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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1070046
審判番号 不服2001-23612  
総通号数 38 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-04-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-12-28 
確定日 2003-01-20 
事件の表示 平成 6年特許願第225228号「ソフトウエア管理モジュール、ソフトウエア再生管理装置およびソフトウエア再生管理システム」拒絶査定に対する審判事件〔平成 8年 4月23日出願公開、特開平 8-106382、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成6年9月20日(国内優先権主張、平成6年8月10日)の出願であって、その請求項1ないし請求項4に係る発明は、平成14年1月28日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし請求項4に記載されたとおりの次のものと認める。

「【請求項1】 格納媒体から暗号化された所定のソフトウエアを読み出す
ドライブ装置と、
前記暗号化ソフトウエアを読み込んで復調する復調手段と、
前記暗号化ソフトウエアを入力する入力部と、課金情報を登録する課金情
報記憶部と、前記入力部で入力された暗号化ソフトウエアの復号を許可する
か否かを課金情報記憶部の課金情報により判定する許可制御部と、前記暗号
化ソフトウエアを復号化する復号化部と、前記許可制御部により許可された
場合に前記復号化部で復号化された復号化ソフトウエアを当該ソフトウェア
管理モジュール外へ所定のサイクルで連続的に出力する出力部とからなるソ
フトウエア管理モジュールと、
前記ソフトウエア管理モジュールから出力された復号化ソフトウエアを、
デジタル情報またはアナログ情報として出力する出力手段と、
からなることを特徴とするソフトウエア再生装置。
【請求項2】 前記許可制御部は、前記暗号化ソフトウエアの復号が許可さ
れた場合は前記課金情報記憶部の課金情報を減算することを特徴とする請求
項1記載のソフトウエア再生装置。
【請求項3】 前記ソフトウエア管理モジュールを内蔵したカード媒体を装
着可能なカードドライブ装置を備えている請求項1記載のソフトウエア再生
装置。
【請求項4】 前記復号化部は、モードテーブルに格納された複数の暗号モ
ードのうち前記暗号化ソフトウエアのデータ形式に最適なモードを選択する
ことににより復号化処理を行うことを特徴とする請求項1記載のソフトウエ
ア再生装置。」

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、特開平2-105195号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

(ア)「本発明は、テレビジョン映像信号の垂直帰線期間に多重化された文
字図形データ及びプログラムデータを受信し、文字図形などの映像を用いた
情報伝達・ゲーム・教育・実務サービス等を提供するデータ放送コンピュー
タに関するものである。」(公報1頁右下欄15行〜19行)

(イ)「従来の文字放送では、サービス主は電波で情報を送信するだけなの
で、自ずと無料サービスとなり、価値あるデータを有料でユーザに提供する
ようなことはできない。」(公報2頁左上欄18行〜右上欄1行)

(ウ)「文字放送における規格化された符号方式に加え、データ放送コンピ
ュータを対象にしたプログラムとデータを、従来の文字放送受信機に影響を
与えない暗号化情報にして放送できる。」(公報3頁左上欄4行〜6行)

(エ)「カード用インターフェイス部(13)にはICカード(14)を着
脱自在に接続でき、これを接続するとインターフェイス(32)を介して制
御部(12)とICカード(14)との間でデータの授受を行うことができ
る。ICカード(14)は前記訂正されたデジタルデータを復号するデコー
ダ(34)、・・・・・(中略)・・・・・デコーダ制限回路(36)を内
蔵している。・・・・(中略)・・・・このデコーダ(33)は、抜き取り
データが暗号化された情報であったときは適切な変換を行ってデータ復号し、それをICカード(14)のRAM(34)に記憶する。・・・・(中略)・・・・各々のプログラムはRAM(34)に記憶されたデータを参照・加工・処理し、同一目的を達成させるように動作する。」(公報3頁左下欄17行〜4頁左上欄9行)

(オ)「デコーダ制限回路(36)は、日時、データロード回数、パスワー
ド照合などの要因によって、デコーダ(33)の動作を強制停止させること
ができ、プリペイド方式のサービス料金ユーザ負担システムを構築するため
のものである。」(公報4頁左上欄10行〜14行)

また、特開平5-91509号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

(カ)「家庭5内には、上記受信用アンテナ6で受信した放送信号を衛星放
送の放送局ごとの電気信号に変換する衛星放送チューナ7、衛星放送チュー
ナ7からの放送信号をデスクランブル(復号化)する衛星放送デコーダ8、
この衛星放送デコーダ8で復号化された放送信号に対応する映像と音声とを
出力するTV受像機9が設けられている。」(公報4欄30行〜36行)

(キ)「上記衛星放送デコーダ8には、ICカードCを受入れ、この受入れ
たICカードCの金銭的価値としての残高から衛星放送の視聴料金を減額す
る機能を有している。」(公報4欄40行〜43行)

(ク)「上記ICカードCは、図2に示すように、ICカードCの全体を制御する制御部11、番組コードと視聴金額と視聴日時からなる視聴情報を記
憶する視聴管理部12、制御プログラムが記憶されているとともに、各放送
局ごとの残高等が記憶されている記憶部13、外部装置と接続される入出力
インターフェース14、復号化信号を作成する復号化処理部15、および番
組料金と視聴時間により視聴金額を算出する課金管理部16から構成されて
いる。」(公報4欄46行〜5欄5行)

