、半径r1内のほぼ円形部よりの照明光により、微細なホールパターンの像がウエハに投影され、
輪帯状の照明系を使ったときと等価な半径r2〜r3の輪帯部からの照明により、大きなホールパターンの像がウエハに投影される」(上記記載3)という作用効果を有する。
そうすると、引用例の構成Bにおける光学部材は、引用例の構成Aにおける輪帯状の空間フィルターとは別の作用効果を有し、上記引用例の構成Bを有する発明が構成Aとは独立して記載されていると認める。
3.2.3
上記記載5は、
πr12>π(r3-r2)2 … 式(1)
を意味するが、r3は、本願発明のLに相当するから、式(1)は、
π(aL)2>2π(L-bL)2 … 式(2)
(但し、r1=aL、r2=bL とする。)
と書け、式(2)は、
a>√2(1-b) … 式(3)
と整理することができる。
そこで、本件発明の構成要件である、
… 式(4)
となる。
本件発明と、原審での上記引用例では、r1とr3の定義が逆になっていることを考慮すると、式(4)のr2及びr3の範囲は、式(3)のa及びbに相当する値が、
であることを要求している。
式(3)において、bが1に近づけば、式(3)の右辺は0に近づき、式(5)と式(3)の両方を満たすaが存在することは計算するまでもなく明らかである。
さらに、式(5)において式(3)を満たすbとして最も厳しいbの値b=0.67を式(3)に代入すると、
a>√2(1-0.67)≒0.47 … 式(6)
となり、式(5)と式(3)の両方を満たすaが存在する。
そうすると、本件発明と、原審での上記引用例は、数値が広い範囲で一致する。
3.2.4
また、上記記載4からすると、引用例の空間フィルター5は、2次光源位置に設置されていると認められる。
3.3 判断
上記3.2.2、3.2.3及び3.2.4により、上記引用例には、本願発明の構成が記載されており、又、3.2.1から、引用例記載の発明は、本願発明と同じ産業上の利用分野に属するから、引用例には、本願発明が記載されていると認める。
6.むすび
従って、本願請求項1に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた特願平02-307977号の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-09-30 
結審通知日 2002-10-01 
審決日 2002-11-05 
出願番号 特願平4-7834
審決分類 P 1 8・ 16- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 芝 哲央秋月 美紀子  
特許庁審判長 高橋 美実
特許庁審判官 辻 徹二
北川 清伸
発明の名称 投影露光装置  
代理人 鈴江 武彦  

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