(ケ)「上記衛星放送デコーダ8は、図4に示すように、衛星放送デコーダ
8の全体を制御する主制御部21、制御プログラムが記憶されている記憶部
22、デスクランブルを行う際に用いる乱数を発生する乱数発生部23、映
像信号を復号化する(スクランブル状態の信号を元に戻す)映像信号復号部
24、音声信号を復号化する(スクランブル状態の信号を元に戻す)音声信号復号部25、ICカードCからデータを読取ったり、ICカードCにデー
タを書込んだりするICカードリーダライタ26・・・・(中略)・・・・
から構成されている。」(公報5欄37行〜48行)

(コ)「報知金額よりも多い場合、制御部11は、記憶部13の記憶エリア
13aから読取った暗号化キーを用いて復号化処理部15で復号化処理に必
要な復号化信号を生成し、衛星放送デコーダ8の主制御部21へ出力する。」(公報7欄33行〜37行)

(サ)「衛星放送デコーダ8の主制御部21は、上記放送局Aの番組の選択
に対してICカードCから復号化信号が供給された場合、その復号化信号、
乱数発生部23からの乱数、および衛星放送チューナ7から供給される放送
信号のうちの映像信号(スクランブル状態)が映像信号復号部24へ出力さ
れる。映像信号復号部24はスクランブルされている映像信号を乱数発生部
23からの乱数とICカードCからの復号化信号とを用いてデスクランブル
することにより、元の映像信号に戻す。」(公報8欄15行〜24行)

3.対比
請求項1に係る発明のうち、ソフトウエア管理モジュールの主要な構成要素とそれらに対応又は関連する引用例1、2に記載された構成要素を比較すると、下の表のようになる。

ソフトウエア 引用例1 引用例2
管理モジュール
1.課金情報記憶部 デコーダ制限回路36 記憶部13
(ICカード14) (ICカードC)
2.許可制御部 デコーダ制限回路36 復号化処理部15
(ICカード14) (ICカードC)
3.復号部 デコーダ33 映像信号復号部24
(ICカード14) 音声信号復号部25
(衛星放送デコーダ8)
4.所定サイクルで 加工処理部 TVインターフェース27
連続的に出力する (制御部12, (衛星放送デコーダ8)
出力部 ICカード14)

なお、引用例1,2の構成要素の後の括弧内は各構成要素が存在する箇所
を示している。

4.判断
請求項1に係る発明の「ソフトウエア再生装置」は、課金情報記憶部、許可制御部、暗号の復号部及び出力部をソフトウエア再生装置に装着されるモジュール内に持つことにより、暗号化されたストリームデータに対し、セキュリティの高いソフトウエア課金を可能としたものである。
これに対し、引用例1のものは、「従来の文字放送では、サービス主は電
波で情報を送信するだけなので、自ずと無料サービスとなり」との認識の下に、受信側での参照、加工、処理の対象となる「価値あるデータを有料でユ
ーザに提供する」ことを目的としている。そのため、抜き取りデータは一旦
RAMに格納され、このRAMに格納されたデータに対し加工処理等が加え
られる。このように、引用例1のものは加工処理等を目的としないストリー
ムデータを扱うものではない。
更に、加工の対象としないデータは無料という認識を持っているから、引用例1のものは課金処理に関連する機構を持っているもののストリームデータに対して課金処理を行うことを意識しているものではない。従って、引用例2のようなストリームデータに対して課金するという概念があるにしても、引用例1に示される「デコーダ」「デコーダ制限回路」「加工処理部」を一体として有するICカードを用いてストリームデータに対して課金を行うことが容易に想到し得るということはできない。
また、引用例2のものは、衛星放送信号を受信し、デスクランブルするも
のであるから、ストリームデータを取り扱うものであるが、本願のソフトウ
エア管理モジュールの「課金情報記憶部」と「許可制御部」は、ICカード
内にあり、「復号部」と「所定サイクルで連続的に出力する出力部」は、デ
コーダ側にあるから、前記1-4の要素を1つのモジュール内にもつ本願の
ソフトウエア管理モジュールとは構成を異にするものである。更に、引用例
2では、課金に関する機構を携帯し易いICカード側にもち、暗号の復号に
関する機構は、家庭内に設置するチューナや受像機側に持つという構成が前
提になっているから、引用例2記載の事項からは課金に関する機構と暗号の
復号に関する機構を1つのモジュールにすることを想到することは当業者に
とって容易になし得るものではない。これに対し、本願発明では、課金に関
する機構と暗号の復号に関する機構を一体化することで「セキュリティの高
いソフトウエア課金が可能」という効果を奏するものである。

このように、本願発明の「ソフトウエア管理モジュール」は引用例1,2
から容易に想到されるものではないから、他の構成については検討するまで
もなく、請求項1に係る発明は上記の引用例1、2から容易に発明すること
ができたものということはできない。また、請求項2-4は請求項1を引用
し、更に限定を加えたものであるから、請求項2-4についても引用例1,
2から容易に発明することができたものということはできない。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は引用例1,2に基づいて容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとした原査定の判断は妥当でない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2002-12-20 
出願番号 特願平6-225228
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 林 毅  
特許庁審判長 吉岡 浩
特許庁審判官 川崎 優
吉見 信明
発明の名称 ソフトウエア管理モジュール、ソフトウエア再生管理装置およびソフトウエア再生管理システム  
代理人 遠山 勉  

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